(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-200029(P2016-200029A)
(43)【公開日】2016年12月1日
(54)【発明の名称】水循環式水力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 17/06 20060101AFI20161104BHJP
F03B 7/00 20060101ALI20161104BHJP
【FI】
F03B17/06
F03B7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-79098(P2015-79098)
(22)【出願日】2015年4月8日
(71)【出願人】
【識別番号】503274362
【氏名又は名称】伊藤 眞雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084571
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 玄陽
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 眞雄
【テーマコード(参考)】
3H072
3H074
【Fターム(参考)】
3H072AA12
3H072BB31
3H072CC44
3H072CC71
3H074AA12
3H074AA20
3H074BB11
3H074CC12
3H074CC43
(57)【要約】
【課題】 円環形流路内で動作体を循環させ、この動作体で水流を起こして発電するタイプの水循環式水力発電装置において、動作体による作用で水車を回転させるのに止まらず、水車の羽根に、より大きな回転力を加えて発電率をアップできるようにする。
【解決手段】 水車2の羽根2aと羽根2aの間の空間部に、水車2の主軸2bの延びる方向に沿って棒状部材14を設ける。この棒状部材14に突き当たって水車2の回転力を高めるトルク補強部材16を、流路1内に配置する伝達部材4bの箇所7cに、起立状に設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が循環する水平状の円環形流路と、この流路内に収納されて流路内を流れる水のエネルギーで羽根が回転する水車と、この水車の羽根に水圧を加えるため流路内を循環する動作体と、この動作体を流路の外側から操作して循環させる動作装置と、また上記の水車の主軸に接続されて回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機とを備え、上記の水車が主軸を水平にして流路の周方向に等間隔をあけて複数設けられ、上記の動作体を通過させる箇所が水車の各羽根に切り欠き状に形成され、また上記の動作装置が、円環形流路の中心に回転軸を垂直にして設けられているモータと、このモータの回転運動を各動作体に伝達するため回転軸から動作体に向かって放射状に配置されている伝達部材とで形成され、この伝達部材の流路内に配置される箇所に上記の動作体が設けられている水循環式水力発電装置であって、上記の水車の羽根と羽根の間の空間部に、水車の主軸の延びる方向に沿って棒状部材が設けられ、この棒状部材に突き当たって水車の回転力を高めるトルク補強部材が、流路内に配置される伝達部材の箇所に、起立状に設けられていることを特徴とする水循環式水力発電装置。
【請求項2】
請求項1記載の水循環式水力発電装置であって、トルク補強部材が金属線状材で形成され、この金属線状材の下部に、棒状部材に突き当たったときの衝撃を吸収する巻回部が形成されていることを特徴とする水循環式水力発電装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水循環式水力発電装置であって、棒状部材が、コイルバネであることを特徴とする水循環式水力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水循環式水力発電装置に関し、更に詳しくは円環形流路内に水流を起こして発電するタイプの水循環式水力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の装置としては、本出願人の提案に係る、例えば特許文献1に記載されているものがある。この従来装置は、水平状に配置した円環形の流路内で動作体を循環させ、この動作体で水圧を高めて水車を回転させ、この水車に連結している発電機で発電するよう構成されている。
【0003】
而して、この従来装置は、上記の通り、流路内を循環する動作体で水を押し流し、水圧を高めて水車の羽根を回す構造であった。
従って、この従来装置の場合は、水車の原動力が動作体に限られた。そのため、動作体の形状等を改良しても発電力に限界があり、発電効率が悪い、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−9659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来装置の問題点に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の解決しようとする技術的課題は、円環形流路内で動作体を循環させ、この動作体で水流を起こして発電するタイプの水循環式水力発電装置において、動作体による作用で水車を回転させるのに止まらず、水車の羽根に、より大きな回転力を加えて発電率をアップできるよう形成した水循環式水力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、次のような技術的手段を採る。
即ち本発明は、
図1等に示されるように、水が循環する水平状の円環形流路1と、この流路1内に収納されて流路1内を流れる水のエネルギーで羽根2aが回転する水車2と、この水車2の羽根2aに水圧を加えるため流路1内を循環する動作体3と、この動作体3を流路1の外側から操作して循環させる動作装置4と、また上記の水車2の主軸2bに接続されて回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機5とを備え、上記の水車2が主軸2bを水平にして流路1の周方向に等間隔をあけて複数設けられ、上記の動作体3を通過させる箇所6が水車2の各羽根2aに切り欠き状に形成され、また上記の動作装置4が、円環形流路1の中心に回転軸4a1を垂直にして設けられているモータ4aと、このモータ4aの回転運動を各動作体3に伝達するため回転軸4a1から動作体3に向かって放射状に配置されている伝達部材4bとで形成され、この伝達部材4bの流路1内に配置される箇所7cに上記の動作体3が設けられている水循環式水力発電装置であって、上記の水車2の羽根2aと羽根2aの間の空間部に、水車2の主軸2bの延びる方向に沿って棒状部材14が設けられ、この棒状部材14に突き当たって水車2の回転力を高めるトルク補強部材16が、流路1内に配置される伝達部材4bの箇所7cに、起立状に設けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0007】
本発明の場合、流路1の上面は、開放状でも、閉鎖状でも良い。また流路1の断面形状は、通常、長方形等の矩形に形成されるのが好ましいが、これには限られない。また、水車2の主軸2bは、水流が羽根2aに真っ向から当たるよう、流路1の直径線上に配置されているのが好ましい。また、動作体3を通過させる箇所6は、動作体3の正面形状に合わされ、動作体3の正面形状より幾分大きい状態に切り欠かれているのが好ましい。なぜなら、これによると、動作体3と、通過箇所6との間にできる隙間から流れ出る水の量を抑えることができ、その分、水車2の羽根2aに、より大きな水圧を加えることができるからである。なお、本発明の場合、水には不凍液も含まれる。
【0008】
而して、本発明は、トルク補強部材16が金属線状材で形成され、この金属線状材の下部に、棒状部材14に突き当たったときの衝撃を吸収する巻回部16aが形成されているのが好ましい(請求項2)。
【0009】
なぜならこれによると、トルク補強部材16を、例えば径の太い針金等で、簡単且つ低コストで形成できるからである。また、この場合は、トルク補強部材16が棒状部材14に当たって水車2に回転力を加えたときに生じる衝撃を、巻回部16aによって緩和できるからである。金属線状材の太さ、堅さ、断面形状等は適宜選定されるので良い。
【0010】
また、本発明の場合、棒状部材14は、コイルバネで形成されているのが好ましい(請求項3)。
なぜならこれによると、トルク補強部材16の巻回部16aと協働して、トルク補強部材16が棒状部材14に当たったときの衝撃を緩和できるからである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、このように円環形流路内で動作体を循環させ、この動作体で水流を起こして水車を回し発電機で発電する装置において、上記の水車の羽根と羽根の間の空間部に、水車の主軸に沿って延びるよう棒状部材を設け、この棒状部材に突き当たって水車の回転力を高めるトルク補強部材を、流路内に配置される伝達部材の箇所に、起立状に設けているものである。
【0012】
従って、本発明の場合は、動作体だけではなく、トルク補強部材によっても水車に回転力を加えることができる。
それ故、これによれば、動作体だけで水車を回転させる従来装置に比べ、発電率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の装置の好適な一実施形態を示し、Aは斜視図、Bは要部正面図、CはBのC−C線断面図である。
【
図7】同上装置の一部を省略した要部斜視図である。
【
図8】同上装置の使用例を説明するための構成図である。
【
図9】同上装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図10】同上装置の他の実施形態を示す一部を省略した要部斜視図である。
【
図11】Aは
図10の実施形態の要部正面図、BはAのB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明は、
図1等に示されるように、水が循環する水平状の円環形流路1と、この流路1内に収納されて流路1内を流れる水のエネルギーで羽根2aが回転する水車2と、この水車2の羽根2aに水圧を加えるため流路1内を循環する動作体3と、この動作体3を流路1の外側から操作して循環させる動作装置4と、また上記の水車2の主軸2bに接続されて回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機5とを備えて形成されている。
【0015】
上記の円環形流路1は、この実施形態では断面長方形の閉鎖空間状に形成されている。また上記の水車2は、主軸2bを水平にして流路1の周方向に等間隔をあけて、この実施形態では平面から見て90度置きに、計4個設けられている。水車2の主軸2bは、水流が羽根2aに真っ向から当たるよう、流路1の直径線上に配置されている。羽根2aは、主軸2bの周りに、120度づつあけて計3枚設けられている。
【0016】
上記の動作体3は、
図1B等に示されるように、ほぼ三角形(台形)の起立板状に形成されている。動作体3は、裏側(進行方向の逆側)が支持板3aで支持され、常に垂直の起立姿勢を維持できるよう堅固に形成されている。
【0017】
また、
図4、
図6に示されるように、動作体3を通過させる箇所6は、水車2の各羽根2aに切り欠き状に形成されている。この動作体3を通過させる箇所6は、動作体3の正面形状に合わされ、動作体3の正面形状より幾分大きい状態に形成されている。
【0018】
また上記の動作装置4は、
図1等に示されるように、円環形流路1の中心に回転軸4a1を垂直にして設けられているモータ4aと、このモータ4aの回転運動を各動作体3に伝達するため回転軸4a1から動作体3に向かって放射状に配置されている伝達部材4bとで形成されている。この伝達部材4bは、この実施形態では軽量化できるよう、また材料を節減化できるよう、平面視で十字状に形成されている。
【0019】
上記の伝達部材4bは、具体的には回転軸4a1を中心に周方向に等間隔をあけて配置されている複数の腕片7で形成されている。この腕片7は、回転軸4a1から外側に延ばされている水平部7aと、この水平部7aの先端から垂直に立ち下げられている垂直部7bと、この垂直部7bの下端から外側に水平に短く延ばされている突き出し部7cとでクランク形に形成されている。伝達部材4bの流路1内に配置される箇所としての突き出し部7cに、上記の動作体3が設けられている。
【0020】
上記の垂直部7bは、
図6に示されるように、流路1の内側壁1aの内面に沿って流路1内に配置され、突き出し部7cが流路1の底面1bに近接して配置されていると共に、この突き出し部7cの上に、上記の動作体3が設けられている。この実施形態の場合、動作体3と水車2は、流路1の中心から90度置きに配置されている。従って、本発明装置は、動作体3が水車2に水流を間断なくバランス良く、作用させることができる。
【0021】
また本発明は、
図2、
図3に示されるように、流路1内の隣り合う水車2と水車2の間に、水を水車2の主軸2bより下側の位置に導く整水板8が上下一対状に設けられている。この整水板8は、この実施形態では流路1の外側壁1cに固定され、動作体3の循環方向に向かって徐々に下向きに傾斜するよう下り勾配がつけられ、下端8a(先端)側が水車2に近接して配置されている。
【0022】
9(
図1等参照)は、給水タンクである。この実施形態の本発明は、流路1内の水が蒸発して減少したときは、センサ(図示せず)からの信号を受けて、流路1内に給水タンク9から自動的に給水され、水量が一定になるよう形成されている。
【0023】
またこの実施形態では、流路1内にヒータ10が設けられ、水の凍結を防止できるよう形成されている。このヒータ10は、この実施形態では流路1の中心周りに90度づつあけられて所定位置に、計4個設けられている。
【0024】
また上記の発電機5は、この実施形態では発電した電気エネルギーを蓄電できるよう、蓄電池11(
図8参照)と電気的に接続されている。
【0025】
図8において、12は、例えば照明機器、家庭用電熱用品類、暖冷房装置、風水力機械器具、電気自動車などの電気機器である。また、13は、発電機5で発電した電気の流れをコントロールする制御部である。
【0026】
制御部13は、マイコンや変圧器、信号の入出力器等を備えて形成されている。本発明装置の発電機5やモータ4aは、この制御部13に、蓄電池11や電気機器12と共に、電気的に接続されている。
【0027】
また本発明は、
図1A、
図4、
図5等に示されるように、上記の水車2の羽根2aと羽根2aの間の空間部に、水車2の主軸2bの延びる方向に沿って棒状部材14が設けられている。この棒状部材14は、この実施形態ではコイルバネで形成されている。
【0028】
棒状部材14としてのコイルバネは、水車2の主軸2bの先端部と基端部に対向状に設けられている円板15に架け渡されている。そして、棒状部材14は、この実施形態では、3枚の羽根2aの間に、計3個設けられている。
【0029】
また本発明は、
図1B、C、
図4〜
図7等に示されるように、上記の棒状部材14に突き当たって水車2の回転力を高めるトルク補強部材16が、流路1内に配置されている。このトルク補強部材16は、流路1内に配置される伝達部材4bの箇所7cに、起立状に設けられている。
具体的には、動作体3の後側に、動作体3より高く起立状に設けられている。
【0030】
上記のトルク補強部材16は、この実施形態では金属線状材で形成されている。具体的には、径の太い針金で形成されている。この金属線状材としての針金の下部は、巻回され、棒状部材14に突き当たったときの衝撃を吸収する巻回部16aに形成されている。
【0031】
従って、この実施形態の本発明の場合は、トルク補強部材16が、棒状部材14に当たると、コイルバネの弾性により衝撃が弱められ、また巻回部16aの収縮、復元作用により、衝突時の衝撃を更に緩和できる。
【0032】
次に本発明装置の作用を説明する。
先ず、動作装置4のモータ4aが駆動すると、伝達部材4bと共に動作体3が水平状態で流路1内を周方向に移動し、循環する。そのため本発明の場合は、この動作体3によって流路1内の水が押し流され、水圧が高められて、この水で水車2の羽根2aが回される。
【0033】
この場合、動作体3は、流路1内に複数収納されているから、各動作体3が流路1内を循環しながら、各水車2に順次水圧を加えて行く。その結果、水車2が大きな力で回転し、水車2に連結されている発電機5が水の圧力エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0034】
而して、本発明の装置には、通常、蓄電池11が接続されているから、発電機5で発電された電気は、
図9に示されるように、蓄電池11に充電される。そして、例えば充電量が100%の状態で電気機器12のスイッチが入ると、制御部13からの信号を受けて放電され、電気機器12に給電される。
【0035】
またこの実施形態では、蓄電池11の残量が30%になるまで放電され(
図9参照)、残量が30%に至ると、制御部13からモータ4aに駆動信号が送られ、モータ4aが駆動する。その結果、動作体3が循環し、水車2が回転して発電機5が発電する。そして、発電した電気は、蓄電池11に充電される。
このような発電と充電の作用は、制御部13のマイコンに組み込まれたプログラムによって自動的に且つサイクル的に行われる。
【0036】
なお、本発明の装置は、例えば上水の水道管の途中に組み込まれ、水道水を流路1に供給可能に形成されているのでも良い。この場合は、水の入れ替えを省略でき、また水道水の水圧を動作体3の循環動作に利用できるから、一層、効率良く発電できる。
【0037】
また本発明装置の設置場所としては、例えば軒下や庭先、或いは電気需要の隣接地などがある。また本発明装置は、例えば電気自動車の電源用として、電気自動車に搭載して利用することもできる。この場合は、駐車してエンジンキーを抜いた時点で自動的に発電、充電するよう制御部13にプログラムが設定されているのが良い。これによれば、既存の充電設備スタンドの代替装置としての利用が可能になる。
【0038】
以上の処において、本発明は、
図10、
図11に示されるように、トルク補強部材16が、流路1内に配置される伝達部材4bの箇所7cに、前後に並べられて起立状に設けられているのでも良い。上例と同一箇所には同一の番号を付し、詳しい説明は省略する。
【0039】
この場合は、前側のトルク補強部材16が棒状部材14に先に当たり、引き続いて後側のトルク補強部材16が棒状部材14に当たって水車2の羽根2aに順次回転力を加える。
従って、これによれば、回転力をより一層高めることができる。またこれによると、前後のトルク補強部材16の衝突音が互いに干渉して弱め合う、という効果を期待できる。
【0040】
また、本発明の場合、上記のトルク補強部材16と棒状部材14の形状や材質等は、任意であり、上例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0041】
1 流路
2 水車
2a 羽根
2b 主軸
3 動作体
4 動作装置
4a モータ
4a1 回転軸
4b 伝達部材
5 発電機
6 動作体を通過させる箇所
7c 伝達部材の流路内に配置される箇所
14 棒状部材
16 トルク補強部材