(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-197949(P2016-197949A)
(43)【公開日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】発電装置、発電装置の組立キットおよび発電装置の組立方法
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20161028BHJP
H01L 35/30 20060101ALI20161028BHJP
【FI】
H02N11/00 A
H01L35/30
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-76451(P2015-76451)
(22)【出願日】2015年4月3日
(11)【特許番号】特許第5816769号(P5816769)
(45)【特許公報発行日】2015年11月18日
(71)【出願人】
【識別番号】500067606
【氏名又は名称】株式会社協同
(71)【出願人】
【識別番号】303041928
【氏名又は名称】末松 満
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(72)【発明者】
【氏名】末松 満
(57)【要約】
【課題】 暗闇であっても発電が可能であり、容易に短時間で一時的な電子機器の充電ができる上、備蓄が可能で可搬性のある非常用の発電装置、発電装置の組立キットおよび発電装置の組立方法を提供する。
【解決手段】 発電装置は、容器と、前記容器に収容される水と、前記容器に収容され、前記水との接触により発熱する発熱剤と、吸熱側面と放熱側面を有し、該両側面の温度差を利用して発電する発電ユニットと、を備え、前記吸熱側面が前記容器の内部に位置するように前記発電ユニットが前記容器に取り付けまたは載置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器に収容される水と、
前記容器に収容され、前記水との接触により発熱する発熱剤と、
吸熱側面と放熱側面を有し、該両側面の温度差を利用して発電する発電ユニットと、を備え、
前記吸熱側面が前記容器の内部に位置するように前記発電ユニットが前記容器に取り付けまたは載置された、
ことを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記水は、発電時に前記容器に収容される、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記容器は、側面に取付部を備え、
前記発電ユニットは、前記取付部に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記水は、前記発電ユニットの少なくとも一部と接触する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項5】
前記発電ユニットは、
前記吸熱側面と前記放熱側面とを備える熱電交換素子と、
前記吸熱側面に設けられた第一のフィンと、
前記放熱側面に設けられた第二のフィンと、を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項6】
前記第二のフィンの表面積は、前記第一のフィンの表面積よりも大きい、
ことを特徴とする請求項5に記載の発電装置。
【請求項7】
前記第二のフィンの表面積は前記第一のフィンの表面積の6倍程度である、
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の発電装置。
【請求項8】
吸熱側面と放熱側面を有し、該両側面の温度差を利用して発電する発電ユニットと、
水を収容可能であるとともに、前記吸熱側面が内部に位置するように前記発電ユニットを取り付けまたは載置可能な容器と、
前記容器に収容可能な発熱剤と、を備える
ことを特徴とする発電装置の組立キット。
【請求項9】
封入体内に封入された水を備える、
ことを特徴とする請求項8に記載の発電装置の組立キット。
【請求項10】
前記容器は、側面に前記発電ユニットの取付部を備える、
ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の発電装置の組立キット。
【請求項11】
前記水は、前記容器に収容された場合に前記発電ユニットの少なくとも一部と接触する分量である、
ことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の発電装置の組立キット。
【請求項12】
前記発電ユニットは、
前記吸熱側面と前記放熱側面と備える熱電交換素子と、
前記吸熱側面に設けられた第一のフィンと、
前記放熱側面に設けられた第二のフィンと、を有する、
ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の発電装置の組立キット。
【請求項13】
前記第二のフィンの表面積は、前記第一のフィンの表面積よりも大きい、
ことを特徴とする請求項12に記載の発電装置の組立キット。
【請求項14】
前記第二のフィンの表面積は前記第一のフィンの表面積の6倍程度である、
ことを特徴する請求項12または請求項13に記載の発電装置の組立キット。
【請求項15】
容器に発熱剤を収容するステップと、
吸熱側面と放熱側面とを備え、該両側面の温度差を利用して発電する発電ユニットを、前記吸熱側面が前記容器の内部に位置するように前記容器に取り付けまたは載置するステップと、
水を前記容器内に収容するステップと、を有する
ことを特徴とする発電装置の組立方法。
【請求項16】
前記発電ユニットを、前記容器の側面に取り付ける、
ことを特徴とする請求項15に記載の発電装置の組立方法。
【請求項17】
前記水を、前記発電ユニットの少なくとも一部と接触するように前記容器に収容する、
ことを特徴とする請求項15または請求項16に記載の発電装置の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置、発電装置の組立キットおよび発電装置の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やカメラなどの携帯型の電子機器の充電器として、繰り返し充電可能な二次電池を用いたものが普及しているが、二次電池は予め充電しておく必要がある上、時間とともに放電してしまう場合も多い。このため、特に災害などの非常時において商用交流電源からの給電ができない場合には、その機能を発揮できない場合がある。
【0003】
携帯電話などは、非常時においては一時的でも充電されて使用できればよいという場合もあり、非常用の電源としては使い切りであっても備蓄が可能であり、どのような状況でも容易に発電が可能である製品のニーズが高い。
【0004】
例えば、災害時など商用交流電源からの給電ができない場合であっても、手動で振動させたり、ハンドルを回転させることによって発電し、電子機器などを一時的に充電する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、非常時の一時的な充電を想定した簡易かつ備蓄可能な非常用の電源として、軽量かつ柔軟な色素増感型太陽電池を利用した災害用電源も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−166112号公報
【特許文献2】実用新案登録第3183719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、手動による発電では、発電中は一方又は両方の手が使えなくなる上、電子機器が利用可能となる程度の電力を出力するには長い時間と労力が必要となる。また、太陽電池を利用した災害用電源では、夜間や悪天候時など太陽光がない場合には、発電が著しく困難(不可能)になるという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、暗闇であっても発電が可能であり、容易に短時間で一時的な電子機器の充電ができる上、備蓄が可能で可搬性のある非常用の発電装置、発電装置の組立キットおよび発電装置の組立方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、発電装置は、容器と、前記容器に収容される水と、前記容器に収容され、前記水との接触により発熱する発熱剤と、吸熱側面と放熱側面を有し、該両側面の温度差を利用して発電する発電ユニットと、を備え、前記吸熱側面が前記容器の内部に位置するように前記発電ユニットが前記容器に取り付けまたは載置されることを特徴とするものである。
【0009】
また、発電装置の組立キットは、吸熱側面と放熱側面を有し、該両側面の温度差を利用して発電する発電ユニットと、水を収容可能であるとともに、前記吸熱側面が内部に位置するように前記発電ユニットを取り付けまたは載置可能な容器と、前記容器に収容可能な発熱剤と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、発電装置の組立方法は、容器に発熱剤を収容するステップと、吸熱側面と放熱側面とを備え、前記両側面の温度差を利用して発電する発電ユニットを、前記吸熱側面が前記容器の内部に位置するように前記容器に取り付けまたは載置するステップと、水を前記容器内に収容するステップと、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、暗闇であっても発電が可能であり、容易に短時間で一時的な電子機器の充電ができる上、備蓄が可能で可搬性のある非常用の発電装置、発電装置の組立キットおよび発電装置の組立方法を提供できる、という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)本発明の実施形態に係る発電装置の概略を示す側断面図である。(b)実施形態1に係る発熱体ユニットの側面概要図である。(c)本発明の実施形態1に係る発電装置の概略を示す側断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る発熱剤のホルダーを示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る発電装置の組立キットを示す概略図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る発電装置の組立方法を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る発熱装置の使用例を示す概略図である。
【
図6】(a)本発明の実施形態に係る発熱装置の変形例を示す側断面図である。(b)本発明の実施形態に係る発熱装置の変形例を示す上面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る発熱装置の変形例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1を参照して、本発明の実施形態1に係る発電装置10の一例について説明する。
図1は発電装置10を示す図であり、同図(a)、(c)が発電装置10の側断面図であり、同図(b)が発電ユニット13の側面図である。
【0016】
図1(a)に示すように、本実施形態の発電装置10は、容器11と、発熱剤12と、発電ユニット13と、水14を備える。
【0017】
容器11は、内部に発熱剤12と所定量の水14が収容可能であればサイズは問わないが、例えば卓上で使用できる程度の大きさを有する。この例では、一辺が20cm〜30cm四方の立方体(直方体)形状とする。容器11は、耐熱性(例えば、80℃〜100℃程度の耐熱性)および耐水性を備える材料であれば樹脂、陶器、ガラス、金属、紙などどのような材料であってもよいが、保温性の高いものが望ましく、例えばステンレス製の真空断熱構造の容器であるとより好適である。また容器11の形状は、本実施形態では上部が開放された箱体の場合を例に説明するが、円筒形状や椀型形状などであってもよい。さらに、発電装置10の専用容器に限らず、例えばマグカップ、グラス、ボウル、椀等の食器や、保温瓶(魔法瓶)などでも代用することができる。
【0018】
発熱剤12は、容器11の内部(底部)に収容可能であり、水と接触して反応熱を発生する。具体的には、発熱剤12は、透水性の袋体によって梱包された粉体アルミニウムと粉体生石灰とから成る。透水性の袋体とは、水を浸透させる所定の目付量の不織布、和紙、合成紙等からなる袋体である。発熱剤12は例えば、本願出願人による特許第3467729号に記載の発熱剤を用いることができる。具体的には、粉体アルミニウムと粉体生石灰の組成は、一例として、発熱剤の総重量に対して、粉体アルミニウムが70%乃至85%、粉体生石灰が15%乃至30%であって、水を添加することでアルミニウムの水酸化反応による反応熱を発生する。
【0019】
生石灰の粒度は、一例として100メッシュ(−150μm90%以上)乃至200メッシュ(−75μm95%以上)の間のものが好ましい。また、アルミニウムは純度99.7%以上のもので、見掛密度が0.8乃至1.1g/cm
3の範囲で、−330メッシュ(−45μm)が35乃至60,+330メッシュ(+45μm)が15乃至30,+235メッシュ(+63μm)が5乃至15,+140メッシュ(+106μm)が7>の粒度分布を有するもの、若しくは純度99.7%以上のもので、見掛密度が0.8乃至1.1g/cm
3の範囲で、−330メッシュ(−45μm)が40乃至60,+330メッシュ(+45μm)が15乃至30,+235メッシュ(+63μm)が15>、+200メッシュ(+75μm)が10>の粒度分布を有するもの、或いは純度99.7%以上のもので、見掛密度が0.8乃至1.1g/cm
3の範囲で、−330メッシュ(−45μm)が70乃至90,+330メッシュ(+45μm)が30>、+235メッシュ(+63μm)が3>、+200メッシュ(+75μm)が2>の粒度分布を有するものが使用されるが、反応速度、取り扱いが容易であること、コスト等の観点から、純度99.7%以上のもので、見掛密度が0.8乃至1.1g/cm
3の範囲で、−330メッシュ(−45μm)が40乃至60,+330メッシュ(+45μm)が15乃至30,+235メッシュ(+63μm)が15>、+200メッシュ(+75μm)が10>の粒度分布を有するものが最も好ましい。
【0020】
これにより、本実施形態の発熱剤12は、発熱反応までの立ち上がり時間が短く、総発熱量が大きく、80℃以上の温度を少なくとも20分間維持することができる。具体的には、発熱剤35gに対して500ml〜1000mlの水を添加すると、30秒程度の反応速度で約80℃に到達し、その温度を20分間以上維持することができる。
【0021】
なお、発熱剤12は、水14と反応した後は高温となるため、ホルダー50に収容して容器11内に載置するとよい。ホルダー50については後述する。
【0022】
同図(b)に示すように、発電ユニット13は、吸熱側面と放熱側面とを有し、該両側面の温度差を利用して電流を発生する熱電交換素子131を少なくとも有しており、この例では、熱電交換素子131の両側面にそれぞれ設けられた第一のフィン132と、第二のフィン133と、電流の取り出し端子となる第一の端子T1と、第二の端子T2とを更に備えている。
【0023】
熱電交換素子131は、温度差を利用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換する素子であり、一例としてペルチェ素子である。ペルチェ素子131は既知のものであるので詳細な説明は省略するが、絶縁性と熱伝導性を有する2枚の基板(セラミック基板)131A、131Bの対向面に銅などの電極(不図示)を設け、基板131A、131Bの間に複数組のp型半導体とn型半導体の熱電半導体層131Cを交互に配置して電極と接続してなる板状の半導体素子である。
【0024】
本実施形態では、一方の基板131Aが吸熱側面(高温体から熱を吸収する面)となり、他方の基板131Bが放熱側面(低温体へ熱を放出する面)となることで、吸熱側面131Aと放熱側面131Bの温度差を利用したペルチェ素子131のゼーベック効果によって、熱エネルギーを電気エネルギーに変換し、発電する。第一の端子T1と第二の端子T2は、リード線であり、変換された電気エネルギーを直流電流として外部に導出する。
【0025】
第一のフィン132(以下、吸熱フィン132という)は、吸熱側面131Aに設けられて吸熱側面131Aの表面積を拡張する。また、第二のフィン133(以下、放熱フィン133という)は、放熱側面131Bに設けられて放熱側面131Bの表面積を拡張する。放熱フィン133の表面積は、吸熱フィン132の表面積よりも大きく、一例として、放熱フィン133の表面積は、吸熱フィン132の表面積の6倍程度(放熱フィン133の表面積:吸熱フィン132の表面積=6:1)である。このように放熱フィン133の表面積を吸熱フィン132の表面積よりも大きくすることで、吸熱側面131Aと放熱側面131Bの温度差を広げ、より発電効率を高めることができる。なお、同図(b)に示すように、放熱フィン133と放熱側面(セラミック基板)131Bの間には、断熱材136を設けると良い。これにより、更に発電効率を高めることができる。
【0026】
吸熱フィン132と放熱フィン133は、それらの間にペルチェ素子131と断熱材136を挟んだ状態でそれぞれの両端部がボルト137とナット138によって固定され、発電ユニット13が構成される。
【0027】
再び同図(a)を参照して、容器11の一つの側面には、その一部を貫通するように開口した取付部111が設けられており、発電ユニット13は開口部分を密閉するとともに、吸熱側面131A(吸熱フィン132)が容器11の内部に位置するように取付部111に固定される。
【0028】
発電時には、発電ユニット13が取り付けられた容器11内(底部)に発熱剤12を収容した状態で、容器11内に水14を注入する。水14の分量は、例えば、500ml〜1000mlである。また水14は、発電ユニット13の吸熱側面131A(吸熱フィン132)の少なくとも一部と接触する量であることが望ましい。発熱剤12と水14が接触すると、反応熱が発生し、水14の温度が上昇する。水温が容器11の外側の温度(外気温)よりも高くなると、ペルチェ素子131のゼーベック効果によって、発電ユニット13が発電を開始する。本実施形態では、水温は、例えば30秒程度で約80℃に到達し、その温度を20分間以上維持することができ、この期間、発電効率が最も高くなる。発熱剤12と水14の反応(アルミニウムの水酸化反応)が終了すると、反応熱は発生しなくなり水温は徐々に低下するが、外気温よりも水温がある程度高い間は、発電ユニット13は効率は徐々に低下するものの発電を継続する。
【0029】
なお、水14の量は上記の例に限らないが、発電時に多くの熱エネルギーを水中に蓄えることを可能となるため、その量が多い方が望ましい。一方、発熱剤12に対してその量が多すぎると水温が上昇しにくく、吸熱側面131Aと放熱側面131Bの温度差が広がらない場合もあるので、発電ユニット13の吸熱と放熱のバランスを考慮してより効率的な発電が可能となる(吸熱側面131Aと放熱側面131Bの温度差が大きくなる)量が適宜選択される。このことは、吸熱フィン132と放熱フィン133の表面積においても同様のことが言え、上記の一例では放熱フィン133の表面積は、吸熱フィン132の表面積の6倍程度としたが、発電ユニット13の吸熱と放熱のバランスを考慮してより効率的な発電が可能となる(吸熱側面131Aと放熱側面131Bの温度差が大きくなる)表面積がそれぞれ適宜選択される。
【0030】
本実施形態では、一例として、ペルチェ素子のサイズが3cm角〜10cm角の場合に60Wh(12W×5時間)の電力量を出力することができ、携帯電話などの電子機器の一時的な充電や、照明器具(LED)の一時的な点灯などに利用することができる。
【0031】
なお、吸熱側面131A(吸熱フィン132)で吸熱する量を多くするには、吸熱側面131Aの全てが水14に接触するようにするとよいが、その一方で、吸熱側面131Aで吸収した熱が、放熱側面131Bに伝達してしまうと、吸熱側面131Aと放熱側面131Bの温度差が小さくなってしまう。従ってその場合は、放熱側面131Bに設ける断熱材136として、断熱効果のより大きいものを選択するとよい。
【0032】
また、本実施形態では、沸騰した水14から発生する蒸気が発電ユニット13の熱電半導体層131C以外の部分を介して放熱側面131Bに伝達することを防止するために、発電ユニット13を、容器11の側面に取り付けている。また、発電ユニット13を容器11の側面に取り付けることにより、これを容器11の上面に取り付ける場合と比較して放熱側面131Bが容器11外で対流する空気に触れやすくなる。これにより、発電効率を高めることができる。
【0033】
水14の水温が上昇した後は、できる限り高温(例えば、80℃程度)の状態で維持できることが望ましいため、同図(c)に示すように、容器11を閉塞状態にできる蓋体16を設けても良い。
【0034】
図2を参照して、発熱剤12のホルダー50について説明する。
図2(a)は、ホルダー50に発熱剤12を収容した状態を示す外観斜視であり、同図(b)は、ホルダー50の蓋部51を開放した状態の斜視図であり、同図(c)は、ホルダー50から発熱剤12を取り出した状態の斜視図である。
【0035】
ホルダー50は、例えば蓋部51と本体部52を有し、蓋部51は本体部52に対して開閉可能で有り、かつ固定部53などによって固定可能である。蓋部51は粗いメッシュ状になっており、発熱剤12の反応熱を効率良くホルダー50の外部に放出するとともに、ホルダー50を手で保持した場合であっても発熱剤12に直接触れることがないようになっている。
【0036】
本体部52には発熱剤12が収容可能であり、本体部52の底部には、浮きを防止する重り54が取り付けられている。このようなホルダー50を用いることで、発電後も安全に発熱剤12を容器11内から取り出すことができる。
【0037】
なお、同図のホルダー50に代えて、例えば、発熱剤12を保持可能な重り付きクリップなどを採用してもよい。その場合、クリップに紐状部材を取り付けて、その先端を蓋体16(
図1(c)参照)などに固定することで、蓋体16の開放に伴ってクリップ(発熱剤12)を容器11外に取り出すことができる。
【0038】
このように、本実施形態の発電装置10によれば、発熱剤12の熱エネルギーを簡便に電気エネルギーに変換することができる。そして、発電装置10は、必要時に水14と発熱剤12とを反応させて発電が可能となるため、長期間の備蓄が可能となる。また、太陽電池を利用した発電と異なり太陽光が不要であるため、夜間、悪天候、暗闇などであっても発電が可能となる。またサイズも卓上に載置できる程度に小型・軽量で可搬性があるので、屋内、屋外を問わず使用できる。
【0039】
さらに、水14は、水道水やペットボトル入りのミネラルウォーターに限らず、井戸水、河川の水あるいは雨水であっても発熱剤12と反応する。従って、飲料水などの備蓄がない場合であっても、発電が可能となり、災害などの非常時における利便性が高い発電装置10となる。
【0040】
ここで、水14と発熱剤12を反応させて水温を上昇させる方法に代えて、外部で沸騰させた温水(熱湯)を、容器11に注入しても発電は可能である。しかし、外部で沸騰させた温水は長期間備蓄することは不可能であり、非常時など電気またはガスが使用できない場合には水を沸騰させることはできない。さらに、沸騰させた温水は、容器11に注入された状態が最も高温であり、発電ユニット13の発電量が高い状態であるが、80℃程度の温度を維持できるのも僅かな時間であり、その後は徐々に水温が低下するため、発電ユニット13の発電量は低下する一方となる。
【0041】
これに対し本実施形態の発電装置10は、水14を容器11に注入して発熱剤12と反応させ、外気温に対して水温がある程度高くなれば発電は可能となり、水温の上昇に伴って発電量も徐々に増加する。そして、水14の注入から30秒程度で80℃程度の高温に達した後は、その高温の状態(又はそれに近い状態)、すなわち発電量の最も高い状態が約20分程度持続する。更に、水14と発熱剤12の反応が終了した後も、水温が外気温よりもある程度高い間は発電が継続する。このように、本実施形態によれば、沸騰させた温水を容器11に注入する場合と比較して、大幅に発電時間を長く維持することができるので発電量も増大する。
【0042】
<実施形態2/発電装置の組立キット及び発電装置の組立方法>
【0043】
図3は、本実施形態の発電装置の組立キット20の一例について示す図である。発電装置の組立キット20は、容器11と、発熱剤12と、発電ユニット13と、封入体21に封入された水14とを1組のセットにしたものである。
【0044】
封入体21は例えば、袋体やペットボトルなどの耐水性を有する密封容器であり、袋体の場合には、手で容易に開封できる開封手段21Aが設けられるとよい。図示の例では、開封手段21Aが袋体に設けた切り込み(切欠き)である場合を示したが、開封手段21Aはこれに限らず、例えば紐や開封テープでもよく、袋体に巻き付けた紐の先端を引くことによって袋体を破いて開封したり、袋体に取り付けた開封テープなどで開封するものであってもよい。水14の分量は、例えば500ml〜1000mlであり、かつ容器11に収容した際に、発電ユニット13の吸熱側面131A(吸熱フィン132)の少なくとも一部と接触する分量(
図1(a)参照)であって、この例では封入体21内の全量がその量となっている。
【0045】
容器11、発熱剤12および発電ユニット13の構成は、
図1に示したものと同様であるので説明は省略するが、容器11は保存時には折り畳まれており、組立式で立体形状となるものであってもよい。また、発電ユニット13と容器11は別体としてあってもよいし、予め、容器11の側面に発電ユニット13が取り付けてあっても良い。
【0046】
この組立キット20を1つ又は複数備蓄しておき、非常時に組み立てて水14を注入してすることで、必要時にはいつでも一時的な発電が可能となる。
【0047】
図4を参照して、発電装置の組立方法について、組立キット20を用いた場合を例に説明する。まず、容器11を取り出し(折り畳まれている場合は組み立てて立体形状とし)、その底部に発熱剤12を載置する。容器11の側面の取付部111に発電ユニット13を取り付けるとともに側面の取付部111(開口部分)を密封する。発電ユニット13は、吸熱フィン132が容器11内に位置するように取り付ける(同図(a))。
【0048】
その後、封入体21を開封して水14の例えば全量を容器11内に注入する。これにより、吸熱側面131A(吸熱フィン132)の少なくとも一部が水14と接触することとなり、発電装置10が組み立てられる(
図1(a)参照)。水14は容器11に注入した直後から発熱剤12と反応し、発電が開始する。
【0049】
なお、この例では発電ユニット13と容器11は別体としたが、予め、容器11の側面に発電ユニット13が取り付けてあっても良い。容器11の側面に発電ユニット13が取り付けてあれば(容器11に水14を入れても漏れない状態であれば)、水14を注入した後(水14の注入と同時に)発熱剤12を容器11に収容しても良い。また、発熱剤12は、予め容器11の底部に貼り付けなどされて固定されているものであってもよい。更に、袋体に収容した水14も容器11内に配置されていてもよく、その場合開封手段21Aとして紐を採用し、一端を容器11外に導出しておいてもよい。使用時に紐を引いて袋体を開封すると水14と発熱剤12を反応させることができる。
【0050】
さらに、既述の如く水14は、井戸水や河川の水、あるいは雨水を利用することも可能であるので、組立キット20に水14は付属していなくてもよい。
【0051】
図5は、発電装置10の使用例として、電子機器35(例えば、携帯電話、タブレット端末、カメラなど携帯型の電子機器)に充電する場合の接続の一例を示す概要図である。
【0052】
発電装置10の第一の端子T1と第二の端子T2を蓄電回路30の端子に接続すると、発電装置10から出力された電気エネルギー(直流電流)は蓄電回路30に蓄えられる。蓄電回路30には、電子機器35の二次電池の端子(プラス端子、およびマイナス端子)への接続を可能とするコネクタ(例えば、USB端子)31が接続しており、当該コネクタ31を配線(USBケーブルなど)32を介して電子機器35のコネクタ受けに接続する。これにより、蓄電回路30に蓄えられた電気エネルギーが電子機器35の二次電池の充電に供せられる。なお、ここでの接続例は、一例であって他の構成であってもよい。
【0054】
図6および
図7を参照して、上記の実施形態の変形例について説明する。
【0055】
図6(a)は、実施形態1の変形例を示す発電装置10の側面図である。実施形態1と同一構成要素は同一符号で示し、その説明は省略する。
【0056】
同図に示すように、容器41は、側面に取付部111を設けず、発電ユニット13は、容器41の上方の開口部を覆うように載置してもよい。また、この場合、容器41の側面の上方(発電ユニット13より下方)に温水の蒸気を外部に排出する排出孔41Aを設けるとよい。温水の蒸気は排出孔41Aを介して外部に導出されるため、発電ユニット13への蒸気の接触を少なくでき、発電効率の低下を防止できる。排出孔41Aを設ける場合には、水14と吸熱フィン132が接触可能となるように、吸熱フィン132を長く(高く)するとよい。
【0057】
図6(b)は、実施形態1の他の変形例を示す発電装置10の上面図である。実施形態1と同一構成要素は同一符号で示し、その説明は省略する。
【0058】
同図に示すように、容器51は、複数の側面(ここでは4側面)に取付部111が設けられ、それぞれに発電ユニット13が取り付けられるものとしてもよい。この場合、複数(ここでは4個)の発電ユニット13同士を直列に接続することで、出力電力を向上させることができる。また、この例では4側面に設ける場合を例に示したが、2側面や3側面に設けるようにしてもよい。
【0059】
図7は、実施形態1の変形例を示す発電装置10の側断面図である。実施形態1と同一構成要素は同一符号で示し、その説明は省略する。
【0060】
発電ユニット13は、吸熱側面131Aと放熱側面131Bの温度差を利用して発電する熱電交換素子131を少なくとも備えていれば良く、吸熱フィン132と放熱フィン133のいずれかまたは両方を備えていなくても良い。
【0061】
同図(a)は、発電ユニット13が吸熱フィン132と放熱フィン133のいずれも有さない構成である。水14の分量は、発電ユニット13(熱電交換素子131)の吸熱側面131Aの少なくとも一部と接触する量とすることが望ましい。
【0062】
同図(b)は、発電ユニット13が熱電交換素子131と吸熱フィン132を有する構成であり、水14の分量は、熱電交換素子131の吸熱側面131A(吸熱フィン132)の少なくとも一部と接触する量とすることが望ましい。
【0063】
同図(c)は、発電ユニット13が熱電交換素子131と放熱フィン133を有する構成であり、水14の分量は、熱電交換素子131の吸熱側面131Aの少なくとも一部と接触する量とすることが望ましい。
【0064】
なお、上記の実施形態では、水14が発電ユニット13の吸熱側面131Aの少なくとも一部と接触する場合を例に説明した。しかし、水14と発熱剤12の反応により、容器11内の温度が容器11外の温度より十分高温になれば発電ユニット13による発電は可能で有り、水14が吸熱側面131Aの一部と接触しない構成であってもよい。
【0065】
また、
図7(a)、(b)に示すように、放熱フィン133を設けない場合には、断熱材136は不要であり、放熱フィン133を設ける場合であっても、断熱材136を設けなくてもよい。
【0066】
以上、本発明の発熱装置10および発熱装置の組立ユニット20は、上述した実施形態及び変形例を適宜組み合わせることができる。
【0067】
また、本発明の発熱装置10および発熱装置の組立ユニット20は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の発電装置発電装置の組立ユニット、発電装置の組立方法は、平常時は備蓄しておき、非常時などに発電をする際に利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 発電装置
11 容器
12 発熱剤
13 発電ユニット
14 水
131 ペルチェ素子
132 吸熱フィン
133 放熱フィン
【手続補正書】
【提出日】2015年7月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器に収容される水と、
前記容器に収容され、前記水との接触により発熱する発熱剤と、
吸熱側面と放熱側面を有し、該両側面の温度差を利用して発電する発電ユニットと、を備え、
前記発電ユニットは、前記吸熱側面が前記容器の内部に位置するように前記容器の側面に取り付けられ、前記吸熱側面側の一部が前記水と直接接触するとともに前記放熱側面が外気に接触するものであり、
前記水は、発電時に前記容器に収容されるものであり、
前記発熱剤は、粉体アルミニウムと粉体生石灰とからなり、前記発熱剤の総重量に対して、前記粉体アルミニウムが70%乃至85%、前記粉体生石灰が15%乃至30%である、
ことを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記発熱剤は、ホルダーに収容されて前記水に浸漬される、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記発電ユニットは、
前記吸熱側面と前記放熱側面とを備える熱電交換素子と、
前記吸熱側面に設けられた第一のフィンと、
前記放熱側面に設けられた第二のフィンと、を有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記第二のフィンの表面積は、前記第一のフィンの表面積よりも大きい、
ことを特徴とする請求項3に記載の発電装置。
【請求項5】
前記第二のフィンの表面積は前記第一のフィンの表面積の6倍程度である、
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の発電装置。
【請求項6】
吸熱側面と放熱側面を有し、該両側面の温度差を利用して発電する発電ユニットと、
水を収容可能であるとともに、前記吸熱側面が内部に位置し、該吸熱側面側の一部が前記水と直接接触するとともに前記放熱側面が外気に接触するように、側面に前記発電ユニットの取付部を備えた容器と、
前記容器に収容可能な発熱剤と、を備え、
前記発熱剤は、粉体アルミニウムと粉体生石灰とからなり、前記発熱剤の総重量に対して、前記粉体アルミニウムが70%乃至85%、前記粉体生石灰が15%乃至30%である、
ことを特徴とする発電装置の組立キット。
【請求項7】
封入体内に封入された水を備える、
ことを特徴とする請求項6に記載の発電装置の組立キット。
【請求項8】
前記発熱剤を収容して前記水に浸漬可能なホルダーを備える、
ことを特徴とする請求項7に記載の発電装置の組立キット。
【請求項9】
前記発電ユニットは、
前記吸熱側面と前記放熱側面と備える熱電交換素子と、
前記吸熱側面に設けられた第一のフィンと、
前記放熱側面に設けられた第二のフィンと、を有する、
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の発電装置の組立キット。
【請求項10】
前記第二のフィンの表面積は、前記第一のフィンの表面積よりも大きい、
ことを特徴とする請求項9に記載の発電装置の組立キット。
【請求項11】
前記第二のフィンの表面積は前記第一のフィンの表面積の6倍程度である、
ことを特徴する請求項9または請求項10に記載の発電装置の組立キット。
【請求項12】
容器に、総重量に対して70%乃至85%の粉体アルミニウムと15%乃至30%の粉体生石灰からなる発熱剤を収容するステップと、
吸熱側面と放熱側面とを備え、該両側面の温度差を利用して発電する発電ユニットを、前記吸熱側面が前記容器の内部に位置するとともに前記放熱側面が外気に接触するように前記容器の側面に取り付けるステップと、
水を前記容器内に収容し、前記吸熱側面側の一部を前記水と直接接触させるステップと、を有する
ことを特徴とする発電装置の組立方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、発電装置は、容器と、前記容器に収容される水と、前記容器に収容され、前記水との接触により発熱する発熱剤と、吸熱側面と放熱側面を有し、該両側面の温度差を利用して発電する発電ユニットと、を備え、
前記発電ユニットは、前記吸熱側面が前記容器の内部に
位置するように前記容器の側面に取り付け
られ
、前記吸熱側面側の一部が前記水と直接接触するとともに前記放熱側面が外気に接触するものであり、前記水は、発電時に前記容器に収容されるものであり、前記発熱剤は、粉体アルミニウムと粉体生石灰とからなり、前記発熱剤の総重量に対して、前記粉体アルミニウムが70%乃至85%、前記粉体生石灰が15%乃至30%である、ことを特徴とするものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
また、発電装置の組立キットは、吸熱側面と放熱側面を有し、該両側面の温度差を利用して発電する発電ユニットと、水を収容可能であるとともに、前記吸熱側面が内部に位置
し、該吸熱側面側の一部が前記水と直接接触するとともに前記放熱側面が外気に接触するように
、側面に前記発電ユニットの取付部を備えた容器と、前記容器に収容可能な発熱剤と、を備え
、前記発熱剤は、粉体アルミニウムと粉体生石灰とからなり、前記発熱剤の総重量に対して、前記粉体アルミニウムが70%乃至85%、前記粉体生石灰が15%乃至30%である、ことを特徴とするものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
また、発電装置の組立方法は、容器に、
総重量に対して70%乃至85%の粉体アルミニウムと15%乃至30%の粉体生石灰からなる発熱剤を収容するステップと、吸熱側面と放熱側面とを備え、該両側面の温度差を利用して発電する発電ユニットを、前記吸熱側面が前記容器の内部に位置する
とともに前記放熱側面が外気に接触するように前記容器
の側面に取り付け
るステップと、
水を前記容器内に収容
し、前記吸熱側面側の一部を前記水と直接接触させるステップと、を有することを特徴とするものである。