(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-201624(P2016-201624A)
(43)【公開日】2016年12月1日
(54)【発明の名称】圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20161104BHJP
【FI】
H03H9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-79211(P2015-79211)
(22)【出願日】2015年4月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水沢 周一
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA02
5J108BB02
5J108BB03
5J108CC11
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE04
5J108EE07
5J108EE13
5J108FF03
5J108FF05
5J108FF07
5J108FF11
5J108GG03
5J108GG13
5J108KK04
(57)【要約】
【課題】振動部12とそれを囲う枠部14とを有する圧電チップをベース部およびリッド部で挟んだ構造の圧電デバイスにおいて、振動部10から引出す第1引出配線20a、第2引出電極20bに起因する静電容量を低減する。
【解決手段】 第1引出電極20aの枠部14上の部分20abを、枠部の第1の主面の、内周側に設け、第2引出電極20bの枠部14上の部分20bbを、枠部14の第2の主面の、第1引出電極部分20abと対向しない側(枠部14の外周側)に設ける。さらに、第1引出電極20aの連結部16上の部分20aaを、連結部の第1主面の幅方向の半分の領域に設け、連結部の第2主面では第2引出電極は連結部の幅方向の半分領域であって第1引出電極と対向しない領域に設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部と、前記振動部を囲う枠部と、前記振動部を前記枠部に連結する連結部と、前記振動部の第1の主面に設けた第1励振電極と、前記振動部の第2の主面に設けた第2励振電極と、前記連結部および前記枠部各々の第1の主面に設けられ前記第1励振電極に接続されている第1引出電極と、前記連結部および前記枠部各々の第2の主面に設けられ前記第2励振電極に接続されている第2引出電極とを具えた圧電チップ、前記枠部の主面のうちのいずれかの主面で前記圧電チップに接合しているリッド部、および、前記枠部の前記リッド部が接合している側とは反対側の主面で前記圧電チップに接合しているベース部を具える圧電デバイスにおいて、
前記第1引出電極の前記枠部上の部分を、前記枠部の前記第1の主面の、内周側又は外周側に設けてあり、
前記第2引出電極の前記枠部上の部分を、前記枠部の前記第2の主面の、前記第1引出電極と対向しない側に設けてあること
を特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電デバイスにおいて、
前記ベース部は、これが接する前記第2引出電極又は第1引出電極に対応する領域に、当該引出電極と共晶接合する第1金属膜を具え、
前記リッド部は、これが接する前記第1引出電極又は第2引出電極に対応する領域に、当該引出電極と共晶接合する第2金属膜を具えること
を特徴とする圧電デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧電デバイスにおいて、
前記枠部は平面視で四角形状であり、前記第1引出電極および第2引出電極は、前記枠部の四隅において前記枠部の全幅に渡るよう拡幅していること
を特徴とする圧電デバイス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電デバイスにおいて、
前記ベース部は、前記圧電チップとは反対面に第1実装端子および第2実装端子を具え、
かつ、
前記第1引出電極と前記第1実装端子とを接続している第1ビア配線と、前記第2引出電極と前記第2実装端子とを接続している第2ビア配線とを具えること
を特徴とする圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動部とそれを囲う枠部とを有する圧電チップをリッド部およびベース部で挟んだ構造の圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ATカット水晶振動子は、圧電デバイスの代表的なものとして知られている。しかし、ATカット水晶振動子の小型化が進むに従い、機械式加工による製造方法では水晶振動子の製造が困難になり、それを回避する構造が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、振動部とそれを囲う枠部とを一体的に形成した圧電チップ(文献では水晶フレームと称する)を、リッド部とベース部とで挟んだ構造の圧電デバイスが提案されている。詳細には、この圧電デバイスは、振動部と枠部との間に、両者を縁切りする貫通部、及び、振動部の一部と枠部とを連結する連結部を具えている。さらに、振動部の表裏に励振電極を具えている。さらに、連結部および枠部各々の第1の主面上に第1引出電極を具え、連結部および枠部各々の第2の主面上に第2引出電極を具えている。これら第1、第2引出電極は、対応する励振電極に接続してある。そして、この第1引出電極は前記枠部の第1主面のほぼ全面に、第2引出電極は前記枠部の第2主面のほぼ全面に設けてある。
【0004】
一方、リッド部およびベース部各々の、上記枠部と接する領域には、上記の第1引出電極又は第2引出電極と共晶結合することのできる金属膜を具えている。そして、第1引出電極又は第2引出電極と、上記金属膜とを共晶接合させることで、圧電チップの一方の面にリッド部を、圧電チップの他方の面にベース部を、それぞれ接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−195918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の圧電デバイスの場合、第1引出電極および第2引出電極が圧電チップの枠部の表裏に対向する状態で設けられているため、引出電極に起因する静電容量が生じてしまい、水晶振動子の並列容量を増加させてしまう。このため、水晶振動子のいわゆる容量比が大きくなるので、水晶振動子の用途によっては周波数可変量が不足する。
【0007】
この発明は上述した点に鑑みなされたものであり、従ってこの発明の目的は、並列容量が増加しにくい圧電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的の達成を図るため、この発明の圧電デバイスは、圧電チップと、リッド部と、ベース部とを具えている。この圧電チップは、振動部と、この振動部を囲う枠部と、これら振動部および枠部を連結する連結部と、この振動部の第1の主面に設けた第1励振電極と、この振動部の第2の主面に設けた第2励振電極と、前記連結部および前記枠部各々の第1の主面に設けられ前記第1励振電極に接続されている第1引出電極と、前記連結部および前記枠部各々の第2の主面に設けられ前記第2励振電極に接続されている第2引出電極とを具えている。また、リッド部は、前記枠部の第1、第2主面のいずれかの主面で前記圧電チップに接合している。また、ベース部は、前記枠部の第1、第2主面のうち前記リッド部が接合している側とは反対側の主面で前記圧電チップに接合している。そして、前記第1引出電極の前記枠部上の部分を、前記枠部の前記第1の主面の、内周側又は外周側に設けてあり、前記第2引出電極の前記枠部上の部分を、前記枠部の前記第2の主面の、前記第1引出電極と対向しない側に設けてあることを特徴とする。
【0009】
ここで、内周側又は外周側とは、典型的には、枠部の幅の中央を境にして振動部側が内周側であり、その反対側が外周側である。枠部の幅の中央を境にした方が、第1、第2引出電極の各々の幅を同等にでき、かつ、共晶接合の接合幅を同等にできるので好ましい。ただし、内周側と外周側との境は、枠部中央から意図的に振動部側又はその反対側に偏在させる場合があっても良い。
【0010】
また、第1、第2引出電極を枠部の内周側又は外周側に互いが対向しないように偏在させて設ける際は、好ましくは枠部の実質的に全周で偏在させるのが好ましい。しかし、場合によって、この偏在率は目的とする静電容量の低減率を考慮して変更できる。ただし、本発明の目的からして、枠部の全周の長さ又は面積に対し好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上の割合で、第1、第2引出電極が対向しないように偏在させるのが良い。
【0011】
また、連結部は1ケ所の場合でも2ケ所以上の場合でも良い。ただし、1ケ所の場合の方が、枠部と振動部との相互作用(例えば音響リークとか応力の影響)を軽減し易いというメリットがある。なお、連結部を1ケ所とする場合は、第1引出電極および第2引出電極各々の、この連結部の第1主面、第2主面に設ける部分同士は、対向しないように設けるのが良い。連結部での静電容量の増加を避けるためである。例えば連結部の第1主面の幅方向の半分の領域に第1引出電極を設け、連結部の第2主面では第2引出電極は第1引出電極と対向しない側に設けるのが良い。
【0012】
また、圧電チップとリッド部との接合、圧電チップとベース部との接合は、低融点ガラスを用いる方法、共晶結合を用いる方法、接着剤を用いる方法等、任意の方法を用いることができる。共晶接合を用いる方法の場合、低融点ガラスや接着剤を用いる場合に比べて出ガスの影響が少ないこと、第1、第2引出電極を接合部材の一方として兼用できること等のメリットがある。共晶接合を用いる場合は、第1、第2引出電極を枠部の主面の全周に沿って設けると共に、前記ベース部は、これが接する前記第2引出電極又は第1引出電極に対応する領域に、当該引出電極と共晶接合する第1金属膜を具えたものとし、前記リッド部は、これが接する前記第1引出電極又は第2引出電極に対応する領域に、当該引出電極と共晶接合する第2金属膜を具えたものとする。こうすると、共晶接合を行い易いので、圧電デバイスの製造工数、コスト削減に有用である。
【0013】
また、この発明の実施に当たり、圧電チップの枠部を平面視で四角形状のものとし、前記第1引出電極および第2引出電極を、前記枠部の四隅において前記枠部の全幅に渡るよう拡幅したもの(拡幅部を有したもの)とするのが良い。こうする際は、リッド部およびベース部に設ける第1、第2金属膜もその部分で幅を広げる。こうすると、圧電デバイスの四隅の接合面積が増える。圧電デバイスでは四隅から接合破壊が生じ易いが、上記のように四隅の接合面積を増やすことにより、四隅からの接合破壊の発生率を軽減できる。
【0014】
また、この発明の実施に当たり、前記ベース部は、前記圧電チップとは反対面に第1実装端子および第2実装端子を具え、かつ、前記第1引出電極と前記第1実装端子とを接続している第1ビア配線と、前記第2引出電極と前記第2実装端子とを接続している第2ビア配線とを具えたものとするのが良い。圧電チップとリッド部との接合、圧電チップとベース部との接合を、共晶接合で行う場合は、圧電デバイス外部への配線引き回しがし難くなるが、上記の第1、第2ビア配線構造を採用すると、それが容易になる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、連結部や枠部での第1引出電極と第2引出電極とが対向する面積を狭くできるので、不要な静電容量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(A),(B)は、第1実施例の圧電デバイスの特に圧電チップ10を説明するための斜視図であり、(A)は圧電チップ10の第1の主面側の図、(B)は圧電チップ10の第2の主面側の図である。
【
図2】は、第1実施例の圧電デバイス100の全体を説明するための斜視図であり、圧電チップ10、ベース部30、リッド部50を分解した状態で示した図である。
【
図3】は、第1実施例の圧電デバイス100の外観を説明するため、その上面、側面、底面を併せて示した図である。
【
図4】(A)、(B)は、第2実施例の圧電デバイスの特に圧電チップ200を説明するための斜視図であり、(A)は圧電チップ200の第1の主面側の図、(B)は圧電チップ200の第2の主面側の図である。
【
図5】は、第1実施例の圧電デバイス100の製法例を説明する図であり、特に圧電チップ10を多数有した圧電ウエハ10Wの説明図である。
【
図6】は、第1実施例の圧電デバイス100の製法例を説明する図であり、特にベース部30を多数有したベースウエハ30Wの説明図である。
【
図7】は、第1実施例の圧電デバイス100の製法例を説明する図であり、特にリッド部50を多数有したリッドウエハ50Wの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照してこの発明の圧電デバイスの実施例について説明する。なお、説明に用いる各図はこの発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の実施例中で述べる形状、寸法、材質等はこの発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明が以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0018】
(第1実施例)
図1(A),(B)は第1実施例の圧電デバイスに具わる圧電チップ10を説明する斜視図であり、特に(A)は第1主面S1側の図、(B)は第2主面S2側の図である。
【0019】
圧電チップ10は、振動部12と、この振動部12を囲う枠部14と、これら振動部12および枠部14を連結する連結部16と、この振動部12の第1の主面S1に設けた第1励振電極18aと、この振動部の第2の主面S2(
図1(B))に設けた第2励振電極18b(
図1(B))と、連結部16および枠部14各々の第1の主面S1に設けられ前記第1励振電極18aに接続されている第1引出電極20aと、連結部16および枠部各々の第2の主面S2(
図1(B))に設けられ第2励振電極18bに接続されている第2引出電極20b(
図1(B))と、を具えている。
【0020】
なお、第1引出電極20aは、連結部16上に設けられた第1部分20aaと、枠部14上に設けられた第2部分20abとで構成してある。第2引出電極20b(
図1(B))は、連結部16上に設けられた第1部分20baと、枠部14上に設けられた第2部分20bbとで構成してある。また、連結部16は1ケ所としてあり、この圧電チップ10は、振動部12と枠部14との間の連結部16以外の部分に、振動部12と枠部14とを縁切りする貫通部22を具えている。さらに、この圧電チップ10は、枠部14の一部に、具体的にはこの例では枠部14の1つの隅部の内側部分に、キャスタレーション24を具えている。このキャスタレーション24は、第1引出電極20aをベース部(詳細は後述する)の第1ビア配線(詳細は後述する)に接続するためのものである。
【0021】
また、振動部12は、その中央部分12aと、この中央部分12aより厚さが薄い周辺部分12bとからなる、いわゆるテーブルトップ構造としてある。さらに、振動部12は平面形状が四角形状のものとしてある。また、枠部14の平面形状も四角形状としてある。従って、この実施例の場合の圧電チップ10全体の平面形状は、四角形状となっている。
【0022】
また、この圧電チップ10では、第1引出電極20aの第2の部分20abを、枠部14の第1の主面S1の、内周側(振動部10側)に設けてあり、第2引出電極20bの第2の部分20bb(
図1(B))を、枠部14の第2の主面S2(
図1(B))の、第1引出電極20aと対向しない側、すなわちこの例では枠部14の外周側に設けてある。しかも、これら第1の引出電極20a、第2の引出電極20b各々は、枠部14の全周に渡って、すなわち、この例の場合は平面視すると四角のリング状に枠部14上に設けてある。なお、この場合の第1引出電極20a、第2引出電極20bは、枠部14の幅方向の中央部分を境にして互いに異なる領域に設けてあるので、各引出電極20a、20b各々の幅は、枠部14の幅Wの半分の値(W/2)となっている。
【0023】
また、第1引出電極20aの連結部14上に設けた第1の部分20aaは、連結部14の第1の主面S1の幅方向の半分の領域に設けてあり、第2引出電極20bの連結部14上に設けた第1の部分20ba(
図1(B))は、第1の引出電極の第1の部分20aaと対向しない領域、すなわち連結部の幅方向の半分の領域に設けてある。
【0024】
この圧電チップ10自体は、ATカットの水晶板で構成してある。励振電極および引出電極は、クロム又はニッケルを下地とし、この上に金を形成した積層膜で構成してある。
上記の圧電チップ10によれば、連結部14および枠部16での、第1引出電極20aと第2引出電極20bとが対向する面積を実質的にゼロにできるので、引出電極に起因する静電容量を従来に比べ低減できる。
【0025】
次に、
図2を参照して、ベース部30の構造と、リッド部50の構造と、これらベース部30、リッド部50および上記の圧電チップ10の接合構造について説明する。
第1実施例のベース部30は、圧電チップ10と外形が同じかつほぼ同じ寸法、すなわち、平面形状が四角形状でほぼ同じ寸法のものとしてある。そして、ベース部30の圧電チップ10と接合される側の面の、第2引出電極20bの第2の部分20bb(
図1(B))と対応する領域に、第2引出電極20bと共晶接合する第1の金属膜32を具えている。
また、ベース部30の圧電チップ10が接合される面とは反対面に、この圧電デバイスを外部の配線基板(図示せず)等に接続するための実装端子34a〜34dを具えている。
【0026】
また、ベース部30の、圧電チップ10のキャスタレーション24と対応する部分に、圧電チップの第1引出電極20aを実装端子34a(第1実装端子34a)に接続するための第1ビア配線36aを具えている。また、ベース部30の、第1ビア配線36aを設けた領域以外の好適な領域に、この例では第1ビア配線36aの位置に対し対角線上の隅部に、第2ビア配線36bを具えている。この第2ビア配線36bは、圧電チップの第2引出電極20bを実装端子34b(第2実装端子34b)に接続するためのものである。これら第1、第2ビア配線36a,36bは、ベース30に貫通孔を設けこの貫通孔中に好適な導電性材料を埋める等の構造としてある。なお、この例では4個の実装端子34a〜34dを具えている。実装端子34c,34dは、例えばアース端子として使用するとか、実装強度を挙げるための端子として使用できるからである。ただし、第1、第2実装端子34a、34bのみの場合があっても良い。
【0027】
また、実施例のリッド部50は、圧電チップ10と外形が同じかつほぼ同じ寸法、すなわち、平面形状が四角形状でほぼ同じ寸法のものとしてある。そして、圧電チップ10と接合される側の面の、第1引出電極20aの枠部14上に設けてある部分すなわち第2の部分20ab))と対応する領域に、第1引出電極20aと共晶結合する第2の金属膜52を具えている。
【0028】
これらベース部30及びリッド部50は、圧電チップ10と同様、水晶のATカット板で構成してある。また、第1の金属膜32及び第2の金属膜52の材料として、金シリコン合金、金ゲルマニウム合金、金スズ合金等の公知のものを用いている。
この
図2を用いて説明した構成において、圧電チップ10とベース30とは、第2引出配線20bの第2の部分20bb(
図1(B))と第1金属膜32との共晶接合によって接合し、圧電チップ10とリッド50とは、第1引出配線20aの第2の部分20abと第2金属膜52との共晶金属接合によって接合してある。圧電チップ10、ベース部30およびリッド部50を接合して構成される圧電デバイスの内部空間は真空又は窒素雰囲気若しくは不活性ガス雰囲気としてある。
【0029】
図3は、上述した第1実施例の圧電デバイス100の外観を示した図であり、上面、側面及び底面を併せて示した図である。圧電チップ10、ベース部30およびリッド部50が積層されていて、かつ、ベース部の底面に4個の実装端子34a〜34dを具えた状態を示している。
【0030】
(第2実施例)
次に、第2実施例の圧電デバイスについて説明する。
図4はその説明図であり、第2実施例の圧電デバイスに具わる圧電チップ200に着目した斜視図である。
図1と同様に、圧電チップ200を一方の主面側から見た状態((A)図)、他方の主面側から見た状態((B)図)により示してある。
【0031】
この第2実施例の圧電チップ200の第1実施例の圧電チップ10との相違点は、第1および第2引出電極の枠部上に設ける部分の形状である。すなわち、この第2実施例の圧電チップ200は、第1引出電極202および第2引出電極204各々を、枠部14の四隅において枠部14の全幅に渡るよう拡幅した拡幅部206を有したことを特徴するものである。図示は省略するが、ベース部およびリッド部についても、それに設ける第1金属膜および第2金属膜は、拡幅部206に対応する部分を拡幅させた拡幅部を有したものとする。それ以外は、第1実施例と同様の構成としてある。
この第2実施例の構造によれば、圧電デバイスの隅部での圧電チップとベース部との接合面積、圧電チップとリッド部との接合面積を第1実施例の場合と比べて少なくとも2倍に広くできるので、隅部での接合強度を第1実施例に比べて強くできる。
【0032】
(製造法の説明)
次に、この発明の理解を深めるために、圧電デバイス100の製法例を
図5〜
図7を参照して簡単に説明する。
図5に示すように、ATカットの水晶ウエハを用意し、それら水晶ウエハを公知のフォトリソグラフィ技術、ウエットエッチング技術および成膜技術等により加工して、第1実施例の圧電チップ10をマトリクス状に形成した圧電ウエハ10Wを作製する。この際、振動部の周波数調整も行う。なお、
図5中に「L」で示した破線は、後にダイシングにより分割する箇所である(
図6、
図7において同じ)。
圧電ウエハ10Wを作製した方法と同様の方法により、ベースウエハ30Wおよびリッドウエハ50Wをそれぞれ作成する(
図6、
図7)。
【0033】
次に、これら圧電ウエハ10W、ベースウエハ30W及びリッドウエハ50Wを、所定の位置関係で重ね、次に、これらを所定の雰囲気中に置いた状態で、所定の圧力及び温度で加圧・加熱する。この処理にて、共晶接合が生じて、各ウエハ同士は接合する。次に、この接合状態のウエハをダイシングラインに沿ってダイシングすることで、ウエハから圧電デバイスを個片化する。
【0034】
上述においては、この発明の圧電デバイスの実施例を説明したが、この発明は上述の例に限られない。例えば、上述の例では、振動部をテーブルトップ構造のものとしたがこれ以外の構造でももちろん良い。振動部を平面視四角形状のものとしたが、振動部の形状は他の構造でも良い。また、圧電材料として水晶を用いたが、これに限られない。
【符号の説明】
【0035】
10:実施例の圧電チップ、10W:圧電ウエハ
12:振動部
12a:振動部の中央部分、12b:振動部の周辺部分
14:枠部
16:連結部
18a:第1励振電極、18b:第2励振電極
20a:第1引出電極、20b:第2引出電極
20aa:第1引出電極の第1部分(連結部上にある部分)
20ab:第1引出電極の第2部分(枠部上にある部分)
20ba:第2引出電極の第1部分(連結部上にある部分)
20bb:第2引出電極の第2部分(枠部上にある部分)
22:貫通部
24:キャスタレーション
30:ベース部、30W:ベースウエハ
32:第1金属膜
34a:第1実装端子、34b:第2実装端子、34c、34d:実装端子
36a:第1ビア配線、36b:第2ビア配線
50:リッド部、50W:リッドウエハ
52:第2金属膜
S1:第1の主面、S2:第2の主面
L:ダイシングライン
100:第1実施例の圧電デバイス
200:第2実施例の圧電デバイスの圧電チップ
202:第2実施例の第1引出配線、
204:第2実施例の第2引出配線
206:拡幅部