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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-201503(P2016-201503A)
(43)【公開日】2016年12月1日
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20161104BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20161104BHJP
【FI】
   H01G4/30 311D
   H01G4/12 364
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-82249(P2015-82249)
(22)【出願日】2015年4月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145517
【弁理士】
【氏名又は名称】宮原 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】飯島 淑明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 壮
(72)【発明者】
【氏名】須賀 康友
(72)【発明者】
【氏名】小泉 勝男
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AH00
5E001AJ01
5E082AA01
5E082AB03
5E082CC03
5E082EE04
5E082EE23
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
(57)【要約】
【課題】導体パッドや導体ビアに対する外部電極の接続信頼性を格段向上できる積層セラミック電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】積層セラミックコンデンサの製造方法における外部電極作製工程は、未焼成積層チップ本体UBCaの高さ方向一側の端部に回り込み下地導体層用パターン部分15b1が熱消失性シート部分15a1で覆われた状態で存し、且つ、高さ方向他側の端部に回り込み下地導体層用パターン部分14b1が露出状態で存する未焼成積層チップUBCを作製するステップと、この未焼成積層チップUBCを焼成することによって熱消失性シート部分15a1を熱消失させて、焼成チップ本体21の高さ方向一側の端部に回り込み下地導体層25が露出状態で存し、且つ、高さ方向他側の端部に回り込み下地導体層24が露出状態で存する焼成チップBCを作製するステップを、備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さと幅と高さとで規定された略直方体状を成す積層構造の部品本体に、多層構造の外部電極を作製する外部電極作製工程を備えた積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記外部電極は、前記部品本体の高さ方向一側の端部に設けられた回り込み下地導体層と、前記部品本体の高さ方向他側の端部に設けられた回り込み下地導体層と、前記回り込み下地導体層の両方と連続するように前記部品本体の端面に設けられた端面下地導体層と、前記回り込み下地導体層の両方と前記端面下地導体層との連続物の表面に該表面を覆うように設けられた少なくとも1層の主導体層とを備えており、
前記外部電極作製工程は、
(S1)前記部品本体に対応した未焼成積層チップ本体の高さ方向一側の端部に回り込み下地導体層用パターン部分が熱消失性シート部分で覆われた状態で存し、且つ、高さ方向他側の端部に回り込み下地導体層用パターン部分が露出状態で存する未焼成積層チップを作製するステップと、
(S2)前記ステップS1の後に、前記未焼成積層チップを焼成することによって前記熱消失性シート部分を熱消失させて、前記部品本体に対応した焼成チップ本体の高さ方向一側の端部に回り込み下地導体層が露出状態で存し、且つ、高さ方向他側の端部に回り込み下地導体層が露出状態で存する焼成チップを作製するステップと、
(S3)前記ステップS2の後又は前記ステップS2と同時の焼成によって、前記焼成チップ本体の端面に前記回り込み下地導体層の両方と連続する端面下地導体層を作製するステップと、
(S4)前記ステップS3の後に、前記回り込み下地導体層の両方と前記端面下地導体層との連続物の表面に該表面を覆う少なくとも1層の主導体層を作製するステップと、
を含んでいる積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記ステップS1は、
(S5)積層方向一側に回り込み下地導体層用パターンが熱消失性シートで覆われた状態で存し、且つ、積層方向他側に回り込み下地導体層用パターンが露出状態で存する未焼成積層シートを作製するステップと、
(S6)前記ステップS5の後に、前記未焼成積層シートを前記部品本体に対応した形状に分断するステップと、
を含んでいる請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記ステップS5は、
(S7)内部導体層用パターンの群が形成されたセラミックグリーンシートと、回り込み下地導体層用パターンの群が形成されたセラミックグリーンシートと、回り込み下地導体層用パターンの群が形成された熱消失性シートとを少なくとも用いて、積層方向一側に回り込み下地導体層用パターンの群が熱消失性シートで覆われた状態で存し、積層方向他側に回り込み下地導体層用パターンの群が露出状態で存し、これらの間に複数の内部導体層用パターンの群が内蔵された積み重ねシートを作製するステップ、
を含んでいる請求項2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記熱消失性シートの厚さは、前記セラミックグリーンシートそれぞれの厚さよりも薄い、請求項3に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記熱消失性シート部分及び前記熱消失性シートは、有機バインダーを主成分としセラミック粉末を含有していない、請求項1〜4の何れか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサや積層セラミックインダクタや積層セラミックバリスタ等の積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサや積層セラミックインダクタや積層セラミックバリスタ等の積層セラミック電子部品は、一般に、積層構造の部品本体に多層構造の外部電極を作製して製造されている。部品本体は長さと幅と高さとで規定された略直方体状を成しており、外部電極は部品本体内の内部導体と電気的に接続するように該部品本体に設けられている。
【0003】
この種の積層セラミック電子部品は部品実装基板や部品内蔵基板等に多用されているものの、該積層セラミック電子部品の小型化及び薄型化が依然として要求されている現状にあっては、導体パッドや導体ビアに対する外部電極の接続信頼性が懸念されている。
【0004】
後記特許文献1には、前記接続信頼性に鑑みた外部電極8a及び8bの作製方法が開示されている(特許文献1の図1及び図2を参照)。この外部電極8a及び8bは、延在部9a及び9bが積層セラミック素体3の引出部5a及び5bの上面から機能部4の上面に亘って形成され、且つ、引出部5a及び5bの上面の延在部9a及び9bが機能部4の延在部9a及び9bよりも低くなっており、回り込み部10a及び10bが積層セラミック素体3の端面から引出部5a及び5bの上面の延在部9a及び9bの表面に亘って形成されており、これら延在部9a及び9bと回り込み部10a及び10bの表面に金属層12a及び12bが形成されている。
【0005】
しかしながら、後記特許文献1に開示されている外部電極8a及び8bの作製方法では、金属膜12a及び12bの上面にその下側に存する延在部9a及び9bと回り込み部10a及び10bの形態に起因して顕著な段差や起伏が生じてしまうため、導体パッドや導体ビアに対する接続信頼性を向上することは難しい。
【0006】
即ち、金属膜12a及び12bの上面をハンダを介して導体パッドに接続する場合、前記の顕著な段差や起伏によって金属膜12a及び12bの上面と導体パッドとの隙間が変化してしまうため、隙間が大きい箇所のハンダ量と隙間が小さい箇所のハンダ量に偏りが生じ易くなって接続不良を生じる懸念がある。また、金属膜12a及び12bの上面に導体ビアを接続する場合、前記の顕著な段差や起伏によって導体ビアの接続に利用できる区域が狭くなってしまうため、導体ビアの位置公差如何では接続不良を生じる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5217584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、導体パッドや導体ビアに対する外部電極の接続信頼性を格段向上できる積層セラミック電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、長さと幅と高さとで規定された略直方体状を成す積層構造の部品本体に、多層構造の外部電極を作製する外部電極作製工程を備えた積層セラミック電子部品の製造方法であって、前記外部電極は、前記部品本体の高さ方向一側の端部に設けられた回り込み下地導体層と、前記部品本体の高さ方向他側の端部に設けられた回り込み下地導体層と、前記回り込み下地導体層の両方と連続するように前記部品本体の端面に設けられた端面下地導体層と、前記回り込み下地導体層の両方と前記端面下地導体層との連続物の表面に該表面を覆うように設けられた少なくとも1層の主導体層とを備えており、前記外部電極作製工程は、(S1)前記部品本体に対応した未焼成積層チップ本体の高さ方向一側の端部に回り込み下地導体層用パターン部分が熱消失性シート部分で覆われた状態で存し、且つ、高さ方向他側の端部に回り込み下地導体層用パターン部分が露出状態で存する未焼成積層チップを作製するステップと、(S2)前記ステップS1の後に、前記未焼成積層チップを焼成することによって前記熱消失性シート部分を熱消失させて、前記部品本体に対応した焼成チップ本体の高さ方向一側の端部に回り込み下地導体層が露出状態で存し、且つ、高さ方向他側の端部に回り込み下地導体層が露出状態で存する焼成チップを作製するステップと、(S3)前記ステップS2の後又は前記ステップS2と同時の焼成によって、前記焼成チップ本体の端面に前記回り込み下地導体層の両方と連続する端面下地導体層を作製するステップと、(S4)前記ステップS3の後に、前記回り込み下地導体層の両方と前記端面下地導体層との連続物の表面に該表面を覆う少なくとも1層の主導体層を作製するステップと、を含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導体パッドや導体ビアに対する外部電極の接続信頼性を格段向上できる積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)〜図1(E)は第1〜第5シートの上面図である。
図2図2は積み重ねシートを作製するステップの説明図である。
図3図3は未焼成積層シートを作製するステップと未焼成積層シートを分断するステップの説明図である。
図4図4(A)は未焼成積層チップの上面図、図4(B)は図4(A)のS1−S1線に沿う断面図である。
図5図5は焼成チップを作製するステップの説明図である。
図6図6は端面下地導体層を作製するステップの説明図である。
図7図7は主導体層を作製するステップの説明図である。
図8図8は製造後の積層セラミックコンデンサの外観斜視図である。
図9図9は第2シート及び第3シートの変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明(積層セラミック電子部品の製造方法)を、積層セラミック電子部品として代表的な積層セラミックコンデンサに適用した実施形態を、図1図8を引用して説明する。
【0013】
製造に際して、先ず、図1(A)に示した第1シート11と、図1(B)に示した第2シート12と、図1(C)に示した第3シート13と、図1(D)に示した第4シート14と、図1(E)に示した第5シート15を作製する。
【0014】
前記第1シート11は、ダイコータやグラビアコータ等の塗工装置と乾燥装置とを用いて、矩形状のキャリアフィルム(図示省略)の表面にセラミックスラリーを塗工し乾燥して所定の厚さ及び形状のセラミックグリーンシート11a(図中は矩形)を形成し、続いてセラミックグリーンシート11aからキャリアフィルムを取り除くことによって作製されている。
【0015】
前記キャリアフィルムは、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等から選択された合成樹脂のフィルムである。また、前記セラミックスラリーは、誘電体セラミック粉末と有機溶剤と有機バインダーを少なくとも含有する。誘電体セラミック粉末は、好ましくはチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、酸化チタン等から選択された少なくとも1種の粉末、より好ましくはε>1000又はクラス2(高誘電率系)に該当する誘電体セラミックスの粉末である。有機溶剤は、好ましくはエタノール、ブチルカルビトール等から選択された少なくとも1種である。有機バインダーは、好ましくはポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸メチル、エチルセルロース等から選択された少なくとも1種である。因みに、前記セラミックスラリーは、誘電体セラミック粉末と有機溶剤と有機バインダーの他に、分散剤や可塑剤等の周知の添加剤を適宜含んでいても良い。さらに、前記セラミックグリーンシート11aの厚さ(公差を含まない基準寸法)は、好ましくは0.5〜10μmの範囲内、より好ましくは1〜5μmの範囲内で設定されている。
【0016】
前記第2シート12は、ダイコータやグラビアコータ等の塗工装置と乾燥装置とを用いて、矩形状のキャリアフィルム(図示省略)の表面にセラミックスラリーを塗工し乾燥して所定の厚さ及び形状のセラミックグリーンシート12a(図中は矩形)を形成し、続いて、スクリーン印刷機やグラビア印刷機やインクジェット印刷機等の印刷装置と乾燥装置とを用いて、セラミックグリーンシート12aの表面に金属ペーストを印刷し乾燥して所定の厚さ、形状及び数の内部導体層用パターン12b(図中は16個の矩形パターン)をマトリックス配列で形成し、続いて、セラミックグリーンシート12aからキャリアフィルムを取り除くことによって作製されている。
【0017】
前記キャリアフィルムの材料及び形状に係る寸法(公差を含まない基準寸法)は、好ましくは前記第1シート11の作製時に用いたキャリアフィルムと同じである。また、前記セラミックスラリーの組成は、好ましくは前記第1シート11の作製時に用いたセラミックスラリーと同じである。さらに、前記セラミックグリーンシート12aの厚さ及び形状に係る寸法(何れも公差を含まない基準寸法)は、前記第1シート11のセラミックグリーンシート11aの厚さ及び形状に係る寸法と同じである。
【0018】
前記金属ペーストは、金属粉末と有機溶剤と有機バインダーを少なくとも含有する。金属粉末は、好ましくはニッケル、銅、パラジウム、白金、銀、金、チタン、スズ、亜鉛、これらの合金等から選択された1種の粉末である。有機溶剤は、好ましくはターピネオール、ミネラルスピリット等から選択された少なくとも1種である。有機バインダーは、好ましくはエチルセルロース、ポリビニルアセタール、アクリル系樹脂等から選択された少なくとも1種である。因みに、前記金属ペーストは、金属粉末と有機溶剤と有機バインダーの他に、分散剤、可塑剤等の周知の添加剤や、ガラス成分や、前記セラミックスラリーに含まれる誘電体セラミック粉末又はこれと実質的に同じ物性の誘電体セラミック粉末を適宜含んでいても良い。さらに、前記内部導体層用パターン12bそれぞれの厚さ(公差を含まない基準寸法)は、好ましくは0.5〜10μmの範囲内で設定されている。また、前記内部導体層用パターン12bそれぞれの形状に係る寸法、即ち、長さL12b(公差を含まない基準寸法)は図4に示した内部導体層用パターン部分12b1の長さ(図4(A)及び図4(B)の左右方向寸法)の約2倍であり、幅(図1(B)の上下方向寸法、公差を含まない基準寸法)は図4に示した内部導体層用パターン部分12b1の幅(図4(A)の上下方向寸法)と同じである。
【0019】
前記第3シート13は、ダイコータやグラビアコータ等の塗工装置と乾燥装置とを用いて、矩形状のキャリアフィルム(図示省略)の表面に、セラミックスラリーを塗工し乾燥して所定の厚さ及び形状のセラミックグリーンシート13a(図中は矩形)を形成し、続いて、スクリーン印刷機やグラビア印刷機やインクジェット印刷機等の印刷装置と乾燥装置とを用いて、セラミックグリーンシート13aの表面に金属ペーストを印刷し乾燥して所定の厚さ、形状及び数の内部導体層用パターン13b(図中は24個の矩形パターン)をマトリックス配列で形成し、続いて、セラミックグリーンシート13aからキャリアフィルムを取り除くことによって作製されている。
【0020】
前記キャリアフィルムの材料及び形状に係る寸法(公差を含まない基準寸法)は、好ましくは前記第1シート11の作製時に用いたキャリアフィルムと同じである。また、前記セラミックスラリーの組成は、好ましくは前記第1シート11の作製時に用いたセラミックスラリーと同じである。さらに、前記セラミックグリーンシート13aの厚さ及び形状に係る寸法(何れも公差を含まない基準寸法)は、前記第1シート11のセラミックグリーンシート11aの厚さ及び形状に係る寸法と同じである。
【0021】
前記金属ペーストの組成は、前記第2シート12の作製時に用いた金属ペーストと同じである。また、前記内部導体層用パターン13bそれぞれの厚さ(公差を含まない基準寸法)は、前記第2シート12の内部導体層用パターン12bの厚さと同じである。さらに、前記内部導体層用パターン13bそれぞれの形状に係る寸法、即ち、長さL13b(公差を含まない基準寸法)は前記第2シート12の内部導体層用パターン12bの長さL12bと同じであり、幅(図1(C)の上下方向寸法、公差を含まない基準寸法)は前記第2シート12の内部導体層用パターン12bの幅と同じである。さらに、前記内部導体層用パターン13bそれぞれの隣接間隔(公差を含まない基準間隔)は、前記第2シート12の内部導体層用パターン12bの隣接間隔を同じである。さらに、前記内部導体層用パターン13bの群の形成位置(公差を含まない基準位置)は、前記第2シート12の内部導体層用パターン12bの群の形成位置と、[長さL13b/2]+[長さ方向間隔/2]に相当する寸法Lsだけ長さ方向(図1(B)の左右方向、図1(A)のX方向に相当))にずれている。
【0022】
前記第4シート14は、ダイコータやグラビアコータ等の塗工装置と乾燥装置とを用いて、矩形状のキャリアフィルム(図示省略)の表面に、セラミックスラリーを塗工し乾燥して所定の厚さ及び形状のセラミックグリーンシート14a(図中は矩形)を形成し、続いて、スクリーン印刷機やグラビア印刷機やインクジェット印刷機等の印刷装置と乾燥装置とを用いて、セラミックグリーンシート14aの表面に金属ペーストを印刷し乾燥して所定の厚さ、形状及び数の回り込み下地導体層用パターン14b(図中は5個の帯形パターン)をストライプ配列で形成し、続いて、セラミックグリーンシート14aからキャリアフィルムを取り除くことによって作製されている。
【0023】
前記キャリアフィルムの材料及び形状に係る寸法(公差を含まない基準寸法)は、好ましくは前記第1シート11の作製時に用いたキャリアフィルムと同じである。また、前記セラミックスラリーの組成は、好ましくは前記第1シート11の作製時に用いたセラミックスラリーと同じである。さらに、前記セラミックグリーンシート14aの厚さ及び形状に係る寸法(何れも公差を含まない基準寸法)は、前記第1シート11のセラミックグリーンシート11aの厚さ及び形状に係る寸法と同じである。
【0024】
前記金属ペーストの組成は、前記第2シート12の作製時に用いた金属ペーストと同じでも良いし、異なっていても良い。また、前記回り込み下地導体層用パターン14bそれぞれの厚さ(公差を含まない基準寸法)は、前記第2シート12の内部導体層用パターン12bの厚さと同じでも良いし、異なっていても良い。さらに、前記回り込み下地導体層用パターン14bそれぞれの形状に係る寸法、即ち、長さ(図1(D)の上下方向寸法、公差を含まない基準寸法)は図4に示した回り込み下地導体層用パターン部分14b1の幅(図4(A)の上下方向寸法)の8倍以上であり、幅W14b(公差を含まない基準寸法)は図4に示した回り込み下地導体層用パターン部分14b1の長さ(図4(A)及び図4(B)の左右方向寸法)の約2倍である。
【0025】
前記第5シート15は、ダイコータやグラビアコータ等の塗工装置と乾燥装置とを用いて、矩形状のキャリアフィルム(図示省略)の表面に、熱消失性スラリーを塗工し乾燥して所定の厚さ及び形状の熱消失性シート15a(図中は矩形)を形成し、続いて、スクリーン印刷機やグラビア印刷機やインクジェット印刷機等の印刷装置と乾燥装置とを用いて、セラミックグリーンシート15aの表面に金属ペーストを印刷し乾燥して所定の厚さ、形状及び数の回り込み下地導体層用パターン15b(図中は5個の帯形パターン)をストライプ配列で形成し、続いて、熱消失性シート15aからキャリアフィルムを取り除くことによって作製されている。
【0026】
前記キャリアフィルムの材料及び形状に係る寸法(公差を含まない基準寸法)は、好ましくは前記第1シート11の作製時に用いたキャリアフィルムと同じである。また、前記熱消失性スラリーは、有機バインダーと有機溶剤を少なくとも含有する。有機バインダーは、好ましくはポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸セルロース、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリビニルアセタール、エチルセルロース等から選択された少なくとも1種である。有機溶剤は、好ましくはエタノール、ブチルカルビトール、水等から選択された少なくとも1種である。因みに、前記熱消失性スラリーは、有機バインダーと有機溶剤の他に、分散剤や可塑剤等の周知の添加剤を適宜含んでいても良いが、前記セラミックスラリーのように誘電体セラミック粉末を含むものはないため分散剤は必ずしも必要ではない。勿論、前記熱消失性スラリーは、前記セラミックスラリーから誘電体セラミック粉末を除外した組成であっても良いが、後述の熱消失のし易さを考慮すると、該熱消失性スラリーに含まれる有機バインダーには、前記セラミックスラリーに含まれる有機バインダーよりも熱消失温度が低い有機バインダーを用いた方が好ましい。さらに、前記熱消失性シート15aの厚さ(公差を含まない基準寸法)は、好ましくは0.5〜10μmの範囲内、より好ましくは1〜5μmの範囲内で設定されているが、後述の熱消失を勘案すると前記セラミックグリーンシート11aの厚さよりも薄い方が望ましい。
【0027】
前記金属ペーストの組成は、前記第4シート12の作製時に用いた金属ペーストと同じである。また、前記回り込み下地導体層用パターン15bそれぞれの厚さ(公差を含まない基準寸法)は、前記第4シート14の回り込み下地導体層用パターン14bの厚さと同じである。さらに、前記回り込み下地導体層用パターン15bそれぞれの形状に係る寸法、即ち、長さ(図1(E)の上下方向寸法、公差を含まない基準寸法)は前記第4シート14の回り込み下地導体層用パターン14bの長さと同じであり、幅W15b(公差を含まない基準寸法)は前記第4シート14の回り込み下地導体層用パターン14bの幅W14bと同じである。さらに、前記回り込み下地導体層用パターン15bそれぞれの隣接間隔(公差を含まない基準間隔)は、前記第4シート14の回り込み下地導体層用パターン14bの隣接間隔と同じであり、前記回り込み下地導体層用パターン15bの群の形成位置(公差を含まない基準位置)は、前記第4シート14の回り込み下地導体層用パターン14bの群の形成位置と同じである。
【0028】
尚、前記の第1〜第5シート11〜15の作製には、前掲以外の方法を採用することもできる。例えば、前記第1シート11は、前記キャリアフィルムとして帯状で長尺なものを用い、該キャリアフィルムの表面に帯状のセラミックグリーンシートを形成し、続いて、該セラミックグリーンシートを適宜カッティングして矩形状のものを抜き出す方法によっても作製することができる。また、前記第2シート12、前記第3シート13、前記第4シート14及び前記第5シート15は、前記キャリアフィルムとして帯状で長尺なものを用い、該キャリアフィルムの表面に帯状のセラミックグリーンシート又は熱消失性シートを形成し、続いて、前記同様の手法により、該セラミックグリーンシートの表面に内部導体層用パターン12bの群、内部導体層用パターン13bの群又は回り込み下地導体層用パターン14bの群を間隔をおいて順に形成すると共に、該熱消失性シートの表面に回り込み下地導体層用パターン15bの群を間隔をおいて順に形成し、続いて、該セラミックグリーンシート又は熱消失性シートを適宜カッティングして矩形状のものを抜き出す方法によっても作製することができる。
【0029】
次に、多数の吸引孔を有する吸着面と該吸着面を加熱するためのヒータを有する可動型の吸着ヘッドを用いて、図2に示したように、積層テーブルLT上に置かれた通気性シートAPSの表面に前記第1シート11、前記第2シート12、前記第3シート13、前記第4シート14及び前記第5シート15を適宜順序で熱圧着しながら積み重ねて、積み重ねシートSSを作製する。
【0030】
図2に準じて積み重ね方法を詳述すると、最初に通気性シートAPSの表面に前記第5シート15を回り込み下地導体層用パターン15bの群が上を向くように積み重ね、そして該第5シート15の表面に前記第1シート11を2枚積み重ね、そして最上位の第1シート11の表面に前記第3シート13と前記第2シート12を各々の内部導体層用パターン13b1及び12b1の群が上を向くように交互に3枚積み重ね、そして最上位の第2シート12の表面に前記第1シート11を2枚積み重ね、そして最上位の第1シート11の表面に前記第4シート14を回り込み下地導体層用パターン14bの群が上を向くように積み重ねる。
【0031】
前記の積み重ね順序は、あくまでも図4に示した未焼成積層チップUBCの積層構造に準じたものであって、該未焼成積層チップUBCが内蔵する内部導体層用パターン部分12b1及び13b1の総数や該未焼成積層チップUBCの高さ等が変化すれば、該変化に伴って前記第3シート13と前記第2シート12の積み重ね枚数と前記第1シート11の積み重ね枚数も変化する。
【0032】
尚、前記の積み重ねシートSSの作製には、前掲以外の方法を採用することもできる。例えば、回り込み下地導体層用パターン15bの群が上を向くように置かれた前記第5シート15の表面に前記第1シート11を1枚又は複数枚積み重ねたものと、前記第3シート13と前記第2シート12を各々の内部導体層用パターン13b1及び12b1の群が上を向くように交互に複数枚積み重ねたものと、前記第1シート11を1枚又は複数枚積み重ねて最上位の第1シート11の表面に前記第4シート14を回り込み下地導体層用パターン14bの群が上を向くように積み重ねたものを用意しておいて、これらを順に積み重ねて所期の積み重ねシートを得る方法によっても作製することができる。また、前記第1シート11を1枚又は複数枚積み重ね、そして最上位の第1シート11の表面に前記第3シート13と前記第2シート12を各々の内部導体層用パターン13b1及び12b1の群が上を向くように交互に複数枚積み重ね、そして、最上位の第2シート12又は第3シート13の表面に前記第1シート11を1枚又は複数枚積み重ねたものを用意し、これの最下位に回り込み下地導体層用パターン15bの群が上を向くように前記第5シート15を積み重ねると共に、最上位に回り込み下地導体層用パターン14bの群が上を向くように前記第4シート14を積み重ねる方法によっても作製することができる。
【0033】
次に、積層テーブルLT上の通気性シートAPSから前記積み重ねシートSSを取り出し、熱間静水圧プレス機やヒータ内蔵の機械式又は油圧式プレス機等の本圧着装置を用いて、該積み重ねシートSSを本熱圧着して、図3に示した未焼成積層シートULSを作製する。
【0034】
前記未焼成積層シートULSは、図3に示したように、積層方向一側(図中の奥側)に回り込み下地導体層用パターン15bが熱消失性シート15aで覆われた状態で存し、積層方向他側(図中の手前側)に回り込み下地導体層用パターン14bが露出状態で存し、これらの間に複数の内部導体層用パターン12b及び13bが内蔵されている。
【0035】
次に、ブレードダイシング機やレーザーダイシング機等の切断装置を用いて、図3に示した未焼成積層シートULSを仮想線VLに沿って格子状に分断して、図4(A)及び図4(B)に示した未焼成積層チップUBCを作製する。
【0036】
前記未焼成積層チップUBCは、図4(A)及び図4(B)に示したように、部品本体21(図8を参照)に対応した形状の未焼成積層チップ本体UBCaを有し、該未焼成積層チップ本体UBCaの高さ方向一側(図4(B)の下側)の長さ方向両端部に回り込み下地導体層用パターン部分15b1が熱消失性シート部分15a1で覆われた状態で存し、且つ、高さ方向他側(図4(B)の上側)の長さ方向両端部に回り込み下地導体層用パターン部分14b1が露出状態で存し、これらの間に複数の内部導体層用パターン部分12b1及び13b1が内蔵されている。因みに、図4(B)において未焼成積層チップ本体UBCaの高さ方向一側(図4(B)の下側)に記した鎖線は熱消失性シート部分15a1の存在及び厚さの理解を図るためのものであって、実際の未焼成積層チップUBCにおいて該破線に沿うような境界面を目視することはできない。
【0037】
また、前記分断により、図4の左側に示したように、前記未焼成積層チップ本体UBCaの長さ方向一端部に存する回り込み下地導体層用パターン部分15b1及び14b1それぞれの分断端縁は該未焼成積層チップUBCの長さ方向一端面で露出し、図4の右側に示したように、前記未焼成積層チップ本体UBCaの長さ方向他端部に存する回り込み下地導体層用パターン部分15b1及び14b1それぞれの分断端縁は該未焼成積層チップUBCの長さ方向他端面で露出する。さらに、前記分断により、前記未焼成積層チップUBCに内蔵されている複数の内部導体層用パターン部分12b1及び13b1それぞれの分断端縁は、該未焼成積層チップ本体UBCaの長さ方向一端面又は他端面で露出する。先に述べた通り、前記回り込み下地導体層用パターン部分15b1及び14b1の長さ(図4(A)及び図4(B)の左右方向寸法)は、図1(E)及び図1(D)に示した回り込み下地導体層用パターン15b及び14bの幅W15b及びW14bの約1/2であり、前記内部導体層用パターン部分12b1及び13b1の長さ(図4(A)及び図4(B)の左右方向寸法)は、図1(B)及び図1(C)に示した内部導体層用パターン12b及び13bの長さL12b及びL13bの約1/2である。
【0038】
また、前記未焼成積層チップ本体UBCaの高さ方向一側(図4(B)の下側)の長さ方向両端部に存する回り込み下地導体層用パターン部分15b1の表面(図4(B)の下面)と、未焼成積層チップ本体UBCaの高さ方向他側(図4(B)の上側)の長さ方向両端部に存する回り込み下地導体層用パターン部分14b1の表面(図4(B)の上面)は、何れも略平坦である。
【0039】
さらに、前記未焼成積層チップ本体UBCaの高さ方向一側(図4(B)の下側)に存在する熱消失性シート部分15a1は、図4(B)に示したように、厚さ方向一面(図4(B)の下面)は略平坦であるものの、下地導体層用パターン部分15b1それぞれを覆う区域の厚さがそれ以外の区域の厚さよりも薄い。この厚さの変化は、前記積み重ねシートSSを作製する際の熱圧着と前記未焼成積層シートULSを作製する際の本熱圧着に起因する。即ち、前記積み重ねシートSSを作製する際の熱圧着と前記未焼成積層シートULSを作製する際の本熱圧着により、下地導体層用パターン15bは熱消失性シート15aに多少なりとも埋没するため、この埋没によって前記の厚さ変化が生じることになる。
【0040】
次に、トンネル型焼成炉や箱型焼成炉等の焼成装置を用いて、前記未焼成積層チップUBCを多数個一括で焼成して、図5に示した焼成チップBCを作製する。前記焼成の雰囲気は、原則として、未焼成積層チップUBCに使用されている誘電体セラミック粉末及び金属粉末に応じて選択される。例えば、誘電体セラミック粉末がチタン酸バリウムで、金属粉末がニッケルの場合には、還元性雰囲気又は低酸素分圧雰囲気を用いる。また、前記焼成の温度プロファイルは脱バインダー段階と本焼成段階とを含み、各段階の条件、即ち、昇温速度、最高温度及び最高温度保持時間等は、原則として、未焼成積層チップUBCに使用されている誘電体セラミック粉末、金属粉末及び有機バインダーに応じて選択される。例えば、誘電体セラミック粉末がチタン酸バリウムで、金属粉末がニッケルで、全ての有機バインダーがエチルセルロースの場合には、脱バインダー段階の昇温速度を100℃/h前後、最高温度を300℃前後とし、本焼成段階の昇温速度200℃/h前後、最高温度を1200℃前後、最高温度保持時間を24h前後とする。
【0041】
前記焼成チップBCは、図5に示したように、部品本体21(図8を参照)に対応した形状の焼成チップ本体21(図8の部品本体21と符号を共用)を有し、焼成チップ本体21の高さ方向一側(図5の下側)の長さ方向両端部に回り込み下地導体層25が露出状態で存し、且つ、高さ方向他側(図5の上側)の長さ方向両端部に回り込み下地導体層24が露出状態で存し、これらの間に複数の内部導体層22及び23が内蔵されている。
【0042】
図4(A)及び図4(B)に示した未焼成積層チップUBCにあっては、未焼成積層チップ本体UBCaの高さ方向一側(図4(B)の下側)の長さ方向両端部に存する回り込み下地導体層用パターン部分15b1それぞれが熱消失性シート部分15a1で覆われた状態で存しているが、前記焼成により、該熱消失性シート部分15a1が熱消失する。この熱消失性シート部分15a1の熱消失は前記焼成の脱バインダー段階で行うことも可能であるが、該脱バインダー段階で完全に熱消失しない場合でもその後の本焼成段階で完全、且つ、確実に熱消失させることができる。これにより、図5に示した焼成チップBCにあっては、焼成チップ本体21の高さ方向一側(図5の下側)の長さ方向両端部に回り込み下地導体層25が露出する。
【0043】
また、前記焼成よって熱消失性シート部分15a1が熱消失する際に、該熱消失性シート部分15a1の内側に存する下地導体層用パターン部分15b1の焼成及び形態に影響を及ぼすことはないため、前記焼成チップ本体21の高さ方向一側(図5の下側)の長さ方向両端部に露出状態で存する回り込み下地導体層25それぞれの表面(図5の下面)は略平坦なままである。
【0044】
次に、ローラ塗布機やディップ塗布機等の塗布装置と乾燥装置とを用いて、前記焼成チップBCの焼成チップ本体21の長さ方向両端面それぞれに金属ペースト(前記金属ペーストを流用)を塗布して乾燥し、続いて、前記焼成と同様の雰囲気及び条件下で焼き付け処理を行って、図6に示した端面下地導体層26を作製する。
【0045】
図6の左側に示したように、前記焼成チップBCの長さ方向一端面に設けられた端面下地導体層26は、前記焼成チップ本体21の長さ方向一端部に存する回り込み下地導体層25及び24の両方の端縁と連続していると共に、前記焼成チップ本体21の長さ方向一端面で露出する内部導体層22の端縁それぞれに電気的に接続している。また、図6の右側に示したように、前記焼成チップBCの長さ方向他端面に設けられた端面下地導体層26は、前記焼成チップ本体21の長さ方向他端部に存する回り込み下地導体層25及び24の両方と連続していると共に、前記焼成チップ本体21の長さ方向他端面で露出する内部導体層23の端縁それぞれに電気的に接続している。
【0046】
尚、前記端面下地導体層26それぞれの作製は、前記焼成チップBCを作製するときの焼成を利用して行うこともできる。即ち、ローラ塗布機やディップ塗布機等の塗布装置と乾燥装置とを用いて、図4に示した未焼成積層チップUBCの長さ方向一端面及び他端面に金属ペースト(前記金属ペーストを流用)を塗布して乾燥し、続いて、トンネル型焼成炉や箱型焼成炉等の焼成装置を用いて、この未焼成積層チップ20を、前記同様の雰囲気下及び温度プロファイルにて多数個一括で焼成(脱バインダー処理と焼成処理を含む)すれば、一度の焼成によって、前記焼成チップBCの作製と前記端面下地導体層26それぞれの作製を同時に行うことができる。
【0047】
次に、電解メッキ装置やスパッタ装置や真空蒸着装置等の薄膜形成装置を用いて、図6に示した前記焼成チップBCの長さ方向一端部(図6の左端部)に設けられた回り込み下地導体層25及び24の両方と端面下地層26との連続物の表面、並びに、前記焼成チップBCの高さ方向他端部(図6の右端部)に設けられた回り込み下地導体層25及び24の両方と端面下地層26との連続物の表面に、該表面それぞれを覆う図7に示した主導体層27を作製する。この主導体層27の材料は、好ましくはニッケル、銅、パラジウム、白金、銀、金、チタン、スズ、亜鉛、これらの合金等から選択された1種である。また、主導体層27それぞれの厚さ(公差を含まない基準寸法)は、好ましくは0.1〜10μmの範囲内で設定されている。
【0048】
前記焼成チップBCの長さ方向一端部(図6の左端部)に設けられた回り込み下地導体層25及び24の表面(図6の下面と上面)と、前記焼成チップBCの長さ方向他端部(図6の右端部)に設けられた回り込み下地導体層25及び24の表面(図6の下面と上面)は、何れも略平坦であるため、前記主導体層17のこれら表面を覆う部分それぞれの表面(図6の下面と上面)も略平坦となる。
【0049】
以上で、図8に示した積層セラミックコンデンサMLCC、即ち、略直方体状の部品本体21の長さ方向両端部それぞれに多層構造(図中は2層構造)の外部電極28を有する積層セラミックコンデンサMLCCが製造される。この積層セラミックコンデンサMLCCにあっては、先に述べたように、外部電極28それぞれの高さ方向両面が略平坦となるため、該高さ方向両面を導体パッドや導体ビアを接続するときの被接続区域CAとして利用することができる。
【0050】
前述の製造方法によれば、図8に示した外部電極28それぞれの一部となる回り込み下地導体層用パターン部分15b1及び14b1を有する未焼成積層チップUBC(図4を参照)を用いているので、未焼成積層チップ本体UBCaを作製した後に回り込み下地導体層用パターン部分15b1及び14b1に相当する部分を作製する場合に比べて、回り込み下地導体層用パターン部分15b1及び14b1を高い位置精度を確保できると共に該回り込み下地導体層用パターン部分15b1及び14b1として各々の表面(図4(B)の下面と上面)の平坦性を確保できる。加えて、未焼成積層チップUBCを焼成することによって回り込み下地導体層用パターン部分15b1を覆う熱消失性シート部分15aを熱消失させて焼成チップBC(図5を参照)を作製した後に、該焼成により作製された回り込み下地導体層25及び24の略平坦な表面(図4(B)の下面と上面)を覆う主導体層27を作製しているので、該主導体層27の高さ方向両面の平坦性も確保できる。
【0051】
つまり、図8に示した外部電極28それぞれの高さ方向両面を導体パッドや導体ビアを接続するときの被接続区域CAとして利用できるため、例えば被接続区域CAをハンダを介して導体パッドに接続する場合、該被接続区域CAに従前のような顕著な段差や起伏がないことから導体パッドとの隙間を略一様にすることができ、これによりハンダ量の偏りを原因とした接続不良を未然に防止することができる。また、被接続区域CAに導体ビアに接続する場合、該被接続区域CAに従前のような顕著な段差や起伏がないことから導体ビアが接続できる区域を十分に確保することができ、これにより導体ビアの位置公差を原因とした接続不良を未然に防止することができる。さらに、未焼成積層チップUBCを焼成することによって回り込み下地導体層用パターン部分15b1を覆う熱消失性シート部分15aを熱消失させているので、該熱消失性シート部分15aの排除を特別な排除ステップを用いることなく簡単に行うことができる。
【0052】
また、前述の製造方法によれば、前記未焼成積層チップUBC(図4を参照)を、未焼成積層シートULS(図3を参照)を部品本体21(図8を参照)に対応した形状に分断することにより作製しているので、一般的な積層セラミックコンデンサの製造方法と同様の工程にて、図4に示した未焼成積層チップUBCを的確に作製することができる。
【0053】
さらに、前述の製造方法によれば、未焼成積層シートULS(図3を参照)を、図1(A)〜図1(E)に示した第1シート11、第2シート12、第3シート13、第4シート14及び第5シート15を適宜順序で熱圧着しながら積み重ねて作製した積み重ねシートSS(図2を参照)を本熱圧着することにより作製しているので、一般的な積層セラミックコンデンサの製造方法と同様の工程にて、図3に示した未焼成積層シートULSを的確に作製することができる。加えて、前記熱圧着時及び前記本熱圧着時には、回り込み下地導体層用パターン15bの群が形成された熱消失性シート15aから成る第5シート15にも、他のシート同様の圧力が加わるため、この段階で該回り込み下地導体層用パターン15bそれぞれの表面の平坦性を確保して、前記未焼成積層チップUBC(図4を参照)の回り込み下地導体層用パターン部分15b1の表面の平坦性、並びに、前記焼成チップBC(図5を参照)の回り込み下地導体層25の表面の平坦性をより確実に確保することができる。
【0054】
さらに、前述の製造方法によれば、図1(E)に示した第5シート15の熱消失性シート15aの厚さを、他のシート11〜14のセラミックグリーンシート11a〜14aそれぞれの厚さよりも薄くすることにより、前記焼成チップBC(図5を参照)を作製するときの焼成によって熱消失性シート部分15a1を確実に熱消失させることができる。
【0055】
さらに、前述の製造方法によれば、図1(E)に示した第5シート15の熱消失性シート15aとして有機バインダーを主成分としセラミック粉末を含有していないものを用いているので、前記焼成チップBC(図5を参照)を作製するときの焼成の脱バインダー段階で熱消失性シート部分15a1を熱消失させることが可能であるし、該脱バインダー段階で完全に熱消失しない場合でもその後の本焼成段階で完全、且つ、確実に熱消失させることができる。
【0056】
以下に、前述の製造方法の変形例について説明する。因みに、後記M1〜M4は変形例を示す記号である。
【0057】
(M1)前述の製造方法では、積み重ねシートSS(図2を参照)の作製に、セラミックグリーンシート12a上に内部導体層用パターン12bの群がマトリックス配列で形成された第2シート12(図1(B)を参照)と、セラミックグリーンシート13a上に内部導体層用パターン13bの群がマトリックス配列で形成された第3シート13(図1(C)を参照)を2種類用いたが、第2シート12と第3シート13の一方を排除して、第2シート12又は第3シート13の1種類を1枚おきに前記寸法Lsだけ長さ方向にずらしながら積み重ねても、図2に示した積み重ねシートSSと同等の積み重ねシートを作製することができる。
【0058】
(M2)前述の製造方法では、積み重ねシートSS(図2を参照)の作製に、セラミックグリーンシート12a上に内部導体層用パターン12bの群がマトリックス配列で形成された第2シート12(図1(B)を参照)と、セラミックグリーンシート13a上に内部導体層用パターン13bの群がマトリックス配列で形成された第3シート13(図1(C)を参照)を用いたが、第2シート12及び第3シート13の代わりに、図9に示したシート16のみを用いても良い。このシート16は、前記同様のセラミックグリーンシート16aの表面に前記同様の内部導体層用パターン16b(図中は20個の矩形パターン)が千鳥配列で形成されており、上から偶数列目の3個の内部導体層用パターン16bは上から奇数列目の2個の内部導体層用パターン16bと前記同様の寸法Lsだけ長さ方向(図9の左右方向(X方向に相当))にずれている。このシート16を第2シート12及び第3シート13の代わりに用いる場合には、複数のシート16を積み重ねるときに奇数番目又は偶数番目のシート16をθ方向に180度回転させて上下向きを変えれば、図2に示した積み重ねシートSSと同等の積み重ねシートを作製することができる。
【0059】
(M3)前述の製造方法では、主導体層27が1層である外部電極28(図7及び図8を参照)を示したが、先に述べた薄膜形成手法によって、主導体層23の表面に該主導体層23と材料が異なる別の主導体層を1層形成して3層構造の外部電極28を作製したり、さらに別の主導体層を形成して3層を超える多層構造の外部電極28を作製しても、前記同様の効果を得ることができる。
【0060】
(M4)前述の製造方法では、本発明を積層セラミックコンデンサに適用したが、積層セラミックインダクタや積層セラミックバリスタ等の他の積層セラミック電子部品に本発明を適用しても、前記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0061】
11…第1シート、11a…セラミックグリーンシート、12…第2シート、12a…セラミックグリーンシート、12b…内部導体層用パターン、13…第3シート、13a…セラミックグリーンシート、13b…内部導体層用パターン、14…第4シート、14a…セラミックグリーンシート、14b…回り込み下地導体層用パターン、15…第5シート、15a…熱消失性シート、15b…回り込み下地導体層用パターン、SS…積み重ねシート、ULS…未焼成積層シート、UBC…未焼成積層チップ、UBCa…未焼成積層チップ本体、12b1…内部導体層用パターン部分、13b1…内部導体層用パターン部分、14b1…回り込み下地導体層用パターン部分、15b…回り込み下地導体層用パターン部分、15a1…熱消失性シート部分、BC…焼成チップ、21…焼成チップ本体(部品本体)、22,23…内部導体層、24,25…回り込み下地導体層、26…端面下地導体層、27…主導体層、28…外部電極、CA…被接続区域、MLCC…積層セラミックコンデンサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9