【課題】従来の同軸コネクタでは、実装の際にディップ端子に付ける半田量の違い、同軸コネクタを実装する基板の厚みの違いによって、同軸コネクタと基板とのインピーダンス整合が乱れ、高周波信号の反射特性が悪化する等の問題があった。
【解決手段】外部導体と、一方の端部に相手側コネクタの中心端子と接続するための接触部を備え、他方の端部に基板の配線に接続するための実装部を備える中心端子と、該中心端子を保持して前記外部導体に収容される絶縁体とを含む同軸コネクタであって、実装部の少なくとも端面を含む先端部分を基板に対して垂直になるように構成し、先端部分を除いた実装部の一部分に、半田バリア部を形成することで、実装部の先端部分よりも接触部側に付けられる半田の吸い上がりを防止して、半田量及び基板厚に影響を受けないインピーダンス整合の調整が容易に可能な同軸コネクタを提供する。
前記中心端子は、前記中間部が折り曲げられて階段状に形成され、前記実装部の他に基板に対して垂直となる部分を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の同軸コネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、音響・映像(AV)機器等の電子機器に搭載されたデータ処理装置の能力が向上し、電子機器において膨大なデータを処理できるようになった。それに伴って、大量のデータが電子機器間を送受信されるようになった。例えば、デジタルテレビ放送用のテレビ、カメラ及び編集機器等の機器間を送受信されるデータでは、従来のフルハイビジョンテレビのデータ転送速度は3Gbpsであったが、2011年頃から登場した4Kテレビのデータ量は大幅に増加するので、データ転送速度を6Gbpsや12Gbpsに高めることが検討されている。
【0007】
そのためには、同軸コネクタ及び同軸ケーブルは、従来よりも高い周波数の電気信号を伝送しなければならず、特に、電子機器と同軸ケーブルを接続する同軸コネクタにおける、高周波の信号の反射特性等による損失を抑えるために、同軸コネクタ自体のインピーダンス整合を行う必要がある。同軸コネクタ自体に生じるインピーダンスは、同軸コネクタを構成する中心端子と外部導体との間の距離等に依存して変化する。
【0008】
したがって、同軸コネクタのインピーダンス整合をとるためには、中心端子と外部導体の距離を可能な限り一定に保つ必要がある。しかしながら、上述したような従来型の同軸コネクタでは、中心端子の実装部は外部導体の外側にあるので、実装先の基板を考慮してインピーダンス整合を調整しなければならない。そのため、同軸コネクタの中心端子の実装部を基板に実装する際に使用する半田の量や基板の厚さの違いによって、インピーダンスにばらつきが生じ、インピーダンス整合をとることが非常に困難になるという課題が生じる。
【0009】
例えば、
図11に示すような、中心端子の実装部93(ディップ端子)を備える同軸コネクタ90では、実装の際にディップ端子に付ける半田の量の違い、同軸コネクタを実装する基板の厚さの違いによって、同軸コネクタ90と基板100とのインピーダンス整合が乱れ、高周波信号の反射特性が悪化するという問題が生じ得る。ディップ端子への半田付けは、端子の周囲に半田のフィレットを形成することになるので、端子と外部導体の距離を常に一定することはできず、同じ型の同軸コネクタでも、基板に実装した際に、半田量よってインピーダンス整合等の特性に、ばらつきが生じる。
【0010】
また、ディップ端子を差し込む基板の厚みに違いがあると基板内に隠れたディップ端子の長さと基板から露出したディップ端子の長さが異なることによる影響や、基板内層の銅箔の影響を考慮してインピーダンス整合をとる必要があり、同じ型の同軸コネクタであってもそれぞれの基板に対する特性のばらつきを抑えることは困難である。
【0011】
図12は、
図11に示すような従来型の同軸コネクタを用いて、半田量の違いによる反射特性の差(
図12(a))及び、基板厚の違いによる反射特性の差(
図12(b))を示すグラフである。グラフの縦軸は、電圧定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)であり、高周波の伝送線路上の進行波と反射波の関係を表す値である。電圧定在波比が1に近いほど性能が良くインピーダンス整合がとれていることを示す。一般的には、この比が1.4以内であれば許容範囲内である。グラフの横軸は、同軸コネクタを伝送する信号の周波数を表す。
【0012】
図12(a)は、基板厚tが1.6mmの基板に半田の量を多くして実装した同軸コネクタに伝送させる信号の周波数を変化させて測定した電圧定在波比の変化を表すグラフと、基板厚tが1.6mmの基板に半田の量を少なくして基板に実装した同軸コネクタに対して、信号の周波数を変化させて測定した電圧定在波比の変化を表すグラフを示す。
図12(b)は、半田の量を一定にし、基板厚tが0.8mm、1.0mm及び1.6mmの基板にそれぞれ実装した同軸コネクタに対して、信号の周波数を変化させて測定した電圧定在波比の変化を表す各グラフを示す。
【0013】
図12(a)及び(b)に示されるグラフから明らかなように、半田量の違い及び基板厚の違いによって、基板に実装された同軸コネクタの特性(電圧定在波比)に大きなばらつきが生じる。このばらつきが、同軸コネクタを基板に実装する際に、インピーダンス整合の調整をより困難なものにする。
【0014】
以上のような課題を解決するために、外部導体と、一方の端部に相手側コネクタの中心端子と接続するための接触部を備え、他方の端部に基板の配線に接続するための実装部を備える中心端子と、該中心端子を保持して前記外部導体に収容される絶縁体とを含む同軸コネクタであって、実装部の少なくとも先端部分を基板に対して垂直になるように構成し、先端部分を除いた実装部の一部分に、ニッケルバリア部等の半田バリア部を形成することで、実装部の先端部分に付けられる半田の吸い上がりを防止し、さらに、実装部の先端部分の幅を狭くする(断面積を狭くする)こと、又は、絶縁体で支持される実装部と当該絶縁体との隙間を該絶縁体の突起部で狭くすることで、先端部分に半田を付けた際にフィレットが形成されても、先端部分の周囲に半田を留めて、実装部の幅の範囲内に半田を収めることができ、結果として、半田量及び基板厚に影響を受けず、かつ、外部導体と中心端子の距離を一定に保つことができ、インピーダンス整合の調整が容易に可能な同軸コネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る同軸コネクタの1つの実施形態として、同軸コネクタは、
外部導体と、中心端子と、該中心端子を保持して前記外部導体に配される絶縁体とを含み、
前記外部導体は、相手側コネクタと接続するための嵌合部と、基板に実装するための基部を含み、
前記中心端子は、一方の端部に相手側コネクタと接続するための接触部を備え、他方の端部に基板の配線に接続するための実装部を備え、
前記実装部は、軸方向に延びる前記中心端子の中間部を折り曲げて、前記基板に対して垂直に端部が向くように構成され、
前記実装部は、少なくとも前記実装部の端面を含む先端部分が、前記実装部の前記中間部との連結部分に比べて断面積を小さくして形成されたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る同軸コネクタの好ましい実施形態として、前記実装部は、前記先端部分を除いた部分に、半田低濡れ性の半田バリア部を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る同軸コネクタの好ましい実施形態として、前記実装部の前記先端部分は、基板と接続する端部から断面積が狭くなるように形成されたことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る同軸コネクタの好ましい実施形態として、前記実装部の前記先端部分は、表面に凹部又は貫通孔を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る同軸コネクタの好ましい実施形態として、前記絶縁体は、前記中心端子の前記接触部又はその近傍部分を支持する先端支持部と、前記実装部又はその近傍部分を支持する後端支持部とを含み、
前記中心端子は、前記先端支持部及び前記後端支持部によって前記外部導体内に固定され、前記先端支持部及び前記後端支持部との接触部分以外の部分は、前記絶縁体及び前記外部導体に接触しないことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る同軸コネクタの好ましい実施形態として、前記中心端子は、前記中間部が折り曲げられて階段状に形成され、前記実装部の他に基板に対して垂直となる部分を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る同軸コネクタの好ましい実施形態として、前記中心端子の前記中間部は、斜めに折り曲げられて、傾斜部を形成することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る同軸コネクタの好ましい実施形態として、前記後端支持部は、両側に突起部を備え、前記後端支持部は、前記突起部で前記実装部を挟み込み、前記実装部の底部を支持することを特徴とする。
【0023】
本発明に係る同軸コネクタの好ましい実施形態として、前記半田バリア部は、前記突起部の隙間が最も狭くなる間に配置される、前記実装部の一部分に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る同軸コネクタは、中心端子の実装部を基板に対して垂直に接触するように構成したことで、基板厚の違いに関係なくインピーダンスの調整を容易に行うことができる。また、中心端子の実装部の先端部分の幅を狭くする(断面積を小さくする)こと、又は、絶縁体で支持される実装部と当該絶縁体との隙間を該絶縁体の突起部で狭くすることで、実装部の先端部分に半田を付けた際にフィレットが形成されても、実装部の先端部分の周囲に半田を留めて、実装部及びその先端部分の断面積の変化を抑えることができるので、半田の量を容易にコントロールすることができ、半田量の違いによるインピーダンスのばらつきを抑えることができる。さらに、実装部の先端部分を除いた部分に、半田に対して低濡れ性の領域、すなわち、半田バリア部を形成したことで、実装部の先端部分に付けられる半田の吸い上がりを防止することができるので、上記と同様に、半田の量を容易にコントロールすることができ、半田量の違いによるインピーダンスのばらつきを抑えることができる。
【0025】
上記の構成を備える、本発明に係る同軸コネクタは、基板厚の違い及び半田量の違いによって生じるインピーダンスの変化を十分に抑えることができるので、インピーダンス整合を乱すことなく同軸コネクタを基板に容易に実装することができる。
【0026】
また、本発明に係る同軸コネクタは、絶縁体に設けられた先端支持部及び後端支持部によって、中心端子の接触部又はその近傍部分、及び、実装部又はその近傍部分の2か所のみを支持し、中心端子のその他の部分の周囲に空間を設けることで、その他の部分は何にも接触することないため、絶縁体との接触によるインピーダンスの乱れを予め防止し、中心端子の周囲の状態をほぼ一定の状態に保つことができる。これにより、インピーダンスの調整を容易に行うことができる。同様に、外部導体内に、中心端子の中間部の周囲を取り囲み、中間部と平行に延びた、絶縁体を支持する絶縁体支持部を設けることで、外部導体の絶縁体支持部と中心端子間の距離も一定に保つことができ、インピーダンスの調整を容易に行うことができる。
【0027】
このように、本発明に係る同軸コネクタは、インピーダンスの調整を容易に行うことができるため、同軸コネクタ自体のインピーダンス整合を安定させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、実施の形態を説明するための全ての図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、それぞれの実施形態は、独立して説明されているが、互いの構成要素を組み合わせて同軸コネクタを構成することを排除するものではない。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る同軸コネクタの部品構成を示す分解図である。同軸コネクタ10は、外部導体11と、中心端子20と、絶縁体30とから構成される。外部導体11は、相手側の同軸コネクタ(同軸レセプタクル)の外部導体と嵌合接続するための円筒状の嵌合部12と、基板に実装し固定するための実装面を下方に備える基部13とを含む。基部13は、基板の孔に差込んで基部13を固定するための1以上の実装脚14を実装面上に備える。
【0031】
基部13の背面(すなわち、嵌合部12がある面とは反対側の面)には、中心端子20を支持した絶縁体30を収容するための絶縁体収容部15が設けられる。絶縁体収容部15は絶縁体30の形状に合わせて成形される。さらに、基部13の背面において、絶縁体収容部15の下方に、基部13の底面から露出する中心端子20の実装部22及びその近傍部分を収容するための端子収容部16が設けられる。
【0032】
中心端子20は、一方の端部に相手側の同軸コネクタ(同軸レセプタクル)の中心端子(図示せず)と接続するための接触部21を有し、他方の端部に基板上の配線に接続するための実装部22を有する。実装部22は、基板上の配線に垂直に接触するように、又は、基板上の配線には接触しないが基板に対して垂直に端部が向くように構成されている。
図1に示す接触部21は円筒形状であり、中心端子20のそれ以外の部分は、実装部22を含め、板状の形状である。別の実施形態として、中心端子における、接触部と実装部を含む各部分を、板状又は円筒状に形成することもできる。
【0033】
接触部21から実装部22へ、同軸コネクタの軸方向に延びる中心端子20は、その中間部を3箇所折り曲げて階段状に形成され、実装部22の他に、同軸コネクタ10の軸方向又は基板に対して垂直となる部分を含む。別の実施形態として、中心端子を1箇所折り曲げてL字状に形成することもできる。さらに、後述する別の実施形態として、中心端子を3箇所折り曲げて、軸方向に延出する接触部と、軸方向又は基板に対して垂直となる部分を少なくとも含む実装部と、接触部と垂直となる部部(実装部の一部分)との間に斜めに傾斜した部分とを含むように、中心端子を形成することもできる。
【0034】
中心端子20は、絶縁体30の後端支持部32と接触する部分を、幅広に形成し中央に開口部23が設けられる。開口部23は、中心端子20と絶縁体30の後端支持部32との接触によるインピーダンスの変化を調整するために設けられているが、インピーダンスの調整が必要なければ設けなくてもよい。
【0035】
実装部22の先端部分は、中心端子20の他の部分に比べて幅を狭くなる(すなわち、断面積を小さくする)ように構成することができる。
図1に示す実装部22の先端部分は、両側面を矩形状に削り取ることで、断面積を小さくしている。別の実施形態として、実施部の先端部分の厚みを薄くすることで、断面積を小さくすることもできる。
【0036】
また、実装部22の先端部分よりも接触部側の一部分(例えば、基板に対して垂直であり、先端部分の端面よりも接触部側、或いは、先端部分よりも幅広の(断面積の大きい)部分)に、該先端部分よりも半田に対して低濡れ性の領域、すなわち、半田バリア部24を形成することができる。半田バリア部24の一例としては、銅合金製の中心導体に下地メッキとしてニッケルメッキを施し、仕上げメッキとして金メッキを施して半田バリア部としての領域の仕上げメッキを除去する。
【0037】
このような構成により、実装部22の先端部分の端面以外の部分に形成された半田バリア部が、実装部の先端部分に付けられる半田の吸い上がりを防止し、幅を狭くした先端部分に半田を付けた際にフィレットが形成されても、先端部分の周囲に半田を留めて、実装部22の幅の範囲内に半田を収めることができる。別の実施形態では、実装部の先端部分を、基板と接続する端部から断面積が狭くなるように形成することで、実装部が先端部分の周囲に付けられた半田から抜けないように構成することもできる。さらに、別の実施形態では、実装部の先端部分の表面に、凹部又は貫通した孔を設けてもよい。
【0038】
絶縁体30は、中心端子20の接触部21を支持する先端支持部31と、中心端子20の実装部22の近傍部分(すなわち、開口部23が設けられた部分)を保持する後端支持部32とを備える。別の実施形態として、先端支持部は、接触部自体ではなく、接触部の近傍部分を支持するように構成することもできる。
【0039】
図2は、
図1に示す本発明の一実施形態に係る同軸コネクタを組み立てて、基板に実装した状態を示し、
図2(a)は上方からの外観図であり、
図2(b)は下方からの外観図である。
図2(a)に示されるように、基部13の背面にある端子収容部から露出した実装部22は、基板40上のプリント配線41の矩形のパッド42に垂直に接触する。実装部22を取り囲むように、端子収容部16内に、基板40と平行となる方向に広がって形成された平面部17を含むことができる。平面部17は、実装部22の露出によるインピーダンスの変化を抑制するために設けられる。インピーダンスの調整が必要なければ設けなくてもよい。
【0040】
実装部22は、両側の側面を矩形状に削り取り、幅を狭くした先端部分の端部を、基板40上のプリント配線41のパッド42に垂直に接触させる。このような構成により、基板厚の違いに関係なくインピーダンスの調整を容易に行うことができる。
【0041】
図2(a)に図示していないが、先端部分に半田を付けて、実装部22と基板40上のプリント配線41のパッド42との接触を固定する。この際に、実装部22の先端部分の端面を除いた部分に形成されたニッケルバリア部等の半田バリア部24により、半田の這い上がりを防ぐことができる。また、断面積を狭くした先端部分に半田を付けた際にフィレットが形成されても、先端部分の周囲に半田を留めて、先端部分を除いた実装部22の幅の範囲内に半田を収めることができる。このような構成により、中心端子の周囲に這い上がる半田の量を容易にコントロールすることができ、半田量の違いによる、断面積の変化を少なく抑え、インピーダンスのばらつきを抑えることができる。
【0042】
同軸コネクタ10の基部13の底面、すなわち、基板40との実装面に設けられた実装脚14は、
図2(b)に示されるように、基板40に設けられた孔に挿入される。実装脚は1以上設けることができる。別の実施形態として、実装脚を設けることに代えて、同軸コネクタの実装面にねじ穴を設けて、基板の裏面からねじをねじ穴に挿入してねじ止めすることで、同軸コネクタを固定することができる。
【0043】
図3は、基板に実装された本発明の一実施形態に係る同軸コネクタをA−A線に沿って軸方向に切断した断面図である。基板40に実装された同軸コネクタ10を、
図3(a)に示すA−A線に沿って、垂直に切断した断面を
図3(b)に示す。外部導体11は、接触部21と実装部22との間の部分、すなわち、中心端子の中間部分の周囲を取り囲み、当該中間部分と平行に延びた板状の絶縁体支持部18を内部に有する。絶縁体支持部18は、外部導体11内に収容された絶縁体30を支持して固定することができる。
【0044】
基部13の実装面に開けられた開口部19は、後端支持部32に支持された、中心端子20の開口部23に、対向する位置に設けられる。開口部19は、中心端子20と絶縁体30の後端支持部32との接触によるインピーダンスの変化を調整するために設けられているが、インピーダンスの調整が必要なければ設けなくてもよい。
【0045】
中心端子20は、絶縁体30に設けられた先端支持部31及び後端支持部32によって、中心端子20の接触部21及び実装部22の近傍部分(開口部23)の2か所のみを支持し、中心端子20のその他の部分、特に折り曲げ部分の周囲に空間(エア部)を設けることで、上記2か所を除いて中心端子は何にも接触することなく、絶縁体との接触によるインピーダンスの乱れを予め防止し、中心端子20の周囲の環境をほぼ一定の状態に保つことができる。
【0046】
図3(b)に示すように、中心導体20は、同軸コネクタ10の内部で基板に近い位置で平行に延びるように折り曲げられており、実装部22の高さは短く、かつ外部導体11の基部13の背面よりも内側に配置される。このような高さ及び配置にすることにより、端子収容部16において露出する実装部22から、中心端子20を伝達する電気信号により生じる磁界による、外部導体11の外側における影響を低減することができる。
【0047】
図4は、基板に実装された本発明の一実施形態に係る同軸コネクタを、それぞれB−B線、C−C線、D−D線及びE−E線に沿って、軸直方向又は軸方向に切断した断面図である。基板40に実装された同軸コネクタ10を、
図4(a)に示すB−B線、C−C線及びD−D線に沿って、垂直に切断した断面を
図4(b)から(d)に示す。また、
図4(d)に示すE−E線に沿って、基板に対して平行に切断した同軸コネクタの一部分の断面を
図4(e)に示す。
【0048】
図4(b)の同軸形状によるインピーダンス整合から、基板上のインピーダンス整合(マイクロストリップライン構造等)に直接接続すると、それぞれの伝送線路でインピーダンスが取れていたとしても接続部分で構造が急激に変化すると高周波信号の反射が生じて乱れてしまう。そこで、本発明では、(b)の同軸形状から(c)の中心導体が平板状の形状、絶縁体30を間に介した疑似同軸形状、(d)外部導体11の一部が切り欠かれた疑似同軸形状と、徐々に整合構造を基板40上の整合構造に近づけることで接続部分の反射を低減している。
【0049】
図4(b)及び(c)に示すように、絶縁体30は、絶縁体支持部18の上部及び両側の配置に対応する位置にスリットが形成されており、板状の絶縁体支持部18を挟み込むように、外部導体11に収容されている。絶縁体支持部18は、絶縁体30に形成されたスリットに挟み込まれることで、絶縁体30を支持固定する。別の実施形態として、絶縁体支持部の形状を曲面状又は円筒状に形成することもできる。
【0050】
中心端子20の中間部は、絶縁体30の内壁及び外部導体11の内壁に接触することなく、それら内壁から一定の距離を置いて、中心軸上に配置されていることが
図4(c)の断面図から確認できる。
【0051】
図4(d)及び(e)は、絶縁体収容部15に絶縁体30が隙間なく収容され、端子収容部16に後端支持部32によって支持された実装部22が収容されていることを示す。実装部22は、伝達する電気信号により生じる磁界の外部への影響を抑えるために、外部導体11の基部13の背面よりも内側に配置されるように、端子収容部16に収容される。
【0052】
図4(e)に示すように、後端支持部32に対向する端子収容部16の底面に、基部13の実装面に貫通した開口部がインピーダンスの変化を調整するために設けられているが、インピーダンスの調整が必要なければ設けなくてもよい。
【0053】
本発明に係る同軸コネクタの変形例を、別の実施形態として、
図5から
図9を用いて以下に説明する。
図5は、本発明の別の実施形態に係る同軸コネクタの部品構成を示す分解図である。同軸コネクタ50は、外部導体51と、中心端子60と、絶縁体70とから構成される。外部導体51は、相手側の同軸コネクタ(同軸レセプタクル)の外部導体と嵌合接続するための円筒状の嵌合部52と、基板に実装し固定するための実装面を下方に備える基部53とを含む。基部53は、基板の孔に差込んで基部53を固定するための1以上の実装脚54を実装面上に備える。
【0054】
基部53の背面(すなわち、嵌合部52がある面とは反対側の面)には、中心端子60を支持した絶縁体70を収容するための絶縁体収容部55が設けられる。絶縁体収容部55は絶縁体70の形状に合わせて成形される。さらに、基部53は、その背面下方から突出した段状部56を備える。段状部56は、絶縁体70が絶縁体収容部55に収容された際に、絶縁体70の下方部分(支持腕73)を挟み込むように、基部53の背面下方に形成される。
【0055】
中心端子60は、一方の端部に相手側の同軸コネクタ(同軸レセプタクル)の中心端子(図示せず)と接続するための接触部61を有し、他方の端部に基板上の配線に接続するための実装部62を有する。また、接触部61から実装部62へ、同軸コネクタの軸方向に延びる中心端子60は、その中間部を折り曲げて形成された傾斜部63を含む。
【0056】
中心端子60の実装部62は、傾斜部63から続いて延出する傾斜状の部分と、幅を狭く(すなわち、断面積を小さく)して形成された部分と、基板に対して垂直な先端部分を含む。実装部62の先端部側の両側面を一定の距離で削り取ることで、幅を狭く(断面積を小さく)して形成することができる。例えば、実装部62の先端部側の断面積は、実装部62の中間部側、中心端子60の中間部又は傾斜部63の断面積よりも小さくすることができる。実装部62の基板に対して垂直な先端部分は、基板上の配線に垂直に接触するように、又は、接触していないが基板に対して垂直に端部が向くように構成することができる。
図5に示す接触部61は円筒形状であり、中心端子60のそれ以外の部分は、実装部62を含め、板状の形状である。別の実施形態として、中心端子における、接触部と実装部を含む各部分を、板状又は円筒状に形成することもできる。
【0057】
絶縁体70は、中心端子60の接触部61を支持する先端支持部71と、中心端子60の実装部62の底部を支持する後端支持部72とを備える。また、絶縁体70は、後端支持部72の両側に、突出部74を備える。例えば、絶縁体70は、後端支持部72の両側に、絶縁体70の下方から延出した支持腕73を備え、支持腕73の内側側面から、中心端子60の実装部62を挟み込むように突出した突起部74を備える。断面積を小さく形成された実装部62は、絶縁体70の後端支持部72によって支持され、突起部74によって挟み込むことができる。
【0058】
図6は、
図5に示す本発明の別の実施形態に係る同軸コネクタを組み立てて、基板に実装した状態を示し、
図6(a)は上方からの外観図であり、
図6(b)は下方からの外観図である。
図6(a)に示されるように、基部53背面下部の段状部56に挟まれた絶縁体70の支持腕73から露出した実装部62の先端部分は、基板80上のプリント配線81のパッド82に垂直に接触する。実装部62の傾斜状の部分は、支持腕73の内側側壁から突出した突起部74に挟まれる。
【0059】
同軸コネクタ50の基部53の底面、すなわち、基板80との実装面に設けられた実装脚54は、
図6(b)に示されるように、基板80に設けられた孔に挿入される。実装脚は1以上設けることができる。別の実施形態として、実装脚を設けることに代えて、同軸コネクタの実装面にねじ穴を設けて、基板の裏面からねじをねじ穴に挿入してねじ止めすることで、同軸コネクタを固定することができる。
【0060】
図7は、基板に実装された本発明の別の実施形態に係る同軸コネクタの背面図である。
図示していないが、実装部62の先端部分に半田を付けて、実装部62と基板80上のプリント配線81のパッド82との接触を固定する。
【0061】
実装部62の先端部分の端面よりも接触部側の一部分、すなわち、傾斜状の部分には、該先端部分よりも半田に対して低濡れ性の領域、すなわち、半田バリア部64を形成することができる。例えば、半田バリア部64は、絶縁体70の突起部74に挟まれる実装部62の傾斜状の部分であって、突起部74の隙間が最も狭くなる間に挟まれる、傾斜状の部分に形成することができる。このような構成により、実装部62の傾斜状の部分に形成された半田バリア部64が、実装部の先端部分に付けられる半田の、半田バリア部64以上の吸い上がりを防止し、さらに、絶縁体70の突起部74により、実装部62との隙間を狭くしているので、実装部62に付けられる半田の量を制限することができる。つまり、中心端子の周囲に這い上がる半田の量を容易にコントロールすることができ、半田量の違いによる実装部の断面積の変化を少なく抑え、インピーダンスのばらつきを抑えることができる。
【0062】
図8は、基板に実装された本発明の一実施形態に係る同軸コネクタをA−A線に沿って軸方向に切断した断面図である。基板80に実装された同軸コネクタ50を、
図8(a)に示すA−A線に沿って、垂直に切断した断面を
図8(b)に示す。外部導体51は、中心端子60の接触部61から傾斜部63周辺部分までを取り囲み、外部導体51の内壁で、収容された絶縁体70の中間部分を支持して固定することができる。
【0063】
中心端子60は、絶縁体70に設けられた先端支持部61によって、中心端子60の接触部61及び該接触部61の付け根部分を支持し、後端支持部62によって、実装部62の傾斜状の部分を支持し、中心端子60のその他の部分、中間部から傾斜部63の周囲に空間(エア部)を設けることで、絶縁体70によって支持される上記部分を除いて中心端子60は何にも接触することなく、絶縁体70との接触によるインピーダンスの乱れを予め防止し、中心端子60の周囲の環境をほぼ一定の状態に保つことができる。
【0064】
図8(b)に示すように、同軸コネクタ50の内部で、中心導体60は、接触部61から中間部までは軸方向に延出し、すなわち、基板80に対して平行に延出し、中間部を下方(基板側)に折り曲げた傾斜部63を経て、端部が基板に対して垂直となる実装部62まで延出する。また、外部導体51は、傾斜部63及び実装部62の傾斜状の部分の下面に対して平行となるように、外部導体51の下方中央部分の内壁に傾斜面が形成される。このような構成により、傾斜部63及び実装部62の傾斜状の部分の下面と外部導体51の内壁と距離は一定となり、中心端子60を伝達する電気信号により生じる磁界の変化を抑制し、同軸コネクタ50の周波数特性への影響を低減することができる。
【0065】
図9は、基板に実装された本発明の一実施形態に係る同軸コネクタを、それぞれB−B線、C−C線、D−D線、E−E線及びF−F線に沿って軸直方向、斜め方向及び軸方向に切断した断面図である。基板80に実装された同軸コネクタ50を、
図9(a)に示すB−B線、C−C線及びD−D線に沿って、垂直に切断した断面を
図9(b)から(d)に示す。また、
図9(a)に示すE−E線に沿って、基板に対して斜めに切断した同軸コネクタの断面を
図4(e)に示す。さらに、
図9(a)に示すF−F線に沿って、基板に対して水平に切断した同軸コネクタの断面を
図9(e)に示す。
【0066】
図9(b)の同軸形状によるインピーダンス整合から、基板上のインピーダンス整合(マイクロストリップライン構造等)に直接接続すると、それぞれの伝送線路でインピーダンスが取れていたとしても接続部分で構造が急激に変化すると高周波信号の反射が生じて乱れてしまう。そこで、本発明では、(b)の同軸形状から(c)の中心導体が平板状の形状、絶縁体70を間に介した疑似同軸形状、(d)外部導体51と絶縁体70とが密着して中心導体60の四方を取り囲んだ疑似同軸形状と、徐々に整合構造を基板上の整合構造に近づけることで接続部分の反射を低減している。
【0067】
図9(e)及び(f)は、外部導体51の基部53の背面に設けられた絶縁体収容部55に絶縁体70が隙間なく収容されていることを示す。中心端子60の傾斜部63及び実装部62は、外部導体51の基部53の内側に配置されるように、絶縁体70によって保持される。このような構成により、中心端子60を伝達する電気信号により生じる磁界の外部への影響を抑えることができる。
【0068】
図10は、
図5から
図9に示した同軸コネクタの特性を示すグラフである。グラフの縦軸及び横軸は、先に説明した
図12と同様に、電圧定在波比(VSWR)と周波数である。
図10(a)は、基板厚tが1.6mmの基板に半田の量を
図12(a)に示す「半田:多」と同じ量にして、実装した同軸コネクタに伝送させる信号の周波数を変化させて測定した電圧定在波比の変化を表すグラフと、基板厚tが1.6mmの基板に半田の量を
図12(a)に示す「半田:少」と同じ量にして、基板に実装した同軸コネクタに対して、信号の周波数を変化させて測定した電圧定在波比の変化を表すグラフを示す。
図10(b)は、半田の量を、
図12(b)の測定に使用した半田量と同じにし、基板厚tが0.8mm、1.0mm及び1.6mmの基板にそれぞれ実装した同軸コネクタに対して、信号の周波数を変化させて測定した電圧定在波比の変化を表す各グラフを示す。
【0069】
図10(a)及び(b)に示したグラフから明らかなように、半田量の違い及び基板厚の違いによって生じる、本発明の係る同軸コネクタの特性(電圧定在波比)のばらつきは、
図12(a)及び(b)に示される従来型のコネクタの特性(電圧定在波比)に比べて小さいことが確認できる。この結果から、本発明に係る同軸コネクタは、半田量及び基板厚にあまり影響されずに、インピーダンス整合の調整を容易に行うことが可能であることが確認できる。
【0070】
結果として、本発明に係る同軸コネクタは、半田量及び基板厚に影響を受けず、かつ、半田付けした場合の外部導体11と中心端子20の距離の変化を実装部の先端部分の最小限に留めることができるので、
図10(a)及び(b)に示すように、同軸コネクタの特性(電圧定在波比)のばらつきを抑えることが可能となった。このように、本発明に係る同軸コネクタを用いることで、同軸コネクタを基板に実装する際に、インピーダンス整合を容易に調整することができる。