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特開2016-200720光電気変換コネクタ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-200720(P2016-200720A)
(43)【公開日】2016年12月1日
(54)【発明の名称】光電気変換コネクタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20161104BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20161104BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20161104BHJP
   H01L 31/02 20060101ALI20161104BHJP
   H01R 13/46 20060101ALI20161104BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20161104BHJP
【FI】
   G02B6/42
   H01S5/022
   H01L33/00 400
   H01L31/02 B
   H01R13/46 D
   H01L31/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-80795(P2015-80795)
(22)【出願日】2015年4月10日
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】佐野 義昭
【テーマコード(参考)】
2H137
5E087
5F142
5F173
5F849
【Fターム(参考)】
2H137AB05
2H137AB06
2H137AC05
2H137BA01
2H137BB02
2H137BB03
2H137BB12
2H137BB23
2H137BB25
2H137BB31
2H137BB33
2H137BC02
2H137BC03
2H137BC08
2H137BC10
2H137BC51
2H137CA12A
2H137CA25A
2H137CA28C
2H137CA34
2H137CA75
2H137DA02
2H137DA12
2H137DA24
2H137DA39
2H137DB07
2H137EA06
2H137HA01
2H137HA11
5E087EE14
5E087FF08
5E087MM02
5E087PP06
5E087RR11
5E087RR25
5E087RR47
5F142BA24
5F142CA01
5F142CC26
5F142CE22
5F142CG04
5F142CG05
5F142DB12
5F142DB19
5F142DB24
5F142GA08
5F173MA02
5F173MB10
5F173MD70
5F173ME23
5F173ME42
5F173MF03
5F173MF28
5F173MF39
5F849AA01
5F849BB01
5F849JA06
5F849JA14
5F849XB02
5F849XB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】設計の自由度を向上させた光電気変換コネクタを提供する。
【解決手段】光電気変換コネクタ20は、支持体68と、支持体68の上に設けられ、光信号を通じて光ファイバと接続され得る光電気変換素子69と、光電気変換素子69の上部に成形された第一樹脂部材66と、第一樹脂部材66の上部に成形された第二樹脂部材67とを備え、光電気変換素子69と光ファイバの間で伝達される光信号は、第一樹脂部材66と第二樹脂部材67の双方を通ずるようになっている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
該支持体の上に設けられ、光信号を通じて光ファイバと接続され得る光電気変換素子と、
前記光電気変換素子の上部に成形された第一樹脂部材と、
前記第一樹脂部材の上部に成形された第二樹脂部材と、
を備え、
前記光電気変換素子と前記光ファイバの間で伝達される光信号が第一樹脂部材と前記第二樹脂部材の双方を通ずる、光電気変換コネクタ。
【請求項2】
前記光電気変換素子は、前記第一樹脂部材によって封止される請求項1に記載の光電気変換コネクタ。
【請求項3】
前記支持体の上に設けられたワイヤボンディングを更に有し、該ワイヤボンディングは、前記光学変換素子とともに前記第一樹脂部材によって封止される、請求項2に記載の光電気変換コネクタ。
【請求項4】
前記第一樹脂部材の屈折率と前記第二樹脂部材の屈折率は互いに相違する、請求項1乃至3のいずれかに記載の光電気変換コネクタ。
【請求項5】
前記第二樹脂部材にのみ、又は、前記第一樹脂部材及び前記第二樹脂部材の双方に、前記光信号の挙動を調整する手段が設けられている、請求項1乃至4のいずれかに記載の光電気変換コネクタ。
【請求項6】
前記第一樹脂部材の前記挙動調整手段は、前記光ファイバの先端に対向して配置された受光面を含み、該受光面は、前記光ファイバからの光の進行方向に対して鋭角又は鈍角に設定されている、請求項5に記載の光電気変換コネクタ。
【請求項7】
前記第二樹脂部材の前記挙動調整手段は、前記光電気変換素子に対向して配置された受光面を含み、該受光面は、前記光電気変換素子からの光の進行方向に対して鋭角又は鈍角に設定されている、請求項5又は6に記載の光電気変換コネクタ。
【請求項8】
前記第一樹脂部材は、透明熱硬化性エポキシ、又は、透明シリコーン樹脂であり、前記第二樹脂部材は、ポリエーテルイミド、又は、ポリカーボネートである、請求項1乃至7のいずれかに記載の光電気変換コネクタ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の光電気変換コネクタと、該光電気変換コネクタと接続される電気コネクタと、から成る光電気変換装置。
【請求項10】
支持体の上に設けた光学変換素子の上部を第一樹脂部材によって成形するステップと、
前記第一樹脂部材の上部を第二樹脂部材によって成形するステップと、
を備え、
前記光電気変換素子と前記光ファイバの間で伝達される光信号が第一樹脂部材と前記第二樹脂部材の双方を通ずる、光電気変換コネクタの製造方法。
【請求項11】
前記第一樹脂部材の成形はトランスファー成形によって行い、前記第二樹脂部材の成形は射出成型によって行う、請求項10に記載の光電気変換コネクタの製造方法。
【請求項12】
前記第一樹脂部材の硬化時間は、前記第二樹脂部材の硬化時間に比べて長い、請求項10又は11に記載の光電気変換コネクタの製造方法。
【請求項13】
前記第一樹脂部材は、透明熱硬化性エポキシ、又は、透明シリコーン樹脂であり、前記第二樹脂部材は、ポリエーテルイミド、又は、ポリカーボネートである、請求項10乃至12のいずれかに記載の光電気変換コネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電気変換コネクタ、更に言えば、2種類(以上)の樹脂部材によって成形された光電気変換コネクタと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に光電気変換コネクタとその製造方法の一例が示されている。光電気変換コネクタは、光信号と電気信号の間の変換機能を有するものであり、相手コネクタである電気コネクタと組み合わされて光電気変換装置を構成する。光電気変換コネクタを用いることにより、光電気変換コネクタに接続された光ファイバからの光信号を電気信号に変換して電気コネクタに伝達することができ、逆に、電気コネクタからの電気信号を光信号に変換して光ファイバに伝達することもできる。
【0003】
特許文献1に開示された光電気変換コネクタには、光信号を電気信号に変換する光半導体素子としての受光素子又は電気信号を光信号に変換する発光素子と、これら受光素子及び発光素子(以下、受光素子と発光素子をまとめて「受発光素子」)を駆動する駆動デバイス、受発光素子および駆動デバイスを支持する支持部材、相手コネクタである電気コネクタの端子と接触し得る端子接点としての複数の端子、更に、受発光素子を駆動デバイスに接続するとともに駆動デバイスを端子に接続する導電材としてのワイヤボンディングが含まれる。
【0004】
特許文献1に開示された光電気変換コネクタでは、受発光素子等は全て、第一樹脂部材のみによって一体成形されており、少なくとも受発光素子は、第一樹脂部材によって封止されている。
また、特許文献1に開示された光電気変換コネクタでは、第一樹脂部材のみに、光信号の挙動、例えば、光軸を調整するための反射面を備えた隆起部が設けられており、また、第一樹脂部材のみを通じて、光ファイバと受発光素子の間で光信号が伝達されるようになっている。尚、第一樹脂部材の外面は、第二樹脂部材によって一体成形されているが、第二樹脂部材は、単に、第一樹脂部材を覆っているだけで、この第二樹脂部材を用いて封止や挙動調整が行われるわけではない。
【0005】
特許文献1の光電気変換コネクタは、このように、第一樹脂部材のみによって受発光素子の封止を行い、また、第一樹脂部材のみによって挙動調整を行い、更に、第一樹脂部材のみを通じて光ファイバと受発光素子との間で光信号による通信を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5331837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
受発光素子のような半導体は化学的に変化し易いことが知られている。このため、受発光素子の封止を行うにあたっては、一般には、受発光素子を化学的に破壊させないように、例えば、不純物イオン含有量を極力抑える等、封止材料の選択には細心の注意が必要となる。従って、例えば、特許文献1における第一樹脂部材の材料には、封止との関係で大きな制約が課されることになる。
【0008】
また、挙動調整を行うには、高精度な成形や微細な形状が必要とされるところ、トラスファー成型を行うには高精度な金型が必要となるため、この結果、製造コストが増大し、また、高密度な成形(多数個取り)は困難となる。また、射出成型では成形時における樹脂流れや圧力が比較的大きいことから、受発光素子やその周辺に配置された比較的強度が弱いワイヤボンディングを破壊、変形させてしまう危険が大きい。このため、第一樹脂部材には、成形との関係でも大きな制約が課されることになる。
【0009】
更に、特許文献1に開示された光電気変換コネクタでは、第一樹脂部材のみを通じて光ファイバと受発光素子の間で光信号が伝達されるから、例えば、第二樹脂部材を利用した挙動調整を行うことはできず、光学設計の観点からも、大きな制約が課されることになる。
【0010】
このように、第一樹脂部材のみによって受発光素子の封止を行い、また、第一樹脂部材のみによって挙動調整を行い、更に、第一樹脂部材のみを通じて光ファイバと受発光素子との間で光信号による通信を行う、特許文献1の構成では、特に、第一樹脂部材に関して様々な制約が課されることになり、この結果、光電気変換コネクタの設計の自由度が減少することになる。
【0011】
本願特許発明は、これら従来の問題点を解決するためになされたものであり、光電気変換コネクタの設計の自由度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の態様による光電気変換コネクタは、支持体と、該支持体の上に設けられ、光信号を通じて光ファイバと接続され得る光電気変換素子と、を備え、前記光電気変換素子の上部に成形された第一樹脂部材と、前記第一樹脂部材の上部に成形された第二樹脂部材と、前記光電気変換素子と前記光ファイバの間で伝達される光信号が第一樹脂部材と前記第二樹脂部材の双方を通ずる。
本実施形態によれば、光電気変換素子と光ファイバの間で伝達される光信号が、第一樹脂部材と第二樹脂部材といった2種類(以上)の樹脂部材を通ずることから、例えば、第二樹脂部材によって高精度な成形を行い、第一樹脂部材については高精度な加工や微細な形状を不要にする等して、光電気変換コネクタの設計の自由度を高めることができる。
【0013】
上記態様の光電気変換コネクタにおいて、前記光電気変換素子は、前記第一樹脂部材によって封止されてもよい。
本実施形態では、第一樹脂部材と第二樹脂部材といった2種類(以上)の樹脂部材を用いることから、第一樹脂部材については封止に特化させることができる。更に言えば、第一樹脂部材については、例えば、光電気変換素子のような内蔵する半導体を化学的に破壊しないように樹脂材料として不純物イオン含有量を極力抑えた材料を用いることができ、また、射出成型ではなくトランスファー成形を用いることができる。
【0014】
また、上記態様の光電気変換コネクタにおいて、前記支持体の上に設けられたワイヤボンディングを更に有し、該ワイヤボンディングは、前記光学変換素子とともに前記第一樹脂部材によって封止されてもよい。
一般の射出成型を用いた場合、配線、例えば、ワイヤボンディングは、光学変換素子と同様に、成形時の樹脂流れや圧力によって変形してしまう可能性があるが、本実施形態では、第一樹脂部材と第二樹脂部材といった2種類(以上)の樹脂を用いることから、第一樹脂部材については、射出成型ではなくトランスファー成形を用いることにより、そのようなワイヤボンディングについても、光学変換素子とともに、第一樹脂部材によって封止することができる。
【0015】
更に、上記態様の光電気変換コネクタにおいて、前記第一樹脂部材の屈折率と前記第二樹脂部材の屈折率は互いに相違するものとしてもよい。
本実施形態では、第一樹脂部材と第二樹脂部材といった2種類(以上)の樹脂部材を用いることから、第一樹脂部材と第二樹脂部材に、互いに異なる屈折率を設定することができ、これら少なくとも2種類の屈折率の組み合わせにより、光学設計の自由度を大きくすることができる。
【0016】
また、上記態様の光電気変換コネクタにおいて、前記第二樹脂部材にのみ、又は、前記第一樹脂部材及び前記第二樹脂部材の双方に、前記光信号の光軸を調整する手段を設けてもよい。
本実施形態では、第一樹脂部材と第二樹脂部材といった2種類(以上)の樹脂を用いることから、第一樹脂部材についてはトランスファー成形を用い、第二樹脂部材については射出成型を用いることも可能である。この結果、第二樹脂部材については、高精度な成形や微細な形状に適した射出成型によって、挙動調整手段を形成することが容易となる。また、第一樹脂部材と第二樹脂部材は、共に、成形品であるから、高精度な成形や微細な形状を要求しないのであれば、第一樹脂部材に挙動調整手段を設けることも可能であり、これら少なくとも2種類の挙動調整手段の組み合わせによって、光学設計上の自由度を大きくすることができる。
【0017】
更に、上記態様の光電気変換コネクタにおいて、前記第一樹脂部材の前記挙動調整手段は、前記光ファイバの先端に対向して配置された受光面を含み、該受光面は、前記光ファイバからの光の進行方向に対して鋭角又は鈍角に設定されていてもよい。
光ファイバからの光の進行方向に対して受光面を鋭角又は鈍角に設定していることから、光ファイバに対する、受光面からの反射戻り光を減少させることができる。
更にまた、上記態様の光電気変換コネクタにおいて、前記第二樹脂部材の前記挙動調整手段は、前記光電気変換素子に対向して配置された受光面を含み、該受光面は、前記光電気変換素子からの光の進行方向に対して鋭角又は鈍角に設定されていてもよい。
光電気変換素子からの光の進行方向に対して受光面を鋭角又は鈍角に設定していることから、光電気変換素子に対する、受光面からの反射戻り光を減少させることができる。
【0018】
また、上記態様の光電気変換コネクタにおいて、前記第一樹脂部材は、透明熱硬化性エポキシ、又は、透明シリコーン樹脂であり、前記第二樹脂部材は、ポリエーテルイミド、又は、ポリカーボネートであってもよい。
本実施形態では、第一樹脂部材と第二樹脂部材といった2種類(以上)の樹脂部材を用いることから、各樹脂部材について、それぞれに適した樹脂部材を選択することができる。
【0019】
また、上記態様の光電気変換コネクタと該光電気変換コネクタと接続される電気コネクタとを含む光電気変換装置が提供される。
【0020】
本発明の態様による光電気変換コネクタの製造方法は、支持体の上に設けた光学変換素子の上部を第一樹脂部材によって成形するステップと、前記第一樹脂部材の上部を第二樹脂部材によって成形するステップと、を備え、前記光電気変換素子と前記光ファイバの間で伝達される光信号が第一樹脂部材と前記第二樹脂部材の双方を通ずる。
本構成によれば、光電気変換素子と光ファイバとの間の光信号を利用した通信を、第一樹脂部材と第二樹脂部材といった2種類(以上)の樹脂部材を通じて行う光電気変換コネクタのための新規な製造方法が提供される。
【0021】
本発明の態様による光電気変換コネクタの製造方法は、前記第一樹脂部材の成形はトランスファー成形によって行い、前記第二樹脂部材の成形は射出成型によって行うものであってもよい。
本実施形態では、第一樹脂部材と第二樹脂部材といった2種類(以上)の樹脂部材を用いることから、第一樹脂部材についてはトランスファー成形を用い、第二樹脂部材については射出成型を用いることも可能である。
【0022】
また、本発明の態様による光電気変換コネクタの製造方法は、前記第一樹脂部材の硬化時間は、前記第二樹脂部材の硬化時間に比べて長いものとしてもよい。
本実施形態では、第一樹脂部材と第二樹脂部材といった2種類(以上)の樹脂部材を用いることから、例えば、第一樹脂部材については、第二樹脂部材よりも硬化時間の長い部材を選択することによって、特に、第一樹脂部材については、成形時に高密度化(多数個取り)を図ることで製造時の工程時間のバランスを取ることができる。
【0023】
更に、本発明の態様による光電気変換コネクタの製造方法において、前記第一樹脂部材は、透明熱硬化性エポキシ、又は、透明シリコーン樹脂であり、前記第二樹脂部材は、ポリエーテルイミド、又は、ポリカーボネートであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、光電気変換コネクタの設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態による光電気変換コネクタの上側斜視図と底側斜視図である。
図2図1の光電気変換コネクタと嵌合され得る電気コネクタの斜視図である。
図3図1の光電気変換コネクタの分解斜視図である。
図4図1の光電気変換コネクタの中心線断面図である。
図5】光軸調整方法を説明する図である。
図6】挙動調整手段の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な一つの実施形態による光電気変換コネクタ及びその製造方法を説明する。
【0027】
図1の(a)、(b)に、それぞれ、本発明の一実施形態による光電気変換コネクタ20の上側斜視図と底側斜視図を示し、更に、図2に、この光電気変換コネクタ20と嵌合され得る電気コネクタ90の斜視図を示す。光電気変換コネクタ20は、電気コネクタ90と嵌合することにより光電気変換装置を構成し得る。
【0028】
電気コネクタ90は、樹脂等の絶縁材で形成されたハウジング96と、このハウジング96の底部に設けた端子91を含む。ハウジング96の中央には、光電気変換コネクタ20を嵌合させるための嵌合凹部92が形成されている。端子91の一方の端部側は、基板(図示されていない)に固定される接続部91aとして形成されており、他方の端部は、上部に向って山型に突出した接触部91bとして形成されている。
光電気変換コネクタ20と電気コネクタ90の嵌合時には、電気コネクタ90の端子91の接触部91bと、光電気変換コネクタ20の底部に露出した端子接点68’との接触を通じて、光電気変換装置、更に言えば、これに接続される光ファイバ10(後述する図5)と、基板と、の間で電気信号を通じた通信が行われる。
【0029】
図3に、光電気変換コネクタ20の分解斜視図を、図4に、光電気変換コネクタ20の中心線断面図を、更に示す。光電気変換コネクタ20は、本体部としての樹脂部材(第二樹脂部材)67と、樹脂部材67の底側65に配置された支持体68、更に、支持体68を覆う樹脂部材(第一樹脂部材)66を有する。支持体68は、通常の基板は勿論、リードフレームであってもよい。基板には、コネクタ接点用のパッドを設けるのが好ましい。また、リードフレームの場合は、後工程でフレームをコネクタ接点にするように形成する。
【0030】
樹脂部材67には、光ファイバの軸線方向(図示矢印「A」方向)に沿って上下に貫通した、位置決め溝56が設けてある。光ファイバの心線は、軸線方向「A」に沿って位置決め溝56に挿入されてもよい。挿入を容易にするため、心線の挿入側は幅広に形成してもよい。同様の理由により、位置決め溝56の最奥に向って緩やかに傾斜する案内用のテーパー58を設けてもよい。位置決め溝56の最奥には、樹脂部材67に溝56’を設けることによって形成された、側面視略三角形状の反射部60が設けられている。反射部60の背面には、光信号の挙動、例えば、光軸を調整する手段としての光軸調整ミラー63が形成されている。光軸調整ミラー63は球面状に形成されているため、反射機能に加え、集光機能をも有するものとなっている。
【0031】
光信号と電気信号の間の変換は、支持体68の上に設けた光電気変換素子69によって行うことができる。ここでいう光電気変換素子69には、例えば、光信号を電気信号に変換するための光半導体素子としての受光素子(例えば、フォトダイオード(PD))、及び、光半導体素子としての面発光型の発光素子(例えば、垂直共振器面発光(VCSEL)レーザ型の発光素子)の双方が含まれる。状況に応じて、いずれを選択してもよい。より具体的には、例えば、LED、半導体レーザ、フォトダイオード等が含まれる。
【0032】
支持体68の上には、光電気変換素子69に加え、光電気変換素子69を駆動するための駆動デバイス69aと、例えば、ワイヤボンディングやリード線のような配線69b、その他の配線69cが実装される。尚、ここでいう駆動デバイス69aは、光電気変換素子69が受光素子の場合は、例えば、トランスインピーダンスアンプ/リミッティングアンプ(TIA/LA)を含み、また、光電気変換素子69が発光素子の場合は、例えば、VCSELドライバを含み、いずれの場合であっても、端子接点68’と電気的に接続され得る。電気コネクタと接触する端子接点68’としての複数の端子は支持体68に埋め込まれていてもよい。また、これらの端子は、駆動デバイス69aの一部であってもよい。ワイヤボンディング69bは、例えば、光電気変換素子69を駆動デバイス69aに接続するとともに、駆動デバイス69aを端子やその他の配線69cに接続する導電材として利用される。
【0033】
支持体68の上の各素子は、樹脂部材(第一樹脂部材)66によって保護されている。配線69cを除く、光電気変換素子69、駆動デバイス69a、及びワイヤボンディング69bは、樹脂部材66によって完全に封止されるのが好ましい。支持体68の底面には、支持体68に設けた端子接点68’が露出した状態で設けられている。これらの端子接点68’は、例えば、支持体68に設けたビアを通じて、支持体68の表側に配置された配線69cと導通している。
【0034】
樹脂部材66の上面には、内部に向って突出した窪み66”を設けることによって、光信号の挙動、例えば、光軸を調整することができる凸レンズ66’が形成されている。凸レンズ66’の表面は球面状とされているため、凸レンズ66’は、樹脂部材67の挙動調整手段である、例えば、光軸調整ミラー63と同様に集光機能を有する。これら凸レンズ66’と光軸調整ミラー63は、協働して光信号の挙動、例えば、光軸を調整する手段として機能する。尚、本実施形態では、窪み66”を使用することとしているが、使用態様によっては、窪みの代わりに、外部に向って突出する凸部を設けてもよい。同様に、凸レンズ66’の表面は必ずしも球面とする必要はなく、使用態様によっては、非球面としてもよい。
【0035】
図5を参照して、凸レンズ66’と光軸調整ミラー63を用いた光軸調整方法の一例を説明する。
尚、図5の例では、図1等に示したものと異なり、光電気変換コネクタ20を覆うカバー52を示しているが、カバー52は必ずしも必要ではない。カバー52を設ける場合には、心線11の挿入を容易にするため、位置決め溝56と同様に、心線11の挿入側を幅広にし、また、テーパー58の対応部分にテーパー58’を設けるのが好ましい。
【0036】
光電気変換コネクタ20に設置された光ファイバ10は、一般に使用されているものと同様のものと考えてよい。即ち、中心にコア12とクラッド13から成る心線11を有し、更に、心線11の外周を覆う被覆14を有する。光ファイバ10はマルチモードファイバであるのが好ましく、材質はプラスチックであってもよいし、石英であってもよい。光ファイバ10から電気コネクタの端子への信号の伝達は、以下の手順で行われる。
心線11の先端11’から射出された光信号は、光軸61として示されているように、先ず、進行方向において多少拡がりつつ、心線11の先端11’に対向して配置された界面(受光面)57を通じて反射部60に取り込まれる。反射部60に取り込まれた光信号は、樹脂部材67に形成された光軸調整ミラー63によって、略直角に方向変換されるとともに、凸レンズ66’へ向けて集光される。凸レンズ66’によって集光された光信号は、その後、光電気変換素子69へ入射する。入射した光信号は、光電気変換素子69で電気信号に変換された後、電気コネクタの端子と光電気変換コネクタ20の支持体68の底部に露出した端子接点68’との接触を通じて、外部に取り出される。尚、反射部60の界面57は、光ファイバ10からの光の進行方向(図示矢印「A」))に対して鋭角又は鈍角に設定されているため、光ファイバ10に対する、界面57からの反射戻り光を減少させることができる。
【0037】
逆に、電気コネクタの端子から光電気変換コネクタ20に設置された光ファイバ10への信号の伝達は、上とは逆の手順で行われる。
電気コネクタの端子と、光電気変換コネクタ20の支持体68の底部に露出した端子接点68’と、の接触を通じて取り込まれた電気信号は、光軸61として示されているように、先ず、光電気変換素子69を通じて光信号に変換された後、進行方向において多少拡がりつつ、光電気変換素子69に対向して配置された凸レンズ66’へ案内される。その後、凸レンズ66’の界面(発光面)を通じて光軸調整ミラー63へ向けて集光される。その後、光信号は、樹脂部材67に形成された光軸調整ミラー63によって、略直角に方向変換されるとともに、界面57に向けて集光され、界面57を通過した後に、界面57に対向配置された心線11の先端11’から光ファイバ10へと伝達される。尚、凸レンズ66’の界面は、湾曲を伴うものではるものの、反射部60の界面57と同様に、全体としては光電気変換素子69からの光の進行方向(図示矢印「B」)に対して鋭角又は鈍角に設定されていることから、光電気変換素子69に対する、界面からの反射戻り光を減少させることができる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、樹脂部材66の凸レンズ66’や樹脂部材67の光軸調整ミラー63といった、複数の光軸調整手段が設けられていることから、これらの手段に集光、屈折、反射といった光学的な機能を持たせて、光学設計の自由度を高めることができる。
【0039】
また、光電気変換素子69と光ファイバ10の間で伝達される光信号が、樹脂部材66と樹脂部材67といった2種類(以上)の樹脂部材を通ずることから、例えば、樹脂部材67によって高精度な成形を行い、樹脂部材66については高精度な加工や微細な形状を不要にする等して、光電気変換コネクタの設計の自由度を高めることができる。
【0040】
上に説明した光電気変換コネクタは、例えば、以下の方法で製造することができる。
1. 先ず、支持体68を準備する。支持体68の上には、光電気変換素子69に加え、駆動デバイス69a、ワイヤボンディング69b、その他の配線69cが含まれる。
2. 次に、これらの素子の上部を樹脂部材(第一樹脂部材)66によって成形、好ましくは一体成形する。
3. 最後に、樹脂部材66の上部を樹脂部材(第二樹脂部材)67によって成形、好ましくは一体成形する。
【0041】
ここで樹脂部材66による成形は、支持体68の上の素子に直接的に行われてもよいし、例えば、空気層を介して間接的に行われてもよい。また、樹脂部材67による成形も、樹脂部材66に対して直接的に行われてもよいし、他の層(図示されていない)を介して間接的に行われてもよい。
但し、光電気変換素子69やワイヤボンディング69b(更に、ワイヤボンディング69bの周辺に位置する駆動デバイス69a)については、直接的な成形によって完全に封止するのが好ましい。換言すれば、樹脂部材(第一樹脂部材)66については封止に特化させるのが好ましい。封止に特化させることにより、樹脂部材66については、光電気変換素子69のような内蔵する半導体を化学的に破壊しないよう樹脂材料として不純物イオン含有量を極力抑えた材料を用いることができる。
【0042】
また、封止のために一般の射出成型を用いた場合には、例えば、ワイヤボンディングのような配線69bを、成形時の樹脂流れや圧力によって変形させてしまう危険があるが、樹脂部材66についてはトランスファー成形を用いることとして、そのような問題を解消することもできる。
【0043】
このように、樹脂部材66と樹脂部材67といった2種類(以上)の樹脂部材を用いて成形を行うことにより、光電気変換コネクタの設計の自由度は飛躍的に向上することになる。
例えば、樹脂部材66についてはトランスファー成形を用い、樹脂部材67については射出成型を用いることにより、樹脂部材67については、高精度な成形や微細な形状に適した射出成型によって挙動調整手段を形成することができる。ここで樹脂部材66のトランスファー成形には、例えば、透明熱硬化性エポキシや透明シリコーン樹脂を、一方、樹脂部材67の射出成形には、例えば、透明な熱可塑性樹脂である、ポリエーテルイミドやポリカーボネートを、それぞれ用いることができる。尚、ここでの「透明」は、伝達される光信号の波長との関係において透明であれば足り、人間の視覚の上では着色されているようなものであってもよい。従って、樹脂部材66及び樹脂部材67は透明であることは要するものの、それらに着色することもできる。
【0044】
また、樹脂部材66と樹脂部材67といった2種類(以上)の樹脂部材を用いて成形を行うことにより、樹脂部材66については樹脂部材67よりも硬化時間の長い部材を選択して、樹脂部材67については、成形時に高密度化(多数個取り)を図ることで製造時の工程時間のバランスをとることができる。
更に、樹脂部材66と樹脂部材67に、互いに異なる屈折率を設定して、これら少なくとも2種類の屈折率の組み合わせにより、光学設計の自由度を向上させることができる。
【0045】
尚、樹脂部材66と樹脂部材67はいずれも、ジェル等の不定形のものではなく、所定の硬度を有した成形品であるから、これらの双方に挙動調整手段を設けることができる。この結果、これら少なくとも2種類の挙動調整手段の組み合わせによって、光学設計上の自由度を向上させることができる。但し、樹脂部材67に高精度な成形や微細な形状を設けることができるのであれば、必ずしも樹脂部材66に挙動調整手段を設ける必要はない。
【0046】
図6に、挙動調整手段の変形例を示す。ここでは、樹脂部材66の上面に、凸レンズ66’の代わりに平坦な傾斜面70が形成されている。光軸61’として示されているように、この場合、傾斜面70は凸レンズ66’のような集光機能は有しないが、凸レンズ66’と同様に、光電気変換素子69からの光の進行方向(図示矢印「B」)に対して鋭角又は鈍角に設定されていることから、これによって、光電気変換素子69に対する、受光面からの反射戻り光を減少させることができる。
【0047】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、上に示した好ましい一つの実施形態では、樹脂部材66の材質等と樹脂部材67の材質等は互いに異なるものとして説明したが、例えば、樹脂部材66、67を別々の成形過程で製造したことによって屈折率の相異や成分の相異が生ずるのであれば、それらの材質等は同じであってもよい。
従って、ここに開示された実施形態は例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって定められるべきであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
光電気変換コネクタに広く用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 光ファイバ
20 光電気変換コネクタ
56 位置決め溝
57 界面
60 反射部
61 光軸
63 光軸調整ミラー(反射面)
66 樹脂部材(第一樹脂部材)
66’ 反射面
67 本体部(第二樹脂部材)
68 支持体
69 光電気変換素子
69b ワイヤボンディング
図1
図2
図3
図4
図5
図6