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特開2016-200088エゼクタ及びこれを有する高空燃焼試験排気設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-200088(P2016-200088A)
(43)【公開日】2016年12月1日
(54)【発明の名称】エゼクタ及びこれを有する高空燃焼試験排気設備
(51)【国際特許分類】
   F04F 5/20 20060101AFI20161104BHJP
   F04F 5/46 20060101ALI20161104BHJP
   F02K 9/96 20060101ALI20161104BHJP
【FI】
   F04F5/20 E
   F04F5/46 C
   F02K9/96
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-81838(P2015-81838)
(22)【出願日】2015年4月13日
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 厚志
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 圭司郎
(72)【発明者】
【氏名】太田 真弘
【テーマコード(参考)】
3H079
【Fターム(参考)】
3H079AA18
3H079AA24
3H079BB10
3H079CC03
3H079DD02
3H079DD03
(57)【要約】
【課題】対象流体を効率よく吸引することができるエゼクタ及びこれを有する高空燃焼試験排気設備を提供する。
【解決手段】対象流体が第1方向に流れる断面が曲線となる管路と、管路の第1方向の端部の外周を覆い、かつ管路の外周に配置された環状の流路であり、駆動流体が第1方向に流れるノズルと、を有し、管路は、端部の内周面の径方向の位置が周方向の位置に応じて径が変化する凹凸形状である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象流体が第1方向に流れる断面が曲線となる管路と、
前記管路の前記第1方向の端部の外周を覆い、かつ前記管路の外周に配置された環状の流路であり、駆動流体が前記第1方向に流れるノズルと、を有し、
前記管路は、前記端部の内周面の径方向の位置が周方向の位置に応じて径が変化する凹凸形状であることを特徴とするエゼクタ。
【請求項2】
前記管路は、端部の内周面の径方向の位置が周方向に沿って周期的に変化し、周方向に複数の凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエゼクタ。
【請求項3】
前記管路は、前記端部側に前記凹凸形状が形成された凹凸部と、前記第1方向上流側に内周面が楕円または円となる直管部と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載のエゼクタ。
【請求項4】
前記凹凸部は、前記第1方向上流側に向かうにしたがって、凹凸形状の凹部と凸部の距離が小さくなる遷移部を有することを特徴とする請求項3に記載のエゼクタ。
【請求項5】
前記管路は、前記内周面の凹凸形状の凹部及び凸部の周方向の位置が、前記第1方向に沿って徐々に周方向の一方向に変化し、前記凹部及び前記凸部が螺旋を形成することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のエゼクタ。
【請求項6】
前記管路は、断面が円であり、
前記ノズルは、円環形状であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のエゼクタ。
【請求項7】
前記管路は、前記端部の外周面の径方向の位置が周方向の位置に応じて径が変化する凹凸形状であることを特徴とする請求項1から6のいずれ一項に記載のエゼクタ。
【請求項8】
前記管路は、端部の外周面の径方向の位置が周方向に沿って、前記内周面と同一周期で周期的に変化することを特徴とする請求項7に記載のエゼクタ。
【請求項9】
前記ノズルは、前記第1方向下流側の端部の内周面が径方向の位置が周方向の位置に応じて径が変化する凹凸形状であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のエゼクタ。
【請求項10】
前記ノズルは、前記第1方向下流側の端部の内周面の径方向の位置が周方向に沿って、前記管路の前記内周面と同一周期で周期的に変化することを特徴とする請求項9に記載のエゼクタ。
【請求項11】
前記ノズルの外周面の前記第1方向の端部に接続され、前記ノズル及び前記管路よりも前記第1方向下流側で前記対象流体及び前記駆動流体が流れる下流側管路を、有することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のエゼクタ。
【請求項12】
ロケットエンジンを収容し、燃焼ガスが噴射される低圧室に接続され、前記燃焼ガスが流入する高空燃焼試験排気設備であって、
前記低圧室に接続されて前記燃焼ガスの流れ方向に沿って案内するスロート部と、前記スロート部の下流側に設けられ前記燃焼ガスの流れ方向下流側に向かうに従って流路断面積が拡大する拡大部と、を有するディフューザと、
前記スロート部に設置され、前記スロート部に前記流れ方向に沿って駆動流体を噴射する請求項1から11のいずれか一項に記載のエゼクタと、を有し、
前記エゼクタは、前記スロート部が前記管路の一部となり、前記スロート部に前記ノズルから駆動流体を噴出することを特徴とする高空燃焼試験排気設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エゼクタ及びこれを有する高空燃焼試験排気設備に関する。
【背景技術】
【0002】
管路を流れる対象流体を吸引する機構として、対象流体が流れる管路に、対象流体が流れる方向に沿って、対象流体よりも高速で駆動流体を噴射し、対象流体を流れ方向に吸引するエゼクタがある。
【0003】
エゼクタは、宇宙輸送システムに用いられるロケットに使用されるロケットエンジンのうちロケットの上段(2段目や3段目)に相当する部分の燃焼試験で気圧が非常に低い高空環境を再現する場合に用いられる。具体的には、ロケットエンジンから排ガスが排出される空間の流体をエゼクタで吸引することで、ロケットエンジンの排ガスを噴射する雰囲気を、高空環境を模擬した空間とする。
【0004】
このようなエゼクタとしては、特許文献1の図4、特許文献2に示すように、対象流体が流れる管路の外縁に対象流体よりも高速の駆動流体を噴射するノズルを環状に配置したアニュラーエゼクタがある。特許文献2には、高速の駆動流体を噴射する位置よりも下流側の管路の内壁に凹凸を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−151000号公報
【特許文献2】特開2003−4319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アニュラーエゼクタを用いることで、対象流体を効率よく吸引することができるが、より効率よく対象流体を吸引することで性能をより向上させることができる。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、対象流体を効率よく吸引することができるエゼクタ及びこれを有する高空燃焼試験排気設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、エゼクタは、対象流体が第1方向に流れる断面が曲線となる管路と、前記管路の前記第1方向の端部の外周を覆い、かつ前記管路の外周に配置された環状の流路であり、駆動流体が前記第1方向に流れるノズルと、を有し、前記管路は、前記端部の内周面の径方向の位置が周方向の位置に応じて径が変化する凹凸形状であることを特徴とする。
【0009】
また、前記管路は、端部の内周面の径方向の位置が周方向に沿って周期的に変化し、周方向に複数の凸部が形成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記管路は、前記端部側に前記凹凸形状が形成された凹凸部と、前記第1方向上流側に内周面が楕円または円となる直管部と、を有することが好ましい。
【0011】
また、前記凹凸部は、前記第1方向上流側に向かうにしたがって、凹凸形状の凹部と凸部の距離が小さくなる遷移部を有することが好ましい。
【0012】
また、前記管路は、前記内周面の凹凸形状の凹部及び凸部の周方向の位置が、前記第1方向に沿って徐々に周方向の一方向に変化し、前記凹部及び前記凸部が螺旋を形成することが好ましい。
【0013】
また、前記管路は、断面が円であり、前記ノズルは、円環形状であることが好ましい。
【0014】
また、前記管路は、前記端部の外周面の径方向の位置が周方向の位置に応じて径が変化する凹凸形状であることが好ましい。
【0015】
また、前記管路は、端部の外周面の径方向の位置が周方向に沿って、前記内周面と同一周期で周期的に変化することが好ましい。
【0016】
また、前記ノズルは、前記第1方向下流側の端部の内周面が径方向の位置が周方向の位置に応じて径が変化する凹凸形状であることが好ましい。
【0017】
また、前記ノズルは、前記第1方向下流側の端部の内周面の径方向の位置が周方向に沿って、前記管路の前記内周面と同一周期で周期的に変化することが好ましい。
【0018】
また、前記ノズルの外周面の前記第1方向の端部に接続され、前記ノズル及び前記管路よりも前記第1方向下流側で前記対象流体及び前記駆動流体が流れる下流側管路を、有することが好ましい。
【0019】
本発明は、ロケットエンジンを収容し、燃焼ガスが噴射される低圧室に接続され、前記燃焼ガスが流入する高空燃焼試験排気設備であって、前記低圧室に接続されて前記燃焼ガスの流れ方向に沿って案内するスロート部と、前記スロート部の下流側に設けられ前記燃焼ガスの流れ方向下流側に向かうに従って流路断面積が拡大する拡大部と、を有するディフューザと、前記スロート部に設置され、前記スロート部に前記流れ方向に沿って駆動流体を噴射する上記のいずれかに記載のエゼクタと、を有し、前記エゼクタは、前記スロート部が前記管路の一部となり、前記スロート部に前記ノズルから駆動流体を噴出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、対象流体を効率よく吸引することができるエゼクタ及びこれを有する高空燃焼試験排気設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本実施形態に係るロケットエンジン高空燃焼試験設備の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、アニュラーエゼクタの概略構成を示す断面図である。
図3図3は、アニュラーエゼクタを流れ方向下流側から見た図である。
図4図4は、図3のA−A線及びB−B線の断面図である。
図5図5は、他の例のアニュラーエゼクタを示す断面図である。
図6図6は、他の例のアニュラーエゼクタを示す断面図である。
図7図7は、他の例のアニュラーエゼクタを示す断面図である。
図8図8は、他の例のアニュラーエゼクタを流れ方向下流側から見た図である。
図9図9は、他の例のアニュラーエゼクタを流れ方向下流側から見た図である。
図10図10は、他の例のアニュラーエゼクタを流れ方向下流側から見た図である。
図11図11は、他の例のアニュラーエゼクタを流れ方向下流側から見た図である。
図12図12は、他の例のアニュラーエゼクタを流れ方向下流側から見た図である。
図13図13は、他の例のアニュラーエゼクタの内管の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。本実施形態のロケットエンジン高空燃焼試験設備は、例えば人工衛星打ち上げ用ロケットに用いられる液体酸素(液化酸素)・液体水素(液化水素)エンジンであるロケットエンジンのための試験設備である。ロケットエンジンは、噴射ノズルから高温、高圧の燃焼排気ガス(以下、燃焼ガスという)を噴射するエンジンである。ロケットエンジン高空燃焼試験設備は、この様な宇宙空間などの高空雰囲気の下で使用されるロケットエンジンの燃焼試験を、地上にて行うための装置である。なお、ロケットエンジンは、液体燃料を推進剤として用いるものに限らず、固体燃料を推進剤として用いるロケットエンジンでもよい。
【0023】
図1は、本実施形態に係るロケットエンジン高空燃焼試験設備の概略構成を示す模式図である。図1に示すロケットエンジン高空燃焼試験設備1は、ロケットエンジン5を収容する低圧室2と、低圧室2を減圧するための排気装置(高空燃焼試験排気設備)3と、制御装置4と、を有する。排気装置3は、燃焼ガスの流路となる。ロケットエンジン5は、架台を介して低圧室2に設置されている。また、ロケットエンジン5には、燃料供給装置が接続されている。
【0024】
低圧室2は、気密に形成されたチャンバーであり、排気装置3によって内部を所定の真空度に設定することが可能である。低圧室2には、例えば、ロケットエンジン5の再着火試験のコースト時の真空維持のために真空引きを行うための真空ポンプ7が接続されている。
【0025】
排気装置3は、低圧室2に対して燃焼ガスの流れ方向F下流側に接続された排気トンネル8と、排気トンネル8の下流側に設けられた消音塔9と、を有する。排気トンネル8は、最も上流側に設けられ、アニュラーエゼクタ(第1エゼクタ)11が設けられたディフューザ10と、ディフューザ10の下流側に接続されたセンターボディエゼクタ(第2エゼクタ)12と、を有している。即ち、本実施形態の排気装置3は、ディフューザ10と二段のアニュラーエゼクタ11,センターボディエゼクタ12を有する排気方式を採用している。
【0026】
ディフューザ10は、燃焼ガスの流れ方向F下流側に向かって漸次狭くなる縮小部14と、縮小部14の下流側に接続され燃焼ガスの流れ方向Fに沿って流路断面積が一定とされたスロート部(管路)15と、スロート部15の下流側に接続され下流側に向かって漸次太くなる拡大部16と、を有している。即ち、燃焼ガスの流路は、スロート部15にて絞られた後、拡大部16にて広がっている。なお、スロート部15の流路断面積は一定とされているとしたが、一定である必要はなく、設計都合による断面積の変化は許されるものとする。スロート部15の断面積は、長手方向(燃焼ガスの流れ方向F)に沿って完全に同一ではなく、アニュラーエゼクタ11の設置位置より下流側でやや拡大している。
【0027】
アニュラーエゼクタ11は、ディフューザ10のスロート部15の入口近傍に、ディフューザ10と一体となるように配置されている。アニュラーエゼクタ11は、ディフューザ10のスロート部15の内周面(周壁)70より燃焼ガスの流れ方向F下流側に駆動流体となる蒸気を噴射する第1エゼクタ噴射ノズル(噴射口)17と、第1エゼクタ噴射ノズル17に蒸気を供給する蒸気供給部18と、蒸気供給部18と第1エゼクタ噴射ノズル17とを接続する蒸気配管19と、蒸気配管19に設けられているバルブ20と、を有している。アニュラーエゼクタ11の第1エゼクタ噴射ノズル17とスロート部15との関係については後述する。
【0028】
蒸気供給部18としては、アキュムレータや、蒸気発生器等の蒸気源を採用することができる。蒸気供給部18は、センターボディエゼクタ12にも蒸気を供給する。また、アニュラーエゼクタ11,センターボディエゼクタ12から噴出させる駆動流体は、蒸気に限ることはなく、例えば、窒素ガスを採用してもよい。アニュラーエゼクタ11は、上記供給部18から蒸気配管19を介して供給される蒸気を燃焼ガスの流れ方向F下流側に向けて、第1エゼクタノズル17からスロート部15の内部に噴射することで、燃焼ガスを流れ方向Fに吸引することができる。なお、蒸気は、燃焼ガスよりも速い速度、例えば噴射時に音速を超える速度で噴射される。
【0029】
アニュラーエゼクタ11の燃焼ガスの流れ方向Fの位置は、ロケットエンジン5から噴射される燃焼ガスによる圧力回復が発生する位置に基づいて決定される。具体的には、アニュラーエゼクタ11の燃焼ガスの流れ方向Fの位置は、スロート部15におけるロケットエンジン5の燃焼ガス噴射による圧力回復の発生位置よりも上流側に配置されている。換言すれば、アニュラーエゼクタ11の上流側にて、ロケットエンジン5の燃焼ガスのみの圧力回復が発生しないような位置に設定されている。
【0030】
ここで、スロート部15は、流れ方向F上流側から第1スロート部15a、第2スロート部15b、第3スロート部15cが配置されている。第1スロート部15aは、縮小部14と接続されている。第2スロート部15bは、第1スロート部15aより下流側の部分であり、アニュラーエゼクタ11の第1エゼクタ噴射ノズル17より下流側に配置されている。第2スロート部15bは、第1エゼクタ噴射ノズル17と接続されている。また、第2スロート部15bより下流側の第3スロート部15cは、アニュラーエゼクタ11の蒸気の噴射を妨げない範囲で、第1スロート部15aと同じ径になるように縮小している。なお、第1エゼクタ噴射ノズル17よりも下流側のスロート部15b,15cの断面積を第1エゼクタ噴射ノズル17より上流側の断面積よりも小さくしてもよい。即ち、本実施形態のスロート部15は、距離Sの範囲であり、スロート部15の標準となる直径で形成された第1スロート部15a,第3スロート部15c、及び第1スロート部15a,第3スロート部15cよりもやや拡大された第2スロート部15bを含む。もちろん、距離Sの範囲における燃焼ガスの流れ方向Fに沿う断面積を一定にしてもよい。
【0031】
ディフューザ10のスロート部15において、アニュラーエゼクタ11の上流側には、燃焼ガスの流路を閉塞可能なブロックオフバルブ(バルブ、仕切弁)23が設けられている。ブロックオフバルブ23は、ゲート式のバルブである。ブロックオフバルブ23は、ブロックオフバルブ23を閉状態とすることによって、ディフューザ10におけるブロックオフバルブ23の上流側と下流側とを遮断することができる仕切弁である。また、ディフューザ10には、ブロックオフバルブ23の上流側と下流側とをバイパスするバイパスライン33が設けられている。バイパスライン33には、バイパスライン33を遮断することができるバイパス弁34が設けられている。また、ブロックオフバルブ23は、燃焼ガスの冷却を行う冷却水を噴射するスプレイ冷却装置27よりも上流側に配置されている。スプレイ冷却装置27については後述する。
【0032】
また、ディフューザ10は、ディフューザ壁面冷却装置24を有している。ディフューザ壁面冷却装置24は、中空構造とされているディフューザ10の壁部にディフューザ冷却水を供給する第1冷却水供給装置25と、第1冷却水供給装置25とディフューザ10の壁部の内部空間とを接続する第1冷却水配管26と、を有している。第1冷却水供給装置25から供給されるディフューザ冷却水が、ディフューザ10を構成する壁部に供給されることによって、高温の燃焼ガスに晒されるディフューザ10の壁面が冷却される。
【0033】
ディフューザ10の下流側端部近傍には、スプレイ冷却装置27が設けられている。スプレイ冷却装置27は、ディフューザ10の流路上に設けられた冷却水ノズル28と、冷却水ノズル28にスプレイ冷却水を供給する第2冷却水供給装置29と、第2冷却水供給装置29と冷却水ノズル28とを接続する第2冷却水配管30と、を有している。スプレイ冷却装置27は、所定量の冷却水を排気トンネル8内に噴霧する装置である。
【0034】
センターボディエゼクタ12は、排気トンネル8内であって、ディフューザ10の下流側に配置されている。センターボディエゼクタ12は、燃焼ガスの流れ方向Fから見てチャンバーの略中央に配置された第2エゼクタ噴射ノズル32と、第2エゼクタ噴射ノズル32に蒸気を供給する蒸気供給部18と、蒸気供給部18と第2エゼクタ噴射ノズル32とを接続する蒸気配管19と、蒸気配管19に設けられているバルブ20と、を有している。本実施形態は、アニュラーエゼクタ11とセンターボディエゼクタ12とで、蒸気供給部18を共有している。
【0035】
次に、図1に加え、図2から図3を用いてアニュラーエゼクタ11について説明する。図2は、アニュラーエゼクタの概略構成を示す断面図である。図3は、アニュラーエゼクタを流れ方向下流側から見た図である。
【0036】
アニュラーエゼクタ11は、スロート部15の第1スロート部15aの外周に第1エゼクタ噴射ノズル17が配置されている。第1エゼクタ噴射ノズル17は、ディフューザ10のスロート部15の壁面に、周方向に環状に設けられている。第1エゼクタ噴射ノズル17は、スロート部15の壁面を管路の一部として用いる。アニュラーエゼクタ11は、第1スロート部15aと第1エゼクタ噴射ノズル17に対応する部分が、内管100の外周に外管50が配置された二重管構造となる。内管100は、流れ方向下流側の端部である先端56が第2スロート部15bよりも径が小さくなり、離間している。また、先端56は、流れ方向下流側に向かうにしたがって、外周面72の径が小さくなり、先端が先鋭な形状となる。外管50は、流れ方向下流側に向かうにしたがって、内周面74の径が小さくなる。つまり、外管50と内管100との距離は、流れ方向下流側に向かうにしたがって、短くなる。内管100の先端56側の内管100と外管50との間隔が最も短い部分が、チョーク部64となる。外管50は、流れ方向下流側の端部が第2スロート部15bと接続されている。
【0037】
次に、内管100は、図3に示すように、内周面70の先端56側の径方向の位置(中心から内周面70までの距離)が周方向の位置に応じて径が変化する凹凸形状である。具体的には、内周面70は、凸部80と凹部82とが周方向に交互に形成されている。ここで、凸部80は、中央径88よりも径が小さい内側径84に沿った曲面である。凹部82は、中央径88よりも径が大きい外側径86に沿った曲面である。内周面70は、周方向に複数形成されている凸部80と凹部82が同一形状である。これにより、内周面70は、内周面の径方向の位置が周方向に沿って周期的に変化する。
【0038】
アニュラーエゼクタ11は、内管100がスロート部15(第1スロート部15a、管路)となる。また、アニュラーエゼクタ11は、内管100と外管50の組み合わせが第1エゼクタ噴射ノズル(ノズル)17となる。アニュラーエゼクタ11は、内管100の径方向内側の面である内周面70で囲われた領域が吸引する対象流体である燃焼ガス60が流れる燃焼ガス流路(対象流体流路)52となる。燃焼ガス60は、内管100の軸方向に沿って流れる。また、アニュラーエゼクタ11は、内管100の径方向外側の面である外周面72と外管50の内周面74とで囲われたリング形状の領域が駆動流体である蒸気62が流れる蒸気流路(駆動流体流路)54となる。蒸気62は、内管100の先端56側の内管100と外管50との間隔が最も短いチョーク部64から第2スロート部15bに向けて噴射される。
【0039】
アニュラーエゼクタ11は、内周面70に凸部80と凹部82とが周方向に交互に並んだ凹凸形状を形成することで、内管100から噴射される燃焼ガス60の外縁の形状を凹凸がある形状とすることができる。これにより、管路の内周長より長くすることができる。これにより、内周面70を円にした場合よりも燃焼ガス60と蒸気62との界面の面積を大きくすることができる。界面の面積を大きくできることで、燃焼ガス60と蒸気62との運動量の交換を促進することができる。つまり、蒸気62で効率よく燃焼ガス60を流れ方向下流側に吸引することができる。これにより、アニュラーエゼクタ11の長さ、具体的にはスロート部15の長さSを短くすることができ、装置全体を小型化することができる。
【0040】
内周面70は、外縁の内周面の径方向の位置が周方向に沿って周期的に変化し、周方向に複数の凸部80(凹部)82を配置することが好ましい。凸部80(凹部)82を周方向に複数配置することで、内周長を、元の管路より長くすることができ、断面積を好適に増やすことができる。これにより、アニュラーエゼクタ11の吸引力をより高くすることができる。
【0041】
次に、内周面の凹凸部分の軸方向における形状の例を示す。アニュラーエゼクタ11は、内周面100の凹凸形状、つまり凸部80と凹部82が、軸方向の全域に延在している形状としてもよいが、以下の形状としてもよい。
【0042】
図4は、図3のA−A線及びB−B線の断面図である。なお、図4は、傾斜をわかりやすく示すため、傾斜角度を実際の角度よりも大きく示している。図4に示すアニュラーエゼクタ11aの内管102は、内管102の軸方向に平行な断面において、直管部90と凹凸部92と、を有する。内管102は、流れ方向上流側から直管部90、凹凸部92の順で配置され、直管部90と凹凸部92とが接続されている。内管102は、流れ方向下流側の端部、つまり第2スロート部15b側の端部である先端56から流れ方向上流側から距離Lの範囲が凹凸部92となり、先端56から流れ方向上流側から距離Lよりも上流側の部分が直管部90となる。
【0043】
直管部90は、内周面70の径方向の位置が一定、本実施形態では内周面70が円となる。つまり凹凸が形成されていない形状となる。凹凸部92は、先端56を含む範囲に設けられ、内周面70に凹凸形状が形成されている。凹凸部92は、遷移部94と凹凸維持部96とを有する。遷移部94は、第1方向上流側の端部が直管部90と接続しており、第1方向下流側の端部が凹凸維持部96と接続されている。つまり遷移部94は、直管部90と凹凸維持部96とを繋いでいる。遷移部94は、第1方向下流側に向かうにしたがって、凹凸形状の凹部と凸部の距離が大きくなる、つまり、第1方向上流側に向かうにしたがって、凹凸形状の凹部と凸部の距離が小さくなる形状である。遷移部94は、第1方向上流側の端部の内周面の断面が円となり、第1方向下流側の端部の内周面の断面が凹凸維持部96と同様の凹凸となる。凹凸維持部96は、内周面70が凹凸形状であり、凹凸の深さが軸方向の位置に依らず一定となる。つまり先端56の凹凸と同じ形状が延在している。
【0044】
内管102は、このように凹凸部92と直管部90とを設けることで、加工を行う範囲を小さくすることができる。これにより製造しやすくすることができる。また、遷移部を設けることで、燃焼ガスの流れが内周面から剥離することを抑制することができる。
【0045】
また、凹凸部92は、遷移部94の径が変化する部分の内周面70の軸方向に対する傾斜角θを3度以下とすることが好ましい。これにより、凹凸部92での空気の剥離が生じることを抑制することができる。
【0046】
図5は、他の例のアニュラーエゼクタを示す断面図である。図5に示すアニュラーエゼクタ11bの内管104は、直管部90と凹凸部92aとを有する。凹凸部92aは、全域が遷移部となり、第1方向下流側に向かうにしたがって、凹凸形状の凹部と凸部の距離が大きくなる形状である。つまり、先端56まで凹凸の深さが連続的に変化する。このように、凹凸維持部96を設けない形状としてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、凸部80の径方向の位置を一定として、凹部82の径方向の位置を軸方向の位置によって変化させたがこれに限定されない。図6は、他の例のアニュラーエゼクタを示す断面図である。図6に示すアニュラーエゼクタ11cの内管106は、周方向において凹部82に相当する位置が第1方向下流側に向かうにしたがって、径方向外側に移動し、周方向において凸部80に相当する位置が第1方向下流側に向かうにしたがって、径方向内側に移動する。直管部90の内周面の径は、中央径88に相当する径となる。このように、凹部82、凸部80の両方の位置を変化させてもよい。この場合、凸部80で形成される斜面と中心軸とのなす角θは、3度以下とすることが好ましい。これにより流れの剥離を抑制することができる。
【0048】
図7は、他の例のアニュラーエゼクタを示す断面図である。図7に示すアニュラーエゼクタ11dの内管108は、凸部80の先端56と、凹部82の先端56aとの軸方向の位置が同じ位置となる。このように、先端が同じ形状となるように、内管108の先端面の軸方向に直交する方向における角度を変化させてもよい。
【0049】
上記実施形態では、界面の面積を好適に増加できるため、凸部80と凹部82とを径が異なる円弧とその円弧を繋げる線分で形成したギヤ形状としたがこれに限定されない。図8は、他の例のアニュラーエゼクタを流れ方向下流側から見た図である。図8に示すアニュラーエゼクタ11eの内管100aは、内周面70aの凹凸が中央径88を中心線とした波線、例えばsinカーブで形成されている。この場合、カーブの径方向内側の頂点が凸部80aとなり、カーブの径方向外側の頂点が凹部82aとなる。このように内周面70aの凹凸形状を曲線で形成してもよい。また、内周面を、最大径の位置と最小径の位置を直線で結んだ形状としてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、内管100の内周面に凹凸を形成し、内管100の外周面72及び外管50の内周面74は断面が円となる形状としたがこれに限定されない。
【0051】
図9は、他の例のアニュラーエゼクタを流れ方向下流側から見た図である。図9に示すアニュラーエゼクタ11fの内管100bは、内周面70に凹凸が形成されており、外周面72aにも凹凸が形成されている。外周面72aは、径方向の位置が周方向の位置に応じて径が変化する凹凸形状であり、凸部120と凹部122と周方向に交互に形成されている。凸部120と凹部122とは、凸部80と凹部82と同様に径が異なる円弧とその円弧を繋げる線分で形成したギヤ形状となる。ここで、外周面72aは、径方向の位置が周方向に沿って、内周面と同一周期で周期的に変化する。
【0052】
このように、外周面72aにも凹凸を形成することで、蒸気62の界面にも凹凸形状を形成することができる。これにより、燃焼ガス60と蒸気62と界面の面積をより大きくすることができ、蒸気62で燃焼ガス60を吸引する効果をより大きくすることができる。また、外周面72aの凹凸形状を内周面と同一周期で周期的に変化させることで、周方向の位置での、蒸気62で燃焼ガス60との関係を平均化することができる。
【0053】
上記実施形態では、界面の面積を好適に増加できるため、凸部120と凹部122とを径が異なる円弧とその円弧を繋げる線分で形成したギヤ形状としたがこれに限定されない。図10は、他の例のアニュラーエゼクタを流れ方向下流側から見た図である。図10に示すアニュラーエゼクタ11gの内管100cは、内周面70aの凹凸が中央径88を中心線とした波線、例えばsinカーブで形成されている。同様に、内管100cは、外周面72aの凹凸が中央径88を中心線とした波線、例えばsinカーブで形成されている。この場合、カーブの径方向内側の頂点が凸部120aとなり、カーブの径方向外側の頂点が凹部122aとなる。このように内周面70a及び外周72bの凹凸形状を曲線で形成してもよい。また、内周面を、最大径の位置と最小径の位置を直線で結んだ形状としてもよい。
【0054】
図11は、他の例のアニュラーエゼクタを流れ方向下流側から見た図である。図11に示すアニュラーエゼクタ11hの外管50aの内周面74aは、内周面70に凹凸が形成されており、内周面74aにも凹凸が形成されている。内周面74aは、径方向の位置が周方向の位置に応じて径が変化する凹凸形状であり、凸部130と凹部132と周方向に交互に形成されている。凸部130と凹部132とは、凸部80と凹部82と同様に径が異なる円弧とその円弧を繋げる線分で形成したギヤ形状となる。ここで、内周面74aは、径方向の位置が周方向に沿って、内周面と同一周期で周期的に変化する。
【0055】
このように、外管50aの内周面74aにも凹凸を形成することで、蒸気62の界面にも凹凸形状を形成することができる。これにより、燃焼ガス60と蒸気62と界面の面積をより大きくすることができ、蒸気62で燃焼ガス60を吸引する効果をより大きくすることができる。また、内周面74aの凹凸形状を内周面と同一周期で周期的に変化させることで、周方向の位置での蒸気62で燃焼ガス60との関係を平均化することができる。
【0056】
上記実施形態では、界面の面積を好適に増加できるため、凸部130と凹部132とを径が異なる円弧とその円弧を繋げる線分で形成したギヤ形状としたがこれに限定されない。図12は、他の例のアニュラーエゼクタを流れ方向下流側から見た図である。図12に示すアニュラーエゼクタ11iの外管50bは、内周面70aの凹凸が中央径88を中心線とした波線、例えばsinカーブで形成されている。同様に、外管50bは、内周面74bの凹凸が中央径88を中心線とした波線、例えばsinカーブで形成されている。この場合、カーブの径方向内側の頂点が凸部140となり、カーブの径方向外側の頂点が凹部142となる。このように内周面70a及び内周面74bの凹凸形状を曲線で形成してもよい。また、内周面を、最大径の位置と最小径の位置を直線で結んだ形状としてもよい。
【0057】
また、アニュラーエゼクタは、先端部、チョーク部の内管100の内周面及び外周面と外管50の内周面の全てに周方向に径方向の位置が変化する凹凸を形成することが好ましい。これにより、界面の面積をより大きくすることができる。また、チョーク部の幅を周方向に一定にすることもできる。
【0058】
図13は、他の例のアニュラーエゼクタの内管の斜視図である。図13に示す内管100cは、内周面70bの凹凸形状の凹部及び凸部の周方向の位置が、第1方向に沿って徐々に周方向の一方向に変化し、凹部及び凸部が螺旋を形成されている。つまり凹部82bの位置が周方向に変化する形状となる。本実施形態では、内周面70bの中心軸89に平行な線に対して、凹部82bが角度α傾斜している。なお、図13は、1つの凹部82bの位置のみを示しているが、他の凹部、凸部も周方向に回転している。このように、凹部と凸部を螺旋形状とすることで燃焼ガスを旋回方向に回転させることができ、運動エネルギーの交換をより促進させることができる。
【0059】
また、本実施形態のアニュラーエゼクタは、内管及び外管の、凹凸部を形成していない部分、つまり直管部の軸方向に直交する断面を円、真円となる形状としたが、楕円としてもよい。アニュラーエゼクタは、内管及び外管を軸方向に直交する断面が曲線を接続した形状とすることが好ましい。
【0060】
次に、本実施形態のロケットエンジン高空燃焼試験設備1の運転方法について説明する。
【0061】
(設備始動方法)
ロケットエンジン高空燃焼試験設備1の始動時においては、ロケットエンジン5を起動する前に低圧室2を低圧にする。具体的には、ブロックオフバルブ23を閉状態としてエゼクタ(アニュラーエゼクタ11、及びセンターボディエゼクタ12)を作動させて、ブロックオフバルブ23の下流側の領域の排気処理を行う。
【0062】
一方、バイパス弁34を開状態として、バイパスライン33を介して低圧室2の真空引き処理を行う。具体的には、バイパスライン33を介して低圧室2及びディフューザ10におけるブロックオフバルブ23の上流側の領域の真空引きを行う。次いで、低圧室2が十分に低圧となった状態(例えば100Torr,13332Pa)でブロックオフバルブ23を開状態とするとともに、バイパス弁34を閉状態として、更に低圧室2を10Torr(1333Pa)程度にまで低圧にする。
【0063】
低圧室2が10Torrとなったらロケットエンジン5を起動させて、ロケットエンジン5の燃焼試験を行う。この際、アニュラーエゼクタ11の下流では、排気装置3を安定差動させるべく、亜音速に圧力回復させている。そして、アニュラーエゼクタ11の下流側でスプレイ冷却を実施して燃焼ガスの温度を低減している。
【0064】
(設備停止方法)
ロケットエンジン高空燃焼試験設備1の停止時におけるオペレーションについて説明する。ロケットエンジン高空燃焼試験設備1の停止時において、制御装置4は、アニュラーエゼクタ11、及びセンターボディエゼクタ12を作動させた状態でエンジン燃焼を停止させる(ロケットエンジン停止工程)。ロケットエンジン5から排出される燃焼ガスが完全に流れた後、制御装置4は、ブロックオフバルブ23を閉状態にする命令を発する。
【0065】
ロケットエンジン5が停止することによって、ロケットエンジン5から排出される燃焼ガスによるエゼクタ効果がなくなり、燃焼ガスが低圧室2側に逆流しようとする。しかしながら、アニュラーエゼクタ11が作動していることによって、ロケットエンジン5の停止直後における、燃焼ガスが低圧室2側に逆流しようとするブローバックが低減される。即ち、本実施形態のロケットエンジン高空燃焼試験設備1においては、アニュラーエゼクタ11がロケットエンジン5の燃焼ガス噴射による圧力回復の発生位置よりも上流側に配置されていることによって、ブローバックが低減される。
【0066】
また、ブロックオフバルブ23は、やや遅れて閉状態となる(バルブ閉鎖工程)。ブロックオフバルブ23は、ロケットエンジン5から排出される燃焼ガスが完全に流れた後、ブローバックの発生後に完全に閉状態となる。ブロックオフバルブ23が、ディフューザ10のスロート部15において上流側と下流側とを遮断することにより、アニュラーエゼクタ11の停止時に発生するブローバックを防止することができる。次いで、制御装置4は、アニュラーエゼクタ11及びセンターボディエゼクタ12の二つのエゼクタを停止させる(エゼクタ停止工程)。次いで、低圧室2内を大気圧に圧力復帰させる。
【0067】
上記実施形態によれば、アニュラーエゼクタ11がディフューザ10のスロート部15に配置されていることによって、ロケットエンジン5の停止時におけるブローバックを低減することができる。即ち、ロケットエンジン5の停止に伴いロケットエンジン5から排出される燃焼ガスによるエゼクタ効果がなくなり、低圧室2側に逆流しようとする燃焼ガスを、アニュラーエゼクタ11によって下流側の方向に押し戻すことができる。
【0068】
また、アニュラーエゼクタ11の上流側に設けられているブロックオフバルブ23を閉鎖することによって、アニュラーエゼクタ11の停止時に発生するブローバックを防止することができる。即ち、アニュラーエゼクタ11の停止に伴って蒸気が逆流した場合においても、ブロックオフバルブ23によって逆流する蒸気を遮断することができる。
【0069】
また、ブロックオフバルブ23をディフューザ10に設置したことによって、ロケットエンジン5起動前の減圧工程における低圧室2及びディフューザ10におけるブロックオフバルブ23の上流側の領域の真空引きに必要となる時間を短縮することができる。即ち、バイパスライン33を介して真空引きされる容積を低減でき、試験前における真空度到達までの時間を短縮することができる。さらに、ブロックオフバルブ23をディフューザ10に設置したことによって、ロケットエンジン5の再着火試験のコースト時における真空引き時間を短縮するとともに真空ポンプ7の容量を低減することができる。
【0070】
また、アニュラーエゼクタ11がロケットエンジン5の燃焼ガス噴射による圧力回復の発生位置よりも上流側に配置されていることによって、ロケットエンジン5自体の圧力回復能力を有効に活用することができ、エゼクタ11,12に必要な蒸気消費量の低減が可能となる。また、ロケットエンジン燃焼試験中は、アニュラーエゼクタ11の駆動蒸気による壁面冷却効果で高温の燃焼ガスから熱負荷を低減し、必要な冷却水流量を低減することができる。
【0071】
また、アニュラーエゼクタ11とディフューザ10とを一体型とすることにより、エゼクタをディフューザの下流側に配置する形態と比較して、排気装置3に必要な長さを短縮することができる。また、アニュラーエゼクタ11の第1エゼクタ噴射ノズル17をスロート部15の内周面70よりも径方向外側に配置したことによって、ロケットエンジン燃焼試験中にロケットエンジン5の燃焼ガスがノズルに衝突することにより発生する圧力回復を防止することができる。
【0072】
また、ブロックオフバルブ(バルブ)23をスプレイ冷却装置27の上流側に配置したことによって、バルブをスプレイ冷却装置27の下流側に配置した場合と比較して、真空引きを容易とすることができる。即ち、バルブをスプレイ冷却装置27の下流側に配置した場合は、バルブの上流側にスプレイ冷却装置27より噴射された冷却水が溜まることによって、真空引きする際にこの冷却水が蒸発することにより、真空度の上昇が抑制される。一方、冷却水が溜まることがない為、真空引きが容易となる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0074】
1 ロケットエンジン高空燃焼試験設備
2 低圧室
3 排気装置
4 制御装置
5 ロケットエンジン
7 真空ポンプ
8 排気トンネル
9 消音塔
10 ディフューザ
11 アニュラーエゼクタ
12 センターボディエゼクタ
14 縮小部
15 スロート部(管路)
16 拡大部
17 第1エゼクタ噴射ノズル(噴射口)
18 蒸気供給部
19 蒸気配管
20 バルブ
23 ブロックオフバルブ(バルブ)
24 ディフューザ壁面冷却装置
25 第1冷却水供給装置
26 第1冷却水配管
27 スプレイ冷却装置
28 冷却水ノズル
29 第2冷却水供給装置
30 第2冷却水配管
32 第2エゼクタ噴射ノズル
33 バイパスライン
34 バイパス弁
50 外管
52 燃料ガス流路(対象流体流路)
54 蒸気流路(駆動流体流路)
56 先端
60 燃料ガス
62 蒸気
70 内周面
72 外周面
74 内周面
80 凸部
82 凹部
84 内側径
86 外側径
88 中央径
89 中心軸
100 内管
F 流れ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13