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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-198880(P2016-198880A)
(43)【公開日】2016年12月1日
(54)【発明の名称】ボンド研磨物品および形成方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/14 20060101AFI20161104BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20161104BHJP
   B24D 3/18 20060101ALI20161104BHJP
【FI】
   B24D3/14
   B24D3/00 320A
   B24D3/18
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-155831(P2016-155831)
(22)【出願日】2016年8月8日
(62)【分割の表示】特願2014-181040(P2014-181040)の分割
【原出願日】2010年10月8日
(31)【優先権主張番号】61/249,659
(32)【優先日】2009年10月8日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】391010770
【氏名又は名称】サンーゴバン アブレイシブズ,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】507169495
【氏名又は名称】サン−ゴバン アブラジフ
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(72)【発明者】
【氏名】ギレス ケレル
(72)【発明者】
【氏名】サンディヤ ジャヤラマン ルクマニ
(72)【発明者】
【氏名】ムトゥ ジーバナンタム
(72)【発明者】
【氏名】ローズマリー ボット−シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ケリー マクニール
(72)【発明者】
【氏名】ニランジャン サランギ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】微結晶アルミナ粒の溶解及び劣化を抑制しながら高温形成プロセスを容易にするボンド材料及び研磨物品を提供する。
【解決手段】砥粒が微結晶アルミナを含み、ボンド材料が1.0モル%未満の酸化リン(P)を含み、[KO/NaO]により定義される酸化ナトリウムの合計含有量[NaO]と酸化カリウムの合計含有量[KO]とのモル%単位で測定された比が0.5〜2.2の範囲内の値を有し、酸化アルカリ化合物の合計含有量が8モル%超、13モル%未満であり、前記ボンド材料が少なくとも12モル%のアルミナ(Al)を含み、前記ボンド材料が更にシリカを含み、[Caoc/SiO]として表される、モル%で測定されたシリカ(SiO)の合計含有量と、モル%で測定された酸化アルカリ化合物(Caoc)の合計含有量との間の比が0.18超である、研磨物品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンド材料中に含まれた砥粒を有する研磨体を含む研磨物品であって、前記砥粒が微結
晶アルミナを含み、前記ボンド材料が1.0モル%未満の酸化リン(P)を含み、
[KO/NaO]により定義される酸化ナトリウムの合計含有量[NaO]と酸化
カリウムの合計含有量[KO]とのモル%単位で測定された比が0.5〜2.2の範囲
内の値を有し、酸化アルカリ化合物の合計含有量が8モル%超、13モル%未満であり、
前記ボンド材料が少なくとも12モル%のアルミナ(Al)を含み、
前記ボンド材料が更にシリカを含み、[Caoc/SiO]として表される、モル%
で測定されたシリカ(SiO)の合計含有量と、モル%で測定された酸化アルカリ化合
物(Caoc)の合計含有量との間の比が0.18超である、研磨物品。
【請求項2】
前記ボンド材料が2.0モル%〜8.0モル%の酸化ナトリウム(NaO)を含む、
請求項1に記載の研磨物品。
【請求項3】
前記ボンド材料が4.0モル%〜10モル%の酸化カリウム(KO)を含む、請求項
1または2に記載の研磨物品。
【請求項4】
前記ボンド材料は、合計含有量2.0モル%未満の酸化リチウム(LiO)を含む請
求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項5】
前記ボンド材料が、[Caoc/Cdaeo]として表わされる、モル%単位の酸化ア
ルカリ化合物の合計含有量[Caoc]とモル%単位の2価アルカリ土類酸化化合物の合
計含有量[Cdaeo]との、少なくとも1.2かつ3.0未満という値を有する比を有
する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項6】
ボンド材料中に含まれた砥粒を有する研磨体を含む研磨物品であって、
前記研磨体は50体積%未満の気孔率で、
前記砥粒は前記ボンド材料の中に含まれるとともに微結晶アルミナを含み、
前記ボンド材料は、合計含有量が8モル%超13モル%未満の酸化アルカリ化合物と2
.0モル%未満の酸化リチウム(LiO)とを含み、
前記ボンド材料は、更にシリカを含み、[Caoc/SiO]として表される、モル
%で測定されたシリカ(SiO)の合計含有量と、モル%で測定された酸化アルカリ化
合物(Caoc)の合計含有量との間の比が0.18超である、研磨物品。
【請求項7】
前記研磨体の気孔率が約45体積%未満である請求項1〜6のいずれか1項に記載の研
磨物品。
【請求項8】
前記ボンド材料が非晶相を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項9】
ボンド材料中に含まれた砥粒を有する研磨体を含む研磨物品であって、前記砥粒が微結
晶アルミナを含み、前記ボンド材料が合計含有量で8モル%超13モル%未満の酸化アル
カリ化合物を含み、更に前記ボンド材料がシリカを含み、[Caoc/SiO]として
表される、モル%で測定されたシリカ(SiO)の合計含有量と、モル%で測定された
酸化アルカリ化合物(Caoc)の合計含有量との間の比が0.18超であり、
前記ボンド材料が少なくとも12モル%のアルミナ(Al)を含み、
10秒の単一サイクル時間について15psi(103kPa)の圧力下で標準砂を使
用して48ccの体積を有するサンドブラストチャンバ内において測定される条件下で測
定された研磨体内への2.2mm以下のサンドブラスト侵入値を有する研磨物品。
【請求項10】
ボンド材料が0.1モル%〜10molの酸化ホウ素(B)を含む請求項1〜9
のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項11】
ボンド材料が55モル%〜70モル%のシリカ(SiO)を含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項12】
酸化アルカリ化合物の合計含有量が12モル%未満である請求項1〜11のいずれか1
項に記載の研磨物品。
【請求項13】
研磨体が、合計含有量で34体積%〜56体積%の砥粒を含む請求項1〜12のいずれ
かに1項に記載の研磨物品。
【請求項14】
前記研磨体は、合計含有量で3.0体積%〜30体積%のボンド材料を含む請求項1〜
13のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項15】
前記研磨体は、気孔率が30体積%〜49体積%である請求項1〜14のいずれか1項
に記載の研磨物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下は、ボンド研磨材、特に微結晶アルミナ砥粒を取込んだボンド研磨物品に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨工具は一般に、材料除去の利用分野向けにボンド材料の内部に含まれた砥粒を有す
るように形成されている。超砥粒(例えばダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素(CBN
))または、微結晶アルファアルミナ(MCA)砥粒とも呼ばれる種添加(さらには種無
添加)焼結ゾルゲルアルミナ砥粒は、このような研磨工具において利用でき、さまざまな
材料上で優れた研削性能を提供するものとして公知である。ボンド材料は有機材料例えば
樹脂または無機材料、例えばガラスまたはビトリファイド材料であり得る。詳細には、ビ
トリファイドボンド材料を用いMCA粒または超砥粒を含むボンド研磨工具は、一貫性が
あり改善された研削性能を必要とする精密金属部品および他の産業用コンポーネントを研
削するために商業的に有用である。
【0003】
一部ボンド研磨工具、特にビトリファイドボンド材料を利用するボンド研磨工具は、多
くの場合おおよそ1000℃以上という高温での形成プロセスを必要とし、これは、砥粒
に対し不利な影響を及ぼす可能性がある。事実、研磨工具を形成するのに必要なこのよう
な高温においては、ボンド材料は砥粒特にMCA粒と反応して無欠性を損ない、粒の鋭利
度および性能特性を低減させる可能性があることが認められている。結果として、業界は
、形成プロセスの間に砥粒の高温劣化を阻止する目的でボンド材料を形成するのに必要な
形成温度の低下に向かって移行してきた。
【0004】
例えば、MCA粒とビトリファイドボンドの間の反応量を低減させるために、米国特許
第4,543,107号明細書は、約900℃という低い温度で焼成するのに適した組成
物を開示している。代替的なアプローチにおいて、米国特許第4,898,597号明細
書は、約900℃という低い温度で焼成するのに適した少なくとも40%のフリット材料
を含むボンド組成物を開示している。1100℃未満の温度そして実際には1000℃未
満の温度で形成できるボンド材料を利用するこのようなボンド研磨物品としては、米国特
許第5,203,886号明細書、米国特許第5,401,284号明細書、米国特許第
5,536,283号明細書および米国特許第6,702,867号明細書が含まれる。
それでもなお、業界はひきつづき、このようなボンド研磨物品の性能の改善を必要として
いる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの態様によると、研磨物品は、ボンド材料中に含まれた砥粒を有する研磨体を含ん
でおり、ここで砥粒は微結晶アルミナを含む。ボンド材料は、前記ボンド材料が1.0モ
ル%未満の酸化リン(P)を含む。ボンド材料は、[KO/NaO]により定
義される酸化ナトリウムの合計含有量[NaO]と酸化カリウムの合計含有量[K
]とのモル%単位で測定された比が0.5〜2.2の範囲内の値を有する。ボンド材料が
少なくとも12モル%のアルミナ(Al)を含む。ボンド材料が更にシリカを含み
、[Caoc/SiO]として表される、モル%で測定されたシリカ(SiO)の合
計含有量と、モル%で測定された酸化アルカリ化合物(Caoc)の合計含有量との間の
比が0.18超である。そして、ボンド材料は化アルカリ化合物の合計含有量が8モル%
超、13モル%未満である。
【0006】
別の態様では、研磨物品は、ボンド材料中に含まれた砥粒を有する研磨体を含む。研磨
体は50体積%未満の気孔率である。砥粒はボンド材料の中に含まれるとともに微結晶ア
ルミナを含む。ボンド材料は、合計含有量が8モル%超13モル%未満の酸化アルカリ化
合物と2.0モル%未満の酸化リチウム(LiO)とを含む。ボンド材料は、更にシリ
カを含み、[Caoc/SiO]として表される、モル%で測定されたシリカ(SiO
)の合計含有量と、モル%で測定された酸化アルカリ化合物(Caoc)の合計含有量
との間の比が0.18超である。
【0007】
更に別の態様では、研磨物品は、ボンド材料中に含まれた砥粒を有する研磨体を含む。
砥粒が微結晶アルミナを含む。ボンド材料が合計含有量で8モル%超13モル%未満の酸
化アルカリ化合物を含み、更にボンド材料がシリカを含み、[Caoc/SiO]とし
て表される、モル%で測定されたシリカ(SiO)の合計含有量と、モル%で測定され
た酸化アルカリ化合物(Caoc)の合計含有量との間の比が0.18超である。また、
ボンド材料が少なくとも12モル%のアルミナ(Al)を含む。そして、10秒の
単一サイクル時間について15psi(103kPa)の圧力下で標準砂を使用して48
ccの体積を有するサンドブラストチャンバ内において測定される条件下で測定された研
磨体内への2.2mm以下のサンドブラスト侵入値を有する。
【0008】
添付図面を参照することによって、当業者は本開示をより良く理解し、その数多くの特
徴および利点を明らかにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る研磨物品の形成方法を示す流れ図である。
図2】一実施形態にしたがって形成された試料および従来のボンド研磨材試料についての平均電力消費量と材料除去速度の関係を示すプロットである。
図3】一実施形態にしたがって形成された試料および従来のボンド研磨材試料についての平均表面粗度(Ra)と材料除去速度の関係を示すプロットである。
【0010】
同一の図面中の参照番号の使用は、類似のまたは同一の品目を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下は、一般には研磨物品、詳細にはボンド材料内部に含まれた砥粒を用いるボンド研
磨物品に向けられている。このような研磨物品は、材料除去の利用分野、例えば工作物に
仕上げ加工および/または研削を施すためのさまざまな業界における材料除去の利用分野
において有用である。研磨物品は、さまざまな仕上げ加工用工具例えば、ホイール、コー
ン、コップ形状の物品、ホーンおよび/または砥石を製造するように成形し、所定の大き
さにすることができる。
【0012】
図1は、一実施形態に係る研磨物品の形成方法を示す流れ図である。示されている通り
、このプロセスは、ステップ101で砥粒をボンド材料粉末と混合することによって開始
される。一実施形態によると、砥粒は酸化物などの無機材料を含むことができる。より詳
細には、砥粒は微結晶アルミナ(MCA)粒を含むことができる。
【0013】
MCAまたはゾルゲルアルミナ粒は、好ましくは、種添加または種無添加ゾルゲルプロ
セスのいずれかにより生産される。本明細書で使用される「ゾルゲルアルミナグリット」
という用語は、酸化アルミニウム一水和物のゾルを解膠してゲルを形成するステップと、
ゲルを乾燥させ焼成してそれを焼結させるステップと、次に焼結ゲルを破砕し、篩にかけ
、分粒してアルファアルミナ微結晶から成る多結晶粒(例えば少なくとも約95%のアル
ミナ)を形成するステップとを含むプロセスによって作られたアルミナグリットのことで
ある。アルファアルミナ微結晶に加えて、初期ゾルはさらに、最高15重量%のスピネル
、ムライト、二酸化マンガン、チタニア、マグネシア、希土類金属酸化物、ジルコニア粉
末またはジルコニア前駆体(これはより大量、例えば40重量%以上で添加可能である)
または他の相容性ある添加剤またはその前駆体を含んでいてもよい。これらの添加剤は多
くの場合、破壊靱性、硬度、脆性、破壊機構または乾燥挙動などの特性を修正するために
含み入れられる。焼結ゾルゲルアルファアルミナ粒の調製は、他の箇所で詳述される。こ
のような調製の詳細は、例えば、その内容が参照により本明細書に援用されている米国特
許第4,623,364号明細書、同第4,314,827号明細書および同第5,86
3,308号明細書中に見いだすことができる。
【0014】
MCA粒という用語は、少なくとも95%の理論密度および500グラムで少なくとも
18GPaのビッカース硬度(500グラム)を有する少なくとも60%のアルファアル
ミナ微結晶を含むあらゆる結晶粒を含むように定義される。焼結ゾルゲルアルファアルミ
ナ粒は、アルファアルミナ微結晶中に分散されたアルファアルミナ以外の材料の板状体を
含んでいてもよい。一般に、アルファアルミナ粒子および板状体は、この形態で作られた
場合、サイズがサブミクロンである。本発明において有用であるMCA砥粒調製物および
MCA砥粒タイプのさらなる詳細は、米国特許第4,623,364号明細書および同第
4,314,827号明細書中に開示されている基本的技術を引用する数多くの他の特許
文献および刊行物のいずれか1つに見いだすことができる。
【0015】
砥粒内で用いられる微結晶アルミナは、1ミクロン未満の平均結晶子サイズを有し得る
。実際に、一部の場合において、微結晶アルミナは約0.5ミクロン未満、そして詳細に
は約0.1〜約0.2ミクロンの間の範囲内の平均結晶子サイズを有し得る。
【0016】
さらに、本明細書の実施形態のボンド研磨物品は、一定含有量の二次砥粒を利用しても
よいということがわかる。二次砥粒が使用される場合、このような砥粒は、工具の合計砥
粒の約0.1〜約97体積%、より好ましくは約30〜約70体積%を提供することがで
きる。使用してもよい二次砥粒としては、酸化アルミナ、炭化ケイ素、立方晶窒化ホウ素
、ダイヤモンド、フリントおよびガーネット粒そしてそれらの組合せが含まれるが、これ
らに限定されない。
【0017】
ボンド材料粉末に関しては、無機材料、詳細にはガラス質ボンドを有する最終形成済み
研磨物品の形成を容易にする無機材料を使用してもよい。すなわち、最終形成済み研磨物
品は、一定含有量の非晶相を有するガラス質ボンドを有することができる。詳細には、本
明細書中の実施形態の最終形成済みボンド研磨物品は、本質的に非晶相で構成されたボン
ド材料を含み得る。
【0018】
特定の場合において、ボンド材料粉末は、酸化物などの無機材料を含むことができる。
とりわけボンド材料粉末は、ビトリファイド結合した最終形成済みボンド材料を形成する
ために適しているフリット材料を含むことができる。フリット材料は、最初に高温(例え
ば1000℃以上)まで焼成し、冷却し、圧砕しかつ分粒して、粉末化材料(「フリット
」)を形成することにより形成される、ガラスから形成された粉末材料を含み得る。フリ
ットはこのとき、シリカおよび粘土などの原料からガラスを作るために使用される初期焼
成温度よりもはるかに低い温度で溶融させることができる。
【0019】
以下の段落では、ボンド材料粉末中に使用されてもよい特定の含有量および特定の組成
物を示す。本明細書中において、混合物を形成する上での一部の組成物の特定の量に対し
て言及されている場合であっても、それが必ずしも指摘された種の各々を全く同じ含有量
で有する最終形成済み研磨物品中の最終ボンド組成物を形成しないことがあるということ
がわかるだろう。すなわち、形成プロセス中、一部の種の含有量は変化する可能性があり
、したがって、最終形成済みボンド研磨材は必ずしも、初期混合物のボンド材料粉末内に
最初に含まれていたものと同じ量で一部の種を含まないことがある。
【0020】
本明細書中の実施形態は、フリット材料を有するボンド材料粉末を利用することができ
る。フリット材料は、シリカ、酸化アルカリ化合物、酸化アルカリ土類化合物などの酸化
物およびそれらの組合せから形成されてもよい。フリット材料は、最終形成済みボンド研
磨材中のビトリファイドボンド材料の適切な形成を容易にする。一実施形態によると、ボ
ンド材料粉末は、一定含有量のシリカ(SiO)を含むことができる。例えば本明細書
中の実施形態は、少なくとも約50モル%のシリカから形成されたボンド材料粉末を利用
してもよい。他の実施形態において、シリカの量はより大きいもの、例えば少なくとも約
55モル%、例えば少なくとも約56モル%、そして詳細には約55〜約70モル%の範
囲内のシリカであり得る。
【0021】
さらに、ボンド材料粉末は、一定含有量の酸化アルカリ化合物、詳細には低温ボンド組
成物中でより一般的であることができる低含有量のこのような酸化アルカリを含み得る。
酸化アルカリ化合物は、酸化リチウム(LiO)、酸化カリウム(KO)、酸化ナト
リウム(NaO)およびその組合せなどの、周期表中に第1A族元素として示されてい
るアルカリ種を用いた酸化化合物および錯体である。
【0022】
一実施形態によると、ボンド材料粉末は、約14モル%以下の合計酸化アルカリ化合物
で形成され得る。他の場合において、ボンド材料粉末は、より少ない酸化アルカリ化合物
、例えばおおよそ約13モル%以下、約12.8モル%以下、約12.6モル%以下、約
12.4モル%以下、約12モル%以下、さらには約11モル%以下の酸化アルカリ化合
物から形成されている。本明細書中の詳細な実施形態は、約5モル%〜約14モル%、例
えば約8モル%〜約13モル%、約9モル%〜約12.8モル%、さらには約9モル%〜
約12モル%の範囲内の合計含有量の酸化アルカリ化合物を有するボンド材料粉末を形成
することができる。
【0023】
特に酸化リチウムに関しては、ボンド材料粉末は、一部の低温ボンド組成物中でより一
般的であることができる極めて低含有量の酸化リチウムを含み得る。例えば、本明細書中
の実施形態においては、2.0モル%未満の酸化リチウムからボンド材料粉末を形成する
ことができる。他の場合において、酸化リチウムの含有量は、おおよそ約1.5モル%未
満、例えば1.0モル%未満、例えば0.5モル%未満などの比較的低いものであっても
よい。1つの特定の場合において、ボンド材料粉末は、本質的に酸化リチウムを含まない
ように形成される。
【0024】
ボンド材料粉末は、特定の含有量の酸化ナトリウムから形成され得る。例えば、本明細
書中の実施形態は、約2.0モル%〜約8.0モル%、例えば約3.0モル%〜約7.0
モル%の酸化ナトリウムを使用してもよい。
【0025】
さらに、本明細書中の実施形態は、特定の含有量の酸化カリウム、例えば、約2.0モ
ル%〜約8.0モル%、例えば約3.0モル%〜約8.0モル%の範囲内の酸化カリウム
を使用してもよい。
【0026】
ボンド材料粉末は、一定含有量の酸化アルカリ土類化合物から形成され得る。酸化アル
カリ土類化合物は、元素周期表の第2A族中に存在するアルカリ土類元素由来の2価の種
を取込んだ酸化化合物および錯体である。すなわち例えば、一部の適切な酸化アルカリ土
類化合物としては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化スト
ロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)およびそれらの組合せが含まれ得る。一
実施形態によると、使用されるボンド材料粉末は、約10モル%以下の合計酸化アルカリ
土類化合物から形成され得る。他の場合において、酸化アルカリ土類化合物の含有量は、
より少ないものであり、例えばおおよそ約9.0モル%以下、約8.0モル%以下さらに
は約7.0モル%以下である。本明細書中の特定の実施形態は、約2.0モル%〜約10
モル%、例えば約4.0モル%〜約9.0モル%の範囲内の合計含有量の酸化アルカリ土
類化合物を使用してもよい。
【0027】
酸化アルカリ土類化合物のうち、酸化マグネシウムは、ボンド材料粉末中の他の酸化ア
ルカリ土類化合物に比べて最大の含有量で存在してもよい。例えば、ボンド材料粉末は、
少なくとも約2.0モル%、例えば少なくとも3.0モル%の酸化マグネシウムから形成
され得る。一部の混合物において、ボンド材料粉末は、約3.0モル%〜7.0モル%、
より詳細には約3.0モル%〜6.0モル%の範囲内の酸化マグネシウムを含み得る。
【0028】
ボンド材料粉末は、一定含有量の酸化カルシウムを含むことができる。例えば、本明細
書中の実施形態は、少なくとも約0.5モル%の酸化カルシウム、例えば約0.5モル%
〜3.0モル%の範囲内の酸化カルシウムから形成されたボンド材料粉末を使用してもよ
い。
【0029】
ボンド材料粉末は、一定含有量の酸化バリウムを含んでいてもよい。しかしながら、酸
化バリウムの量は、酸化マグネシウムおよび/または酸化カルシウムの量より少ないもの
であり得る。一般に、ボンド材料粉末は約2モル%未満、例えば約1モル%未満の酸化バ
リウムを含む。
【0030】
本明細書中の実施形態によると、ボンド材料粉末は特定の含有量のアルミナ(Al
)を有するように形成され得る。例えば、本明細書中の実施形態は、約13モル%未満
のアルミナ例えば約12モル%未満のアルミナ、さらには約11モル%未満のアルミナか
ら形成されたボンド材料粉末を使用してもよい。それでもなお、一部の混合物は、約8.
0モル%〜約13モル%、例えば約8.0モル%〜約12モル%の範囲内の含有量のアル
ミナから形成されたボンド材料粉末を使用し得る。
【0031】
以上の酸化物種に加えて、ボンド材料粉末は、一部の低温ボンド組成物に比較して特に
少量であってもよい特定含有量の酸化リン(P)を有するように形成され得る。例
えば、ボンド材料粉末は、1.0モル%未満の酸化リンから形成され得る。他の実施形態
では、ボンド材料粉末は、約0.5モル%未満の酸化リンから形成され得る。特定の場合
において、ボンド材料粉末は、本質的に酸化リンを含まないように形成され得る。
【0032】
さらに、ボンド材料粉末は、一部の低温ボンド組成物より低いものであってもよい特定
含有量の酸化ホウ素(B)から形成され得る。例えばボンド材料粉末は、10モル
%未満の酸化ホウ素を含んでいてもよい。他の場合において、ボンド材料粉末は、約9.
0モル%未満さらには8.0モル%未満の酸化ホウ素から形成され得る。特定の実施形態
は、約5.0モル%〜約10モル%、例えば約5.0モル%〜9.0モル%の酸化ホウ素
から形成されたボンド材料粉末を使用してもよい。
【0033】
ボンド材料粉末は他の材料、例えば一部の他の酸化金属化合物または錯体を含み得る。
適切な追加の酸化金属化合物または錯体には、遷移金属酸化物などの一部の金属元素の酸
化物が含まれていてもよい。このような酸化金属化合物または錯体としては、酸化鉄、酸
化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化クロム、酸
化バナジウム、酸化ビスマスおよびそれらの組合せが含まれ得る。このような追加の金属
酸化物種の存在は、微量であり得、したがってボンド材料粉末は、上記の個々の酸化化合
物のいずれか1つを約2.0モル%未満そしてより詳細には約1.0モル%未満含む。
【0034】
ボンド材料粉末中で砥粒の混合物を形成した後、他の材料をこの混合物に添加してもよ
いことがわかる。例えば、物品の形成を容易にするために、結合剤などの一部の有機化合
物を混合物に添加してもよい。1つの特定の実施形態によると、混合物は、一定含有量の
ポリエチレングリコール、動物性膠、デキストリン、マレイン酸、ラテックス、ワックス
エマルジョン、PVA、CMCおよび他の有機および/または無機結合剤を含むことがで
きる。
【0035】
さらに、最終形成済みボンド研磨物品の形成を容易にするために混合物中に他の添加剤
を提供してもよい。例えば、適切な添加剤には、中空ガラスビーズ、粉砕したクルミの殻
、プラスチック材料または有機化合物のビーズ、発泡ガラス粒子および発泡アルミナ、細
長い粒子、繊維およびそれらの組合せを含む(ただしこれらに限定されない)細孔形成剤
が含まれ得る。
【0036】
ステップ101で混合物を形成した後、プロセスは、ステップ103で混合物を形成し
て未加工物品を形成することによって続行可能である。未加工物品とは、高密度化を補完
するために完全に熱処理されていなくてもよい(すなわち完全に焼成されていなくてもよ
い)仕上げ加工されていない物品を意味する。一実施形態によると、混合物を形成するプ
ロセスには、混合物を意図された最終形成済みボンド研磨物品の形状に類似する特定の形
状にプレス加工するプレス加工作業が含まれ得る。プレス加工作業は、冷間プレス加工作
業として行なわれてもよい。適切な圧力は、約10トン〜約300トンの範囲内であり得
る。
【0037】
ステップ103で適切に混合物を形成した後、プロセスは、ステップ105で少なくと
も1100℃の焼成温度まで未加工物品を加熱して研磨物品を形成することにより続行可
能である。焼成は、一般に、ビトリファイドボンド材料を形成するために適した温度で実
施される。本明細書中の実施形態の形成プロセスは、少なくとも約1100℃などの著し
く高い焼成温度を使用する。他の場合において、焼成温度はこれより高いもの、例えば少
なくとも約1150℃、少なくとも1200℃、少なくとも約1250℃、さらには少な
くとも約1300℃であり得る。本明細書中の実施形態のボンド研磨物品を形成するため
に用いられる焼成温度は、約1100℃〜約1400℃、例えば1100℃〜約1300
℃の範囲内であり得る。
【0038】
一般に、焼成は、空気を含むように、環境大気中で実施可能である。一般に、焼成のた
めのピーク温度の持続時間は、少なくとも約1時間、詳細には約1〜10時間の範囲内で
あり得る。ガラス質ボンド材料内に含まれた砥粒を有するボンド研磨物品を形成するに充
分な程に物品を加熱した後、物品を冷却することができる。本明細書中の実施形態は、炉
の電力をオフに切換えて物品を焼成温度から室温まで自然に冷却させる自然冷却プロセス
を使用してもよい。
【0039】
上記の通り、本明細書の実施形態のボンド研磨物品は、ボンド材料内に含まれた砥粒を
含むことができ、ここで、ボンド材料は非晶相を有するガラス質材料である。その上、上
述のように、一部の組成物(例えば酸化アルカリ化合物、シリカ、アルミナ、酸化ホウ素
など)の特定の含有量を高温形成プロセス中に変更でき、こうして最終形成済みボンド研
磨物品が初期混合物中のこのような組成物の含有量に比べて異なる含有量でこのような組
成物を有するようになっていることが指摘された。したがって、本明細書中の実施形態の
ボンド研磨物品は、それが微結晶アルミナ砥粒の重大な劣化および溶解なく高温で形成さ
れ得るような形で一部の構成成分の一定含有量そしてより詳細には一部の構成成分の比を
研磨物品の最終ボンド材料が有するように形成される。
【0040】
詳細には、研磨物品の最終ボンド組成物は、特定含有量の酸化アルカリ化合物を有し得
る。例えば、酸化ナトリウムに関して、ボンド材料は約8.0モル%以下の酸化ナトリウ
ムを含むことができる。他の実施形態では、酸化ナトリウムの量はそれより少ないもの、
例えば約7.0モル%以下、さらには約6.0モル%以下であり得る。特定の場合におい
て、ボンド材料は、約2.0モル%〜約8.0モル%、より特定的には約3.0モル%〜
約6.0モル%の酸化ナトリウムを含み得る。
【0041】
酸化カリウムに関しては、ボンド材料は、少なくとも約4.0モル%の酸化カリウムを
含み得る。他の場合において、ボンド材料は、少なくとも約5.0モル%の酸化カリウム
を含み得る。一部の実施形態では、研磨物品の最終ボンド材料は、約4.0モル%〜約1
0モル%そして詳細には約4.0モル%〜約8.0モル%の酸化カリウムを有し得る。
【0042】
その上、研磨物品の最終ボンド材料は、それが、酸化カリウムの含有量と酸化ナトリウ
ムの含有量の間に特定の比を有するように形成され得る。例えば、[KO/NaO]
で表わされたモル%単位の酸化カリウム対酸化ナトリウムの比は、約0.5超である値を
有することができる。他の実施形態において、この比は約0.75超、例えば約0.9超
、さらには1.0超であり得る。とりわけ、最終ボンド材料の組成物は、約0.5〜約2
.2、例えば約0.75〜約2.0、約0.8〜1.9、さらには約1.0〜約1.4の
範囲内である酸化カリウムと酸化ナトリウムの間の比[KO/NaO]を用いること
ができる。
【0043】
上述の通り、ボンド材料の初期混合物は、一部の酸化アルカリ化合物、例えば酸化リチ
ウムをきわめて少量含むことができる。こうして、研磨物品の最終形成済みボンド材料は
一般に約2.0モル%未満の酸化リチウム、例えば1.5モル%未満、例えば1.0モル
%未満さらには0.5モル%未満の酸化リチウムを有することができる。とりわけ、特定
の実施形態において、研磨物品の最終形成済みボンド材料は本質的に酸化リチウムを含ま
ない可能性がある。
【0044】
本明細書中の実施形態の研磨物品は、他の従来のボンド材料よりも著しく低い酸化アル
カリ化合物の合計含有量を有することができ、これにより、高い無欠性のMCA粒を用い
たボンド研磨物品の高温での形成が容易になる。すなわち、最終ボンド材料内の酸化アル
カリ化合物の合計量は、約13モル%未満であり得る。詳細には、酸化アルカリ化合物の
合計含有量は、ボンド材料内の材料の合計モル数に対して、約12.8モル%未満、約1
2.6モル%未満、約12.4モル%未満さらには約11.5モル%未満であり得る。一
部の場合において、本明細書中の研磨物品は、最終ボンド材料が、13モル%未満で約8
.0モル%超、例えば約12.8モル%未満で約9.0モル%超、または約12モル%未
満で約8モル%超、あるいは約11.5モル%未満で約9.0モル%超、そしてより詳細
には約11.5モル%未満で約9.5モル%超である酸化アルカリ化合物合計含有量を有
するように形成されている。
【0045】
本明細書中の実施形態の研磨物品は、特定含有量の酸化リンを有することができる。例
えば、最終形成済みボンド材料は、約1.0モル%未満の酸化リン、例えば約0.5モル
%未満の酸化リンを有することができる。詳細には、研磨物品の最終形成済みボンド材料
は、本質的に酸化リンを含まない可能性がある。
【0046】
本明細書中の実施形態の研磨物品の最終形成済みボンドは、特定含有量の酸化ホウ素を
有することができる。例えば、最終形成済みボンド材料は、10モル%未満の酸化ホウ素
を有することができる。他の場合において、最終形成済みボンド材料は、約9.0モル%
未満、例えば8.0モル%未満の酸化ホウ素を含み得る。一部の実施形態では、最終形成
済みボンド材料は、約1.0モル%〜約10モル%、例えば約2.0モル%〜約9.0モ
ル%さらには約2.0モル%〜約8.0モル%の範囲内の酸化ホウ素含有量を有する。
【0047】
最終形成済みボンド材料内に含まれる酸化ホウ素の合計含有量に加えて、本明細書中の
実施形態は、酸化ホウ素の含有量と他の酸化アルカリ組成物の間、さらには酸化ホウ素の
合計含有量と酸化アルカリ化合物の合計含有量の間の特定の比を用いてもよい。
【0048】
以下でわかるように、ボンド材料は、有意な量のシリカを含むことができる。すなわち
、最終形成済みボンド材料は、それが、シリカを大半量(すなわちシリカ50モル%超)
含むように形成され得る。他の実施形態において、最終形成済みボンド材料は、約55モ
ル%超のシリカ、詳細には、約55モル%〜約70モル%、そしてより詳細には約55モ
ル%〜約65モル%のシリカを含み得る。
【0049】
さらに、最終形成済みボンド材料は、[Caoc/SiO]として表わされ約0.1
7超の値を有する、モル%単位で測定されたシリカ含有量と酸化アルカリ化合物の合計含
有量(Caoc)の間の特定の比を示し得る。他の実施形態では、[Caoc/SiO
]比は、約0.18超、例えば約0.17〜0.6、そして詳細には約0.18〜約0.
5の範囲内であり得る。
【0050】
最終形成済みボンド材料は、高温ボンド研磨物品を形成するのに適した一定のアルミナ
(Al)含有量を示し得る。例えば最終形成済みボンド材料は、少なくとも約12
モル%のアルミナ、例えば少なくとも約13モル%のアルミナ、さらには少なくとも約1
4モル%のアルミナを含み得る。それでもなお、最終ボンド内のアルミナ合計含有量は、
例えば約18モル%以下、約17モル%以下さらには約16モル%以下に制限されてもよ
い。以下でわかるように、アルミナ量は、シリカ、酸化アルカリ、アルカリ土類酸化物、
ホウ化物およびそれらの混合物を含む(ただしこれらに限定されない)ボンド材料内の他
の種(すなわち酸化化合物)の合計含有量と比較して制御されてもよい。
【0051】
さらに、最終形成済みボンド材料は、一定含有量の酸化アルカリ土類化合物(Caeo
)を含んでいてもよい。適切な酸化アルカリ土類化合物は、酸化マグネシウム、酸化カ
ルシウム、酸化ストロンチウム、および酸化バリウムを含み得る。特定の場合において、
研磨物品は、最終ボンド材料が約6.0モル%以下、例えば約5.0モル%以下、さらに
は約4.0モル%以下の酸化マグネシウムを含み得るように形成され得る。一部の実施形
態において、最終形成済みボンド材料は、約1.0モル%〜約6.0モル%、例えば約1
.0モル%〜約4.0モル%の酸化マグネシウムを含む。
【0052】
さらに、最終形成済みボンド材料は、特定含有量の酸化カルシウム、詳細には酸化マグ
ネシウムの含有量より少ない量の酸化カルシウムを含むことができる。例えば、最終形成
済みボンド材料は、約6.0モル%未満の酸化カルシウム、例えば約4.0モル%未満の
酸化カルシウム、さらには約3.0モル%未満の酸化カルシウムを含み得る。一部の実施
形態において、最終形成済みボンド材料は、約1.0モル%〜約5.0モル%、例えば約
1.0モル%〜約3.0モル%の酸化カルシウムを含むことができる。
【0053】
その上、最終形成済みボンド材料は、約2.0モル%未満、例えば約1.0モル%未満
そして詳細には約0.1〜約1.0モル%の範囲内の量の酸化バリウムを含み得る。
【0054】
酸化アルカリ土類化合物の合計含有量(Caeoc)は少なくとも約1.0モル%、例
えば少なくとも約2.0モル%、さらには少なくとも約3.0モル%であり得る。それで
もなお、本明細書中の実施形態は、約9.0モル%未満、例えば約8.0モル%未満さら
には約7.0モル%未満であるアルカリ土類酸化物合計含有量を有する最終形成済みボン
ド材料を使用してもよい。すなわち、本明細書中の実施形態に係る研磨物品の最終形成済
みボンド材料は、約2.0モル%〜約9.0モル%、例えば約3.0モル%〜約7.0モ
ル%の範囲内のアルカリ土類酸化物合計含有量を有する可能性がある。
【0055】
酸化アルカリ土類化合物の合計含有量に加えて、ボンド材料は、酸化アルカリ化合物合
計含有量と酸化アルカリ土類化合物間の特定の比を使用してもよい。2価アルカリ土類化
合物の合計含有量(モル%単位)に対する酸化アルカリ化合物の合計含有量(モル%単位
)の比は、少なくとも約1.2という値を有する[Caoc/Caeoc]として表わさ
れた比である。他の実施形態では、この比は少なくとも約1.5、例えば少なくとも約1
.75、少なくとも2.0であり得る。それでもなお、この比は、一般に約3.5未満、
例えば3.25未満、そして3.0未満であり得る。一部の実施形態は、約1.2〜約3
.5、例えば約1.5〜約3.25、例えば約1.75〜約3.0の範囲内そして詳細に
は約2.0〜約2.75の範囲内である、酸化アルカリ化合物と2価アルカリ土類化合物
の間の[Caoc/Caeoc]比を有するボンド材料を使用している。
【0056】
本発明の研磨工具の組成物は好ましくは、約34体積%〜約56体積%、例えば約40
体積%〜約54体積%そして詳細には約44体積%〜約52体積%の合計砥粒含有量を含
む。MCA研磨材は、研磨物品の合計砥粒の約1〜約100体積%、例えば研磨物品中の
砥粒の合計体積の約10体積%〜約80体積%または30体積%〜約70体積%を占める
ことができる。
【0057】
本明細書中の実施形態の研磨物品は、約3.0〜約30体積%のボンド材料を含み得る
。より特定の場合において、研磨物品は、約3体積%〜約25体積%のボンド、約4体積
%〜約20体積%のボンド、さらには約5体積%〜約18.5体積%のボンドを含み得る
。その上、一部の研磨物品は、0.1体積%〜60体積%の1つ以上の二次砥粒、充填材
および/または添加剤を含むことができる。
【0058】
研磨工具の大部分はさまざまな程度の気孔率を有することができるが、本明細書中に含
まれる実施形態にしたがって形成された研磨体の一部は、一定割合の細孔含有率を示して
もよい。例えば、研磨体は、研磨体の合計体積の約50体積%未満である気孔率を有し得
る。他の場合では、気孔率は、約49体積%未満、例えば約40体積%未満であり得る。
特定の場合において、一部の研磨体は、少なくとも約20体積%で約40体積%未満、例
えば少なくとも30体積%で約50体積%未満、そしてより詳細には約30体積%〜約4
9体積%である気孔率を有するように形成され得る。
【0059】
本明細書中に記載されている研磨物品は、微結晶アルミナを含む砥粒の特定の溶解また
は劣化無く高温形成プロセスを通して形成可能である。詳細には、本明細書中のプロセス
によって形成された研磨体は、以下の条件下でのサンドブラスト侵入試験において測定さ
れる通りの特定の硬度を示すことができる。サンドブラスト試験は、まず測定ロッド下の
テーブル上でガラス板材料などの標準を較正することによって実施され、この標準をブラ
ストシールの表面と接触させた。容積48ccのチャンバ内の15psiの空気圧が、1
0秒の単一サイクル時間だけ標準(または試料)の表面で、標準等級の砂材料を吹きつけ
るために用いられた。単一サイクル後に標準内に形成された穴の深度を測定し記録した。
標準内に形成された穴の深度が適切な範囲内にあることを確認した上で、実施形態にした
がって形成された試料を試験した。以下でわかるように、深度の値が低くなればなるほど
、研磨物品の硬度は高くなる。
【0060】
本明細書中の実施形態の一部の研磨物品は、約2.2mm以下のサンドブラスト侵入を
示している。実際、一部の砥粒は、約2.1mm以下、例えば約2.0mm以下、約1.
9mm以下、約1.8mm以下、さらには約1.6mm以下のサンドブラスト侵入を示す
【実施例】
【0061】
2つの試料、すなわち本明細書中の実施形態にしたがって形成された試料S1と従来の
ボンド材料を有する第2の従来の試料CS1とを調製した。試料S1およびCS1を特定
の研削条件下で試験して、その性能特性を比較した。
【0062】
最初に80〜90重量%の砥粒と下表1に提示された組成を有する初期ボンド材料の9
〜15重量%とを組合せることによってS1試料を形成させた。この混合物はさらに、結
合剤材料を含めた他の添加剤を残量(重量%)だけ含んでいた。試料1を最初に冷間プレ
ス加工して未加工物品を形成し、その後、約1200℃の焼成温度で焼結して、おおよそ
46〜50体積%の砥粒、7〜11体積%のボンド材料、および残量の細孔を有する最終
ボンド研磨物品を形成した。ボンド材料の最終組成は、表1に提示されている。
【0063】
【表1】
【0064】
試料CS1は、本明細書に記述されている初期および最終ボンド組成を有する試料S1
のプロセスにしたがって形成される。約900℃〜950℃の焼成温度で、CS1試料を
焼成した。試料S1と同様、試料CS1も、おおよそ46〜50体積%の砥粒、7〜11
体積%のボンド材料、および残量の細孔を含むように形成した。
【0065】
CS1試料のための最終形成済みガラス質ボンドの合計酸化アルカリ化合物含有量は、
有意な含有量の酸化リチウムを含めておおよそ16〜18モル%であり、酸化アルカリ土
類化合物の合計含有量はおおよそ1.5モル%未満であり、合計酸化ホウ素含有量は10
モル%超であり、約14〜18モル%であるものとして計算され、酸化カリウムと酸化カ
ルシウムの間の比[KO/NaO]は0.01〜0.05であった。
【0066】
試料S1およびCS1を、外径(OD)プランジ研削試験に付して、ボンド研磨物品の
電力消費量と同様に研削手順後の試験工作物の最終表面粗度も判定した。ODプランジ研
削条件は、冷却剤を用いて送り速度が制御された研削条件下で実施され、その条件は下表
2に要約されている。
【0067】
【表2】
【0068】
下表3は、所与の回数のドレッシングサイクルについての研削プロセス中の平均電力消
費量および試験後の工作物真円度偏差を要約している。データが示す通り、試料S1は、
より多数回のドレッシングサイクルについて、従来の試料CS1に比べて改善された(す
なわちより低い)平均電力消費量を実証した。その上、S1試料により研削された工作物
の真円度偏差は、CS1ボンド研磨材を用いて研削した試料の真円度偏差の半分であった
【0069】
【表3】
【0070】
試料S1およびCS1を用いて第2の研削試験セットを実施した。下表4に要約した条
件下で、冷却剤を用いて、試料S1およびCS1を用いてトラバース表面研削試験を行な
った。
【0071】
【表4】
【0072】
試験結果は、図2および3のプロットで提示されている。図2は、試料S1およびCS
1についての平均電力と材料除去速度(MMR)の関係を示すプロットを含む。指摘した
通り、試料S1は、試料CS1に比べ、工作物の被験材料除去速度範囲全体にわたりより
低い電力消費量を示した。特に、10mm/s/mmを超えるより高い材料除去速度で
は、試料CS1とS1の平均電力消費量の差は有意なものであった。
【0073】
図3は、ミクロン単位で測定した工作物の平均表面粗度(Ra)と試料S1およびCS
1についての材料除去速度の関係を表わすプロットである。図3に示す通り、一般に、研
削試験後の工作物の表面粗度は両方の試料についてほぼ同じであった。とりわけ、試料S
1は高い材料除去速度ならびに低い材料除去速度でほぼ同じ表面粗度を提供することがで
きた。
【0074】
とりわけ、図2および3の情報を組合せると、本明細書中の実施形態にしたがって形成
されたボンド研磨物品(試料S1)は、従来の試料に比べて高い材料除去速度を使用した
場合でさえ、使用電力量が少なくなる可能性がある。そしてさらに、より高い材料除去速
度においてでさえ、工作物の仕上げが劣化することはない。実際、試験中、試料CS1を
用いて研削した工作物には焼けが発生したが、一方試料S1を用いて研削した工作物に焼
けは観察されなかった。
【0075】
本明細書中の実施形態は、高温ボンド研磨物品中に微結晶アルミナ粒を取込んだ研磨物
品において、微結晶アルミナ粒が改善された集結性と最小限の溶解および劣化を示す研磨
物品に向けられている。MCA粒を用いた最先端のボンド研磨物品は、1000℃未満の
温度で形成された低温ビトリファイドボンドの形成と使用に向けられてきた。しかしなが
ら、本明細書中の実施形態は、高温で形成されたボンド研磨物品および、MCA粒の溶解
および劣化を最低限におさえながら高温形成プロセスを容易にするボンド材料の使用に向
けられている。本明細書中の実施形態はなかでも、酸化アルカリ化合物、酸化アルカリ土
類化合物、酸化ホウ素、シリカ、アルミナ、酸化リンおよび酸化リチウムの合計含有量、
酸化アルカリ化合物、酸化アルカリ土類化合物、酸化ホウ素、シリカ、アルミナ、酸化リ
ンおよび酸化リチウムの相互間で比較した特定の比ならびに、硬度および研削性能などの
改善された特徴を有するボンド研磨物品の形成を容易にする砥粒、ボンドおよび細孔の特
定の含有率を含めた特徴の1つ以上の組合せを利用している。上記には、実施形態のボン
ド研磨物品を記述し定義するためにさまざまな要領で組合せることのできる構成要件の組
合せが記載されている。この記述は、構成要件の序列を説明するように意図されたもので
はなく、本発明を定義するために1つ以上の要領で組合せることのできる異なる構成要件
を説明するように意図されたものである。
【0076】
上記において、具体的な実施形態およびいくつかの構成成分の関連性に対する言及は、
例示的なものである。連動または関連しているものとしての構成成分に対する言及は、前
記構成成分間の直接的関連性または本明細書中で論述されている方法を実施するものとし
て今後認識されるような1つ以上の介入する構成成分を通した間接的な関連性のいずれか
を開示するように意図されたものであることがわかるだろう。したがって、以上で開示し
た内容は、限定的なものではなく例示的なものとしてみなされるべきであり、添付の特許
請求の範囲は、本発明の真の範囲内に入る全ての修正、改善および他の実施形態を網羅す
るように意図されている。こうして、法律により許容される最大限度で、本発明の範囲は
、以下の特許請求の範囲およびその均等の許容可能な最も広義の解釈により決定されるべ
きであり、以上の詳細な説明により制約または限定されるものではない。
【0077】
要約書は、特許法に準拠するように提供されたものであり、クレームの範囲または意味
を解釈または限定するために使用されないという了解の下に提出されたものである。さら
に上述の「詳細な説明」では、開示を簡素化する目的で、さまざまな特徴を一緒にまとめ
るかまたは単一の実施形態に記述していることがある。この開示は、請求対象の実施形態
が各請求項内で明示的に列挙されているよりも多くの構成要件を必要としているという意
図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映している
ように、発明力ある内容は開示されている実施形態のいずれかのものの全てよりも少ない
構成要件に向けられていてもよい。したがって、以下の請求項は、各請求項が別個に請求
される内容を定義するものとして独立している状態で、「詳細な説明」の中に組込まれる
ものである。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2016年8月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンド材料中に含まれた砥粒を有する研磨体を含む研磨物品であって、前記砥粒が微結晶アルミナを含み、前記ボンド材料が2.0モル%以下の含有量の酸化リチウム(LiO)および10モル%以下の含有量の酸化ホウ素(B)を含む、研磨物品。
【請求項2】
ボンド材料中に含まれた砥粒を有する研磨体を含む研磨物品であって、前記砥粒が微結晶アルミナを含み、
前記ボンド材料は、
合計含有量が13モル%未満8モル%超の酸化アルカリ化合物と、
合計含有量が少なくとも2モル%の酸化アルカリ土類化合物と、
合計含有量が10モル%以下の酸化ホウ素(B)と、
合計含有量が少なくとも12モル%のアルミナ(Al)を含み、
[KO/NaO]により定義される、モル%で測定されたNaOの合計含有量とモル%で測定された酸化カリウムKOの合計含有量との間の比が0.5〜2.2の範囲内の値を有し、
[Caoc/SiO]として表される、モル%で測定されたシリカ(SiO)の合計含有量と、モル%で測定された酸化アルカリ化合物(Caoc)の合計含有量との間の比が0.18超の値を有し、
前記ボンド材料は、酸化リチウム(LiO)を含まず、及び酸化リン(P)を含まないか、若しくは0モル%超で1.0モル%未満の酸化リン(P)を含む、研磨物品。
【請求項3】
研磨物品であって、
約50体積%未満の気孔率の研磨体と
ボンド材料の中に含まれるとともに微結晶アルミナを含む砥粒とを含み
前記ボンド材料は、
合計含有量が約13モル%未満8モル%超の酸化アルカリ化合物(Caoc)と、
合計含有量が少なくとも2モル%の酸化アルカリ土類化合物と、
合計含有量が10モル%以下の酸化ホウ素(B)とを含み、
[KO/NaO]により定義される、モル%で測定されたNaOの合計含有量とモル%で測定された酸化カリウムKOの合計含有量との間の比が0.5〜2.2の範囲内の値を有し、
少なくとも4モル%で10モル%以下の酸化カリウム(KO)を含み、
[Caoc/SiO]として表される、モル%で測定されたシリカ(SiO)の合計含有量とモル%で測定された酸化アルカリ化合物(Caoc)の前記合計含有量との間の比が0.18超の値を有し、
前記ボンド材料は、酸化リチウム(LiO)を含まない、研磨物品。
【請求項4】
前記ボンド材料が少なくとも2.0モル%8.0モル%以下の含有量の酸化ナトリウム(NaO)を含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項5】
前記ボンド材料が少なくとも4.0モル%10モル%以下の含有量の酸化カリウム(KO)を含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項6】
前記ボンド材料が、[Caoc/Cdaeo]として表わされる、モル%単位の酸化アルカリ化合物の合計含有量[Caoc]とモル%単位の2価アルカリ土類酸化化合物の合計含有量[Cdaeo]との、少なくとも1.2かつ3.0未満という値を有する比を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項7】
前記ボンド材料が非晶相を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項8】
ボンド材料が少なくとも0.1モル%10mol以下の含有量の酸化ホウ素(B)を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項9】
ボンド材料が少なくとも55モル%70モル%以下の含有量のシリカ(SiO)を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項10】
ボンド材料が、少なくとも8モル%で12モル%以下の酸化アルカリ化合物(Caocの合計含有量を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項11】
研磨体が少なくとも34体積%56体積%以下合計砥粒含有量を含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項12】
前記研磨体は、少なくとも3.0体積%30体積%以下合計ボンド含有量を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項13】
前記研磨体は、少なくとも30体積%49体積%以下の気孔率を含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項14】
前記研磨体は、少なくとも20体積%で45体積%以下の気孔率を含む請求項1〜13のいずれか1項に記載の研磨物品。
【請求項15】
前記ボンド材料は、酸化リチウム(LiO)を含まず、及び酸化リン(P)を含まないか、若しくは0モル%超で1.0モル%未満の酸化リン(P)を含む請求項1に記載の研磨物品。