(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-202314(P2016-202314A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】防矢ユニット
(51)【国際特許分類】
A63B 71/02 20060101AFI20161111BHJP
A63B 69/00 20060101ALI20161111BHJP
F41J 3/00 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
A63B71/02 E
A63B69/00 515A
F41J3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-84319(P2015-84319)
(22)【出願日】2015年4月16日
(71)【出願人】
【識別番号】508310089
【氏名又は名称】株式会社三陽
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】奥田 邦晴
(57)【要約】
【課題】周囲の安全を確保できるとともに矢が破損し難い防矢ユニットを提供する。
【解決手段】アーチェリー場に設置されアーチェリーの矢の破損防止及び周囲の安全確保を図る防矢ユニット100であって、合成樹脂繊維で編まれてなる防矢ネット1で形成された袋状のネット袋体10と、ネット袋体10に脱落不能に嵌入された緩衝材20と、を備え、ネット袋体10は、二枚の防矢ネット1が重ねられその外側全周が閉じられてなるとともに、緩衝材20はポリエチレン発泡材からなり、厚さが5mm以上で、かつ硬度がアスカーC30〜75である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチェリー場に設置され、的から逸れたアーチェリーの矢を受ける防矢ユニットであって、
合成樹脂繊維で編まれてなる防矢ネットで形成された袋状のネット袋体と、
前記ネット袋体に脱落不能に嵌入された緩衝材と、を備えることを特徴とする防矢ユニット。
【請求項2】
前記ネット袋体は、二枚の前記防矢ネットが重ねられその外側全周が閉じられてなることを特徴とする請求項1に記載の防矢ユニット。
【請求項3】
前記緩衝材はポリエチレン発泡材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の防矢ユニット。
【請求項4】
前記緩衝材は、厚さが5mm以上で、かつ硬度がアスカーC30〜75であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の防矢ユニット。
【請求項5】
前記ネット袋体の縁部にハトメが複数取付けられたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の防矢ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーチェリー場に設置され、的から逸れたアーチェリーの矢を受ける防矢ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
弓道やアーチェリーでは全ての矢が的に当たるわけではなく、矢が大きく的から逸れることもあるので、その逸れた矢を受けるために、アーチェリー場等には防矢ネットが設置されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3143151号公報
【0004】
このような防矢ネット1は、
図3及び
図4に示すようにポリエステル製の網であり、設置し易いように外周にはハトメが取付けられている。
また、網の目は矢のシャフトの太さよりも細かい。
図3及び
図4の防矢ネット1を一単位として、アーチェリー場の大きさに適した枚数だけ用いられ、支柱間に防矢ネット1が設置される。
【0005】
このような防矢ネット1では、的から逸れたアーチェリーの矢を受けることができるので、周囲の安全を確保することができる。
また、網の目がシャフトの太さより細かいので、矢を貫通させないので、矢の羽根か破損し難い。
【0006】
また、網の目で矢を受けるので、硬い板体や壁体で矢を受ける場合に比べて矢の先端部も破損し難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年ではアーチェリーの矢の改良が進むことで矢の直進性が増し、それに伴って矢の速度が上がってきたので、従来の防矢ネット1では貫通してしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、周囲の安全を確保できるとともに矢が破損し難い防矢ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の防矢ユニット(100)は、アーチェリー場に設置されアーチェリーの矢の破損防止及び周囲の安全確保を図る防矢ユニット(100)であって、合成樹脂繊維で編まれてなる防矢ネット(1)で形成された袋状のネット袋体(10)と、前記ネット袋体(10)に脱落不能に嵌入された緩衝材(20)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の防矢ユニット(100)は、前記ネット袋体(10)は、二枚の前記防矢ネット(1)が重ねられその外側全周が閉じられてなることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の防矢ユニット(100)は、前記緩衝材(20)はポリエチレン発泡材からなることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の防矢ユニット(100)は、前記緩衝材(20)は、厚さが5mm以上で、かつ硬度がアスカーC30〜75であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の防矢ユニット(100)は、前記ネット袋体(10)の縁部にハトメ(13)が複数取付けられたことを特徴とする。
【0014】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載の防矢ユニットによれば、合成樹脂繊維で編まれてなる防矢ネットで形成された袋状のネット袋体と、ネット袋体に脱落不能に嵌入された緩衝材と、を備えるので、表側の防矢ネットと緩衝材と裏側の防矢ネットの三層構造となる。よって、近年の直進性の向上した矢であってもその貫通を確実に防止できるので、周囲の安全を確保できる。それに伴い、矢の羽根の破損を防ぐこともできる。
【0016】
また、請求項2に記載の防矢ユニットによれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加え、ネット袋体は、二枚の防矢ネットが重ねられその外側全周が閉じられてなるので、中の緩衝材が落下してしまうことがなく、防矢ユニットの三層構造によって確実に安全性を確保できる。
【0017】
また、請求項3に記載の防矢ユニットによれば、請求項1又は2に記載の発明の作用効果に加え、緩衝材はポリエチレン発泡材からなるので、矢を確実に止めることができるだけでなく、軽量である。よって、防矢ユニットの施工及び維持管理も容易である。
【0018】
また、請求項4に記載の防矢ユニットによれば、請求項1乃至3に記載の発明の作用効果に加え、緩衝材は、厚さが5mm以上で、かつ硬度がアスカーC30〜75であるので、確実に矢を止めることができるだけでなく、矢の破損もない。
【0019】
また、請求項5に記載の防矢ユニットによれば、請求項1乃至4に記載の発明の作用効果に加え、ネット袋体の縁部にハトメが複数取付けられたので、現場での施工が容易であるとともに施工後も防矢ユニットが脱落し難い。
【0020】
なお、本発明の防矢ユニットのように、ネット袋体に脱落不能に嵌入された緩衝材を備える点は、上述した特許文献1には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る防矢ユニットを示す断面図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る防矢ユニットを示す正面図である。
【
図3】従来例に係る防矢ネット及び本発明の実施形態に係る防矢ユニットを示す正面図である。
【
図4】従来例に係る防矢ネットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び
図3を参照して、本発明の実施形態に係る防矢ユニット100を説明する。
この防矢ユニット100は、アーチェリー場に設置され、的から逸れたアーチェリーの矢を受けるものであって、ネット袋体10と、緩衝材20を備える。
従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。ここで、正面図においては本実施形態と従来例で同じように見える(
図3参照)。
【0023】
ネット袋体10は、合成樹脂繊維(ここではポリエステル)で編まれてなる防矢ネット1が二枚重ねられ、その外側全周が閉じられて袋状となっている。
防矢ネット1はポリエステル製であるので、耐候性に優れており、紫外線による強度の低下は小さい。
【0024】
ネット袋体10(防矢ネット1)の外側全周が閉じられるタイミングは、後述の緩衝材20が嵌入された後であり、防矢ネット1が製造された後に、緩衝材20をネット袋体10から取出す必要は通常生じないので、本実施形態ではネット袋体10の外周が開いてしまうことのないように縫われている。
またここで用いられる防矢ネット1は、210D/30本格で、升目大きさ3.2×2.9、充実率62%である。
【0025】
このネットの升目大きさは矢のシャフトの太さよりも小さく、矢がネット袋体10(防矢ネット1)に衝突するときには防矢ネット1の目に矢が入り、防矢ネット1の目と矢の先端部又はシャフトとの間で摩擦力がはたらき、矢の推進力をゼロにする。
そして、閉じられた縁部は裏表の両面に合成樹脂シート11が縫い合わされ又は貼着されて補強され、その合成樹脂シート11及びネット袋体10を貫通する貫通孔12が一定の間隔で複数形成されている。
その貫通孔12には、貫通孔12の保護のためにハトメ13がかしめられて取付けられている。
【0026】
緩衝材20は、ポリエチレン発泡材からなり、ネット袋体10に脱落不能に嵌入されている。つまり、本実施形態に係る防矢ユニット100は、表側の防矢ネット1と緩衝材20と裏側の防矢ネット1の三層構造になっている。
このポリエチレン発泡材は厚さが5mm以上で、かつ硬度がアスカーC(ASKER C)30〜75である。この硬度のとき、ポリエチレン発泡材の厚さは50mmもあれば十分である。
また、密度は0.025〜0.15g/cm
3である。
【0027】
緩衝材20がネット袋体10に嵌入されたときには、厚さ方向(
図1における左右方向)には隙間が無い。一方、高さ方向(
図1における上下方向)及び左右方向に関しては、若干隙間があるが、これはネット袋体10の外周を閉じたときに生じる断面略三角形状の隙間であって、緩衝材20がネット袋体10の中で自由に動けるだけの隙間ではない。
【0028】
このような防矢ユニット100を一単位として、アーチェリー場において支柱間に複数設置される。そのとき、隣接する防矢ユニット100同士はハトメ13を介して連結される。
【0029】
以上のように構成された防矢ユニット100によれば、ポリエステルで編まれてなる防矢ネット1で形成された袋状のネット袋体10と、ネット袋体10に脱落不能に嵌入された緩衝材20と、を備えるので、表側の防矢ネット1と緩衝材20と裏側の防矢ネット1の三層構造となる。
よって、近年の直進性の向上した矢であってもその貫通を確実に防止できるので、周囲の安全を確保できる。それに伴い、矢の羽根の破損を防ぐこともできる。すなわち、矢は防矢ユニット100を貫通することなく、矢の羽根が表側の防矢ネットまで達しないので、矢の羽根が損傷しない。
【0030】
また、ネット袋体10は、二枚の防矢ネット1が重ねられその外側全周が閉じられてなるので、中の緩衝材20が落下してしまうことがなく、防矢ユニット100の三層構造によって確実に安全性を確保できる。
【0031】
また、緩衝材20は、厚さが5mm以上で、かつ硬度がアスカーC30〜75であるので、確実に矢を止めることができるだけでなく、矢の破損もない。この硬度であると、矢が緩衝材20に刺さったときに矢の先端部が破損してしまうこともない。
さらに、緩衝材20はポリエチレン発泡材からなるので、矢を確実に止めることができるだけでなく、軽量である。よって、防矢ユニット100の施工及び維持管理も容易である。
【0032】
しかも、ネット袋体10の縁部にハトメ13が複数取付けられたので、施工が容易であるとともに施工後も防矢ユニット100が脱落し難い。
【0033】
なお、本実施形態において、ネット袋体10の縁部にハトメ13が複数取付けられたとしたが、これに限られるものではなく、
図2に示すように補強用の合成樹脂シート11やハトメ13が無くてもよい。
【0034】
また、ネット袋体10は二枚の防矢ネット1が重ねられその外側全周が閉じられてなるとしたが、これに限られるものではなく、例えば一枚の防矢ネット1を二つ折りにして、その折り目以外の三方を縫い合わせてネット袋体10を形成してもよい。
【0035】
また、ネット袋体10を構成する防矢ネット1の素材はポリエステルとしたが、他のナイロン等の合成樹脂繊維で編まれてなるものでもよい。
【0036】
このときの防矢ネット1の仕様(規格)は本実施形態のものに限られず、例えば210D/60本格であってもよい。
また、防矢ネット1の充実率は14〜100%であればよい。
升目大きさも3.2×2.9というのは例示であって、これだけに限られるものではない。
【0037】
さらに、緩衝材20はポリエチレン発泡材からなるとしたが、これに限られるものではなくウレタン発泡材、ポリエステル、ゴム等であってもよい。
また、貫通防止の観点においては、一枚の防矢ネット1と緩衝材20で必要十分であるので、ネット袋体10の裏側の素材は防矢ネット1に限られるものではない。但し、本実施形態のように裏表両面を防矢ネット1とすることで、防矢ユニット100の施工時に裏表を気にする必要はない。
【符号の説明】
【0038】
1 防矢ネット
10 ネット袋体
11 合成樹脂シート
12 貫通孔
13 ハトメ
20 緩衝材
100 防矢ユニット