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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-199230(P2016-199230A)
(43)【公開日】2016年12月1日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20161104BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20161104BHJP
   A47C 1/032 20060101ALI20161104BHJP
【FI】
   B60N2/22
   B60N2/06
   A47C1/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-82807(P2015-82807)
(22)【出願日】2015年4月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】芳田 元
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BB02
3B087BD03
3B087DA06
3B087DB02
3B087DB04
3B087DB08
3B099AA07
3B099BA08
3B099CA25
(57)【要約】
【課題】上下に分割されたシートにおいてシートバックの上部の傾斜角を自由に変更することが可能な乗物用シートを提供する。
【解決手段】乗物に対して前後に移動可能に支持されたクッションフレームF2と、クッションフレームF2と回動可能に連結された下部フレーム11および当該下部フレーム11に対して左右方向に沿った軸線B1回りに回動可能に連結された上部フレーム12を有してなるシートバックフレームF1と、上部フレーム12を、当該上部フレーム12の後ろに位置する支持部材(バックパネルPB)に対して上下に移動可能に支持する移動機構40と、上部フレーム12を支持部材に対して傾動させる傾動機構50とを備えて車両用シートSを構成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に対して前後に移動可能に支持されたクッションフレームと、
前記クッションフレームと回動可能に連結された下部フレームおよび当該下部フレームに対して左右方向に沿った軸線回りに回動可能に連結された上部フレームを有してなるシートバックフレームと、
前記上部フレームを、当該上部フレームの後ろに位置する支持部材に対して上下に移動可能に支持する移動機構と、
前記上部フレームを前記支持部材に対して傾動させる傾動機構とを備えることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記傾動機構は、前記支持部材側に取り付けられる第1固定部と、左右方向に沿った第1軸を中心に前記第1固定部に対して前後に回動可能に支持され、前記シートバック側に取り付けられた第1可動部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート、
【請求項3】
前記第1固定部は、前記支持部材に固定され、前記第1可動部は、前記移動機構に取り付けられたことを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記移動機構は、前記支持部材に固定される第2固定部と、前記第2固定部に対して上下に移動可能な第2可動部とを有し、
前記第1固定部は前記第2可動部に取り付けられ、前記第1可動部は前記シートバックに取り付けられたことを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記傾動機構は、
前記第1固定部に対して前記第1軸と平行な第2軸を中心に回動可能に連結された第1リンクと、
前記第1可動部に対して前記第1軸と平行な第3軸を中心に回動可能に連結されるとともに前記第1リンクに対して前記第1軸と平行な第4軸を中心に回動可能に連結された第2リンクとを有することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第1軸は、前記第1固定部および前記第1可動部の上部に位置し、前記第1固定部および第1可動部は、下側が開閉するように前記第1軸を中心に互いに回動することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記第1軸は、前記第1固定部および前記第1可動部の下部に位置し、前記第1固定部および第1可動部は、上側が開閉するように前記第1軸を中心に互いに回動することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記上部フレームと前記下部フレームの間に設けられた中間フレームを備え、
前記中間フレームの上端部は前記上部フレームの下端部に対して左右方向に沿った軸線回りに回動可能に連結され、前記中間フレームの下端部は前記下部フレームの上端部に対して左右方向に沿った軸線回りに回動可能に連結されたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記中間フレームは、円弧形状に沿ったガイド孔を有し、
前記下部フレームは、前後に離間して配置された複数のピンを有し、
前記複数のピンが前記ガイド孔に係合することで前記中間フレームと前記下部フレームが回動可能に連結されたことを特徴とする請求項8に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックが上下に分割されて分割部で角度を変更することが可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートクッションとシートバックを備える乗物用シートとして、特許文献1には、シートバックが上下に2分割され、シートクッションに対して倒れるときに分割部にて前方に凹に中折れするように構成された車両用リヤシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−86720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においては、シートクッションの位置に応じてシートバックの傾斜角が一つに決まってしまい、乗員の好みに応じたシートバックの傾斜角にすることができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上下に分割されたシートにおいてシートバックの上部の傾斜角を自由に変更することが可能な乗物用シートを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、上部シートに効率良く力を伝えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明の乗物用シートは、乗物に対して前後に移動可能に支持されたクッションフレームと、クッションフレームと回動可能に連結された下部フレームおよび当該下部フレームに対して左右方向に沿った軸線回りに回動可能に連結された上部フレームを有してなるシートバックフレームと、上部フレームを、当該上部フレームの後ろに位置する支持部材に対して上下に移動可能に支持する移動機構と、上部フレームを支持部材に対して傾動させる傾動機構とを備える。
【0008】
このような構成によれば、下部フレームに対して上部フレームが回動可能で中折れ可能なシートにおいて、傾動機構により、上部フレームを支持部材に対して傾動させることで上部フレームの傾斜角を変更することができる。すなわち、シートバックの上部の傾斜角を自由に変更することができる。
【0009】
前記した乗物用シートにおいて、傾動機構は、支持部材側に取り付けられる第1固定部と、左右方向に沿った第1軸を中心に第1固定部に対して前後に回動可能に支持され、シートバック側に取り付けられた第1可動部とを備える構成とすることができる。
【0010】
このような構成によれば、第1可動部が回動する軸線である第1軸が上部フレームと下部フレームの回動の軸線と同じ左右方向に沿っているので、上部シートに効率良く力を伝えて上部シートを傾動させることができる。
【0011】
前記した乗物用シートにおいて、第1固定部は、支持部材に固定され、第1可動部は、移動機構に取り付けられた構成とすることができる。
【0012】
前記した乗物用シートにおいて、移動機構は、支持部材に固定される第2固定部と、第2固定部に対して上下に移動可能な第2可動部とを有し、第1固定部は第2可動部に取り付けられ、第1可動部はシートバックに取り付けられた構成としてもよい。
【0013】
前記した乗物用シートにおいて、傾動機構は、第1固定部に対して第1軸と平行な第2軸を中心に回動可能に連結された第1リンクと、第1可動部に対して第1軸と平行な第3軸を中心に回動可能に連結されるとともに第1リンクに対して第1軸と平行な第4軸を中心に回動可能に連結された第2リンクとを有することができる。
【0014】
前記した乗物用シートにおいて、第1軸は、第1固定部および第1可動部の上部に位置し、第1固定部および第1可動部は、下側が開閉するように第1軸を中心に互いに回動する構成としてもよい。もしくは、第1軸は、第1固定部および第1可動部の下部に位置し、第1固定部および第1可動部は、上側が開閉するように第1軸を中心に互いに回動する構成とすることもできる。
【0015】
前記した乗物用シートにおいて、上部フレームと下部フレームの間に設けられた中間フレームを備え、中間フレームの上端部は上部フレームの下端部に対して左右方向に沿った軸線回りに回動可能に連結され、中間フレームの下端部は下部フレームの上端部に対して左右方向に沿った軸線回りに回動可能に連結された構成とすることもできる。
【0016】
このような構成によれば、シートバックが2箇所で中折れすることができるので、シートバックを、より自由に乗員の好みの形状にすることができる。
【0017】
前記した乗物用シートにおいて、中間フレームは、円弧形状に沿ったガイド孔を有し、下部フレームは、前後に離間して配置された複数のピンを有し、複数のピンがガイド孔に係合することで中間フレームと下部フレームが回動可能に連結されていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、下部フレームが中間フレームを押し上げるときに中間フレームを安定した状態で押し上げることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シートバックの上部の傾斜角を自由に変更することができる。
【0020】
また、本発明によれば、第1可動部が回動する軸線である第1軸が左右方向に沿っていることで、上部シートに効率良く力を伝えて上部シートを傾動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】シートフレームの斜視図である。
図2】シートフレームの側面図である。
図3】(a)図2の部分拡大図であり、(b)は、取付ブラケットを後ろから見た斜視図である。
図4】車両用シートの動作を説明する図であり、クッションフレームを前に移動させた状態を示す。
図5】車両用シートの動作を説明する図であり、傾動機構を作動させて上部フレームを寝かせた状態を示す。
図6】第1変形例に係る乗物用シートのシートフレームの側面図である。
図7】第1変形例に係る乗物用シートの動作を説明するシートフレームの側面図である。
図8】第2変形例に係る乗物用シートのシートフレームの要部拡大側面図である。
図9】第2変形例に係る乗物用シートの動作を説明するシートフレームの側面図である。
図10】第3変形例に係る乗物用シートのシートフレームの側面図である。
図11】第3変形例に係る乗物用シートの動作を説明するシートフレームの側面図である。
図12】第4変形例に係る乗物用シートのシートフレームの要部拡大側面図である。
図13】第4変形例に係る乗物用シートの動作を説明するシートフレームの要部拡大側面図である。
図14】第4変形例に係る乗物用シートの動作を説明するシートフレームの要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、乗物用シートの一例としての車両用シートSは、車両に搭載されるシートでり、シートバックS1とシートクッションS2を備えている。車両用シートSには、シートフレームFが内蔵されている。シートフレームFは、シートバックS1の骨格を構成するシートバックフレームF1と、シートクッションS2の骨格を構成するクッションフレームF2とを含んでなる。シートバックフレームF1には、パッドP1が被せられ、クッションフレームF2にはパッドP2が被せられる。なお、本明細書において、前後、左右および上下は、車両用シートSに座る乗員を基準とする。
【0023】
シートバックフレームF1は、パイプ材を屈曲させてなる下部フレーム11と上部フレーム12とを有する。
【0024】
下部フレーム11は、上側に開いたU字形状を有し、左右に離れた上下に延びるサイドフレーム11Cと、サイドフレーム11Cの下端部同士を繋ぐ下フレーム11Dとを含んでなる。下フレーム11Dには、下方に延出する2つの接続ブラケット11Aが左右に離れて2つ設けられている。
【0025】
上部フレーム12は、下側に開いたU字形状を有し、左右に離れた上下に延びるサイドフレーム12Cと、サイドフレーム12Cの上端部同士を繋ぐ上フレーム12Dとを含んでなる。左右のサイドフレーム12Cは、上フレーム12Dより下の位置で、板金からなるシートバックパネル13により連結されている。また、左右のサイドフレーム12Cの下端部には、ブラケット12Aが溶接されている。そして、ブラケット12Aは、下部フレーム11の左右のサイドフレーム11Cの上端部に、左右方向に沿った軸線B1回りに回動可能に連結されている。
【0026】
クッションフレームF2は、平面視で四角形に屈曲形成されたパイプ材からなるメインフレーム21を有する。メインフレーム21は、左右に離れて配置され、前後に延びるサイドフレーム21Sと、左右のサイドフレーム21Sの前端を繋ぐ前フレーム21Bと、左右のサイドフレーム21Sの後端同士を繋ぐ後フレーム21Cとを有する。後フレーム21Cには、上方に延出する接続ブラケット21Aが左右に離れて2つ設けられている。
【0027】
クッションフレームF2の接続ブラケット21Aと下部フレーム11の接続ブラケット11Aとは、左右方向に沿った軸線B2回りに互いに回動可能に連結されている。これにより、シートバックフレームF1の下部フレーム11は、クッションフレームF2に対して軸線B2回りに回動可能に連結されている。
【0028】
クッションフレームF2は、スライドレール機構25により車両のフロアパネルPFに対して前後に移動可能に支持されている。スライドレール機構25は、ロアレール25Aと、ロアレール25Aに対して前後にスライド移動可能に係合されたアッパーレール25Bとを含んでなる。ロアレール25Aは、フットブラケット26を介してフロアパネルPFに固定されている。アッパーレール25Bは、クッションフレームF2に固定されている。
【0029】
クッションフレームF2は、駆動機構30により、車両に対して前後に移動可能に構成されている。具体的に、駆動機構30は、モータ31と、ギアボックス32と、スクリューシャフト33とを有してなる。スクリューシャフト33は、長手方向が前後に向けて配置され、前端がクッションフレームF2の前フレーム21Bに連結されている。ギアボックス32には、スクリューシャフト33と係合した図示しないナットおよび減速機が設けられ、フロアパネルPFに固定されている。駆動源としてのモータ31は、ギアボックス32に固定され、その出力軸がギアボックス32内の減速機と連結されている。これにより、モータ31を正転または逆転させると、スクリューシャフト33が前方または後方に移動することで、クッションフレームF2を前後に移動することが可能となっている。
【0030】
図2に示すように、上部フレーム12は、移動機構40および傾動機構50を介して、上部フレーム12の後ろに位置する支持部材の一例としてのバックパネルPBに支持されている。
【0031】
移動機構40は、上部フレーム12をバックパネルPBに対して上下に移動可能に支持する機構であり、図3(a)に示すように、第2可動部の一例としてのガイド筒41と、第1固定部の一例としてのガイドバー42および取付ブラケット43とを有してなる。
ガイド筒41は、上下に貫通する円形断面のガイド孔を有する筒状部材であり、シートバックパネル13の後面に固定されている。ガイド筒41は、図1に示すように左右に離れて2つ設けられている。
ガイドバー42は、ガイド筒41のガイド孔に対応した直径を有する棒であり、上下方向(上部フレーム12のサイドフレーム12Cの延びる方向)に沿って設けられている。ガイド筒41は、ガイド孔にガイドバー42が挿通され、ガイドバー42に沿って上下に移動可能となっている。
【0032】
図3(a)に示すように、取付ブラケット43は、ガイドバー42をバックパネルPB側に固定するための部材であり、第1ブラケット44と第2ブラケット45を有する。第1ブラケット44は、L字形状に屈曲形成された板金であり、略水平に延びる支持部44Aと、支持部44Aの後端から上方に延びる接続部44Bとを有している。第2ブラケット45は、前後方向を向く板金からなり、下端が接続部44Bに固定されている。
【0033】
図3(b)に示すように、第2ブラケット45の後面には左右に延びるロッド46が上下に離れて2本固定されている。ロッド46は、中間部が第2ブラケット45から後方に離間しており、左右両端部が第2ブラケット45の後面に溶接またはねじ止めなどにより固定されている。
【0034】
傾動機構50は、上部フレーム12をバックパネルPBに対して傾動させる機構であり、第1固定部51、第1可動部52、第1リンク53および第2リンク54を備えてなる。
【0035】
第1固定部51は、バックパネルPB側に取り付けられる板状の部材であり、本実施形態においては、ボルト59によりバックパネルPBに直接固定されている。
【0036】
第1可動部52は、左右方向に沿った第1軸A1を中心に第1固定部51に対して前後に回動可能に支持された板状の部材である。第1軸A1は、第1固定部51および第1可動部52の上部に位置し、第1固定部51および第1可動部52は、下側が開閉するように第1軸A1を中心に互いに回動することができるようになっている。第1可動部52は、シートバックフレームF1側に取り付けられる。本実施形態においては、第1可動部52は、直接には移動機構40に取り付けられ、移動機構40を介してシートバックフレームF1に取り付けられている。より具体的には、第1可動部52は、前面に上下に離れて配置された一対のフック52Aが、左右方向に離れて2つ(計4つ)配置されている。各フック52Aは、先端が上方に向かって延出しており、ロッド46に係合している。すなわち、ロッド46が各フック52Aに上から引っ掛かっていることで、第2固定部としての取付ブラケット43およびロッド46は、第1可動部52に取り付けられ、傾動機構50を介してバックパネルPBに固定されている。
【0037】
第1リンク53は、第1固定部51に対して第1軸A1と平行な第2軸A2を中心に回動可能に連結された部材である。第1リンク53の形状は問わないが、棒状または板状などとすることができる。
【0038】
第2リンク54は、第1可動部52に対して第1軸A1と平行な第3軸A3を中心に回動可能に連結されるとともに第1リンク53に対して第1軸A1と平行な第4軸A4を中心に回動可能に連結された部材である。第2リンク54の形状は問わないが、棒状または板状などとすることができる。第4軸A4は、第1リンク53および第2リンク54の下部に位置しており、第1リンク53および第2リンク54は上側が開閉するように互いに回動可能となっている。
【0039】
このように、第1固定部51、第1可動部52、第1リンク53および第2リンク54は、4つの節によって連結されることで4節リンクを構成している。本実施形態においては、傾動機構50を駆動する駆動部材として回転アクチュエータ58が第1軸A1付近に設けられている。回転アクチュエータ58の詳細構成は図示しないが、電動モータおよびギア機構などを有しており、乗員のスイッチ操作により、第1可動部52を第1固定部51に対して図3(a)の時計回りまたは反時計回りに回動させ、第1可動部52の傾斜角を変更できるようになっている。
【0040】
以上のように構成された本実施形態の車両用シートSの動作について説明する。
図2に示すように、シートクッションS2を可動範囲における最も後に位置させた状態において、シートバックS1は、下部フレーム11が最も起立した状態となっている。
【0041】
シートクッションS2を前方へ移動させると、図4に示すように、下部フレーム11は、下端がスライドレール機構25の移動方向に沿って前方へ移動する一方、上端は上部フレーム12に連結されていることでガイドバー42に沿って下方へ移動する。このため、下部フレーム11は、図2の起立状態に対して寝た状態(フロアパネルPFに対する傾斜角が小さい状態)となる。この状態においては、上部フレーム12は、図2の状態と同じ傾斜角となっており、乗員の体格や体調によっては、すわり心地が十分良好でない場合もある。
【0042】
そこで、本実施形態の車両用シートSでは、操作スイッチを操作して回転アクチュエータ58を作動させると、図5に示すように第1可動部52が第1固定部51に対して前方に回動する。これにより第1可動部52は、上端の第1軸A1を中心に下端が前方に出ることで、上部フレーム12は、少し寝た状態(フロアパネルPFに対する傾斜角が小さくなった状態)となる。このとき、第1可動部52と第1固定部51の回動中心である第1軸A1は、上部フレーム12と下部フレーム11の回動の軸線B2と同じ左右方向に沿っているので、上部フレーム12に効率良く力を伝えることができる。
なお、このとき、上部フレーム12の下端が前に出ることに伴い、下部フレーム11の上端も前に出るので、下部フレーム11の傾斜角も少し起きるように変化する。
【0043】
車両用シートSを図2の状態に戻すためには、以上と逆の動作を行わせればよい。すなわち、操作スイッチを操作して回転アクチュエータ58を逆に作動させ、その後、シートクッションS2を後方へ移動させると、図2に示したシートバックS1が起きた状態となる。
【0044】
このようにして、本実施形態の車両用シートSによれば、シートクッションS2を前後に動かすことによって下部フレーム11および上部フレーム12が連動して下部フレーム11の傾斜を変えることができるだけでなく、傾動機構50によって上部フレーム12をバックパネルPBに対して傾動させることができる。このため、上部フレーム12の傾斜角を自由に変更して、乗員の体格に応じた良好なシート形状を実現することができる。
【0045】
また、第1可動部52が第1固定部51に対して回動する軸線である第1軸A1は、上部フレーム12と下部フレーム11の回動の軸線B2と同じ左右方向に沿っているので、上部フレーム12に効率良く力を伝えることができる。
【0046】
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することができる。
例えば、図6に示した第1変形例のように、傾動機構150を、図2の傾動機構50に対して上下逆にしてもよい。すなわち、第1軸A1は、第1固定部51および第1可動部52の下部に位置し、第1固定部51および第1可動部52は、上側が開閉するように第1軸A1を中心に互いに回動する構成とすることもできる。なお、フック52Aは、先端が上向きとなるように、図2と同じ向きのまま第1可動部52に固定するとよい。
【0047】
この場合、図6のようにシートクッションS2を前方に移動させることで下部フレーム11が寝た状態において、回転アクチュエータ58を作動させて第1可動部52を前方へ回動させると、図7に示すように、第1可動部52の上端が前方へ移動することで上部フレーム12の上部を前方に移動させ、上部フレーム12が起立した状態になる。これにより、乗員の体格などに応じてすわり心地を改善することができる。
【0048】
また、前記実施形態においては、回転アクチュエータ58は、電動モータにより動作することとしていたが、乗物用シートのリクライニング機構に一般に採用されているようなトルクスプリングと、ロック機構によって構成されていてもよい。すなわち、第1可動部52が常時前方へ付勢されるようにトルクスプリングを配置し、ロック機構により第1固定部51に対する第1可動部52の角度を任意の位置または段階的な位置でロックまたはロック解除できるように構成することができる。これによれば、電動モータを用いずに、簡易な構成で上部フレーム12を傾動させることができる。
【0049】
また、図8に示した第2変形例のように、移動機構240と傾動機構250の配置を前後逆にしてもよい。すなわち、この車両用シートSでは、移動機構240の第2固定部としてのガイドバー242がバックパネルPBに固定され、ガイド筒41が傾動機構250の第1固定部51に取り付けられている。そして、傾動機構250の第1可動部52は、シートバックS1のシートバックパネル13(上部フレーム12)に取り付けられている。
【0050】
また、第2変形例の車両用シートSでは、傾動機構250を駆動する駆動機構として、リニアアクチュエータ260が設けられている。リニアアクチュエータ260は、本体部261の下端部261Aが上部フレーム12に回動可能に連結されている。具体的には、上部フレーム12は、下端部にブラケット212Aを有し、ブラケット212Aは、下方に延出するアクチュエータ固定部212Bを有する。そして、リニアアクチュエータ260の下端部261Aは、アクチュエータ固定部212Bに取り付けられている。リニアアクチュエータ260は、本体部261に対して伸縮可能なロッド262を有し、ロッド262の上端が第4軸A4の連結部に回動可能に連結されている。そして、図示しない電動モータなどにより、本体部261に対しロッド262を直線的に移動させることができるようになっている。
【0051】
このような構成によっても、リニアアクチュエータ260を作動させることで、図9に示すように、第1可動部52の下部を第1固定部51に対して前方に移動させ、上部フレーム12を寝かせることができる。
【0052】
また、図10に示す第3変形例のように、上部フレーム12と下部フレーム311の間に中間フレーム320を設けることができる。この車両用シートSにおいて中間フレーム320の上端部は上部フレーム12の下端部に対して左右方向に沿った軸線B1の回りに回動可能に連結され、中間フレーム320の下端部は下部フレーム311の上端部に対して左右方向に沿った軸線B3の回りに回動可能に連結されている。このような構成によれば、図11に示すようにシートバックS1が2箇所で中折れすることができるので、シートバックS1のカーブを緩やかにするなど、シートバックS1をより自由に乗員の好みの形状にすることができる。なお、中折れする箇所を3箇所以上にしてより自由な形状を実現することも可能である。
【0053】
また、中折れの箇所を2箇所にする例として、さらに、図12に示すような第4変形例のように構成してもよい。第4変形例に係る車両用シートSは、中間フレーム420が、下側が広い略三角形状の板状部材からなり、上端部が軸線B1回りに回動可能となるように上部フレーム12のブラケット12Aに連結されている。そして、中間フレーム420は、下部に、中心点B5を中心とする円弧形状に沿ったガイド孔421を有している。ガイド孔421は、略前後方向に延び、中心点B5はガイド孔421と軸線B1の間に位置している。
【0054】
下部フレーム410は、上端部に、左右方向外側に突出するピン411,412有している。ピン411,412は、互いに前後に離間して配置され、ピン411は、ピン412の前方に位置している。ピン411,412は、ともにガイド孔421内に入り込んでおり、ガイド孔421に沿って前後に移動可能である。前記したように、ガイド孔421は中心点B5を中心とする円弧形状に沿っているので、ガイド孔421内をピン411,412が移動すると、ピン411,412は、中心点B5を中心に回転するように移動する。すなわち、下部フレーム410は、中間フレーム420に対して中心点B5を中心に回動可能となっている。
【0055】
上部フレーム12と中間フレーム420との連結部分には下方に延びるレバー431を有するロック機構430が設けられている。ロック機構430の詳細構造は省略するが、ロック機構430のレバー431は軸線B1回りに回動可能に設けられており、レバー431が図12に示したロック位置にあるときには、上部フレーム12と中間フレーム420の互いの回動をロックしている。そして、レバー431は、ピン411と係合可能な位置にあり、図13に示すように、ピン411により前方に押されて解除位置に位置した状態では、ロック機構430は、上部フレーム12と中間フレーム420の互いの回動のロックを解除し、これらが自由に回動できるように構成されている。また、ロック機構430は、常時反時計回りに付勢する付勢部材(図示せず)を有しており、レバー431は、反時計回り方向の回転が、ストッパ(図示せず)により図12に示す位置で規制されている。
【0056】
このような構成によると、図12に示すシートバックS1が起立した状態からシートクッションを前方に移動させると、図13に示すように、ロック機構430がロック状態にあるため中間フレーム420は上部フレーム12に対して動かずに、下部フレーム410だけが上部フレーム12および中間フレーム420に対して時計回りに回動する。
【0057】
そして、レバー431がピン411により前方に押され、解除位置に位置すると、中間フレーム420の回動のロックが解除され、中間フレーム420が上部フレーム12に対して回動可能となる。そこで、図13に示す状態からさらにシートクッションS2を前方に移動させると、ピン411がガイド孔421の前端に当たって中間フレーム420の下端部を前方に押し、図14に示すように中間フレーム420が時計回りに回動する。これにより、中間フレーム420の傾斜角が変わり、シートバック全体をなだらかなカーブにすることができる。
【0058】
一方、図14に示す状態からシートクッションS2を後ろに移動させると、下部フレーム410が起きてきて上端のピン411,412で中間フレーム420を上に押し上げる。このとき、ロック機構430のレバー431がピン411に向けて付勢されているので、中間フレーム420がぐらつくのが抑制される。また、前後に離れた2つのピン411,412によって中間フレーム420を押し上げるので、これによっても中間フレーム420がぐらつくのが抑制される。
【0059】
そして、図13に示す状態から、さらにシートクッションS2を後ろに移動させると、下部フレーム410がさらに起き上がり、下部フレーム410の上端のピン411,412が中間フレーム420を押し上げる。このときには、ロック機構430は、レバー431が後方のロック位置に戻ることでロック状態となるので、上部フレーム12と中間フレーム420の互いの回動が規制されて一体となり、安定した状態で上方に移動することができる。
【0060】
このように、第4変形例に係る車両用シートSによれば、シートクッションS2が所定量以上前に移動するまでは、ロック機構430によって中間フレーム420と上部フレーム12の互いの回動が規制されるので、シートフレームFの動作を安定させることができる。また、中間フレーム420と下部フレーム11の回動の連結は、2つのピン411,412とガイド孔421との係合によって構成されているので、シートクッションS2を後ろに移動させて中間フレーム420を押し上げるときに、中間フレーム420を安定した状態で押し上げることができる。
【0061】
前記第4変形例においては、ガイド孔421に係合するピンは2つであったが、3つ以上であってもよい。
【0062】
また、前記実施形態においては、第1固定部51および第1可動部52は、板状の部材としたが、これらの形状は特に限定されず、棒状の部材によりフレームを構成していてもよい。
【0063】
また、前記実施形態においては、乗物用シートとして、自動車の車両用シートを例示したが、乗物用シートは、車両用シートに限らず、鉄道車両や、航空機、船舶などのシートであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
11 下部フレーム
12 上部フレーム
13 シートバックパネル
25 スライドレール機構
30 駆動機構
40 移動機構
41 ガイド筒
42 ガイドバー
43 取付ブラケット
50 傾動機構
51 第1固定部
52 第1可動部
53 第1リンク
54 第2リンク
58 回転アクチュエータ
F シートフレーム
F1 シートバックフレーム
F2 クッションフレーム
PB バックパネル
PF フロアパネル
S 車両用シート
S1 シートバック
S2 シートクッション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14