【解決手段】処置具は、第1ルーメンにガイドワイヤを出し入れ可能なスリット12eが形成された第2シース12と、スリット20cと主開口20dとを有するガイドワイヤ挿入用開口20bが形成されたシース保持部と、を備え、第2シース12の第1端部には、X字状に交差する第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hと、端面12kから中心軸線O12と平行に切り込んで形成された軸方向切り込み面と、第1の側部切り込み面12g、第2の側部切り込み面12h、および軸方向切り込み面で囲われ主開口20dに重なる位置の第1ルーメンに連通する開口部と、片状部と、が形成される。
ガイドワイヤを挿通するガイドワイヤルーメンを含む複数のルーメンと、前記ガイドワイヤルーメンの軸方向に沿って延ばされ、前記ガイドワイヤルーメンに対して前記ガイドワイヤを出し入れ可能な第1のスリットと、が形成されたマルチルーメンシースと、
前記マルチルーメンシースの第1端部を保持する筒状部を含み、前記筒状部の側面において先端側から順に、径方向から見て前記第1のスリットと重なり前記第1のスリットよりも隙間が広い第2のスリットと前記第2のスリットよりも開口幅が広い主開口とを有するガイドワイヤ挿入用開口が形成されたシース保持部と、
を備え、
前記マルチルーメンシースの前記第1端部には、
前記マルチルーメンシースの径方向から見て、前記第1のスリットを中心にX字状に交差し、前記マルチルーメンシースの外周面から前記ガイドワイヤルーメンの内部まで切り込んで形成された第1の側部切り込み面および第2の側部切り込み面と、
前記マルチルーメンシースの第1端部の軸方向の端面側から前記第1の側部切り込み面の一部および前記第2の側部切り込み面の一部と交差する位置まで、前記ガイドワイヤルーメンの中心軸線と平行に切り込んで形成された軸方向切り込み面と、
前記第1の側部切り込み面、前記第2の側部切り込み面、および前記軸方向切り込み面において前記第1端部の軸方向の端面寄りに位置する部位によって囲われ、前記主開口に重なる位置に形成された前記ガイドワイヤルーメンに連通する開口部と、
前記第1の側部切り込み面と前記軸方向切り込み面とを外縁に有する第1の片状部と、
前記第2の側部切り込み面と前記軸方向切り込み面とを外縁に有する第2の片状部と、
が形成された、
内視鏡用処置具。
ガイドワイヤを挿通するガイドワイヤルーメンを含む複数のルーメンと、前記ガイドワイヤルーメンの軸方向に沿って延ばされ、前記ガイドワイヤルーメンに対して前記ガイドワイヤを出し入れ可能な第1のスリットと、が形成されたマルチルーメンシースと、前記マルチルーメンシースの第1端部を保持する筒状部を含むシース保持部と、を備える内視鏡用処置具の製造方法であって、
前記マルチルーメンシースの前記第1端部に、前記マルチルーメンシースの径方向から見て、前記マルチルーメンシースの軸方向に交差するX字状をなして、前記マルチルーメンシースの外周面から前記ガイドワイヤルーメンの内部まで切り込んで、第1の側部切り込み面および第2の側部切り込み面を形成することと、
前記マルチルーメンシースの第1端部の軸方向の端面側から前記第1の側部切り込み面の一部および前記第2の側部切り込み面の一部と交差する位置まで、前記ガイドワイヤルーメンの中心軸線と平行に切り込んで軸方向切り込み面を形成することと、
前記軸方向切り込み面を形成することによって、前記ガイドワイヤルーメンに連通する開口部と、前記第1の側部切り込み面と前記軸方向切り込み面とを外縁に有する第1の片状部と、前記第2の側部切り込み面と前記軸方向切り込み面とを外縁に有する第2の片状部と、を形成することと、
前記開口部から前記第1の側部切り込み面および前記第2の側部切り込み面の交差部を通り、前記ガイドワイヤルーメンの軸方向に沿って延ばされ、前記ガイドワイヤルーメンに連通する第1のスリットを形成することと、
を含む、内視鏡用処置具の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0029】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の構成を示す模式的な斜視図である。
図2は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の構成を示す模式的な正面図である。
図3は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の長手方向に沿う模式的な断面図である。
図4は、
図3におけるA−A断面図である。
図5は、
図3におけるC部の拡大図である。
図6は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の伸び抑制ワイヤの構成を示す模式的な斜視図である。
図7は、
図3におけるB−B断面図である。
図8は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具のバルーンチューブ内の構成を示す模式的な斜視図である。
図9は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具のガイドワイヤ挿入用開口の近傍の構成を示す模式的な斜視図である。
図10は、
図9におけるE視の平面図である。
図11は、
図10におけるG−G断面図である。
図12は、
図10におけるF−F断面図である。
図13は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の第2シースの第2端部の構成を示す模式的な斜視図である。
図14は、
図13におけるT視の平面図である。
図15は、
図3におけるD部の拡大図である。
なお、各図面は模式図のため、形状や寸法は誇張されている(以下の図面も同様)。
【0030】
図1から
図3に示すように本実施形態の処置具1(内視鏡用処置具)は、患者の体内に挿入する挿入部2と、患者の体外で処置具1の操作を行う操作部3とを備える。
挿入部2は、線状の長尺部材である。挿入部2は、内視鏡の処置具用チャンネルを通して、患者の体内に挿入される。
【0031】
本明細書では、処置具1における相対位置を説明する場合、特に断らない限り、患者に対する挿入方向の先端側(遠位側)を、単に、「先端側」、その反対側(操作部3が設けられる方)である基端側(近位側)を、単に、「基端側」という。
本明細書では、中心軸線等の軸線が特定できる軸状または筒状の部材(部位を含む)に関する相対位置について説明する場合に、「軸方向」、「周方向」、および「径方向」という場合がある。軸方向は、軸線に沿う方向である。周方向は、軸線回りに周回する方向である。径方向は、軸線に直交する平面において軸線に交差する線に沿う方向である。径方向においては、軸線から離れる方を径方向外側、軸線に近づく方を径方向内側という場合がある。
【0032】
挿入部2は、先端側から基端側に向かって、先端側挿入部2Aと、基端側挿入部2Bとをこの順に備える。
先端側挿入部2Aは、先端側から基端側に向かって、処置部4と、バルーン部5とをこの順に備える。処置部4およびバルーン部5には、第1シース11が挿通される。
【0033】
図4に示すように、第1シース11は、第1ルーメン11a(ガイドワイヤルーメン)、第2ルーメン11b、および第3ルーメン11cの3つのルーメンが軸方向に貫通されたマルチルーメンシースである。
第1ルーメン11aは、患者の体内において処置具1の挿入をガイドする図示略のガイドワイヤを挿通させる貫通孔である。ガイドワイヤは、処置具1の挿入部2の先端部分を処置対象部位まで案内するためのガイドとして利用される。ガイドワイヤは、処置対象部位の血管の内径などに応じて、予め決められた線径のものが、処置具1と組み合わせて用いられる。
第1ルーメン11aは、ガイドワイヤを円滑に挿入できる内径を有する。
【0034】
第2ルーメン11bおよび第3ルーメン11cは、処置に必要とされ、ガイドワイヤとは異なる線状部材を挿通したり、処置に必要とされる薬液を流通させたりするために用いられる貫通孔である。本実施形態では、第2ルーメン11bおよび第3ルーメン11cの内径は、いずれも第1ルーメン11aの内径より小径である。
例えば、第2ルーメン11bには、後述するナイフワイヤ10が挿通可能である。例えば、第3ルーメン11cには、造影剤等の液体の流通が可能である。
【0035】
処置部4の種類は特に限定されないが、以下では、
図1から
図3に示すように、一例として、処置部4がナイフワイヤ10を備える場合の例で説明する。
ナイフワイヤ10は、生体組織に対して高周波電流を通電させることによって生体組織を切開可能な導電性の線材である。
ナイフワイヤ10は、先端側挿入部2Aにおいて第1シース11の外部に露出される。
図示は省略するが、ナイフワイヤ10の先端部は、第1シース11の第2ルーメン11b内に係止される。
図2に示すように、ナイフワイヤ10は、第2ルーメン11bに連通する第1の側孔11dから第1シース11の外部に露出され、第1の側孔11dよりも基端側において第2ルーメン11bと連通して設けられた第2の側孔11eから再び第2ルーメン11bの中に入る。第2ルーメン11b内に入ったナイフワイヤ10(
図4参照)は、第2ルーメン11b内でさらに基端側に延ばされる。さらに、ナイフワイヤ10は、後述する基端側挿入部2Bに形成されたルーメンを通じて後述する操作部3まで延ばされて操作部3に固定される。
ナイフワイヤ10のうち、第1シース11の外部に露出される部分は、生体組織の切開に寄与する。本実施形態では、ナイフワイヤ10は、例えば、十二指腸乳頭を切開する処置のために使用することができる。
【0036】
本実施形態では、ナイフワイヤ10を挿通するため、第1シース11は、耐熱性を有する柔軟な絶縁材料からなる。本実施形態では、第1シース11は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製である。
【0037】
図1に示すように、バルーン部5は、第1シース11の基端側の外周部において、先端側から基端側に向かって、バルーン14と、バルーンチューブ15とを備える。
【0038】
図3に示すように、バルーン14は、第1シース11に外嵌する内径を有する筒状の第1ネック部14aを先端側に有する。バルーン14は、第1シース11の外径よりもわずかに大きい筒状の第2ネック部14bを基端側に有する。バルーン14の長手方向の中間部は、第1ネック部14aおよび第2ネック部14bの内径よりも大きな径に拡張可能である。
図3は、バルーン14が拡張された状態を示す。
図1、2は、バルーン14が縮小された状態を示す。
【0039】
バルーンチューブ15は、第1シース11よりも大径、かつ、バルーン14の拡張時の外径よりも小径の外径を有する筒状部材である。
図5に示すように、バルーンチューブ15の先端側には、固定管17を係止するための円筒状の係止部15aが形成される。
【0040】
図5、
図6に示すように、固定管17は、第1シース11を挿通する筒状部17aと、筒状部17aの先端部から径方向外側に突出した係止部17bとを備える。
筒状部17aの基端部には、挿入部2の長手方向の伸びを抑制する伸び抑制ワイヤ16が固定される。伸び抑制ワイヤ16は、第1シース11および後述する第2シース12に比べて、高い引っ張り剛性を有する金属ワイヤからなる。例えば、伸び抑制ワイヤ16としては、ステンレス製のワイヤを採用することができる。
伸び抑制ワイヤ16は、バルーンチューブ15および後述する第2シース12内に形成されたルーメンを通して、操作部3まで延ばされる。伸び抑制ワイヤ16と操作部3との固定方法は後述する。
【0041】
図5に示すように、固定管17は、筒状部17aを先端側に向けて配置される。固定管17は、第1シース11を内部に挿通する。固定管17の筒状部17aは、バルーンチューブ15の係止部15aに内嵌される。固定管17の係止部17bは、バルーンチューブ15の係止部15aの先端面15dに係止される。
後述するように、処置具1を操作すると、処置具1が内視鏡の処置具チャンネルなどから外力を受けて伸び抑制ワイヤ16に張力が発生するため、係止部17bは、伸び抑制ワイヤ16に引っ張られて係止部15aの先端面に係止される。
【0042】
バルーン14の第2ネック部14bは、固定管17の係止部17bおよびバルーンチューブ15の係止部15aに外嵌して配置される。さらに第2ネック部14bは、係止部15aの基端側のバルーンチューブ15の外周面における第1固定部15bにおいて水密に固定される。
第1固定部15bは、例えば、第2ネック部14bをバルーンチューブ15の先端から数mm程度基端側の外周部に熱溶着するなどして形成することができる。この場合、係止部15aは、第1固定部15bよりも先端側に位置するため、加熱の影響によって変形することはない。このため、係止部15aは、第1固定部15bの形成後も円筒形状を保持する。
このような組立状態では、バルーン14とバルーンチューブ15とは水密に連結された管状部を構成する。この管状部の先端は、第1ネック部14aが第1シース11と固定されることで、閉止される。
図3に示すように、バルーンチューブ15の基端部の第2固定部15cは、後述する第2シース12の第2端部E2と外嵌し、第2シース12に対して水密に固定される。
バルーン部5の軸方向に沿って、第1シース11の外周面と、バルーン14およびバルーンチューブ15の内周面との間には、隙間が形成される。この隙間は、バルーン14を拡張する流体の流路となる送液空間S1を構成する。
伸び抑制ワイヤ16は、バルーン部5内では、送液空間S1を通って、基端側に延ばされる。
【0043】
バルーン14は、拡張径がバルーン14内の流体の圧力に応じて変化するコンプライアンスバルーンである。本実施形態では、バルーン14の外径とバルーン14の内圧との相関は非線形である。
バルーン14の外径は、少なくとも3つの内圧に対して、一対一の関係にある。以下では、3つの内圧に対するバルーン14のそれぞれの外径の値を、「コンプライアンス」と定義する。特に図示しないが、バルーン14のコンプライアンスの値は、操作者が分かるように、例えば、操作部3などに表示ラベルとして貼り付けられている。
バルーン14の材質は、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)エラストマー、ポリウレタン、などを採用することができる。
このような材質で製作した本実施形態のバルーン14は、コンプライアンスが、例えば15mm/3ATM、17mm/4ATM、18mm/5ATMのように設定される。
ここで「15mm/3ATM」という記法は、バルーン14の内圧が3ATMのとき、バルーン14の外径が15mmになることを意味する。
バルーン14は、拡張力は極めて小さくなるがラッテクスのような極めて伸縮性の高い材質でできていてもよい。
【0044】
図3に示すように、基端側挿入部2Bは、第2シース12(マルチルーメンシース)を備える。
図7に示すように、第2シース12は、第1ルーメン12a(ガイドワイヤルーメン)、第2ルーメン12b、第3ルーメン12c、および第4ルーメン12dの4つのルーメンが軸方向に貫通されたマルチルーメンシースである。
【0045】
第1ルーメン12aは、第1シース11の第1ルーメン11aと同様、患者の体内において処置具1の挿入をガイドする図示略のガイドワイヤを挿通させる貫通孔である。第1ルーメン12aは、ガイドワイヤを円滑に挿入できる内径を有する。
第1ルーメン12aは、一部に、隙間がwのスリット12e(第1のスリット)が形成される。第2シース12の隙間幅wは、第1ルーメン12a内に挿通するガイドワイヤの外径よりも狭い。
図3に示すように、スリット12eは、第2シース12の先端側における第2固定部15cの近傍から基端側の端部まで延ばされる。
第1ルーメン12aの内径は、第1シース11における第1ルーメン11aと同程度(同一の場合も含む)である。
【0046】
第2ルーメン12bおよび第3ルーメン12cは、ガイドワイヤとは異なる処置用の線状部材を挿通したり、処置に必要とされる薬液を流通させたりするために用いられる貫通孔である。本実施形態では、第2ルーメン12bおよび第3ルーメン12cの内径は、それぞれ、第1シース11における第2ルーメン11bおよび第3ルーメン11cと同程度(同一の場合も含む)である。
第2ルーメン12bおよび第3ルーメン12cの内径は、いずれも第1ルーメン11aの内径より小径である。
例えば、第2ルーメン12bは、ナイフワイヤ10が挿通可能である。例えば、第3ルーメン12cは、造影剤等の液体の流通が可能である。
【0047】
第4ルーメン12dは、バルーン14を拡張する流体の流路を形成する貫通孔(バルーンルーメン)である。さらに、本実施形態では、第4ルーメン12dは、伸び抑制ワイヤ16も内部に挿通する。
第4ルーメン12dは、バルーン14の収縮時間を短くするために、内径をできるだけ大きくする必要がある。本実施形態では、一例として、第4ルーメン12dの内径は、第1ルーメン12aの内径と略等しい(等しい場合を含む)。
【0048】
第1ルーメン12aおよび第4ルーメン12dは、第2シース12の中心軸線O12を挟んで互いに対向する位置に配置される。第2ルーメン12bおよび第3ルーメン12cもまた第2シース12の中心軸線O12を挟んで互いに対向する位置に配置される。ただし、第2ルーメン12bおよび第3ルーメン12cの対向方向は、第1ルーメン12aおよび第4ルーメン12dの対向方向と直交する方向である。
【0049】
第2シース12の先端部である第2端部E2の外周面には、バルーンチューブ15の第2固定部15cが水密に固定される。
図8に示すように、第2シース12の第2端部E2には、第1シース11の基端部が対向する第2シース12と第1シース11とは、接続チューブ13を介して互いに接続される。
【0050】
接続チューブ13は、第1接続チューブ13a、第2接続チューブ13b、および第3接続チューブ13cを備える。
第1接続チューブ13aは、第1シース11の第1ルーメン11aと、第2シース12の第1ルーメン12aとを水密に接続する。
第2接続チューブ13bは、第1シース11の第2ルーメン11bと、第2シース12の第2ルーメン12bとを水密に接続する。
第3接続チューブ13cは、第1シース11の第3ルーメン11cと、第2シース12の第3ルーメン12cとを水密に接続する。
接続チューブ13によって、第1ルーメン11a、12a、第2ルーメン11b、12b、第3ルーメン11c、12cは、それぞれ、独立した連通路を構成する。これらの連通路は、送液空間S1に対しては連通しないため、送液空間S1内の流体が各連通路に侵入することない。
第1ルーメン11a、12aは、第1ルーメン12aに形成されたスリット12eによって、第2シース12の外周環境と連通する。
【0051】
図3に示すように、第2シース12の第4ルーメン12dは、第2端部E2において送液空間S1内に開口する。このため、第4ルーメン12dは、送液空間S1と連通する。
第4ルーメン12dには、送液空間S1内に延びる伸び抑制ワイヤ16が挿通される。伸び抑制ワイヤ16は、第2シース12の基端部である第1端部E1から後述する操作部3まで延ばされる。
ここで、第2シース12の第1端部E1の形状について説明する前に、操作部3の概略構成について説明する。
【0052】
図2に示すように、操作部3は、挿入部2の基端部に配される。操作部3は、バルーン14およびナイフワイヤ10を操作するために設けられる。
操作部3は、操作部本体20(シース保持部)、口金部22、固定具26、スライダ21、およびプラグ25を備える。
【0053】
操作部本体20は、先端側に先端筒状部20a(筒状部)を有し、基端側にスライドガイド部20fを有する。操作部本体20において、先端筒状部20aとスライドガイド部20fとの中間部には、口金部22と、コネクタ23と、固定具26とが配される。
【0054】
先端筒状部20aは、挿入部2の基端部を挿入する穴部を有する筒状に形成される。先端筒状部20aの穴部には、後述するように、第2シース12の第1端部E1が固定される。
スライドガイド部20fは、後述するスライダ21をスライド可能に保持する。
図3に示すように、スライドガイド部20fの内部には、先端筒状部20aの穴部まで延びるスライド孔20nが形成される。
【0055】
口金部22は、バルーン14の膨張量を制御する加圧器120の吐出口が水密に取り付け可能である。口金部22に加圧器120が取り付けられることによって、バルーン14を膨張させるための流体を加圧器120からバルーン14に導入できる。
【0056】
コネクタ23は、たとえばルアーロックコネクタであり、図示略の流路を介して第2シース12の第3ルーメン12cに連通する。コネクタ23には、造影剤を供給する後述のシリンジ126(
図30参照)が取り付け可能である。
【0057】
固定具26は、操作部3を加圧器120に対して着脱可能に固定する部材である。固定具26は、操作部本体20の側面に本実施形態では、加圧器120の外周に係止可能なC字形状に形成される。
操作部本体20と固定具26とは、後述するスライダ21および加圧器120を操作する力がスライダ21および加圧器120にかかる際、実質的に変形しない剛性を有する。
操作部本体20と固定具26とは、合成樹脂によるモールド一体成形で形成してもよいし、合成樹脂の成形部品の組み合わせによって形成してもよい。
本実施形態では、固定具26は、加圧器120に着脱可能であるとともに、加圧器120と後述する内視鏡130とのいずれか一方に選択的に着脱可能である。
すなわち、固定具26は、加圧器120が使用されない時には、処置具1を内視鏡に固定する用途にも利用できる。
【0058】
固定具26は、加圧器120に固定した場合、バルーン14のコンプライアンスの表示と、加圧器120の圧力の表示とが同時に視認可能になる位置に配される。
【0059】
図2に示すように、スライダ21は、ナイフワイヤ10の中心軸線方向にナイフワイヤ10を進退させる操作部分である。スライダ21は、スライドガイド部20fに対して移動可能に取り付けられる。スライダ21は、絶縁材料によって形成される。
スライダ21には、スライダ21とナイフワイヤ10の基端部とを連結する操作ロッド24が固定される。
図3に示すように、操作ロッド24は、操作部本体20内のスライド孔20nにスライド可能に挿入される。
操作ロッド24の先端部は、第2シース12から基端側に延出されたナイフワイヤ10が連結される。このため、操作者がスライダ21をスライドガイド部20fに沿って、スライドさせることによって、挿入部2の内部に挿通されるナイフワイヤ10を基端側で進退させることができる。このため、操作者は、先端側挿入部2Aにおいて第1シース11の外部に露出されたナイフワイヤ10を弓状に張ったり、緩めたりすることができる。
操作ロッド24は、導体からなり、ナイフワイヤ10と後述するプラグ25とを電気的に接続する。
【0060】
プラグ25は、スライダ21に固定された導体である。プラグ25は、操作ロッド24を介して、ナイフワイヤ10の基端部に固定される。プラグ25とナイフワイヤ10とは操作ロッド24を介して導通している。プラグ25は、高周波電流をナイフワイヤ10に供給する後述の高周波電源装置128(
図45参照)に接続可能である。
【0061】
先端筒状部20aに形成されたガイドワイヤ挿入用開口20bは、挿入部2にガイドワイヤを操作部3から挿入するために設けられる。ただし、ガイドワイヤ挿入用開口20bは、ガイドワイヤを挿入するためのみ設けられているわけではない。ガイドワイヤ挿入用開口20bは、ガイドワイヤを抜去する開口としての使用可能である。
図9、
図10に示すように、ガイドワイヤ挿入用開口20bは、スリット20c(第2のスリット)と、主開口20dとを備える。
【0062】
スリット20cは、先端筒状部20aの側面において先端筒状部20aの中心軸線O20a(
図10参照)に沿って延びて、径方向に貫通する。スリット20cは、延在方向においては先端筒状部20aの先端面と主開口20dの内周部とに開口する。
図11に示すように、スリット20cの隙間幅Wは、第2シース12のスリット12eよりも狭く、ガイドワイヤ30の外径よりも広い。
【0063】
図10に示すように、主開口20dは、径方向から見て、中心軸線O20aに沿う方向に長い略矩形状の開口である。主開口20dの内周面における先端側の壁面である主開口先端面20kは、中心軸線O20aに直交する平面からなる。
主開口20dの短手方向の開口幅は、スリット20cの隙間幅よりも広い。スリット20cは、主開口20dの先端側(図示左側)の主開口先端面20kの中心部に開口する。
主開口20dよりも先端側には、主開口20dの短手方向の内周部よりも内側に突出する一対のガイド部20jが周方向に対向する。スリット20cは、各ガイド部20jの周方向の端面によって形成される。
図11に示すように、各ガイド部20jは、軸方向から見ると、先端筒状部20aの円筒状の筒形状に沿う円弧状に湾曲している。先端筒状部20aにおいて、ガイドワイヤ挿入用開口20bよりも先端側の軸方向に直交する断面形状は、C字状である。
【0064】
主開口20dの基端側には、基端側から先端側に向かうにつれて、先端筒状部20aの外周部から内部に向かって傾斜する傾斜部20eが形成される。
傾斜部20eは、ガイドワイヤ30(
図11参照)を主開口20dに対して基端側から先端側に向かって挿入しやすいように、ガイドワイヤ30の挿入姿勢をガイドする部位である。
【0065】
図9から
図12に示すように、先端筒状部20aの内周面20m(
図11、
図12参照)には、第2シース12の第1端部E1が挿入される。
図13、
図14に示すように、第2シース12に第1端部E1は、第2シース12の側部が切り欠かれて開口部OPが形成されている。開口部OPの内側には、第1ルーメン12aの内周面が露出している。
開口部OPは、径方向から見ると、一対の露出面Sfと、露出面Sg、Shとによって、略U字状に囲われている。
【0066】
一対の露出面Sfは、第2シース12の基端側における軸方向の端面12kから、先端側に向かって第1ルーメン12aの長手方向に延びている。一対の露出面Sfは、第1ルーメン12aの露出部を挟んで互いに平行に延びている。
本実施形態では、一対の露出面Sfは、中心軸線O12に対して等距離にある平面からなる。
本実施形態では、
図11に示すように、一対の露出面Sfは、第1ルーメン12aの略中心(中心の場合を含む)を通る位置に形成される。各露出面Sfから第4ルーメン12dの外側となる第2シース12の外周面までの距離は、第2シース12の半径よりも長い距離hである。本実施形態では、各露出面Sfは、第2ルーメン12b、第3ルーメン12cと略平行(平行の場合を含む)に延びている。
【0067】
露出面Sg、Shは、
図14に示すように、径方向から見ると、中心軸線O12上に頂部を有するV字状をなしている。露出面Sg、Shは、スリット12eが形成された第2シース12の外周面から、それぞれ露出面Sfに向かって延びる平面である。本実施形態では、露出面Sg、Shは、いずれも露出面Sfに対して直交する平面である。本実施形態では、スリット12eの中心を通る径方向から見ると、露出面Sg、Shは、一例としてそれぞれ、中心軸線O12に対して、約45°(45°の場合も含む)をなして交差する。
【0068】
各露出面Sfは、軸方向切り込み面12fによって、露出面Sg、Shは、第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hによって形成される。
【0069】
軸方向切り込み面12fは、端面12kから、第1ルーメン12aの略中心を通り、中心軸線O12および第2ルーメン12b、第3ルーメン12cに略平行な方向に切り込んで形成される面である。
軸方向切り込み面12fは、切り込みが行われる際には、互いに対向する2面として形成される。しかし、後述するように、すべての切り込みが終了すると露出面Sfに対向する軸方向切り込み面12fは除去される。
【0070】
第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hは、
図14に示すように、スリット12eの中心を通る径方向から見て、第2シース12に対してX字状に交差し、軸方向切り込み面12fと同一平面上となる位置まで達する切り込み面である。
第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hは、スリット12eの中心を通る径方向から見ると、軸方向切り込み面12fの先端部よりもわずかに基端側に位置する中心軸線O12上の点PにおいてX字状に交差する。
第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hは、スリット12eの中心を通る径方向から見ると、それぞれの中心軸線O12に対して約45°で交差する。
第1の側部切り込み面12g(第2の側部切り込み面12h)は、切り込みが行われる際には、互いに対向する2面として形成される。しかし、後述するように、すべての切り込みが終了すると露出面Sg(Sh)に対向する第1の側部切り込み面12g(第2の側部切り込み面12h)は除去される。
【0071】
このため、本実施形態では、互いに対向する2面をなす第1の側部切り込み面12g(第2の側部切り込み面12h)は、点Pよりも、第2シース12における先端側に形成される。
互いに対向する2面をなす軸方向切り込み面12fは、軸方向切り込み面12fが露出面Sg、Shと交差する位置から軸方向切り込み面12fの切り込み方向における先端部までの領域に形成される。
カッタで切り込みを行う場合、カッタを刃先は、刃先と平行な移動と、刃先と直角な移動とを組み合わせた移動を行うことが多い。本明細書における「切り込み方向」は、切り込みを行う場合の刃先の移動方向のうち、刃先と直交する方向を意味する。
このように、露出面Sgとの交差位置よりも先端側に軸方向切り込み面12fの先端部が位置することによって、露出面Sgと軸方向切り込み面12fとを外縁に有する三角形状の片状部12j(第1の片状部)が形成される。同様に、露出面Shとの交差位置よりも先端側に軸方向切り込み面12fの先端部が位置することによって、露出面Shと軸方向切り込み面12fとを外縁に有する三角形状の片状部12i(第2の片状部)が形成される。
【0072】
このような構成を有する第2シース12の第1端部E1は、
図10に示すように、径方向から見て、スリット12eが、スリット20cの中心に位置するように、先端筒状部20aに挿入される。第1端部E1の軸方向の位置は、第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hが主開口先端面20kよりも先端側であって(
図10、
図12参照)、かつ第2シース12の端面12kが傾斜部20eよりも基端側となる(
図10参照)位置である。
【0073】
図15に示すように、第2シース12は、固定部材19を介して、操作部本体20と固定される。
固定部材19は、先端部が第4ルーメン12dに内嵌し、基端部が操作部本体20に係止される筒状部材である。固定部材19を軸方向に貫通する貫通孔19aの内径は、伸び抑制ワイヤ16の外径よりも大径である。
固定部材19の先端部の外周面には、第4ルーメン12dの内周面に食い込む係合突起19bが径方向外側に突出される。
固定部材19の基端部には、円筒状の基端側筒状部19dが形成される。
【0074】
固定部材19の軸方向の中間部には、第2シース12において第4ルーメン12dの外周側の端面12kを軸方向に係止する係止部19cが径方向外側に突出される。
固定部材19は、先端部を第4ルーメン12dの基端側から挿入して端面12kが係止部19cと当接するまで押し込んで第2シース12に連結される。固定部材19の外径は、第4ルーメン12dよりわずかに大径である。係止部19cと端面12kとは密着されている。このため、固定部材19は第4ルーメン12dに対して水密に装着されている。
【0075】
操作部本体20の内部には、口金部22に連通する送液管路20gの先端部(図示左側)に、固定部材19の基端側筒状部19dを水密に内嵌する係止穴部20iが設けられる。係止穴部20iの内径は、送液管路20gの内径よりも大きい。このため、係止穴部20iの基端側には、送液管路20gとの間に段差が形成される。この段差は、固定部材19の基端側筒状部19dの端面19eを軸方向に係止する。
このようにして、第4ルーメン12dは、送液管路20gおよび口金部22の内部に連通するため、口金部22を通して、送液空間S1内に流体を導入したり、送液空間S1内の流体を排出したりすることができる。
【0076】
第4ルーメン12dに挿通される伸び抑制ワイヤ16は、固定部材19の貫通孔19aを通り、送液管路20g内に延出される。
送液管路20gには、伸び抑制ワイヤ16を挿通する貫通孔20hが形成される。伸び抑制ワイヤ16の基端部は貫通孔20hに挿通される。伸び抑制ワイヤ16の基端部は、貫通孔20hが貫通する壁面に固定部18を介して固定される。
固定部18は、伸び抑制ワイヤ16の位置を固定するとともに、貫通孔20hを水密に封止する。
【0077】
図3に示すように、処置具1では、伸び抑制ワイヤ16の先端部は固定管17に固定され、伸び抑制ワイヤ16の基端部は、操作部本体20に固定される。このため、伸び抑制ワイヤ16は、送液空間S1および第4ルーメン12dによる連通空間において、第1シース11および第2シース12と並走して配置される。伸び抑制ワイヤ16は金属ワイヤからなるため、第1シース11および第2シース12よりも引っ張り剛性が高い。このため、挿入部2が伸び抑制ワイヤ16が並走する範囲で引っ張られると、伸び抑制ワイヤ16の引っ張り剛性によって、挿入部2の軸方向の伸びが抑制される。
【0078】
次に、処置具1の製造方法について、第2シース12の製造方法を中心として説明する。
図16は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の製造工程の斜視の工程説明図である。
図17は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の製造工程の平面視の工程説明図である。
図18は、
図17におけるJ−J断面図である。
図19は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の製造工程の斜視の工程説明図である。
図20は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の製造工程の平面視の工程説明図である。
図21は、
図20におけるK−K断面図である。
図22は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の製造工程の斜視の工程説明図である。
図23は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の製造工程の斜視の工程説明図である。
図24は、
図23におけるU視の平面図である。
図25は、
図24におけるL−L断面図である。
【0079】
図16に示すように、第2シース12を製造するには、第1ルーメン12a、第2ルーメン12b、第3ルーメン12c、および第4ルーメン12dが形成されたマルチルーメンチューブ32を製造する。
次に、第2シース12に第1端部E1となる方のマルチルーメンチューブ32の端部に第1の側部切り込み面12g、第2の側部切り込み面12h、および軸方向切り込み面12fを形成する加工を行う。
まず、
図16に示すように、第1ルーメン12aが上側、第4ルーメン12dが下側となるように、マルチルーメンチューブ32を水平に配置して、第1ルーメン12aに芯金101を挿入する。
【0080】
芯金101は、自重によって第1ルーメン12aの最下部の内周面に当接する。芯金101は、第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hを交差させる位置よりもさらに奥側の位置まで挿入する。
芯金101は、第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hを形成するカッタ100の切り込み量を規制する部材である。
【0081】
まず、第1の側部切り込み面12gを形成するため、第1ルーメン12aに対向する外周側からマルチルーメンチューブ32に向かう切り込み方向において、カッタ100による切り込みを行う。
このとき、カッタ100の姿勢は、刃先100aを水平に配置し、切り込み方向が鉛直方向に沿う姿勢である。さらに、カッタ100のマルチルーメンチューブ32に対する平面視の姿勢は、
図17に示すように、マルチルーメンチューブ32の中心軸線O32に対して、角度θだけ傾斜している。角度θは、第2シース12における第1の側部切り込み面12gと中心軸線O12との傾斜角に等しい。本実施形態では、角度θは約45°である。
【0082】
このような切り込み動作を行うと、
図18に示すように、カッタ100は、マルチルーメンチューブ32を切断し、切断部に第1の側部切り込み面12gを形成する。しかし、カッタ100の刃先100aが芯金101に当接すると、それ以上切り込むことができなくなる。このため、第1の側部切り込み面12gは、刃先100aの位置で止まる。
このとき刃先100aは、芯金101の外径を適宜設定することによって、第1ルーメン12aと反対側に外周面からの距離がhとなる水平面上に位置させることができる。
この状態では、刃先100aは、第2ルーメン12bおよび第3ルーメン12cの中心から等距離の位置にある。
刃先100aが芯金101に当接したら、カッタ100を引き抜く。
【0083】
次に、
図19、
図20に示すように、カッタ100を鉛直軸回りに回転して、マルチルーメンチューブ32の中心軸線O32(
図20参照)に対して反対側に角度θ傾斜する姿勢で、マルチルーメンチューブ32に切り込む。このとき、カッタ100は、第1の側部切り込み面12gの中心で交差する位置に切り込む。
カッタ100は、
図21に示すように、上記と同様に、刃先100aが芯金101と当接するまで切り込む。刃先100aが芯金101に当接したら、カッタ100を引き抜く。
この結果、第2の側部切り込み面12hが形成される。
【0084】
このようにして、
図22に示すように、マルチルーメンチューブ32の側面において、径方向から見て、点PでX字状に交差した第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hが形成される。
本実施形態では、第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hは、第1ルーメン12aの上半部に貫通する。
【0085】
次に、軸方向切り込み面12fを形成する。
カッタ100をマルチルーメンチューブ32から延出された芯金101の上部に配置する。次に、
図23から
図24に示すように、端面12kからマルチルーメンチューブ32の中心軸線に沿う方向を切り込み方向として、カッタ100を切り込む。
このとき、カッタ100の刃先100aは、マルチルーメンチューブ32の中心軸線O32と直交する姿勢を保つ(
図23参照)。
さらに、カッタ100は、芯金101に上方から当接し、芯金101をガイドとして水平に移動する。このようなカッタ100の切り込み動作によって、端面12kから、中心軸線O32に平行な水平面に沿って、軸方向切り込み面12fが形成される。
このような切り込み動作によって、マルチルーメンチューブ32の端部は、軸方向切り込み面12fを境界として2つに分割される。分割される2つの部分は、第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hのいずれにも交差しない限りは、刃先100aの先端側でつながっている。
【0086】
しかし、刃先100aが、端面12kに最も近い第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hを通過すると、軸方向切り込み面12fは、第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hの下端部に交差する。
このため、カッタ100よりも上側の切除部32Bが、チューブ本体部32Aから離間する。
カッタ100をより先端側の第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hに交差する位置まで移動するとさらに切除部が増える。しかし本実施形態では、そうならないように、カッタ100の刃先100aが径方向から見て、点Pよりも少し先端側まで移動したところで、切り込み動作を停止する。
図24に示すように、径方向から見て、第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hと、軸方向切り込み面12fとが重なる範囲には、片状部12j、12iが形成される。
次に、カッタ100および芯金101を除去する。
【0087】
切除部32Bを除去すると、マルチルーメンチューブ32は、側部が切り欠かれた状態のチューブ本体部32Aが残る。チューブ本体部32Aには、点Pよりも端面12k寄りの第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hが、露出して、露出面Sg、Shが形成される。
さらに、チューブ本体部32Aには、露出面Sg、Shと、端面12kとの間の軸方向切り込み面12fが露出して、露出面Sfが形成される。
径方向から見て、露出面Sg、Sh、Sfによって略U字状に囲まれた領域には、第1ルーメン12aが露出し、開口部OPが形成される。
【0088】
このようにして、第1の側部切り込み面12g、第2の側部切り込み面12h、および軸方向切り込み面12fが形成されることによって、側部が切り欠かれたチューブ本体部32Aが形成される。
次に、第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hの交差部であるチューブ本体部32Aの点Pから、中心軸線O32に沿って、スリット12eを加工する。スリット12eの加工方法は、特に限定されない。例えば、スリット12eの隙間幅だけ離間した2枚の刃先を有するカッタを用いて加工することができる。
このようにして、スリット12eをチューブ本体部32Aの全長にわたって形成すると、第2シース12が形成される。
【0089】
このような第2シース12は、第2端部E2において、接続チューブ13を介して、第1シース11と連結し、内部にナイフワイヤ10を挿通する。
さらに、第1シース11に固定管17を挿通して、固定管17の基端側の伸び抑制ワイヤ16を第2シース12の第4ルーメン12dに挿通する。
さらに、第1シース11および第2シース12の第2端部E2を、バルーン14およびバルーンチューブ15に挿通して、バルーン14およびバルーンチューブ15を第1シース11および第2シース12に固定する。
【0090】
第2シース12の第1端部E1においては、第4ルーメン12dに固定部材19を嵌合し、第2シース12の第1端部E1を固定部材19ともに、先端筒状部20aに挿入する。第2シース12は、シース保持部である操作部本体20に保持される。
第2シース12の開口部OPを第2シース12のガイドワイヤ挿入用開口20bに位置合わせするとともに、固定部材19から延出する伸び抑制ワイヤ16を操作部本体20に固定する。
第1ルーメン12aから延出されるナイフワイヤ10は、操作ロッド24に固定する。
このようにして、処置具1が製造される。
【0091】
次に、処置具1の作用について、ガイドワイヤ30の挿入動作における作用を中心として説明する。
図26、
図27は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の平面視の動作説明図である。
図28、
図29は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の作用を説明する断面図である。
【0092】
処置具1をガイドワイヤ30に沿わせて患者の体内に挿入するには、ガイドワイヤ30を第1ルーメン12aに挿入しておく必要がある。
図26に示すように、処置具1では、ガイドワイヤ30を、操作部3のガイドワイヤ挿入用開口20bから挿入することができる。
操作者は、ガイドワイヤ30の図示略の傾斜部20eに沿ってガイドワイヤ挿入用開口20b内にガイドワイヤ30の先端を挿入する。
このとき、
図27に示すように、操作者は、ガイドワイヤ挿入用開口20bから見える露出面Sfと、先端筒状部20aのガイド部20jとの間にガイドワイヤ30の先端部を挿入すると、ガイドワイヤ30を円滑に挿入することができる。
【0093】
ガイドワイヤ30を露出面Sfとガイド部20jとの間に挿入すると、ガイド部20jによってガイドワイヤ30が径方向外側に外れることが防止される。
操作者がガイドワイヤ30を押し込んでいくと、ガイドワイヤ30の先端30aは、露出面Sgまたは露出面Shに当接する。
図27には、先端30aが露出面Sgに当接する場合の例が示されている。
このとき、本実施形態では、第2シース12が4つのルーメンを有するため、
図11に示すように、露出面Sgは、軸方向から見たときに、ガイドワイヤ30の外径よりも広い部分を有しており、ガイドワイヤ30の先端30aの大部分が露出面Sgに重なる位置関係にある。
【0094】
しかし、露出面Sgは、径方向から見ると、
図27に示すように、中心軸線O12に対して傾斜している。このため、ガイドワイヤ30の先端30aは、露出面Sgと全面的に当接することがないため、ガイドワイヤ30の移動を阻止するような大きな摩擦力が作用しない。さらに、露出面Sgは、ガイドワイヤ30の挿入方向に対して斜めに傾斜しているため、ガイドワイヤ30の先端30aは、径方向から見ると、露出面Sgの傾斜に沿って、中心軸線O12に近づく方向に滑らかに移動することができる。
ガイドワイヤ30の先端30aが、径方向から見て中心軸線O12に近づく方向に移動すると、
図11に二点鎖線で示す先端30a’のように、第1ルーメン12aの内側に移動する。この結果、ガイドワイヤ30は、第1ルーメン12aの内部に挿入される。
ガイドワイヤ30は、スリット12eの隙間幅wよりも大きな外径を有するため、ガイドワイヤ30の先端部がいったん第1ルーメン12aの内部に入ると、第1ルーメン12aの内部から外れることなく先端側に挿入されていく。
【0095】
これに対して、もし、露出面Sg、Shが、中心軸線O12に対して直交する位置関係にあると、例えば、「発明が解決しようとする課題」において上述した問題が生じる。例えば、上述した処置具241では、
図73に示すように、ガイドワイヤ230の先端部230aが、側部切り込み面242gに引っ掛かって前進できなくなる状態に陥りやすいため、ガイドワイヤ230の挿入作業の作業性が悪化する。
【0096】
このように、処置具1によれば、ガイドワイヤ30の挿入時に、ガイドワイヤ30がガイドワイヤルーメンからずれていても、X字状に交差する第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hに沿ってガイドワイヤ30が移動する。このため、処置具1によれば、マルチルーメンシースを備える場合に、ガイドワイヤをガイドワイヤルーメンに容易に挿通することができる。
【0097】
さらに、処置具1では、軸方向切り込み面12fが、第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hと交差して形成されるため、片状部12j、12iが形成される。片状部12j、12iは、それぞれの外縁の第1の側部切り込み面12g、第2の側部切り込み面12hが、露出面Sfに連続する軸方向切り込み面12f、第2の側部切り込み面12hと対向する。
【0098】
例えば、
図28に示すように、ガイドワイヤ30が、片状部12iと接触することなく挿入されてから、
図29に示すように、ガイドワイヤ30に外力が作用して、ガイドワイヤ30が径方向外側に引っ張られる場合がある。
この場合、ガイドワイヤ30が外側に引っ張られて、片状部12iが径方向外側に外力を受けると、片状部12iの外縁の第1の側部切り込み面12gが、露出面Sfに連続する軸方向切り込み面12fから離間する方向に移動する。
このため、片状部12iからガイドワイヤ30に作用する反力が低減するため、ガイドワイヤ30を挿入する際の負荷が低減される。
この点でも、ガイドワイヤ30の挿入作業の作業性が向上する。
片状部12iのこのような作用は、ガイドワイヤ30を基端側に引き抜く場合にも同様である。
特に説明しないが、片状部12jも片状部12iとまったく同様の作用を有する。
【0099】
さらに、片状部12i、12jは、露出面Sfに連続する軸方向切り込み面12fから離れる方向に変形するのみではなく、軸方向切り込み面12fに沿う方向に移動する変形も可能である。このため、片状部12i、12jが、ガイドワイヤ30から、軸方向切り込み面12fに沿う方向に外力を受ける場合にも、ガイドワイヤ30への反力が低減される。
【0100】
さらに処置具1では、第1ルーメン12aが樹脂製であるため、内部に挿入したガイドワイヤ30に力を加えると、スリット12eが変形する。このため、スリット12eを通してガイドワイヤ30を外部に引き出すことができる。例えば、ガイドワイヤ挿入用開口20bから外部に延出するガイドワイヤ30を、スリット20cに向かって移動する。ガイドワイヤ30は、露出面Sg、Shで形成されるV字状の部位に沿って、スリット12eの開口部まで移動する。
さらに操作者が力を加えて、ガイドワイヤ30を径方向外側および先端側に引っ張ると、ガイドワイヤ30は、スリット12eおよびスリット20cの間に入り込んでいく。このとき、スリット20cの隙間幅Wは、ガイドワイヤ30の外径よりも大きいため、ガイドワイヤ30は、剛性の高いスリット20cとは接触することがない。
一方、スリット12eは、剛性が低いため、ガイドワイヤ30を挿入していくと、隙間幅が拡がって、ガイドワイヤ30を外部に引き出すことができる。
【0101】
このようにして、操作者は、処置具1の長手方向においてスリット12eが設けられた任意の位置から、ガイドワイヤ30を外部に延出させることができる。
さらに、スリット12eから外部に延出されたガイドワイヤ30は、操作者によって径方向内側に押し込まれると、第1ルーメン12aの内部に戻される。
このため、例えば、処置具1が体外にあるか、または体内の浅い位置にある場合に、ガイドワイヤ30を、処置具1の先端側のスリット12eから延出させることができる。この場合、患者の近傍の位置する術者が、手元で、ガイドワイヤ30の挿入を操作することができるため、ガイドワイヤ30の操作性が向上する。
術者は、処置具1をより体内に移動していく際には、ガイドワイヤ30を順次スリット12eに押し戻すことによって、ガイドワイヤ30を第1ルーメン12aに戻していく。
【0102】
次に、本実施形態の処置具1の使用方法について説明する。
図30から
図52は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の使用時の一過程を示す模式図である。
【0103】
以下では、処置具1の使用方法について、処置具1を用いて逆行性胆道造影と十二指腸乳頭PVの切開と十二指腸乳頭PVの拡張とを含む一連の処置を行い、結石を除去可能とする例によって説明する。
まず、
図30に示すように、バルーン14のエア抜き等の準備をしてから、処置具1と加圧器120とを、接続チューブ123を介して、口金部22に連結する。加圧器120には、造影剤と生理食塩水との混合液からなる拡張液が入っている。
次に、造影剤を注入するためのシリンジ126をコネクタ23に取り付ける。造影剤を注入するためのシリンジ126内は造影剤で満たされる。シリンジ126とコネクタ23とは水密に連結され、シリンジ126から造影剤を押し出すことにより、造影剤は第3ルーメン12cおよび第3ルーメン11cを通して、挿入部2の遠位端から吐出可能である。
加圧器120のシリンダ121は、その外周部が処置具1の固定具26に保持され、処置具1との位置関係が固定される。
固定具26による固定力をさらに増すために、
図32に示すように、固定具26の両端を伸縮性のバンド26Aで締め付けてもよい。
【0104】
次に、処置具1の遠位端を処置対象部位まで案内するためのガイドワイヤ30を準備する。
図32に示すように、ガイドワイヤ30は、操作部3のガイドワイヤ挿入用開口20bから挿入部2の基端部に挿入される。
このときの、ガイドワイヤ30の挿入動作、および挿入時の第2シース12の作用は上述した通りである。
ガイドワイヤ30は、ガイドワイヤ挿入用開口20bを通して、図示略の第2シース12の第1ルーメン12aに挿入され、第1シース11の第1ルーメン11aの遠位端側(先端側)の開口まで送り込まれる。
【0105】
次に、
図33に示すように、内視鏡130の処置具チャンネル131に、処置具1の挿入部2を遠位側から挿入する。
処置具1の挿入部2の遠位端が内視鏡130の処置具チャンネル131の遠位端から突出したら、内視鏡130の操作と処置具1の操作とによって、処置具1の遠位端を十二指腸乳頭PVに挿入する。
【0106】
処置具1の遠位端を十二指腸乳頭PVに挿入するためのテクニックとしては、ガイドワイヤ30を利用する場合がある。十二指腸乳頭PVの内部の管は、
図34に示すように、まれに屈曲していることがある。そのような十二指腸乳頭PVでは処置具1の挿入部2と胆管との向きを合わせただけでは処置具1の挿入部2の遠位端が十二指腸乳頭PVから胆管に至るまでの屈曲した管腔の屈曲部分X(
図35参照)に突き当たってしまい挿入部2を胆管まで挿入することが難しい場合がある。
【0107】
処置具1の挿入部2の遠位端が十二指腸乳頭PVから胆管に至るまでの屈曲した管腔の屈曲部分に突き当たってしまう場合には、
図36、
図37に示すように、挿入部2よりも柔軟な遠位端部を有するガイドワイヤ30を利用して、まずこのガイドワイヤ30を十二指腸乳頭PVから胆管へ向かって挿入する。
具体的な操作としては、処置具1の挿入部2の遠位端を十二指腸乳頭PVの入り口に位置させた状態で処置具1の遠位端からガイドワイヤ30を僅かに突き出す(
図37参照)。この状態でガイドワイヤ30の近位端部をやさしくゆっくりと、前後させたり回転させたりすることによってガイドワイヤ30の柔軟な遠位端の向きを十二指腸乳頭PV内の屈曲に沿わせる。その結果、ガイドワイヤ30は、十二指腸乳頭PVの屈曲を越えて胆管側へと進むことができる(
図38参照)。これにより、処置具1を案内するためのガイドワイヤ30が、処置具1が十二指腸乳頭PV内に挿入される前に十二指腸乳頭PV内に設置される。その後、ガイドワイヤ30に沿わして処置具1の挿入部2を十二指腸乳頭PVの奥まで挿入することができる(
図39参照)。
【0108】
図40に示すように、挿入部2の第2シース12には、ガイドワイヤルーメンである第1ルーメン12a(図示略)に、ガイドワイヤ30の外径よりもわずかに小さい幅を有するスリット12eが形成される。
第2シース12は樹脂材料で形成されるため弾性変形が可能であり、第2シース12を弾性的に変形させることでガイドワイヤ30をスリット12eからも外部に引き出すことができる。例えば、ガイドワイヤ30が第2シース12の外部に引き出される位置を、内視鏡130の鉗子栓173の近傍のガイドワイヤ操作位置Qに移動させることができる。この場合、内視鏡130を操作する使用者がガイドワイヤ30を操作(押込んだり、引戻したりなど)することが容易になる。
また、処置具1だけで手技を開始し、途中でガイドワイヤ30をガイドワイヤ挿入用開口20bから挿入したい場合にも、スリット12eはガイドワイヤ30の外径より小さいため、ガイドワイヤ30がスリット12eの途中で外に出てしまうということがない。このため、処置具1の先端までガイドワイヤ30を挿入することができる。
【0109】
処置具1の挿入部2を胆管内まで挿入したら、
図41に示すように、操作部3に取り付けられたシリンジ126から造影剤を胆管内に充填する。
図42に示すように、胆管が造影され結石Caが確認されたら、
図43に示すように、ナイフワイヤ10の遠位端部分を十二指腸乳頭PVの切開位置へ移動させる。さらに、
図44に示すように、高周波電源装置128の接続コード129を操作部3のプラグ25に接続する。
高周波電源装置128とプラグ25とを接続したら、
図45に示す操作部3のスライダ21を操作して、
図46に示すようにナイフワイヤ10の遠位端部分を僅かに弓状に張って十二指腸乳頭PVに接触させ、高周波電流を流して十二指腸乳頭PVを切開する。
【0110】
ナイフワイヤ10を用いて十二指腸乳頭PVを切開したあと、
図47に示すように、バルーン14の長手方向のほぼ中央が十二指腸乳頭PVの入り口に来るまで処置具1の挿入部2を前進させる。
続いて、
図48、
図49に示すように、十二指腸乳頭PVの内部にバルーン14が位置する状態で、加圧器120のプランジャ122を前進させてバルーン14を拡張させる。
バルーン14によって十二指腸乳頭PVが拡張されたら、
図50に示すように、加圧器120のプランジャ122を後退させて、
図51に示すようにバルーン14を十二指腸乳頭PV内で収縮させる。
【0111】
次に、処置具1を内視鏡130の処置具チャンネル131から引き抜き、
図52に示すように、採石用のバスケット140などを内視鏡130に取り付け、このバスケット140を十二指腸乳頭PVから胆管まで導入し、結石Caを回収する。
【0112】
ここで、処置具1における伸び抑制ワイヤ16の作用について説明する。
図53は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具のバルーンの動作を示す模式図である。
図53において(a−1)は、未使用のバルーンの縮小時の態様を示す模式的な斜視図である。同じく(a−2)は、バルーンの拡張時の態様を示す模式的な斜視図である。同じく(a−3)は、拡張した後におけるバルーン時の縮小時の態様を示す模式的な斜視図である。
図53において、(b−1)、(b−2)、(b−3)は、それぞれ、(a−1)におけるX1−X1断面図、(a−2)におけるX2−X2断面図、(a−3)におけるX3−X3断面図である。
図54は、本発明の第1の実施形態に内視鏡用処置具の使用時の一過程を示す模式図である。
図55は、本発明の第1の実施形態の内視鏡用処置具の伸び抑制ワイヤの作用を説明する断面図である。
【0113】
上述したように、伸び抑制ワイヤ16は、挿入部2の内部において、第1シース11およびナイフワイヤ10の一部と、第2シース12とに、それぞれ並走して配置される。このため、挿入部2が引っ張られる場合、伸び抑制ワイヤ16が並走する範囲では、伸び抑制ワイヤ16の引っ張り剛性によって挿入部2の伸びが抑制される。
このような挿入部2の引っ張りが生じる場合の例として、バルーン14を縮小してから、挿入部2を内視鏡130の処置具チャンネル131に引き込む場合の例を挙げることができる。
【0114】
図53における(a−1)、(b−1)に示すように、未使用のバルーン14は、バルーン14内に拡張用の流体が供給されていないため、縮小されている。このときのバルーン14は、第1シース11の外周面に沿って折りたたまれている。折りたたまれたバルーン14は、第1シース11よりわずかに大径の円筒状の範囲に位置する。
【0115】
図48、
図49を参照して上述したように、
図53における(a−2)、(b−2)に示すように、加圧器120によって、バルーン14の内部に拡張液が導入されると、バルーン14が拡張する。
【0116】
図50を参照して上述したように、加圧器120によって、バルーン14の内部に拡張液が排出されると、バルーン14が縮小する。
このときのバルーン14は、
図53における(a−3)、(b−3)に示すように、径方向における一方向に押しつぶされたように縮小される。このため、縮小されたバルーン14は、例えば、第1シース11の外周面に密着する中心部14Aと、バルーン14同士が密着して第1シース11の径方向外側に突出する一対の突片部14Bとを含む扁平な形状に変化する。
【0117】
縮小時の突片部14Bは、例えば、
図54に模式的に示すように、挿入部2を示すように、十二指腸乳頭PVの内部の管から引き抜く際に、内視鏡130における処置具チャンネル131の先端開口部131aに引っ掛かりやすくなっている。
突片部14Bは、柔軟であるため、ある程度の力で引き抜くと変形して処置具チャンネル131内に入る。しかし、突片部14Bが処置具チャンネル131内に入りきるまでは、挿入部2全体に引っ張り力が作用する。
【0118】
例えば、
図55(a)に示すように、処置具1から伸び抑制ワイヤ16を除去した処置具301において、バルーン14の基端部から操作部3までの挿入部2の長さを第2シース12の長さをL1とする。このとき、バルーン14が縮小されて、突片部14Bが、先端開口部131aに係止されているとする。
この状態から、操作部3を遠位側(基端側)に引っ張ると、
図55(b)に示すように、樹脂製の第2シース12で延びて、挿入部2の長さがL1+ΔLに伸びる。しかし、第2シース12の内部に挿通されるナイフワイヤ10は、第2シース12のようには伸長できないため、略ΔLだけ基端側に移動する。この結果、第1シース11から外部に吐出下ナイフワイヤ10が第1シース11の内部に引き込まれ、処置部4における第1シース11が湾曲する。
図54に示すように、バルーン14が先端開口部131aに係止された状態では、第1シース11から露出するナイフワイヤ10が、十二指腸乳頭PVの内部の管の開口部近傍に位置するため、処置部4の変形あるいはナイフワイヤ10の移動によって、体内の組織が傷つく可能性もある。
【0119】
これに対して、本実施形態の処置具1は、挿入部2の内部に伸び抑制ワイヤ16を有する。このため、
図55(c)に示すように、バルーン14が先端開口部131aに係止された状態で、挿入部2が基端側に引っ張られても、伸び抑制ワイヤ16が引っ張り力に抵抗するため、挿入部2の伸びは、ほとんど発生せず、挿入部2の長さはL1のままである。
この結果、ナイフワイヤ10が、基端側に引かれることもないため、処置部4の形状、および第1シース11からのナイフワイヤ10の露出量は、引っ張り力を受けても変わらない。このため、処置部4の変形あるいはナイフワイヤ10の移動によって、体内の組織が傷けることが、確実に防止される。
【0120】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態の内視鏡用処置具について説明する。
図56は、本発明の第2の実施形態の内視鏡用処置具の第2シースの第2端部の構成を示す模式的な斜視図である。
図57は、
図56におけるV視の平面図である。
図58は、
図57におけるY−Y断面図である。
【0121】
図1、
図2に示すように、本実施形態の処置具41は、上記第1の実施形態の処置具1の第2シース12に代えて第2シース42(マルチルーメンシース)を備える。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0122】
図56から
図58に示すように、第2シース42は、上記第1の実施形態の第2シース12の第2ルーメン12bおよび第3ルーメン12cに代えて、第2ルーメン42bおよび第3ルーメン42cを備える。
図58では、第2ルーメン42bおよび第3ルーメン42cは、第2ルーメン12bおよび第3ルーメン12cと同様の位置関係に配置されている。ただし、第2ルーメン42bおよび第3ルーメン42cは、配置位置が第1ルーメン12aおよび第4ルーメン12dの対向方向において、さらに第1ルーメン12a寄りであってもよい。この場合、第2シース42では、第4ルーメン12dの側方の領域を広げることができる。第4ルーメン12dの側方の領域には、例えば、第5、第6のルーメン等を設けてもよい。
【0123】
さらに、第2シース42は、上記第1の実施形態の第2シース12の、露出面Sg、Sh、Sf、軸方向切り込み面12f、第1の側部切り込み面12g、および第2の側部切り込み面12hに代えて、露出面sg、sh、sf、軸方向切り込み面42f、第1の側部切り込み面42g、および第2の側部切り込み面42hを備える。
【0124】
露出面sg、shは、それぞれ後述する第1の側部切り込み面42g、第2の側部切り込み面42hで形成される点を除いて、上記第1の実施形態の露出面Sg、Shと同様の平面である。
露出面sfは、後述する軸方向切り込み面42fで形成されるため、第2ルーメン42b、第3ルーメン42cを横断して形成される点を除いて、上記第1の実施形態における露出面Sfと同様の平面である。
【0125】
軸方向切り込み面42fは、軸方向切り込み面12fが、第1ルーメン12aと交差し、第2ルーメン12bおよび第3ルーメン12cとは交差しない位置に形成されていたのに対して、第1ルーメン12a、第3ルーメン42c、および第4ルーメン12dのいずれとも交差する点が、上記第1の実施形態と異なる。
軸方向切り込み面42fは、切り込みが行われる際には、互いに対向する2面として形成される。しかし、後述するように、すべての切り込みが終了すると露出面sfに対向する軸方向切り込み面12fは除去される。
【0126】
第1の側部切り込み面42gおよび第2の側部切り込み面42hは、
図57に示すように、スリット12eの中心を通る径方向から見て、第2シース42に対して、点PでX字状に交差することは、上記第1の実施形態と同様である。
ただし、第1の側部切り込み面42gおよび第2の側部切り込み面42hにおいて、端面12kに近い方の部位は、軸方向切り込み面42fを横断するように交差する点が、上記第1の実施形態とは異なる。
第1の側部切り込み面42gおよび第2の側部切り込み面42hの切り込み方向における先端部は、
図58に破線で示すように、軸方向切り込み面42fに対して交差する斜め方向に延びている。
【0127】
第1の側部切り込み面42g(第2の側部切り込み面42h)は、切り込みが行われる際には、互いに対向する2面として形成される。しかし、上記第1の実施形態の第1の側部切り込み面12gおよび第2の側部切り込み面12hと同様、すべての切り込みが終了すると後述する露出面sg(sh)に対向する第1の側部切り込み面42g(第2の側部切り込み面42h)は除去される。
【0128】
このため、本実施形態では、互いに対向する2面をなす第1の側部切り込み面42g(第2の側部切り込み面42h)は、点Pよりも、第2シース42における先端側に形成される。
互いに対向する2面をなす軸方向切り込み面42fは、露出面sgを形成する第1の側部切り込み面42gおよび露出面shを形成する第2の側部切り込み面42hと交差する位置から軸方向切り込み面12fの切り込み方向における先端部までの領域に形成される。
このように、露出面sgとの交差位置よりも先端側に軸方向切り込み面42fの先端部が位置することによって、露出面sgと軸方向切り込み面42fとを外縁に有する三角形状の片状部42jが形成される。同様に、露出面shとの交差位置よりも先端側に軸方向切り込み面42fの先端部が位置することによって、露出面shと軸方向切り込み面42fとを外縁に有する三角形状の片状部42iが形成される。
【0129】
このような構成によって、
図57に示すように、第2シース42に第1端部E1は、第2シース42の側部が切り欠かれて上記第1の実施形態と同様の開口部OPが形成される。開口部OPには、第1ルーメン12aの内周面が外部に向かって露出している。
本実施形態における開口部OPは、径方向から見ると、2条からなる一対の露出面sfと、露出面sg、shとによって、略U字状に囲われている。
【0130】
このような構成を有する第2シース42の第1端部E1は、特に図示しないが、第2シース12と同様の位置関係で先端筒状部20aに挿入され、同様にして、先端筒状部20aに固定される。
すなわち、第2シース42の第1端部E1は、径方向から見て、スリット12eが、スリット20cの中心に位置するように、先端筒状部20aに挿入される。第1端部E1の軸方向の位置は、第1の側部切り込み面42gおよび第2の側部切り込み面42hが主開口先端面20kよりも先端側であって、かつ第2シース42の端面12kが傾斜部20eよりも基端側となる位置である。
【0131】
ただし、第2シース42では、軸方向切り込み面42fが第2ルーメン42bおよび第3ルーメン42cに切り込まれるため、第1端部E1において、第2ルーメン42bおよび第3ルーメン42cが径方向に開口する。
そこで、第2ルーメン42bおよび第3ルーメン42c内の挿通物を露出させないために、第2ルーメン42bおよび第3ルーメン42cに、
図58の二点鎖線で示すチューブ43を挿入する。
【0132】
次に、処置具41の製造方法について、第2シース42の製造方法を中心として説明する。
図59は、本発明の第2の実施形態の内視鏡用処置具の製造工程の斜視の工程説明図である。
図60は、本発明の第2の実施形態の内視鏡用処置具の製造工程の断面の工程説明図である。
図61は、本発明の第2の実施形態の内視鏡用処置具の製造工程の斜視の工程説明図である。
図62は、本発明の第2の実施形態の内視鏡用処置具の製造工程の断面の工程説明図である。
図63は、本発明の第2の実施形態の内視鏡用処置具の製造工程の斜視の工程説明図である。
図64は、本発明の第2の実施形態の内視鏡用処置具の製造工程の断面の工程説明図である。
【0133】
図59に示すように、第2シース42を製造するには、第1ルーメン12a、第2ルーメン42b、第3ルーメン42c、および第4ルーメン12dが形成されたマルチルーメンチューブ52を製造する。
次に、第2シース42に第1端部E1となる方のマルチルーメンチューブ52の端部に第1の側部切り込み面42g、第2の側部切り込み面42h、および軸方向切り込み面42fを形成する加工を行う。
まず、
図59に示すように、第1ルーメン12aが上側、第4ルーメン12dが下側となるように、マルチルーメンチューブ52を水平に配置して、第1ルーメン12aに芯金102を挿入する。さらに、第2ルーメン42bおよび第3ルーメン42cにそれぞれ芯金103を挿入する。
【0134】
芯金102は、自重によって第1ルーメン12aの最下部の内周面に当接する。芯金103は、自重によって第2ルーメン42bおよび第3ルーメン42cの最下部の内周面に当接する。
芯金102および各芯金103は、第1の側部切り込み面42gおよび第2の側部切り込み面42hを交差させる位置よりもさらに奥側の位置まで挿入する。
芯金102および各芯金103は、第1の側部切り込み面42gおよび第2の側部切り込み面42hを形成するカッタ100の切り込み量を規制する部材である。
さらに、各芯金103は、軸方向切り込み面42fを形成する際に、カッタ100の移動をガイドする部材でもある。
【0135】
まず、第1の側部切り込み面42gを形成するため、カッタ100を第1ルーメン12aおよび第3ルーメン42cに対向する外周側からマルチルーメンチューブ52に向かう切り込み方向において、カッタ100による切り込みを行う。
このとき、カッタ100の姿勢は、
図60に示すように、刃先100aが、第1ルーメン12aおよび第3ルーメン42cに対向する外周側から、挿通する芯金102、103に同時に当接できる斜め方向である点が、上記第1の実施形態と異なる。
【0136】
このような切り込み動作を行うと、
図60に示すように、カッタ100は、マルチルーメンチューブ52を切断し、切断部に第1の側部切り込み面42gを形成する。しかし、カッタ100の刃先100aが芯金102、103に当接すると、それ以上切り込むことができなくなる。このため、第1の側部切り込み面42gは、刃先100aの位置で止まる。
このとき、芯金102、103の外径を適宜設定することによって、刃先100aが、第1ルーメン12aおよび第3ルーメン42cに対して切り込まれる量を調整することができる。
刃先100aが芯金102,103に当接したら、カッタ100を引き抜く。
【0137】
次に、
図61、
図62に示すように、カッタ100を鉛直軸回りに回転して、第1の側部切り込み面42gとX字状に交差する姿勢で、マルチルーメンチューブ52に切り込む。
カッタ100は、
図62に示すように、刃先100aが、芯金102と第2ルーメン42bに挿通された芯金103と当接するまで切り込む。刃先100aが芯金102、103に当接したら、カッタ100を引き抜く。
この結果、第2の側部切り込み面42hが形成される。
【0138】
このようにして、マルチルーメンチューブ52の側面において、径方向から見て、点PでX字状に交差した第1の側部切り込み面42gおよび第2の側部切り込み面42hが形成される。
【0139】
次に、軸方向切り込み面42fを形成する。
まず、芯金102を第1ルーメン12aから引き抜く。次に、カッタ100をマルチルーメンチューブ52から延出された各芯金103の上部に配置する。次に、
図63、
図64に示すように、端面12kからマルチルーメンチューブ52の中心軸線に沿う方向に切り込み方向として、カッタ100を切り込む。
このとき、カッタ100の刃先100aは、マルチルーメンチューブ32の中心軸線O32と直交する姿勢を保つ。
さらに、カッタ100は、各芯金103に上方から当接し、各芯金103をガイドとして水平に移動する。このようなカッタ100の切り込み動作によって、端面12kから、マルチルーメンチューブ52の中心軸線O52(
図64参照)に平行な水平面に沿って、軸方向切り込み面42fが形成される。
【0140】
このような切り込み動作によって、マルチルーメンチューブ52の端部は、軸方向切り込み面42fを境界として2つに分割される。
刃先100aが、端面12kに最も近い第1の側部切り込み面42gおよび第2の側部切り込み面42hに交差すると、上記第1の実施形態の切除部32Bと同様な図示略の切除部が離間する。この結果、
図63に示すように、チューブ本体部52Aが形成される。
カッタ100の刃先100aが径方向から見て、点Pよりも少し先端側まで移動したところで、切り込み動作を停止する。
【0141】
このような切り込み動作によって、径方向から見て、第1の側部切り込み面42gおよび第2の側部切り込み面42hと、軸方向切り込み面42fとが重なる範囲には、片状部42i、42jが形成される(
図57参照)。
次に、カッタ100および各芯金103を除去する。
【0142】
このようにして、第1の側部切り込み面42g、第2の側部切り込み面42h、および軸方向切り込み面42fが形成されることによって、側部が切り欠かれたチューブ本体部52Aが形成される。
次に、チューブ本体部52Aの点Pから、中心軸線O52に沿って、上記第1の実施形態と同様にしてスリット12eを加工する。
このようにして、スリット12eをチューブ本体部32Aの全長にわたって形成すると、
図56に示すような第2シース42が形成される。
【0143】
このような第2シース42は、第1端部E1における第2ルーメン42bおよび第3ルーメン42cに、チューブ43を挿入する以外は、上記第1の実施形態の第2シース12と同様の組立工程を行って、処置具41を製造することができる。
【0144】
処置具41は、上記第1の実施形態の第1の側部切り込み面12g、第2の側部切り込み面12h、および軸方向切り込み面12fに代えて、第1の側部切り込み面42g、第2の側部切り込み面42h、および軸方向切り込み面42fを備えるため、処置具1と同様の作用を備える。
したがって、処置具41によれば、ガイドワイヤ30の挿入時に、ガイドワイヤ30がガイドワイヤルーメンからずれていても、X字状に交差する第1の側部切り込み面42gおよび第2の側部切り込み面42hに沿ってガイドワイヤ30が移動する。このため、処置具41によれば、マルチルーメンシースを備える場合に、ガイドワイヤをガイドワイヤルーメンに容易に挿通することができる。
【0145】
なお、上記各実施形態の説明では、軸方向切り込み面が、第2シースの軸方向において、点Pよりも先端側に延ばされる場合の例で説明した。しかし、軸方向切り込み面は、端面12k側の第1の側部切り込み面、第2の側部切り込み面と交差していれば、点Pよりも基端側で止まっていてもよい。
【0146】
上記各実施形態の説明では、第1の側部切り込み面、第2の側部切り込み面、および軸方向切り込み面を形成してから、スリット12eを形成する場合の例で説明した。しかし、スリット12eは、第1の側部切り込み面、第2の側部切り込み面、および軸方向切り込み面のいずれかよりも先に形成してもよい。
【0147】
上記各実施形態の説明では、第1の側部切り込み面、および第2の側部切り込み面を形成してから、軸方向切り込み面を形成する場合の例で説明した。しかし、軸方向切り込み面を形成してから、第1の側部切り込み面および第2の側部切り込み面を形成してもよい。
【0148】
上記各実施形態の説明では、軸方向切り込み面を形成する場合に、マルチルーメンシースの第1端部の軸方向の端面(端面12k)から切り込む場合の例で説明した。しかし、軸方向切り込み面は、マルチルーメンシースにおいて端面12k側であれば、端面12kよりも先端側において形成されてもよい。この場合、軸方向切り込み面を形成するカッタは、端面12kに切り込む必要はない。
【0149】
上記に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせたり、削除したりして実施することができる。