【解決手段】超音波検査装置は、一列に配列された複数個のトランスデューサ11と、複数個のトランスデューサ11のうちの選択された複数個のトランスデューサ11に超音波パルスを送信させ複数個の受信信号をそれぞれ受信させるパルサ&スイッチ回路10と、それぞれ対応する複数個の重み係数で重み付けされた複数個の受信信号を互いにタイミングを合わせて加算するデジタル信号処理回路13とを含み、デジタル信号処理回路13は、複数個の重み係数の間の値の比が変化するように、複数個の受信信号上の時間位置に応じて複数個の重み係数を変化させる。
前記複数の受信信号のうちの第1の受信信号に前記複数個の重み係数のうちの第1の重み係数が割り当てられ、前記複数の受信信号のうちの第2の受信信号に前記複数個の重み係数のうちの第2の重み係数が割り当てられ、前記複数個のトランスデューサ素子の前記配列の方向に対応して並べられた前記複数個の受信信号の配列において、前記第1の受信信号は前記第2の信号よりも中央よりに位置する信号であり、前記第1の重み係数は前記第2の重み係数以上の値を有することを特徴とする請求項1記載の超音波検査装置。
前記デジタル信号処理回路は、前記時間位置が早いほど前記第1の重み係数と前記第2の重み係数との値の比を大きくすることを特徴とする請求項2記載の超音波検査装置。
【背景技術】
【0002】
超音波画像診断装置等の超音波検査装置においては、パルサ回路からトランスデューサにパルス電圧信号が印加され、当該パルス電圧信号に応じてトランスデューサが超音波パルスを生体内に送信する。筋肉と脂肪との間等の音響インピーダンスが異なる生体組織の境界において超音波パルスが反射され、反射波がトランスデューサにより受信される。一回の超音波パルス送信により得られる受信信号は、時間と共に振幅が変化する信号となり、受信信号中の時間位置がトランスデューサから生体内反射点までの距離に対応し、受信信号の振幅が生体内反射点の反射の強さに対応する。一回の超音波パルス送信により得られる時間と共に振幅が変化する受信信号は、空間的な輝度変化を有する一本の走査線に対応する輝線として表示画面上に表示される。超音波パルスを発射する位置を横方向に順次ずらしながら得られた複数の受信信号を、複数の走査ラインに対する複数の輝線として表示画面上に位置をずらして表示することにより、超音波断層像を形成することができる。
【0003】
超音波パルスを走査するために、多数のトランスデューサ素子が例えば一次元に配列されたトランスデューサアレイが用いられる。一回の超音波パルスの送信動作においては、一列に配置されたn個のトランスデューサ素子のうち、m個(m<n)のトランスデューサ素子を一緒に駆動する。この際、互いに若干のタイミングのずれを持たせたバルス電圧信号をm個のトランスデューサ素子に印加して、m個のトランスデューサ素子から僅かに異なるタイミングで超音波パルスを発射してよい。これにより、m個のトランスデューサ素子に相当する大きさの開口を有する発射面から、焦点に向かって進行する波面を有する超音波ビームを形成することができる。n個のトランスデューサ素子のうち駆動するm個のトランスデューサの位置を、一次元配列上で順次ずらしていくことにより、横方向(トランスデューサ素子の並び方向)に超音波ビームを走査することができる。
【0004】
反射波の受信時には、超音波送信時に用いたのと同一のm個のトランスデューサを用いて反射波を受信してよい。m個のトランスデューサが出力するm個のアナログ受信信号は、m個のADC(アナログデジタル変換器)によりデジタル受信信号に変換される。m個のデジタル受信信号は、上記焦点からm個のトランスデューサまでの距離の差に応じた互いの時間差がゼロになるよう遅延調整され、焦点位置からの反射波の信号が同一の時間位置に配置された受信信号となるようタイミング調整される。この遅延調整後のm個のデジタル受信信号は、互いに加算され、加算結果として1つのデジタル受信信号が得られる。この1つのデジタル受信信号に対してノイズ除去、ゲイン補正、包絡線検出等の処理を施す。これらの処理により得られた処理後のデジタル信号が、超音波断層像を形成する一本の輝線として表示画面に表示されてよい。
【0005】
近年、超音波検査装置のモバイル機器化が期待されており、装置の小型化及び低消費電力化が進められている。装置の小型化及び低消費電力化のためには、ADCの数を少なくしたり、トランスデューサの駆動電圧を低電圧化することが考えられる。従来の高額な医療用の超音波画像診断装置では、ADCのチャネル数即ち同時に送受信するトランスデューサ素子の数は例えば32個或いは64個等であり、高いフォーカス能力を有した超音波ビームにより高品質な画像を提供している。小型化及び低消費電力化のためにADCのチャネル数即ち同時駆動するトランスデューサ素子の数を少なくすると、超音波パルス及び受信信号の総体的な強度が弱くなると共にフォーカス能力も低下して、画質が劣化してしまうという問題がある。従って、チャネル数を削減して効果的に低消費電力化を図りながらも画質の劣化を成る可く小さくすることが望まれる。
【0006】
近年、超音波検査装置のモバイル機器化が期待されており、装置の小型化及び低消費電力化が進められている。装置の小型化及び低消費電力化のためには、ADCの数を少なくしたり、トランスデューサの駆動電圧を低電圧化することが考えられる。従来の高額な医療用の超音波画像診断装置では、ADCのチャネル数即ち同時に送受信するトランスデューサ素子の数は例えば32個或いは64個等であり、高いフォーカス能力を有した超音波ビームにより高品質な画像を提供している。小型化及び低消費電力化のためにADCのチャネル数即ち同時駆動するトランスデューサ素子の数を少なくして例えば8個等にすると、超音波パルス及び受信信号の総体的な強度が弱くなり、画質が低下してしまう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施例を添付の図面を用いて詳細に説明する。なお以下の図面において、同一又は対応する構成要素は同一又は対応する番号で参照し、その説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、超音波検査装置の構成の一例を示す図である。
図1に示す超音波検査装置は、パルサ&スイッチ回路10、トランスデューサアレイ11、アンプ&AD変換回路(AMP&ADC)12、及びデジタル信号処理回路13を含む。デジタル信号処理回路13は、タイミング制御回路21、遅延調整回路22、整相加算回路23、デジタルフィルタ24、ゲイン補正回路25、包絡線処理回路26、間引き回路27、及びゲイン制御回路28を含む。超音波検査装置が生成した生体100の超音波断層像のデータは、ブルートゥース等のインターフェース200を介してパーソナルコンピュータ(PC)14やタブレット等の情報処理及び表示機器に送信されてよい。
【0014】
図1及び以降の同様の図において、各ボックスで示される各回路又は機能ブロックと他の回路又は機能ブロックとの境界は、基本的には機能的な境界を示すものであり、物理的な位置の分離、電気的な信号の分離、制御論理的な分離等に対応するとは限らない。各回路又は機能ブロックは、他のブロックと物理的にある程度分離された1つのハードウェアモジュールであってもよいし、或いは他のブロックと物理的に一体となったハードウェアモジュール中の1つの機能を示したものであってもよい。
【0015】
トランスデューサアレイ11には、複数個(
図1の例では64個)のトランスデューサ素子が一列に配列されている。パルサ&スイッチ回路10は、トランスデューサアレイ11の一列に配列された複数個のトランスデューサ素子のうちの選択された複数個(
図1の例では8個)のトランスデューサ素子に、超音波パルスを送信させ、複数個の受信信号をそれぞれ受信させる。具体的には、デジタル信号処理回路13のタイミング制御回路21による制御の下で、パルサ&スイッチ回路10から、トランスデューサアレイ11の配列方向に連続して配置される選択された複数のトランスデューサ素子にパルス電圧信号が印加される。当該パルス電圧信号に応じて、複数のトランスデューサ素子が超音波パルスを生体100内に送信する。筋肉と脂肪との間等の音響インピーダンスが異なる生体組織の境界において超音波パルスが反射され、反射波が上記の選択されたトランスデューサ素子により受信される。
【0016】
8個のトランスデューサ素子を一緒に駆動する際、互いに若干のタイミングのずれを持たせたバルス電圧信号を8個のトランスデューサ素子に印加して、8個のトランスデューサ素子から僅かに異なるタイミングで超音波パルスを発射する。これにより、8個のトランスデューサ素子に相当する大きさの開口を有する発射面から、焦点に向かって進行する波面を有する超音波ビームを形成することができる。トランスデューサアレイ11の64個のトランスデューサ素子のうち駆動する8個のトランスデューサの位置を、一次元配列上で順次ずらしていくことにより、横方向(トランスデューサ素子の並び方向)に超音波ビームを走査することができる。8個のトランスデューサ素子に印加するパルス電圧信号のタイミングは、デジタル信号処理回路13のタイミング制御回路21により制御されてよい。
【0017】
反射波の受信時には、超音波送信時に用いたのと同一の8個のトランスデューサ素子を用いて反射波を受信してよい。8個のトランスデューサ素子が出力する8個のアナログ受信信号は、アンプ&AD変換回路12に供給され増幅され、アンプ&AD変換回路12の8個のADC(アナログデジタルコンバーター)によりデジタル受信信号に変換される。変換後のデジタル受信信号は、アンプ&AD変換回路12からデジタル信号処理回路13の遅延調整回路22に供給される。
【0018】
遅延調整回路22により8個のデジタル受信信号は、焦点から8個のトランスデューサ素子までの距離の差に応じた互いの時間差がゼロになるよう遅延調整され、焦点位置からの反射波の信号が同一の時間位置に配置された受信信号となるようタイミング調整される。互いにタイミングが合うよう遅延調整された8個のデジタル受信信号は、整相加算回路23により、それぞれ対応する複数個の重み係数で重み付けされた後に互いに加算され、加算結果として1つのデジタル受信信号が生成される。この1つのデジタル受信信号に対してデジタルフィルタ24によるノイズ除去、ゲイン補正回路25によりゲイン補正、包絡線処理回路26による包絡線検出等の処理を施す。また間引き回路27が、必要に応じて走査線や画素を間引くことにより、表示画像形式に適した画像データを形成する。整相加算回路23における重み付け処理については、後ほど詳細に説明する。
【0019】
なおゲイン補正回路25は、ゲイン制御回路28の制御の下で動作し、受信信号中の時間位置が後になる程大きな増幅率でデジタル受信信号の振幅を増幅する。即ち、生体100中の反射点の位置がトランスデューサアレイ11から遠くなるほど、当該位置に対応する受信信号の振幅が大きな増幅率で増幅される。
【0020】
図1に示す超音波検査装置では、デジタル信号処理回路13の制御の下で、8個のトランスデューサ素子を選択的に駆動する。送信動作においては、トランスデューサアレイ11のトランスデューサ素子の配列において、中央の2つの間を中心として両側で対称に遅延させたパルス電圧信号を、トランスデューサ素子に印加する。また受信後の信号処理においては、トランスデューサアレイ11のトランスデューサ素子の配列の方向に対応して並ぶ8個の受信信号を、中央の2つの信号の間を中心として両側で対称に遅延させて互いに加算する。
【0021】
図2は、8個のトランスデューサ素子を選択的に駆動したときの送信動作の一例を示す図である。
図2において、トランスデューサ素子11−1乃至11−8は、トランスデューサアレイ11の一列に配列された複数(例えば64個)のトランスデューサ素子のうちの連続する8個である。8個のトランスデューサ素子11−1乃至11−8にパルス電圧信号S1乃至S8がそれぞれ印加されると、トランスデューサ素子11−1乃至11−8から焦点FP1に向かい超音波パルスが発射される。この際、両端のトランスデューサ素子11−1及び11−8に一番始めにパルス電圧信号S1及びS8を印加し、所定の遅延時間後に両端から2番目のトランスデューサ素子11−2及び11−7にパルス電圧信号S2及びS7を印加する。その後所定の遅延時間後に両端から3番目のトランスデューサ素子11−3及び11−6にパルス電圧信号S3及びS6を印加し、更にその後所定の遅延時間後に両端から4番目のトランスデューサ素子11−4及び11−5にパルス電圧信号S4及びS5を印加する。即ち、トランスデューサアレイ11のトランスデューサ素子11−1乃至11−8について、中央の2つの素子の間を中心として両側で対称な遅延を持たせ、中心に近いほど遅延を大きくして超音波パルスを発射している。これにより、トランスデューサ素子11−1乃至11−8から焦点FS1に向けて収束する波面を有する超音波パルスを生成することができる。
【0022】
図3は、8個のトランスデューサ素子を選択的に駆動したときの受信動作の一例を示す図である。
図3において、トランスデューサアレイ11の一列に配列された複数(例えば64個)のトランスデューサ素子のうちの連続する8個のトランスデューサ素子11−1乃至11−8は、焦点FP1からの反射波を受信する。トランスデューサ素子11−1乃至11−8が受信した受信信号R1乃至R8は、
図1に示すパルサ&スイッチ回路10及びアンプ&AD変換回路12を介して遅延調整回路22に供給され、遅延調整回路22によりそれぞれ遅延される。この際、両端のトランスデューサ素子11−1及び11−8に対応する受信信号R1及びR8については例えば遅延をゼロとし、両端から2番目のトランスデューサ素子11−2及び11−7に対応する受信信号R2及びR7については所定の第1の遅延を与える。また両端から3番目のトランスデューサ素子11−3及び11−6に対応する受信信号R3及びR6については、上記第1の遅延よりも長い第2の遅延を与える。両端から4番目のトランスデューサ素子11−4及び11−5に対応する受信信号R4及びR5については、第2の遅延よりも更に長い第3の遅延を与える。即ち、トランスデューサアレイ11のトランスデューサ素子11−1乃至11−8に対応する8個の受信信号について、中央の2つの素子の間を中心として両側で対称な遅延を持たせ、中心に近いほど遅延を大きくする。これにより、トランスデューサ素子11−1乃至11−8で受信した焦点FS1からの超音波パルスに対応する受信信号を、時間軸上の同一位置に揃え、整相加算処理に供することができる。
【0023】
図4は、8個のトランスデューサ素子により深さ方向の異なる位置からの反射波を受信する動作の一例を示す図である。
図4においては、8個のトランスデューサ素子11−1乃至11−8により、点P1からの反射波と点P2からの反射波とが受信され、8個の受信信号R1乃至R8が得られている。なお送信時においては、
図2に示される場合と同様に8個のトランスデューサ素子11−1乃至11−8にパルス電圧信号がそれぞれ印加され、トランスデューサ素子11−1乃至11−8から所望の焦点に向かい収束する超音波パルスが発射されているとする。
【0024】
図4の説明の都合上、焦点の位置は重要ではないが、便宜上例えば点P1と点P2との中間位置に焦点位置が存在するとする。このとき、焦点位置からの反射波がトランスデューサ素子11−1乃至11−8に到来するだけでなく、焦点より近い点P1及び焦点より遠い点P2からも反射波が
図4に示されるようなそれぞれの経路を介してトランスデューサ素子11−1乃至11−8に到来する。深さ方向に異なる位置からの反射波は、それぞれ異なるタイミングでトランスデューサ素子11−1乃至11−8に到来し、時間軸上の異なる位置の振幅として受信信号中に現れる。
【0025】
前述のように
図1に示す超音波検査装置においては、デジタル信号処理回路13の遅延調整回路22により、点P1と点P2との中間位置にある焦点位置が時間軸上の同一位置になるように、8個の受信信号R1乃至R8の相対的なタイミングを調整する。更に、整相加算回路23が、このタイミング調整後の8個の受信信号を互いに加算する。この際、遠い点P2からの受信信号R1乃至R8は、生体内での超音波の減衰により受信波の振幅が小さくなってしまうので、成る可く多くの数の受信信号の整相加算をすることが好ましい。但し、受信信号R1乃至R8における焦点からの反射超音波パルスの信号間の時間差と、受信信号R1乃至R8における点P2からの反射超音波パルスの信号間の時間差とが異なることに注意が必要である。整相加算回路23による整相加算においては、焦点からの反射パルスの時間軸上の位置が同一となるように受信信号R1乃至R8の相対的なタイミングを遅延調整回路22により調整してあるので、点P2からの反射波は互いに少し位置がずれて加算される。しかしながら、点P2とトランスデューサ素子11−1乃至11−8との距離が遠いので、8個の受信信号R1乃至R8において、点P2からの反射波受信タイミングには信号間でそれほどの大きな差はない。従って、8個の受信信号R1乃至R8を整相加算しても、加算後の受信信号において点P2からの反射波は比較的明瞭に現れる。
【0026】
近い点P1からの受信信号R1乃至R8は、生体内での超音波の減衰がほとんど無く受信波の振幅が十分に強いので、整相加算する受信信号の数は少なくともよい。また、整相加算回路23による整相加算においては、焦点からの反射超音波パルスの時間軸上の位置が同一となるように受信信号R1乃至R8の相対的なタイミングを遅延調整回路22により調整してあるので、点P1からの反射波は互いに位置がずれて加算される。この際、点P1とトランスデューサ素子11−1乃至11−8との距離が近いので、8個の受信信号R1乃至R8において、点P1からの反射波受信タイミングには信号間で大きな差がある。従って、8個の受信信号R1乃至R8を整相加算してしまうと、加算後の受信信号において点P1からの反射波は不明瞭なぼけた信号波形となってしまう。寧ろ整相加算する受信信号の数は少なくして、例えばトランスデューサ素子11−4及び11−5の受信信号のみを整相加算した方が、点P1に対する反射エコー像が鮮明に現れる可能性がある。
【0027】
以上を鑑みて、
図1に示す超音波検査装置では、デジタル信号処理回路13の整相加算回路23が、受信信号の時間位置、即ち生体内の深さ位置に応じて、異なる重み付けで受信信号同士を整相加算する。即ち、整相加算回路23は、タイミング制御回路21の制御の下で動作し、複数個の重み係数の間の値の比が変化するように、即ち重み係数間の差が変化するように、複数個の受信信号上の時間位置に応じて複数個の重み係数を変化させる。例えば、複数の受信信号のうちの第1の受信信号に複数個の重み係数のうちの第1の重み係数が割り当てられ、複数の受信信号のうちの第2の受信信号に複数個の重み係数のうちの第2の重み係数が割り当てられる場合を考える。複数個のトランスデューサ素子の配列の方向に対応して並べられた複数個の受信信号の配列において、第1の受信信号は第2の信号よりも中央よりに位置する信号であるとする。この場合、第1の重み係数は第2の重み係数以上の値を有する。即ち、より一般的に言えば、複数個の受信信号の配列において、中央に近い受信信号ほど相対的に大きな重み係数が割り当てられ、周辺に近い受信信号ほど相対的に小さな重み係数が割り当てられる。
【0028】
デジタル信号処理回路13は、受信信号中の時間位置が早いほど上記第1の重み係数と上記第2の重み係数との値の比を大きくする。より一般的に言えば、デジタル信号処理回路13は、複数個の受信信号の配列において、中央に近い受信信号に割り当てられる大きな重み係数と周辺に近い受信信号に割り当てられる小さな重み係数との比(或いは差)を、時間位置が早いほど大きくなるように設定する。即ち、生体100中の反射点の位置がトランスデューサアレイ11から近くなるほど、当該位置に対応する受信信号の振幅を周辺に近い受信信号ほど小さくする。この際、周辺に近い受信信号については、重み係数をゼロにすることにより、信号の振幅をゼロにしてしまってよい。
【0029】
図5は、重み係数の一例を示す図である。
図5に示される重み係数に基づいて、
図1に示される整相加算回路23において各受信信号に対する重み付けが行われてよい。
図5に示される重み係数は、深さ方向の位置に応じて線形的に各チャネルの重み係数を変化させるための式により表現されている。トランスデューサアレイ11のトランスデューサ素子の配列に応じた8個のトランスデューサ素子の並びに対して、対応して並ぶ8個の受信信号を端から順番にチャネル1乃至チャネル8とする。チャネル1及びチャネル8(即ち両端の受信信号)に対しては、深さh(mm)の点に対する重み係数の値を(h−30)/40とし、但し、hが30mm以下の場合には重み係数の値をゼロとし、hが70mm以上の場合には重み係数の値を1とする。チャネル2及びチャネル7(即ち両端から2番目の受信信号)に対しては、深さh(mm)の点に対する重み係数の値を(h−20)/40とし、但し、hが20mm以下の場合には重み係数の値をゼロとし、hが60mm以上の場合には重み係数の値を1とする。チャネル3及びチャネル6(即ち両端から3番目の受信信号)に対しては、深さh(mm)の点に対する重み係数の値を(h−10)/40とし、但し、hが10mm以下の場合には重み係数の値をゼロとし、hが50mm以上の場合には重み係数の値を1とする。チャネル4及びチャネル5(即ち中央の2つの受信信号)に対しては、深さに関わらず重み係数の値を1とする。
【0030】
図5に示される重み係数を示したテーブルでは、深さhが10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、60mm、70mmの点における各チャネルの重み係数の値が示されている。また一番右端の欄には、重み係数の総和が示されている。
図5では同一の重み係数を有する2つのチャネルを同一の欄に示してあるため、4つの重み係数の値しか示してなく、総和の値も4つの重み係数の総和となっている。従って、8個のチャネルに対する8個の重み係数の総和は、
図5に示される総和の値の2倍となる。整相加算回路23において整相加算をする際には、各加算結果を正規化するために、重み係数の総和により整相加算の結果を除算する処理が行われる。
【0031】
図5に示される係数値から分かるように、深さhが小さい値のとき、即ち受信信号中の時間位置が早い位置においては、各受信信号に乗算する重み係数の値が、8個のチャネルの中央部分のチャネルを大きく強調するような値となっている。深さhの値が大きくなるにつれて、即ち受信信号中の時間位置が遅くなるにつれて、各受信信号に乗算する重み係数の値が、8個のチャネルの中央部分だけでなく周辺部分のチャネルも用いるような値となっている。深さhの値が十分に大きくなると、即ち受信信号中の時間位置が十分に遅くなると、各受信信号に乗算する重み係数の値が、8個のチャネルに対して同一の値となっている。
【0032】
なお
図5には深さhに応じて線形に変化する重み係数の計算式が示されるが、
図5に示される深さhが10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、60mm、70mmの各点の重み係数のみを用い、重み係数を深さに応じてステップ状に変化させてもよい。即ち例えば、10〜20mmの深さ範囲では10mmの深さの重み係数を用い、20〜30mmの深さ範囲では20mmの深さの重み係数を用い、30〜40mmの深さ範囲では30mmの深さの重み係数を用いてよい。また70mmより深い範囲では、70mmの深さの重み係数を用いてよい。
図5に示す深さhが10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、60mm、70mmの各点の重み係数を有するテーブルを用意して、当該テーブルを深さ情報に基づいて参照することにより、深さに応じて各受信信号に乗算する重み係数を求めてよい。また或いは、
図5に示される各式を計算するハードウェアを用意しておき、深さを示す変数hの値を代入して式の計算をすることにより、深さに応じて各受信信号に乗算する重み係数を求めてもよい。
【0033】
図6は、タイミング制御回路21及び整相加算回路23の構成の一例を示す図である。
図6において、タイミング制御回路21は、時間計測回路31、時間深さ変換回路32、重み付けテーブル33、及び加算器34を含む。また整相加算回路23は、乗算器40−1乃至40−8、加算器41、及び除算器42を含む。
【0034】
時間計測回路31には、トランスデューサアレイ11からのパルス送信開始のタイミングにおいて、パルス送信開始を示す信号が印加される。前述のように、デジタル信号処理回路13のタイミング制御回路21による制御の下で、パルサ&スイッチ回路10から、トランスデューサアレイ11の選択された複数のトランスデューサ素子にパルス電圧信号が印加される。タイミング制御回路21からパルサ&スイッチ回路10に対してパルス電圧信号印加を指示するタイミングに同期して、上記のパルス送信開始を示す信号を時間計測回路31に印加してよい。トランスデューサアレイ11により超音波パルスを送信した直後から、トランスデューサアレイ11による反射波の受信が始まり、トランスデューサアレイ11からの受信信号の出力が開始される。時間計測回路31により計測したパルス送信開始からの経過時間により、トランスデューサアレイ11から出力される受信信号中の反射波受信開始からの経過時間を知ることができる。なお時間計測回路31は、時間と共に増加する経過時間を示すデータを時々刻々と出力する。
【0035】
時間深さ変換回路32は、時間計測回路31により計測した経過時間を深さ情報に変換する。即ち、経過時間に生体中の音速を乗算し、乗算結果を1/2倍することにより、深さ方向の距離を算出することができる。この距離は、経過時間に対応する時間位置に存在する受信信号中の信号成分が反射した反射点までの深さ方向の距離である。
【0036】
重み付けテーブル33は、例えば前述のように
図5に示す深さhが10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、60mm、70mmの各点の重み係数を有するテーブルであってよい。時間深さ変換回路32から供給される深さ情報に基づいて重み付けテーブル33を参照することにより、深さに応じた8個のチャネルに対する8個の重み係数を出力することができる。
【0037】
加算器34は、重み付けテーブル33が出力する8個の重み係数の総和を計算する。重み付けテーブル33が出力する8個の重み係数及び加算器34が出力する総和は、整相加算回路23に供給される。なお、重み付けテーブル33中に総和の値をエントリとして格納しておき、重み付けテーブル33に入力される深さ情報に応じた総和の値を8個の重み係数と共に重み付けテーブル33から出力してもよい。タイミング制御回路21から整相加算回路23に供給される8個の重み係数と総和とは、時間と共に時々刻々と変化する値を有する。
【0038】
整相加算回路23の乗算器40−1乃至40−8は、タイミング制御回路21から供給される8個の重み係数を遅延調整回路22からの8個の受信信号にそれぞれ乗算し、重み付けされた8個の受信信号を生成する。加算器41は、重み付けされた8個の受信信号を互いに加算し、加算結果として1つの受信信号を出力する。加算器41が出力する加算結果の受信信号は、除算器42により重み係数の総和で除算される、これにより、整相加算回路23による整相加算後の受信信号が正規化され、時間軸上の位置に関わらず適切な振幅を有する信号となる。
【0039】
図7は、アンプ&AD変換回路12の構成の一例を示す図である。
図7に示されるアンプ&AD変換回路12は、増幅機能とAD変換機能とを有する複数個のAMP&ADC50−1乃至50−8を含む。
【0040】
AMP&ADC50−1乃至50−8は、パルサ&スイッチ回路10から受信信号を受け取り、受け取った受信信号を増幅する。AMP&ADC50−1乃至50−8は更に、増幅後の受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して、変換後の受信信号をデジタル信号処理回路13の遅延調整回路22に供給する。
図6に示されるようにタイミング制御回路21から整相加算回路23に供給される8個の重み係数は、AMP&ADC50−1乃至50−8にそれぞれ供給される。AMP&ADC50−1乃至50−8は、供給される重み係数がゼロの場合には、増幅動作及びAD変換動作を停止する。例えば、重み係数がゼロの時にHIGHを出力し重み係数がゼロ以外の時にLOWを出力する回路を設け、当該回路の出力をPMOSトランジスタ等のスイッチ回路に印加してスイッチの開閉を制御してよい。当該スイッチを介して電源電圧を各AMP&ADC50−1乃至50−8に供給することで、重み係数がゼロの時に対応するAMP&ADCの電源を遮断して動作を停止させることができる。このようにしてAMP&ADC50−1乃至50−8のうちの不要なAMP&ADCの動作が停止されるので、その分の消費電力が削減される。
【0041】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で様々な変形が可能である。