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特開2016-202361外部刺激を用いた皮下脂肪厚コントロール装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-202361(P2016-202361A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】外部刺激を用いた皮下脂肪厚コントロール装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/00 20060101AFI20161111BHJP
   A61H 23/02 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   A61F7/00 300
   A61H23/02 330
   A61H23/02 360
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-84926(P2015-84926)
(22)【出願日】2015年4月17日
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(72)【発明者】
【氏名】水野 統太
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】水戸 和幸
(72)【発明者】
【氏名】板倉 直明
【テーマコード(参考)】
4C074
4C099
【Fターム(参考)】
4C074AA03
4C074AA04
4C074BB01
4C074CC01
4C074DD01
4C074GG11
4C074HH05
4C099AA02
4C099CA01
4C099GA02
4C099JA01
4C099TA03
(57)【要約】
【課題】 火傷や内出血をすることなく皮下脂肪厚をコントロールできる装置及び方法を提供する。
【解決手段】 皮下脂肪厚コントロール装置1は、生体5の対象となる部位を0〜10℃に冷却するための冷却部2と、冷却した状態で対象部位に所定の強度および周波数の振動刺激を与える振動部3を備える。本発明によれば、生物身体の所望の部位に対して、部分的に皮下脂肪厚を増加させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の対象となる部位を0〜10℃に冷却するための冷却部と、冷却した状態で前記対象部位に所定の強度および周波数の振動刺激を与える振動部を備える皮下脂肪厚コントロール装置。
【請求項2】
生体の対象となる部位を0〜10℃に冷却した状態で前記対象部位に所定の強度および周波数の振動刺激を与える工程、を含む皮下脂肪厚コントロール方法。
【請求項3】
対象となる部位を0〜10℃に冷却するための冷却部と、冷却した状態で前記対象部位に所定の強度および周波数の振動刺激を与える振動部を備える胸部用下着。
【請求項4】
対象となる部位を0〜10℃に冷却するための冷却工程と、冷却した状態で前記対象部位に所定の強度および周波数の振動刺激を与える振動工程を含む動物飼育方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物の皮下脂肪厚をコントロールする技術に関わり、特に、外部刺激を用いて生物の皮下脂肪厚をコントロールする装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代は、エステ等が普及し始め、脂肪を直接マッサージすることにより脂肪燃焼を促したり、特殊な運動を行ってバストアップを図ったりするなど、様々な方法で体型変化が可能な時代である。
【0003】
特に近年、脂肪を超低温に冷却したり超音波やレーザーを脂肪に照射したりすることにより、部分的に脂肪細胞膜を破壊し体内の脂肪を溶かす方法についての研究開発が進んでいる。これらの方法によれば、細胞膜から漏れ出た脂肪溶液は血液やリンパに乗って肝臓で分解処理され体外へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2003/078596号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに上記従来の方法は、直接脂肪に作用するので痩身効果が高く、効率的な体型変化も可能である。
しかしながら、超低温状態やレーザーを使用するためクリニックでの施術が必要であり、通院の手間がかかるものであった。また、レーザー照射による火傷や内出血、超低温による凍傷等のリスクもあった。
このため、細胞組織を破壊することなく、自宅で手軽に安全な方法で脂肪を移動できたり、バストアップできたりする手法の確立が望まれている。
【0006】
本出願に係る発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、火傷や内出血をすることなく皮下脂肪厚をコントロールできる装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、生体5の対象となる部位を0〜10℃に冷却するための冷却部2と、冷却した状態で前記対象部位に所定の強度および周波数の振動刺激を与える振動部3を備える皮下脂肪厚コントロール装置1である。
【0008】
また、本出願に係る第2の発明は、生体の対象となる部位を0〜10℃に冷却した状態で前記対象部位に所定の強度および周波数の振動刺激を与える工程、を含む皮下脂肪厚コントロール方法である。
【0009】
更に、本出願に係る第3の発明は、対象となる部位を0〜10℃に冷却するための冷却部と、冷却した状態で前記対象部位に所定の強度および周波数の振動刺激を与える振動部を備える胸部用下着である。
【0010】
更にまた、本出願に係る第4の発明は、対象となる部位を0〜10℃に冷却するための冷却工程と、冷却した状態で前記対象部位に所定の強度および周波数の振動刺激を与える振動工程を含む動物飼育方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生物身体の所望の部位に対して、部分的に皮下脂肪厚を増加させることができる。
また、本発明によれば、自宅で手軽に安全な方法でバストアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の皮下脂肪厚コントロール装置の概念図である。
図2】本発明に関する実験の様子を示す概念図である。
図3】本発明に関する実験のプロトコルを示す概略図である。
図4】皮下脂肪厚・皮下脂肪率の計測点を示す概念図である。
図5】実験開始前の状態を100%とし、終了時における皮下脂肪厚増減率を示すグラフである。
図6】実験開始前の状態を100%とし、終了時での周囲長増減率を示すグラフである。
図7】実施例2の胸部用下着を内側から見た状態を示す概念図である。
図8】実施例2の胸部用下着を装着した状態を外側から見た概念図である。
図9】牛に皮下脂肪厚コントロール装置を装着した状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を適用した具体的な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本願の皮下脂肪厚コントロール装置(以下、装置1と称する)は、冷却部2と振動部3を備える。振動部3は冷却部2に固着もしくは着脱自在に設置され、振動部3の振動により冷却部2を振動させることができる。
【0015】
冷却部2は、図示しない電源を用いて電気的に冷却できる冷却装置により構成される。ここで電源は、家庭用コンセントなどの外部電源でも良いし、持ち運び可能な電池などでも良い。冷却装置は制御装置4に接続され、その温度が一定の範囲内に収まるように設定できる。制御装置4により冷却部2の温度は0〜10℃の範囲内の所定の温度に設定される。なお、図1に示す構成では、冷却部2に制御装置4を接続し、温度をコントロールしているが、冷却部2が0〜10℃を維持できる構造であれば、制御装置4は無くても良い。
【0016】
また冷却部2は、装置1から取り外しできても良く、取り外した後に冷蔵庫で冷却可能な保冷剤のようなものであっても良い。その場合は、人の体温である約36℃に接触させた状態で少なくとも10分の間、0〜10℃を維持できる保冷性を有する必要がある。
【0017】
振動部3は内部に小型モータを備え、モータの回転軸の中心からズレた位置に重りを備えた小型バイブレータを使用することができる。振動部3も制御装置4に接続され、振動強度や振動数が制御される。振動部3は、図示しない電源に直接または制御装置4を介して接続しており、モータの回転によって振動する。電源は、家庭用コンセントなどの外部電源でも良いし、持ち運び可能な電池などでも良い。
【0018】
振動強度は、冷却部2の接触面2aに対して水平方向、垂直方向ともに0.1〜1.0Gであることが望ましいが、0.01〜5.0Gであれば本発明の効果を得ることができる。また、振動数は1000〜3000回/分であることが望ましいが、100〜10000回/分であれば本発明の効果を得ることができる。なお、図1に示す構成では、振動部3に制御装置4を接続し、振動強度・振動数をコントロールしているが、振動部3の振動強度・振動数が上記範囲を維持できる構造であれば、制御装置4は無くても良い。
【0019】
図1においては、冷却部2と振動部3に1つの制御装置4を接続して制御しているが、冷却部2と振動部3それぞれに別個独立した制御装置を接続して制御しても良い。
【0020】
図1に示す構成においては、冷却部2の上に対象となる生体5を配置し、冷却部2の上面を接触面2aとして生体5の表面に接触させる。したがって、冷却部2の接触面2aが生体5の表面形状に倣って接触できるよう、冷却部2の少なくとも上面は可堯性を有することが望ましい。
【0021】
図1では冷却部2が生体表面に接触し、冷却部2を振動部3が振動させる構成をとっているが、冷却部2と振動部3は上下反対に配置されても良い。すなわち、振動部3が生体表面に接触し、冷却部2が振動部3を冷却することにより生体表面が冷却される構造でも良い。
【実施例1】
【0022】
外部刺激により生物の身体における脂肪の合成、分解のコントロールが可能であるかを検討するため、装置1により冷刺激・振動刺激を人の大腿後面に与え、皮下脂肪と周囲長の増減を調べた。
【0023】
被験者は健常成人男女15名(平均年齢26.5±8.29歳)とし、事前に実験の十分な説明および同意を得たうえで協力してもらった。
実験は冷刺激と振動刺激を与えた第1群、温刺激と振動刺激を与えた第2群、比較対象としてのコントロール群の第3群に分けて実験を行った。なお、各群の被験者は5名(男性3名,女性2名)とし、各被験者は、指定された群の実験以外は行わない。
【0024】
図2は実験の様子を示す概念図である。被験者6を椅子7に座らせ、実験の対象となる太腿後面の中央に装置1を配置し、太腿の外周を拘束ベルト8で巻いて装置1を太腿後面に固定した。拘束ベルト8は帯状の布の一端に面ファスナーを設けたものでよい。
【0025】
刺激として、第1群は、冷却部2の表面温度を5℃に設定し、被験者6の大腿後面の中央に接触させて、冷刺激と振動刺激を同時に与えた。振動部3の振動強度は、水平方向を0.7G、垂直方向を0.41Gに設定した。また、振動部3の振動数は2400回/分に設定した。
【0026】
第2群は、本体温度が40℃の湯たんぽを、被験者6の大腿後面の中央に接触させ、さらに湯たんぽに第1群と同様の振動部を配置した。そして、太腿の外周を拘束ベルト8で巻いて、湯たんぽと振動部を太腿後面に固定し、温刺激と振動刺激を同時に与えた。振動部の振動強度及び振動数の設定は、第1群と同様である。
【0027】
図3に実験プロトコルを示す。刺激前に被験者の大腿部の皮下脂肪厚[mm]、皮下脂肪率[%]、周囲長[cm]、体組成、血圧・脈拍を計測した後10分間刺激を行い、その後再度同様の計測を行った。計測は週1回行い、計6週間行った。刺激は1回10分間、計測日を含め週3〜5回刺激を与えた。図4に示すように皮下脂肪厚・皮下脂肪率の計測点は、大腿後面中央にあたる中点Bを基準とし、その上下5cmを含んだA,B,Cの3点で計測を行った。
【0028】
実験開始前の状態を100%とし、終了時における皮下脂肪厚増減率を図5に示す。図5は、A,B,Cの各計測点ごとに、左から第1群,第2群,第3群の順に皮下脂肪厚増減率を示したグラフである。第1群では、A,B,Cの全計測点で増加を示した。実験開始前と比較するためt検定を行った結果、有意差が認められた(p<0.05)。
第2群ではA点で減少を示し、B点、C点で若干の増加を示したが、有意差は認められなかった。
【0029】
次に、実験開始前の状態を100%とし、終了時での周囲長増減率を図6に示す。図6は、左から第1群,第2群,第3群の順に周囲長増減率示したグラフである。第1群、第2群で増加、第3群で減少を示した。こちらも、対応のあるt検定を行った結果、第1群において皮下脂肪厚、皮下脂肪率ともに有意差が認められた(p<0.05)。また、第3群を対照群としたDunnett検定を行った結果、第3群に比べ第1群が有意に増加しているという結果が得られた(p<0.01)。
【0030】
図5の結果から、冷刺激と振動刺激は皮下脂肪を有意に増加させ、温刺激と振動刺激は皮下脂肪の増減への影響は少ないと示された。また、図6の結果から、第1群は第3群被験者に比べ有意に周囲長を増加することができ、冷刺激と振動刺激は外見上の変化を与える程の皮下脂肪増加も期待できる。
【0031】
実施例1によれば、生物身体の所望の部位に対して、部分的に皮下脂肪厚を増加させることができる。また、装置1の構成が簡易であるため、クリニック等に行くことなく自宅において、手軽に安全な方法で皮下脂肪厚を増加させることができる。
【実施例2】
【0032】
次に、本発明の応用例を実施例2として開示する。図7は胸部用下着を内側から見た状態を示す概念図である。胸部用下着9は、左側の乳房を収容する左カップ10Lと右側の乳房を収容する右カップ10Rを有する。
【0033】
左カップ10Lは、上内ポケット11Lと下内ポケット12Lを有する。上内ポケット11Lには装置1a,1bを収納し、下内ポケット12Lには装置1c,1dを収納する。装置1a〜1dは実施例1の装置1と同様な構成を有する。
【0034】
右カップ10Rも同様に上内ポケット11Rと下内ポケット12Lを有する。そして、上内ポケット11Rには装置1a,1bを収納し、下内ポケット12Rには装置1c,1dを収納する。なお、装置1a〜1dは、乳房の形にあわせてお椀状に形成するのが良い。
【0035】
本実施例2によれば、装置1a〜1dで冷刺激と振動刺激を同時に与えることにより、乳房の皮下脂肪を増加させ、豊満な乳房を得ることができる。乳房の9割は脂肪組織から成るため、本発明による皮下脂肪の増加なら、自然な乳房の肥大をもたらすことができる。
【0036】
図7では、左右の乳房の全体を覆うように複数の装置1a〜1dを配置したが、お椀型の1つの装置で、乳房の全体を覆うように構成しても良い。また、乳房の上部のみをバストアップしたい場合には、上内ポケット11L,11Rのみに装置1a,1bを収納すれば良く、下内ポケット12L,12Rには装置1c,1dを収納する必要はない。逆に、乳房の下部のみをバストアップしたい場合には、下内ポケット12L,12Rのみに装置1c,1dを収納すれば良く、上内ポケット11L,11Rには装置1a,1bを収納する必要はない。
【0037】
また、乳房の内側のみをバストアップしたい場合には、上内ポケット11L,11Rには装置1bを収納すれば良く、下内ポケット12L,12Rには装置1cのみを収納すれば良い。逆に、乳房の外側のみをバストアップしたい場合には、装置1a,1dのみを収納すれば良い。もちろん、右側または左側のポケットのみに装置1a〜1dを適宜選択して収納することもできる。
【0038】
図8は、本実施例の胸部用下着9を装着した状態を外側から見た概念図である。本実施例では装置1a〜1dを胸部用下着9の内側に収納しているため、外側からは見えず、下着のデザインを崩すこともない。
【0039】
また、本実施例では、胸部用下着9の内側に収納ポケットを設けたが、収納ポケットは下着の外側に設けても良い。
【0040】
本発明は、お椀型のフレキシブルなシリコン素材等のカップからなり、乳房に吸着させるように装着する胸部用下着にも適用することができる。その場合、カップとしては保冷性を有する素材を使用し、使用前に冷蔵庫などで冷却して装着し、外側から着脱可能な振動部3を設置する。
【0041】
昨今、脇の下を切開し、そこからシリコンバッグ等を挿入し、豊満な乳房を形成する豊胸手術が行われている。しかし、体内に人工的な異物を挿入するため、石灰化が起こったり、シリコンバッグが破損して炎症を起こったりする危険性がある。これに対して、本発明は、手術のためにクリニックに行く必要もなく、家庭で、安全かつ手軽にバストアップをすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、牛や豚等の家畜に適用することもできる。図9は牛14に装置1を装着した状態を示す概念図である。図9の例では、家畜である牛14が自由に動き回れるようにするため、実施例1の拘束ベルト8の替わりに拘束着13を牛14に着させている。
【0043】
図9では、牛14の腹部に装置1を配置して、拘束着13によって固定している。装置1は脂肪を増やしたい部分に配置すれば良く、腹部に限られるものではない。
【0044】
本発明を家畜に適用することにより、十分な脂肪を蓄えた家畜を飼育することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…皮下脂肪厚コントロール装置
2…冷却部 2a…接触面
3…振動部
4…制御装置
5…生体
6…被験者
7…椅子
8…拘束ベルト
9…胸部用下着
10L…左カップ 10R…右カップ
11L,11R…上内ポケット
12L,12R…下内ポケット
13…拘束着
14…牛
図2
図4
図1
図3
図5
図6
図7
図8
図9