特開2016-199912(P2016-199912A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-199912(P2016-199912A)
(43)【公開日】2016年12月1日
(54)【発明の名称】トンネル掘削機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/08 20060101AFI20161104BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20161104BHJP
   E21D 9/12 20060101ALI20161104BHJP
【FI】
   E21D9/08
   E21D9/06
   E21D9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-80561(P2015-80561)
(22)【出願日】2015年4月10日
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】保苅 実
(72)【発明者】
【氏名】水野 睦夫
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 茂
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC01
2D054BA07
2D054BA14
(57)【要約】
【課題】切羽前方の地盤改良を行うことなく、掘削機の主要構成部材を容易に回収して再利用することができるトンネル掘削機を提供する。
【解決手段】外筒11の前端部にカッタスポーク32を回転可能に支持するトンネル掘削機1において、外筒11内に設けられる前側隔壁12と、前側隔壁12に形成され、カッタスポーク32がトンネル前後方向に通過可能となる開口部12aと、外筒11内に移動可能に支持される可動内筒13と、可動内筒13内に設けられ、カッタスポーク32を回転可能に支持する後側隔壁14と、カッタスポーク32と前側隔壁12との間に形成され、掘削土砂を蓄えるチャンバ16と、後側隔壁14に支持されると共に、前端部が開口部12aをトンネル前後方向に貫通してチャンバ16内に配置されるスクリューコンベヤ19と、開口部12aを開閉するゲート21とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなす外筒の前端部に、カッタが装着されたカッタスポークを回転可能に支持するトンネル掘削機において、
前記外筒の前端部内に設けられると共に、前記カッタスポークのトンネル後方に配置される前側隔壁と、
前記前側隔壁に形成され、前記カッタスポークがトンネル前後方向に通過可能となる開口部と、
前記外筒内に配置され、トンネル前後方向に移動可能に支持される可動内筒と、
前記可動内筒の前端部内に設けられると共に、前記前側隔壁のトンネル後方に配置され、前記カッタスポークを回転可能に支持する後側隔壁と、
前記カッタスポークと前記前側隔壁との間に形成され、前記カッタの掘削に伴って発生した掘削土砂を蓄えるチャンバと、
前記後側隔壁に支持されると共に、前端部が前記開口部をトンネル前後方向に貫通して前記チャンバ内に配置され、前記チャンバ内に蓄えられた掘削土砂を、前記外筒のトンネル後方に向けて排出する排土手段と、
前記前側隔壁に設けられ、前記開口部を開閉するゲートとを備える
ことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項2】
請求項1に記載のトンネル掘削機において、
前記後側隔壁に回転可能に支持されると共に、前記カッタスポークを支持し、前記開口部をトンネル前後方向に貫通するカッタ回転軸を備え、
前記カッタスポークは、
カッタ回転軸径方向に延在し、前記開口部の通過時に、径方向外側端部が径方向内側端部を回転中心としてトンネル前方に向けて回動する
ことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項3】
請求項2に記載のトンネル掘削機において、
前記開口部をトンネル前後方向に通過可能となるように前記カッタ回転軸に支持され、前記カッタスポークの径方向外側端部をトンネル前方に向けて回動させる傾動手段を備える
ことを特徴とするトンネル掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機を構成する主要構成部材を回収して再利用可能としたトンネル掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トンネル掘削機においては、掘削が完了すると、解体された後、一部分が回収される一方、その残りの部分が、トンネルの一部として、地中に埋設される。例えば、トンネル掘削機を構成する構成部材の中でも、カッタヘッド、カッタヘッド駆動装置、シールドジャッキ、エレクタ装置等の高価な主要構成部材が、掘削機本体から回収されて、再利用される一方、残りの掘削機本体が、トンネル構造体の一部として、既設のセグメントに連結された状態で、埋設されることになる。このように、再利用できる構成部材が多くなれば、掘削機の製造コストやトンネル施工費用の削減を図ることができる。
【0003】
また、トンネル掘削機を解体し、その主要構成部材を回収する際には、狭い空間内においての作業となるだけでなく、周辺地盤が、自立しない軟弱地盤等となる場合には、切羽の崩落を考慮しながら、それらの解体回収作業を効率的に行う必要がある。
【0004】
そこで、近年、切羽の崩落を防止しつつ、カッタヘッドをトンネル後方に向けて引き抜き可能としたトンネル掘削機が、種々提供されている。そして、このような従来のトンネル掘削機としては、例えば、特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−277292号公報
【特許文献2】特開2000−145377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記従来のトンネル掘削機においては、カッタヘッドの後方に、2枚の隔壁を前後に並べた構成を採用しており、カッタヘッドを後側隔壁に支持させると共に、カッタヘッドと前側隔壁との間で、掘削土砂を蓄えるためのチャンバを形成するようにしている。このとき、前側隔壁に、カッタヘッドが通過可能となる開口部を形成すると共に、その開口部を開閉するゲートを備えるようにしている。そして、カッタヘッドを引き抜く場合には、当該カッタヘッドを前側隔壁の開口部内に通過させた後、その開口部をゲートによって閉鎖することにより、切羽側から掘削機本体への土砂の侵入を防止して、掘削機本体内における作業性の向上を図るようにしている。
【0007】
しかしながら、上記従来のトンネル掘削機においては、チャンバ内から掘削土砂を排出するためのスクリューコンベヤを、引き抜き対象(回収対象)とはしていない。このスクリューコンベヤには、それを回転駆動させるためのモータ等が一体的に組み込まれており、このようなスクリューコンベヤも、非常に高価なものであって、回収して再利用を図るべきものであると考えられる。
【0008】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、切羽前方の地盤改良を行うことなく、掘削機の主要構成部材を容易に回収して再利用することができるトンネル掘削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第1の発明に係るトンネル掘削機は、
筒状をなす外筒の前端部に、カッタが装着されたカッタスポークを回転可能に支持するトンネル掘削機において、
前記外筒の前端部内に設けられると共に、前記カッタスポークのトンネル後方に配置される前側隔壁と、
前記前側隔壁に形成され、前記カッタスポークがトンネル前後方向に通過可能となる開口部と、
前記外筒内に配置され、トンネル前後方向に移動可能に支持される可動内筒と、
前記可動内筒の前端部内に設けられると共に、前記前側隔壁のトンネル後方に配置され、前記カッタスポークを回転可能に支持する後側隔壁と、
前記カッタスポークと前記前側隔壁との間に形成され、前記カッタの掘削に伴って発生した掘削土砂を蓄えるチャンバと、
前記後側隔壁に支持されると共に、前端部が前記開口部をトンネル前後方向に貫通して前記チャンバ内に配置され、前記チャンバ内に蓄えられた掘削土砂を、前記外筒のトンネル後方に向けて排出する排土手段と、
前記前側隔壁に設けられ、前記開口部を開閉するゲートとを備える
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第2の発明に係るトンネル掘削機は、
前記後側隔壁に回転可能に支持されると共に、前記カッタスポークを支持し、前記開口部をトンネル前後方向に貫通するカッタ回転軸を備え、
前記カッタスポークは、
カッタ回転軸径方向に延在し、前記開口部の通過時に、径方向外側端部が径方向内側端部を回転中心としてトンネル前方に向けて回動する
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第3の発明に係るトンネル掘削機は、
前記開口部をトンネル前後方向に通過可能となるように前記カッタ回転軸に支持され、前記カッタスポークの径方向外側端部をトンネル前方に向けて回動させる傾動手段を備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
従って、本発明に係るトンネル掘削機によれば、外筒の前側隔壁に、開口部及び当該開口部を開閉するゲートを備える一方、可動内筒の後側隔壁に、カッタスポーク及び排土手段を支持することにより、可動内筒をトンネル後方に向けて移動させて、カッタスポーク及び排土手段を、開口部内にトンネル後方に向けて通過させた後、その開口部をゲートによって閉鎖することができる。これにより、切羽前方の地盤改良を行うことなく、掘削機の主要構成部材を容易に回収して再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例に係るトンネル掘削機の縦断面図である。
図2】本発明の一実施例に係るトンネル掘削機の正面図である。
図3図1のA−A矢視断面図である。
図4図1のB−B矢視断面図である。
図5】本発明の一実施例に係るトンネル掘削機を用いて掘削する際の動作手順を示した動作説明図であって、掘進直前の様子を示した縦断面図である。
図6図5に続く動作説明図であって、掘進完了直後の様子を示した縦断面図である。
図7図6に続く動作説明図であって、掘削機の主要構成部材を引き抜く様子を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るトンネル掘削機について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態においては、本発明に係るトンネル掘削機を、避難坑や機材坑となるトンネルを掘削するためのシールド掘削機に適用した場合について説明する。
【実施例】
【0015】
先ず、図1に示したシールド掘削機1は、例えば、円形断面の本線トンネルを施工するための本線用シールド掘削機(トンネル掘削機)内に収納可能となっており、その本線用シールド掘削機によって構築された本線コンクリートCからその幅方向外側に向けて突出するトンネルTを掘削するものとなっている。
【0016】
なお、シールド掘削機1によって掘削されたトンネルTは、その断面が馬蹄形をなしており、例えば、本線トンネルの利用者が避難時に使用する避難坑や、本線トンネル内で使用する電力の供給源となる電気設備等を設置するための機材坑として、使用されるものとなっている。また、円形断面の本線コンクリートCは、例えば、本線用シールド掘削機の機体内に設置されたエレクタ装置を用いて、コンクリート製セグメントをリング状に組み付けることによって構築されたものとなっている。
【0017】
そこで、図1乃至図4に示すように、シールド掘削機1には、筒状をなす外筒11が設けられており、この外筒11の内側には、筒状をなす可動内筒13がトンネル前後方向に移動可能に支持されている。また、外筒11の前端部内には、前側隔壁12設けられる一方、可動内筒13の前端部内には、後側隔壁14が設けられている。即ち、前側隔壁12及び後側隔壁14は、トンネル前後方向に並設されており、前側隔壁12は、後側隔壁14よりもトンネル前方側に配置されている。
【0018】
そして、前側隔壁12には、開口部12aがトンネル前後方向に貫通するように形成されており、この開口部12aは、長辺が上下方向に延在するような矩形をなしている。これに対して、前側隔壁12の後面には、左右一対のゲート21が、トンネル幅方向にスライド可能に支持されている。更に、ゲート21のトンネル幅方向左右両側には、左右二対のゲート開閉用ジャッキ22が上下2段に亘って設けられており、これらのゲート開閉用ジャッキ22における駆動ロッドの先端は、各ゲート21に連結されている。
【0019】
従って、ゲート開閉用ジャッキ22の駆動ロッドを伸長させることにより、左右一対のゲート21を、トンネル幅方向内側に向けて互いに接近するように、スライドさせることができる。これにより、開口部12aをゲート21によって閉鎖することができる。一方、ゲート開閉用ジャッキ22の駆動ロッドを短縮させることにより、左右一対のゲート21を、トンネル幅方向外側に向けて互いに離間するように、スライドさせることができる。これにより、開口部12aをゲート21によって開放することができる。
【0020】
また、外筒11の前端部には、カッタヘッド15が回転可能に支持されている。そして、カッタヘッド15と前側隔壁12との間には、チャンバ16が区画形成されている。このチャンバ16は、掘削土砂を一時的に蓄えるための空間(室)となっており、当該チャンバ16内には、カッタヘッド15の地盤掘削に伴って発生した掘削土砂が、取り込まれるようになっている。
【0021】
これに対して、後側隔壁14には、カッタ回転軸17が回転可能に貫通支持されており、このカッタ回転軸17の前端部は、カッタヘッド15の中心部に連結されている。このとき、カッタ回転軸17は、前側隔壁12の開口部12a及びチャンバ16をトンネル前後方向に貫通した状態で、カッタヘッド15と連結している。
【0022】
更に、カッタ回転軸17の外周部には、リング状をなすリングギヤ17aが嵌装されている。そして、カッタ回転軸17の周囲には、複数のカッタ旋回用モータ18が設けられており、これらのカッタ旋回用モータ18は、後側隔壁14に支持されている。このとき、カッタ旋回用モータ18のモータ軸には、駆動ギヤ18aが設けられており、各駆動ギヤ18aは、リングギヤ17aと噛み合っている。従って、カッタ旋回用モータ18を駆動させることにより、駆動ギヤ17aの回転を、リングギヤ17aを介して、カッタ回転軸17に伝達させることができる。これにより、カッタヘッド15を回転させることができる。
【0023】
また、後側隔壁14には、スクリューコンベヤ(排土手段)19が、前端から後端に向かうに従って上方に向けて傾斜するように、貫通支持されている。このスクリューコンベヤ19は、カッタ回転軸17の下方に配置されており、その前端開口部は、前側隔壁12の開口部12をトンネル前後方向に貫通して、チャンバ16内に挿入されている。従って、スクリューコンベヤ19を回転駆動させることにより、チャンバ16内に蓄えられた掘削土砂を、外筒11のトンネル後方に向けて排出することができる。
【0024】
次に、カッタヘッド15の構成について、図1乃至図4を用いて説明する。
【0025】
図1乃至図4に示すように、カッタヘッド15の中心部には、矩形状をなすカッタ中心部材31が設けられている。このカッタ中心部材31には、カッタ回転軸17の前端部が嵌入されている。
【0026】
また、カッタ中心部材31の外端部には、2本のカッタスポーク32が、カッタ回転軸17の径方向(カッタヘッド15の径方向)に延在するように支持されている。つまり、2本のカッタスポーク32は、カッタ回転軸17を通過するような、一直線状に配置されており、それぞれの径方向内側端部(基端部)が、支持軸33を介して、カッタ中心部材31に回転可能に支持されている。
【0027】
なお、カッタスポーク32の幅は、開口部12aの開口幅よりも狭くなっている。更に、一直線状に配置された2本のカッタスポーク32の連結長さ(径方向長さ)は、開口部12aの開口長さ(長手方向長さ)よりも長くなっている。
【0028】
そして、カッタスポーク32の前面には、多数の先行ビット34が着脱可能に装着されており、カッタスポーク32の長手方向左右両縁部には、多数のカッタビット35が着脱可能に装着されている。更に、カッタスポーク32の径方向外側端部(先端部)内には、コピーカッタ36が収納されており、このコピーカッタ36は、その径方向外側端面に対して、出没可能に支持されている。
【0029】
従って、カッタスポーク32を、カッタ回転軸17を中心として、回転させることにより、先行ビット34及びカッタビット35によって、前方の地盤に切羽を掘削することができる。このとき、カッタスポーク32の回転時において、コピーカッタ36の突出量を制御することにより、馬蹄形断面となるトンネルTを掘削することができる。
【0030】
ここで、支持軸33は、カッタ中心部材31の外端部とカッタスポーク32の径方向内側端部との間において、最もトンネル前方側に配置されている。これにより、カッタスポーク32は、前傾が許容されると共に、後傾が規制されている。
【0031】
具体的に、カッタスポーク32の径方向外側端部は、径方向内側端部の支持軸33を回転中心として、トンネル前後方向に回動するものの、径方向内側端部よりもトンネル前方側への回転が許容される一方、径方向内側端部よりもトンネル後方への回動が規制されている。即ち、カッタスポーク32の傾動方向は、切羽からトンネル後方に向けて発生する土水圧及び掘削反力の発生方向と反対方向となっている。
【0032】
また、カッタ中心部材31の後部には、ジャッキ支持部材37が固定されており、このジャッキ支持部材37の中央部には、カッタ回転軸17が嵌入されている。そして、ジャッキ支持部材37は、カッタ回転軸17の径方向に延在すると共に、カッタスポーク32の後面とトンネル前後方向において対向している。
【0033】
更に、ジャッキ支持部材37の内部には、2つのスポーク傾動用ジャッキ(傾動手段)38が収納されており、各スポーク傾動用ジャッキ38における駆動ロッドの先端は、カッタスポーク32の後部にそれぞれ連結されている。つまり、スポーク傾動用ジャッキ38は、カッタスポーク32のそれぞれとトンネル前後方向において対向すると共に、当該カッタスポーク32と共に、カッタ回転軸17周りに回転する。
【0034】
従って、スポーク傾動用ジャッキ38の駆動ロッドを伸長させることにより、カッタスポーク32を、径方向外側端部が最も径方向外側に位置した起立状態から、径方向外側端部が最も径方向内側に位置した前傾状態(折り畳み状態)に、移行させることができる。一方、スポーク傾動用ジャッキ38の駆動ロッドを短縮させることにより、前傾状態から起立状態に移行させることができる。
【0035】
そして、カッタスポーク32が前傾状態になると、その径方向外側端部は、前側隔壁12の開口部12aにおける外側開口縁よりも、径方向内側に配置されることになる。つまり、カッタスポーク32は、トンネル掘削時において、起立状態となる一方、後述する引き抜き時において、前傾状態となっており、このように前傾状態になることにより、前側隔壁12の開口部12a内をトンネル前後方向に通過可能となる。
【0036】
なお、図1及び図5に示すように、シールド掘削機1においては、これを前進させるための推進手段として、推進ジャッキ41、推進管42、及び、押し管43を使用する。推進ジャッキ41は、本線コンクリートCの内周面に固定されるものであって、外筒11に推進力を与えるものとなっている。また、推進管42は、推進ジャッキ41における駆動ロッドの先端に装着されており、押し管43を押圧可能となっている。このとき、推進管42及び押し管43は、外筒11の外形形状と一致した外形形状を有する既成管(コンクリート管や鋼管)となっている。
【0037】
よって、シールド掘削機1を掘進させる場合には、推進ジャッキ41の駆動ロッドを伸長させて、推進管42の前端面と外筒11の後端面との間に隙間を形成させた後、その隙間内に押し管43を挿入した状態で、推進ジャッキ41の駆動ロッドを短縮させる。これにより、外筒11を、挿入した押し管43の幅の分だけ、前進することになる。そして、上述した動作を繰り返し行うことにより、シールド掘削機1を、順次挿入した押し管43の幅の分ずつ、掘進させることができる。
【0038】
次に、シールド掘削機1の動作について、図5乃至図7を用いて説明する。
【0039】
先ず、図5に示すように、本線コンクリートC内における上部及び下部に、エントランス部材51及び発進架台52を設置した後、これらのエントランス部材51と発進架台52と間に、シールド掘削機1を構成する構成部材を順次組み込んで、当該シールド掘削機1を組み立てる。続いて、推進ジャッキ41を、ジャッキ固定部材53を介して、エントランス部材51に固定した後、その推進ジャッキ41の駆動ロッドに、推進管42を取り付ける。
【0040】
次いで、推進ジャッキ41の駆動ロッドを伸長させて、外筒11の後端面と推進管42の前端面との間に、隙間を形成した後、その隙間内に、1段目の押し管43を挿入する。
【0041】
そして、外筒11と推進管42との間に押し管43を介在させた状態で、推進ジャッキ41を徐々に短縮させて、1段目の押し管42を推進管42によってトンネル前方に向けて押圧しながら、カッタ旋回用モータ18を駆動させて、カッタヘッド15を回転させると共に、スクリューコンベヤ19を回転駆動させる。
【0042】
これにより、外筒11に対して、推進ジャッキ41による駆動ロッドの引き込み力(推進管42による押圧力)が推進力として作用するため、当該外筒11が発進架台52上を前進すると共に、回転するカッタスポーク32に装着された先行ビット34、カッタビット35、及び、コピーカッタ36が、前方の地盤に切羽を掘削する。
【0043】
また、地盤掘削によって発生した掘削土砂は、チャンバ16内に充填されることになり、このチャンバ16は、その充填された掘削土砂によって、所定の内圧に維持される。その後、チャンバ16内に充填された掘削土砂は、スクリューコンベヤ19の回転駆動によって、トンネル後方に向けて排出される。
【0044】
つまり、掘削土砂をチャンバ16内に充填させて、そのチャンバ16の内圧を切羽からの土水圧に対抗させながら、当該チャンバ16内から排土することにより、切羽の安定化を図りつつ、トンネルTを掘進することができる。
【0045】
次いで、シールド掘削機1が、1段目の押し管43の幅の分だけ、掘進すると、推進ジャッキ41の駆動ロッドを伸長させて、1段目の押し管42の後端面と推進管42の前端面との間に、隙間を形成した後、その隙間内に、2段目の押し管43を挿入する。
【0046】
そして、図6に示すように、上述したような、推進ジャッキ41の伸長、押し管43の挿入、及び、推進ジャッキ41の短縮を、順次繰り返し行って、所定段数の押し管43が挿入されると、シールド掘削機1によるトンネルTの掘削が完了する。
【0047】
なお、上述したトンネル掘削時においては、土水圧及び掘削反力が切羽からトンネル後方に向けて発生することになり、それらの土水圧及び掘削反力は、カッタヘッド15の前面に作用する。このとき、カッタスポーク32の傾動方向は、トンネル前方に向かう方向となっているため、その傾動方向と土水圧及び掘削反力の発生方向とは、トンネル前後方向において逆向きとなっている。これにより、カッタスポーク32は、トンネル前方に向けて倒れることは無く、起立状態が維持される。
【0048】
次いで、図7に示すように、トンネルTの掘削が完了すると、シールド掘削機1の主要構成部材を、トンネル後方に向けて引き抜くことになる。
【0049】
具体的に、先ず、カッタヘッド15を回転させて、そのカッタスポーク32を、上下方向に延在するように配置させる。即ち、カッタスポーク32の延在方向を、前側隔壁12の開口部12aにおける開口長さ方向と一致させる。
【0050】
次いで、スポーク傾動用ジャッキ38の駆動ロッドを徐々に伸長させて、カッタスポーク38をトンネル前方に向けて折り畳みながら、可動内筒13をトンネル後方に向けて移動させる。これにより、カッタ回転軸17、前傾状態のカッタスポーク38、スポーク傾動用ジャッキ38、及び、スクリューコンベヤ19が、前側隔壁12の開口部12a内をトンネル後方に向けて通過する。つまり、可動内筒13、カッタヘッド15、カッタ回転軸17、カッタ旋回用モータ18、及び、スクリューコンベヤ19は、外筒11からトンネル後方に向けて引き抜かれて回収され、例えば、次のトンネルTを掘削する際に、再利用される。
【0051】
そして、カッタスポーク38及びスクリューコンベヤ19が前側隔壁12の開口部12a内を通過し終えると、直ちに、ゲート開閉用ジャッキ22の駆動ロッドを伸長させて、ゲート21を閉鎖する。これにより、開口部12aがゲート21によって閉鎖されるため、前側隔壁12を境にして、切羽側と外筒11内とが遮断される。よって、外筒11内への土砂の侵入が防止される。
【0052】
更に、ゲート21を閉じた後、ゲート開閉用ジャッキ22を取り外して回収すると共に、推進ジャッキ41、推進管42、押し管43、エントランス部材51、発進架台52、及び、ジャッキ固定部材53を取り外して回収する。取り外されたそれらも、再利用されることになる。
【0053】
従って、本発明に係るシールド掘削機1によれば、外筒11の前側隔壁12に、開口部12a及び当該開口部12aを開閉するゲート21を備える一方、可動内筒13の後側隔壁14に、スクリューコンベヤ19及びカッタスポーク32を支持することにより、可動内筒13をトンネル後方に向けて移動させて、スクリューコンベヤ19及びカッタスポーク32を、開口部12a内にトンネル後方に向けて通過させた後、その開口部12aをゲート21によって閉鎖することができる。
【0054】
これにより、スクリューコンベヤ19及びカッタスポーク32を引き抜くための開口部12aを形成しても、その開口部12aをゲート21によって閉鎖することにより、切羽側から外筒11内への土砂の侵入を防止することができるため、切羽前方の地盤改良を行う必要が無くなる。また、可動内筒13をトンネル後方に後退させるだけで、掘削機の主要構成部材となるスクリューコンベヤ19及びカッタスポーク32を容易に回収して再利用することができる。
【0055】
また、カッタスポーク32をトンネル前方に向けて傾動可能に支持することにより、カッタスポーク32の回転半径が前側隔壁12の外形よりも大きくなっても、そのカッタスポーク32を、前側隔壁12の開口部12a内に通過させることができる。
【0056】
更に、カッタスポーク32を傾動させるためのスポーク傾動用ジャッキ37を、開口部12a内にトンネル後方に向けて通過させることができるので、スポーク傾動用ジャッキ37についても、容易に回収して再利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係るトンネル掘削機は、主要構成部材を回収して再利用することができるため、トンネル施工費用の削減対策に、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 シールド掘削機
11 外筒
12 前側隔壁
12a 開口部
13 可動内筒
14 後側隔壁
15 カッタヘッド
16 チャンバ
17 カッタ回転軸
18 カッタ旋回用モータ
19 スクリューコンベヤ
21 ゲート
22 ゲート開閉用ジャッキ
32 カッタスポーク
33 支持軸
38 スポーク傾動用ジャッキ
41 推進ジャッキ
C 本線コンクリート
T トンネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7