【課題】熱融着性繊維によって吸水性材料を固定した吸水層を製造する方法であって、吸水層の異臭を抑制できる製造方法を提供する。また、異臭がせず、吸収性能に優れた吸水層を提供する。
【解決手段】吸水層26の製造方法は、吸水性材料27と、熱水溶解性繊維28とを含有する成形体を作製する工程と、前記成形体に水を付与した後、熱処理する工程とを有する。吸水層は、吸水性材料と、熱水溶解性繊維とを含有し、前記吸水性材料が前記熱水溶解性繊維によって固着されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の吸水層の製造方法は、吸水性材料と、熱水溶解性繊維とを含有する成形体を作製する工程と、前記成形体に水を付与した後、熱処理する工程とを有する。
【0016】
成形体を作製する工程について説明する。前記成形体を作製する方法は特に限定されず、従来の吸水層の製造に使用される方法が採用できる。例えば、吸水性材料と熱水溶解性繊維とを混合し、この混合物を空気中に分散させ、それをスクリーン上に堆積させる方法(エアレイ法);吸水性材料と熱水溶解性繊維とを含む分散液を調製し、この分散液をスクリーン上に漉き取る方法(湿式法);などが挙げられる。成形体の形状は、所望とする吸水層の形状に応じて適宜調整すればよく、例えば、マット状、シート状などが挙げられる。
【0017】
前記熱水溶解性繊維は、水への溶解温度が、40℃以上であり、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上であり、80℃以下が好ましく、より好ましくは78℃以下、さらに好ましくは75℃以下である。水への溶解温度が40℃以上であれば着用者の体温や体液によって溶解することが抑制され、80℃以下であれば成型加工時の熱量を抑え吸収体を構成する他の材料の焦げを防止しながら固着できる。
【0018】
前記熱水溶解性繊維の融点(水を付与しない状態)は、130℃以上が好ましく、より好ましくは145℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、250℃以下が好ましく、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは230℃以下である。融点が130℃以上であれば水への膨潤度が向上し、かつ強度が高くなりバインダーとしての機能が向上し、250℃以下であれば水に対する膨潤度の低下を抑制できる。なお、熱水溶解性繊維の融点は、示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0019】
前記熱水溶解性繊維としては、例えば、ポリビニルアルコール繊維、ポリビニルピロリドン繊維、カルボキシメチルセルロール繊維、カルボキシエチルセルロース繊維、エチレンビニルアルコール繊維が挙げられ、ポリビニルアルコール繊維が好ましい。前記ポリビニルアルコール繊維を構成するポリビニルアルコール樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体をケン化したものや、酢酸ビニルと他の単量体との共重合体をケン化したものが挙げられる。他の単量体を用いる場合、共重合体中の他の単量体の含有率は10モル%以下が好ましい。前記他の単量体としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0020】
前記ポリビニルアルコール繊維のケン化度は、65%以上が好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、特に好ましくは77%以上であり、97%以下が好ましく、より好ましくは96%以下、さらに好ましくは95%以下である。ケン化度が70%以上であれば成形体に水を付与した際に、ポリビニルアルコール繊維がダマになりにくくなり、97%以下であればポリビニルアルコール繊維表面が適度に親水性となり、吸水層の吸収性能がより良好となる。前記ポリビニルアルコール繊維のケン化度は、JIS K6726(1994)に基づき測定できる。
【0021】
前記ポリビニルアルコール繊維の平均重合度は、50以上が好ましく、より好ましくは80以上、さらに好ましくは100以上であり、4000以下が好ましく、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2000以下である。平均重合度が50〜4000であれば接着性、安定性、熱水溶解性が良好となる。前記ポリビニルアルコール繊維の平均重合度は、JIS K6726(1994)に基づき測定できる。
【0022】
前記熱水溶解性繊維の繊維長は、2mm以上が好ましく、より好ましくは2.1mm以上、さらに好ましくは2.2mm以上であり、7mm以下が好ましく、より好ましくは6.8mm以下、さらに好ましくは6.5mm以下である。繊維長が2mm以上であれば熱水溶解性繊維と吸水性材料とを混合する際や成形体を作製する際に熱水溶解性繊維が飛散することが抑制でき、7mm以下であれば吸水性材料と混合する際に、より均一に混合することができる。
【0023】
前記熱水溶解性繊維の繊度は、0.1dtex以上が好ましく、より好ましくは0.3dtex以上、さらに好ましく0.4dtex以上であり、20dtex以下が好ましく、より好ましくは18dtex以下、さらに好ましくは16dtex以下である。前記熱水溶解性繊維の繊度が0.1dtex以上であればバインダーとしての強度が向上し、20dtex以下であればパルプなど吸収体を構成するその他の繊維との混合性が良好となる。
【0024】
前記熱水溶解性繊維の使用量は、前記吸水性材料100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、20質量部以下が好ましく、より好ましくは17質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。前記熱水溶解性繊維の使用量が0.1質量部〜20質量部であればバインダーとしての接着強度と風合いが良好となる。
【0025】
前記吸水性材料としては、吸水性繊維、吸水性樹脂粉末が挙げられる。前記吸水性繊維としては、例えば、パルプ繊維、セルロース繊維、レーヨン、アセテート繊維が挙げられる。前記吸水性樹脂粉末としては、従来吸収性物品に使用されているものが使用できる。前記吸水性樹脂粉末には、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤、無機質粉末及び有機質繊維状物などの添加剤を含むことができる。
【0026】
前記吸水性材料は吸水性繊維としてパルプ繊維を含有することが好ましい。前記吸収性材料中のパルプ繊維の含有率は40質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、95質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0027】
前記成形体は、前記熱水溶解性繊維の他に繊維基材を含有してもよい。前記繊維基材としては、例えば、ポリエステル、アクリル、アクリル系(塩化ビニルまたは塩化ビニリデン共重合系)、ナイロン、ビニロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ビニリデン、ポリウレタン、アラミド、ポリアリレート、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)、アクリレート系、および、ポリ乳酸などの合成繊維;レーヨンポリノジック、および、キュプラなどの再生繊維;アセテート、トリアセテート、および、プロミックスなどの半合成繊維;ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維などの無機繊維;羊毛、綿、麻などの天然繊維などが挙げられる。成形体中の他の繊維基材の含有率は、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0028】
前記成形体を熱処理する工程について説明する。本発明では、成形体に水を付与した後、熱処理を行うことが重要となる。前記熱水溶解性繊維は水と接触すると融点が低下する。よって、成形体に水を付与することにより、より低温の熱処理で熱水溶解性繊維と吸水性材料とを固着することができる。また、成形体に水を付与しておくことにより、吸水性材料が焦げることがより抑制できる。
【0029】
成形体に水を付与する方法は特に限定されないが、成形体の上方から水を散布する方法が好適である。水の散布は、シャワー状、霧状などが挙げられる。なお、成形体を湿式法で作製した場合、得られた成形体には水が含有されているため、水を付与する工程を省略してもよい。
【0030】
前記水の付与量は、成形体100質量部に対して5質量部以上が好ましく、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、150質量部以下が好ましく、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下である。水の付与量が5質量部以上であれば熱水溶解性繊維の融点が十分に低下し、接着性が向上し、150質量部以下であれば乾燥効率の低下を抑制できる。また、水付与後の熱水溶解性繊維の含水率は5%〜70%であることが好ましい。
【0031】
前記成形体を熱処理する方法は、前記熱水溶解性繊維により前記吸水性材料を固着できる方法であれば特に限定されない。熱処理方法としては、成形体を加熱された板またはローラーで挟む方法、成形体に熱風を吹き付ける方法、成形体を加熱炉で加熱する方法などが挙げられる。これらの中でも、成形体に熱風を吹き付ける方法が好ましい。
【0032】
前記熱処理において、成形体の温度は54℃以上が好ましく、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは65℃以上であり、121℃以下が好ましく、より好ましくは116℃以下、さらに好ましくは104℃以下、最も好ましくは99℃以下である。成形体の温度が54℃〜121℃であれば吸収体を焦がすことなくバインダー効果を発揮し成型できる。成形体の温度は、温度測定ラベル(ミクロン社製、ヒートラベル)により測定される温度である。
【0033】
前記熱処理において、加熱時間は0.1秒以上〜60秒以下が好ましく、0.1秒~15秒が好ましいい。加熱時間が0.1秒〜60秒であれば吸収体の焦げを防止しながらバインダー効果を得ることができる。加熱時間とは、熱風を吹き付ける時間、加熱された板またはローラーで挟む時間である。
【0034】
前記熱処理を施すことにより、熱水溶解性繊維により吸水性材料が固定された吸水層が得られる。前記の製造方法により得られた吸水層は、低温かつ短時間の熱処理で吸水性材料を固着できるため、熱処理時にパルプが焦げたり、得られる吸水層から異臭(焦げた臭い)が発生したりすることが抑制される。得られた吸水層はそのまま使用してもよいし、所望とする形状に裁断してもよい。
【0035】
前記吸水層の厚さは、0.5mm以上が好ましく、より好ましくは0.7mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上であり、10mm以下が好ましく、より好ましくは7mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。特に本発明の製造方法は、厚さ5mm以下の吸水層の製造に有用である。厚さ0.5mm以下の吸水層は、高温で熱処理すると容易に異臭が発生してしまう。しかし、本発明の製造方法を採用することで、このような薄肉の異臭の発生を抑制できる。
【0036】
次に、本発明の吸水層について説明する。本発明の吸水層は、吸水性材料と、熱水溶解性繊維とを含有し、前記吸水性材料が前記熱水溶解性繊維によって固着されていることを特徴とする。熱水溶解性繊維を用いることで、低温かつ短時間の熱処理で吸水性材料を固着できるため、吸水性材料の劣化が抑制できる。また、熱水溶解性繊維は親水性であるため、吸水性材料の吸水を阻害することがなく、吸水層の吸収性能が向上する。
【0037】
前記熱水溶解性繊維の目付けと前記吸水性材料の目付けとの合計は、50g/m
2以上が好ましく、より好ましくは70g/m
2以上、さらに好ましくは100g/m
2以上であり、300g/m
2以下が好ましく、より好ましくは280g/m
2以下、さらに好ましくは250g/m
2以下である。目付けの合計が50g/m
2〜300g/m
2であれば吸収体強度と吸収性能のバランスが調整しやすくなる。
【0038】
前記吸水性材料の目付けは、15g/m
2以上が好ましく、より好ましくは30g/m
2以上、さらに好ましくは40g/m
2以上であり、300g/m
2以下が好ましく、より好ましくは250g/m
2以下、さらに好ましくは220g/m
2以下である。目付けが15g/m
2〜300g/m
2であれば吸収性能と吸収体の強度、風合いのバランスが調整しやすくなる。
【0039】
本発明の吸収体は、前記吸水層の製造方法により得られた吸水層または吸水性材料が熱水溶解性繊維によって固着されている吸水層を備えたことを特徴とする。
【0040】
本発明の吸収体としては、例えば、前記吸水層を透液性シートで包んだもの;透液性の第1シートと、第2シートとを有し、前記第1シートと第2シートとの間に前記吸水層が配置されているものが挙げられる。
【0041】
前記透液性シートとしては、例えば、親水性繊維により形成された不織布が挙げられる。このような不織布としては、例えば、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布が挙げられる。前記親水性繊維としては、セルロースやレーヨン、コットン等が用挙げられる。なお、透液性シートとして、表面を界面活性剤により親水化処理した疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン)にて形成された透液性の不織布が用いられてもよい。
【0042】
前記第1シートは、肌面に当接する側のシートであり、着用者からの体液の水分を速やかに透過させる。前記透液性の第1シートとしては、前記透液性シートが使用できる。前記第2シートは、吸水層の使用態様に応じて、透液性シートあるいは不透液性シートのいずれであってもよい。不透液性シートとしては、疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン)にて形成された撥水性または不透液性の不織布(例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布)や、撥水性または不透液性のプラスチックフィルムが利用され、不透液性シートに到達した排泄物の水分等が、吸水層の外側にしみ出すのを防止する。不透液性シートにプラスチックフィルムが利用される場合、ムレを防止して着用者の快適性を向上するという観点からは、透湿性(通気性)を有するプラスチックフィルムが利用されることが好ましい。
【0043】
本発明には、本発明の吸水層を備える吸収性物品が含まれる。吸収性物品の具体例としては、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、母乳パッドなどの着用者の体液を吸収する吸収性物品を挙げることができる。
【0044】
以下、本発明の吸収性物品について、図面を参照ながら説明するが、本発明は、図面に示された態様に限定されるものではない。
【0045】
図1は本発明の吸収性物品の一例の平面図(展開図)、
図2は
図1のI−I線の模式的断面図、
図3は
図1のII−II線の模式的断面図、
図4は本発明の吸収性物品の別例の模式的断面図である。
図1〜4において、矢印Aは吸収性物品の長さ方向、矢印Bは吸収性物品の幅方向を示し、紙面のC方向の上側が肌面側であり、下側が外面側である。
【0046】
図1には、本発明のパンツ型使い捨ておむつ(吸収性物品)の一例を示した(展開図)。パンツ型使い捨ておむつ1は、長さ方向Aに前腹部2と後背部3とを有し、前腹部2と後背部3との間に股部4を有する。前腹部2は、着用者の腹側に当接し、後背部3は着用者の臀部側に当接する。股部4には、着用者の脚周りに沿うように切欠き5が設けられている。
図1のパンツ型使い捨ておむつ1では、前腹部2の側縁2aと後背部3の側縁3aとを接合して、ウエスト開口部と一対の脚開口部を有するパンツ型使い捨ておむつ1となる。
【0047】
パンツ型使い捨ておむつ1は、外装シート材6の肌面側に吸収性本体20が貼り付けられている。吸収性本体20は股部4の中央より長さ方向Aに沿って延びている。
【0048】
パンツ型使い捨ておむつ1には、外装シート材6の端縁7に沿って、前側ウエスト用弾性部材8と後側ウエスト用弾性部材9が幅方向Bに伸張された状態で取り付けられている。また、切欠き5に沿って、前側脚用弾性部材10と後側脚用弾性部材11とが伸張された状態で取り付けられている。前腹部2と後背部3のそれぞれにおいて、ウエスト用弾性部材と脚用弾性部材との間に、前側胴周り用弾性部材12と後側胴周り用弾性部材13が幅方向Bに伸張された状態で取り付けられている。各弾性部材の収縮によりパンツ型使い捨ておむつ1が着用者にフィットする。
【0049】
図2は、
図1のパンツ型使い捨ておむつのI−I線における断面を模式的に説明する図である。
図2を参照して、パンツ型使い捨ておむつ1の構造について説明する。外装シート材6は、外側シート6aと内側シート6bとで構成され、両シート間に、ウエスト用弾性部材8,9、脚用弾性部材10,11、胴周り用弾性部材12,13が伸張状態で取り付けられている。外側シート6aは内側シート6bよりも長さ方向において長くなっており、端縁7において内面側(肌面側)に折り返されて折返し部14を形成している。なお、
図2において、C方向右側が、外面側であり、左側が内面側(肌面側)である。
【0050】
外装シート材6の肌面側には、吸収性本体20が取り付けられている。前記吸収性本体20は、吸収体21と、吸収体21の肌面側に配置された不織布材料からなるトップシート22と、吸収体21の外面側に設けられた不透液性のバックシート23とを有する。前記吸収体21は、第1シート24と、第2シート25と、これらの間に配置された吸水層26とを有する。吸水層26は、吸水性材料27と熱水溶解性繊維28とを含有している。パンツ型使い捨ておむつ1では、内側シート6bの内面の前腹部2と後背部3において吸収性本体20の長さ方向端部を覆うように前側エンド押さえシート15と後側エンド押さえシート16が設けられている。
【0051】
図3は、
図1のパンツ型使い捨ておむつのII−II線における断面を模式的に説明する図である。
図3に示すように不織布材料からなるトップシート22の幅方向の両側縁部の上部には、不織布材料からなるサイドシート17が接合されている。サイドシート17は、長さ方向に伸張状態で取り付けられた弾性部材18の収縮力によって着用者の肌に向かって起立する立ち上がりフラップを形成し、尿等の横漏れを防ぐバリヤーとしての役割を果たす。
図3において、C方向上側が肌面側であり、下側が外面側である。
【0052】
図4は、使い捨ておむつ1の別の好ましい態様を説明する模式的断面図である。パンツ型使い捨ておむつ1は、透液性のトップシート22と、不透液性のバックシート23と、前記透液性トップシート22と不透液性のバックシート23との間に吸収体21を有する。透液性のトップシート22の両側縁部の上部に不透液性のサイドシート17が接合されている。接合点19より内方のサイドシート17は、着用者の肌に向かって起立する立ち上がりフラップを形成する。接合点19より外方のサイドシートは、吸収体21の側縁より外方に延出してバックシート23と接合している。表面シート材は、透液性のトップシート22と不透液性のサイドシート17を含む。外装シート材は、不透液性のバックシート23を含む。
図2〜
図4において、
図1と同一の構成部材については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0054】
[評価方法]
熱水溶解性繊維の水への溶解温度
熱水溶解性繊維(長さ4cm)の一端を治具に固定し、他端に錘を吊り下げた。なお、錘の重さは、繊度に応じて調整し、1dtex当たり2mgとした。この熱水溶解性繊維全体を水(0℃)に浸漬させ、水温を昇温(昇温速度:2℃/分)させていき、繊維が溶断した際の水温を測定した。
【0055】
異臭試験
吸水層を100mm×100mmの大きさに切り出し、これをポリエチレン製の袋に入れ、官能試験を行った。そして、焦げ臭がない場合を「○」、焦げ臭がある場合を「×」と評価した。
【0056】
形状安定性試験
引張試験機(A&D社製、「TENSILON RTG-1210」)の基盤に圧縮盤を設置し、ロードセルに圧縮受圧板を取り付けた。前記圧縮盤上に吸水層(100mm×100mm)を置き、この上に円筒治具(内径25mm)を乗せた。さらに、吸水層上に円筒治具の穴の中央部に円柱治具(直径15mm)を置き、この円柱治具を圧縮受圧板により押し込み(100mm/min)、円柱治具が吸水層を貫通する際の荷重を測定した。測定された荷重が0.4N以上の場合を「○」、0.4N未満、0.3N以上の場合を「△」、0.3N未満の場合を「×」と評価した。
【0057】
吸収性試験
吸収体の中央に測定用治具(アクリル製、円筒状(内径15mm))を設置した。前記測定用治具内に生理食塩水(濃度0.9質量%)10mlを滴下し、吸収時間(滴下開始から生理食塩水が吸収体に完全に吸収されるまでの時間)を測定した(1回目)。1回目の測定開始(生理食塩水の滴下開始)から10分後に、前記測定用治具内に生理食塩水10mlを滴下し、吸収時間を測定した(2回目)。1回目の測定開始から20分後に、前記測定用治具内に生理食塩水10mlを滴下し、吸収時間を測定した(3回目)。各回の吸収時間について、3秒未満の場合を「○」、3秒以上5秒未満の場合を「△」、5秒以上の場合を「×」と評価した。
【0058】
[吸水層の製造]
製造例1
吸水性材料としてのパルプ繊維100質量部とバインダー繊維としての部分ケン化ポリビニルアルコール繊維(ケン化度65%、繊維長3mm、繊度1.1dtex)(熱水溶解性繊維)0.005質量部とを混合した。得られた混合物をエアレイ法により移送コンベア上に100g/m
2の目付けで直接散布し、ブロワによる吸引力によって移送コンベアに密着させ、成形体を得た。この成形体に水(成形体100質量部に対して10質量部)を散布後、熱風(120℃)を10秒間吹き付け、成形体の温度が90℃となるように熱処理を行い、吸水層1を作製した。
【0059】
製造例2〜12
熱水溶解性繊維の種類またはその添加量を表1に示すとおりに変更したこと以外は製造例1と同様にして吸水層2〜12を作製した。
【0060】
製造例13
吸水性材料としてのパルプ繊維100質量部とバインダー繊維としてのポリエチレン繊維(繊維長3mm、繊度1.2dtex)0.05質量部とを混合した。得られた混合物をエアレイ法により移送コンベア上に100g/m
2の目付けで直接散布し、ブロワによる吸引力によって移送コンベアに密着させ、成形体を得た。成形体に熱風(220℃)を10秒間吹き付け、成形体の温度が150℃となるように熱処理を行い、吸水層13を作製した。
【0061】
製造例14
ポリエチレン繊維の添加量を20質量部に変更したこと以外は製造例13と同様にして吸水層14を作製した。
【0062】
製造例15
吸水性材料としてのパルプ繊維100質量部とバインダー繊維としてのポリプロピレン繊維(繊維長3mm、繊度1.2dtex)0.05質量部とを混合した。得られた混合物をエアレイ法により移送コンベア上に100g/m
2の目付けで直接散布し、ブロワによる吸引力によって移送コンベアに密着させ、成形体を得た。成形体に熱風(260℃)を10秒間吹き付け、成形体の温度が190℃となるように熱処理を行い、吸水層15を製造した。
【0063】
製造例16
ポリプロピレン繊維の添加量を20質量部に変更したこと以外は製造例15と同様にして吸水層16を作製した。
【0064】
製造例17
パルプ繊維をエアレイ法により移送コンベア上に100g/m
2の目付けで直接散布し、ブロワによる吸引力によって移送コンベアに密着させ、吸水層17を得た。
【0065】
製造例18
吸水性材料としてのパルプ繊維100質量部とバインダー繊維としての部分ケン化ポリビニルアルコール繊維(ケン化度65%、繊維長3mm、繊度1.1dtex)(熱水溶解性繊維)20質量部とを混合した。得られた混合物をエアレイ法により移送コンベア上に100g/m
2の目付けで直接散布し、ブロワによる吸引力によって移送コンベアに密着させ、成形体を得た。この成形体に熱風(120℃)を10秒間吹き付け、成形体の温度が90℃となるように熱処理を行い、吸水層18を作製した。
【0066】
製造例19
吸水性材料としてのパルプ繊維100質量部とバインダー繊維としての部分ケン化ポリビニルアルコール繊維(ケン化度97%、繊維長3mm、繊度1.1dtex)(熱水溶解性繊維)20質量部とを混合した。得られた混合物をエアレイ法により移送コンベア上に100g/m
2の目付けで直接散布し、ブロワによる吸引力によって移送コンベアに密着させ、成形体を得た。この成形体に熱風(120℃)を10秒間吹き付け、成形体の温度が90℃となるように熱処理を行い、吸水層19を作製した。
【0067】
製造例20
バインダー繊維を完全ケン化ポリビニルアルコール繊維(ケン化度100%、繊維長3mm、繊度1.1dtex)に変更したこと以外は製造例19と同様にして吸水層20を製造した。
【0068】
得られた吸水層の評価結果を表1に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
製造例1〜9は吸水性材料と熱水溶解性繊維とを含有する成形体に水を付与した後、熱処理している。これらの製造例1〜9で得られた吸水層は、形状安定性に優れており、かつ、焦げ臭が生じていない。製造例10〜12はバインダー繊維として完全ケン化ポリビニルアルコール繊維を用いた場合である。これらの製造例10〜12で得られた吸水層は、吸水層は形状安定性が劣る。製造例13〜16は熱融着性のバインダー繊維を用いた場合である。これらの製造例13〜16で得られた吸水層は、成形温度を高くする必要があるため、焦げ臭が生じていた。製造例17はバインダー繊維を用いていない場合であるが、得られた吸水層は形状安定性が劣る。製造例18〜20は吸水性材料と、部分ケン化ポリビニルアルコールまたは完全ケン化ポリビニルアルコール繊維とを含有する成形体に水を付与することなく熱処理している。これらの製造例18〜20で得られた吸水層は、成形体温度(90℃)ではバインダー繊維が溶解しないため、形状安定性が劣る。
【0071】
[吸収体の製造]
製造例21
吸水性材料としてのパルプ繊維100質量部とバインダー繊維としての部分ケン化ポリビニルアルコール繊維(ケン化度97%、繊維長3mm、繊度1.1dtex)(熱水溶解性繊維)0.1質量部とを混合した。得られた混合物をエアレイ法により移送コンベア上に45g/m
2の目付けで直接散布し、ブロワによる吸引力によって移送コンベアに密着させ、成形体を得た。この成形体100質量部に対して10質量部の水を散布後、熱風(120℃)を10秒間吹き付け、成形体の温度が90℃となるように熱処理を行い、吸水層21を得た。防水シート、ティッシュペーパー、吸水層21、高吸水性樹脂(100g/m
2)、吸水層21、ティッシュペーパー、透液性シートの順に積層し、吸収体1を作製した。
【0072】
製造例22、23
バインダー繊維の添加量を表2に記載のとおりに変更したこと以外は製造例21と同様にして、吸水層22、23を作製した。これらの吸水層22、23を用いて製造例21と同様にして吸収体2、3を作製した。
【0073】
製造例24
吸水性材料としてのパルプ繊維100質量部とバインダー繊維としてのポリエチレン繊維(繊維長3mm、繊度1.2dtex)20質量部とを混合した。得られた混合物をエアレイ法により移送コンベア上に45g/m
2の目付けで直接散布し、ブロワによる吸引力によって移送コンベアに密着させ、成形体を得た。この成形体に熱風(220℃)を10秒間吹き付け、成形体の温度が150℃となるように熱処理を行い、吸水層24を得た。防水シート、ティッシュペーパー、吸水層24、高吸水性樹脂(100g/m
2)、吸水層24、ティッシュペーパー、透液性シートの順に積層し、吸収体4を得た。
【0074】
製造例25
吸水性材料としてのパルプ繊維100質量部とバインダー繊維としてポリプロピレン繊維(繊維長3mm、繊度1.2dtex)20質量部とを混合した。得られた混合物をエアレイ法により移送コンベア上に45g/m
2の目付けで直接散布し、ブロワによる吸引力によって移送コンベアに密着させ、成形体を得た。この成形体に熱風(260℃)を10秒間吹き付け、成形体の温度が190℃となるように熱処理を行い、吸水層25を得た。防水シート、ティッシュペーパー、吸水層25、高吸水性樹脂(100g/m
2)、吸水層25、ティッシュペーパー、透液性シートの順に積層し、吸収体5を得た。
【0075】
【表2】
【0076】
吸収体1〜3を比較すると、バインダー繊維の添加量が増加する程、吸収性能が低下する傾向がある。吸収体2、4,5を比較すると、バインダー繊維として熱融着性繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維)を用いたものよりも、熱水溶解性繊維(部分ケン化ポリビニルアルコール繊維)を用いたものの方が、吸収性能が高い。