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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-202193(P2016-202193A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】液体投与具
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/28 20060101AFI20161111BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   A61M5/28
   A61M5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-208701(P2013-208701)
(22)【出願日】2013年10月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(72)【発明者】
【氏名】有延 学
(72)【発明者】
【氏名】今井 正臣
(72)【発明者】
【氏名】飯渕 るり子
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE14
4C066FF05
4C066GG05
4C066GG11
4C066GG20
4C066HH11
4C066LL13
(57)【要約】
【課題】針管の回転を抑制して生体への負担を低減できる液体投与具を提供する。
【解決手段】内部に液体を収容可能なシリンジ60と、シリンジ60の内部と連通可能な針管66と、シリンジ60を保持する内部構造体40と、内部構造体40に対して先端方向へ付勢されて針管66の外周を囲み、先端側に開口部38が形成され、内部構造体40に対して基端方向へ移動することで針管66を開口部38から先端方向へ突出させるカバー部材30と、シリンジ60、内部構造体40およびカバー部材30の少なくとも一部を覆うように形成され、内部構造体40に対して先端方向へ移動することでシリンジ60の内部の液体を針管66から吐出させる把持部20と、を有する液体投与具10であり、内部構造体40が、把持部20に対して回転可能であり、シリンジ60を相対的に回転可能に支持する支持部118を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を生体内へ投与するための液体投与具であって、
内部に液体を収容可能な収容体と、
前記収容体の内部と連通可能な針管と、
前記収容体を保持する内部構造体と、
前記内部構造体に対して先端方向へ付勢されて前記針管の外周を囲み、先端側に開口部が形成され、前記内部構造体に対して基端方向へ移動することで前記針管を前記開口部から先端方向へ突出させるカバー部材と、
前記収容体、内部構造体およびカバー部材の少なくとも一部を覆うように形成され、前記内部構造体に対して先端方向へ移動することで前記収容体の内部の液体を前記針管から吐出させる把持部と、を有し、
前記内部構造体は、前記把持部に対して回転可能であり、かつ前記収容体を相対的に回転可能に支持する支持部を備える液体投与具。
【請求項2】
前記収容体は、シリンジ筒体および当該シリンジ筒体に嵌合するガスケットを有し、
前記把持部は、前記ガスケットに連結される請求項1に記載の液体投与具。
【請求項3】
前記支持部は、基端方向へ突出し、前記収容体の先端方向に向かう面に摺動可能に接する請求項1または2に記載の液体投与具。
【請求項4】
前記支持部は、前記収容体の液体を吐出する吐出口を囲む先端面に摺動可能に接する請求項3に記載の液体投与具。
【請求項5】
前記内部構造体は、前記収容体の一方向への回転を許容し、逆方向へ回転する際に前記収容体と接触して回転を規制する回転規制部を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体投与具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内へ液体を投与するための液体投与具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、予め薬剤等の液体が充填されたプレフィルドシリンジが知られている。プレフィルドシリンジは、通常、液体が収容されるとともに、先端に液体を吐出させる吐出口が形成されるシリンジ外筒と、シリンジ外筒の吐出口に設けられる針管と、シリンジ外筒内を摺動可能なガスケットと、ガスケットを先端方向へ押圧するための押し子とを備えている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、プレフィルドシリンジは、患者が家庭で自己投与する場合にも用いられる。そのため、例えば、安全性を向上させるために、針管をカバー部材で覆い、投与の際のみカバー部材から針管が突出し、投与後には針管を再びカバー部材で覆う構造とするなど、種々の機能を付加する場合がある。しかしながら、機能を付加することで針管が回転する構造となると、針管を穿刺する際に生体への負担が大きくなり、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2013−508032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した課題を解決するものであり、針管の回転を抑制して生体への負担を低減できる液体投与具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明に係る液体投与具は、液体を生体内へ投与するための液体投与具であって、内部に液体を収容可能な収容体と、前記収容体の内部と連通可能な針管と、前記収容体を保持する内部構造体と、前記内部構造体に対して先端方向へ付勢されて前記針管の外周を囲み、先端側に開口部が形成され、前記内部構造体に対して基端方向へ移動することで前記針管を前記開口部から先端方向へ突出させるカバー部材と、前記収容体、内部構造体およびカバー部材の少なくとも一部を覆うように形成され、前記内部構造体に対して先端方向へ移動することで前記収容体の内部の液体を前記針管から吐出させる把持部と、を有し、前記内部構造体は、前記把持部に対して回転可能であり、かつ前記収容体を相対的に回転可能に支持する支持部を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成した液体投与具は、内部構造体が、把持部に対して回転可能であるとともに、収容体を相対的に回転可能に支持する支持部を備えるため、内部構造体が把持部に対して回転しても、収容体に連通する針管を、把持部に対して極力回転しないように維持することが可能となり、針管の回転を抑制して生体への負担を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る液体投与具を示す側面図である。
図2】実施形態に係る液体投与具を示す縦断面図である。
図3】把持部筒体を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
図4】把持部基端部を示す斜視図である。
図5】押し子を示す斜視図である。
図6】カバー部材を示す斜視図である。
図7】回転子を示す斜視図である。
図8】カバー部材および回転子を示す図であり、(A)は回転子がカバー部材に対して一方側へ回転した状態を示す斜視図、(B)は回転子がカバー部材に対して他方側へ回転した状態を示す斜視図である。
図9】回転筒基端部を示す斜視図である。
図10】押し子および回転筒基端部を示す図であり、(A)は押し子ロック機構が作動している状態を示す斜視図、(B)は押し子ロック機構が解除された状態を示す斜視図である。
図11】回転筒先端部を示す図であり、(A)はカム溝を中心とする斜視図、(B)は安全用溝を中心とする斜視図である。
図12】回転筒先端部を示す平面図である。
図13】実施形態に係る液体投与具の動作状態を説明するための側面図であり、(A)は初期状態、(B)は投与を一時停止した状態、(C)は投与の完了時、(D)は安全機構作動後を示す。
図14】実施形態に係る液体投与具の回転規制部の動作状態を説明するための側面図であり、(A)は初期状態、(B)は投与の完了時の状態を示す。
図15】実施形態に係る液体投与具の回転子突起部および階段溝の動作状態を説明するための側面図であり、(A)は初期状態、(B)は投与を一時停止した状態、(C)は投与の完了時、(D)は安全機構作動後を示す。
図16】実施形態に係る液体投与具の動作状態を説明するための側面図であり、(A)は動作誘導機構、(B)は安全機構を示す。
図17】実施形態に係る液体投与具の動作状態を説明するための側面図であり、(A)は動作誘導機構、(B)は安全機構を示す。
図18】実施形態に係る液体投与具の動作状態を説明するための側面図であり、(A)は動作誘導機構、(B)は安全機構を示す。
図19】実施形態に係る液体投与具の動作状態を説明するための側面図であり、(A)は動作誘導機構、(B)は安全機構を示す。
図20】実施形態に係る液体投与具の動作状態を説明するための側面図であり、(A)は動作誘導機構、(B)は安全機構を示す。
図21】実施形態に係る液体投与具の動作状態を説明するための縦断面図である。
図22】実施形態に係る液体投与具の動作状態を説明するための側面図であり、(A)は動作誘導機構、(B)は安全機構を示す。
図23】実施形態に係る液体投与具の変形例を示す側面図であり、(A)は初期状態、(B)は安全機構作動後を示す。
図24】実施形態に係る液体投与具の他の変形例を示す側面図であり、(A)は初期状態、(B)は安全機構作動後を示す。
図25】実施形態に係る液体投与具のさらに他の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、以下の説明において、液体投与具の操作側(使用者が押圧する側)を「基端側」、疑似的に液体を投与する側を「先端側」と称す。
【0010】
図1,2に示す実施形態に係る液体投与具10は、薬剤等の液体を生体内に投与するための医療用のデバイスである。
【0011】
液体投与具10は、使用者が把持して操作を行うための把持部20(上部ハウジング)と、把持部20に対して移動可能に設けられるカバー部材30と、把持部20およびカバー部材30の内部に回転可能に設けられる内部構造体40と、内部構造体40に保持されるシリンジ60(収容体)と、カバー部材30の基端側に設けられる回転子50と、カバー部材30を内部構造体40に対して先端方向へ付勢する第1コイルバネ11と、把持部20の内部に配置される第2コイルバネ12とを備えている。液体投与具10は、通常、カバー部材30および針管66にキャップ(図示せず)が被せられて提供され、キャップを取り外して使用される。
【0012】
把持部20は、使用者が把持して液体の投与操作を行う部位であり、使用者が把持して押圧するための筒状の把持部筒体70と、把持部筒体70の基端側の開口を塞ぐように設けられる把持部基端部80と、押し子90とを備えている。
【0013】
把持部筒体70は、図1,2および3に示すように、内部構造体40の外周面を囲むように配置され、外部から内部を観察可能とするための第1窓部71と、把持部基端部80を係合させるための2つの把持部係合孔72とが形成されている。また、把持部筒体70の内周面には、軸方向へ延びる2つの把持部第1溝73と、2つの把持部第2溝74と、2つの階段溝75とが形成されている。
【0014】
第1窓部71は、外周面から内周面まで貫通する貫通孔で形成される。第1窓部71からは、把持部筒体70の内部に配置される内部構造体40を構成する回転筒基端部100、把持部基端部80に設けられる背景部83、カバー部材30、および回転子50の少なくとも1つを観察可能となっている。なお、第1窓部71からは、回転筒先端部110やシリンジ60が観察可能であってもよい。
【0015】
2つの把持部係合孔72は、把持部20の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、外周面から内周面まで貫通する貫通孔で形成される。なお、把持部係合孔72は、把持部基端部80を係合可能であれば、貫通孔でなくてもよい。
【0016】
2つの階段溝75は、把持部20の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、基端側が把持部筒体70の基端部まで達し、先端側に、階段状の複数の段を有する階段部76が形成されている。階段部76は、把持部筒体70の周方向の一方側に、最も先端側まで延在する階段開始部77が形成され、階段開始部77から基端側へ段階的に段差が配置される階段中間部78が形成され、周方向の他方側に、階段中間部78から先端側へ延在する階段終了部79が形成されている。階段溝75には、回転子50に形成される回転子突起部52(図7を参照)が移動可能に収容されるとともに、基端側から、押し子90に形成される押し子延長部93(図5を参照)が係合される。
【0017】
2つの把持部第1溝73は、把持部20の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、後述するカバー部材30の外周面に形成されるガイド用リブ33(図6を参照)を、軸方向へ移動可能に収容する。2つの把持部第2溝74は、中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、後述するカバー部材30の外周面に形成される離脱防止用凸部34(図6を参照)を、軸方向へ移動可能に収容する。把持部第2溝74は、把持部筒体70の先端まで到達せず、基端面よりも基端側まで形成されている。
【0018】
把持部基端部80は、図1,2および4に示すように、把持部筒体70と係合する2つの把持部係合爪81と、回転筒基端部100と係合して音を発する2つの音発生用爪82(音発生部)と、第1窓部71の内側に配置されて背景となる2つの背景部83とを備えている。
【0019】
2つの把持部係合爪81は、把持部20の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、把持部筒体70の把持部係合孔72と係合可能である。把持部係合爪81が把持部係合孔72に係合することで、把持部筒体70、把持部基端部80、および、これらに挟まれる押し子90が、一体的に移動する構成となる。2つの背景部83は、把持部20の中心軸を挟んで対向する位置に設けられる。
【0020】
押し子90は、図1,2および5に示すように、把持部筒体70および把持部基端部80の間に挟まれて配置される。押し子90は、把持部筒体70および把持部基端部80に挟まれる平板状の押し子平板部91と、押し子平板部91の中心部から先端方向へ延在する押し子本体部92とを備えている。押し子平板部91には、先端方向へ延在する2つの押し子延長部93と、背景部83が貫通する2つの背景部挿通孔94と、音発生用爪82が貫通する2つの音発生用挿通孔95と、把持部係合爪81が貫通する2つの係合爪挿通孔96とが形成されている。押し子本体部92は、シリンジ60に収容される液体を吐出させるために、シリンジ60に設けられるガスケット67を押圧する部位である。押し子本体部92には、側方へ延在し、所定の条件が満たされるまで押し子90のシリンジ筒体61に対する移動を制限する押し子ロック用突起部97が形成される。
【0021】
2つの押し子延長部93は、把持部筒体70の階段溝75に係合され、階段部76の基端側に対向して配置される。押し子延長部93の先端部は、周方向に向かって傾斜して形成されており、階段溝75に収容される回転子突起部52と接触可能である。
【0022】
カバー部材30は、図1,2および6に示すように、筒状のカバー筒部31と、カバー筒部31の先端側の開口を塞ぐように形成される平面状のカバー先端部32とを備えている。カバー筒部31には、外部から内部のシリンジ60を観察可能とするための2つの第2窓部35が形成される。2つの第2窓部35は、カバー筒部31の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、カバー筒部31の外周面から内周面まで貫通する貫通孔で形成される。なお、第2窓部35は、貫通孔ではなく、透明な材料により形成されてもよい。
【0023】
カバー筒部31の外周面には、軸方向へ延在する2つのガイド用リブ33と、2つの離脱防止用凸部34とが形成されている。2つのガイド用リブ33は、カバー部材30の中心軸を挟んで対向する位置に径方向外側へ突出して設けられ、把持部20の把持部第1溝73(図3を参照)に収容される。これにより、カバー部材30は、把持部20に対して相対的に回転することなく、相対的に軸方向へのみ移動可能である。また、ガイド用リブ33が把持部第1溝73に係合することで、カバー部材30の把持部20に対するがたつきを抑制できる。
【0024】
2つの離脱防止用凸部34は、カバー部材30の中心軸を挟んで対向する位置に径方向外側へ突出して設けられ、把持部20の把持部第2溝74に収容される。離脱防止用凸部34は、把持部20およびカバー部材30が軸方向に沿って相対的に離れた際に、離脱防止用凸部34が把持部第2溝74(図3を参照)の先端部に引っ掛かり、カバー部材30が把持部20から完全に離脱することを防止する。
【0025】
カバー筒部31の内周面には、2つの安全用凸部36と、2つの誘導用凸部37が形成されている。2つの安全用凸部36は、カバー部材30の中心軸を挟んで対向する位置に径方向内側へ突出して設けられ、後述する内部構造体40の安全用溝113(図11を参照)に収容される。各々の安全用凸部36は、カバー筒部31に形成されるスリット361に挟まれており、したがって、径方向外側へ撓むように移動可能である。
【0026】
2つの誘導用凸部37は、カバー部材30の中心軸を挟んで対向する位置に径方向内側へ突出して設けられ、後述する内部構造体40のカム溝112(図11を参照)に収容される。各々の誘導用凸部37は、カバー筒部31に形成されるスリット371に挟まれており、したがって、径方向外側へ撓むように移動可能である。
【0027】
カバー筒部31の基端部には、回転子50の回転子係合爪51(図7を参照)が、周方向へ移動可能に係合する2つのカバー部材係合孔39が形成されている。2つのカバー部材係合孔39は、カバー部材30の中心軸を挟んで対向する位置に形成される。
【0028】
カバー部材30のカバー先端部32には、カバー部材30の中心軸上に、針管66を先端方向へ通過させる開口部38が形成されている。
【0029】
カバー部材30の外周面の一部には、第1窓部71と背景部83の間の隙間に入り込み、第1窓部71を介して外部から視認可能なカバー部材視認部31Aが含まれる。カバー部材視認部31Aには、ガイド用リブ33および離脱防止用凸部34の基端部が含まれる。カバー部材視認部31Aは、第1窓部71から観察可能な背景部83、回転子50および回転筒基端部100との違いを識別できるように、これらと異なる色で着色されることが好ましい。また、カバー部材視認部31Aは、表面に背景部83、回転子50および回転筒基端部100と異なる凹凸形状(ガイド用リブ33および離脱防止用凸部34)が形成されており、触覚による識別も可能である。一方、カバー部材視認部31以外に、触覚によって識別可能な部位が設けられてもよい。
【0030】
回転子50は、図7,8に示すように、環状に形成され、カバー部材30の基端部に当接し、カバー部材30に対して所定の角度範囲内で回転可能である。回転子50は、先端方向へ延びる2つの回転子係合爪51を備えている。2つの回転子係合爪51は、カバー部材30の中心軸を挟んで対向する位置に形成される。回転子係合爪51は、カバー部材係合孔39に係合し、カバー部材係合孔39が形成される範囲内で、周方向へ移動可能である。また、回転子50の外周面には、2つの回転子突起部52が形成されている。2つの回転子突起部52は、カバー部材30の中心軸を挟んで対向する位置に径方向外側へ突出して設けられ、把持部20の階段溝75(図3を参照)に収容される。
【0031】
回転子50の外周面の一部には、第1窓部71と背景部83の間の隙間に入り込み、第1窓部71を介して外部から視認可能な回転子視認部53が含まれる。回転子視認部53は、第1窓部71から観察可能な背景部83および回転筒基端部100との違いを識別できるように、これらと異なる色で着色されることが好ましく、カバー部材30と同じ色がさらに好ましいが、カバー部材30と異なる色の場合もある。また、回転子視認部53は、表面に背景部83、カバー部材30および回転筒基端部100と異なる凹凸が形成されて、視覚または触覚によって違いを識別可能としてもよい。
【0032】
シリンジ60は、図2に示すように、内部に液体を収容可能な筒状のシリンジ筒体61と、シリンジ筒体61の内部に摺動可能に配置されるガスケット67とを備えている。シリンジ筒体61の先端には、針管66が取り付けられている。
【0033】
シリンジ筒体61は、基端側のフランジ62に基端開口部63が形成され、先端側に液体が通過する吐出口64が形成されている。針管66は、内部の流路がシリンジ60の吐出口64と連通するようにシリンジ筒体61の先端に固定されており、先端に鋭利な針先が形成されている。ガスケット67は、押し子本体部92の先端部が接触しており、シリンジ筒体61の内壁面65に密着して液密性を維持しつつ、シリンジ筒体61の軸方向に沿って摺動可能に配置される。ガスケット67が押し子本体部92によって押圧されてシリンジ筒体61の内部を先端方向へ移動することで、シリンジ筒体61とガスケット67によって規定される空間内の液体を、吐出口64を介して針管66から吐出させることができる。押し子本体部92とガスケット67の間は、接触するのみで連結させているが、摩擦力が作用することで、ガスケット67は押し子90に対して回転しない。なお、ガスケット67が押し子90に対してより非回転的となるように、ガスケット67と押し子90を強固に連結させてもよい。連結させる方法として、例えば、接着したり、または、押し子90の先端部に凸部を設け、ガスケット67に凸部が嵌合する凹部を設けて嵌合させることで連結させてもよい。
【0034】
内部構造体40は、図2に示すように、シリンジ60を保持しつつ、把持部20およびカバー部材30の内部に中心軸を中心として回転可能に設けられる。内部構造体40は、基端側に設けられる回転筒基端部100(中間ハウジング)と、回転筒基端部100の先端側に連結される回転筒先端部110(下部ハウジング)とを備えている。
【0035】
回転筒基端部100は、図2,9に示すように、音発生用爪82(図4を参照)が係合する2つの音発生用孔101と、押し子ロック用突起部97(図5を参照)と接する2つの押し子ロック用傾斜部102と、回転筒先端部110と係合する2つの回転筒係合爪103とを備えている。
【0036】
2つの音発生用孔101は、内部構造体40の中心軸を挟んで対向する位置に形成され、把持部基端部80に形成される音発生用爪82が係合されることで、音を発する。2つの押し子ロック用傾斜部102は、内部構造体40の中心軸を挟んで対向する位置に形成され、液体投与具10が提供される初期状態において、図10(A)に示すように、押し子90に形成される押し子ロック用突起部97の先端側に位置し、押し子90の先端方向への移動を制限して、液体の投与を制限する。この状態から、回転筒基端部100が押し子90に対して回転すると、押し子ロック用傾斜部102が押し子ロック用突起部97の先端方向の位置から外れ、押し子90の先端方向への移動の制限が解除され、液体の投与が可能となる。すなわち、押し子ロック用傾斜部102および押し子ロック用突起部97は、押し子90の移動を、所定の条件が満たされるまで制限する押し子ロック機構として機能する。
【0037】
2つの回転筒係合爪103は、内部構造体40の中心軸を挟んで対向する位置に形成され、回転筒先端部110に形成される回転筒係合孔111(図11を参照)に係合する。回転筒係合爪103が回転筒係合孔111に係合することで、回転筒基端部100および回転筒先端部110は、一体的に移動する構成となる。
【0038】
回転筒基端部100の外周面の基端部には、径方向外側へ突出するフランジ状の外周凸部104が形成されている。回転筒基端部100の外周面の一部には、第1窓部71と背景部83の間の隙間に入り込み、第1窓部71を介して外部から視認可能な回転筒視認部105が形成される。回転筒視認部105には、径方向外側へ突出する外周凸部104が含まれている。回転筒視認部105は、第1窓部71から観察可能な背景部83、回転子50およびカバー部材30との違いを識別できるように、これらと異なる色で着色されることが好ましい。また、回転筒視認部105は、背景部83、回転子50およびカバー部材30と異なる凹凸形状(外周凸部104)が形成されて、視覚または触覚によって違いを識別可能である。
【0039】
回転筒先端部110は、図11,12に示すように、外周面に、回転筒基端部100の回転筒係合爪103(図9を参照)が係合する2つの回転筒係合孔111と、2つのカム溝112と、2つの安全用溝113とが形成されている。
【0040】
2つの回転筒係合孔111は、内部構造体40の中心軸を挟んで対向する位置に形成され、回転筒基端部100に形成される回転筒係合爪103が係合する。
【0041】
2つのカム溝112は、内部構造体40の中心軸を挟んで対向する位置に形成され、カバー部材30の誘導用凸部37(図6を参照)を収容し、誘導用凸部37を溝に沿って相対的に移動させる。すなわち、カム溝112および誘導用凸部37は、内部構造体40とカバー部材30の相対的な動作を規定するカム機構(動作誘導機構)として機能する。
【0042】
カム溝112は、回転筒先端部110の軸方向へ延在し、直線状に形成される初期直線溝112Aと、回転筒先端部110の軸方向に対して傾斜するように形成される傾斜溝112Bと、回転筒先端部110の軸方向へ延在し、直線状に形成される直線溝112Cとを備えている。
【0043】
初期直線溝112Aは、外周面の先端部から基端方向へ延在して形成されている。初期直線溝112Aの先端部には、デバイスの組み立ての際に、誘導用凸部37を初期直線溝112Aへ離脱不能に受け入れる段差部114が形成されている。段差部114は、先端側が内側へ傾斜して形成されており、この傾斜面114Aに沿って誘導用凸部37を滑らしつつ初期直線溝112Aへ導くことができる。また、段差部114は、基端側に、回転筒先端部110の軸方向に対して略90度で切り立つ壁面114Bが形成されており、一旦、傾斜面114Aを通って段差部114を基端側へ超えた誘導用凸部37が、再び段差部114の壁面114Bを超えて離脱することを抑制する。
【0044】
傾斜溝112Bは、初期直線溝112Aの基端部と連通して形成されており、初期直線溝112Aの基端部から基端方向へ傾斜して延在している。傾斜溝112Bは、1周よりも短く形成されている。
【0045】
直線溝112Cは、傾斜溝112Bの基端部と連通して形成されており、傾斜溝112Bの基端部から、先端方向へ延在している。
【0046】
なお、カム溝112が、カバー部材30に形成され、誘導用凸部37が、内部構造体40に形成されてもよい。
【0047】
2つの安全用溝113は、内部構造体40の中心軸を挟んで対向する位置に形成され、カバー部材30の安全用凸部36を収容する。安全用溝113は、カム溝112および誘導用凸部37によって相対的に移動する内部構造体40およびカバー部材30の位置関係に応じて、カバー部材30の内部構造体40に対する相対的な軸方向の移動を規制する。したがって、安全用溝113および安全用凸部36は、カバー部材30が内部構造体40に対して基端方向へ移動し、すなわち、針管66を生体に穿刺して液体の投与を完了し、カバー部材30が内部構造体40に対して先端方向へ移動した後には、カバー部材30が内部構造体40に対して再び基端方向へ移動して針管66が突出することを抑制する安全機構を構成する。
【0048】
安全用溝113は、回転筒先端部110の軸方向へ延在して直線状に形成される第1安全用溝113Aと、第1安全用溝113Aと並んで平行に延在する第2安全用溝113Bと、第1安全用溝113Aと第2安全用溝113Bの基端部を連通させる基端側連通溝113Cとを備えている。
【0049】
第2安全用溝113Bには、安全用凸部36の先端方向への移動を許容するが、基端方向への移動を抑制する安全用段差部115が形成されている。安全用段差部115は、基端側の安全用傾斜面115Aが第2安全用溝113Bの内側から傾斜して形成されており、この安全用傾斜面115Aに沿って安全用凸部36を滑らしつつ先端側へ導くことができる。また、安全用段差部115は、先端側に、回転筒先端部110の軸方向に対して略90度で切り立つ安全用壁面115Bが形成されており、一旦安全用傾斜面115Aを通って安全用段差部115を先端方向へ超えた安全用凸部36が、安全用段差部115と係合し、再び安全用段差部115を基端方向へ超えることを抑制する。
【0050】
内部構造体40およびカバー部材30は、動作誘導機構において誘導用凸部37が初期直線溝112Aに位置する際に、安全用段差部115および安全用凸部36が、回転軸と平行な同一軸上に並ばない第1の状態となる。この第1の状態において、安全用凸部36は、第1安全用溝113Aに位置し、内部構造体40およびカバー部材30が軸方向へ相対的に移動しても、安全用段差部115および安全用凸部36が係合することはない。そして、内部構造体40およびカバー部材30は、誘導用凸部37が直線溝112Cに位置する際に、安全用段差部115および安全用凸部36が、回転軸と平行な同一軸上に並ぶ第2の状態となる。この第2の状態において、安全用凸部36は、第2安全用溝113Bに位置し、内部構造体40およびカバー部材30が軸方向へ相対的に移動することで、安全用段差部115および安全用凸部36が係合可能である。
【0051】
なお、安全用溝113が、カバー部材30に形成され、安全用凸部36が、内部構造体40に形成されてもよい。
【0052】
また、回転筒先端部110は、基端方向へ延在する回転筒延長部116と、シリンジ筒体61を相対的に回転可能に支持する支持部118とを備えている。回転筒延長部116の基端部には、シリンジ筒体61の中心軸回りの一方向側への回転を規制するようにフランジ62の側面に接する回転規制部117が形成される。回転規制部117は、組み立て時にフランジ62に接触せることで、シリンジ筒体61を適正な回転方向の位置で配置させる役割を果たす。なお、回転規制部117は、シリンジ筒体61の中心軸回りの逆方向側への回転は規制せずに許容する。
【0053】
支持部118は、シリンジ筒体61の先端方向に向かう先端面68に摺動可能に接するように、基端方向へ突出している。支持部118は、吐出口64を囲むように、複数に分割されて環状に形成される。なお、支持部118は、複数に分割されなくてもよい。複数に分割されている場合、先端面68と支持部118の接触面積が小さくなるので、シリンジ筒体61をより摺動可能にしやすいのでより好ましい。支持部118は、突出する頂点で先端面68と接触し、接触面積が小さいため、シリンジ筒体61を回転方向へ摺動可能に支持することができる。支持部118の突出する頂点の形状は接触面積が小さくなる形状であればよい。支持部118の突出する頂点の形状は、球面状であれば、シリンジ筒体61がより摺動可能になるのでより好ましい。支持部118が少なくとも3点に分割されており、基端部から先端部を見たときに支持部118の形状が円状で、かつ突出する頂点も球面状であるときが、シリンジ筒体61がより摺動可能になるのでより好ましい。なお、支持部118が接する面は、シリンジ筒体61の先端方向に向かう面であれば、先端面68でなくてもよい。
【0054】
支持部118または先端面68の少なくとも一方に、表面処理を施すことで滑りやすくし、内部構造体40のみを回転させやすくすることができる。表面処理は、例えばシリコンコーティング等である。
【0055】
ガスケット67とシリンジ筒体61の内側との摩擦力が、支持部118と先端面68の摩擦力より大きいとき、シリンジ筒体61はガスケット67とシリンジ筒体61の内側の摩擦力により固定され、支持部118との摺動性が向上する。
【0056】
第1コイルバネ11は、図2に示すように、カバー部材30の内部に配置されており、先端部がカバー先端部32の基端面に接し、基端部が内部構造体40に接している。この第1コイルバネ11は、軸方向に収縮された状態で配置され、これによって、カバー部材30を内部構造体40に対して先端方向へ付勢している。
【0057】
第2コイルバネ12は、図2に示すように、把持部20の内部に配置され、把持部20をシリンジ60に対して先端方向へ移動させる力を発生させる。第2コイルバネ12は、外力が作用しない自然状態においてコイルが収縮した状態であり、これを強制的に引き伸ばした状態で、先端部が内部構造体40に連結され、基端部が把持部基端部80に連結されている。したがって、第2コイルバネ12は、把持部20を内部構造体40に対して先端方向へ移動させる力を発生させ、シリンジ60から針管66を介して液体を吐出させる際の補助として機能する。なお、第2コイルバネ12の収縮力は、使用者が把持部20を先端方向へ押圧しない場合に、第2コイルバネ12の収縮力によって液体が自動的に投与されることを防止できる大きさであることが好ましい。ガスケット67をシリンジ筒体61内で先端方向へ移動させようと作用する力は、第2コイルバネ12の収縮力F1と第1コイルバネ11の反発力F2の和である。そして、これに対抗するように、液体をシリンジ筒体61の内壁面とガスケット67によって規定される空間内から針管66を介して吐出させるために必要な力を液体吐出抵抗F0とすると、F1とF2の和が、液体吐出抵抗F0以下であることが好ましい。
【0058】
これにより、液体を投与する際に、使用者が把持部20を先端方向へ押圧することなしに、液体が自動的に投与されることを防止できる。したがって、使用者の意図通りに、液体の投与を行うことができ、例えば、使用者のペースで液体を投与することができ、また、液体の投与を中断したい場合には、押圧を停止することで、液体の投与を瞬時に中断できる。
【0059】
一方、意図的に、異なる部位などに複数回に分割して投与を行うことができる。
【0060】
把持部20、カバー部材30、内部構造体40、回転子50およびシリンジ筒体61の構成材料は、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられる。
【0061】
ガスケット67の構成材料は、弾性材料であることが好ましいが、特に限定されず、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等が挙げられる。
【0062】
針管66の構成材料は、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金のような金属材用が挙げられる。
【0063】
第1コイルバネ11および第2コイルバネ12の構成材料は、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、銅等のような金属材料が挙げられる。
【0064】
次に、本実施形態に係る液体投与具10の使用方法を説明する。
【0065】
始めに、未使用の初期状態の液体投与具10を準備し、図1,2に示すように、カバー部材30および針管66を覆うキャップ(図示せず)を取り外して初期状態とする。この初期状態において、シリンジ筒体61の内部に液体が収容され、把持部20が内部構造体40に対して基端方向に位置し、第2コイルバネ12が引き延ばされた状態となっている。さらに、カバー部材30は、内部構造体40に対して第1コイルバネ11によって先端方向へ付勢されている。
【0066】
初期状態においては、図13(A)に示すように、第1窓部71からは背景部83のみが観察可能であり、初期状態であることを容易に確認できる。また、第2窓部35からはシリンジ筒体61の内部の液体を観察可能であり、液体が収容された状態であることを確認できる。
【0067】
また、図14(A)に示すように、回転筒先端部110に形成される回転規制部117が、フランジ62の側面に接触し、シリンジ筒体61の中心軸回りの一方向側への回転を規制するとともに、逆方向側への回転を許容している。回転子50の回転子突起部52は、図15(A)に示すように、階段溝75の階段開始部77に配置されている。
【0068】
動作誘導機構においては、図16(A)に示すように、カバー部材30の誘導用凸部37が、回転筒先端部110の初期直線溝112Aに位置しており、初期直線溝112Aに沿って軸方向へ移動可能となっている。また、図16(B)に示すように、安全機構においては、カバー部材30の安全用凸部36が、内部構造体40の第1安全用溝113Aに位置しており、第1安全用溝113Aに沿って軸方向へ移動可能となっている。このため、カバー部材30は、内部構造体40に対して基端方向へ移動することが可能な状態となっている。そして、カバー部材30および内部構造体40は、安全用凸部36および安全用段差部115が、回転軸と平行な同一軸上に並ばない第1の状態となっている。また、押し子ロック機構においては、図10(A)に示すように、回転筒基端部100に形成される押し子ロック用傾斜部102が、押し子90に形成される押し子ロック用突起部97の先端側に位置し、押し子90の先端方向への移動が制限されて、予期しない液体の投与が制限されている。
【0069】
次に、把持部20を把持して、カバー部材30のカバー先端部32を生体へ当接させる。カバー部材30のカバー先端部32を生体へ押し付けると、カバー部材30が、内部構造体40に対して基端方向へ移動可能な状態となっているため、第1コイルバネ11を収縮させつつ、カバー部材30が、図17に示すように、内部構造体40に対して基端方向へ移動する。これにより、針管66がカバー部材30から先端方向へ突出して、生体に穿刺した状態となる。なお、押し子ロック用傾斜部102が押し子ロック用傾斜部102に接触して押し子90のシリンジ筒体61に対する移動が制限されているため、液体は投与されない。そして、把持部20が内部構造体40に対して移動していないため、第1窓部71には、背景部83が表示された状態が維持されている。
【0070】
カバー部材30が、内部構造体40に対して基端方向へ移動すると、図17(A)に示すように、動作誘導機構においては、カバー部材30の誘導用凸部37が、内部構造体40の初期直線溝112Aの基端部、すなわち傾斜溝112Bの先端側に位置する。また、図17(B)に示すように、安全機構においては、カバー部材30の安全用凸部36が、内部構造体40の第1安全用溝113Aの基端部に位置しており、基端側連通溝113Cへ移動可能となっている。
【0071】
次に、さらに把持部20を押圧すると、図18(A)に示すように、傾斜溝112Bに到達した誘導用凸部37が傾斜溝112Bを押圧することになり、誘導用凸部37が傾斜溝112Bの傾斜を滑り傾斜溝112Bの基端部(直線溝112Cの基端部)へ到達するまで、内部構造体40が回転する。そして、図18(B)に示すように、安全機構においては、内部構造体40が回転することで安全用凸部36が基端側連通溝113Cを通り、第2安全用溝113Bの基端部に到達する。このとき、カバー部材30および内部構造体40は、安全用凸部36および安全用段差部115が、回転軸と平行な同一軸上に並ぶ第2の状態となる。このとき、シリンジ筒体61が、内部構造体40に設けられる支持部118によって相対的に回転可能に支持されているため、内部構造体40が回転しても、図14(B)に示すように、シリンジ筒体61は内部構造体40とともに回転することはなく、押し子90に非回転的に連結されたガスケット67とシリンジ筒体61の間の摩擦力によって、把持部20に対して非回転的に保持される。このため、シリンジ筒体61に接続される針管66も回転せず、穿刺時の安全性を確保できる。なお、内部構造体40が把持部20に対して回転して第2の状態となった後には、内部構造体40が把持部20に対して再び回転することはない。
【0072】
そして、内部構造体40が把持部20に対して回転することで、押し子ロック機構では、図10(B)に示すように、押し子ロック用傾斜部102が押し子ロック用突起部97の先端方向の位置から外れ、押し子90の先端方向への移動の制限が解除され、液体の投与が可能となる。
【0073】
また、回転子50の回転子突起部52は、図15(B)に示す一点鎖線のように、階段溝75の階段開始部77を基端方向へ移動し、押し子延長部93に当接する。
【0074】
次に、さらに把持部20を押圧すると、カバー部材30の誘導用凸部37が、カム溝112内をこれ以上基端方向へ移動できないため、カバー部材30は、これ以上内部構造体40に対して基端方向へ移動できない。このため、把持部20が、内部構造体40およびカバー部材30に対して先端方向へ移動し、ガスケット67がシリンジ筒体61の内部を移動して、針管66を介して液体が生体内へ投与させる。このとき、図18(A)に示すように、動作誘導機構においては、カバー部材30が内部構造体40に対して移動しないため、誘導用凸部37が移動せず、傾斜溝112Bの基端部(直線溝112Cの基端部)に位置している。そして、図18(B)に示すように、安全機構においても、安全用凸部36が移動せず、第2安全用溝113Bの基端部に位置している。そして、把持部20が内部構造体40に対して移動することで、第1窓部71には、回転筒基端部100の回転筒視認部105が徐々に基端方向へ向かって移動して表示される。このとき、回転筒視認部105が、背景部83と異なる色で着色されているため、容易に識別することができる。また、回転筒視認部105は、第1窓部71からの距離が、背景部83と異なるため、指で第1窓部71を介して触れることで、触覚によっても容易に識別することができる。特に、回転筒視認部105の基端部に、径方向外側へ突出する外周凸部104が含まれているため、触覚または視覚によって、より確実に識別することができる。
【0075】
また、液体の投与が進むとともに、把持部20がカバー部材30に対して先端方向へ移動するため、カバー部材30の基端側にカバー部材30に対して回転可能に係合されている回転子50の回転子突起部52が、図15(B)の一点鎖線のように、把持部20に設けられる押し子延長部93の傾斜面により押圧され、カバー部材30に対して徐々に回転する。
【0076】
次に、液体の投与を途中で一時停止し、把持部20の押圧を緩めると、回転子50の回転が停止し、第1コイルバネ11の付勢力によって、カバー部材30が内部構造体40および把持部20に対して先端方向へ移動して、針管66がカバー部材30に収容される。
【0077】
なお、階段溝75の位置を基端側に上げることにより、針管66がカバー部材30に収納されない形態も取ることができる。
【0078】
カバー部材30の移動に伴い回転子50も移動するため、図15(B)に示すように、回転子突起部52が階段中間部78に接触し、階段中間部78の段差のいずれかに係合される。これにより、把持部20が回転子50に対して基端方向へ移動しなくなり、投与を一時停止した状態で、シリンジ筒体61内の液体を適切に維持することができる。
【0079】
このとき、図19(A)に示すように、動作誘導機構においては、誘導用凸部37が、直線溝112Cを先端方向へ移動する。安全機構においては、図19(B)に示すように、安全用凸部36が、第2安全用溝113Bを先端方向へ移動するが、回転子突起部52が階段中間部78に当接することで、安全用凸部36は安全用段差部115を乗り越えることなく、安全用段差部115よりも基端側で停止する。すなわち、回転子突起部52が階段溝75において移動する押し子延長部93から階段中間部78までの長さが、安全機構が作動しない長さで設定されている。このため、安全機構が作動せず、この後に再び液体の投与を継続することができる。
【0080】
そして、把持部20の内部構造体40に対する移動が一時的に停止しているため、第1窓部71には、図13(B)に示すように、背景部83および回転筒視認部105が表示された状態が維持される。
【0081】
この後、再び把持部20を把持して、カバー部材30のカバー先端部32を生体へ当接させ、カバー部材30のカバー先端部32を生体へ押し付けると、第1コイルバネ11を収縮させつつ、カバー部材30が、内部構造体40に対して基端方向へ移動する。これにより、針管66がカバー部材30から先端方向へ突出して、再び生体に穿刺した状態となる。このとき、階段溝75においては、回転子突起部52が階段中間部78から離れて基端方向へ移動し、把持部20に設けられる押し子延長部93の傾斜面に再び接触し、液体の投与が再開する。
【0082】
把持部20が内部構造体40に対して先端方向に移動することで、第1窓部71には、回転筒基端部100の回転筒視認部105が徐々に基端方向へ向かって移動して表示される。また、液体の投与が進むにしたがい、第1窓部71には、回転子視認部53およびカバー部材視認部31Aが順次表示される。このとき、背景部83、回転筒視認部105、回転子視認部53、およびカバー部材視認部31Aが、異なる色で着色されているため、液体の投与の進行の状態を、容易に認識することができる。また、回転筒視認部105は、第1窓部71からの距離が背景部83と異なり、カバー部材視認部31Aは、第1窓部71からの距離が背景部83、回転筒視認部105および回転子視認部53と異なるため、指で第1窓部71を介して触れることで、触覚によっても、投与の進行の状態を容易に認識することができる。
【0083】
そして、上述した液体の投与の一時停止および再開を、状況に応じて複数回繰り返すこともできる。
【0084】
シリンジ筒体61の内部の液体がなくなり、液体の投与が完了すると、図21に示すように、把持部20に設けられる音発生用爪82が、内部構造体40に設けられる音発生用孔101に係合する。音発生用爪82が音発生用孔101に係合する際には、弾性的に変形した音発生用爪82が元の形状に戻るようにして、音発生用孔101に係合し、音発生用爪82が、音発生用孔101が形成される回転筒基端部100と接触することで、音を発生する。音が発生することで、液体の投与の完了を聴覚的に認識することができる。このとき、階段溝75においては、図15(C)に示すように、回転子突起部52が押し子延長部93の傾斜面に沿って移動し、階段終了部79の基端側に位置する。そして、図20(A)に示すように、誘導用凸部37が直線溝112Cの基端部に位置し、図20(B)に示すように、安全機構においては、安全用凸部36が第2安全用溝113Bの基端部に位置している。そして、第1窓部71には、図13(C)に示すように、基端側から回転筒視認部105、回転子視認部53、およびカバー部材視認部31Aが表示される。回転筒視認部105、回転子視認部53、およびカバー部材視認部31Aは、異なる色で着色されているため、液体の投与が完了したことを容易に認識できる。また、カバー部材視認部31Aは、第1窓部71からの距離が、回転筒視認部105および回転子視認部53と異なるため、指で第1窓部71を介して触れることで、触覚によっても液体の投与が完了したことを容易に認識できる。
【0085】
液体の投与が完了した後、把持部20を把持してカバー先端部32を対象物から離すと、図22に示すように、第1コイルバネ11の付勢力によって、カバー部材30が内部構造体40に対して先端方向へ移動し、針管66がカバー部材30に収容される。このとき、階段溝75においては、図15(D)に示すように、回転子突起部52が階段終了部79に係合する。動作誘導機構においては、図22(A)に示すように、誘導用凸部37が、直線溝112Cの先端部へ移動する。また、図22(B)に示すように、安全機構においては、安全用凸部36が、第2安全用溝113Bを先端方向へ移動して、安全用段差部115の安全用傾斜面115Aを滑りつつ変形して乗り越えて、安全用段差部115の先端側に到達する。そして、安全用凸部36が一旦安全用段差部115を乗り越えると、安全用壁面115Bによって安全用凸部36の第2安全用溝113Bにおける基端方向への移動が抑制されるため、カバー部材30の内部構造体40に対する基端方向への移動が不能となり、安全機構が作動した状態となる。すなわち、回転子突起部52が階段溝75において移動する押し子延長部93から階段終了部79までの長さが、押し子延長部93から階段中間部78までの長さよりも長く、安全機構が作動する長さで設定されている。安全機構が作動した状態となると、針管66のカバー部材30からの再突出が不能となる。
【0086】
そして、カバー部材30および回転子50が把持部20に対して先端方向へ移動するため、図13(D)に示すように、第1窓部71には、回転筒視認部105のみが表示される。これにより、安全機構が作動したことを容易に認識できる。
【0087】
以上のように、本実施形態に係る液体投与具10は、内部に液体を収容可能なシリンジ60(収容体)と、シリンジ60の内部と連通可能な針管66と、シリンジ60を保持し、少なくとも1つの部材からなる内部構造体40と、内部構造体40に対して先端方向へ付勢されて針管66の外周を囲み、先端側に開口部38が形成され、内部構造体40に対して基端方向へ移動することで針管66を開口部38から先端方向へ突出させるカバー部材30と、シリンジ60、内部構造体40およびカバー部材30の少なくとも一部を覆うように形成され、内部構造体40に対して先端方向へ移動することでシリンジ60の内部の液体を針管66から吐出させる把持部20と、を有し、把持部20は、内部の構造を観察可能とする第1窓部71(窓部)が形成され、カバー部材30を内部構造体40に対して基端方向へ移動させつつ開口部38から針管66を突出させ、把持部20を内部構造体40に対して先端方向へ移動させてシリンジ60の内部の液体を針管66から吐出させ、当該吐出が完了した後に第1窓部71から識別される構造が吐出完了前と異なる。このため、液体の投与の完了を容易に認識可能であり、患者が自己投与する場合であっても、操作が容易となり、確実に投与することができる。なお、異なる構造とは、別部材であることや、形状が異なることのみならず、色のみが異なることをも含む。
【0088】
また、シリンジ60の内部の液体の吐出の完了後に、カバー部材30を内部構造体40に対して先端方向へ移動させて針管66をカバー部材30に収容した後の第1窓部71から識別される構造が、吐出の完了時と異なるため、針管66をカバー部材30に収容したことを容易に認識可能となり、安全性が向上する。
【0089】
また、開口部38から針管66を突出させてシリンジ60の内部の液体の一部を吐出させ、当該吐出の完了前に第1窓部71から識別される構造が変化するため、投与の途中であることを、容易に認識可能となる。
【0090】
また、第1窓部71が貫通孔であるため、第1窓部71から内部の構造を触ることが可能となり、触覚によって、投与の状態を確認することが可能となる。
【0091】
また、第1窓部71から識別される構造は、第1窓部71からの距離が異なる複数の部材を有するため、触覚によって、投与の状態を容易に確認することが可能となる。
【0092】
また、吐出の完了時に、把持部20および当該把持部20に対して相対的に移動する回転筒基端部100(部材)の相対的な移動によって音を発する音発生用爪82(音発生部)を有するため、吐出の完了を聴覚によって認識でき、投与の完了の認識がさらに容易となる。
【0093】
また、本実施形態に係る液体投与具10は、内部に液体を収容可能なシリンジ60(収容体)と、シリンジ60の内部と連通可能な針管66と、シリンジ60を保持する内部構造体40と、内部構造体40に対して先端方向へ付勢されて針管66の外周を囲み、先端側に開口部38が形成され、内部構造体40に対して基端方向へ移動することで針管66を開口部38から先端方向へ突出させるカバー部材30と、シリンジ60、内部構造体40およびカバー部材30の少なくとも一部を覆うように形成され、内部構造体40に対して先端方向へ移動することでシリンジ60の内部の液体を針管66から吐出させる把持部20と、を有し、内部構造体40が、把持部20に対して回転可能であり、シリンジ60を相対的に回転可能に支持する支持部118を有する。このため、内部構造体40が把持部20に対して回転しても、シリンジ60に連通する針管66を、把持部20に対して極力回転しないように維持することが可能となり、生体への負担を低減して安全性を向上できる。
【0094】
また、シリンジ60(収容体)が、シリンジ筒体61および当該シリンジ筒体61に嵌合するガスケット67を有し、把持部20がガスケット67に連結されるため、把持部20に連結されたガスケット67とシリンジ筒体61の間の摩擦力によって、把持部20に対してシリンジ筒体61が非回転的に保持される。このため、シリンジ筒体61に接続される針管66も回転せず、穿刺時の安全性を確保できる。
【0095】
また、支持部118が、基端方向へ突出し、シリンジ60(収容体)の先端方向に向かう面に摺動可能に接するため、支持部118がシリンジ60と接する接触面積が小さく、シリンジ筒体61を摺動可能に支持することができる。
【0096】
また、支持部118が、シリンジ60(収容体)内の液体を吐出する吐出口64を囲む先端面68に摺動可能に接するため、シリンジ筒体61の吐出口64を中心として、効果的に回転可能かつ摺動可能に支持することができる。
【0097】
また、内部構造体40が、シリンジ60(収容体)の一方向への回転を許容し、逆方向へ回転する際にシリンジ筒体61と接触して回転を規制する回転規制部117を有するため、組み立て時に回転規制部117にシリンジ60を接触せることで、シリンジ60を適正な回転方向の位置に配置させることができるとともに、一方向へはシリンジ60を回転可能とし、シリンジ60を内部構造体40に対して相対的に回転可能に支持することができる。
【0098】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、第1窓部は、貫通孔でなくてもよく、例えば、透明で外部から内部を視認可能な材料により形成されてもよい。
【0099】
また、針管66は、予めシリンジ筒体61に連通しているが、シリンジ筒体に連通されずに配置され、使用の際にシリンジ筒体に突き刺さって連通される両頭針であってもよい。
【0100】
また、本実施形態では、内部構造体40に、基端方向へ向かって突出してシリンジ筒体61の先端面68と摺動可能に接する支持部118が形成されているが、シリンジ筒体に、先端方向へ向かって突出する突出部が形成され、内部構造体に、当該突出部と摺動可能に接する支持部が形成されてもよい。この場合の支持部は、例えば平面で形成されて突出していなくよいが、シリンジ筒体の突出部と摺動可能に接することが可能であれば、突出していてもよい。
【0101】
また、図23(A)に示す変形例のように、カバー部材30の外面に、識別線120を設けてもよい。識別線120は、図23(B)に示すように、液体の投与が完了し、かつ安全機構が作動した後に、把持部20に覆われて見えなくなる。このようにすれば、識別線120により、安全機構が作動したことを容易に認識できる。
【0102】
また、図24(A)に示す他の変形例のように、カバー部材30の外面に、目盛を設けてもよい。このようにすれば、液体の投与量(または残量)を、目盛によって容易に認識できる。なお、この場合、カバー部材30が内部構造体40に対して基端方向へ移動して開口部38から針管66を突出させた後、カバー部材30が第1コイルバネ11の付勢力によって戻らない構造とすることもできる。このようにすれば、カバー部材30が戻らないため、シリンジ筒体61の液量が目盛と常に一致し、より認識が容易となる。
【0103】
また、図25に示すさらに他の変形例のように、把持部20の第1窓部71の近傍に目盛が設けられてもよい。このようにしても、第1窓部71から観察される構造を目盛と比較することで、液体の投与量(または残量)を容易に認識できる。
【0104】
また、本実施形態では、内部構造体40が、回転筒基端部100および回転筒先端部110を備えているが、内部構造体が一部材で形成されてもよい。また、内部構造体およびシリンジ筒体が、一体で形成されてもよい。
【符号の説明】
【0105】
10 液体投与具、
20 把持部、
30 カバー部材、
31A カバー部材視認部、
35 第2窓部、
38 開口部、
40 内部構造体、
53 回転子視認部、
60 シリンジ(収容体)、
61 シリンジ筒体、
64 吐出口、
66 針管、
67 がスケット、
68 先端面、
71 第1窓部(窓部)、
82 音発生用爪(音発生部)、
101 音発生用孔(音発生部)、
105 回転筒視認部、
117 回転規制部、
118 支持部。
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