【課題】試料基板の再生に多大な手間と費用が掛からず、かつシステムのコストダウンが図れるとともに、測定用基板から発生する回折X線を回避して高精度な測定ができる蛍光X線分析システムを提供する。
【解決手段】基板が収納されるカセット3と、試料基板表面の被測定物2を溶解後乾燥させて保持する気相分解装置20と、少なくとも1枚の測定用基板12と、試料基板11から被測定物2を回収させた回収液を測定用基板表面の所定の滴下位置に滴下乾燥させて測定用基板表面に保持する試料回収装置30と、蛍光X線分析装置40と、基板を搬送する搬送装置50と、装置20、30、40、50を制御する制御装置60と、を備え、複数の試料基板11の被測定物2の回収液を、1枚の測定用基板表面に滴下乾燥させて測定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、最近、半導体基板(試料基板)は直径450mmに大型化しており、大型の試料基板を廃棄すると多大な損失が生じるために試料基板を半導体材料として再生して用いているが、その再生には、試料基板表面から乾燥痕を取り除く必要があり、再生に多大な手間と費用が掛かるという問題がある。さらに、特許文献2に記載の蛍光X線分析システムのように高性能のXY−θ試料ステージを備えると、コストアップになるという問題がある。
【0006】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、試料基板の再生に多大な手間と費用が掛からず、かつシステムのコストダウンが図れるとともに、測定用基板から発生する回折X線を回避して高精度な測定ができる蛍光X線分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の蛍光X線分析システムは、試料基板と測定用基板が収納されるカセットと、試料基板表面に存在する被測定物または試料基板表面に形成された膜の表面もしくは膜中に存在する被測定物を反応性ガスにより溶解後乾燥させて試料基板表面に保持する気相分解装置と、少なくとも1枚の測定用基板と、表面に被測定物が存在する試料基板に溶液を滴下して保持具で保持しながら試料基板表面で移動させ、被測定物を回収させた回収液を試料基板表面から前記保持具に付属する吸い上げ機構で吸い上げて保持し、測定用基板表面の所定の滴下位置に前記吸い上げ機構から滴下して乾燥させて測定用基板表面に保持する試料回収装置と、基板をその表面に沿う方向に直線的に移動させるrステージと基板をその表面の法線周りに自転させるθステージとからなる基板移動手段を有し、この基板移動手段によって位置決めされた測定用基板の表面に保持された被測定物に1次X線を照射して発生する蛍光X線の強度を測定する蛍光X線分析装置と、を備える。
【0008】
本発明の蛍光X線分析システムは、さらに、試料基板を、前記カセットから前記気相分解装置へ、前記気相分解装置から前記試料回収装置へ、前記試料回収装置から前記カセットへ、搬送し、測定用基板を、前記カセットから前記試料回収装置へ、前記試料回収装置から前記カセットへ、前記試料回収装置から前記蛍光X線分析装置へ、前記蛍光X線分析装置から前記カセットへ、搬送する搬送装置と、前記気相分解装置、試料回収装置、蛍光X線分析装置および搬送装置を制御する制御装置と、を備え、複数の試料基板における被測定物の回収液を、1枚の測定用基板表面の、前記複数の試料基板に対応した複数の前記所定の滴下位置に滴下乾燥させて測定する蛍光X線分析システムであって、前記所定の滴下位置が、前記制御装置によって予め記憶された、測定用基板において回折X線の発生を回避できる回折X線回避位置である。
【0009】
本発明の蛍光X線分析システムによれば、試料基板の被測定物を回収した回収液を測定用基板表面の回折X線の発生を回避できる回折X線回避位置に滴下して乾燥させて、安価な、rステージとθステージとからなる基板移動手段によって位置決めされた測定用基板の表面に保持された被測定物に1次X線を照射して発生する蛍光X線の強度を測定するので、回収液の滴下乾燥痕は測定用基板表面にのみ残存し、試料基板表面から乾燥痕を取り除く作業がなくなり、試料基板の再生に多大な手間と費用が掛からず、かつシステムのコストダウンが図れるとともに、測定用基板から発生する回折X線を回避して高精度な測定ができる。
【0010】
本発明の蛍光X線分析システムは、前記制御装置が、測定用基板が有する固有の回折X線回避角度に基づいて設定した回折X線回避位置を予め記憶するのが好ましい。この場合には、前記制御装置が予め記憶した、測定用基板が有する固有の回折X線回避角度に基づいて設定された回折X線回避位置に被測定物の回収液を滴下乾燥させて測定するので、測定用基板から発生する回折X線の回折パターンを調べることなく、回折X線を回避できる回折X線回避位置で高精度な測定ができる。
【0011】
本発明の蛍光X線分析システムは、前記制御装置が、前記蛍光X線分析装置を制御して、測定用基板を測定用基板の中心軸心周りに前記θステージによって360°回転させながら1次X線を照射させ、測定用基板から発生する回折X線の強度を測定用基板の回転角度と対応させた回折パターンを測定させて、この回折パターンに基づいて設定した回折X線回避位置を予め記憶するのが好ましい。この場合には、測定用基板の結晶構造におけるカット面が分かっていない場合であっても、測定用基板の回折パターンを測定して設定された回折X線回避位置を前記制御装置が記憶するので、回折X線を回避できる回折X線回避位置で高精度な測定ができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態である蛍光X線分析システムについて、構成から説明する。
図1(a),(b)の一部を破断した平面図、正面図に示すように、このシステムは、試料基板11と測定用基板12が収納されるカセット3と、試料基板表面11aに存在する被測定物2または試料基板表面11aに形成された膜の表面もしくは膜中に存在する被測定物2を反応性ガスにより溶解後乾燥させて試料基板表面11aに保持する気相分解装置20と、少なくとも1枚の測定用基板12と、表面に被測定物2が存在する試料基板11に溶液を滴下して保持具32aで保持しながら試料基板表面11aで移動させ、被測定物2を回収させた回収液を試料基板表面11aから保持具32aに付属する吸い上げ機構32bで吸い上げて保持し、測定用基板表面12aの所定の滴下位置に吸い上げ機構32bから滴下して乾燥させて測定用基板表面12aに保持する試料回収装置30と、基板1をその表面に沿う方向に直線的に移動させるrステージと基板をその表面の法線周りに自転させるθステージとからなる基板移動手段(rθステージ)48を有し、このrθステージ48によって位置決めされた測定用基板表面12aに保持された被測定物2に1次X線43を照射して発生する蛍光X線44の強度を測定する蛍光X線分析装置40と、を備える。
【0014】
このシステムは、さらに、試料基板11を、カセット3から気相分解装置20へ、気相分解装置20から試料回収装置30へ、試料回収装置30からカセット3へ、搬送し、測定用基板12を、カセット3から試料回収装置30へ、試料回収装置30からカセット3へ、試料回収装置30から蛍光X線分析装置40へ、蛍光X線分析装置40からカセット3へ、搬送する搬送装置50と、気相分解装置20、試料回収装置30、蛍光X線分析装置40および搬送装置50を制御する制御装置60と、を備え、複数の試料基板11における被測定物2の回収液を、1枚の測定用基板表面12aの、複数の試料基板11に対応した複数の前記所定の滴下位置に滴下乾燥させて測定する蛍光X線分析システムであって、前記所定の滴下位置が、制御装置60によって予め記憶された、測定用基板12において回折X線の発生を回避できる回折X線回避位置Pである。
【0015】
この実施形態では、蛍光X線分析装置40は、rθステージ48に載置された測定用基板12に対し1次X線43を微小な入射角で照射する全反射蛍光X線分析装置40であり、1次X線43を放射するX線源42は、X線管、単色化のための分光素子などを有し、1次X線43が照射された測定用基板12から発生する2次X線44(蛍光X線、回折X線を含む)の強度を検出する検出手段45には、SSDなどを用いる。蛍光X線分析装置40は、ロボットハンドなどの搬送手段46を有しており、導入室のカセット47とrθステージ48との間で、測定用基板12を搬送する。
【0016】
rθステージ48は、例えばrステージの上部にθステージが設けられており、rステージは、測定用基板12をその表面に沿う方向に直線的に移動させ、θステージは測定用基板12を保持するとともに、測定用基板12をその表面の法線周りに自転させる。蛍光X線分析装置40は、光軸調整機能を有し、検出手段45の見込み位置と、θステージの回転中心とを一致させる光軸調整は、装置組立調整時にのみ行われる。測定時、このrθステージ48によって、それぞれの試料基板11に対応した、測定用基板12の回折X線回避位置Pが検出手段45の直下にくるように位置決めされる。
【0017】
搬送装置50は、レールの上で本体が前後に移動自在なロボットハンドであり、そのハンド部50aに試料基板11を載置して、試料基板11を、カセット3から気相分解装置20の分解室21へ、分解室21から試料回収装置30の回収室31へ、回収室31からもとのカセット3へ、搬送し、測定用基板12を、カセット3から回収室31へ、回収室31からカセット3へ、回収室31から蛍光X線分析装置40の導入室のカセット47へ、導入室のカセット47からもとのカセット3へ、搬送する。カセット台5には、複数のカセット3を載置できる。
【0018】
このシステムは、気相分解装置20、試料回収装置30、蛍光X線分析装置40および搬送装置50を共通の環境(ソフトウエア)で制御するコンピュータなどの制御装置60を、例えば蛍光X線分析装置40内に配置して備える。カセット3内の試料基板11の枚数(例えば20枚)、分析条件などが制御装置60に設定されると、制御装置60は、測定用基板12において、被測定物2を回収させた回収液を滴下させる所定の滴下位置である、回折X線の発生を回避できる回折X線回避位置Pを決定して記憶する。
【0019】
気相分解装置20は、試料基板表面11aに存在する被測定物2または試料基板表面11aに形成された膜の表面もしくは膜中に存在する被測定物2を分解室21内で反応性ガスにより溶解後乾燥させて試料基板表面11aに保持する。分解室21内には、配管(図示なし)から反応性ガスとしてフッ化水素(またはフッ化水素酸)が導入され、例えばシリコンウエハである試料基板表面11aに形成された酸化膜を溶解するとともに、膜の表面または膜中に存在する汚染物質などの被測定物2を溶解し、配管(図示なし)から排出される。試料基板表面11aに膜が形成されていない場合には、試料基板表面11aに存在する被測定物2が溶解される。
【0020】
また、気相分解装置20は、分解室21内に不活性ガスとして清浄な窒素を流して、フッ化水素を追い出すとともに、試料基板11に生じた液滴を乾燥させる液滴乾燥手段(図示なし)を有している。
【0021】
次に、試料回収装置30の構成について詳細に説明する。
図2(a),(b)の平面図、正面図に示す試料回収装置30は、以下の回収液移動手段32、回収液乾燥手段33および回転台35を有している。
【0022】
回収液移動手段32は、その先端部下側にある保持具32aと保持具32aに付属する吸い上げ機構32bを、回転台35に載置された試料基板11の上方において試料基板11の外側と中心間で円弧状に移動させるアームであり、保持具32aと吸い上げ機構32bを上下方向にも移動させることができる。保持具32aは例えばPTFE製のノズルであり、分解室21のさらに下方のタンクから、フッ化水素酸溶液4が供給される。回転台35は、載置された試料基板11を水平面内で回転させる。すなわち、試料回収装置30は、保持具32aから試料基板11の外周近傍に滴下した例えば100μリットルのフッ化水素酸溶液4を、試料基板11を回転させながら、保持具32aと試料基板11で挟むようにして保持しつつ試料基板11上で中心まで移動させて、試料基板表面11aに存在する被測定物2を回収し、吸い上げ機構32bで吸い上げて保持する。
【0023】
蛍光X線分析システムの動作として後述するが、カセット3から搬送装置50によって回転台35に搬送された測定用基板表面12aの所定の滴下位置(回折X線回避位置P)に、吸い上げ機構32bから保持された回収液4を滴下して、回収液乾燥手段33で乾燥させて測定用基板表面12aに保持する。
【0024】
回収液乾燥手段33は、その先端部に下向きに設けられたランプ33aを、測定用基板12の上方において測定用基板12の外側と中心間で円弧状に移動させるアームである。すなわち、試料回収装置30は、測定用基板表面12aの回折X線回避位置Pの上方にランプ33aを移動させ、滴下された回収液4を加熱して乾燥させて、それぞれの試料基板11に対応した測定用基板表面12aの回折X線回避位置Pに被測定物2を保持する。
【0025】
次に、この蛍光X線分析システムの動作について説明する。
図1のカセット台5に、例えば、20枚の試料基板11を収納したカセット3と1枚の測定用基板12を収納したカセット3とが載置され、そのカセット3内の試料基板11の枚数(20枚)、分析条件などが図示しない入力手段から制御装置60に設定されると、システムの各装置が以下のように動作するよう制御される。試料基板11と測定用基板12はともに直径450mmのシリコンウエハであり、測定用基板12はベアシリコンウエハである。測定用基板12は直径450mmのベアシリコンウエハに限らず、他の半導体基板であってもよい。
【0026】
測定用基板12の結晶構造におけるカット面が分かっていない場合、まず、制御装置60が搬送装置50を制御して、カセット3に収納された測定用基板12を蛍光X線分析装置40の導入室のカセット47へ搬送させる。次に、制御装置60が搬送手段46および蛍光X線分析装置40を制御して、測定用基板12をrθステージ48へ搬送させて載置し、測定用基板12を測定用基板12の中心軸心周りにθステージによって時計方向に360°回転させながら1次X線43としてW−Lβ1を照射させ、測定用基板12から発生する回折X線の強度を測定用基板12の回転角度θと対応させた回折パターンを測定させて記憶する。そして、制御装置60が、記憶した回折パターン(
図3)について、所定のX線強度比(W−Lβ/Si−Kα)以下のX線強度比が所定の角度範囲、例えば、3°〜5°にわたって存在していると、この所定の角度範囲の中心角度位置を回折X線回避角度として記憶する。この回折X線回避角度は、例えば、25°、95°、180°、260°、345°などである。
【0027】
次に、制御装置60は、記憶している回折X線回避角度位置において、20枚の試料基板11に対応した20の被測定物2が25mmの間隔を空けて滴下乾燥されて配置される、測定用基板表面12aにおける回折X線回避位置P1〜P20を決定して記憶する。制御装置60が記憶した、測定用基板表面12aにおける回折X線回避位置P1〜P20を
図4に示す。
【0028】
本実施形態の蛍光X線システムでは、蛍光X線分析装置40が有する検出手段45の視野は直径20mmである。100μリットルの回収液4は、測定用基板12に滴下されると、滴下位置を中心とする直径約8mmのほぼ円形になる。この円形の回収液4が乾燥されると、様々な形状、例えば、リング状、一方向に偏った扁形状、中心位置に集まった円形状などの形状の乾燥痕になり、滴下乾燥された被測定物2は滴下位置から最大4mm離れた位置に形成される。滴下乾燥された被測定物2を感度よく測定するために、滴下乾燥された被測定物2から発生する蛍光X線44が、より強い強度で検出手段45に入射するようにして、すなわち、滴下乾燥された被測定物2が検出手段45の直下でその中心軸上に位置するようにして、測定される。そのため、検出手段45の直下に、滴下位置から最大4mm離れた位置に滴下乾燥された被測定物2を位置させなければならない場合がある。測定時に検出手段45の視野内には1つの滴下乾燥された被測定物2だけが配置されるように、それぞれの滴下乾燥された被測定物2は、20mm(検出手段45の視野の直径)と4mm(乾燥痕の最大偏り距離)の合計である24mm以上の、例えば25mmの間隔を空けて配置される。
【0029】
なお、滴下乾燥された被測定物2が検出手段45の直下でその中心軸心上に位置するようにして測定する方法は、本出願人の特許出願である特開2003−149181号公報に記載されている方法によって実行することができる。
【0030】
測定用基板表面12aにおける回折X線回避位置P1〜P20が制御装置60に記憶されると、搬送装置50が、1番目の試料基板11をカセット3から分解室21へ搬送し、配管(図示なし)から密閉された分解室21内にフッ化水素が導入され、試料基板表面11aに形成された酸化膜を溶解するとともに、膜の表面または膜中に存在する汚染物質などの被測定物2を溶解し、配管(図示なし)から排出される。
【0031】
所定時間の気相分解が終了すると、液滴乾燥手段(図示なし)により分解室21内が排気されながら窒素が流され、フッ化水素が追い出されるとともに、試料基板表面11aに生じた液滴が乾燥される。
【0032】
次に、搬送装置50が、試料基板11を回収室31(
図1)へ搬送し、試料基板11の中心が回転台35の回転中心に合致するように載置する。続いて、試料回収装置30が、保持具32aから試料基板11の外周近傍に滴下したフッ化水素酸溶液4を、試料基板11を回転させながら、保持具32aで保持しつつ試料基板11上で中心まで移動させて、試料基板表面11aに存在する被測定物2(気相分解装置20により試料基板表面11aに保持された被測定物2)を回収し、保持具32aに付属する吸い上げ機構32bで吸い上げて保持する。
【0033】
次に、搬送装置50が、1番目の試料基板11を回収室31からカセット3のもとの位置へ搬送する。
【0034】
次に、搬送装置50が、測定用基板12をカセット3から回収室31へ搬送し、測定用基板12の中心が回転台35の回転中心に合致するように載置する。続いて、回収液移動手段32による保持具32aの移動と回転台35の回転とによって、測定用基板表面12aの、1番目の試料基板11に対応した回折X線回避位置P1(所定の滴下位置)に、吸い上げ機構32bに保持された回収液4が滴下される。
【0035】
次に、試料回収装置30は、測定用基板表面12aの回折X線回避位置P1の上方にランプ33aを移動させ、滴下された回収液4を加熱して乾燥させて、1番目の試料基板11に対応した測定用基板表面12aにおける回折X線回避位置P1に被測定物2を保持する。
【0036】
次に、搬送装置50が、測定用基板12を回収室31からカセット3のもとの位置へ搬送する。
【0037】
次に、順次、2番目から20番目の試料基板11の被測定物2が、1番目の試料基板11の被測定物2と同様にしてそれぞれの試料基板11に対応した、測定用基板表面12aにおける回折X線回避位置P2〜P20(
図4)に乾燥保持される。
【0038】
次に、
図1において、搬送装置50が、被測定物2が乾燥保持された測定用基板12を蛍光X線分析装置40の導入室のカセット47へ搬送する。蛍光X線分析装置40は、搬送手段46で測定用基板12をrθステージ48へ搬送して載置し、rθステージ48によって、測定用基板表面12aにおける回折X線回避位置P1が検出手段45の直下にくるように位置決めする。そして、測定用基板表面12aにおける1番目の試料基板11に対応した回折X線回避位置P1に保持された被測定物2に1次X線43を照射して、発生する蛍光X線44の強度を測定する。同様にして順次、測定用基板表面12aにおける2番目から20番目の試料基板11に対応した回折X線回避位置P2〜P20に保持された被測定物2が測定される。測定後、測定用基板12は搬送手段46により導入室のカセット47へ搬送され、さらに、搬送装置50によりもとのカセット3へ搬送される。
【0039】
次に、測定用基板12の結晶構造におけるカット面が分かっている場合について説明する。例えば、測定用基板12が結晶構造における(100)面、(110)面などであるカット面を有する場合、これらのカット面についての回折パターンは既知である。カット面(100)を有する測定用基板12の回折パターンを
図5に示す。
図5は
図3と同様にして取得された回折パターンである。
【0040】
図5に示すように、39°、129°、219°、309°の回転角度において回折X線が発生しておらず、この角度が、測定用基板12が有する固有の回折X線回避角度であり、この回折X線回避角度を制御装置60は予め記憶している。
【0041】
カット面(100)を有する基板が測定用基板12として設定されると、制御装置60は、記憶している回折X線回避角度39°、129°、219°、309°において、20枚の試料基板11に対応した20の被測定物2が25mmの間隔を空けて滴下乾燥されて配置される、測定用基板表面12aにおける回折X線回避位置P1〜P20を決定して記憶する。制御装置60が記憶した、測定用基板表面12aにおける回折X線回避位置P1〜P20を
図6に示す。
【0042】
測定用基板表面12aにおける回折X線回避位置P1〜P20が制御装置60に記憶されると、測定用基板12の結晶構造におけるカット面が分かっていない場合と同様にして、順次、1番目から20番目の試料基板11の被測定物2が、それぞれの試料基板11に対応した、測定用基板表面12aにおける回折X線回避位置P2〜P20(
図6)に乾燥保持されて、蛍光X線分析装置40によって測定される。
【0043】
以上のように、本発明の蛍光X線分析システムによれば、試料基板の再生に多大な手間と費用が掛からず、かつシステムのコストダウンが図れるとともに、測定用基板から発生する回折X線を回避して高精度な測定ができる。
【0044】
本発明の実施形態の蛍光X線分析システムでは、カセット3に1枚の測定用基板12を収納して20枚の試料基板11における被測定物2の回収液4を、1枚の測定用基板12に滴下乾燥させて測定したが、測定用基板12は1枚に限ったものではなく、例えば、1枚目〜10枚目の試料基板11の測定に用いる測定用基板12と、11枚目〜20枚目の試料基板11の測定に用いる測定用基板12とが異なっていてもよく、複数枚の測定用基板12をカセット3に収納して測定してもよい。なお、本発明の実施形態の蛍光X線分析システムでは、気相分解装置20と試料回収装置30とが縦方向に配置された縦置型になっているが、横方向に配置される横置型であってもよい。