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特開2016-200605センサー素子、その製造方法、及びそれを含むセンサー装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-200605(P2016-200605A)
(43)【公開日】2016年12月1日
(54)【発明の名称】センサー素子、その製造方法、及びそれを含むセンサー装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20161104BHJP
【FI】
   G01N27/22 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2016-153865(P2016-153865)
(22)【出願日】2016年8月4日
(62)【分割の表示】特願2013-531611(P2013-531611)の分割
【原出願日】2011年9月7日
(31)【優先権主張番号】61/388,146
(32)【優先日】2010年9月30日
(33)【優先権主張国】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】パラゾット, マイケル, シー.
(72)【発明者】
【氏名】グリスカ, ステファン, エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】バウデ, ポール, エフ.
(72)【発明者】
【氏名】カン, ミュンチャン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好な感度で有機蒸気を迅速に検出するためのセンサー素子を提供する。
【解決手段】センサー素子100は、電気的に結合された第1導電性部材122を有する第1導電性電極120と、固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層130と、電気的に結合された第2導電性部材142を有する第2導電性電極140と、を備える。第2導電性電極140は、少なくとも1種類の貴金属を含み、4〜10ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性がある。吸収性誘電体層130は、少なくとも部分的に第1導電性電極120と第2導電性電極140との間に配置される。センサー素子の製造方法及びセンサー素子100を含むセンサー装置も開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサー素子であって、
電気的に結合された第1導電性部材を有する第1導電性電極と、
固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層と、
電気的に結合された第2導電性部材を有する第2導電性電極と、を備え、前記第2導電性電極が少なくとも1種類の貴金属を含み、前記第2導電性電極が、4〜10ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があり、前記吸収性誘電体層が、少なくとも部分的に前記第1導電性電極と前記第2導電性電極との間に配置されている、センサー素子。
【請求項2】
前記第1導電性電極を支持する誘電体基板を更に備える、請求項1に記載のセンサー素子。
【請求項3】
前記誘電体基板がポリマーフィルムを含む、請求項2に記載のセンサー素子。
【請求項4】
前記少なくとも1種類の貴金属が、前記第2導電性電極の少なくとも99重量%を構成する、請求項1に記載のセンサー素子。
【請求項5】
前記第2導電性電極が、金、パラジウム、白金、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のセンサー素子。
【請求項6】
前記固有ミクロ孔質のポリマーが、剛性リンカーによって連結されるほぼ平面的な種からなる有機高分子を含み、前記剛性リンカーが、前記剛性リンカーの1つによって連結される2つの近接する平面的な種が非同一平面上の配向に維持されるように、ねじれ点を有する、請求項1に記載のセンサー素子。
【請求項7】
前記第1導電性電極が少なくとも1種類の貴金属を含み、前記第1導電性電極が、4〜10ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性がある、請求項1に記載のセンサー素子。
【請求項8】
前記第2導電性電極が、前記吸収性誘電体層の主表面と同一の広がりを持つ、請求項1に記載のセンサー素子。
【請求項9】
固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層を第1導電性電極の上に配置する工程と、
少なくとも1種類の貴金属を含む第2導電性電極を前記吸収性誘電体層の上に熱蒸着によって配置する工程と、を含む方法であって、前記第2導電性電極が、前記熱蒸着の完了後に4〜10ナノメートルの厚さを有し、前記第2導電性電極が少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があり、前記吸収性誘電体層が、少なくとも部分的に前記第1導電性電極と前記第2導電性電極との間に配置されている、方法。
【請求項10】
前記第1導電性電極が、誘電体基板の上に支持される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記誘電体基板がポリマーフィルムを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記工程が順次的である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種類の貴金属が、前記第2導電性電極の少なくとも99重量%を構成する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第2導電性電極が、金、パラジウム、白金、又はこれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記固有ミクロ孔質のポリマーが、剛性リンカーによって連結されるほぼ平面的な種からなる有機高分子を含み、前記剛性リンカーが、前記剛性リンカーによって連結される2つの近接する平面的な種が非同一平面上の配向に維持されるように、ねじれ点を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記第1導電性電極が少なくとも1種類の貴金属を含み、前記第1導電性電極が、4〜10ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性がある、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記第2導電性電極が、前記吸収性誘電体層の主表面と同一の広がりを持つ、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
100〜250℃の範囲の温度で少なくとも前記第2電極を加熱する工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
センサー装置であって、
入口開口部を有するセンサーチャンバと、
静電容量を有し、前記センサーチャンバ内に配置され、前記入口開口部と流体連通するセンサー素子であって、
電気的に結合された第1導電性部材を有する第1導電性電極と、
固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層と、
電気的に結合された第2導電性部材を有する第2導電性電極と、を備え、前記第2導電性電極が少なくとも1種類の貴金属を含み、前記第2導電性電極が、4〜10ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があり、前記吸収性誘電体層が、少なくとも部分的に前記第1導電性電極と前記第2導電性電極との間に配置されている、センサー素子と、
前記センサー素子と電気的に導通する動作回路と、を備え、
前記センサー素子が電源に接続されている場合、前記動作回路が前記センサー素子の前記静電容量を測定する、センサー装置。
【請求項20】
前記センサーチャンバが、前記入口開口部と流体連通する出口開口部を更に備える、請求項19に記載のセンサー装置。
【請求項21】
前記動作回路と通信的に結合されたディスプレイ装置を更に備える、請求項19に記載のセンサー装置。
【請求項22】
前記第2導電性電極が、金、パラジウム、白金、又はこれらの組み合わせを含む、請求項19に記載のセンサー装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
薬品蒸気、特に揮発性有機化合物(VOC)を検出する機能は、環境監視など多くの用途で重要である。このような有機蒸気の検出及び/又は監視は、例えば、レスピレータなどのパーソナル保護具に所望される、いわゆる「使用可能期間終了表示」に特定の用途を見出し得る。
【0002】
例えば、光学法、重量法、微小電気機械(MEMS)法など、化学検体の検出のための多くの方法が開発されてきた。特に、静電容量、インピーダンス、レジスタンスなどの、電気特性を監視するセンサーが開発されてきた。多くの場合、このようなセンサーは、材料上への検体の吸着、又は材料中への検体の吸収の際に生じる、材料の電気的特性の変化に依存する。
【0003】
ある蒸気センサー設計では、固有ミクロ孔質のポリマー(PIM)の層がバイアス電圧で保持される蒸気不浸透性電極の間に挟まれ、コンデンサを形成する。PIMは、分子レベルでの凝集が不十分である。したがって、小型有機分子は容易にPIMを透過できる。(例えば吸収及び/又は吸着によって)PIM層中に有機蒸気が蓄積する際に、有機蒸気は細孔中に蓄積し、電極間の物質の誘電率が増加して、測定可能な容量変化を引き起こす。しかし、電極が有機蒸気に対して不透過性があると、蒸気吸収が発生し得るPIM層の露出面が限定される場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題を克服するために、電極を貫く開口部を有する不連続電極及び櫛形電極構成が用いられてきた。しかし、良好な感度で有機蒸気を迅速に検出するためのセンサー装置で用いるのに好適なセンサー素子を有することは、未だに望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様において、本開示は、センサー素子であって、
電気的に結合された第1導電性部材を有する第1導電性電極と、
固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層と、
電気的に結合された第2導電性部材を有する第2導電性電極と、を備え、第2導電性電極が少なくとも1種類の貴金属を含み、第2導電性電極が、4〜10ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があり、吸収性誘電体層が、少なくとも部分的に第1導電性電極と第2導電性電極との間に配置されている、センサー素子を提供する。
【0006】
別の態様において、本開示は、
固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層を第1導電性電極の上に配置する工程と、
少なくとも1種類の貴金属を含む第2導電性電極を吸収性誘電体層の上に熱蒸着によって配置する工程と、を含む方法であって、第2導電性電極が、熱蒸着の完了後に4〜10ナノメートルの厚さを有し、第2導電性電極が少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があり、吸収性誘電体層が、少なくとも部分的に第1導電性電極と第2導電性電極との間に配置されている、方法を提供する。
【0007】
この方法は、第1導電性部材を第1導電性電極の上に配置する工程と、第2導電性部材を第2導電性電極の上に配置する工程と、を更に含んでよい。
【0008】
有利には、本開示によるセンサー素子は、有機蒸気を通過させて拡散でき、それによって不透過性電極と比較してセンサー感度を増加する、多孔性電極を備える。半透過性電極の調製は、溶媒を使用しないプロセスである、本開示による熱蒸着プロセスを用いて実現する。
【0009】
本開示によるセンサー素子は、例えばセンサー装置の製造に有用である。
【0010】
したがって、更に別の態様において、本開示は、センサー装置であって、
入口開口部を有するセンサーチャンバと、
静電容量を有し、センサーチャンバ内に配置され、入口開口部と流体連通するセンサー素子であって、
電気的に結合された第1導電性部材を有する第1導電性電極と、
固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層と、
電気的に結合された第2導電性部材を有する第2導電性電極と、を備え、第2導電性電極が少なくとも1種類の貴金属を含み、第2導電性電極が、4〜10ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があり、吸収性誘電体層が、少なくとも部分的に第1導電性電極と第2導電性電極との間に配置されている、センサー素子と、
センサー素子と電気的に導通する動作回路と、を備え、
センサー素子が電源に接続されている場合、動作回路がセンサー素子の静電容量を測定する、センサー装置を提供する。
【0011】
本明細書で使用するとき、
用語「貴金属」は、特に指示のない限り、金属形状のルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、及び金からなる群から選択される金属を指す。
【0012】
用語「有機化合物」は、炭素及び水素原子を含む化合物を指す。
【0013】
材料の層に関する用語「透過性」は、層が存在する領域で、(例えば25℃で)少なくとも1種類の有機化合物に対してその厚さを通じて非反応的に透過性があるように、層が十分に多孔質であることを意味する。
【0014】
前述の態様及び実施形態は、このような組み合わせが本開示の教示から明らかに誤りではない限り、これらを任意に組み合わせて実施してもよい。本開示の特徴及び利点は、「発明を実施するための形態」、及び添付の「特許請求の範囲」を考慮することで更に深い理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示による例示のセンサー素子100の概略側面図。
図2】本開示による例示のセンサー装置200の概略図。
図3】実施例で用いられる金属製アパーチュアマスクの平面図。
図4】実施例で用いられる金属製アパーチュアマスクの平面図。
図5】実施例で用いられる金属製アパーチュアマスクの平面図。 本開示の原理の範囲及び趣旨の範囲内に含まれる他の多くの改変例及び実施形態が当業者によって考案されうる点は理解されるはずである。図面は縮尺通りに描かれていない場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで図1を参照すると、センサー素子100は、電気的に結合された第1導電性部材122を有する第1導電性電極120を支持する誘電体基板110を備える。吸収性誘電体層130は固有ミクロ孔質のポリマーを含み、第1導電性電極120と第2導電性電極140との間に配置される。第2導電性電極140は4〜10ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の貴金属(つまり、1種類以上の貴金属)を含み、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性がある。第2導電性部材142は、第2導電性電極140に電気的に結合されている。任意のカバー層150は、第2導電性電極140の上に配置される。図1に示される実施形態において、第1電極及び第2電極は概ね平面的で平行であり、吸収性誘電体層の両側に配置されるが、他の構成も可能であることは理解されよう。
【0017】
センサー素子は、吸収性誘電体層が第1伝導性電極及び第2伝導性電極と十分に近接し、それによって層中に含まれる吸収性誘電体材料が、電極によって形成される電界と相互作用することができるように構成される。センサー素子の動作時には、吸収性誘電体層は、1種類以上の検体(例えば、1種類以上の有機蒸気)を吸収すると、電気的特性の変化を示す。一実施形態において、電気的特性は、静電容量、又は以下に記載される静電容量に関連する特性である。このような、静電容量に関連する特性の変化は、第1導電性電極と第2導電性電極との間に電荷差を付与し(例えば、電極に電圧差を付与することによって)、検体の存在に反応するセンサー素子の特性を監視することによって測定することができる。本明細書で後述するように、このような監視は、動作回路を用いることによって実行できる。
【0018】
用語「静電容量」及び「静電容量に関連する特性」は、あらゆる電気的特性及びその測定値を包含し、これは電荷の付与(一定であっても時間的に変化しても)並びに電荷の付与中、及び/又は付与後の電気的特性の監視と一般的に関連する。このような特性としては、例えば、静電容量だけではなく、インピーダンス、インダクタンス、アドミタンス、電流、抵抗、コンダクタンスなどが挙げられ、当該技術分野において既知の様々な方法に従って測定されてよい。
【0019】
吸収性誘電体層(用語「層」は、一般的に使用され、あらゆる物理的構成を包含する)は、吸収性誘電体材料を少なくとも部分的に含む。これに関連して、用語「吸収性誘電体材料」は、有機化学検体を吸収することができ、有機検体を材料中に吸収した際に材料の一定の電気的特性の測定可能な変化を呈し得る材料を意味する。
【0020】
図1は平行平板型構成を図示しているが、他の構成も可能である。例えば、第1電極及び第2電極が櫛形である構成も可能であり、これは本開示の範囲内である。
【0021】
一実施形態において、吸収性誘導体材料は、いわゆる「固有ミクロ孔質のポリマー」(以降、PIMと称される)を含む材料の一群から選択される。このようなポリマーには、「Polymers of Intrinsic Microporosity(PIM):Robust,Solution−Processable,Organic Microporous Materials,」Buddら、Chem.Commun.,2004,pp.230〜231、「Polymers of Intrinsic Microporosity(PIM),」McKeownら、Chem.Eur.J.,2005,vol.11,No.9,2610〜2620、米国特許出願公開第2006/0246273号(McKeownら)、及び国際公開第2005/012397(A2)号(McKeownら)に開示されたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
PIMは、内部にねじれた構造を生じるための十分な構造的特徴が存在する、非常に剛性があるポリマーを形成するモノマーの任意の組み合わせの使用によって配合することができる。様々な実施形態において、PIMは、剛性リンカーによって連結されるほぼ平面的な種からなる有機高分子を含む場合があり、この剛性リンカーは、剛性リンカーによって連結される2つの近接する平面的な種が非同一平面上の配向に維持されるように、ねじれ点を有する。更なる実施形態において、このような材料は、剛性リンカーによって大部分が最高で2つの他の第1の種に連結される第1のほぼ平面的な種からなる有機高分子を含むことができ、この剛性リンカーは、剛性リンカーによって連結される2つの近接する第1の平面的な種が非同一平面上の配向に維持されるように、ねじれ点を有する。様々な実施形態において、このようなねじれ点は、スピロ基、架橋環部、又は立体的に密集した単一の共有結合を含んでもよく、この周囲では回転が制限される。
【0023】
このような剛性があり、ねじれた構造を有するポリマーでは、ポリマー鎖が互いに有効に密集することができず、したがってポリマーは、固有のミクロ孔質を有する。したがって、PIMは、材料の熱履歴に顕著に依存することのない、ミクロ孔質を備えることの利益を有する。PIMはしたがって、大量に再生可能に製造可能であるという点で、及び老朽化、及び貯蔵寿命などによって変化する特性を呈さないという点で、利益を提供することがある。
【0024】
これに関連して、用語「ミクロ孔質の」及び「ミクロ孔質」は、材料が有意な規模の、内部の相互接続された間隙体積を有し、平均孔径(例えば、吸着等温線手段によって特徴付けられる)は、約100ナノメートル(nm)未満、典型的には約10nm未満である。このような微多孔性により、有機検体の分子(存在する場合)が、材料の内部間隙体積に浸透し、内部の細孔の中に定着することが可能となる。内部の細孔の中のこのような検体の存在は、材料の誘電特性を変化させることができ、それによって誘電率(又は他の任意の好適な電気的特性)の変化が観察され得る。理論又は機構によって束縛されるものではないが、出願人らは、ミクロ孔質誘電体材料に依存する開示されるセンサー素子は、誘電体材料の電気的特性の測定可能な変化が細孔中の検体分子の存在によって生じ得るという点において、有機検体のセンサーに関する有利な特性を有することがあるものと考える。したがって、検体分子が、増大及び/又は膨張などの、ポリマー材料の特性の変化(ただし、このような現象もまた生じることがあり、やはり測定可能な電気的反応に寄与することがある)を生じさせるために十分な程度、ポリマー材料自体の中で可溶化されることを必要とせずに、検体を検出することが可能であり得る。このような吸収性誘電体材料のミクロ孔質特性は、誘電体材料の、少量の有機検体への高い応答性に寄与することがある。
【0025】
様々な実施形態において、PIMは、少なくとも約10パーセント、少なくとも約20パーセント、又は少なくとも約30パーセントの多孔率を有する(例えば、Quantachrome Instruments(Boynton Beach,Florida)からの商品名AUTOSORBで入手可能な器具を使用するものなどの、吸着等温曲線技術によって特徴付けられる)。このような多孔率は、低濃度の有機化学検体に対する良好な反応を提供することができる。しかしながら、材料は、第1導電性電極と、第2導電性電極との間の短絡又はアーク放電を避けることが困難であるような、高い間隙体積を有するべきではない。したがって、様々な実施形態において、材料は、最大約90パーセント、最大約60パーセント、又は最大約40パーセントの多孔率を有する。
【0026】
また、理論又は機構に束縛されるものではないが、内部細孔の寸法及び分布は、細孔の少なくともいくつかの、有機検体分子の少なくともいくつかが、別の方法で存在するよりも(例えば、これらが、検体が監視される環境における場合よりも)高密度の状態(例えば、擬似液体状態)を形成することができるようなものであり得る。これは、監視される環境中に存在するよりも、より多数で、及び/又はより高密度で、内部細孔中に収集される検体分子を生じ得るか、加えて又は代わりに、この状態の検体分子は、低密度の蒸気又は気体状態におけるよりも高い誘電率(比誘電率)を呈し得る。したがって、適切に選択された寸法及び分布の細孔を有する、ミクロ孔質吸収性誘電体材料に基づくセンサー素子は、少量の有機検体に対して優れた感度を呈し得る。様々な実施形態において、PIMは、約50nm未満、約20nm未満、又は約10nm未満の平均孔径を含む。様々な実施形態において、PIMは、約0.3nm超、約0.5nm超、又は約1.0nm超の平均孔径を含む。
【0027】
一実施形態において、PIMは疎水性材料(例えば、疎水性有機高分子材料)であり、これは材料が著しく増大するか、ないしは別の方法で物理的特性の顕著な変化を呈する程度まで液体水を吸収することがない。このような疎水性特性は、水の存在に対する感度が比較的低い有機検体センサー素子を提供するために有用である。しかしながら、材料は特定の目的のために、比較的極性の部分を含み得る。
【0028】
一実施形態において、PIMは連続的なマトリックスを含む。このようなマトリックスは、材料の固体部分が連続的に相互接続されているアセンブリ(例えば、コーティング、層など)として定義される(上記の多孔質の存在、又は下記の任意の添加物の存在とは拘わりなく)。即ち、連続的なマトリックスは、粒子の凝集(例えば、ゼオライト、活性炭、カーボンナノチューブなど)を含むアセンブリから区別可能である。例えば、溶液から堆積される層、又はコーティングは、典型的には連続的なマトリックスを含む(コーティング自体がパターンを有する方法で塗布されるか、及び/又は粒子状の添加物を含むとしても)。粉末の噴霧、分散体(例えば、ラテックス)のコーティング及び乾燥、又はゾル−ゲル混合物のコーティング及び乾燥によって堆積された粒子の集合は、出願人によって定義される連続的な網状組織を含まないことがある。しかしながら、このようなラテックス、ゾル−ゲルなどの層が、個別の粒子がもはや認識不可能であるか、又は異なる粒子から得られたアセンブリの領域を認識することが不可能であるように固化され得る場合、このような層は、出願人の連続的マトリックスの定義に合致することがある。
【0029】
ある実施形態において、PIMは、一般的な有機溶媒中に可溶であり、したがってコーティングなどの従来の堆積プロセスに適する。
【0030】
ある実施形態において、PIM材料が堆積される(例えば、コーティングされる)か、ないしは別の方法で吸収性誘電体層を含むように形成された後、材料は、好適な架橋剤、例えば、ビス(ベンゾニトリル)二塩化パラジウム(II)などを使用して架橋され得る。このプロセスは、吸収性誘電体層を有機溶媒中で不溶性にするか、及び/又は耐久性、摩擦耐性など特定の物理的特性を向上させことがあり、これは特定の用途において望ましい場合がある。
【0031】
ある実施形態において、PIMは、他の材料とブレンドされてもよい。例えば、PIMは、それ自体が吸収性誘導体材料ではない材料とブレンドされてもよい。検体反応に寄与しないものの、このような材料は他の理由のために有用であり得る。例えば、このような材料は、優れた機械特性などを有する、PIM含有層の形成を可能にすることがある。一実施形態において、PIMは、他の材料と共に一般的な溶媒に溶解して、均質な溶液を形成してもよく、これは、キャスティングされて、PIM及び他のポリマーの双方を含む吸収性誘導体ブレンド層を形成してもよい。PIMはまた、吸収性誘電体材料である材料(例えば、ゼオライト、活性炭、シリカゲル、超架橋ポリマーネットワークなど)とブレンドされてもよい。このような材料は、PIM材料を含む溶液中に懸濁された不溶性材料を含み得る。このような溶液/懸濁液のコーティング及び乾燥は、PIM材料と追加的な吸収性誘導体材料の双方を含む、複合吸収性誘導体層をもたらすことがある。
【0032】
吸収性誘電体材料は任意の厚さを有してよいが、典型的には約100〜3000ナノメートル(nm)の範囲である。より典型的には、吸収性誘電体材料は、300nm〜1000nm、又は更に400〜800nmの範囲の厚さを有する層を形成する。
【0033】
吸収層は、PIM材料に加えて充填剤、酸化防止剤、光安定剤など添加剤を含有してよいが、これらの添加剤はセンサー素子の適切な動作を妨げる傾向にあるため、典型的には最小限に抑えられるか、存在しない。PIM材料の組み合わせが使用されてよい。
【0034】
様々な実施形態において、吸収性誘電体材料ではない材料の追加の層が、吸収性誘電体層に近接して設けられてよい。このような層は、例えば、保護層として、又は接着を向上させるための結合層としてなど、様々な理由のいずれかのために設けられてよい。
【0035】
様々な実施形態において、吸収性誘電体材料の複数の個別の層が使用され得る。例えば、PIM材料の複数の層が使用され得る。あるいは、PIM材料の層に加えて、一定の他の吸収性誘電体材料の1つ以上の層が使用され得る。吸収性誘電体材料の様々な層は、互いに直接接する場合、又は一定の他の目的のために存在する層(例えば、本明細書において記載されるように、不動態層、結合層など)によって離隔される場合がある。
【0036】
第1導電性電極は、任意の好適な導電性材料を含んでよい。十分な全体導電性がもたらされる限り(典型的には、第1導電性電極は約10オーム/平方未満のシート抵抗を有する)、異なる材料(導電性及び/又は非導電性)の組み合わせが、異なる層又は混合物として使用され得る。第1導電性電極及び/又は第2導電性電極を作製するために使用され得る材料の例としては、有機材料、無機材料、金属、合金、及び様々な混合物、並びにこれらの材料のいずれか、又は全てを含む複合材料が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態において、コーティング(例えば、熱蒸気コーティング、スパッタコーティングなど)された金属、若しくは酸化金属、又はこれらの組み合わせが使用され得る。好適な導電性材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、スズ、酸化インジウムスズ、金、銀、白金、パラジウム、銅、クロム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
第1導電性電極は、導電性である限り、任意の厚さ、例えば少なくとも4nm〜400nm、又は10nm〜200nmの範囲の厚さであってよい。第1導電性電極が約1000nm以上の厚さの場合、第2導電性電極が電極の端部を橋絡して導電路を形成することが困難になり得る。第1導電性電極が厚すぎる場合、第2導電性電極が連続的な導電路を形成できるように、第1導電性電極の端部に傾斜がつけられてよい。
【0038】
第2導電性電極は、少なくとも1種類の貴金属を含む。いくつかの実施形態において、第2導電性電極は、少なくとも50、60、70、80、90、95、99、又は更には少なくとも99.9重量%の貴金属含有量を有してよい。いくつかの実施形態において、第2導電性電極は、金、パラジウム、白金、又はこれらの組み合わせからなるか、又は本質的になる。第2層は、少なくとも1種類の有機検体に対して透過性があり続ける限り、追加構成成分を含んでよい。十分な全体導電性及び透過性がもたらされる限り、異なる材料(導電性及び/又は非導電性)の組み合わせが、異なる層又は混合物として使用され得る。典型的には、第2導電性電極は、約10オーム/平方未満のシート抵抗を有する。
【0039】
第2導電性電極は、4〜10nmの範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態において、第2導電性電極は、5、6、又は7nm〜最大7、8、9、又は10nmの範囲の厚さを有する。例えば、第2導電性電極は、5〜8nm又は6〜7nmの範囲の厚さを有してよい。厚さが大きい場合、一般的に、望ましくない低レベルの透過性を有する。その一方、厚さが小さい場合、導電性が不十分となる、及び/又は第2導電性部材への電気的接続が困難となる。第2導電性電極は透過性があるため、第1電極は、典型的には、連続的な中断部のない層を含むが、必要に応じて開口部又は他の中断部を含んでよい。
【0040】
第2導電性電極は、熱蒸着プロセスによって調製され得る。熱蒸着では、第2電極の作製に用いられる材料が、気化し、感知素子の適切な構成要素(例えば、吸収性誘電体層又は任意のカバー層)の上に蒸着するまで、真空下で加熱される。任意の好適な加熱源が用いられてよい。例えば、抵抗加熱、レーザー加熱、及び電子ビーム加熱(電子ビーム蒸発とも呼ばれる)が挙げられる。熱蒸着は、概ね、約10−5又は10−6トル(1mPa〜0.1mPa)以下の圧力で実行される。
【0041】
熱蒸着とスパッタ蒸着は異なる。スパッタ蒸着では、高エネルギー原子をターゲット又はソースに衝突させ、基材に蒸着する材料を放出させる。スパッタ蒸着に関与する典型的な圧力は、10−2〜10−4トル(1Pa〜0.1Pa)以上の範囲である。
【0042】
このようなセンサー素子を作製するための例示のプロセスでは、(材料の連続的なスラブ、層、又はフィルムであり得る)誘電体基板が提供され、これは、第1電極に近接し、完成したセンサー素子に物理的強度、及び一体性を提供するように機能し得る。ガラス、セラミック、プラスチックなどを含む、任意の好適な材料が使用されてもよい。大規模生産では、ポリマーフィルム(ポリエステルなど)が使用されてもよい。いくつかの実施形態において、誘電体基板は検体透過性材料(例えば、シリコーンゴム又はミクロ孔質膜)である。
【0043】
本開示によるセンサー素子の性能の改善は、第2電極の堆積後に100℃〜250℃の温度で、典型的にはセンサー素子の他の構成要素と共に第2電極を加熱することによって概ね達成できる。これらの温度における均熱時間は任意の持続時間を有してよいが、典型的には、数分〜数時間の範囲である。
【0044】
一実施形態において、第1導電性電極は誘電体基板の上に設けられる。導電性層は、導電性及び非導電性材料のブレンド又は混合物を包含する、上記の材料のいずれかを含んでもよく、スピンコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷、トランスファーコーティング、スパッタコーティング、物理蒸着、化学蒸着、又はこれらの方法の2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない任意の好適な方法によって堆積され得る。別の実施形態において、導電性層は、誘電体基板の上に予め作製されたフィルム(例えば、金属フォイル、導電性テープなど)を配置することによって設けられてよい。この第1導電性電極は、既述のように、連続的な層として、又は非連続的な層として設けられてよい。
【0045】
一実施形態において、第1導電性電極が、誘電体基板の少なくとも一部に近接するように、及び/又はこれに接触するように、第1導電性電極が設けられる。別の実施形態において、任意の層は、第1導電性電極の少なくとも一部と誘電体基板との間に存在する。このような任意の層は、この層がセンサー素子の機能を妨げない限り、任意の目的(例えば、第1導電性電極と誘電体基板との結合の向上)のために用いられてよい。
【0046】
第1導電性部材及び第2導電性部材は、センサー素子の組み立て中に、任意の適切な時点で第1導電性電極及び第2導電性電極に電気的に結合されてよい。例えば、第1導電性部材は、第1導電性電極の堆積直後かつ吸収性誘電体層の堆積前に、第1導電性電極に結合されてよい。別の実施形態において、吸収性誘電体層は、第1導電性部材に結合されるために第1導電性電極のある領域が露出されたままになるように、第1導電性電極上に堆積されてよい。同様に、第2導電性部材は、第2導電性電極の堆積直後かつ任意のカバー層の堆積前に、第2導電性電極に結合されてよいか、あるいは任意のカバー層は、第2導電性電極のある領域が、第2導電性部材に結合されるために露出されたままになるように、第2導電性電極上に堆積されてよい。
【0047】
一実施形態において、吸収性誘電体材料は、例えば、溶媒コーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、トランスファーコーティング、スクリーン印刷などが挙げられるが、これらに限定されないコーティングプロセスによって、第1導電性電極に近接して配置される。ある実施形態において、誘電体材料は、センサー素子の性能を損なうように作用し得る、欠陥、ピンホールなどの存在を最小限に抑えるような方法で堆積される。特定の実施形態において、吸収性誘電体層は、PIM材料の溶液を好適な誘電体基板上にコーティングし、溶液を乾燥させてPIM材料を含む固体層を形成することによって堆積される、固有ミクロ孔質のポリマーを含む。所望により、この構成体を100℃〜200℃の範囲の温度で加熱して、コーティングされたPIM材料を更に乾燥させてよい。
【0048】
吸収性誘電体層は、他の方法で設けることもできる。例えば、吸収性誘電体材料の予備形成されたフィルムが、第1導電性電極の第2表面上に配置され得る。別の実施形態において、吸収性誘電体材料は、粒子状の形態(例えば、粉末として、懸濁液として、又はゾルとして)で提供され、このような形態で第1導電性電極上に堆積されて粒子状コーティングを形成することができる。必要に応じて、このような材料は、吸収性誘電体材料の連続的なマトリックスを形成するように固化され得る。
【0049】
任意の保護カバー又は障壁層が、第1導電性電極又は第2導電性電極の少なくとも一方に近接して設けられてよい。例えば、一実施形態において、カバー層は第2導電性電極の上に配置されてよく、第2導電性電極のある領域が第2導電性部材の電気接点との電気接点にアクセス可能にする。いかなるこのようなカバー層も、センサー素子の機能を有意に妨げるべきではない。例えば、対象の検体が吸収性誘電体層に到達するために、カバー層を通過しなくてはならないようにセンサー素子が構成されている場合、カバー層は、検体に対して十分に透過性があるべきである。
【0050】
任意のカバー層は、コーティング(例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、溶媒コーティング、蒸気コーティング、トランスファーコーティング、スクリーン印刷、フレキソ印刷など)を含む、当該技術分野において既知の任意の方法で堆積されてよい。別の実施形態において、カバー層は、予め作製した層(例えば、フィルム又はテープ)を含むことができ、これは第2導電性電極上に配置される。一実施形態において、カバー層は、第2導電性電極の主表面の少なくとも一部と直接接触するように設けられる。カバー層は、センサー素子の最も外側の層であってよく、又はそれ自体が必要に応じて追加のコーティング又は層を受けてよい。
【0051】
一実施形態において、第1導電性電極及び吸収性誘電体層は直接接触しており、それらの間に介在する層はない。同様に、一実施形態において、第2導電性電極及び吸収性誘電体層は直接接触しており、それらの間に介在する層はない。このような実施形態が図1に図示される。しかし、他の任意の層が第1導電性電極と吸収性誘電体層との間、及び/又は第2導電性電極と吸収性誘電体層との間に存在してよいことも想到される。このような場合、電極のいずれか、又は両方が吸収性誘電体材料の一部又は全てと直接接していなくてよい。例えば、電極と吸収性誘電体層との間の結合を向上させるために、結合層が使用されてよい。または、電極間のアーク放電の可能性を最小限に抑えるために、不動態層(例えば、二酸化ケイ素の層)が、吸収性誘電体層の表面と電極表面との間に配置されてよい。いくつかの実施形態では、複数のこのような任意の層が使用され得る、あるいは、単一の層が複数の機能を果たし得る。いずれかのこのような任意の層、例えば、上記の結合層、不動態層、保護層、カバー層などは、センサー素子の所望の機能を有意に妨げない限り、あらゆる目的のために使用され得る。例えば、検体が吸収性誘電体層に到達するために、任意の層を通過しなくてはならないように、センサー素子が構成されている場合、任意の層は、対象の検体に対して十分に透過性があるべきである。
【0052】
広くは、第1電極及び/又は第2電極及び/又は吸収性誘電体層の端部は、互いにぴったり重なっていてよいか、あるいは、互いに対して、若しくは存在し得る任意の他の層に対して後ろにある、及び/又は延在してよい。
【0053】
第1導電性電極の上への吸収性誘電体材料の堆積では、電気的にアクセス可能な領域を第1導電性電極の上に設けて、電極と動作回路との電気的接続を可能にしてよい。同様に、カバー層が第2導電性電極の上に配置される場合、電気的にアクセス可能な領域が同様に設けられてよい。このような電気的にアクセス可能な領域は、任意の便利な位置に提供され得る。一実施形態において、接続装置(例えば、接触パッド、タブなど)を、第1導電性電極のアクセス可能な領域と電気的に接触させてよい。同様に、接続装置を、第2導電性電極のアクセス可能な領域と同様に接触させてよい。
【0054】
吸収性誘電体層によって十分な検体が吸収された際に、センサー素子に関連する電気的特性(静電容量、インピーダンス、インダクタンス、アドミタンス、電流、又は抵抗などが挙げられるがこれらに限定されない)の検出可能な変化が生じ得る。このような検出可能な変化は、第1導電性電極及び第2導電性電極と電気的に導通する動作回路によって検出され得る。これに関連して「動作回路」とは、一般的に、第1導電性電極及び第2導電性電極に電圧を印加する(したがって、電極に電荷差を付与する)、及び/又はセンサー素子の電気的特性(電気的特性は有機検体の存在に反応して変化し得る)を監視するために使用され得る電気装置を指す。様々な実施形態において、動作回路は、インダクタンス、静電容量、電圧、抵抗、コンダクタンス、電流、インピーダンス、位相角、損失率、又は散逸のいずれか、又は組み合わせを監視してもよい。
【0055】
このような動作回路は、電極に電圧を印加し、かつ電気的特性を監視することの両方を行う単一の装置を含み得る。別の実施形態では、このような動作回路は、電圧を供給するものと、信号を監視するものとの2つの別個の装置を含んでもよい。動作回路は、典型的には、導電性部材によって第1導電性電極及び第2導電性電極に電気的に結合されている。
【0056】
ここで図2を参照すると、例示のセンサー装置200は、入口開口部222と任意の出口開口部224とを有するセンサーチャンバ210を備える。センサー素子100は、(上述したように)センサーチャンバ210内に配置され、入口開口部222及び任意の出口開口部224(存在する場合)と流体連通する。典型的な動作では、検体230を含むサンプルが感知チャンバ210に入り、チャンバ内でセンサー素子100に接触する。動作回路240は、導電回路290を介してセンサー素子100と電気的に導通する。電源270に接続されている場合、動作回路240は、センサー素子100の静電容量を測定する。いくつかの実施形態において、動作回路240は、データ記憶装置250、コントローラ装置280、及び/又はディスプレイ装置260に通信的に結合される。
【0057】
動作中、動作回路240は電源270と電気的に導通する。
【0058】
例示の電源としては、電池、プラグイン電源、発電機、配線接続された電源、及び高周波電源(動作回路にRFレシーバーが含まれている場合)が挙げられる。
【0059】
センサーチャンバは、検体に対して不透過性がある任意の固体材料で構成されることができる。例としては、金属及び/又はプラスチックが挙げられる。例示のディスプレイ装置260としては、発光ダイオードディスプレイ、液晶ディスプレイ、陰極線管ディスプレイ、直流メーター(galvanic meter)、及びプリンターが挙げられる。コントローラ装置280が存在する場合、この装置にはハードウェア及び/又は動作回路の動作を指示するソフトウェアが含まれる。例示のデータ記憶装置250としては、フラッシュメモリカード、ハードディスク、デジタルテープ、及びCD Rメディアが挙げられる。
【0060】
別の実施形態において、動作回路は、接続部材によって、又は動作回路の一定の部分を各電極の電気的にアクセス可能な領域へ直接的に接触させることによってのいずれかで、第1導電性電極及び/又は第2導電性電極と直接接触するように設けられてよい。例えば、回路基板上、又はフレキシブル回路上(これらのいずれかは、誘電体基板としても機能し得る)に存在する動作回路が設けられ得る。第1導電性電極は次に、誘電体基板上に直接堆積され得、それによって、これは、動作回路の一部と直接的に接触する。
【0061】
センサー素子及び本開示によるセンサー装置は、有機検体の存在の(質的又は量的のいずれかの)検出及び/又は監視に用いることができる。このような検体としては、炭化水素、フッ化炭素、アルカン、シクロアルカン、芳香族化合物、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、ハロカーボン、アミン、有機酸、シアン酸、ニトレート、及びニトリル、例えば、n−オクタン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、アセトン、エチルアセテート、二硫化炭素、四塩化炭素、ベンゼン、スチレン、トルエン、キシレン、メチルクロロホルム、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、2−エトキシエタノール、酢酸、2−アミノピリジン、エチレングリコールモノメチルエーテル、トルエン−2,4−ジイソシアネート、ニトロメタン及びアセトニトリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。有機検体は、比較的無極性の有機分子であるか、又は比較的極性の有機分子であってよい。検体は、典型的には蒸気である。つまり、検体が経験している周囲条件の温度及び圧力において、凝縮して固体又は液体を形成することができる分子である(例えば、トルエン、アセトン、ヘプタンなど)。
【0062】
本開示の実施形態の選択
【0063】
第1の実施形態では、本開示は、センサー素子であって、
電気的に結合された第1導電性部材を有する第1導電性電極と、
固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層と、
電気的に結合された第2導電性部材を有する第2導電性電極と、を備え、第2導電性電極は少なくとも1種類の貴金属を含み、第2導電性電極は、4〜10ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があり、吸収性誘電体層は、少なくとも部分的に第1導電性電極と第2導電性電極との間に配置されている、センサー素子を提供する。
【0064】
第2の実施形態では、本開示は、第1導電性電極を支持する誘電体基板を更に備える、第1の実施形態によるセンサー素子を提供する。
【0065】
第3の実施形態では、本開示は、誘電体基板がポリマーフィルムを含む、第2の実施形態によるセンサー素子を提供する。
【0066】
第4の実施形態では、本開示は、少なくとも1種類の貴金属が、第2導電性電極の少なくとも99重量%を構成する、第1〜第3の実施形態のいずれか1つによるセンサー素子を提供する。
【0067】
第5の実施形態では、本開示は、第2導電性電極が、金、パラジウム、白金、又はこれらの組み合わせを含む、第1〜第4の実施形態のいずれか1つによるセンサー素子を提供する。
【0068】
第6の実施形態では、本開示は、固有ミクロ孔質のポリマーが、剛性リンカーによって連結されるほぼ平面的な種からなる有機高分子を含み、この剛性リンカーが、剛性リンカーの1つによって連結される2つの近接する平面的な種が非同一平面上の配向に維持されるように、ねじれ点を有する、第1〜第5の実施形態のいずれか1つによるセンサー素子を提供する。
【0069】
第7の実施形態では、本開示は、第1導電性電極が少なくとも1種類の貴金属を含み、第1導電性電極が、4〜10ナノメートル、又は5〜8ナノメートル、又は6〜7ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性がある、第1〜第6の実施形態のいずれか1つによるセンサー素子を提供する。
【0070】
第8の実施形態では、本開示は、第2導電性電極が、吸収性誘電体層の主表面と同一の広がりを持つ、第1〜第7の実施形態のいずれか1つによるセンサー素子を提供する。
【0071】
第9の実施形態では、本開示は、
固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層を第1導電性電極の上に配置する工程と、
少なくとも1種類の貴金属を含む第2導電性電極を吸収性誘電体層の上に熱蒸着によって配置する工程と、を含む方法であって、第2導電性電極が、熱蒸着の完了後に4〜10ナノメートルの厚さを有し、第2導電性電極が少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があり、吸収性誘電体層が、少なくとも部分的に第1導電性電極と第2導電性電極との間に配置されている、方法を提供する。
【0072】
第10の実施形態では、本開示は、第1導電性電極が誘電体基板の上で支持される、第9の実施形態による方法を提供する。
【0073】
第11の実施形態では、本開示は、誘電体基板がポリマーフィルムを含む、第10の実施形態による方法を提供する。
【0074】
第12の実施形態では、本開示は、これらの工程は順次的である、第9〜第11の実施形態のいずれか1つによる方法を提供する。
【0075】
第13の実施形態では、本開示は、少なくとも1種類の貴金属が、第2導電性電極の少なくとも99重量%を構成する、第9〜第12の実施形態のいずれか1つによる方法を提供する。
【0076】
第14の実施形態では、本開示は、第2導電性電極が、金、パラジウム、白金、又はこれらの組み合わせを含む、第9〜第13の実施形態のいずれか1つによる方法を提供する。
【0077】
第15の実施形態では、本開示は、固有ミクロ孔質のポリマーが、剛性リンカーによって連結されるほぼ平面的な種からなる有機高分子を含み、この剛性リンカーが、剛性リンカーによって連結される2つの近接する平面的な種が非同一平面上の配向に維持されるように、ねじれ点を有する、第9〜第14の実施形態のいずれか1つによる方法を提供する。
【0078】
第16の実施形態では、本開示は、第1導電性電極が少なくとも1種類の貴金属を含み、第1導電性電極が、4〜10ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性がある、第9〜第15の実施形態のいずれか1つによる方法を提供する。
【0079】
第17の実施形態では、本開示は、第2導電性電極が、吸収性誘電体層の主表面と同一の広がりを持つ、第9〜第16の実施形態のいずれか1つによる方法を提供する。
【0080】
第18の実施形態では、本開示は、100〜250℃の範囲の温度で少なくとも第2電極を加熱する工程を更に含む、第9〜第17の実施形態のいずれか1つによる方法を提供する。
【0081】
第19の実施形態では、本開示は、センサー装置であって、
入口開口部を有するセンサーチャンバと、
静電容量を有し、センサーチャンバ内に配置され、入口開口部と流体連通する、センサー素子であって、
電気的に結合された第1導電性部材を有する第1導電性電極と、
固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層と、
電気的に結合された第2導電性部材を有する第2導電性電極と、を備え、第2導電性電極は少なくとも1種類の貴金属を含み、第2導電性電極が、4〜10ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があり、吸収性誘電体層が、少なくとも部分的に第1導電性電極と第2導電性電極との間に配置されている、センサー素子と、
センサー素子と電気的に導通する動作回路と、を備え、
センサー素子が電源に接続されている場合、動作回路はセンサー素子の静電容量を測定する、センサー装置を提供する。
【0082】
第20の実施形態では、本開示は、センサーチャンバが、入口開口部と流体連通する出口開口部を更に備える、第19の実施形態によるセンサー装置を提供する。
【0083】
第21の実施形態では、本開示は、動作回路と通信的に結合されたディスプレイ装置を更に備える、第19又は第20の実施形態によるセンサー装置を提供する。
【0084】
第22の実施形態では、本開示は、第2導電性電極が、金、パラジウム、白金、又はこれらの組み合わせを含む、第19〜第21の実施形態のいずれか1つによるセンサー装置を提供する。
【0085】
以下の非限定的な実施例によって本開示の目的及び利点を更に例示するが、これらの実施例に記載する特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0086】
特に断らないかぎり、本実施例及び本明細書の残りの部分における部、百分率、比などは全て重量に基づいたものである。用いられる溶媒及び他の試薬は、別の供給元を特に記載していない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)から入手した。
【0087】
下記で用いられるように、小領域底部電極は第1導電性電極に相当し、小領域上部電極は第2導電性電極に相当し、小領域上部接続電極は第2導電性部材に相当し、第1導電性部材は、動作回路にセンサーを電気的に結合するために用いられるバネ仕掛けの接続ピンに相当する。
【表1】
【0088】
PIMの調製
モノマー、5,5’,6,6’−テトラヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビスインダン及びテトラフルオロテレフタロニトリルから、BuddらによりAdvanced Material,2004,Vol.16,No.5,pp.456〜459に報告されている手順に概ね従ってPIM材料を調製した。
【0089】
5,5’,6,6’−テトラヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビスインダン(40.000g)を、23.724gのテトラフルオロテレフタロニトリル、97.373gの炭酸カリウム、及び1016.8gのN,N−ジメチルホルムアミドと混合し、混合物を68℃で72時間反応させた。重合混合物を水中に注ぎ、沈殿を真空濾過により単離した。得られたポリマーをテトラヒドロフランに2回溶解し、メタノールから沈殿させ、室温で風乾した。光散乱検出を用いるゲル透過クロマトグラフィー分析による測定で、約41,900g/モルの数平均分子量を有する黄色固体生成物を得た。
【0090】
比較例A〜C及び実施例1〜2
Alconox Liqui−Nox清浄液で30〜60分間浸漬してからスライドの両面を毛ブラシで磨き、温水道水ですすいでから、脱イオン水(DI水)で最終的にすすぐことにより洗浄したPGOガラススライドの上でセンサー素子を調製した。スライドは、表面への粉塵の堆積を防止するために風乾で遮蔽された。Entegris(Chaska,Minnesota)から入手した7.6cm(3インチ)のウエファーキャリアに、乾燥した清潔なスライドを保管した。
【0091】
図3の寸法にレーザー切断した50ゲージステンレス鋼から調製した小領域底部電極(SABE)マスクを用いて、0.1ナノメートル/秒(nm/sec)の速度で10.0ナノメートル(nm)のチタンを電子ビーム蒸発コーティングしてから、0.5nm/secで150.0nmのアルミニウムを電子ビーム蒸発コーティングして、PGOガラススライドの上に底部電極を堆積させた。全てのマスクは、マスクの鋭角によって短絡する可能性を最小限に抑えるために、使用前に面取りを行った。堆積プロセスは、INFICON(East Syracuse,New York)からのINFICON XTC/2 THIN FILM DEPOSITION CONTROLLERを用いて制御した。
【0092】
小型ジャー内で構成成分を混合し、これをローラーミル(Wheaton Science Products(Millville,New Jersey)からのミニボトルローラー番号348920)に約3時間配置し、次に1マイクロメートルのAcrodiscフィルターを通して濾過することにより、クロロベンゼン中5.5重量%のPIM溶液を調製した。形成されたいかなる気泡が消えるように、この溶液を一晩寝かせた。
【0093】
サンプルは、Laurell Technologies Corporation(North Wales,Pennsylvania)からのModel WS 400B−8NPP/LITEスピンコーターを用いて、PIMでスピンコーティングした。サンプルをコーティングするために、サンプルをスピンコーター内に配置し、サンプルの上に約0.5mLのクロロベンゼンを配置した。各サンプルを、300rpmで15秒間回転させてから、2000rpmで45秒間回転させた。溶媒は、最初の15秒間のスピンコーティングプロファイル中に投与した。次に、全てのサンプルについて、サンプル回転中の最初の15秒間にPIM溶液を投与した。全てのサンプルに、300rpmでの15秒間、その後の2000rpmでの45秒間のスピンプロファイルを用いた。スピンコーティング後、アセトンを浸した綿棒でコーティングの小区画を除去して、AMBiOS Technology(Santa Cruz,California)からのModel XP−1表面形状測定装置を用いて、PIMの厚さを測定した。厚さ測定で用いたパラメーターは、スキャン速度0.1mm/sec、スキャン長さ5mm、範囲10マイクロメートル、針圧0.20mg、及びフィルターレベル4であった。コーティング後に、全てのサンプルを100℃で1時間ベーキングした。
【0094】
上部電極を調製するために、図4に示すパターンでレーザー加工することにより、24ゲージステンレス鋼から小領域上部電極(SATE)マスクを作製した。上部電極は、金の熱蒸着を用いて、SATEマスクを通して様々な厚さで蒸着させた。全ての厚さに対して、0.1nm/secの堆積速度を用いた。活性電極の堆積後に、図5のパターンを用いて、50ゲージステンレス鋼からレーザー加工して調製した小領域上部接続電極(SATCE)マスクを通して10.0nmのチタンを0.1nm/secの速度で熱蒸気コーティングしてから、150.0nmのアルミニウムを0.5nm/secの速度で熱蒸気コーティングして、接続電極を堆積させた。両方の堆積プロセスは、INFICON XTC/2 THIN FILM DEPOSITION CONTROLLERを用いて制御した。
【0095】
このセンサー製造プロセスは、約50mm×50mmのガラス基材の上に6個一組のセンサー素子の約4.5mm×6mmの活性領域(接続電極で覆われていない、上部電極と底部電極との重複部の下の領域)をもたらした。個々のセンサー素子は、前(活性)面が損傷しないようにセンサー素子を支持しつつ、後(非活性)面で標準的なガラススコアリングカッターを用いて、サンプルをさいの目状に切断して製造した。
【0096】
サンプルをさいの目状に切断して個々のセンサー素子にする前に、アセトンを湿らせた綿棒で底部電極接触領域を覆うPIMを除去し、Protekマルチメーターを用いて単純な電気試験を実施した。近接する2つのセンサー素子間で抵抗を測定して、極薄の上部金電極の相対抵抗を測定した。これらの測定の結果を表1に示す。さいの目状に切断した後で、同一の抵抗メーターを用いて個々のセンサー素子を試験した。比較例A及びBのセンサー素子については、静電容量の測定値を入手できなかった。比較例C及び実施例2による試料の一部は、短絡した。実施例1は、約1.6ナノファラッド(nF)の静電容量を有した。さいの目状に切断した後で、サンプルは、封止したガラスジャーに入れて20包の活性炭/シリカゲルと共に暗所に保管して、センサー素子が意図しない有機蒸気又は水分に曝露されないように保護した。サンプルは、有機蒸気への反応を試験するまで、この方法で保管した。
【表2】
【0097】
全ての試験は、ドライエライトを通過させて水分を除去し、活性炭を通過させてあらゆる有機汚染を排除した空気中で実施した。試験チャンバは、1回に4種類のセンサー試料を測定できた。バネ仕掛けの接続ピンを用いて、センサーを動作回路に電気的に結合した。蒸気試験は、システムを通過する10L/分の乾燥空気流を用いて実施した。様々な蒸気レベルは、500マイクロリットルガスタイトシリンジ(Hamilton Company(Reno,Nevada)から入手)を装着したKD Scientificシリンジポンプ(KD Scientific Inc.(Holliston,Massachusetts)から入手可能)を用いて生成した。シリンジポンプは、シリンジに接続できるようにルアーロックに装着されたテフロン管(Hamilton Company(Reno,Nevada)から供給、部品番号KF28TF NDL)を通って、500mLの三つ口フラスコ中に懸濁している濾紙の上に有機液体を供給した。紙を通過する乾燥空気流が溶媒を蒸発させた。シリンジポンプを制御することによって様々な速度で溶媒を供給すると、様々な濃度の蒸気が発生した。シリンジポンプは、試験実施中に蒸気プロファイルを生成できるLABVIEW(National Instruments(Austin,Texas)から入手可能なソフトウェア)プログラムで制御した。MIRAN IR分析器(Thermo Fischer Scientific,Inc.(Waltham,Massachusetts)から入手可能)を用いて、設定濃度を確認した。静電容量及び散逸係数は、Agilent LCRメーターを用いて、1000Hzで1ボルトを上部電極及び底部電極に印加して、測定した。シリンジポンプを制御した同一のLABVIEWプログラムを用いてこのデータを収集し、保存した。
【0098】
実施例1、2、及び3、並びに比較例A、B、及びCの4個の複製センサー素子の初期静電容量及び散逸係数は、試験チャンバの乾燥空気中に約5〜10分置いた後に記録した。これらの値を表2(下記)に報告する。
【表3】
【0099】
ΔC/C(初期値で除した、初期値からの静電容量の変化)は、未加工静電容量データから決定した。メチルエチルケトン(MEK)を用いた結果を表3(下記)に報告する。
【表4】

【表5】
【0100】
センサーの反応時間(T90)は、メチルエチルケトン(MEK)濃度を200ppmから400ppmへと変化させた後で、最終値の90%に達するまでセンサーの反応が変化する時間として定義する。静電容量C90は、以下のように定義する。
【数1】

【0101】
90は、静電容量がC90の値に到達した時に、MEK濃度を200ppmから400ppmへと変化させた後の初回に等しい。
【0102】
反応時間はΔC/Cデータから決定し、表4に報告する。
【表6】
【0103】
比較例D〜F
底部電極は、SABEマスクを用いて実施例1で説明したように調製し、実施例1で説明したようにPIMでスピンコーティングした。図4に示したマスクを用いて、PIMでコーティングした電極を金でスパッタコーティングしてから、実施例1のように図5に示したマスクを用いて、サンプルを蒸気コーティングした。次に、サンプルをさいの目状に切断して個々のセンサー素子にして、実施例1で説明したように電気的短絡及び基準静電容量を試験した。試験前は、実施例1のようにセンサー素子を保管した。作製したセンサー素子の説明を表5(下記)に報告する。
【表7】
【0104】
比較例D〜F(それぞれ6個の複製品)は、Protekマルチメーターで測定すると、一部の比較例Fの複製品が短絡したことを除いて、約1.7nFの静電容量を有した。散逸係数及び初期静電容量は、実施例1で説明したようにAgilent LCRメーターを用いて測定し、その結果を表6(下記)に報告する。
【表8】
【0105】
次に、実施例1で説明した同一の手順を用いて、MEK蒸気に対する反応についてセンサー素子を試験した。これらの電極は、蒸気試験前に加熱しなかった。MEK蒸気への反応を表7(下記)に報告する。
【表9】
【0106】
センサーの反応時間(T90)はΔC/Cデータから決定し、表8(下記)に報告する。
【表10】
【0107】
センサー素子反応への加熱の効果
実施例1及び2並びに比較例D、E、及びFで調製及び試験を行ったものから選択したセンサー素子を150℃まで1時間加熱してから、実施例1に説明したようにMEK蒸気に対する反応を試験した。初期静電容量及び散逸係数を表9(下記)に報告する。
【表11】
【0108】
MEK蒸気に対するΔC/C反応を表10(下記)に報告する。
【表12】
【0109】
センサー素子の反応時間(T90)はΔC/Cデータから決定し、表11に報告する。
【表13】
【0110】
実施例3〜8及び比較例G〜H
センサー素子を調製し、試験前は実施例1に説明したように保管した。センサー素子の説明は、表12に報告する。サンプルをさいの目状に切断して個々のセンサー素子にした後で、Protekマルチメーターを用いて、短絡の試験と基準静電容量の測定を行った。実施例3及び4によるセンサー素子試料は、約1.5nFの基準静電容量を有した。実施例5及び比較例Gによるセンサー素子試料は、約1.7nFの基準静電容量を有し、比較例Gによる1個の試料は短絡した。実施例6〜8及び比較例Hによるセンサー素子試料は、短絡した実施例6及び8並びに比較例Hの一部の試料を除いて、約1.6nFの基準静電容量を有した。
【表14】
【0111】
センサー素子は、実施例1のようにMEK蒸気に対する反応を試験した。センサー素子は、蒸気試験前に加熱しなかった。約5〜10分間試験チャンバの乾燥空気中にセンサー素子を置いた後で、初期静電容量及び散逸係数を記録した。これらの値を表13(下記)に報告する。
【表15】
【0112】
様々なMEK蒸気濃度に対するセンサー素子の反応を時間に応じて記録した。各濃度の最後の5分間の最終値を表14(下記)に報告する。
【表16】

【表17】
【0113】
センサー素子の反応時間(T90)を表15(下記)に報告する。
【表18】
【0114】
実施例9〜12及び比較例I〜J
実施例1で説明したようにセンサー素子を調製し、試験前に保管した。ただし、図5に示すマスクを通して10.0nmのチタンを0.1nm/secの速度で熱蒸気コーティングしてから、100.0nmのニッケルを0.5nm/secの速度で熱蒸気コーティングして、上部接続電極を堆積させた。
【0115】
センサー素子の説明を表16に報告する。サンプルをさいの目状に切断して個々のセンサー素子にした後で、Protekマルチメーターを用いて、短絡の試験と基準静電容量の測定を行った。比較例I〜Jは短絡しなかったが、キャパシターとして機能しなかった。実施例9は、約1nFの基準静電容量を有し、1個の複製品が短絡した。実施例10〜11は、約1.7nFの基準静電容量を有した。
【表19】
【0116】
センサー素子は、実施例1のようにMEK蒸気に対する反応を試験した。センサー素子は、蒸気試験前に加熱しなかった。約5〜10分間試験チャンバの乾燥空気中にセンサー素子を置いた後で、初期静電容量及び散逸係数を記録した。これらの値を表26に報告する。
【表20】
【0117】
様々なMEK蒸気濃度に対するセンサー素子の反応を時間に応じて記録した。各濃度の最後の5分間の最終値を表18(下記)に報告する。
【表21】
【0118】
センサー素子の反応時間(T90)を表19に報告する。比較例I及びJによるセンサー素子については、センサー素子の反応が乏しいため、T90値を測定できなかった。
【表22】
【0119】
実施例13〜16及び比較例K〜L
実施例9〜12及び比較例I〜Jのセンサー素子も、実施例1で説明したようにMEK蒸気に対する反応を試験した。ただし、実施例13〜16及び比較例K〜Lの蒸気試験の結果がもたらされる前に、センサー素子を150℃で1時間それぞれ加熱した。
【0120】
約5〜10分間試験チャンバの乾燥空気中にセンサー素子を置いた後で、初期静電容量及び散逸係数を記録した。このデータを表20で報告する。実施例9の複製品Aは試験前に損傷し、低静電容量及び高散逸係数をもたらした。
【表23】
【0121】
様々なMEK蒸気濃度に対するセンサー素子の反応を時間に応じて記録した。各濃度の最後の5分間の最終値を表21(下記)に報告する。
【表24】

【表25】
【0122】
センサー素子の反応時間(T90)を表22(下記)に報告する。
【表26】
【0123】
(実施例17〜18)
実施例1に説明した手順に従ってセンサー素子を調製した。ただし、金の代わりにパラジウム(6.0nm厚、0.1nm/secの速度で堆積)を用いて、上部電極を調製した。パラジウムの融点が高い(>1550℃)ため、抵抗加熱の代わりに電子ビーム加熱を用いたが、真空状態は同じだった。この実施例のPIM層の厚さは、600nmだった。
【0124】
さいの目状に切断した後、試験に先だって一部の複製センサー素子を150℃で1時間加熱し(実施例18)、一部は加熱しなかった(実施例17)。得られたセンサー素子は、封止したガラスジャーに入れて20包の活性炭/シリカゲルと共に暗所に保管して、センサー素子が意図しない有機蒸気又は水分に曝露されないように保護した。有機蒸気反応を試験するまで、この方法でセンサー素子を保管した。
【0125】
センサー素子は、実施例1のようにMEK蒸気に対する反応を試験した。約5〜10分間試験チャンバの乾燥空気中にセンサー素子を置いた後で、初期静電容量及び散逸係数を記録した。これらの値を表23(下記)に報告する。
【表27】
【0126】
様々なMEK蒸気濃度に対するパラジウム導電性電極含有センサー素子の反応を時間に応じて記録した。各濃度の最後の5分間におけるΔC/Cの最終値を表24(下記)に報告する。
【表28】
【0127】
センサー素子の反応時間(T90)を表25(下記)に報告する。
【表29】
【0128】
(実施例19〜22)
実施例1に説明した手順に従ってセンサー素子を調製した。ただし、金の代わりに白金(5.0nm及び7.0nm厚、0.1nm/secの速度で堆積)を用いて、上部電極を調製した。白金の蒸着特性(1768.3℃)のため、抵抗加熱の代わりに電子ビーム加熱を用いたが、真空状態は同じだった。5.0nmの上部白金電極の実施例(実施例19〜20)では、ポリマー厚は600nmであった。7.0nmの上部白金電極の実施例(実施例21〜22)では、ポリマー厚は605nmであった。
【0129】
さいの目状に切断した後、試験に先だって一部の複製センサー素子を150℃で1時間加熱し、一部は加熱しなかった。得られたセンサー素子は、封止したガラスジャーに入れて30包の活性炭/シリカゲルと共に暗所に保管して、センサー素子が意図しない有機蒸気又は水分に曝露されないように保護した。有機蒸気反応を試験するまで、この方法でセンサー素子を保管した。
【0130】
センサー素子は、実施例1のようにMEK蒸気に対する反応を試験した。約5〜10分間試験チャンバの乾燥空気中にセンサー素子を置いた後で、初期静電容量及び散逸係数を記録した。これらの値を表26(下記)に報告する。
【表30】
【0131】
様々なMEK蒸気濃度に対するセンサー素子の反応を時間に応じて記録した。各濃度の最後の5分間におけるΔC/Cの最終値を表27(下記)に報告する。
【表31】
【0132】
センサー素子の反応時間(T90)を表28(下記)に報告する。
【表32】
【0133】
本明細書に記載される全ての実施例は、特に指示しない限り非限定的であるとみなすべきである。当業者であれば本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく本開示の様々な改変及び変更を行うことが可能であり、また、本開示は上記に記載した例示的な実施形態に不要に限定されるべきではない点は理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2016年8月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサー素子であって、
電気的に結合された第1導電性部材を有する第1導電性電極と、
固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層と、
電気的に結合された第2導電性部材を有する熱蒸着された第2導電性電極と、を備え、熱蒸着された前記第2導電性電極が、前記吸収性誘電体層の主表面と同一の広がりを持つと共に4〜10ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があり、前記吸収性誘電体層が、少なくとも部分的に前記第1導電性電極と熱蒸着された前記第2導電性電極との間に配置されている、センサー素子。
【請求項2】
固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層を第1導電性電極の上に配置する工程と、
第2導電性電極を前記吸収性誘電体層の上に熱蒸着によって配置する工程と、を含む方法であって、前記第2導電性電極が、前記熱蒸着の完了後に前記吸収性誘電体層の主表面と同一の広がりを持つと共に4〜10ナノメートルの厚さを有し、熱蒸着された前記第2導電性電極が少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があり、前記吸収性誘電体層が、少なくとも部分的に前記第1導電性電極と熱蒸着された前記第2導電性電極との間に配置されている、方法。
【請求項3】
センサー装置であって、
入口開口部を有するセンサーチャンバと、
静電容量を有し、前記センサーチャンバ内に配置され、前記入口開口部と流体連通するセンサー素子であって、
電気的に結合された第1導電性部材を有する第1導電性電極と、
固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層と、
電気的に結合された第2導電性部材を有する熱蒸着された第2導電性電極と、を備え、熱蒸着された前記第2導電性電極が、前記吸収性誘電体層の主表面と同一の広がりを持つと共に4〜10ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があり、前記吸収性誘電体層が、少なくとも部分的に前記第1導電性電極と熱蒸着された前記第2導電性電極との間に配置されている、センサー素子と、
前記センサー素子と電気的に導通する動作回路と、を備え、
前記センサー素子が電源に接続されている場合、前記動作回路が前記センサー素子の前記静電容量を測定する、センサー装置。
【外国語明細書】
2016200605000001.pdf