【課題】外被把持部材を引留用ハウジングに係止させるラッチ構造を有する光コネクタにおいて、引留用ハウジングから外被把持部材を取り外すための作業スペースをコンパクトに抑えることが可能な工具を提供する。
【解決手段】光ファイバケーブル70の端末に固定された外被把持部材20を収納した引留用ハウジング41から外被把持部材20を取り外す外被把持部材取り外し工具1であって、引留用ハウジング41は、一対の側板部43b、43bを有し、側板部43b、43bには、それぞれ、外被把持部材20の係止受け部に係止可能な係止部を有するラッチ48が形成されている。取り外し工具1は、基体部2と、基体部2から延出する一対の解除操作部3,3と、を有する。解除操作部3,3は、引留用ハウジング41内に挿入されることによって、ラッチ48を押圧し外側方に変位させて係止を解除する。
前記解除操作部の先端部には、前記解除操作部の前記引留用ハウジング内への挿入に伴って前記ラッチを外側方に押圧することによって前記ラッチを外側方に変位させる押圧部が形成される請求項1に記載の外被把持部材取り外し工具。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の外被把持部材取り外し工具(以下、単に取り外し工具ともいう)の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1(A)は、本発明の一実施形態である取り外し工具1、および取り外し工具1を適用可能な光コネクタ100の側面図である。
図1(B)は、取り外し工具1および光コネクタ100の分解斜視図である。
図1(A)および
図1(B)に示すように、光コネクタ100(光ファイバ接続ユニット)は、コネクタ本体10(接続ユニット本体)と、コネクタ本体10の後側において光ファイバケーブル70の端末を引き留める引き留め部40とを備えている。光コネクタ100は、例えば、現場組立形の光コネクタである。
【0010】
コネクタ本体10は、本体ハウジング11と、本体ハウジング11に収容されたクランプ部付きフェルール60とを備えている。
クランプ部付きフェルール60は、光ファイバ62(内蔵光ファイバ62)を内挿固定したフェルール61と、クランプ部63(光ファイバ接続器)とを有する。内蔵光ファイバ62は、フェルール61から後側に突出している。
クランプ部63は、一対の素子により内蔵光ファイバ62と光ファイバ73とが突き合わせ接続された状態で把持固定できる。
【0011】
コネクタ本体10内には、光ファイバケーブル70の端末から引き出された光ファイバ73(挿入光ファイバ)が挿入され、クランプ部63内において内蔵光ファイバ62と突き合わせ接続される。符号Pは光ファイバ73と内蔵光ファイバ62との接続部である。
以下、クランプ部付きフェルール60のフェルール61の先端方向(
図1(A)における左方)を前方と呼び、その逆方向を後方と呼ぶことがある。
【0012】
引き留め部40は、光ファイバケーブル70の端末を把持し固定する外被把持部材20と、外被把持部材20を収納する引留用ハウジング41とを有する。
引留用ハウジング41は、コネクタ本体10に挿入されるストップリング部42と、ストップリング部42から後側に延出する角筒形の把持部材受け部43とを有する。
【0013】
把持部材受け部43は、前後方向に延びる細長板状の底板部43aと、底板部43aの両側縁に立設された一対の側板部43b,43bと、側板部43b,43bの上端間に設けられた天板部43cとを備えた断面矩形の筒状とされている。
把持部材受け部43は、底板部43a、一対の側板部43b、43b及び天板部43cで囲まれた内部空間44に、外被把持部材20を収納可能である。把持部材受け部43は、後端側の開口である挿入口45を通して外被把持部材20を収納および取出し可能である。
【0014】
図1(B)および
図5(A)に示すように、一対の側板部43b、43bには、それぞれ矩形の開口部47,47が形成されている。開口部47,47の前縁47a,47aには、後側に延出するラッチ48,48が形成されている。ラッチ48,48は、開口部47,47の前縁47a,47aから後側に延出する細長板状のラッチ本体49,49と、ラッチ本体49,49の延出方向の先端部に設けられた係止爪部50,50とを有する。
側板部43b、43bは、後述する外被把持部材20の側壁部22、23の外側面側(側壁部22、23の配列方向外側)に配される。
【0015】
ラッチ本体49,49は把持部材受け部43の幅方向(一対の側板部43b、43bの配列方向)に弾性的に曲げ変形可能である。係止爪部50,50(係止部)は、側板部43b、43bの内面より内方に突出して形成されている。係止爪部50は、外被把持部材20の係止凹部28(係止受け部)の一端縁28a(または他端縁28b)に係合可能である。係止爪部50は、係止凹部28の一端縁28a(または他端縁28b)に係合することによって把持部材受け部43に収納された外被把持部材20の後方移動を規制することができる。
係止爪部50の前面50aは、前方に向く面であり、係止凹部28の一端縁28aと係合する係合面である。係止爪部50の前面50aは、例えば、前方に向かうほど突出高さを増す傾斜面であってもよいし、ラッチ本体49の内面に垂直な面であってもよい。係止爪部50の後面50bは、例えば、後方に向かうほど突出高さを減じる傾斜面であってよい。
【0016】
図1(B)および
図5(B)に示すように、天板部43cの上面43c1(外面)は平坦面である。
天板部43cには、幅方向(Y方向)に間隔をおいて一対の挿入スリット51,51が形成されている。挿入スリット51,51は、後述する取り外し工具1の解除操作部3,3および係合凸部4,4を挿入するための開口部であり、天板部43cの長さ方向(X方向)に延びて形成されている。
挿入スリット51,51は、幅方向(Y方向)の中央よりも一側方側および他側方側の位置にそれぞれ形成されており、少なくとも一部が係止爪部50,50と上下方向(Z方向)に重なる。
天板部43cには、幅方向(Y方向)の中央位置に、把持部材受け部43内の光ファイバ73を目視可能な確認用スリット52が形成されている。確認用スリット52は、天板部43cの長さ方向(X方向)に延びて形成されている。確認用スリット52を通して、光ファイバ73に生じた撓みを確認することができる。
【0017】
把持部材受け部43の前部には、内部空間44に面して、その後端から前側へ向かってテーパ状に窪むテーパ状凹所43dが形成されている。テーパ状凹所43dの前端部には、光ファイバ73をコネクタ本体10内に導くためのファイバ導入孔42aの後端が開口している。テーパ状凹所43dは、光ファイバ73の先端を導いてファイバ導入孔42aへの挿入を円滑にする。
【0018】
図1(B)に示すように、天板部43cの後部の下面(内面)には、内部空間44に収納された外被把持部材20に把持された光ファイバケーブル70の端末を押圧する押圧部46が下方に突出して形成されている。
【0019】
図3に示すように、外被把持部材20は、底壁部21と、底壁部21上に互いに間隔をあけて立設される底壁部21の両側縁にそれぞれ形成された一対の側壁部22、23とを有する。外被把持部材20は、例えばプラスチック製の一体成形品である。
底壁部21は、例えば平面視長方形の板状に形成される。
各側壁部22、23は、底壁部21の上面側に、底壁部21に対して垂直に、上方(Z方向)に突出して形成されている。一対の側壁部22、23は、それぞれ底壁部21の一方および他方の側縁に沿って、底壁部21の全長にわたって形成されている。
【0020】
一対の側壁部22、23の間には、溝部24が画成される。溝部24の長手方向(X方向)の両端は開放(開口)されている。
溝部24は、その長手方向の一端部に形成されて第1光ファイバケーブル71を嵌め込む第1ケーブル溝24Aと、溝部24の長手方向の他端部に形成されて第2光ファイバケーブル72を嵌め込む第2ケーブル溝24Bと、を有する。
【0021】
第2光ファイバケーブル72は、第1光ファイバケーブル71に比べて断面サイズが小さい。
第1ケーブル溝24Aは、底壁部21の長手方向の一端21h(
図3の手前側の端)に達して形成され、この一端21hで開放(開口)されている。第1ケーブル溝24Aは、底壁部21の長手方向(X方向)に延びて形成されている。
第2ケーブル溝24Bは、底壁部21の長手方向の他端21i(
図3の奥側の端)に達して形成され、この他端21iで開放(開口)されている。第2ケーブル溝24Bは、底壁部21の長手方向に延びて形成されている。
【0022】
溝部24の長手方向に直交する第2ケーブル溝24Bの断面サイズは第1ケーブル溝24Aの断面サイズより小さい。このため、第1ケーブル溝24Aには、第1光ファイバケーブル71の端末を嵌め込むことができる。第2ケーブル溝24Bには、第2光ファイバケーブル72の端末を嵌め込むことができる。
光ファイバケーブル70(71,72)の端末と、この端末に固定した外被把持部材20とを併せて把持部材付きケーブル端末76ということがある。
【0023】
第1ケーブル溝24Aの一対の内側面をなす側壁部22、23の内面22a、23aには、それぞれ第1ケーブル溝24Aの深さ方向に延在する把持爪25,25(以下、第1把持爪25とも呼ぶ)が突設されている。第1把持爪25は、例えば突出方向に徐々に幅が狭くなる断面略三角形の突条である。
第1把持爪25,25は、第1ケーブル溝24A(溝部24)の長手方向に互いに間隔をあけて複数配列されている。第1把持爪25,25は、第1ケーブル溝24Aを介して互いに対向する位置に配されている。
【0024】
第2ケーブル溝24Bの一対の内側面をなす側壁部22、23の内面22b、23bには、それぞれ第2ケーブル溝24Bの深さ方向に延在する把持爪26,26(以下、第2把持爪26ともいう)が突設されている。第2把持爪26は、例えば突出方向に徐々に幅が狭くなる断面略三角形の突条である。
第2把持爪26,26は、第2ケーブル溝24B(溝部24)の長手方向に互いに間隔をあけて複数配列されている。第2把持爪26,26は、第2ケーブル溝24Bを介して互いに対向する位置に配されている。
第1ケーブル溝24Aを介して互いに対面する内面22a、23aを第1内側面22a、23aとも呼び、第2ケーブル溝24Bを介して互いに対面する内面22b、23bを第2内側面22b、23bとも呼ぶことがある。
【0025】
第1ケーブル溝24Aの第1内側面22a、23a間の離隔距離(第1ケーブル溝24Aの溝幅W1)は、第1光ファイバケーブル71の幅寸法に対して同等または若干大きく設定されている。また、第1ケーブル溝24Aの溝幅方向に互いに対向する第1把持爪25間の離隔距離は、第1光ファイバケーブル71の幅寸法に対して若干小さく設定されている。
第2ケーブル溝24Bの溝幅W2は、第1ケーブル溝24Aの溝幅W1よりも小さい。第1ケーブル溝24A及び第2ケーブル溝24Bの溝幅中央は、互いに一致する。
【0026】
第1ケーブル溝24Aに押し込んだ第1光ファイバケーブル71の外被75には、その両側から第1把持爪25が食い込む。第1光ファイバケーブル71は、第1把持爪25によって両側から把持されることで外被把持部材20に固定される。第1把持爪25は、第1光ファイバケーブル71の外被把持部材20に対するケーブル引き留め力の確保、すなわち、第1光ファイバケーブル71の外被把持部材20に対する後側(溝部24の一端側)への移動抵抗力の確保に有効に寄与する。
【0027】
第2ケーブル溝24Bの第2内側面22b、23b間の離隔距離(第2ケーブル溝24Bの溝幅W2)は、第2光ファイバケーブル72の幅寸法に対して同等または若干大きく設定されている。また、第2ケーブル溝24Bの溝幅方向に互いに対向する第2把持爪26間の離隔距離は、第2光ファイバケーブル72の幅寸法に対して若干小さく設定されている。
【0028】
第2ケーブル溝24Bに押し込んだ第2光ファイバケーブル72の外被75には、その両側から第2把持爪26が食い込む。第2光ファイバケーブル72は、第2把持爪26によって両側から把持されることで外被把持部材20に固定される。第2把持爪26は、第2光ファイバケーブル72の外被把持部材20に対するケーブル引き留め力の確保、すなわち、第2光ファイバケーブル72の外被把持部材20に対する後側(溝部24の他端側)への移動抵抗力の確保に有効に寄与する。
【0029】
外被把持部材20の溝部24は、第1ケーブル溝24Aと第2ケーブル溝24Bとの間に、第1光ファイバケーブル71または第2光ファイバケーブル72の光ファイバ73が収容されるファイバ収容溝30を有する。
ファイバ収容溝30は、底壁部21の長手方向に延びて形成され、第1ケーブル溝24Aと第2ケーブル溝24Bとを連通させている。ファイバ収容溝30は、第1ケーブル溝24Aおよび第2ケーブル溝24Bより幅狭に形成されている。
ファイバ収容溝30は、上方に開放された導入部30aと、導入部30aより幅が狭い主溝部30bとを有する。主溝部30bは、導入部30aの底部から下方に向かって形成されている。
【0030】
図3および
図5(A)に示すように、外被把持部材20の幅方向外側に向く側壁部22、23の外面のうち側壁部22、23の長手方向の略中央には、係止凹部28,28が形成されている。係止凹部28,28は、側壁部22,23の上面及び下面に開口する。すなわち、係止凹部28,28は、側壁部22,23の全高さ方向にわたって形成されている。
係止凹部28は側壁部22、23の外面から外被把持部材20の幅方向内側に窪む一定深さの凹部であり、引留用ハウジング41のラッチ48の係止爪部50に係止する。
【0031】
係止凹部28のうち第2ケーブル溝24B側に位置する一端縁28aは、第1光ファイバケーブル71に取り付けられた外被把持部材20が引留用ハウジング41に収納された状態で、ラッチ48の係止爪部50の前面50aに係止可能である。一端縁28aは、例えば、係止凹部28の深さ方向に向うにしたがって前方に傾斜する傾斜面であってもよいし、係止凹部28の深さ方向に平行する面(側底面28cに垂直な面)であってもよい。
係止凹部28のうち第1ケーブル溝24A側に位置する他端縁28bは、第2光ファイバケーブル72に取り付けられた外被把持部材20が引留用ハウジング41に収納された状態で、ラッチ48の係止爪部50の前面50aに係止可能である。他端縁28bは、例えば、一端縁28aと同様の傾斜面や係止凹部28の深さ方向に平行する面であってよい。
【0032】
係止凹部28のX方向の寸法は、後述する取り外し工具1の解除操作部3(
図4及び
図5(B)参照)の同方向の寸法より大きくされていることが望ましい。これによって、係止凹部28の後部に挿入された解除操作部3が外被把持部材20に対して前方移動することにより、解除操作部3の前縁によって係止爪部50の後面50bを前方に押圧して外側方に変位させることもできる。
【0033】
なお、図示例では、把持部材受け部43に形成された凸部である係止爪部50(係止部)が、外被把持部材20の係止凹部28(係止受け部)に係止する構造を採用したが、逆に、外被把持部材20に形成された凸部(係止受け部)が把持部材受け部43に形成された凹部(係止部)に係止する構造を採用してもよい。
【0034】
側壁部22、23の外面には、係止凹部28,28に対して長手方向(X方向)の一方側の位置に第1係合凹部31,31が形成されている。
第1係合凹部31,31は、側壁部22、23の上縁を含む位置に形成された一定深さの凹部であって、
図4に示す姿勢(第1ケーブル溝24Aを後方に向けた姿勢)において、第1係合凹部31,31は、側壁部22、23の前部に形成されている。そのため、第1係合凹部31,31は係止凹部28,28よりも前方に、係止凹部28,28に対して間隔をあけて位置している。
【0035】
第1係合凹部31,31が側壁部22、23の上部に形成されているのに対し、ラッチ48の下部は第1係合凹部31より低い位置にあるため、ラッチ48の係止爪部50が係合凹部31に入り込むことはできない。
第1係合凹部31の後端に位置する端縁31aは、後述する取り外し工具1の係合凸部4の後縁4aに係合可能である。端縁31aは、例えば、第1係合凹部31の側底面31bに垂直な面とすることができる。
【0036】
側壁部22、23の外面には、係止凹部28,28に対して長手方向の他方側の位置に第2係合凹部32,32が形成されている。
第2係合凹部32,32は、側壁部22、23の上縁を含む位置に形成された一定深さの凹部であって、
図4に示す姿勢(第1ケーブル溝24Aを後方に向けた姿勢)において、第2係合凹部32,32は、側壁部22、23の後部に形成されている。そのため、第2係合凹部32,32は係止凹部28,28よりも後方に、係止凹部28,28に対して間隔をあけて位置している。
第2係合凹部32,32は、前述の第1係合凹部31,31と同様に、ラッチ48の係止爪部50が入り込むことができない高さ位置に形成されている。
【0037】
外被把持部材20を、第2ケーブル溝24Bを後方に向けた姿勢とすると、第2係合凹部32の前端に位置する端縁32aは、取り外し工具1の係合凸部4の後縁4aに係合可能である。端縁32aは、例えば、第2係合凹部32の側底面32bに垂直な面とすることができる。
【0038】
次に、光ファイバケーブル70(第1光ファイバケーブル71)の端末への光コネクタ100の取付け方法を説明する。
図1(A)および
図1(B)に示すように、光コネクタ100のクランプ部付きフェルール60のクランプ部63の一対の素子の間に介挿片(図示略)を介挿した介挿工具付き光コネクタを用意する。
第1光ファイバケーブル71の端末を第1ケーブル溝24Aに嵌め込むことで、外被把持部材20を第1光ファイバケーブル71の端末に取り付ける。光ファイバ73は、ファイバ収容溝30内を通り、第2ケーブル溝24Bを経てさらに前方に延出する。これにより、把持部材付きケーブル端末76を得る。
【0039】
図1(B)に示すように、把持部材付きケーブル端末76を、挿入口45から把持部材受け部43内に挿入する。この際、外被把持部材20が、ラッチ48の係止爪部50の後面50b(
図5(A)参照)に当接してラッチ48が外側方に押し広げられる。
図5(A)に示すように、外被把持部材20をさらに前方移動させると、外被把持部材20の全体が把持部材受け部43に収納されるとともに、係止爪部50が係止凹部28に達し、ラッチ48の弾性的な反発力によって係止爪部50が係止凹部28に挿入されて一端縁28aに係止する。
これによって、外被把持部材20が把持部材受け部43に固定される。この外被把持部材20の位置を収納位置と呼ぶ。
【0040】
図1(A)および
図5(A)に示すように、光ファイバケーブル70の端末から突出する光ファイバ73は、ファイバ導入孔42aからクランプ部付きフェルール60のクランプ部63内に挿入され、光ファイバ73の裸光ファイバ73aが内蔵光ファイバ62に突き合わせ接続される。
【0041】
外被把持部材20が収納位置に達すると、把持部材受け部43内で光ファイバ73が撓み変形する。これによって、光ファイバ73には十分な突き当て力が与えられる。
【0042】
図1(A)に示すように、光ファイバ73が内蔵光ファイバ62に突き合わせ接続された後に、クランプ部63から介挿片(図示略)を抜き去る。これによって、クランプ部63の一対の素子が閉じ、内蔵光ファイバ62と光ファイバ73とが突き合わせ接続された状態で把持固定される。そのため、クランプ部63の内蔵光ファイバ62に対する光ファイバ73(裸光ファイバ73a)の突き合わせ接続状態を安定に保つことができる。
以上により、第1光ファイバケーブル71の端末への光コネクタ100の取り付けが完了する。
【0043】
なお、第2光ファイバケーブル72の端末に光コネクタ100を取り付ける場合には、第1光ファイバケーブル71に代えて、第2光ファイバケーブル72の端末を第2ケーブル溝24Bに嵌め込むことで、外被把持部材20を第2光ファイバケーブル72の端末に取り付ける。
その他の手順は、第1光ファイバケーブル71の端末に光コネクタ100を取り付ける場合と同様である。
【0044】
次に、取り外し工具1を用いて、外被把持部材20を引留用ハウジング41から取り外す方法を説明する。
まず、取り外し工具1について、
図2および
図4を参照して説明する。
図2は取り外し工具1の斜視図である。
図4は取り外し工具1と外被把持部材20との側面図である。
【0045】
以下の説明においては、
図2に示すXYZ座標系を参照することがある。詳しくは、板状の基体部2の厚さ方向に直交する面内で一対の解除操作部3,3が並ぶ方向をY方向とする。基体部2の厚さ方向及びY方向に直交する方向をX方向とする。X方向およびY方向と直交する方向をZ方向とする。Z方向を上下方向ともいう。基体部2に対して解除操作部3,3側を下側とする。なお、ここでいう上下は、取り外し工具1の使用時の向きを限定しない。
【0046】
図1及び
図2に示すように、取り外し工具1は、基体部2と、基体部2の下面2aから延出する一対の解除操作部3,3と、基体部2の下面2aから突出する一対の係合凸部4,4とを有する。
基体部2は、例えば平面視略矩形の板状とされる。
図2に示す基体部2は、平面視長方形とされている。
基体部2の上面2b(外面)には、滑り止め凹凸部5が形成されている。滑り止め凹凸部5は、基体部2の長さ方向(X方向)の中央を含む一部領域に、幅方向(Y方向)に延在する複数の溝5aと複数の突条5bとからなる。
滑り止め凹凸部5は、後述するように、取り外し工具1及び外被把持部材20をX方向にスライド移動させる際の、作業者の手指等に対する基体部2の上面2bの摩擦抵抗を高めることができる。
【0047】
基体部2の略中央には、把持部材受け部43内の光ファイバ73を目視可能な確認用窓7が形成されている。確認用窓7によって、光ファイバ73に生じた撓みを確認することができる。
【0048】
解除操作部3,3は、基体部2の下面2aに対して垂直に、下方(Z方向)に延出して形成されている。解除操作部3,3は断面略矩形の柱状に形成されている。2つの解除操作部3,3は、Y方向に間隔をあけて配されている。
解除操作部3,3の先端部には、解除操作部3,3の延出方向に対して傾斜する押圧面6,6が形成されている。
押圧面6は、解除操作部3の先端面3aから、基体部2の幅方向外側に向く解除操作部3の外側面3bにかけて形成された外側傾斜面6aと、解除操作部3の先端面3aから前面3cにかけて形成された前側傾斜面6bと、からなる。前側傾斜面6bは、外側傾斜面6aに隣接した隣接傾斜面である。
【0049】
外側傾斜面6aは、解除操作部3の延出方向の先端側に向かうほど内側方(基体部2の幅方向中央に近づく方向)寄りに傾斜している。前側傾斜面6bは、解除操作部3の延出方向の先端側に向かうほど後方寄りに傾斜している。
そのため、外側傾斜面6aと前側傾斜面6bとの境界である押圧縁部6c(押圧部)は、解除操作部3の延出方向の先端側に向かうほど後方寄り、かつ内側方寄りに傾斜している。
押圧縁部6cは、後述するように、解除操作部3が引留用ハウジング41内に挿入されるのに伴ってラッチ48の係止爪部50が外側方(引留用ハウジング41の幅方向外向きの方向)に変位するように係止爪部50を押圧する(
図5及び
図6を参照)。
【0050】
係合凸部4,4は、基体部2の下面2aに対して垂直に、下方(Z方向)に突出して形成されている。係合凸部4,4は断面略矩形に形成される。2つの係合凸部4,4は、Y方向に間隔をあけて配されている。
係合凸部4,4は、解除操作部3,3よりも前方に位置する。係合凸部4は、外被把持部材20の第1係合凹部31に係合可能であり、第1係合凹部31に係合することによって外被把持部材20を後方に押圧可能となる(
図6及び
図7を参照)。
【0051】
係合凸部4の(基体部2の下面2aからの)突出寸法は、解除操作部3の(下面2aからの)延出寸法より小さいことが望ましい。これによって、係合凸部4と解除操作部3とが目視により識別しやすくなるため、作業者が、外被把持部材20及び引留用ハウジング41に対する取り外し工具1の姿勢を把握しやすくなる。そのため、取り外し工具1の前後を取り違えることによる誤操作を未然に防ぐことができる。
【0052】
次いで、取り外し工具1を用いて外被把持部材20を引留用ハウジング41から取り外す操作について説明する。
図1(B)に示すように、取り外し工具1を引留用ハウジング41に向けて下降させる。これにより、
図5(A)および
図5(B)に示すように、解除操作部3は、挿入スリット51を通して把持部材受け部43内に挿入され、ラッチ48の係止爪部50に当接する。
詳しくは、
図5(A)の右上の拡大図に示すように、解除操作部3の押圧面6の押圧縁部6cは係止爪部50の後面50bの上縁50b1に当接する。この拡大図においては、解除操作部3について、係止爪部50に当接した高さ位置における断面を示す。
図2に示すように、押圧縁部6cは、解除操作部3の延出方向の先端側に向かうほど後方寄り、かつ内側方寄りに傾斜しているため、
図5(A)の拡大図に示すように、比較的後方寄りかつ内側方寄りの位置で係止爪部50の後面50bに当接する。
【0053】
その後、
図6(A)および
図6(B)に示すように、基体部2を下方に押圧することなどによって、取り外し工具1をさらに下降させると、
図6(A)の右上の拡大図に示すように、押圧縁部6cは、その傾斜に従って、比較的前方寄りかつ外側方寄りの位置で係止爪部50に当接するようになるため、係止爪部50を斜め前方に押圧して外側方に変位させる。
これにより、解除操作部3の先端部は外被把持部材20とラッチ48との間に割り入れられる。
【0054】
押圧縁部6cが当接する係止爪部50の後面50bは後方に向かうほど外側方寄りとなる傾斜面であるため、押圧縁部6cから受ける斜め前方の力は、後面50bに効率よく作用する。
係止爪部50の外側方への変位によって、係止凹部28の一端縁28aに対する係止爪部50の係止が解除される。
【0055】
図6(B)に示すように、取り外し工具1の下降に伴って、係合凸部4は第1係合凹部31に挿入され、端縁31aに係合可能となる。
図6(A)および
図6(B)に矢印で示すように、手指等を基体部2の上面2bに当てて基体部2を後方に押圧する。この際、手指等を当てる箇所を滑り止め凹凸部5とすれば、基体部2に対する後方への押圧力を高め、外被把持部材20の取り外し操作の確実性を高めることができる。
基体部2が後方に押圧されると、係合凸部4が第1係合凹部31の端縁31aに係合するとともに、係合凸部4によって第1係合凹部31(外被把持部材20)の端縁31aに後方への力が加えられる。
【0056】
図7(A)および
図7(B)に示すように、係合凸部4によって第1係合凹部31の端縁31aに後方への力が加えられることにより、取り外し工具1は後方に移動する。この際、取り外し工具1は、基体部2の下面2aが引留用ハウジング41の天板部43cの上面43c1に当接した状態で、上面43c1上をスライド移動してもよい。
取り外し工具1の移動とともに、外被把持部材20は後方(取り外し方向)に移動する。これによって、外被把持部材20を、挿入口45を通して把持部材受け部43から取り出すことができる。
【0057】
以上説明したように、上記取り外し工具1によれば、解除操作部3を引留用ハウジング41内に挿入し、外被把持部材20とラッチ48との間に割り入れるだけで、外被把持部材20の係止凹部28に対するラッチ48の係止爪部50の係止が解除されるため、外被把持部材20を引留用ハウジング41から取り外すことができる。そのため、外被把持部材20を取り外す際には、引留用ハウジング41の外側(上側)に1つの作業スペースのみを確保すればよい。すなわち、外被把持部材20を取り外すための作業スペースをコンパクトに抑えることができる。したがって、外被把持部材20の取り外し作業の困難性を軽減できる。
【0058】
また、上記取り外し工具1によれば、解除操作部3を引留用ハウジング41内に挿入するだけで、解除操作部3の先端部に形成された押圧縁部6cがラッチを外側方に押圧してラッチを外側方に変位させる。したがって、外被把持部材20の係止凹部28に対するラッチ48の係止爪部50の係止を容易に解除できる。
また、上記取り外し工具1によれば、押圧縁部6cが解除操作部3の延出方向に対して傾斜するように形成され、押圧縁部6cは、その傾斜に従ってラッチ48を押圧し外側方に変位させるので、ラッチ48の変位をスムーズに行うことができる。
【0059】
また、上記取り外し工具1は、係合凸部4を有するため、解除操作部3によってラッチ48の係止を解除した状態に保持しながら、係合凸部4によって外被把持部材20を取り外し方向(後方)に移動させることができる。
そのため、引留用ハウジング41からの外被把持部材20の取り外しを、取り外し工具1を引留用ハウジング41に挿入して後方移動させるという一連の操作により容易に実現できる。
【0060】
外被把持部材20と、光コネクタ100とは、光コネクタキット(光ファイバ接続ユニットキット)を構成する。
【0061】
本発明の技術的範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
解除操作部3及び係合凸部4の数は、少なくとも外被把持部材20の係止凹部28、及び引留用ハウジング41の係止爪部50の数に対応すればよく、例えば、1でもよいし、3以上でもよい。
【0062】
図1等に示す外被把持部材20は、溝部24の一端部に形成された第1ケーブル溝24Aと、他端部に形成された第2ケーブル溝24Bとを有するが、外被把持部材は、ケーブル溝の一方の端部にケーブル溝がない構成であってもよい。
図8に示す外被把持部材120では、溝部24の他端部(
図8において左側の部位)には第2ケーブル溝を設けていない。溝部24の他端部の側壁部22、23間の空間33は、第1ケーブル溝24Aに把持された光ファイバケーブルの端末から引き出された挿入光ファイバが通る光ファイバ配線空間である。
【0063】
上記実施形態では、
図1(A)に示すように、取り外し工具1を光コネクタ100に適用したが、本発明の取り外し工具の適用先は、光コネクタに限らない。例えば、
図1(A)に示すクランプ部63に代えて、メカニカルスプライスなどの光ファイバ接続器を用いてもよい。
図9に示す光ファイバ接続ユニット110は、メカニカルスプライス83(光ファイバ接続器)を有する接続ユニット本体80と、引き留め部40とを備えている。メカニカルスプライス83は、一方側から挿入された光ファイバ82と、他方側から挿入された光ファイバ73とを突き合わせ接続することができる。
また、上記実施形態では、引留用ハウジング41に対する解除操作部3の挿入方向は下方(ラッチ48の延出方向に対し垂直な方向)であるが、挿入方向は、これに限らず、例えばラッチ48の延出方向に交差する方向としてよい。