特開2016-196937(P2016-196937A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-196937(P2016-196937A)
(43)【公開日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20161028BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20161028BHJP
   F16C 33/64 20060101ALI20161028BHJP
   B60B 35/02 20060101ALI20161028BHJP
【FI】
   F16C33/58
   F16C19/38
   F16C33/64
   B60B35/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-77448(P2015-77448)
(22)【出願日】2015年4月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】揚田 祐
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA53
3J701BA56
3J701BA69
3J701BA70
3J701BA73
3J701DA01
3J701DA05
3J701DA20
3J701EA02
3J701FA15
3J701GA03
3J701XB01
3J701XB03
3J701XB26
(57)【要約】
【課題】ハブ軸のフランジのインナ側側面に形成される段部の強度を高める。
【解決手段】車輪用軸受装置10は、車両インナ側の車両固定部材に固定される外輪12と、車両アウタ側の車輪が取付けられて外輪と相対回転する内輪14と、を備え、内輪14の車両アウタ側の端部には、径方向外方へ突出して車輪を取付けるためのフランジ24が一体的に形成され、外輪12のフランジ側の内周面端部に嵌合され、外輪12と内輪14との間の環状空間を密封して軸受内部空間を構成するシール部材18を有する。そして、フランジ24のインナ側側面には当該フランジ24の先端部とシール部材18が配設される位置との間において段部42が形成されており、段部42には硬化処理が施されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両インナ側の車両固定部材に固定される外輪と、車両アウタ側の車輪が取付けられて前記外輪と相対回転する内輪と、を備え、前記内輪の車両アウタ側の端部には、径方向外方へ突出して前記車輪を取付けるためのフランジが一体的に形成され、前記外輪の前記フランジ側の内周面端部に嵌合され、前記外輪と前記内輪との間の環状空間を密封して軸受内部空間を構成するシール部材が配設された車輪用軸受装置であって、
前記フランジのインナ側側面には当該フランジの先端部と前記シール部材が配設される位置との間において段部が形成されており、該段部には硬化処理が施されている車輪用軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車輪用軸受装置であって、
前記フランジのインナ側側面には、前記車輪を取付けるために形成されるボルト孔の周辺を厚肉とした厚肉部位を有しており、該厚肉部位箇所において前記段部が形成されている車輪用軸受装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車輪用軸受装置であって、
前記段部の硬化処理は、当該段部に治具を押し当てて高速回転させて硬化させる処理である車輪用軸受装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪用軸受装置に関する。特に、車輪を取付けるためのフランジを備える車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪用軸受装置は、外輪と、内輪と、転動体と、シール部材を備える。外輪は車両インナ側の車両固定部材に固定される。内輪は通常ハブ軸と称されており、車両アウタ側の車輪が取付けられる。この車輪の取付けのためにハブ軸の車両アウタ側には、径方向外方へ突出するフランジが形成されている。また、フランジより車両アウタ側には車輪の取付けに際して嵌め合わされるインロー筒部が形成されている。転動体は外輪と内輪との間に複列に配設されており、内輪のハブ軸を外輪に対して相対回転可能に支承している。シール部材は外輪と内輪との間の環状空間を封止するように配設して、軸受空間への泥水等の異物の浸入を抑制している。
【0003】
内輪を構成するハブ軸には、各種応力集中を生じる箇所があり、当該箇所には硬化処理が施される。例えば、下記特許文献1では、インロー筒部の外周面とフランジとの境界R部にショットピーニングを施して、当該R部を硬化している。また、下記特許文献2では、インロー筒部の内径R部を複合R形状として、応力分散を図り、インロー内径R部の強度向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−239100号公報
【特許文献2】特開2012−17020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者は、車輪用軸受装置において応力が集中する部位には、インロー筒部以外に、フランジの車両インナ側側面(フランジ先端部とシール部材が配設される位置との間)に段部が形成される場合には、当該段部のR部にも応力集中が生じることを見出した。上記の特許文献1、2は、いずれも、フランジの段部には着目していない。
【0006】
而して、本発明は上記した点に鑑みて創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、ハブ軸のフランジのインナ側側面に形成される段部の強度を高めることにある。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は次の手段をとる。
【0008】
本発明の車輪用軸受装置は、車両インナ側の車両固定部材に固定される外輪と、車両アウタ側の車輪が取付けられて前記外輪と相対回転する内輪と、を備え、前記内輪の車両アウタ側の端部には、径方向外方へ突出して前記車輪を取付けるためのフランジが一体的に形成され、前記外輪の前記フランジ側の内周面端部に嵌合され、前記外輪と前記内輪との間の環状空間を密封して軸受内部空間を構成するシール部材を有する。そして、前記フランジのインナ側側面には当該フランジの先端部と前記シール部材が配設される位置との間において段部が形成されており、該段部には硬化処理が施されている。
【発明の効果】
【0009】
上述した手段の本発明によれば、ハブ軸のフランジのインナ側側面に形成される段部の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態の車輪用軸受装置の全体構成を示す断面図である。
図2】フランジを車両インナ側から見た平面図である。
図3】ハブ軸における応力集中部位を示す図である。
図4】ハブ軸における焼入れ部を示す図である。
図5】ハブ軸の応力集中部位に摩擦加工による硬化処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の車輪用軸受装置の実施形態を図面を用いて説明する。
【0012】
図1は車輪用軸受装置10の全体構成を示す。車輪用軸受装置10は、外輪12と、内輪14と、転動体16と、シール部材18とを備える。外輪12の外周面における軸方向中央部には固定フランジ20が突設形成されている。固定フランジ20には図示しない車両固定部材(例えば、ナックル)が連結されて外輪12を固定状態とする。内輪14は通常ハブ軸22と称される軸部材と、内輪構成部材25とにより構成される。
【0013】
ハブ軸22は、車両アウタ側から車両インナ側へ順に、基軸部28と、大径軸部30と、小径軸部32と、を有する。この各軸部28、30、32は車両アウタ側から車両インナ側へ向けて径が縮まる段部に形成されている。ハブ軸22の基軸部28の位置にはフランジ24が径方向外方に突設形成されており、取付けボルト(ハブボルト)26により不図示の車輪が取付ける。なお、基軸部28の車両アウタ側には車輪の取付けに際して嵌め込まれるインロー筒部50が形成されている。
【0014】
外輪12と内輪14との間には複列の転動体16が配設されており、ハブ軸22を転動可能に支承している。本実施形態の転動体16は円すいころであり、車両アウタ側に配列される円すいころ16Aはハブ軸22の大径軸部30の位置に配設されている。車両インナ側に配列される円すいころ16Bは、ハブ軸22の小径軸部32に嵌合固定された内輪構成部材25の位置に配設されている。
【0015】
シール部材18は,車両アウタ側の転動体列16(16A)より車両アウタ側の位置における外輪12とハブ軸22との間に配設されている。これにより転動体16(16A,16B)が配設される外輪12と内輪14との間の環状空間(軸受内部空間)への泥水等の異物の浸入を抑制する。シール部材18はシール体34と、芯材36とを備える。シール体34は弾性部材により形成されており、鋼製の芯材36とは焼きつき等により一体的とされている。芯材36は外輪12の内筒面に嵌合固定される。シール体34の先端はシールリップ38となっており、シールリップ38はハブ軸22の回転面に摺接して軸受内部を封止する。
【0016】
図2はフランジ24を車両インナ側から見た平面図を示す。フランジ24には取付けボルト26のためのボルト孔27が5個均等に配設されて形成されている。このボルト孔27が形成された周辺の肉厚が強度を高めるために他の部位より厚く形成されている。この厚く形成された肉厚部位箇所が符号40で示されている。この肉厚部位箇所40は図2に良く示されるように、中心から一定幅で放射状に形成されている。そして、この肉厚部位箇所40の根元部には円弧状の段部42が形成されて、シール部材18が配設される基軸部28に至る形状と成っている。このような構成とするのは、取付けボルト26が配設される箇所は応力集中が生じやすいためであり、段部を円弧状とすることにより、応力を分散するためである。
【0017】
図3は発明者が実験により見出したハブ軸22における応力集中部位である。発明者は応力集中部位として、フランジ根元R部Aと、シール摺動部R部Bと、インロー筒部内径R部Cと、インロー筒部外径R部Dの4箇所を見出した。これらの箇所の応力集中対策としてこれらの箇所を硬化させて強度を高めることがある。従来から一部の箇所の対策は既に行われている。図4はハブ軸22における焼入れ部を示したものである。クロスハッチングした箇所が焼入れ部である。図4から分かるように、シール摺動部R部Bの焼き入れは従来から行われており、本実施形態でもシール摺動部R部Bは同様に焼入れを行っている。
【0018】
図5はフランジ根元R部Aと、インロー筒部内径R部Cと、インロー筒部外径R部Dの本実施形態の硬化処理を示している。これら3箇所とも、それぞれのR部に治具55を高速回転させて押し当てて、当該箇所の強度を向上させている。この治具55による硬化処理は、ハブ軸22の旋削加工の後に行う。なお、インロー筒部内径R部Cと、インロー筒部外径R部Dの治具回転による硬化処理は全周に渡って行う。フランジ根元R部Aの治具回転による硬化処理は厚肉とされた肉厚部位箇所40の範囲のみ行う。
【0019】
治具55の高速回転による摩擦加工によって、ハブ軸22の材質は鋼材であるため、鋼材の結晶が微小組織化する。すなわち、白層、ナノ結晶層が生成される。白層、ナノ結晶層はマルテンサイト組織と比較して硬い。このため上記3箇所のR部の硬度は非常に硬く処理される。これにより応力集中にも耐えることができる。
【0020】
尤も、硬化処理方法は異なるが、インロー筒部内径R部Cと、インロー筒部外径R部Dの硬化処理は、上記の背景技術で記載したように、特許文献1及び2で既に示されている。このため、これらについては本発明の対象外とした。しかし、フランジ根元R部Aについての硬化処理については、いままで見い出されていなく、本発明者のたゆまぬ実験の積み重ねの結果、初めて見い出されたものである。そして、上記の実施態様により効果を確認した。
【0021】
以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明はその他各種の形態でも実施可能なものである。
【0022】
例えば、フランジ24の車両インナ側側面に形成される段部は、フランジの先端部とシール部材が配設される位置との間に形成されるものであればよく、応力集中を生じる段部であればよい。
【0023】
また、フランジ24の全周面を肉厚構成としても良く、この場合には全周に段部が形成されるので、硬化処理も全周に行うことになる。
【0024】
また、段部の硬化処理方法は、上記実施形態の摩擦加工に限定されることなく、周知の各種硬化処理、例えばショットピーニングを用いることもできる。
【符号の説明】
【0025】
10 車輪用軸受装置
12 外輪
14 内輪
16 転動体(円すいころ)
18 シール部材
20 固定フランジ
22 ハブ軸
24 フランジ
25 内輪構成部材
26 取付けボルト(ハブボルト)
27 ボルト孔
28 基軸部
30 大径軸部
32 小径軸部
34 シール体
36 芯材
38 シールリップ
40 肉厚部位箇所
42 段部
50 インロー筒部
55 治具

図1
図2
図3
図4
図5