【課題】貼り合わされた2枚の樹脂シートで形成されるパネルを備えた血液浄化回路パネルを構成するにあたり、ダイアライザー等に流体を送り込むためのポンプチューブが不要な血液浄化回路パネルを提供すること。
【解決手段】本発明の血液浄化回路パネル1は、所定の樹脂材料を使用し、デュロA硬度及び圧縮永久歪みを特定範囲とした樹脂シート21,22を貼り合わせ、内面に凹溝41,42を形成したパネル2を備え、凹溝41,42からなる中空の内部流路4を有している。かかる内部流路4は適度な硬度と復元性等を有し、内部流路4の一部を押圧することにより、流体をダイアライザー3等に送り出すことができ、内部流路4の配設により、ダイアライザー3等に流体を送り込むためのポンプチューブが不要となるため、ポンプチューブをパネル2に取り付ける作業等の繁雑さを解消でき、部材点数及びコストの削減等を図ることができる。
前記パネルの内面の少なくとも一部には、補強部材が前記2枚の樹脂シートに狭持されて介在されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の血液浄化回路パネル。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る血液浄化回路パネル1の一態様について説明する。
【0018】
(1)血液浄化回路パネル1の構成:
図1は、本発明に係る血液浄化回路パネル1の一態様を示した概略図、
図2は、
図1において、樹脂シート21,22の境界(内面)で断面を取った図、
図3は、
図1に示した血液浄化回路パネル1を裏側から見た概略図、をそれぞれ示す。
【0019】
図1に示す血液浄化回路パネル1は、地表に対して直交して配置される板状のパネル2を備え、かかるパネル2は本実施形態では矩形状をなし、水平方向(
図1等の横方向。)の幅が直交方向(
図1等の縦方向。)の幅より若干大きくなっている。なお、このパネル2は、所定の樹脂材料(後記する。)からなる2枚の樹脂シート21,22を貼り合わせて構成され、この樹脂シート21,22の界面に内部流路4,4aや中空流路6,71,72が形成され、部分的に、別部材である内蔵チューブTa等や連結部R1等がインサートされて狭持され、外付けチューブT1等が外付けで挿入される。また、
図1等に示すように、本実施形態にあっては、パネル2の略中央には、パネル2の一方の面(
図1等であれば前方向。)から血液浄化器であるダイアライザー3が、パネル2の一方の面(
図1等であれば前方向。)から装着されている。
【0020】
(1−1)ダイアライザー3:
ダイアライザー3は、本実施形態では筒状からなる構成のものを示しており、その長手方向を垂直方向に一致付けられてパネル2に取り付けられている。ダイアライザー3は、本実施形態にあっては、その長さがパネル2の垂直幅より若干大きく、各端部においてそれぞれパネル2の上辺よりも上方に、下辺よりも下方に突出するように取り付けられている態様を示している。
【0021】
ここで、ダイアライザー3の概略的な構成について説明する。両端が密閉された筒状のダイアライザー3には、その上端面の血液流入管部31から血液が流入されるようになっており、下端面の血液流出管部32から浄化した血液が流出されるようになっている。ダイアライザー3の内部には複数(例えば、8000〜20000本等であるが、これには限定されない。)の人工膜でできた細管33(後記する
図4、
図5を参照。)がダイアライザー3の軸方向に沿って配設され、これらの細管33には血液が流入されることになっている。
【0022】
また、ダイアライザー3には、その下端側の側面の透析液流入管部34(流通管部)から透析液が流入されるようになっており、上端面の側面の透析液流出管部35(流通管部)からの透析液が流出されるようになっている。透析液はダイアライザー3内の細管33の外側を流れるようになっており、これにより、細管33の膜を介して血液と透析液の間で物質交換がなされ、不要な物質は透析液に移動し、有用な物質は血液の中に移動するようになっている。
【0023】
パネル2に対するダイアライザー3への取り付けは、特に制限はないが、例えば、次のようにして実施するようにすればよい。なお、以下に説明する取り付け方法は一例であり、パネル2に対するダイアライザー3の取り付けは、パネル2やダイアライザー3、及び他の部材等の形状や構成等に応じた任意の方法を採用することができる。
【0024】
図2は、
図1において、樹脂シート21,22の境界(内面)で断面を取った図であり、ダイアライザー3を取り付けていない状態のパネル2を示した図である。
図2に示すように、本実施形態に係るパネル2の上辺のほぼ中央には、垂直上方に延在する取り付け片23aが形成されており、この取り付け片23aには、その垂直辺の一方から水平方向に向かって切り欠かれた切り欠き24aが形成されている。切り欠き24aは、その開口側と反対側の奥行き側の内周部が半円弧状をなすとともに、開口側の互いに対向する内周部において切り欠き24aの幅を狭めるように一対の狭窄部25a(例えば、凸部。)を備えた形状とされている。同様に、パネル2の下辺のほぼ中央には、垂直下方に延在する取り付け片23bが形成されている。この取り付け片23bには、水平方向に向かって切り欠かれた切り欠き24bが形成されている。この場合、取り付け片23bの切り欠き24bの切り欠かれた方向は、例えば、前述の取り付け片23aの切り欠き24aの切り欠かれた方向と同じ方向となっている。切り欠き24bに一対の狭窄部25bが形成されていることも、切り欠き24aと同様である。
【0025】
また、
図3は、
図1に示した血液浄化回路パネル1を裏側から見た概略図である。
図3において、パネル2の取り付け片23aの切り欠き24a、取り付け片23bの切り欠き24bには、それぞれ、ダイアライザー3の透析液流出管部35の管の周りに形成されたフランジ部36a、及び透析液流入管部34の管の周りに形成されたフランジ部36bが嵌め込まれている。
【0026】
透析液流出管部35に形成されたフランジ部36aは円形板材からなり、その最大径は、取り付け片23aの切り欠き24aの径より若干大きくなるように形成されている。フランジ部36aはある程度の厚さを有し、その周側面の中央部には周方向に沿った環状溝37aが形成されている。環状溝37aには、取り付け片23aの切り欠き24aの内周部が嵌合されるようになっている。なお、かかる構成は、パネル2の下辺に形成された取り付け片23bの切り欠き24bとダイアライザー3の透析液流入管部34に形成されたフランジ部36b及び環状溝37bの場合においても共通する。
【0027】
このような構成において、ダイアライザー3のパネル2に対する固定は、ダイアライザー3の各フランジ部36a,36bの環状溝37a,37bに、パネル2の対応する取り付け片23a,23bの切り欠き24a,24bの内周部を係合させ、狭窄部25a,25bを載せて切り欠き24a,24bに嵌め込ませることによってなされる。このように切り欠き24a,24bに嵌め込まれたフランジ部36a,36bは、狭窄部37a,37bによって切り欠き24a,24bからは容易に外れないように構成される。また、フランジ部36a,36bは、その環状溝37a,37bに取り付け片23a,23bの切り欠き24a,24bの内周部が係合され、その軸方向への変位が規制される。以上により、ダイアライザー3をパネル2に簡便かつ強固に配設することができる。
【0028】
(1−2)内部流路4,4a:
次に、かかるダイアライザー3へ血液や透析液等の流体を送り込むための内部流路4,4aについて説明する。
【0029】
図4は、
図1のA−A断面図、
図5は、
図1のB−B断面図、をそれぞれ示す。本実施形態において、
図1等に示したパネル2の右端に形成された内部流路4は、パネル2の上辺から下辺にかけて延在し、
図1ないし
図5に示すように、2枚の樹脂シート21,22の貼り合わせで形成されるパネル2に、一方の樹脂シート21の内部流路4を形成する領域、及び他方の樹脂シート22の内部流路4を形成する領域について凹溝41,42を形成することにより構成され、
図4等では、断面が略半円状の凹溝41,42として、2枚の樹脂シート21,22が重ね合わさって断面が略円状となる態様を示している。
【0030】
同様に、
図1等に示したパネル2のダイアライザー3よりも他方の側(
図1等における左側。)に形成された内部流路4aは、パネル2の上辺から下辺にかけて延在し、
図1ないし
図5に示すように、2枚の樹脂シート21,22の貼り合わせで形成されるパネル2に、一方の樹脂シート21の内部流路4aを形成する領域、及び他方の樹脂シート22の内部流路4aを形成する領域について凹溝41a,42aを形成することにより構成され、
図4等では、断面が略半円状の凹溝41a,42aとして、2枚の樹脂シート21,22が重ね合わさって断面が略円状となる態様を示している。
【0031】
内部流路4,4aにおける凹溝41,41a,42、42a(以下、単に「凹溝41,42」とする場合もある。)の深さは、特に制限はないが、血液や透析液等の流体を効率よく通過させるべく、概ね、2〜50mmとすることが好ましい。また、凹溝41,42の形状は、断面が略円形状のほか、断面が三角形、四角形等の多角形状等の流体が通過可能な任意の形状を採用することができる。さらに、凹溝41,42は、
図4等に示すように、2枚の樹脂シート21,22の両方に形成するようにしてもよいが、2枚の樹脂シート21,22の両方に形成する必要はなく、流体が通過可能であれば、樹脂シート21,22の少なくとも一方に形成されていればよい。
【0032】
パネル2における内部流路4の各端部には、外付けチューブT1等と連結するために、中空流路4と同軸に、所定の樹脂材料等から形成された筒状部材からなる連結部R1、連結部R2がシートに狭持されて配置されている。連結部R1、連結部R2のパネル2の上辺、下辺とほぼ面一になる端面には、外付けチューブT1,T2が挿入される内径を有し、パネルの上辺側において外付けチューブT1が挿入されるようになっており、パネルの下辺側において外付けチューブT2が挿入されるようになっている。
【0033】
図6は、連結部R1周辺の縦断面を示した説明図である(樹脂シート21が現れる側を示す。)。連結部R1は、
図4ないし
図6に示すように、外付けチューブT1側において、外付けチューブT1が挿入できる内径を有して形成される。このような形状からなる連結部R1は、樹脂シート21,22に狭持され、中心軸についてパネル2を含む面内に位置付けて配置されることにより、軸方向の変位を規制できることになる。なお、連結部R2(及び後記する連結部R3,R4)は連結部R1と略共通する構成となっており、前記したように、連結部R2のパネル2の下辺側の端面には外付けチューブT2が挿入されるようになっている。
【0034】
以上の内容は、
図1等におけるパネル2の右端に形成された内部流路4について説明したが、パネル2のダイアライザー3よりも他方の側(
図1等における左側。)の領域にも、共通する構成の内部流路4aが形成されている。パネル2の幅狭の部分のそれぞれには連結部R3、連結部R4が存在し、連結部R3は連結部R1と、連結部R2は連結部R4とほぼ同様の構成からなり、パネル2を構成する樹脂シート21,22に狭持されている。連結部R3のパネル2の上辺側の端面には外付けチューブT3が、連結部R4のパネル2の下辺側の端面には外付けチューブT4が挿入されている。
【0035】
ここで、内部流路4,4aは、樹脂シート21,22が所定の樹脂材料で構成され、デュロA硬度及び圧縮永久歪みを特定範囲としているため(後記する(2)で詳説する。)、その一部を押圧することにより、内部流路4,4a中の流体が一方向に送り込まれ、本実施形態にあっては、流体がダイアライザー3に送り込まれることになる。内部流路4,4aは、例えば、別途配設されるポンプ5の駆動により、内部流路4,4a中の流体を一方向に送出させることができる。内部流路4より送り出された流体である血液や透析液は、血液流入管部31または透析液流入管部34(
図1等参照。)を介してダイアライザー3の内部へ送り込まれることとなる。
【0036】
図7は、内部流路4(内部流路4aも同様。)を押圧するためのポンプ5の構成を示した概略図である。ポンプ5は、回転体51を内蔵し、内部流路4を押圧するために、かかる回転体51を内部流路4に隣接して配置するようにしている。回転体51にはその周方向に沿って複数(
図7では4個の態様を示しているが、これには限定されない。)のローラ52が設けられ、回転体51が回転することにより、各ローラ52が順次内部流路4の長手方向の一部を押圧させながら一方向に移動するようになる。このため、内部流路4中に発生する負圧によって内部流路4中の流体が、一方向(ダイアライザー3の方向。)に送り出されるようになる。なお、ポンプ5については、
図7に示した構成に限らず、内部流路4の一部を押圧することにより、内部流路4中の流体が一方向に送り込むことができる任意の構成を採用することができる。
【0037】
(1−3)その他の流路(中空流路6,7,7a):
次に、本発明に係る血液浄化回路パネル1に配設されるその他の流路(中空流路6,7,7a)について説明する。
図1等に示すように、パネル2の内部流路4とダイアライザー3の間の領域において、パネル2の上辺から下辺にかけて延在する中空流路6が形成されている。中空流路6は、前記した内部流路4と同様、2枚の樹脂シート21,22の貼り合わせで形成されるパネル2において、一方の樹脂シート21の中空流路6を形成する領域、及び他方の樹脂シート22の中空流路6を形成する領域について凹溝61,62を形成することにより構成され、
図4等では、断面が略半円状の凹溝61,62(
図5も参照。)として、2枚の樹脂シート21,22が重ね合わさって断面が略円状となる態様を示している。
【0038】
なお、中空流路6は、その経路の途中において、平面的に比較的大きい領域を有する中空室63が形成され、この中空室63からパネル2の一方の辺(例えば
図1では上辺。)にかけて他の中空流路(分岐流路64,65)が形成されている。これにより、中空流路6は、流体の流れを変えることによって、合流流路である中空流路6のほか、分岐流路64,65として構成できる。
【0039】
中空流路6の各端部には、中空流路6と同軸に配置される筒状部材からなる連結部R5、連結部R6、連結部R7が各シートに狭持されて配置されている。連結部R5、連結部R6、連結部R7のパネルの上辺、下辺とほぼ面一になる端面には、図示しない外付けチューブが挿入される内径を有するようになっている。連結部R5,R6は前記した連結部R1、連結部R7は前記したR2とほぼ共通した構成を有する。
【0040】
また、パネル2の内部流路4aより外方(
図1等の左側。)の領域には、パネル2の上辺から下辺に延在する中空流路7,7aが並設されている。これら中空流路7,7aはいずれも共通する構成となっている。
【0041】
中空流路7は、前記した内部流路4等と同様、2枚の樹脂シート21,22の貼り合わせで形成されるパネル2において、一方の樹脂シート21の中空流路7を形成する領域、及び他方の樹脂シート22の中空流路7を形成する領域について凹溝71,72を形成することにより構成され、
図5等では、断面が略半円状の凹溝71,72として、2枚の樹脂シート21,22が重ね合わさって断面が略円状となる態様を示している。
【0042】
同様に、中空流路7aも、2枚の樹脂シート21,22の貼り合わせで形成されるパネル2において、一方の樹脂シート21の中空流路7aを形成する領域、及び他方の樹脂シート22の中空流路7aを形成する領域について凹溝71a,72bを形成することにより構成され、
図4等では、断面が略半円状の凹溝71a,72bとして、2枚の樹脂シート21,22が重ね合わさって断面が略円状となる態様を示している。
【0043】
ここで、中空流路7,7aは、前記した中空流路6と比較して、分岐流路あるいは合流流路となっていない直線流路であり、パネル2の上辺には連結部R8,R10、下辺には、連結部R9,R11が取り付けられている。
【0044】
図8は、連結部R8周辺の縦断面を示した説明図である(樹脂シート21が現れる側を示す。)。連結部R8は、中央にくびれを有する形状とされ、外付けチューブT5と内蔵チューブTaが挿入されている。なお、連結部R9〜R11も、連結部R8と略共通する構成となる。
【0045】
図2に示すように、連結部R8と連結部R9との間は樹脂材からなる内蔵チューブTaによって連結され、連結部R10と連結部R11との間は樹脂材からなる内蔵チューブTbによって連結されている。この内蔵チューブTa,Tbは、連結部R8〜R11とともに樹脂シート21,22によって狭持されている。
【0046】
また、連結部R8には外付けチューブT5が、また、連結部R9には外付けチューブT6が挿入されている。同様に、連結部R10には外付けチューブT7が、また、連結部R11には外付けチューブT8が挿入されている。
【0047】
このように構成された血液浄化回路パネル1は、パネル2上において、外付けチューブを用いて、ダイアライザー3、ポンプ5等を含む血液浄化回路パネル1を構成(搭載)することができるようになる。
【0048】
(2)パネル2を構成する樹脂シート21,22:
パネル2は、2枚の樹脂シート21,22の内面同士を貼り合わせることによりなるが、本発明にあっては、樹脂シート21,22の構成材料として、スチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマーを主成分とした樹脂を使用する。かかるスチレン系エラストマーとオレフィン系エラストマーは、その1種を単独で使用してもよく、2種を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明にあって、「主成分」とは、樹脂シート21,22を構成する樹脂材料全体に対して50%以上を占める成分であることを指す。
【0049】
スチレン系エラストマー(スチレン系熱可塑性エラストマー)としては、ジエンブロック(ジエン重合体部)からなるソフトセグメントとスチレンブロック(スチレン重合体部)やポリスチレン等からなるハードセグメントとを有するブロック共重合体が挙げられ、具体的には、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)もしくはそれらブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。また、ハイインパクトポリスチレン及びABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等を使用することができる。
【0050】
前記した水素添加物は、スチレンブロックとジエンブロックの全てが水素添加されたブロック共重合体であっても、ジエンブロックのみ水素添加されたブロック共重合体あるいはスチレンブロックとジエンブロックの一部が水素添加されたブロック共重合体等の部分水素添加物等であってもよい。具体的には、例えば、(水素添加)スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、(水素添加)スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、(水素添加)スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、(水素添加)スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、(水素添加)スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体(SEP)等が挙げられる。
【0051】
オレフィン系エラストマー(オレフィン系熱可塑性エラストマー)としては、ハードセグメントとしてポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンを用い、ソフトセグメントとしてオレフィン系ゴムを用い、これらをブレンドしたものからなる。ハードセグメントとしてのポリオレフィンは結晶性のポリオレフィンであり、ポリプロピレンや高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)などが挙げられる。オレフィン系ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム(EPR、EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)(架橋、部分架橋)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素添加NBR、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)などが挙げられる。ハードセグメントのポリオレフィンがポリエチレンよりなるものはポリエチレン系に分類され、ポリプロピレンよりなるものはポリプロピレン系に分類される。また、例えば、ポリプロピレン(ポリエチレン)をハードセグメントとし、ソフトセグメントをプロピレン(エチレン)を含む共重合体とした、リアクター型オレフィン系エラストマー(R−TPO)等を用いてもよい。
【0052】
また、樹脂シート21,22の構成材料としては、前記したスチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマーのみを構成材料としてもよいが、かかるスチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマーに、ポリオレフィン系樹脂を併用するようにしてもよい。ポリオレフィン系樹脂を併用することにより、樹脂シート21,22の硬さや成形性等を調整することができるとともに、安価なポリオレフィン系樹脂の使用によりコストの低減等にも繋がる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリブテン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。また、エチレン・α−オレフィン系共重合体、エチレン・ビニルアルコール系共重合体、エチレン・酢酸ビニル系共重合体、ポリ−4−メチルペンテン−1系樹脂、プロピレン・α−オレフィン系共重合体等が挙げられ、これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。この中でも、適度な硬度を付与でき、低コスト、汎用性等という点で、ポリプロピレン系樹脂やプロピレン・α−オレフィン系共重合体等を使用することが好ましい。主成分となるスチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂を併用する場合、ポリオレフィン系樹脂の含有量は、後記するデュロA硬度や圧縮永久歪み等の物性値が後記する範囲に適合するように適宜調整すればよいが、例えば、ポリオレフィン系樹脂を樹脂シート21,22全体(樹脂シート21,22を構成する樹脂組成物全体のこと。以下同じ。)に対して、50.0質量%未満とし、0質量%を超えて50.0質量%未満とすることが好ましく、1.0〜40.0質量%とすることが特に好ましい(残部はスチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマーとなる。)。
【0053】
樹脂シート21,22の、230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、0.1〜5.0g/10分であることが好ましい。MFRがかかる範囲であれば、良好な成形性等を維持することができる。MFRは、JIS K7210(230℃、2.16kg)等により測定した値を用いればよい。
【0054】
なお、前記した樹脂シート21,22の構成材料には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、例えば、前記した以外の樹脂材料、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、増核剤、離型剤、着色剤及び中和剤等、樹脂材料の分野で一般に使用される各種添加剤を添加するようにしてもよい。
【0055】
本発明を構成する樹脂シート21,22は、パネル2の構成部材として、従来のポンプチューブの役割を果たすための内部流路4を形成しているため、所定の硬度と復元性等を必要とする。
【0056】
本発明にあっては、JIS K6253によるデュロA硬度(「タイプAデュロメータ硬度」のことを指し、「デュロ硬度A」とも呼ばれる。)を30〜80としている。デュロA硬度を前記した範囲とすることにより、良好な復元力を適度に保ち、送液量を維持し、内部流路を押圧するためのポンプ等の負荷や摩耗等を抑えることができる。これに対して、シートのデュロA硬度が30より小さいと摩耗が激しくなり、また、復元が良すぎて送液量が減る場合があり、デュロA硬度が80よりも高いと硬すぎて、押圧するための負荷が過度に高くなる場合がある。樹脂シート21,22のデュロA硬度は、50〜70であることが好ましい。
【0057】
また、樹脂シート21,22について、JIS K6262による、23℃で22時間処理した後の圧縮永久歪みは50%以下とする。圧縮永久歪みは、低いほど復元性に優れる(繰り返し圧縮によるへたり等が少なくなる。)ことになるが、圧縮永久歪みが50%を超えると、成形されたシートが復元しにくくなる場合がある。
【0058】
樹脂シート21,22のデュロA硬度や圧縮永久歪み(及びMFR)を前記した範囲とするためには、例えば、使用する樹脂材料のデュロA硬度や圧縮永久歪み等について、前記した範囲に適合するような樹脂材料を選定して使用することが挙げられる。樹脂材料を1種類とする場合には、デュロA硬度及び圧縮永久歪み等について、前記した範囲に適合するような材料を使用することが好ましい。
【0059】
2種以上の樹脂材料を組み合わせて使用する場合には、組み合わせて混合した樹脂材料が、デュロA硬度及び圧縮永久歪みについて、前記した範囲に適合するような材料を使用することが好ましい。例えば、2種の材料(樹脂Xと樹脂Yで、配合比がX/Y=l/m)を使用して、樹脂XのデュロA硬度がP、樹脂YのデュロA硬度がQの場合、前記した樹脂材料が1種の場合も含め、成形条件等で多少の変動はあるが、概ねl・P+m・Qで求まる値が前記した範囲に適合するようにすればよい。また、主成分となる、デュロA硬度が判明している樹脂Z(スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等。)のデュロA硬度を高くすべく、樹脂V(ポリオレフィン系樹脂)を前記した含有量の範囲で併用して調整して、前記した範囲に適合するようにすればよい。
【0060】
なお、デュロA硬度を例にして説明したが、圧縮永久歪みやMFRについても同様である。また、3種以上の樹脂材料を組み合わせて使用した場合も、同様にして考えればよい。例えば、樹脂シート21,22のデュロA硬度や圧縮永久歪みについて、前記したスチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマー(エラストマー)について、デュロA硬度が30〜80のものを選択、もしくは80以下のものに対してポリオレフィン系樹脂を前記した含有量の範囲で混合して、圧縮永久歪み(エラストマーについては50%以下のものを使用することが好ましい。)等も含めて、前記した範囲内に収まるよう調整するようにすればよい。
【0061】
樹脂シート21,22の厚さは、特に制限はないが、内部流路4において流体をスムースに送り出すことを考慮して、0.5〜2.0mmとすることが好ましい。厚さが0.5mmより小さいと、樹脂シート21,22の復元力等が悪くなる場合があり、厚さが2.0mmを超えると、押圧するための負荷が高くなる場合がある。
【0062】
(3)パネル2の製造方法の一例:
以下、前記の構成のパネル2を製造する方法の一例について図面を用いて説明する。
図9ないし
図11は、パネル2の製造工程に関する説明図である。パネル2の製造にあっては、例えば、特開2013−49186号公報等に開示されるような工法等を用いることにより、簡便に製造することができる。
【0063】
まず、
図9に示すように、パネル2の形状に応じた内面形状(キャビティ88a,88b等。)を有する一対の分割金型81,82(以下、単に「金型81,82」とする場合もある。)を用意し、溶融状態の樹脂シート(パリソンとなる。)21,22を金型81,82の間に配置する。
【0064】
溶融状態の樹脂シート21,22は、例えば、下記のようにして金型81,82間に配置することができる。
図9に示すように、溶融混錬した樹脂材料を図示しないアキュムレータ内に所定量貯留し、Tダイ83a,83bに設けられた所定間隔の押出スリット84a、84bから、貯留された溶融状態の樹脂材料を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出すことにより、溶融状態の樹脂材料をシート状に下方に垂下するように所定の厚みにて所定の押出速度で押し出すことができる。
【0065】
シート状とされた溶融状態の樹脂材料を、樹脂シート21についてローラ85a,85c、樹脂シート22についてローラ85b,85dを通過させて厚さを調整して、樹脂シート21,22として下方に送り出して、押出方向に一様な厚みを形成した樹脂シート21,22をローラ85a〜85dの下方に配置された分割金型81,82間に配置する。なお、樹脂シート21,22は、ピンチオフ部89a,89bの周りにはみ出す形態で位置決めされる。
【0066】
次に、
図10に示すように、型枠86a,86bを分割金型81に対して、溶融状態の樹脂シート21に向かって、金型81に対向する樹脂シート21の外表面に接するまで移動させる。同様に、型枠87a,87bを分割金型82に対して、溶融状態の樹脂シート22に向かって、金型82に対向する樹脂シート22の外表面に接するまで移動させる。
【0067】
型枠86,87を移動させたら、分割金型81を樹脂シート21側、分割金型82を樹脂シート22側に移動させ、溶融状態の樹脂シート21,22を分割金型81,82側から吸引することにより、樹脂シート21を分割金型81に、また、樹脂シート22を分割金型82にそれぞれ密着させる。
【0068】
詳しくは、分割金型81のキャビティ88a、型枠86a,86bの内周面、及び分割金型81に対向する樹脂シート21の外表面により構成された密閉空間S1を通じて、真空吸引室から吸引穴(ともに図示しない。以下同じ。)を介して吸引することにより、樹脂シート21をキャビティ88aに対して押し付けて、キャビティ88aの凹凸表面に沿った形状に樹脂シートを賦形する。同様に、分割金型82のキャビティ88b、型枠87a,87bの内周面、及び金型82に対向する樹脂シート22の外表面により構成された密閉空間S2を通じて、真空吸引室から吸引穴を介して吸引することにより、樹脂シート22をキャビティ88bに対して押し付けて、キャビティ88bの凹凸表面に沿った形状に樹脂シート22を賦形する。これにより、樹脂シート21,22には、凹溝41,42等が外表面側に突出するように賦形され、パネル2の内部構造が形成される。
【0069】
そして、
図11に示すように、樹脂シート21の外表面に当接する型枠86をそのままの位置に保持した状態で樹脂シート21を吸引保持するとともに、樹脂シート22の外表面に当接する型枠87をそのままの位置に保持した状態で樹脂シート22を吸引保持しつつ、それぞれの環状のピンチオフ部89a,89b同士が当接するまで、両金型81,82を互いに近づく向きに移動させ、樹脂シート21,22を部分的に溶着させる。ピンチオフ部89a,89b同士が当接することにより、2枚の樹脂シート21,22の外表面のうち、凹溝41,42等が形成されていないフラットな部分同士が面溶着され、凹溝41,42等を閉鎖することにより内部流路4等のパネル2の内部構造が形成されることになる。なお、
図11において、樹脂シート21,22のバリは図示していない。
【0070】
最後に、分割金型81,82を開いてパネル2を取り出し、図示しないバリ等を除去して、パネル2が形成される。このようにしてパネル2が製造されたら、前記したような手段等でダイアライザー3等を取り付けて、
図1に示した血液浄化回路パネル1とする。
【0071】
なお、パネル2に内蔵される前記した連結部R1等や内蔵チューブTa等の別部材(必要により後記する補強部材9等も。)は、分割金型81,82を型締めする前にインサートして、樹脂シート21,22に取り付けておけばよい。具体的には、図示しないマニピュレータの吸着盤により保持された別部材(連結部R1や内蔵チューブTa等や、後記する補強部材9等。)を、例えば、
図10において、キャビティ88a,88bの凹凸表面に沿った形状に樹脂シート21,22を賦形した状態の分割金型81,82の間に側方より挿入する。次いで、図示しないマニピュレータを、分割金型82に向かって水平方向に移動させることにより、例えば、
図10において右側の分割金型82のキャビティ88bに吸着された樹脂シート22に対して別部材を押し付け、別部材を樹脂シート22に溶着させて取り付けるようにすればよい。
【0072】
(4)本発明の効果:
以上説明した本実施形態に係る血液浄化回路パネル1は、所定の樹脂材料で構成し、デュロA硬度及び圧縮永久歪みを特定範囲とした樹脂シート21,22を貼り合わせてパネル2を形成し、パネル2の内面に凹溝41,42を形成し、かかる凹溝41,42からなる流体を通過させるための中空の内部流路4を配設している。かかる内部流路4は適度な硬度と復元性等を有するため、従来のポンプチューブの役割を果たし、内部流路4の一部を押圧することにより、流体をダイアライザー3等に送り出すことができる。加えて、内部流路4の配設により、ダイアライザー3等に流体を送り込むためのポンプチューブが不要となるため、ポンプチューブをパネル2に取り付けることの作業等の繁雑さを解消できるとともに、部材点数及びコストの削減等を図ることができる血液浄化回路パネル1となる。
【0073】
(5)実施形態の変形:
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0074】
前記したように、本発明にあっては、所定の硬度及び復元性等を有する樹脂シート21,22の内面に凹溝41.42を形成し、かかる凹溝によりなる内部流路4,4a(以下、内部流路4を例に挙げて説明する。)を設けて、ダイアライザー3等へ血液等の流体を送り込むようにしている。一方、所定の硬度及び復元性等を有することにより、内部流路4はポンプ等のはたらきにより流体を送り出すという機能を果たすことができるが、内部流路4の長手方向全体が樹脂シート21,22だけで構成される場合、流体の流路としては適するが、構造部材(構造体を形成する部位)としては若干軟らかい場合もあり、必要により、例えば、内部流路4の部分部分にあっては剛性や機械的強度等(以下、単に「剛性等」という場合がある。)を高めておいた方がよいこともある。
【0075】
また、内部流路4以外の部位に関し、例えば、構造部位であるパネル2の平面部分等についても、剛性等を高めておくことが望ましい。以上より、剛性等が必要とされる部分等については、パネル2(樹脂シート21,22)の各部分における剛性等を向上させるべく、パネル2の内面の一部に、補強部材9が2枚の樹脂シート21,22に狭持されて介在されているような構成を採用するようにしてもよい。
なお、前記した内容と同様の構造及び同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
【0076】
図12は、補強部材9を適用した箇所を示した説明図である。
図12にあっては、パネルに形成された内部流路4(凹溝41,42)を跨ぐように、後記する
図13に示した形状の補強部材9(内部流路用補強部材9a)、及びパネル2の側縁に板状の補強部材9(板状補強部材9b)を適用した態様を示している。このように、補強部材9は、例えば、内部流路4を跨いだ部分に適用して、内部流路4及びその周辺の剛性等を高めたり、構造部位であるパネル2の側縁に適用して適用部位分及びその周辺の剛性を高めたりする手段等として使用することができる。
【0077】
図13は、内部流路用補強部材9aの一例を示した概略図、
図14は、内部流路用補強部材9aを適用した断面構成を示した説明図、である。内部流路4を跨いで内部流路4及びその周辺を補強する内部流路用補強部材9aは、
図13に示すように、中空筒状の流路部91と、流路部91の両脇に形成される板状の支持部92が一体成形されてなる。
図14に断面を示すように、中空筒状で、流体が通過可能な中空部93を有する流路部91は、内部流路4に嵌め込まれ、板状の支持部92はパネル2(樹脂シート21,22)に面接触されて挟持されることになる。このようにして
図13及び
図14に示した内部流路用補強部材9aは、2枚の樹脂シート21,22に狭持されて介在され、内部流路4及びその周辺の剛性や機械的強度等を高めるのに役立つ。
【0078】
次に、
図15は、板状補強部材9bを適用した断面構成を示した説明図である。
図15に示すように、構造部位であるパネル2の側縁に適用して適用部位及びその周辺を補強する板状補強部材9bは、パネル2(樹脂シート21,22)の適用部位に面接触されて挟持されることになる。このようにして、板状補強部材9bは、2枚の樹脂シート21,22に狭持されて介在されることになり、適用部位及びその周辺の剛性や機械的強度等を高めるのに役立つ。
【0079】
また、これ以外の部位、例えば、外付けチューブT1等を取り付ける部位等やダイアライザー3を取り付ける部位等は、剛性等が高い方が望ましいため、部位にあわせた所定の形状の補強部材9を2枚の樹脂シート21、22に狭持されて介在されるようにすればよい。そして、補強部材9はこれらの部位に限らず、剛性等の向上が必要と考えられる任意の部位等に適用することができる。
【0080】
ここで、補強部材9は、前記したパネル2を構成する樹脂材料等より硬質な材料で形成することが好ましく、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のエンジニアリングプラスチック等を構成材料とすることができる。
【0081】
また、補強部材9は、前記したパネル2に内蔵される連結部R1〜R11や内蔵チューブTa,Tb等と同様に、分割金型81,82を型締めする前にインサートして、樹脂シート21,22に取り付けておけばよい。
【0082】
また、前記した実施形態では、パネル2の構成として、内部流路4,4aがダイアライザー3を挟んで左右1本ずつ配設され、ダイアライザー3と内部流路4の間に中空流路6が形成され、内部流路4aの脇に中空流路7,7aが形成された構成を、
図1ないし
図3に示して説明した。一方、パネル2の構成としてはこれには限定されず、2枚の樹脂シート21、22の内面同士を貼り合わせることによりなるパネル2に対して、樹脂シート21,22の少なくとも1枚の内面に、凹溝41,42(凹溝41a,42a)によりなる、流体を通過させるための中空の内部流路4,4aが配設されている任意の構成を採用することができる。また、内部流路4,4aの数も任意であり、1つ以上の必要とされる数の内部流路4,4aをパネルの内面に形成するようにすればよい。
【0083】
前記した実施形態では、外付けチューブT1等をパネル2に形成された各流路に挿入するに際し、連結部R1等を用いて外付けチューブT1等を挿入していたが、パネル2に形成される各流路を構成する凹溝(例えば内部流路4であれば凹溝41,42。)等の形状によっては、連結部R1等を用いず、外付けチューブT1等を直接パネルに形成された流路の端部に挿入するようにしてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0085】
[実施例1ないし実施例4、比較例1及び比較例2]
下記の樹脂材料を用いて表1に示した樹脂の構成で、
図1ないし
図5に示した血液浄化回路パネルを、前記した「(3)パネル2の製造方法の一例:」にならい、
図9ないし
図11に従って成形した。凹溝の深さは2〜50mm、樹脂シートの厚さは0.5〜2.0mmに収まるようにした。
【0086】
(a)スチレン系エラストマー:
品名:ラバロン(登録商標) T331C(SEBS)(三菱化学(株)製)
MFR:0.7g/10分
デュロA硬度:24
圧縮永久歪み:35%
【0087】
(b)オレフィン系エラストマー:
品名:タフマー(登録商標) DF610(ポリエチレン(PE)系エラストマー)(三井化学(株)製)
MFR:2.2g/10分
デュロA硬度:57
圧縮永久歪み:45%
【0088】
(c)スチレン系エラストマー:
品名:タフテック(登録商標) H1062(SEBS)(旭化成ケミカルズ(株)製)
MFR:4.5g/10分
デュロA硬度:67
圧縮永久歪み:30%
【0089】
(d)併用するポリポレフィン(PO)系樹脂:
品名:プライムポリプロ(登録商標) B242WC((株)プライムポリマー製)(実施例1、実施例2及び比較例2について、表1に示した含有量(残部は(a)スチレン系エラストマー)として使用した。)
MFR:1.5g/10分
【0090】
なお、前記及び表1のデュロA硬度(タイプAデュロメータ硬度)は、JIS K6253により、圧縮永久歪みは、JIS K6262により、23℃で22時間処理した後の値を、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(230℃、2.16kg)により測定した値を用いた。
【0091】
[試験例1]
前記のようにして得られた実施例1ないし実施例4、比較例1及び比較例2について、下記の条件で「(1)成形性」及び「(2)送液機能」を評価した。結果を、構成する樹脂も含め表1に示す。
【0092】
(1)成形性:
成形時、外観が良好で、潰れや薄肉部等の外観不良がなかったものを「○」(合格)、潰れや薄肉部等の外観不良があったものを「×」(不合格)とした。
【0093】
(2)送液機能:
成形品として、外径が7.0mm、肉厚0.9mmの中空流路に対して、押し潰し量1.7mm、回転速度120rpmの
図7に示した構成のローラ式チューブポンプを5時間(送液回数36000回)使用し(この条件での送液量は5L/時間となる。)、5時間送液した後の送液量が4L/時間以上のものを「○」(合格)、4L/時間未満のものを「×」(不合格)とした。
【0094】
(構成する樹脂及び結果)
【表1】
【0095】
表1に示すように、樹脂シートのデュロA硬度及び圧縮永久歪みをそれぞれ特定の範囲とした実施例1ないし実施例4は、成形性が良好であり、また、送液機能も優れたものであった。