【課題】本発明の課題は、小型化及び軽量化を図りつつ、高度な色収差補正を実現すると共に、雰囲気温度の変化によらず良好な結像性能を維持することのできる光学系及び撮像装置を提供することにある。
【解決手段】上記課題を解決するため、回折面を含むレンズ群を少なくとも一群備え、その少なくともいずれかのレンズ群が、当該レンズ群全体と同符号で最も屈折力が大きく、所定の条件式を満足する第1のレンズと、当該レンズ群全体と同符号で所定の条件式を満足する第1のレンズ以外の第iのレンズとを備えることを特徴とする光学系及び当該光学系を備えた撮像装置を提供する。
前記回折面を含む所定のレンズ群において、当該レンズ群全体が示す屈折力と同符号の屈折力を有するレンズのうち、二番目に屈折力の大きいレンズを第2のレンズとしたとき、
前記第1のレンズ及び前記第2のレンズが以下の条件式(15)を満足する請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の光学系。
−130<dndtP1×Pw1×fw+dndtP2×Pw2×fw×107<0 ・・・(15)
但し、
「dndtP2」は、前記第2のレンズの前記dndtであり、
「Pw1」は、前記第1のレンズの屈折力であり、
「Pw2」は、前記第2のレンズの屈折力であり、
「fw」は、当該光学系が示し得る最小焦点距離である。
前記回折面を含む所定のレンズ群において、当該レンズ群全体が示す屈折力と同符号の屈折力を有するレンズのうち、二番目に屈折力の大きいレンズを第2のレンズとしたとき、
前記第1のレンズ及び前記第2のレンズが以下の条件式(16)を満足する請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の光学系。
−200<(dndtP1×Pw1+dndtP2×Pw2)×√(fw×ft)×107<100・・・(16)
但し、
「dndtP2」は、前記第2のレンズの前記dndtであり、
「Pw1」は、前記第1のレンズの屈折力であり、
「Pw2」は、前記第2のレンズの屈折力であり、
「fw」は、当該光学系が示し得る最小焦点距離であり、
「ft」は、当該光学系が示し得る最小焦点距離である。
前記回折面を含む所定のレンズ群において、当該レンズ群全体が示す屈折力と同符号の屈折力を有するレンズのうち、二番目に屈折力の大きいレンズを第2のレンズとしたとき、
前記第2のレンズが以下の条件式(17)を満足する請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の光学系。
Nd2 ≧ −0.014×νd2+2.5 ・・・(17)
但し、
「Nd2」は、前記第2のレンズのd線に対する屈折率であり、
「νd2」は、前記第2のレンズのd線に対するアッベ数である。
複数のレンズ群を備え、当該複数のレンズ群のうち少なくともいずれか一のレンズ群が前記回折面を含む所定のレンズ群であり、各レンズ群の間隔を変化させることにより変倍する変倍光学系である請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の光学系。
請求項1から請求項22のいずれか一項に記載の光学系と、当該学系の像面側に、当該光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本件発明に係る光学系及び撮像装置の実施の形態を説明する。
【0016】
1.光学系
1−1.光学系の基本構成
本実施の形態の光学系は、回折面を含むレンズ群を少なくとも一群備え、当該回折面を含むレンズ群のうち少なくともいずれかを回折面を含む所定のレンズ群とし、当該回折面を含む所定のレンズ群において、当該レンズ群全体が示す屈折力と同符号の屈折力を有するレンズのうち、最も屈折力の大きいレンズを第1のレンズとし、当該回折面を含む所定のレンズ群において、当該レンズ群全体が示す屈折力と同符号の屈折力を有するレンズのうち、前記第1のレンズ以外の少なくともいずれか一のレンズを第iのレンズとしたとき、第1のレンズが後述する条件式(1)を満足し、第iのレンズが後述する条件式(2)を満足することを特徴とする。以下、当該光学系の構成について説明する。
【0017】
1−1−1.回折面を含むレンズ群
まず、回折面を含むレンズ群について説明する。回折面を含むレンズ群とは、当該レンズ群を構成する光学要素のうち、少なくともいずれか一の光学要素の光学面が回折面であることを意味する。
【0018】
ここで、回折面は下記式で表される位相差関数により規定される回折格子構造を有するものとする。例えば、硝材製レンズ、プラスチック製レンズ等の光学要素の光学面に、切削法、フォトリソグラフィー法、モールド法等により、回折格子構造を形成することにより、回折光学素子を得ることができる。また、上記光学要素の光学面(球面/非球面)に回折格子構造を有する一層又は複数層の樹脂層を設け、当該樹脂層により光学面に回折格子構造が付与された複層回折光学素子であってもよい。本件出願では、このような回折光学素子を含むレンズ群を回折面を含むレンズ群と称する。
【0020】
但し、上記式において、φ(h)は位相差関数であり、「m」は回折次数であり、「λ」は規格化波長である。また、「C1」、「C2」、「C3」、「C4」はそれぞれ回折面係数であり、「h」は同径方向における光軸からの長さである。なお、規格化波長は、当該光学系の使用波長域内の波長であり、例えば、可視光波長域内の波長であることが好ましい。
【0021】
回折光学素子として、空気層と接する側の面にのみ上記回折面を備える単層回折光学素子を用いることができる。また、例えば、上述した態様の複層回折光学素子の他、接合レンズの接合面を上記回折面とするなど、一の硝材層と、他の硝材層との間に回折面が形成された積層型の複層回折光学素子を用いることもできる。単層回折光学素子よりも複層回折光学素子を用いた方が、より広い波長範囲において色収差等を良好に補正することができる。但し、複層回折光学素子において、硝材層は光学ガラス材からなる層に限らず、光学プラスチック等の光学ガラス以外の光学素子形成材からなる層であってもよい。
【0022】
また、当該回折面は、球面であってもよく、非球面であってもよい。回折面を非球面とすることにより、より少ない枚数の光学要素で色収差等の諸収差を更に良好に補正することができる。
【0023】
本実施の形態の光学系では、上記回折面を含む所定のレンズ群を備えるため、回折面を備えない通常の屈折光学系と比較すると、少ない光学要素で色収差等を良好に補正することができる。このため、当該光学系の小型化及び軽量化を図りつつ、高度な色収差補正を実現することができる。
【0024】
また、当該光学系を回折面を含む構成とすることにより、光学系全体の温度特性を改善することもできる。具体的には、光学系が回折面を備えることにより、上述のように少ない光学要素で色収差等の補正を良好に行うことができる。このため、色収差等の補正には有効であるが温度特性の悪い硝材、例えば、異常低分散材等からなる光学要素の枚数を減らすことができる。そして、回折面を含む所定のレンズ群が、次に説明する条件式(1)を満足する第1のレンズと条件式(2)を満足する第iのレンズとを含む構成とすることにより、光学系全体において、雰囲気温度の変化によらず良好な結像性能を維持することができる。
【0025】
ここで、回折面を含む所定のレンズ群全体が示す屈折力は、正であってもよく、負であってもよく、特に限定されるものではないが、色収差等の補正がより良好になるという観点から正の屈折力を有することが好ましい。
【0026】
また、当該光学系内に複数の回折面が含まれる場合、各回折面をそれぞれ異なるレンズ群に配置することが好ましい。例えば、変倍光学系は複数のレンズ群を備え、各レンズ群の間隔に変化させることにより焦点距離を変化させる。従って、各レンズ群の位置によって、回折面により色収差等の諸収差を補正する上で、最も効果的な配置が異なる。このため、変倍光学系では複数の回折面を含む場合、異なるレンズ群に各回折面を配置することが、より結像性能の高い光学系を得る上で好ましい。
【0027】
なお、当該光学系は、回折面を少なくとも一面含むレンズ群が少なくとも一群あればよく、一つの回折面を含むレンズ群を一又は複数備えていてもよいし、複数の回折面を含むレンズ群を一又は複数備えていてもよい。回折面を含むレンズ群が複数ある場合、そのいずれか一のレンズ群が上記回折面を含む所定のレンズ群であればよく、二以上のレンズ群が上記回折面を含むレンズ群であってもよく、回折面を含む全てのレンズ群が上記回折面を含む所定のレンズ群であってもよい。
【0028】
(1)レンズ構成
次に、回折面を含む所定のレンズ群のレンズ構成について説明する。当該所定のレンズ群は、上記第1のレンズと上記第iのレンズの少なくとも2枚のレンズを含み、当該レンズ群内に回折面が含まれるものであれば、その他の具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。第1のレンズ及び/又は第iのレンズの光学面が上記回折面であってもよいし、当該レンズ群を構成する第1のレンズ及び第iのレンズ以外のレンズの光学面が上記回折面であってもよい。当該回折面を含む所定のレンズ群の具体的なレンズ構成は特に限定されるものではないが、より良好な色収差補正を行うと共に、当該光学系の大型化・重量化を防止するという観点から、当該レンズ群を構成するレンズ枚数は3枚以上6枚以下であることが好ましい。
【0029】
また、当該レンズ群は、当該レンズ群全体と異なる符号の屈折力を有するレンズを含むことも好ましい。第1のレンズ群及び第iのレンズ群は、当該回折面を含む所定のレンズ群全体が示す屈折力と同符号の屈折力を有する。このため、第1のレンズ及び第iのレンズと異なる符号の屈折力を有するレンズを含む構成とすることにより、色収差等の諸収差をさらに良好に補正することができ、且つ、雰囲気温度が変化したときにも第1のレンズ及び第iのレンズとは符号の異なる屈折力を有するレンズにより収差を相殺することができ、収差変動を抑制することができる。
【0030】
(2)第1のレンズ
次に、第1のレンズについて説明する。第1のレンズは、上記回折面を含む所定のレンズ群を構成する光学要素の一つで、当該所定のレンズ群と同符号の屈折力を有するレンズのうち、最も屈折力の大きいレンズである。すなわち、回折面を含む所定のレンズ群全体が示す屈折力が正である場合、第1のレンズの屈折力は正であり、当該回折面を含む所定のレンズ群全体が示す屈折力が負である場合、第1のレンズの屈折力は負である。第1のレンズは、当該所定のレンズ群全体と同符号であり、且つ、最大の屈折力を有するレンズであるため、雰囲気温度が変化したときに、第1のレンズの光学特性が変化すると、当該回折面を含むレンズ群の光学特性も変化する恐れが高い。その結果、当該光学系の光学特性も変化し、特に、焦点距離、ピント位置、バックフォーカス量などが変化すると、像面に正しく被写体像を結像することができなくなり、結像性能が著しく低下する恐れがある。そこで、本実施の形態の光学系では、第1のレンズを条件式(1)を満足するレンズとすることにより、後述するとおり、雰囲気温度の変化に伴う当該第1のレンズの光学特性の変化を抑制することができ、当該光学系の焦点距離、ピント位置、バックフォーカス量等の変化を抑制して、高い結像性能を維持することができる。なお、条件式(1)については、後で詳細に説明する。
【0031】
(3)第iのレンズ
第iのレンズは、第1のレンズと同様に、上記回折面を含む所定のレンズ群を構成する光学要素の一つで、当該所定のレンズ群全体が示す屈折力と同符号の屈折力を有する。第iのレンズの屈折力は第1のレンズよりも小さい。このため、雰囲気温度が変化したときに当該第iのレンズの光学特性が変化しても、上記回折面を含む所定のレンズ群の光学特性の変化を抑制することができる。また、第iのレンズを条件式(2)を満足するレンズとすることにより、後述するとおり、色収差等の補正をより良好に行うことができ、結像性能の高い光学系を得ることができる。なお、条件式(2)についても、後で詳細に説明する。
【0032】
第iのレンズは、上記回折面を含む所定のレンズ群全体が示す屈折力と同符号の屈折力を有し、第1のレンズ以外のレンズであれば、特に限定されるものではない。しかしながら、色収差等の補正をさらに良好に行い、結像性能のより高い光学系を得ると共に、当該レンズ群を構成するレンズ枚数の増加を抑制するという観点から、当該第iのレンズは、上記同符号の屈折力を有するレンズのうち、第1のレンズの次に屈折力の大きいレンズであることが色収差を改善する上でより好ましい。すなわち、第iのレンズは、上記回折面を含む所定のレンズ群全体が示す屈折力と同符号の屈折力を有するレンズのうち、二番目に屈折力の大きいレンズ(以下、「第2のレンズ」と称する。)であることが好ましい。
【0033】
但し、本実施の形態において、レンズの焦点距離及び屈折力は、当該レンズが接合レンズの一部を構成する場合であっても、当該レンズの両面が空気層に接する単レンズであると仮定して求めた値を意味し、当該レンズの各面の曲率半径(R
1、R
2)と、当該レンズ材料自体の屈折率(n)と、当該レンズの中心厚(tc)に基づいて求めた値を用いるものとする。具体的には下記式により求めた値を用いる。なお、屈折力は焦点距離(f)の逆数(1/f)である。
【0035】
1−1−2.他のレンズ群
当該光学系は、上記回折面を含むレンズ群以外に、回折面を含まないレンズ群を備えていてもよい。回折面を含まないレンズ群の屈折力の符号やレンズ構成などは特に限定されるものではなく、適宜、当該光学系に要求される光学特性に応じて適切な態様を採用することができる。
【0037】
次に、当該光学系のレンズ群構成例について説明する。当該光学系は焦点距離が固定の単焦点光学系であってもよいし、焦点距離が可変の変倍光学系であってもよい。いずれの場合も、具体的なレンズ群構成等は特に限定されるものではないが、以下の構成例が挙げられる。なお、本件出願において変倍光学系には、ズームレンズ、バリフォーカルレンズ等が含まれる。
【0038】
1−2−1.単焦点光学系
当該光学系が単焦点光学系である場合、2群構成、3群構成等の種々のレンズ群構成を採用することができ、レンズ群の数、パワー配置、各レンズ群の具体的なレンズ構成等は特に限定されるものではない。例えば、物体側から順に、負の屈折力を有するレンズ群と、正の屈折力を有するレンズ群の二群構成、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ群と、正の屈折力を有するレンズ群の二群構成、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ群、正の屈折力を有するレンズ群、負の屈折力を有するレンズ群の三群構成、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ群、負の屈折力を有するレンズ群、正の屈折力を有するレンズ群の三群構成、物体側から順に、負の屈折力を有するレンズ群、正の屈折力を有するレンズ群、正の屈折力を有するレンズ群の三群構成等が挙げられる。
【0039】
これらのいずれの構成を採用する場合であっても、上述の観点から、正の屈折力を有するレンズ群の少なくともいずれかが上記回折面を含む所定のレンズ群であることが好ましい。また、当該単焦点光学系が正の屈折力を有するレンズ群を複数備え、そのいずれかを上記回折面を含む所定のレンズ群とする場合、当該単焦点光学系において軸上光線が最も大きな光束径で通過する正の屈折力を有するレンズ群が上記回折面を含むレンズ群であることが好ましい。軸上光線が最も大きな光束径で通過する正の屈折力を有するレンズ群に回折面を設けることにより、各波長域の光線についてそれぞれ最も効率良く諸収差を補正することができる。
【0040】
1−2−2.変倍光学系
当該光学系が変倍光学系である場合、複数のレンズ群を備え、広角端から望遠端への変倍時に各レンズ群間の間隔を変化させることにより、焦点距離を変化させるものであれば、レンズ群の数やパワー配置、各レンズ群の具体的なレンズ構成、変倍時の各レンズ群の動作等は特に限定されるものではない。
【0041】
また、当該変倍光学系についても、単焦点光学系の場合と同様の観点から、正の屈折力を有するレンズ群の少なくともいずれかが上記回折面を含む所定のレンズ群であることが好ましい。また、当該変倍光学系が正の屈折力を有するレンズ群を複数備え、そのいずれかを上記回折面を含む所定のレンズ群とする場合、当該変倍光学系において軸上光線が最も大きな光束径で通過する正の屈折力を有するレンズ群が上記回折面を含むレンズ群であることが好ましい。軸上光線が最も大きな光束径で通過する正の屈折力を有するレンズ群に回折面を設けることにより、各波長域の光線についてそれぞれ最も効率良く諸収差を補正することができる。但し、変倍光学系の場合、一般に、広角端と望遠端とでは、軸上光線が最も大きな光束径で通過するレンズ群が異なる。従って、変倍域全域において色収差をはじめとする諸収差の補正が良好になるという観点から、広角端において軸上光線が最も大きな光束径で通過する正の屈折力を有するレンズ群と、望遠端において軸上光線が最も大きな光束径で通過する正の屈折力を有するレンズ群とのそれぞれに回折面が含まれることがより好ましい。なお、回折面を含むレンズ群を複数備える場合、その少なくともいずれか一のレンズ群が上記第1のレンズ及び第iのレンズを含めばよい。しかしながら、望遠端では、被写体像が広角端よりも大きくなるため、広角端と比較するとピント位置等のズレや諸収差の変動が結像性能に大きく影響を与える。このため、望遠端において軸上光線が最も大きな光束径で通過する正の屈折力を有するレンズ群を上記回折面を含む所定のレンズ群とすることが好ましい。以下、変倍光学系の具体的な構成例をいくつか列挙する。
【0042】
(1)2群構成
当該光学系を2群構成の変倍光学系とする場合、上記回折面を含む正の屈折力を有するレンズ群を少なくとも一群備え、広角端から望遠端への変倍時に第1レンズ群と第2レンズ群との間隔を変化させるように各レンズ群を相対的に移動させることが好ましい。例えば、物体側から順に、負の屈折力を有する第一レンズ群と、回折面を含む正の屈折力を有する第二レンズ群とを備えた負・正の2群構成とすることができる。この場合、広角端から望遠端への変倍時に、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔が小さくなるように第1レンズ群及び/又は第2レンズ群を移動させることが好ましい。
【0043】
(2)3群構成
当該光学系を3群構成の変倍光学系とする場合、上記回折面を含む正の屈折力を有するレンズ群を少なくとも一群備え、広角端から望遠端への変倍時に各レンズ群の間隔を変化させるように各レンズ群を相対的に移動させることが好ましい。
【0044】
具体的には、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正又は負の屈折力を有する第3レンズ群とを備えた負・正・正又は負・正・負の3群構成とすることができる。この場合、広角端から望遠端への変倍時に第3レンズ群を固定し、第1レンズ群及び/又は第2レンズ群を移動させることが好ましい。なお、第3レンズ群は屈折力は限りなく小さくてもよい。このような構成の変倍光学系では、雰囲気温度が変化したときも諸収差の変動をより良好に抑制することができるという観点から、第2レンズ群が上記回折面を含む所定のレンズ群であることが好ましい。
【0045】
また、回折面を含む正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とを備えた正・負・正の3群構成とすることができる。この場合、広角端から望遠端への変倍時に第1レンズ群を固定し、第2レンズ群及び/又は第3レンズ群を移動させることが好ましい。このような構成の変倍光学系では、雰囲気温度が変化したときも変倍域全域において諸収差の変動をより良好に抑制して、良好な結像性能を維持することができるという観点から、第1レンズ群及び/又は第2レンズ群が上記回折面を含む所定のレンズ群であることが好ましい。
【0046】
(3)4群構成
当該光学系を4群構成の変倍光学系とする場合、上記回折面を含む正の屈折力を有するレンズ群を少なくとも一群備え、広角端から望遠端への変倍時に各レンズ群の間隔を変化させるように各レンズ群を相対的に移動させることが好ましい。
【0047】
具体的には、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを備えた正・負・正・正の4群構成とすることができる。この場合、広角端から望遠端への変倍時に第1レンズ群を固定し、他のレンズ群のうち少なくともいずれか一のレンズ群を移動させることが好ましい。当該構成の変倍光学系では、可視光波長域から近赤外波長域まで広い波長範囲において諸収差等をより良好に補正することができるという観点から、第1レンズ群、第3レンズ群及び第4レンズ群のうち、少なくともいずれか一のレンズ群が上記回折面を含む所定のレンズ群であることが好ましい。
【0048】
また、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを備えた負・正・正・正の4群構成とすることもできる。この場合、広角端から望遠端への変倍時に第4レンズ群を固定し、他のレンズ群のうち少なくともいずれか一のレンズ群を移動させることが好ましい。当該構成の変倍光学系では、雰囲気温度が変化したときも諸収差の変動をより良好に抑制して、良好な結像性能を維持することができるという観点から、第2レンズ群が上記回折面を含む所定のレンズ群であることが好ましい。
【0049】
(4)5群構成
当該光学系を5群構成の変倍光学系とする場合、上記回折面を含む正の屈折力を有するレンズ群を少なくとも一群備え、広角端から望遠端への変倍時に各レンズ群の間隔を変化させるように各レンズ群を相対的に移動させることが好ましい。
【0050】
具体的には、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群と、負の屈折力を有する第5レンズ群とを備えた正・負・正・正・負の5群構成とすることができる。この場合、広角端から望遠端への変倍時に第1レンズ群を固定し、他のレンズ群のうち少なくともいずれか一のレンズ群を移動させることが好ましい。当該構成の変倍光学系では、雰囲気温度が変化したときも諸収差の変動をより良好に抑制して、良好な結像性能を維持することができるという観点から、第1レンズ群、第3レンズ群及び第4レンズ群のうち、少なくともいずれか一のレンズ群が上記回折面を含む所定のレンズ群であることが好ましい。
【0051】
また、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群と、正の屈折力を有する第5レンズ群とを備えた正・負・正・正・正の5群構成とすることができる。この場合、広角端から望遠端への変倍時に、少なくともいずれか一のレンズ群を移動させることが好ましい。当該構成の変倍光学系では、雰囲気温度が変化したときも諸収差の変動をより良好に抑制して、良好な結像性能を維持することができるという観点から、第4レンズ群が上記回折面を含む所定のレンズ群であることが好ましい。
【0052】
なお、当該光学系において、単焦点光学系及び変倍光学系のいずれの場合においても最も物体側に配置されると共に正の屈折力を有する第一レンズ群を備え、当該第一レンズ群は、二枚のレンズからなる接合レンズを少なくとも一つ含むことも好ましい。当該第一レンズ群を上記接合レンズを少なくとも一つ含む構成とすることにより、当該光学系が示す最大焦点距離において軸上色収差の補正を良好に行うことができる。また、当該光学系が示す最小焦点距離において倍率色収差の補正を良好に行うことができる。このとき、接合レンズを構成するレンズのうち、いずれかが異常低分散材からなる場合、より一層良好に上記色収差の補正を行うことができる。
【0053】
また、第一レンズ群は、上記接合レンズの他に、両面が空気層に接する単レンズを含むことも好ましい。この場合、当該光学系が示す最小焦点距離において、像面湾曲の補正を良好に行うことができる。
【0054】
1−3.防振群
なお、本件発明に係る光学系が単焦点光学系及び変倍光学系のいずれの場合であっても、当該光学系に含まれるレンズ群のうち、いずれか一のレンズ群の全部又は一部を光軸に垂直方向に移動させて、撮像時の振動等に起因する像ブレ等を補正する防振群として用いてもよい。
【0055】
1−4.条件式
次に、本件発明に係る光学系において、上述したとおり、第1のレンズは以下の条件式(1)を満足し、第iのレンズは以下の条件式(2)を満足する。また、当該光学系は、後述する条件式(3)から条件式(19)を満足することが好ましい。以下、各条件式について、順に説明する。
【0056】
dndtP1×10
6 > −5 ・・・(1)
Ndi ≧ −0.014×νdi+2.5 ・・・(2)
【0057】
但し、「dndt」は20℃以上40℃以下の温度範囲における632.8nmの波長の光線に対する真空中におけるレンズの絶対屈折率の温度係数(absolutedn/dT)であり、「dndtP1」は第1のレンズのdndtであり、「Ndi」は第iのレンズのd線に対する屈折率であり、「νdi」は前記第iのレンズのd線に対するアッベ数であり、「d線」は、587.56nmの波長の光線である。
【0058】
1−4−1.条件式(1)
条件式(1)は、第1のレンズが満足すべき条件である。条件式(1)を満足する場合、雰囲気温度が変化したときの単位温度あたりの当該第1のレンズの屈折率の変化量が小さい。上述したとおり、第1のレンズは、当該所定のレンズ群と同符号の屈折力を有するレンズのうち、最も屈折力の大きいレンズである。条件式(1)を満足するレンズは、雰囲気温度が変化したときの屈折率の変化が小さい。このため、第1のレンズを条件式(1)を満足するレンズとすることにより、雰囲気温度が変化したときに第1のレンズの光学特性の変化を抑制することができる。その結果、当該光学系の光学特性、特に、焦点距離、ピント位置、バックフォーカス量等の変化を抑制することができる。また、球面収差の変動を良好に抑制することができる。これらのことから、雰囲気温度が変化したときも、当該光学系の結像性能を維持することができる。
【0059】
第1のレンズが条件式(1)を満足しない場合、雰囲気温度が変化したときの第1のレンズの屈折率の変化量が条件式(1)を満足する場合と比較すると大きくなる。第1のレンズは、当該回折面を含む所定のレンズ群において最も屈折力の大きいレンズであるため、雰囲気温度の変化によって当該第1のレンズの屈折率が変化すると、当該回折面を含む所定のレンズ群の焦点距離等が変化し、その結果、当該光学系の焦点距離、ピント位置、バックフォーカス量などが変化する恐れが高くなる。また、球面収差の変動も大きくなる。そのため、雰囲気温度によっては、像面に正しく被写体像を結像することができなくなり、結像性能が著しく低下する可能性があり好ましくない。
【0060】
これらの効果を得る上で、第1のレンズは以下の条件式(1−a)を満足することがより好ましい。
【0061】
dndtP1×10
6 > −4.5 ・・・(1−a)
【0062】
1−4−2.条件式(2)
条件式(2)は、第iのレンズを構成する材料(硝材)の光学特性に関する式である。硝材のアッベ数を横軸とし、縦軸をd線に対するその硝材の屈折率とした硝材特性図において、「−0.014×νdi+2.5」で表される直線上、或いは、その直線よりも大きい屈折率を示す硝材からなる第iのレンズを含むことで、色収差等の補正をより良好に行うことができ、高い結像性能を有する光学系を得ることができる。ここで、条件式(2)を満足する硝材は、いわゆる異常低分散材に該当するものが多く、雰囲気温度が変化したときに光学特性が変化する恐れが高い。しかしながら、上述したとおり、第iのレンズの屈折力は、第1のレンズの屈折力よりも小さい。このため、雰囲気温度が変化したときに当該第iのレンズの光学特性が変化しても、当該光学系の光学特性の変化を抑制することができ、高い結像性能を維持することができる。
【0063】
これに対して、条件式(2)を満足する第iのレンズを含まない場合、色収差等の補正が不十分になる恐れがあり、結像性能の高い光学系を得ることが困難になる。
【0064】
1−4−3.条件式(3)
当該光学系において、第1のレンズが以下の条件式(3)を満足することが好ましい。
【0065】
Nd1 < −0.02×νd1+2.95 ・・・(3)
但し、「Nd1」は、前記第1のレンズのd線に対する屈折率であり、「νd1」は、前記第1のレンズのd線に対するアッベ数である。
【0066】
条件式(3)は、条件式(2)と同様の式であり、第1のレンズの硝材に関する式である。第1のレンズが条件式(3)を満足する場合、雰囲気温度が変化しても第1のレンズの光学特性がより変化しにくく、当該光学系の結像性能をより良好に維持することができる。
【0067】
第1のレンズが条件式(3)を満足しない場合、第1のレンズの屈折力は大きいため、条件式(1)において述べた理由と同様の理由から、雰囲気温度によっては、像面に正しく被写体像を結像することができなくなる場合があり、結像性能が低下する恐れがあるため好ましくない。
【0068】
これらの効果を得る上で、第1のレンズは以下の条件式(3−a)を満足することがより好ましい。
【0069】
Ndi < −0.014×νdi+2.5 ・・・(3−a)
【0070】
1−4−4.条件式(4)
当該光学系において、第1のレンズが以下の条件式(4)を満足することが好ましい。
【0071】
αP1×10
7 < 120 ・・・(4)
但し、「αP1」は、前記第1のレンズの0℃以上40℃以下の温度範囲を含む所定の温度範囲における平均線膨張係数αの値である。ここで、所定の温度範囲は、例えば、−30℃以上70℃以下の温度範囲とすることができ、当該温度範囲における平均膨張係数であることが好ましい。−30℃以上70℃以下の温度範囲における平均線膨張係数α(−30/70)の値が不明である場合は、0℃以上40℃以下の温度範囲を含み、−50℃以上90℃以下の任意の温度範囲における平均膨張係数αを用いてもよい。
【0072】
条件式(4)も第1のレンズの硝材に関する式である。第1のレンズが条件式(4)を満足する場合、−30℃以上70℃以下の温度範囲における線膨張係数が小さいため、雰囲気温度が変化しても、第1のレンズの厚み等の変化を抑制することができる。このため、雰囲気温度が変化しても、第1のレンズの屈折力の変動や、第1のレンズと、他のレンズとのレンズ間隔の変動を抑制することができ、これらの変動に伴うピント位置やバックフォーカス量のずれを抑制することができる。その結果、雰囲気温度が変化したときも当該光学系の結像性能をより良好に維持することができる。
【0073】
これらの効果を得る上で、第1のレンズは以下の条件式(4−a)を満足することがより好ましく、条件式(4−b)を満足することがさらに好ましいい。
【0074】
αP1×10
7 < 100 ・・・(4−a)
αP1×10
7 < 90 ・・・(4−b)
【0075】
1−4−5.条件式(5)
当該光学系において、上記回折面を含む所定のレンズ群が以下の条件式(5)を満足することが好ましい。
【0076】
−65 < dndtP1×Fg×Pw1×10
7 < 65 ・・・(5)
但し、「Fg」は、上記回折面を含む所定のレンズ群の焦点距離であり、「Pw1」は、第1のレンズの屈折力である。
【0077】
条件式(5)は、第1のレンズの単位温度あたりの屈折率の変化量と、上記回折面を含む所定のレンズ群の焦点距離と、第1のレンズの屈折力とに関する式である。条件式(5)を満足する場合、第1のレンズの単位温度あたりの屈折率変化及び屈折力の値が、当該回折面を含む所定のレンズ群の焦点距離に対して適正な範囲内にあり、雰囲気温度の変化に伴う当該光学系のピント位置やバックフォーカス量のずれをより良好に抑制することができ、球面収差の変動もより良好に抑制することができる。その結果、雰囲気温度が変化したときも当該光学系の結像性能をより良好に維持することができる。
【0078】
これらの効果を得る上で、上記回折面を含む所定のレンズ群は以下の条件式(5−a)を満足することがより好ましい。
【0079】
−60 < dndtP1×Fg×Pw1×10
7 < 60 ・・・(5−a)
【0080】
また、当該光学系が2群構成の変倍光学系である場合、上記回折面を含む所定のレンズ群は以下の条件式(5−b)を満足することが上記効果を得る上でさらに好ましい。
−25 < dndtP1×Fg×Pw1×10
7 < 25 ・・・(5−b)
【0081】
1−4−6.条件式(6)
当該光学系において、上記回折面を含む所定のレンズ群は、第1のレンズ及び第iのレンズの他に、少なくとも1枚のレンズを備え、以下の条件式(6)を満足することが好ましい。
【0082】
0 < Σdoe{νdx/fx}×ft ≦ 150 ・・・(6)
【0083】
但し、「Σdoe{νdx/fx}」は、上記回折面を含む所定のレンズ群を構成する各レンズの{νd/fi}の値の和であり、「νdx」は、上記回折面を含む所定のレンズ群を構成する各レンズのd線に対するアッベ数であり、「fx」は、上記回折面を含むレンズ群を構成する各レンズの焦点距離であり、「ft」は、当該光学系が示し得る最大焦点距離である。
【0084】
上記回折面を含む所定のレンズ群が第1のレンズ及び第iのレンズの他に、少なくとも1枚のレンズを備え、上記回折面を含む所定のレンズ群を構成する各レンズのd線に対するアッベ数と、焦点距離等が条件式(6)を満足する場合、雰囲気温度が変化したときの諸収差の変動がより小さくなる傾向があり、結像性能をより良好に維持することができる。
【0085】
これらの効果を得る上で、当該光学系は以下の条件式(6−a)を満足することがより好ましい(但し、2群構成の変倍光学系である場合を除く)。
【0086】
20 < Σdoe{νdx/fx}×ft ≦ 130 ・・・(6−a)
【0087】
当該光学系が2群構成の変倍光学系である場合、上記効果を得る上で、当該光学系は以下の条件式(6−b)を満足することが好ましく、以下の条件式(6−c)を満足することがより好ましい。
【0088】
0 < Σdoe{νdx/fx}×ft ≦ 130 ・・・(6−b)
0 < Σdoe{νdx/fx}×ft ≦ 35 ・・・(6−c)
【0089】
1−4−7.条件式(7)
上記回折面を上述した位相差関数式φ(h)で表したときに、当該光学系は以下の条件式(7)を満足することが好ましい。
【0090】
−25 < C01×Fg×1000 < 5 ・・・(7)
但し、「C01」は上述のとおり回折面係数であり、「h」は同径方向における光軸からの長さであり、「Fg」は上記回折面を含む所定のレンズ群の焦点距離である。
【0091】
条件式(7)は、回折面の形状と、当該回折面を含む所定のレンズ群の焦点距離と、に関する式である。条件式(7)を満足する場合、色収差等の補正をより良好に行うことができ、より結像性能の高い光学系を得ることができる。なお、回折面による近軸的な一次回折光の焦点距離(fD)はfD=−1/(2×C01)で表すことができる。
【0092】
1−4−8.条件式(8)
また、上記回折面を上述した位相差関数式φ(h)で表したときに、当該光学系は以下の条件式(8)を満足することが好ましい。
【0093】
−1.5 < C01×tan(ωw)×fw×1000 < 0・・・(8)
但し、「C01」は、上述のとおり回折面係数であり、「ωw」は、当該光学系が示し得る最小焦点距離における半画角であり、「fw」は当該光学系が示し得る最小焦点距離である。なお、当該光学系が示し得る最小焦点距離とは、当該光学系が単焦点光学系である場合は当該光学系の焦点距離であり、当該光学系が変倍光学系である場合には広角端における当該光学系の焦点距離である。
【0094】
条件式(8)は、回折面の形状と、当該光学系が示し得る最小焦点距離と、そのときの画角とに関する式である。条件式(8)を満足する場合、当該光学系が示し得る最小焦点距離における色収差補正をより良好に行うことができる。
【0095】
1−4−9.条件式(9)
当該光学系は、以下の条件式(9)を満足することが好ましい。
【0096】
−0.05≦ Δ(d−s)/f ≦ 0.05・・・(9)
但し、「f」は、当該光学系全系が示し得る任意の焦点距離であり、「Δ(d−s)」は、当該光学系全系が示し得る任意の焦点距離におけるd線に対するs線の近軸結像位置であり、「s線」は、852.11nmの波長の光線である。
【0097】
ここで、当該光学系が変倍光学系である場合、以下の条件式(9−a)及び/又は条件式(9−b)を満足することがより好ましい。
【0098】
−0.05≦ WΔ(d−s)/fW ≦ 0.05・・・(9−a)
−0.01≦ TΔ(d−s)/fT ≦ 0.01・・・(9−b)
【0099】
但し、「fW」は広角端における当該光学系全系の焦点距離であり、「fT」は望遠端における当該光学系全系の焦点距離であり、「WΔ(d−s)」は広角端におけるd線に対するs線の近軸結像位置であり、「TΔ(d−s)」は望遠端におけるd線に対するs線の近軸結像位置であり、「d線」は上述したとおりであり、「s線」は852.11nmの波長の光線である。
【0100】
条件式(9)を満足する場合、可視光波長域の光線であるd線の近軸結像位置と、近赤外波長域の光線であるs線の近軸結像位置との差(ピントズレ)が微小であるため、当該光学系が使用する光線の波長が可視光波長域と近赤外波長域との間で変化した場合もピント位置が変化せず、諸収差の変動を抑制することができる。従って、条件式(9)を満足する光学系とすることにより、雰囲気温度が変化した場合に加えて、当該光学系が使用する光線の波長が可視光波長域と近赤外波長域との間で変化した場合も、ピント位置やバックフォーカス量のずれなどを抑制して、高い結像性能を維持することができる。
【0101】
当該光学系が変倍光学系である場合、条件式(9)に加えて、条件式(9−a)及び/又は条件式(9−b)を満足させることにより、変倍光学系が示す任意の焦点距離において、使用する光線の波長が可視光波長域と、近赤外波長域との間で変化した場合も、ピント位置の変化を防止し、諸収差の変動を抑制することができる。すなわち、当該変倍光学系の変倍域全域において、雰囲気温度が変化した場合に加えて、当該光学系が使用する光線の波長が可視光波長域と近赤外波長域との間で変化した場合も、ピント位置やバックフォーカス量のずれなどを抑制して、高い結像性能を維持することができる。
【0102】
これらの効果を得る上で、当該光学系が変倍光学系である場合、以下の条件式(9−a)’及び条件式(9−b)’を満足することがより好ましい。
【0103】
−0.02 ≦ WΔ(d−s)/fW ≦ 0.02 ・・・(9−a)’
−0.005≦ TΔ(d−s)/fT ≦ 0.005・・・(9−b)’
【0104】
なお、条件式(9)は、条件式(9−a)において、「f」が広角端における焦点距離である場合、当該条件式(9)と同一の式となる。また、望遠端では、被写体像が広角端よりも大きくなるため、広角端と比較すると上記近軸結像位置の差が結像性能に与える影響が大きくなる。このため、望遠端において条件式(9−b)を満足させることにより、使用する光線の波長域が変化した場合も、被写体像の輪郭が不鮮明になるのを防止することができ、変倍域全域において良好な結像性能を有することができる。
【0105】
1−4−10.条件式(10)
当該光学系において、回折面を有するレンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0106】
−3.0≦Σ{θCs/(fd×νd)}/Σ{1/(fd×νd)}≦3.0・・・(10)
【0107】
但し、「θCs」=「(nC−ns)/(nF−nC)」であり、「nC」は、C線(656.27nm)に対する上記回折面を有するレンズの屈折率であり、「ns」は、s線に対する上記回折面を有するレンズの屈折率であり、「nF」はF線(486.13nm)に対する上記回折面を有するレンズの屈折率であり、「fd」はd線に対する上記回折面を有するレンズの焦点距離であり、「νd」はd線に対する上記回折面を有するレンズのアッベ数である。
【0108】
ここで、「回折面を有するレンズ」は、上記回折光学素子を意味するものとし、当該回折光学素子は単層回折光学素子及び複層回折光学素子のいずれの場合も含むものとする。また、「回折面を有するレンズの屈折率」は、当該回折光学素子の屈折率を意味し、複層回折光学素子の場合、回折面よりも像面側に配置される層(レンズ)の屈折率を意味するものとする。
【0109】
条件式(10)は、回折光学素子の可視光波長域内における屈折力の変化率と、C線からs線における屈折力の変化率とに関する式である。条件式(10)を満足する場合、当該回折光学素子の異常分散性がC線からs線までの波長域において低く、これらの波長域において、一次スペクトルは勿論、二次スペクトルについても、色収差補正を良好に行うことができる。従って、広い波長範囲において高い結像性能を有する光学系を得ることができる。
【0110】
これに対して、条件式(10)を満足しない場合、当該回折光学素子がC線からs線までの波長域において異常分散性を示す範囲があり、C線〜s線の波長域において二次スペクトルの補正が困難になり、これらの波長域では良好な結像性能を得ることが困難になる場合がある。
【0111】
上記効果を得る上で、下記の条件式(10−a)を満足することがより好ましい。
【0112】
−1.0≦Σ{θCs/(fd×νd)}/Σ{1/(fd×νd)}≦2.0・・・(10−a)
【0113】
なお、当該光学系に複数の回折面が含まれる場合、少なくともいずれか一の回折面に関して、当該条件式(10)を満足することが好ましく、全ての回折面に関して、当該条件式(10)を満足することがより好ましい。条件式(10−a)についても同様である。また、第1のレンズ及び第iのレンズを含まない回折面を含むレンズ群に配置された回折面についても同様である。
【0114】
1−4−11.条件式(11)
当該光学系において、回折面を有するレンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。但し、当該回折面を有するレンズは、条件式(11)の場合と同じである。
【0115】
−15≦Σ{1/(fd×νd)}/Σ{θgF/(fd×νd)}≦15・・・(11)
【0116】
但し、「θgF」=「(ng−nF)/(nF−nC)」であり、「ng」はg線(435.84nm)に対する上記回折面を有するレンズの屈折率であり、「nF」は上述したとおりであり、「nC」はC線(656.27nm)に対する上記回折面を有するレンズの屈折率であり、「ns」、「fd」、「νd」はそれぞれ上述したとおりである。
【0117】
条件式(11)は、回折光学素子の可視光波長域内における屈折力の変化率と、F線からg線における屈折力の変化率との差とに関する式である。条件式(3)を満足する場合、当該回折光学素子の異常分散性がF線からg線までの波長域において低く、これらの波長域において、一次スペクトルは勿論、二次スペクトルについても、色収差補正を良好に行うことができる。従って、広い波長範囲において高い結像性能を有する光学系を得ることができる。
【0118】
これに対して、条件式(11)を満足しない場合、当該回折光学素子がF線からg線までの波長域において異常分散性を示す範囲があり、F線〜g線の波長域において二次スペクトルの補正が困難になり、これらの波長域では良好な結像性能を得ることが困難になる場合がある。
【0119】
上記効果を得る上で、当該光学系は下記の条件式(11−a)を満足することがより好ましい。
【0120】
−13≦Σ{1/(fd×νd)}/Σ{θgF/(fd×νd)}≦7.0・・・(11−a)
【0121】
なお、当該光学系に複数の回折面が含まれる場合、少なくともいずれか一の回折面に関して、当該条件式(11)を満足することが好ましく、全ての回折面に関して、当該条件式(11)を満足することがより好ましい。条件式(11−a)についても同様である。
【0122】
1−4−12.条件式(12)
当該光学系では、回折面を含む所定のレンズ群において、以下の条件式(12)を満足することが好ましい。
【0123】
0 < νd1/Pw1/fw < 1300 ・・・(12)
【0124】
但し、「νd1」は、前記第1のレンズのd線に対するアッベ数であり、「Pw1」は、前記第1のレンズの屈折力であり、「fw」は、当該光学系が示し得る最小焦点距離である。
【0125】
条件式(12)を満足する場合、雰囲気温度が変化したときもピント位置やバックフォーカス量のずれ等を抑制することができる。また、当該条件式(12)を満足する場合、当該光学系の色収差補正をより良好に行うことができる。このため、結像性能がより高い光学系を得ることができ、且つ、雰囲気温度の変化によらず高い結像性能を維持することができる。
【0126】
1−4−13.条件式(13)
当該光学系において、以下の条件式(13)を満足することが好ましい。
【0127】
−100 < dndtP1×Pw1×fw×10
7 < 40 ・・・(13)
但し、「Pw1」及び「fw」は上述したとおりである。
【0128】
条件式(13)は、第1のレンズの単位温度当たりの屈折率の変化量と、第1のレンズの屈折力と、当該光学系が示す得る最小焦点距離とに関する式である。条件式(13)を満足する場合、第1のレンズの単位温度あたりの屈折率変化及び屈折力の値が、当該光学系が示し得る最小焦点距離に対して適正な範囲内にあり、当該最小焦点距離において、雰囲気温度が変化したときも当該光学系の結像性能をより良好に維持することができる。
【0129】
上記効果を得る上で、当該光学系は下記の条件式(13−a)を満足することがより好ましい。
【0130】
−100 < dndtP1×Pw1×fw×10
7 < 40 ・・・(13−a)
【0131】
当該光学系が2群構成の変倍光学系である場合、上記効果を得る上で、当該光学系は以下の条件式(13−b)を満足することが更に好ましい。
【0132】
− 6 < dndtP1×Pw1×fw×10
7 < 6 ・・・(13−b)
【0133】
当該光学系が3群構成の変倍光学系である場合、上記効果を得る上で、当該光学系は以下の条件式(13−c)を満足することが更に好ましい。
【0134】
−50 < dndtP1×Pw1×fw×10
7 < 50 ・・・(13−c)
【0135】
当該光学系が4群構成の変倍光学系である場合、上記効果を得る上で、当該光学系は以下の条件式(13−d)を満足することが更に好ましい。
【0136】
−12 < dndtP1×Pw1×fw×10
7 < 12 ・・・(13−d)
【0137】
1−4−14.条件式(14)
当該光学系において、以下の条件式(14)を満足することが好ましい。
【0138】
−130 < dndtP1×Pw1×ft×10
7 <260 ・・・(14)
但し、「Pw1」及び「ft」は上述したとおりである。
【0139】
条件式(14)は、第1のレンズの単位温度当たりの屈折率の変化量と、第1のレンズの屈折力と、当該光学系が示す得る最大焦点距離とに関する式である。条件式(14)を満足する場合、第1のレンズの単位温度あたりの屈折率変化及び屈折力の値が、当該光学系が示し得る最大焦点距離に対して適正な範囲内にあり、当該最大焦点距離において、雰囲気温度が変化したときも当該光学系の結像性能をより良好に維持することができる。
【0140】
上記効果を得る上で、当該光学系は下記の条件式(14−a)を満足することがより好ましい。
【0141】
−130 < dndtP1×Pw1×ft×10
7 < 60 ・・・(14−a)
【0142】
当該光学系が2群構成の変倍光学系である場合、上記効果を得る上で、当該光学系は以下の条件式(14−b)を満足することが更に好ましい。
【0143】
−12 < dndtP1×Pw1×ft×10
7 < 13 ・・・(14−b)
【0144】
当該光学系が3群構成の変倍光学系である場合、上記効果を得る上で、当該光学系は以下の条件式(14−c)を満足することが更に好ましい。
【0145】
−120 < dndtP1×Pw1×ft×10
7 < 120 ・・・(14−c)
【0146】
当該光学系が4群構成の変倍光学系である場合、上記効果を得る上で、当該光学系は以下の条件式(14−d)を満足することが更に好ましい。
【0147】
−80 < dndtP1×Pw1×ft×10
7 < 80 ・・・(14−d)
【0148】
1−4−15.条件式(15)
当該光学系では、上記回折面を含む所定のレンズ群において、当該レンズ群全体が示す屈折力と同符号の屈折力を有するレンズのうち、二番目に屈折力の大きいレンズを第2のレンズとしたとき、第1のレンズ及び前記第2のレンズが以下の条件式(15)を満足することが好ましい。
【0149】
−130<dndtP1×Pw1×fw+dndtP2×Pw2×fw<0・・・(15)
【0150】
但し、「dndtP2」は、第2のレンズの上述した「dndt」であり、「Pw2」は第2のレンズの屈折力であり、「dndtP1」、「Pw1」及び「fw」は上述したとおりである。
【0151】
回折面を含む所定のレンズ群にいて、当該レンズ群全体が示す屈折力と同符号の屈折力を有するレンズのうち、最も屈折力の大きい第1のレンズと、次に屈折力の大きい第2のレンズとが上記条件式(15)の関係を満足することにより、第2のレンズの単位温度当たりの屈折率の変化量と、屈折力とが適正な範囲内になり、雰囲気温度が変化したときもより良好に結像性能を維持することができる。
【0152】
上記効果を得る上で、当該光学系は下記の条件式(15−a)を満足することがより好ましい。
【0153】
−120<dndtP1×Pw1×fw+dndtP2×Pw2×fw<0・・・(15−a)
【0154】
1−4−16.条件式(16)
当該光学系において、第1のレンズ及び上記第2のレンズが以下の条件式(16)を満足することが好ましい。
−200<(dndtP1×Pw1+dndtP2×Pw2)×√(fw×ft)<100・・・(16)
【0155】
条件式(16)を満足する場合、当該光学系が変倍光学系であるとき、雰囲気温度が変化しても変倍域全域において良好に結像性能を維持することができる。
【0156】
上記効果を得る上で、第1のレンズ及び上記第2のレンズが以下の条件式(16−a)を満足することがより好ましい。
【0157】
−130<(dndtP1×Pw1+dndtP2×Pw2)×√(fw×ft)<60・・・(16−a)
【0158】
当該光学系が2群構成の変倍光学系である場合、上記効果を得る上で、第1のレンズ及び上記第2のレンズは以下の条件式(16−b)を満足することが更に好ましい。
【0159】
−12<(dndtP1×Pw1+dndtP2×Pw2)×√(fw×ft)<12・・・(16−b)
【0160】
当該光学系が3群構成の変倍光学系である場合、上記効果を得る上で、第1のレンズ及び上記第2のレンズは以下の条件式(16−c)を満足することが更に好ましい。
【0161】
−120<(dndtP1×Pw1+dndtP2×Pw2)×√(fw×ft)<120・・・(16−c)
【0162】
当該光学系が4群構成の変倍光学系である場合、上記効果を得る上で、第1のレンズ及び上記第2のレンズは以下の条件式(16−d)を満足することが更に好ましい。
【0163】
−80<(dndtP1×Pw1+dndtP2×Pw2)×√(fw×ft)<80・・・(16−d)
【0164】
1−4−17.条件式(17)
当該光学系において、上記第2のレンズは以下の条件式(17)を満足することが好ましい。
【0165】
Nd2 ≧ −0.014×νd2+2.5 ・・・(17)
【0166】
但し、「Nd2」は、第2のレンズのd線に対する屈折率であり、「νd2」は、第2のレンズのd線に対するアッベ数である。
【0167】
第2のレンズが条件式(17)を満足する場合、上記第iのレンズを第2のレンズとすることができる。その結果、上述したように、色収差等の補正をさらに良好に行い、結像性能のより高い光学系を得ると共に、当該レンズ群を構成するレンズ枚数の増加を抑制することができ、当該光学系をコンパクトに構成することができる。
【0168】
1−4−18.条件式(18)
当該光学系において、最も物体側に配置されると共に正の屈折力を有する第一レンズ群を備え、当該第一レンズ群は、二枚のレンズからなる接合レンズを少なくとも一つ含み、当該第一レンズ群において、最も物体側に配置される接合レンズは以下の条件式(18)を満足することが好ましい。
【0169】
30 < |νa1−νa2| < 50 ・・・(18)
【0170】
但し、「νa1」は、前記接合レンズを構成する物体側レンズのd線に対するアッベ数であり、「νa2」は、前記接合レンズを構成する像面側レンズのd線に対するアッベ数である。
【0171】
当該光学系が条件式(18)を満足する場合、回折光学素子による色収差補正に加えて、接合レンズのアッベ数差により色収差をより良好に補正することができ、結像性能の高い光学系を得ることができる。
【0172】
条件式(18)の数値が下限値以下である場合、接合レンズを構成する正・負2枚のレンズのアッベ数差が小さく、特に当該光学系が変倍率の高い変倍光学系である場合、望遠端側の軸上色収差を十分に行えない場合があり、好ましくない。一方、上限式(18)の数値が上限値以上になると、接合レンズを構成する上記2枚のレンズのアッベ数差が大きくなりすぎる。この場合、接合レンズを構成する上記第iのレンズが異常分散材になってしまい、軸上色収差を十分に行えない場合があり、好ましくない。
【0173】
色収差には波長に依存して線形に変化する線形成分と非線形成分(異常分散性)が存在する。第1のレンズが接合レンズを構成するレンズの場合、第1のレンズが単レンズで存在する場合に比べ、非線形成分の色収差の補正を行う上で有利になる。第2のレンズが接合レンズを構成するレンズの場合、接合レンズにおいて第2のレンズと組み合わせる他のレンズにより、更に非線形成分の色収差を補正することが可能になる。そして、回折面が接合レンズに含まれる場合、線形成分の色収差をさらに良好に保つ事が可能になる。
【0174】
1−4−19.条件式(19)
当該光学系において、上記第一レンズ群を備える場合、当該第一レンズ群は、上記接合レンズに加えて両面が空気層に接する単レンズとを含み、以下の条件式(19)を満足することが好ましい。
【0175】
0.21 < |NPa1−NP1| < 6 ・・・(19)
【0176】
但し、「NPa1」は、前記第一レンズ群において、最も物体側に配置される接合レンズを構成する正の屈折力を有するレンズのd線に対する屈折率であり、「NP1」は、前記第1レンズ群において、最も物体側に配置される正の屈折力を有する前記単レンズのd線に対する屈折率である。
【0177】
当該条件式(19)を満足する場合、第1レンズ群において光束径を収束することができ、当該光学系をコンパクトに構成することができる。また、当該光学系が変倍光学系である場合、当該条件式(19)を満足することで、特に広角端側の像面湾曲を良好に補正することができる。
【0178】
また、当該光学系が4群以上のレンズ群を備える高変倍率を有する変倍光学系である場合、第一レンズ群を物体側から順に、負の屈折力を有するレンズ及び正の屈折力を有するレンズを接合した接合レンズと、両面が空気層に接する正の屈折力を有する単レンズとから構成し、この正の屈折力を有する単レンズが上記条件式(19)を満足することにより、望遠端側における軸上色収差をさらに良好に補正することができる。
【0179】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係る光学系と、当該光学系の像面側に設けられた、当該光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよいし、一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラ等のレンズ交換式の撮像装置であってもよいのは勿論である。
【0180】
次に、実施例および比較例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下に挙げる各実施例の光学系は、デジタルカメラ、ビデオカメラ、銀塩フィルムカメラ等の撮像装置(光学装置)に用いられる撮像光学系である。また、各レンズ断面図において、図面に向かって左方が物体側、右方が像面側である。
【実施例1】
【0181】
(1)光学系の構成
図1は、本件発明に係る実施例1の光学系の広角端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図であり、
図2は望遠端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該光学系は、焦点距離が可変の変倍光学系であり、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群1Gと、正の屈折力を有する第2レンズ群2Gとから構成される。
【0182】
第1レンズ群1Gは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズと、負の屈折力を有する両凹レンズと、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズとから構成される。第2レンズ群2Gは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズと、正の屈折力を有する両凸レンズと、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズ、正の屈折力を有する両凸レンズ及び負の屈折力を有する両凹レンズを接合した接合レンズと、正の屈折力を有する両凸レンズとから構成される。ここで、第2レンズ群2Gは、本件出願にいう回折面を含む所定のレンズ群であり、第2レンズ群2Gに含まれる上記接合レンズを構成する上記凹レンズの空気層と接する物体側の面が回折面DOEとなっている。この接合レンズを構成する両凸レンズが本件出願にいう第1のレンズである。また、第2レンズ群2Gの物体側から二番目に配置された両凸レンズが本件出願にいう第2のレンズである。いずれも第2レンズ群全体と同符号の屈折力を有する。また、第1レンズ群1Gと第2レンズ群2Gとの間に開口絞りが配置されている。また、第1レンズ群1Gと、第2レンズ群2Gとの間に開口絞りが配置されている。
【0183】
当該実施例1の光学系において、広角端から望遠端への変倍時に、第1レンズ群1Gは像面側に移動し、第2レンズ群2Gは物体側に移動する。
【0184】
なお、第2レンズ群2Gの像面側に示す「CG」は保護ガラスやカバーガラスであり、ローパスフィルターや赤外カットフィルター等を表す。また、「IMG」は像面であり、具体的には、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等を示す。これらの符号等は実施例2〜実施例16で示す各レンズ断面図においても同様である。
【0185】
(2)数値実施例
次に、当該光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表1に当該光学系のレンズデータを示す。表1において、「面No.」は物体側から数えたレンズ面の順番(面番号)、「r」はレンズ面の曲率半径、「d」はレンズ面の光軸上の間隔、「Nd」はd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、「νd」はd線に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、レンズ面が非球面である場合には、面番号の後に「*(アスタリスク)」を付している。また、レンズ面が回折面である場合には、面番号の後に「♯(シャープ)」を付している。レンズ面が非球面及び/又は回折面である場合は、曲率半径「r」の欄には曲率半径を示している。
【0186】
また、表1に示した非球面について、その形状を下記式で定義した場合の非球面係数を表2(2−1)に示す。表2(2−1)において、「E−a」は、「×10−a」を示す。
【0187】
【数3】
【0188】
但し、上記式において、「R」は曲率、「h」は光軸からの高さ、「k」は円錐係数、「A4」、「A6」、「A8」、「A10」・・・は各次数の非球面係数を示す。
【0189】
さらに、表2(2−2)に当該光学系全系の焦点距離(F)、F値(Fno)、半画角(ω)、表1に示す可変間隔を示す。表2(2−2)において、「6」、「7」、「19」はそれぞれ表1に示す可変間隔「d6」、「d7」、「d19」を意味し、表2(2−2)においては「d」の表示を省略している。表(2−3)は当該光学系が備える各レンズ群の焦点距離であり、f1は第1レンズ群1Gの焦点距離、f2は第2レンズ群2Gの焦点距離を示す。
【0190】
表3は、回折面について、その面番号(面No)、回折次数(m)、規格化波長(λ)、回折面係数(C01、C02、C03、C04)を示す。但し、C01、C02、C03、C04はそれぞれ上記位相差関数のC1、C2、C3、C4に対応する。また、条件式(1)〜条件式(19)の数値を表19に示す。なお、各表中の長さの単位は全て「mm」であり、画角の単位は全て「°」である。これらの表に関する事項は実施例2〜実施例9で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0191】
また、
図3に、当該光学系の広角端における無限遠合焦時の縦収差図を示し、
図4に当該光学系の望遠端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。それぞれの縦収差図は、図面に向かって左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差を表している。球面収差を表す図では、縦軸は開放F値との割合、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線(波長λ=587.5618nm)、破線がs線(波長λ=852.1100nm)、一点鎖線がg線(波長λ=435.8343nm)における球面収差を表す。非点収差を表す図では、縦軸は像高、横軸にデフォーカスをとり、実線がサジタル面、破線がメリジオナル面での非点収差を表す。歪曲収差を表す図では、縦軸は像高、横軸に%をとり、歪曲収差を表す。これらの縦収差図に関する事項は実施例2〜実施例9で示す各縦収差図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0192】
【表1】
【0193】
【表2】
【0194】
【表3】
【実施例2】
【0195】
(1)光学系の構成
図5は、本件発明に係る実施例2の光学系の広角端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図であり、
図6は望遠端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該光学系は、焦点距離が可変の変倍光学系であり、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群1Gと、負の屈折力を有する第2レンズ群2Gと、正の屈折力を有する第3レンズ群3Gとから構成されている。
【0196】
第1レンズ群1Gは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズと、正の屈折力を有する両凸レンズとを接合した接合レンズから構成される。第2レンズ群2Gは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズと、負の屈折力を有する両凹レンズ及び物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズを接合した接合レンズとから構成される。第3レンズ群3Gは、物体側から順に、正の屈折力を有する両凸レンズと、正の屈折力を有する両凸レンズ及び負の屈折力を有する両凹レンズを接合した接合レンズと、正の屈折力を有する両凸レンズとから構成される。ここで、第3レンズ群3Gは、本件出願にいう回折面を含む所定のレンズ群であり、そして、第3レンズ群3Gの最も物体側に配置された両凸レンズが本件出願にいう第1のレンズであり、第3レンズ群3Gの物体側から2番目に配置された両凸レンズ、つまり接合レンズを構成する正レンズが本件出願にいう第2のレンズである。
【0197】
当該実施例2の光学系において、広角端から望遠端への変倍時に、第1レンズ群1Gは固定であり、第2レンズ群2Gは像面側に移動し、第3レンズ群は物体側に移動する。
【0198】
(2)数値実施例
次に、当該光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表4は、当該光学系のレンズデータであり、表5(5−1)は、表4に示した非球面の非球面係数であり、表5(5−2)は当該光学系の広角端、中間焦点距離、望遠端のそれぞれにおける焦点距離(F)、F値(Fno)、半画角(ω)、光軸上の各可変間隔を示す。表5(5−3)は、当該光学系が備える各レンズ群の焦点距離であり、f1は第1レンズ群1Gの焦点距離、f2は第2レンズ群2Gの焦点距離、f3は第3レンズ群3Gの焦点距離を示す。表6は、第3レンズ群3Gに含まれる回折面について、その面番号(面No)、回折次数(m)、規格化波長(λ)、回折面係数(C01、C02、C03、C04)を示す。また、条件式(1)〜条件式(19)の数値を表19に示す。
【0199】
また、
図7に、当該光学系の広角端における無限遠合焦時の縦収差図を示し、
図8に当該光学系の望遠端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【0200】
【表4】
【0201】
【表5】
【0202】
【表6】
【実施例3】
【0203】
(1)光学系の構成
図9は、本件発明に係る実施例3の光学系の広角端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図であり、
図10は望遠端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該光学系は、焦点距離が可変の変倍光学系であり、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群1Gと、負の屈折力を有する第2レンズ群2Gと、正の屈折力を有する第3レンズ群3Gとから構成されている。
【0204】
第1レンズ群1Gは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズと、正の屈折力を有する両凸レンズとを接合した接合レンズから構成される。第2レンズ群2Gは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズと、負の屈折力を有する両凹レンズ及び物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズを接合した接合レンズとから構成される。第3レンズ群3Gは、物体側から順に、正の屈折力を有する両凸レンズと、正の屈折力を有する両凸レンズ及び負の屈折力を有する両凹レンズを接合した接合レンズと、正の屈折力を有する両凸レンズとから構成される。ここで、第3レンズ群3Gは、本件出願にいう回折面を含む所定のレンズ群である。そして、第3レンズ群3Gの最も物体側に配置される両凸レンズが本件出願にいう第1のレンズであり、上記接合レンズを構成する両凸レンズが本件出願にいう第2のレンズである。第1レンズ群1Gを構成する接合レンズの接合面及び第3レンズ群3Gに含まれる上記接合レンズの接合面がそれぞれ回折面DOEとなっている。また、第2レンズ群2Gと、第3レンズ群3Gとの間に開口絞りが配置されている。
【0205】
当該実施例3の光学系において、広角端から望遠端への変倍時に、第1レンズ群1Gは固定であり、第2レンズ群2Gは像面側に移動し、第3レンズ群3Gは物体側に移動する。
【0206】
(2)数値実施例
次に、当該光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表7は、当該光学系のレンズデータであり、表8(8−1)は、表7に示した非球面の非球面係数であり、表8(8−2)は当該光学系の広角端、中間焦点距離、望遠端のそれぞれにおける焦点距離(F)、F値(Fno)、半画角(ω)、光軸上の各可変間隔を示す。表8(8−3)は、当該光学系が備える各レンズ群の焦点距離であり、f1は第1レンズ群1Gの焦点距離、f2は第2レンズ群2Gの焦点距離、f3は第3レンズ群3Gの焦点距離を示す。表9は、第1レンズ群1G及び第3レンズ群3Gに含まれる回折面について、その面番号(面No)、回折次数(m)、規格化波長(λ)、回折面係数(C01、C02、C03、C04)を示す。また、条件式(1)〜条件式(19)の数値を表19に示す。
【0207】
また、
図11に、当該光学系の広角端における無限遠合焦時の縦収差図を示し、
図12に当該光学系の望遠端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【0208】
【表7】
【0209】
【表8】
【0210】
【表9】
【実施例4】
【0211】
(1)光学系の構成
図13は、本件発明に係る実施例4の光学系の広角端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図であり、
図14は望遠端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該光学系は、焦点距離が可変の変倍光学系であり、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群1Gと、正の屈折力を有する第2レンズ群2Gと、負の屈折力を有する第3レンズ群3Gと、正の屈折力を有する第4レンズ群4Gとから構成されている。
【0212】
第1レンズ群1Gは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズと、負の屈折力を有する両凹レンズと、正の屈折力を両凸レンズと、負の屈折力を有する両凹レンズとから構成される。第2レンズ群2Gは、物体側から順に、正の屈折力を有する両凸レンズと、開口絞りと、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズ及び正の屈折力を有する両凸レンズを接合した接合レンズとから構成される。第3レンズ群3Gは、物体側から順に、負の屈折力を有する両凹レンズと、正の屈折力を有する両凸レンズとから構成される。第4レンズ群4Gは、正の屈折力を有する両凸レンズから構成される。ここで、第2レンズ群2Gは、本件出願にいう回折面を含む所定のレンズ群である。第2レンズ群2Gを構成する接合レンズの接合面が回折面DOEとなっている。そして、上記接合レンズを構成する両凸レンズが本件出願にいう第1のレンズであり、第2レンズ群2Gの最も物体側に配置される両凸レンズが本件出願にいう第2のレンズである。
【0213】
当該実施例4の光学系において、広角端から望遠端への変倍時に、第1レンズ群1Gは像面側に凸の軌跡を描いて移動し、第2レンズ群2Gは物体側に移動し、第3レンズ群3Gは物体側に凸の軌跡を描いて移動し、第4レンズ群4Gは固定である。
【0214】
(2)数値実施例
次に、当該光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表10は、当該光学系のレンズデータであり、表11(11−1)は、表10に示した非球面の非球面係数であり、表11(11−2)は当該光学系の広角端、中間焦点距離、望遠端のそれぞれにおける焦点距離(F)、F値(Fno)、半画角(ω)、光軸上の各可変間隔を示す。表11(11−3)は、当該光学系が備える各レンズ群の焦点距離であり、f1は第1レンズ群1Gの焦点距離、f2は第2レンズ群2Gの焦点距離、f3は第3レンズ群3Gの焦点距離、f4は第4レンズ群4Gの焦点距離を示す。表12は、第2レンズ群2Gに含まれる回折面について、その面番号(面No)、回折次数(m)、規格化波長(λ)、回折面係数(C01、C02、C03、C04)を示す。また、条件式(1)〜条件式(19)の数値を表19に示す。
【0215】
また、
図15に、当該光学系の広角端における無限遠合焦時の縦収差図を示し、
図16に当該光学系の望遠端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【0216】
【表10】
【0217】
【表11】
【0218】
【表12】
【実施例5】
【0219】
(1)光学系の構成
図17は、本件発明に係る実施例5の光学系の広角端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図であり、
図18は望遠端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該光学系は、焦点距離が可変の変倍光学系であり、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群1Gと、負の屈折力を有する第2レンズ群2Gと、正の屈折力を有する第3レンズ群3Gと、正の屈折力を有する第4レンズ群4Gとから構成されている。
【0220】
第1レンズ群1Gは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズ及び正の屈折力を有する両凸レンズを接合した接合レンズと、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズとから構成される。第2レンズ群2Gは、物体側から順に、負の屈折力を有する両凹レンズと、負の屈折力を有する両凹レンズ及び物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズを接合した接合レンズとから構成される。第3レンズ群3Gは、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズから構成される。第4レンズ群4Gは、正の屈折力を有する両凸レンズと、負の屈折力を有する両凹レンズレンズ及び正の屈折力を有する両凸レンズを接合した接合レンズとから構成される。ここで、第4レンズ群4Gは、本件出願にいう回折面を含む所定のレンズ群である。第4レンズ群4Gを構成する接合レンズの接合面が回折面DOEとなっている。そして、第4レンズ群4Gにおいて、上記接合レンズを構成する両凸レンズが本件出願にいう第1のレンズであり、最も物体側に配置された両凸レンズが本件出願にいう第2のレンズである。また、第3レンズ群3Gの物体側に開口絞りが配置されている。
【0221】
当該実施例5の光学系において、広角端から望遠端への変倍時に、第1レンズ群1Gは固定であり、第2レンズ群2Gは像面側に移動し、第3レンズ群3Gは固定であり、第4レンズ群は異なる軌跡でそれぞれ物体側側に移動し、第4レンズ群4Gは物体側に凸の軌跡を描きながら移動する。
【0222】
(2)数値実施例
次に、当該光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表13は、当該光学系のレンズデータであり、表14(14−1)は、表13に示した非球面の非球面係数であり、表14(14−2)は当該光学系の広角端、中間焦点距離、望遠端のそれぞれにおける焦点距離(F)、F値(Fno)、半画角(ω)、光軸上の各可変間隔を示す。表14(14−3)は、当該光学系が備える各レンズ群の焦点距離であり、f1は第1レンズ群1Gの焦点距離、f2は第2レンズ群2Gの焦点距離、f3は第3レンズ群3Gの焦点距離、f4は第4レンズ群4Gの焦点距離を示す。表15は、第4レンズ群4Gに含まれる回折面について、その面番号(面No)、回折次数(m)、規格化波長(λ)、回折面係数(C01、C02、C03、C04)を示す。また、条件式(1)〜条件式(19)の数値を表19に示す。
【0223】
また、
図19に、当該光学系の広角端における無限遠合焦時の縦収差図を示し、
図20に当該光学系の望遠端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【0224】
【表13】
【0225】
【表14】
【0226】
【表15】
【実施例6】
【0227】
(1)光学系の構成
図21は、本件発明に係る実施例6の光学系の広角端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図であり、
図22は望遠端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該光学系は、焦点距離が可変の変倍光学系であり、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群1Gと、負の屈折力を有する第2レンズ群2Gと、正の屈折力を有する第3レンズ群3Gと、正の屈折力を有する第4レンズ群4Gとから構成されている。
【0228】
第1レンズ群1Gは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズ及び正の屈折力を有する両凸レンズを接合した接合レンズと、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズとから構成される。第2レンズ群2Gは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズと、負の屈折力を有する両凹レンズ及び正の屈折力を有する両凸レンズを接合した接合レンズとから構成される。第3レンズ群3Gは、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズから構成される。第4レンズ群4Gは、正の屈折力を有する両凸レンズと、負の屈折力を有する両凹レンズレンズ及び正の屈折力を有する両凸レンズを接合した接合レンズとから構成される。ここで、第1レンズ群1Gは、本件出願にいう回折面を含む所定のレンズ群である。第1レンズ群1Gを構成する接合レンズの接合面及び第3レンズ群を構成するメニスカスレンズの物体側の面がそれぞれ回折面DOEとなっている。そして、第1レンズ群1Gにおいて、上記接合レンズを構成する両凸レンズが本件出願にいう第1のレンズであり、最も物体側に配置された両凸レンズが本件出願にいう第2のレンズである。また、第3レンズ群3Gの物体側に開口絞りが配置されている。
【0229】
当該実施例6の光学系において、広角端から望遠端への変倍時に、第1レンズ群1Gは固定であり、第2レンズ群2Gは像面側に移動し、第3レンズ群3Gは固定であり、第4レンズ群は異なる軌跡でそれぞれ物体側側に移動し、第4レンズ群4Gは物体側に凸の軌跡を描きながら移動する。
【0230】
(2)数値実施例
次に、当該光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表16は、当該光学系のレンズデータであり、表17(17−1)は、表16に示した非球面の非球面係数であり、表17(17−2)は当該光学系の広角端、中間焦点距離、望遠端のそれぞれにおける焦点距離(F)、F値(Fno)、半画角(ω)、光軸上の各可変間隔を示す。表17(17−3)は、当該光学系が備える各レンズ群の焦点距離であり、f1は第1レンズ群1Gの焦点距離、f2は第2レンズ群2Gの焦点距離、f3は第3レンズ群3Gの焦点距離、f4は第4レンズ群4Gの焦点距離を示す。表18は、第1レンズ群1G及び第3レンズ群3Gに含まれる回折面について、その面番号(面No)、回折次数(m)、規格化波長(λ)、回折面係数(C01、C02、C03、C04)を示す。また、条件式(1)〜条件式(19)の数値を表19に示す。
【0231】
また、
図23に、当該光学系の広角端における無限遠合焦時の縦収差図を示し、
図24に当該光学系の望遠端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【0232】
【表16】
【0233】
【表17】
【0234】
【表18】
【0235】
【表19】
【0236】
次に、比較例を説明する。ここでは、比較例として、実施例1とほぼ同様のレンズ構成を有する負・正2群構成の変倍光学系を例に挙げる。比較例の光学系のレンズ構成は実施例2とほぼ同様であるため、ここでは説明及び図示を省略する。また、当該光学系のレンズデータを表20に示す。また、表21は(21−1)表20に示した非球面の非球面係数であり、表21(21−2)は当該光学系の広角端、中間焦点距離、望遠端のそれぞれにおける焦点距離(F)、F値(Fno)、半画角(ω)、光軸上の各可変間隔を示す。また、表21(21−3)は、当該光学系が備える各レンズ群の焦点距離であり、f1は第1レンズ群1Gの焦点距離、f2は第2レンズ群2Gの焦点距離を示す。
【0239】
実施例2の光学系及び上記比較例の光学系について、t線、s線、d線及びF線におけるバックフォーカスの温度変動を
図25及び
図26にそれぞれ示す。実施例2及び比較例の光学系はいずれも雰囲気温度の変化に伴いバックフォーカスも変化するが、実施例2の光学系は比較例の光学系よりもその変動量が小さいことが分かる。実施例2の光学系では20℃のときのバックフォーカスを基準としたとき、60℃におけるバックフォーカスの変動量は0.01mm以下であった(
図25参照)。これに対して、比較例の光学系では、20℃のときのバックフォーカスを基準としたとき、60℃におけるバックフォーカスの変動量は0.02mm以上あった(
図26参照)。特に、比較例の光学系では雰囲気温度の変化に伴う軸上色収差量の変動が大きく、常温時と比較するとF線とd線の差分が広角端において0.5μm、望遠端において3μmであった。実施例2の光学系では、当該差分が広角端において0.2μm、望遠端において0.6μmであり、比較例の光学系は実施例2の光学系に対して、倍以上の大きさで変動した。なお、比較例の光学系の場合、条件式(1)の値は−6.2であり、負に大きな値を示した。
【0240】
また、他の実施例の光学系についても、雰囲気温度の変化に伴うバックフォーカスの変化は少なく、軸上色収差等の諸収差の変動も抑制することが可能である。