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特開2016-202551造影剤除去デバイスおよび造影剤除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-202551(P2016-202551A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】造影剤除去デバイスおよび造影剤除去方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20161111BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   A61M1/36 543
   A61M1/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-87445(P2015-87445)
(22)【出願日】2015年4月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】清水 克彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 恵子
(72)【発明者】
【氏名】細野 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰一
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA15
4C077CC03
4C077CC06
4C077DD19
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH20
4C077JJ03
4C077JJ22
4C077JJ30
4C077KK03
4C077KK11
4C077MM01
4C077NN20
4C077PP07
4C077PP08
4C077PP13
4C077PP24
(57)【要約】
【課題】造影剤を血管内から効果的に取り除くことができる造影剤除去デバイスおよび造影剤除去方法を提供する。
【解決手段】造影剤を血管内から取り除くための造影剤除去デバイス10であって、長尺な外管40と、外管40の内部に配置される内管20と、内管20の遠位部に連結されると共に外管の内部に収容可能であって当該外管40から遠位方向へ突出することで径方向外側へ拡張して遠位方向へ開口する漏斗状となる拡張部30と、拡張部30の外縁部に設けられて接触対象に固定可能な固定部80と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤を血管内から取り除くための造影剤除去デバイスであって、
長尺な外管と、
前記外管の内部に配置される内側シャフトと、
前記内側シャフトの遠位部に連結されると共に前記外管の内部に収容可能であって当該外管から遠位方向へ突出することで径方向外側へ拡張して遠位方向へ開口する漏斗状となる拡張部と、
前記拡張部の外縁部に設けられて接触対象に固定可能な固定部と、を有する造影剤除去デバイス。
【請求項2】
前記固定部は、遠位方向へ向かって開口して陰圧を外部へ作用させる吸着部を有する請求項1に記載の造影剤除去デバイス。
【請求項3】
前記固定部は、遠位方向へ向かって突出する突出部を有する請求項1または2に記載の造影剤除去デバイス。
【請求項4】
前記内側シャフトは、前記拡張部に囲まれる遠位部から近位部まで延在する排出ルーメンが形成され、かつ前記拡張部よりも近位側に前記排出ルーメンから外面へ貫通する通孔が形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載の造影剤除去デバイス。
【請求項5】
前記内側シャフトは、前記拡張部に囲まれる遠位部から近位方向へ延在する空間である収容部が形成され、かつ前記拡張部よりも近位側に前記拡張部から外面へ貫通する通孔が形成され、
前記収容部内に、造影剤を吸着可能な吸着体が配置される請求項1〜3のいずれか1項に記載の造影剤除去デバイス。
【請求項6】
前記拡張部は、拡張した状態において遠位面側から近位面側へ液体が流通可能であり、造影剤を吸着可能な吸着体が配置される請求項1〜3のいずれか1項に記載の造影剤除去デバイス。
【請求項7】
造影剤を血管内から取り除くための造影剤除去方法であって、
(i)径方向外側へ拡張可能な拡張部を遠位部に備えると共に当該拡張部の外縁部に設けられて接触対象に固定可能な固定部を備える造影剤除去デバイスを血管内に挿入して右心房まで導く挿入ステップと、
(ii)前記拡張部を拡張させて右心房側から冠静脈洞の出口部を覆うと共に前記固定部を前記右心房の壁面に固定する固定ステップと、
(iii)前記拡張部により誘導される造影剤を取り除く除去ステップと、を有する造影剤除去方法。
【請求項8】
前記固定ステップにおいて、前記固定部に設けられて陰圧を外部へ作用させる吸着部により前記右心房の壁面を吸引して前記固定部を固定する請求項7に記載の造影剤除去方法。
【請求項9】
前記固定ステップにおいて、前記固定部に設けられて遠位方向へ向かって突出する突出部を前記右心房の壁面に食い込ませて前記固定部を固定する請求項7または8に記載の造影剤除去方法。
【請求項10】
前記除去ステップの前に、造影剤を除去するために前記拡張部により誘導される血液を前記造影剤除去デバイス内に取り込む取り込みステップを更に有し、
前記除去ステップにおいて、取り込んだ血液に造影剤が含まれる場合に造影剤を血管外へ排出する請求項7〜9のいずれか1項に記載の造影剤除去方法。
【請求項11】
前記除去ステップの前に、造影剤を除去するために前記拡張部により誘導される血液を前記造影剤除去デバイス内に取り込む取り込みステップを更に有し、
前記除去ステップにおいて、造影剤除去デバイスに配置されて造影剤を吸着可能な吸着体により造影剤を吸着し、残りの血液を血管へ戻す請求項7〜9のいずれか1項に記載の造影剤除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内に放出した造影剤を除去するための造影剤除去デバイスおよび造影剤除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の治療方法として、冠動脈の狭窄部や閉塞部にバルーンを挿入し、バルーンを拡張させることで狭窄部や閉塞部を押し広げるように拡張し、血流を回復させる経皮的冠動脈形成術(PCI)が行われている。PCIは、冠動脈に造影剤を投与し、X線透視下で狭窄部や閉塞部を確認しながら行われる。
【0003】
ところで、腎機能が低い患者に対してPCIを行うと、造影剤の副作用により造影剤腎症に陥り、場合によっては透析が必要になる場合もある。その原因は、確定されていないが、造影剤が腎臓に流れ込み、腎血管が収縮し、腎血流量や糸球体濾過量が低下するために、腎虚血となる血管性の要因が考えられている。さらに、造影剤は尿細管細胞に対して直接的な細胞毒性を示すことも知られている。
【0004】
このため、血管内の造影剤を取り除く種々の方法が提案されている。例えば特許文献1には、PCIを行うために冠動脈に造影剤を放出した後、冠静脈を通って冠静脈洞に流れる造影剤を、右心房に挿入したデバイスにより吸引して外部へ排出する方法が記載されている。造影剤を冠静脈洞で吸引して排出することで、造影剤を拡散する前に効果的に除去でき、造影剤による生体への影響を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7300429号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のデバイスは、右心房から冠静脈洞を覆って血液を誘導するための漏斗状の誘導部を備えているが、血液は冠静脈洞から右心房へ向かって流れているため、誘導部が血流から力を受けて移動しやすく、誘導部を望ましい位置に維持することが困難である。
【0007】
また、漏斗状の誘導部がない場合には、細いカテーテルのみで吸引する必要があり、造影剤を十分に吸引して排出することは困難である。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、造影剤を血管内から効果的に取り除くことができる造影剤除去デバイスおよび造影剤除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する造影剤除去デバイスは、造影剤を血管内から取り除くための造影剤除去デバイスであって、長尺な外管と、前記外管の内部に配置される内側シャフトと、前記内側シャフトの遠位部に連結されると共に前記外管の内部に収容可能であって当該外管から遠位方向へ突出することで径方向外側へ拡張して遠位方向へ開口する漏斗状となる拡張部と、前記拡張部の外縁部に設けられて接触対象に固定可能な固定部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した造影剤除去デバイスは、拡張部の外縁部に接触対象に固定可能な固定部を有するため、右心房側から冠静脈洞の出口を覆うように、拡張部を拡張させて右心房の壁面に固定できる。このため、拍動する血管内であっても、血液および造影剤を誘導する拡張部を適切な位置に保持することが可能となり、冠静脈洞から右心房へ流れる造影剤を効果的に捕集して取り除くことが可能となる。
【0011】
前記固定部は、遠位方向へ向かって陰圧を外部へ作用させる吸着部を有するようにすれば、陰圧により吸着部を右心房の壁面に吸着させることで、造影剤を誘導する拡張部の位置を適切に保持することができ、造影剤を血管内から効果的に取り除くことができる。
【0012】
前記固定部は、遠位方向へ向かって突出する突出部を有するようにすれば、突出部を右心房の壁面に食い込ませることで、造影剤を誘導する拡張部の位置を適切に保持することができ、造影剤を血管内から効果的に取り除くことができる。
【0013】
前記内側シャフトは、前記拡張部に囲まれる遠位部から近位部まで延在する排出ルーメンが形成され、かつ前記拡張部よりも近位側に前記排出ルーメンから外面へ貫通する通孔が形成されるようにすれば、拡張部により血液および造影剤を排出ルーメンへ誘導し、造影剤を体外へ排出できると共に、排出ルーメンに誘導した血液を通孔から選択的に血管内へ戻すことができる。更に、血液を通孔から選択的に血管内へ戻すことができるため、虚血の発生を抑制できる。
【0014】
前記内側シャフトは、前記拡張部に囲まれる遠位部から近位方向へ延在する空間である収容部が形成され、かつ前記拡張部よりも近位側に前記拡張部から外面へ貫通する通孔が形成され、前記収容部内に、造影剤を吸着可能な吸着体が配置されるようにすれば、拡張部により血液および造影剤を収容部へ誘導し、造影剤を吸着体に吸着させ、吸着体を通過した血液を通孔から血管内へ戻すことができる。
【0015】
前記拡張部は、拡張した状態において遠位面側から近位面側へ液体が流通可能であり、造影剤を吸着可能な吸着体が配置されるようにすれば、拡張部を流通する血液および造影剤のうち造影剤を吸着体に吸着させ、吸着体を通過した血液を血管内へ戻すことができる。
【0016】
上記目的を達成する造影剤除去方法は、造影剤を血管内から取り除くための造影剤除去方法であって、(i)径方向外側へ拡張可能な拡張部を遠位部に備えると共に当該拡張部の外縁部に設けられて接触対象に固定可能な固定部を備える造影剤除去デバイスを血管内に挿入して右心房まで導く挿入ステップと、(ii)前記拡張部を拡張させて右心房側から冠静脈洞の出口部を覆うと共に前記固定部を前記右心房の壁面に固定する固定ステップと、(iii)前記拡張部により誘導される造影剤を取り除く除去ステップと、を有する。当該造影剤除去方法は、右心房側から冠静脈洞の出口部を覆う拡張部を固定部により右心房の壁面に固定できるため、血液および造影剤を誘導する拡張部を適切な位置に保持することが可能となり、冠静脈洞から右心房へ流れる造影剤を効果的に捕集して取り除くことが可能となる。
【0017】
前記固定ステップにおいて、前記固定部に設けられて陰圧を外部へ作用させる吸着部により前記右心房の壁面を吸引して前記固定部を固定するようにすれば、血管へ極力負荷をかけずに、造影剤を誘導する拡張部の位置を適切に保持することができ、造影剤を血管内から効果的に取り除くことができる。
【0018】
前記固定ステップにおいて、前記固定部に設けられて遠位方向へ向かって突出する突出部を前記右心房の壁面に食い込ませて前記固定部を固定するようにすれば、造影剤を誘導する拡張部の位置を適切に保持することができ、造影剤を血管内から効果的に取り除くことができる。
【0019】
前記除去ステップの前に、造影剤を除去するために前記拡張部により誘導される血液を前記造影剤除去デバイス内に取り込む取り込みステップを更に有し、前記除去ステップにおいて、取り込んだ血液に造影剤が含まれる場合に造影剤を血管外へ排出するようにすれば、取り込んだ血液から造影剤を効果的に除去できる。また、造影剤を血管外に排出するため、排出する造影剤の量が限定されず、造影剤が多い場合であっても効果的に除去できる。
【0020】
前記除去ステップの前に、造影剤を除去するために前記拡張部により誘導される血液を前記造影剤除去デバイス内に取り込む取り込みステップを更に有し、前記除去ステップにおいて、造影剤除去デバイスに配置されて造影剤を吸着可能な吸着体により造影剤を吸着し、残りの血液を血管へ戻すようにすれば、取り込んだ血液を吸着体に取り込んだ血液を通過させるだけで、造影剤を効果的に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る造影剤除去デバイスを示す平面図である。
図2】第1実施形態に係る造影剤除去デバイスの拡張部を拡張させた状態を示す縦断面図である。
図3】第1実施形態に係る造影剤除去デバイスの拡張部を収縮させた状態を示す縦断面図である。
図4】第1実施形態に係る造影剤除去デバイスの遠位部を示す斜視図である。
図5】右心房に造影剤除去デバイスを配置した状態を示す概略図である。
図6】右心房の冠静脈洞の近傍に造影剤除去デバイスを配置した状態を示す断面図である。
図7】右心房内で拡張部を拡張させた状態を示す断面図である。
図8】血液を造影剤除去デバイスの内部へ誘導しつつ血管内へ戻す際の状態を示す断面図である。
図9】造影剤を血管外へ排出する際の状態を示す断面図である。
図10】右心房の冠静脈洞の入口部から拡張部を離して収縮させた状態を示す断面図である。
図11】制御部における制御の流れを示すフローチャートである。
図12】第2実施形態に係る造影剤除去デバイスを示す平面図である。
図13】第2実施形態に係る造影剤除去デバイスの拡張部を拡張させた状態を示す縦断面図である。
図14】第2実施形態に係る造影剤除去デバイスの遠位部を示す斜視図である。
図15】右心房の冠静脈洞の近傍に第2実施形態に係る造影剤除去デバイスを配置した状態を示す断面図である。
図16】血液を第2実施形態に係る造影剤除去デバイスの内部へ誘導しつつ血管内へ戻す際の状態を示す断面図である。
図17】第3実施形態に係る造影剤除去デバイスを示す平面図である。
図18】第3実施形態に係る造影剤除去デバイスの拡張部を拡張させた状態を示す縦断面図である。
図19】右心房の冠静脈洞の近傍に第3実施形態に係る造影剤除去デバイスを配置した状態を示す断面図である。
図20】血液を第3実施形態に係る造影剤除去デバイスの内部へ誘導しつつ血管内へ戻す際の状態を示す断面図である。
図21】第1実施形態に係る造影剤除去デバイスの拡張部の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
<第1実施形態>
【0023】
本発明の第1実施形態に係る造影剤除去デバイス10は、経皮的冠動脈形成術(PCI)を行う際に冠状動脈へ放出された造影剤を、冠静脈洞から回収して体外へ排出するためのデバイスである。なお、本明細書では、デバイスの静脈に挿入する側を「遠位側」、操作する手元側を「近位側」と称することとする。
【0024】
造影剤除去デバイス10は、図1、2、4に示すように、内管20(内側シャフト)と、内管20を内部に収容可能な外管40と、内管20の遠位部にて拡張および収縮可能な拡張部30と、内管20の内部の設けられる開閉可能な弁60と、造影剤を検知可能な検知部70と、拡張部30を生体組織に固定させるための固定部80と、拡張部30を操作するための操作部50とを備えている。
【0025】
内管20は、長尺な管体であり、内部にガイドワイヤを挿入するためのガイドワイヤルーメン21と、造影剤を血管の外へ排出するための排出ルーメン22とが形成されている。内管20は、遠位側に形成される内管遠位側開口部23で排出ルーメン22が開口しており、内管遠位側開口部23よりも近位側に、排出ルーメン22から外面へ貫通する内管通孔24(通孔)が形成されている。内管20の遠位部には、拡張部30が連結されている。内管20の近位部は、操作部50を構成する第2操作部52に連結されている。
【0026】
外管40は、内管20を収容する長尺な管体であり、内管20に対して軸方向へ相対的に移動可能となっている。外管40は、遠位側に形成される外管遠位側開口部41で開口しており、外管遠位側開口部41よりも近位側に、内面から外面へ貫通する外管通孔42が形成されている。外管40の外管通孔42よりも近位側の内部には、内管20の外表面と接触して液密性を維持できる環状のシール部材43が配置される。外管40の近位部は、操作部50を構成する第1操作部51に連結されている。
【0027】
拡張部30は、内管20の遠位部の外周面に連結され、弾性的に変形可能な線材により網状に形成された線材部31と、線材部31の隙間を塞ぐように線材部31を覆う変形可能な膜部32とを備えている。拡張部30は、外周縁が内管20の遠位部から遠位方向へ突出するように、遠位方向へ開口する漏斗状に形成される。拡張部30は、操作部50を操作して内管20を外管40に対して相対的に近位方向へ移動させることで、図3に示すように、弾性的に変形して収縮しつつ、外管40内に収容される。また、拡張部30は、操作部50を操作して内管20を外管40に対して相対的に遠位方向へ移動させることで、図1、2及び4に示すように、外管40から遠位方向へ突出し、内管20の内管遠位側開口部23から径方向外側へ拡がるように弾性的に拡張可能である。
【0028】
検知部70は、排出ルーメン22内に配置されるセンサ71と、操作部50から排出ルーメン22内をセンサ71まで延在する信号ケーブル72とを備えている。センサ71は、内管通孔24よりも遠位側に配置される。センサ71の構成は、造影剤を検知可能なセンサ71であれば限定されず、例えば、超音波センサ、赤外線センサ、光センサ、温度センサ、または粘度センサである。本実施形態において使用される造影剤は、X線により識別されるものであって、血管内投与に利用されるものであり、例えば、分子量が約8000以下、イオン性又は非イオン性のヨウ素原子を含む化合物である。具体例を挙げると、イオプロミド、イオパミドール、イオメプロール、アミドトリゾ酸、イオヘキソール、イオタラム酸、ヨーダミド、メトリゾ酸、メトリザミド、イオキシラン等の単量体、および、イオキサグル酸、アジピオドン、イオトロクス酸、ヨードキサム酸、イオトロラン、等の二量体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
弁60は、排出ルーメン22内に配置されるバルーン61と、操作部50から排出ルーメン22内を延在する管体である拡張用管体62とを備えている。バルーン61は、内管通孔24およびセンサ71よりも近位側に配置されている。拡張用管体62は、内部にバルーン61と連通する拡張ルーメン63が形成されており、バルーン61へ拡張用流体を供給し、かつバルーン61から拡張用流体を排出できる。バルーン61は、内部に拡張用流体が流入することで拡張して排出ルーメン22を閉鎖し、拡張用流体が排出されることで収縮して、排出ルーメン22を流体が流通可能とする。
【0030】
固定部80は、内管20および拡張部30の外面に沿って軸方向へ延在する2本の管体であり、内部に吸引ルーメン81が形成されている。なお、管体の数は、限定されない。固定部80は、遠位側にて吸引ルーメン81が開口する吸着用開口部82が形成される吸着部83を備えている。吸着部83は、拡張部30の外縁部、すなわち拡張部30の漏斗状の開口部の縁部に位置している。吸着用開口部82は、遠位方向へ向かって開口し、陰圧を外部へ作用させることができる。
【0031】
内管20、外管40および拡張用管体62および固定部80の構成材料は、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好ましく使用される。また、剛性を増すために前記材料に金属のブレードやコイルを加えることも可能である。
【0032】
線材部31の構成材料は、弾性的に変形可能である材質であることが好ましく、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、Wなどの金属、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。その中でも、特に、形状記憶合金が好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系などが好適に使用できる。
【0033】
膜部32およびバルーン61の構成材料は、特に限定されないが、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴムなどが好適に使用できる。
【0034】
造影剤除去デバイス10の長さ(内管20の最遠位部から操作部50までの長さ)は、特に限定されないが、例えば、1000mm〜2000mmが好ましい。外管40の外径は、特に限定されないが、例えば、3.0mm〜5.0mmが好ましい。内管20の外径は、特に限定されないが、例えば、2.0mm〜4.0mmが好ましい。拡張部30が拡張した状態における拡張部30の最大外径は、患者の冠静脈洞の出口の外径よりも大きければ、特に限定されないが、例えば、20mm〜50mmが好ましい。
【0035】
内管20、拡張部30、外管40および固定部80は、材料中にX線造影性材料が含まれて形成されていてもよい。これにより、X線造影下で位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、モリブデン、タングステン、タンタル、パラジウムあるいはそれらの合金等が好適である。
【0036】
また、内管20および外管40のいずれかの位置に、X線造影性材料からなるマーカーが配置されてもよい。マーカーは、X線造影性材料により形成されるワイヤを外面に巻きつけること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成して外面にかしめる又は接着することにより取り付けられる。
【0037】
操作部50は、外管40の近位側端部が連結される第1操作部51と、内管20の近位側端部が連結される第2操作部52とを備えている。第1操作部51は、内管20が軸方向へ移動可能に貫通している。
【0038】
第2操作部52は、内管20のガイドワイヤルーメン21と連通するガイドワイヤ用ポート53と、拡張ルーメン63と連通する拡張用ポート54と、排出ルーメン22と連通する排出用ポート55と、吸引ルーメン81と連通する吸引用ポート56が形成されている。また、第2操作部52は、信号ケーブル72と電気的に接続される接続ケーブル57が導出されている。接続ケーブル57は、センサ71からの信号を受けて造影剤の濃度を検出する検出装置90に接続可能である。
【0039】
ガイドワイヤ用ポート53は、ガイドワイヤを挿入可能である。拡張用ポート54は、バルーン61を拡張させるための拡張用流体を注入および排出するための自動注入装置91に接続可能である。自動注入装置91は、制御部92により制御されており、したがって、バルーン61の拡張および収縮を自動で制御できる。制御部92は、例えばコンピュータにより構成される。排出用ポート55は、排出ルーメン22を介して血管内から造影剤を排出できる。
【0040】
吸引用ポート56は、拡張部30を生体組織に密着させるための陰圧を吸着部83に発生させるために、吸引装置93を接続可能である。吸引装置93は、例えばポンプであり、制御部92により制御されている。このため、吸着部83に発生させる陰圧を、制御部92により自動で制御できる。
【0041】
第1操作部51および第2操作部52の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の硬質の樹脂等が好適に使用できる。
【0042】
次に、第1実施形態に係る造影剤除去デバイス10の使用方法を、図11に示す制御部のフローチャートを参照しつつ説明する。ここでは、PCIを行う際に冠動脈に放出された造影剤を、右心房側から除去する場合を例として説明する。
【0043】
まず、使用する造影剤除去デバイス10のプライミングを行い、内部を生理食塩水で置換する。この初期状態において、図3に示すように、拡張部30は外管40内に収容されて収縮している。そして、拡張用ポート54に自動注入装置91を接続し、吸引用ポート56に吸引装置93を接続し、接続ケーブル57を検出装置90に接続する(図1を参照)。次に、自動注入装置91を作動させて、拡張用ポート54から拡張用流体を供給し、バルーン61を拡張させて排出ルーメン22を閉じた状態とする(ステップS1)。
【0044】
次に、大腿静脈または頸部静脈にイントロデューサシース(図示せず)を挿入する。次に、イントロデューサシースを介してガイドワイヤWを静脈内へ挿入する。なお、イントロデューサシースを設置する位置は、造影剤除去デバイス10を右心房Rから冠静脈洞Cへアクセス可能であれば、限定されない。
【0045】
次に、ガイドワイヤWを右心房Rへ到達させ、冠静脈洞Cの右心房Rへの出口部に挿入する。この後、準備した造影剤除去デバイス10のガイドワイヤルーメン21にガイドワイヤWを挿入し、造影剤除去デバイス10をガイドワイヤWに沿って静脈内へ挿入する。次に、ガイドワイヤWに沿って造影剤除去デバイス10を押し進め、図5、6に示すように、右心房Rまで到達させる(挿入ステップ)。
【0046】
次に、第1操作部51を第2操作部52に対して近位方向へ移動させ、または第2操作部52を第1操作部51に対して遠位方向へ移動させると、図7に示すように、拡張部30が拡張して、冠静脈洞Cの出口部よりも大きく拡がる(拡張ステップ)。
【0047】
次に、拡張部30が冠静脈洞Cを覆うように拡張部30を右心房Rの壁面に接触させ、吸引装置93を作動させて吸着部83による吸引を開始する(ステップS2)。このとき、ガイドワイヤWが冠静脈洞Cに挿入されているため、吸着部83の位置決めが容易である。これにより、図8に示すように、吸着部83に作用する陰圧により、吸着部83が冠静脈洞Cの出口部の周りに位置する右心房Rの壁面に密着する(固定ステップ)。吸着部83が右心房Rに密着すると、冠静脈洞Cから右心房Rへ流れる血液は、右心房Rと拡張部30の間の隙間から漏れる微小な血液を除き、ほとんど全てが拡張部30により排出ルーメン22へ導かれる(取り込みステップ)。排出ルーメン22に血液が誘導されると、センサ71からの信号によって検出装置90により造影剤の濃度が検出される。検出装置90からの信号は、制御部92に入力され、造影剤の濃度が予め設定した閾値以下であるかが判別される(ステップS3)。造影剤の濃度が予め設定した閾値以下である場合には、バルーン61が拡張して弁60を閉じた状態が維持される。弁60が閉じた状態では、排出ルーメン22に導かれた血液は、内管通孔24を介して外管40内に導かれる。内管20と外管40の間には、シール部材43が設けられているため、外管40内に導かれた血液は、シール部材43よりも遠位側に設けられる外管通孔42から右心房R内に戻される。このように、造影剤の濃度が閾値を超えない限り、血液は排出ルーメン22を介して体外へ排出されないため、血液の排出による虚血の発生を抑制できる。
【0048】
次に、PCIのために、動脈内へ挿入された別のカテーテルから、造影剤を冠動脈へ放出する。冠動脈へ放出された造影剤は、冠静脈を通って冠静脈洞Cへ到達する。冠静脈洞Cへ造影剤が到達すると、造影剤を含む血液が、拡張部30により内管20の排出ルーメン22内に導かれる。センサ71からの信号によって検出装置90により検出される造影剤の濃度が閾値を超えると、検出装置90から信号を受けた制御部92が自動注入装置91を自動で制御し、図9に示すように、バルーン61から拡張用流体を排出して弁60を開く(ステップS4)。これにより、大気圧よりも高い血圧により、造影剤を含む血液が、排出ルーメン22を通って排出用ポート55から排出される(除去ステップ)。
【0049】
センサ71からの信号によって検出装置90により検出される造影剤の濃度が閾値以下であるかが常に判別され(ステップS5)、造影剤の濃度が閾値以下となると、検出装置90から信号を受けた制御部92が自動注入装置91を自動で制御し、図8に示すように、バルーン61へ拡張用流体を供給して弁60を閉じる(ステップS6)。これにより、排出ルーメン22に導かれた血液は、内管通孔24、外管通孔42を介して、右心房R内に戻される。
【0050】
そして、造影剤の冠動脈への放出に応じて造影剤除去デバイス10が作動して、血液の造影剤の濃度が閾値を超える場合にのみ、造影剤を含む血液を、排出ルーメン22を介して体外へ排出する。
【0051】
PCIの手技が完了した後、吸着部83に接続される吸引装置93を停止させる(ステップS7)。これにより、拡張部30が右心房Rの壁面から離れる。この後、第1操作部51を第2操作部52に対して遠位方向へ移動させ、または第2操作部52を第1操作部51に対して近位方向へ移動させると、図10に示すように、拡張部30が外管40内に収容されて収縮する(収縮ステップ)。
【0052】
この後、造影剤除去デバイス10をイントロデューサシースから抜去し、かつイントロデューサシースを静脈Vから抜去して、処置が完了する。
【0053】
以上のように、第1実施形態に係る造影剤除去デバイス10は、造影剤を血管内から取り除くための造影剤除去デバイス10であって、長尺な外管40と、前記外管40の内部に配置される内管20(内側シャフト)と、内管20の遠位部に連結されると共に外管40の内部に収容可能であって当該外管40から遠位方向へ突出することで径方向外側へ拡張して遠位方向へ開口する漏斗状となる拡張部30と、拡張部30の外縁部に設けられて接触対象に固定可能な固定部80と、を有する。上記のように構成した造影剤除去デバイス10は、拡張部30の外縁部に接触対象に固定可能な固定部80を有するため、右心房R側から冠静脈洞Cの出口を覆うように、拡張部30を拡張させて右心房Rの壁面に固定できる。このため、血液および造影剤を誘導する拡張部30を適切な位置に保持することが可能となり、冠静脈洞Cから右心房Rへ流れる造影剤を効果的に捕集して取り除くことが可能となる。
【0054】
ところで、冠静脈洞Cに到達して造影剤を吸引するために、冠静脈洞C内で拡張可能なバルーンを利用して血流を止め、冠静脈洞C内に挿入したカテーテルにより冠静脈洞C内の造影剤を吸引する方法があるが、この方法では、バルーンによる冠静脈洞Cへの負担が大きく、かつ吸引するためのカテーテルを冠静脈洞C内へ挿入可能な外径とする必要があり、カテーテル内に広い流路を確保することが困難である。これに対し、本実施形態に係る造影剤除去デバイス10は、冠静脈洞Cよりも広い右心房Rに配置して吸引する内管20の内径を広く確保しつつ、拡張部30を固定部80によって固定でき、拡張部30を拍動する心臓内で常に適切な位置に維持することができる。このため、冠静脈洞Cを流れる血液全体を極力洩れなく内管20に引き込んだ後、造影剤以外の血液を血管内に戻すことができる。したがって、除去すべき造影剤を取り逃すことが抑制され、造影剤を効果的に除去することができる。
【0055】
また、固定部80は、遠位方向へ向かって陰圧を外部へ作用させる吸着部83を有するため、陰圧により吸着部83を右心房Rの壁面に吸着させることで、造影剤を誘導する拡張部30の位置を適切に保持することができ、造影剤を血管内から効果的に取り除くことができる。
【0056】
また、内管20(内側シャフト)は、拡張部30に囲まれる遠位部から近位部まで延在する排出ルーメン22が形成され、かつ拡張部30よりも近位側に排出ルーメン22から外面へ貫通する内管側孔24(通孔)が形成されるため、拡張部30により血液および造影剤を排出ルーメン22へ誘導し、造影剤を体外へ排出できると共に、排出ルーメン22に誘導した血液を内管側孔24から血管内へ選択的に戻すことができる。そして、排出ルーメン22に誘導した血液を内管側孔24から血管内へ戻すことができるため、血液の排出による虚血の発生を抑制できる。
【0057】
また、本発明は、造影剤を血管内から取り除くための造影剤除去方法をも含む。当該造影剤除去方法は、(i)径方向外側へ拡張可能な拡張部を遠位部に備えると共に当該拡張部の外縁部に設けられて接触対象に固定可能な固定部を備える造影剤除去デバイスを血管内に挿入して右心房まで導く挿入ステップと、(ii)前記拡張部を拡張させて右心房側から冠静脈洞の出口部を覆うと共に前記固定部を前記右心房の壁面に固定する固定ステップと、(iii)前記拡張部により誘導される血液から造影剤を取り除く除去ステップと、を有する。上記のように構成した造影剤除去方法は、拡張部を拡張させて右心房側から冠静脈洞の出口部を覆うと共に固定部を右心房の壁面に固定するため、血液および造影剤を誘導する拡張部を適切な位置に保持することが可能となり、冠静脈洞から右心房へ流れる造影剤を効果的に捕集して取り除くことが可能となる。
【0058】
上記造影剤除去方法は、前記固定ステップにおいて、前記固定部に設けられて陰圧を外部へ作用させる吸着部により前記右心房の壁面を吸引して前記固定部を固定する。これにより、右心房の壁面へ極力負荷をかけずに、造影剤を誘導する拡張部の位置を適切に保持することができ、造影剤を血管内から効果的に取り除くことができる。
【0059】
上記造影剤除去方法は、前記除去ステップの前に、造影剤を除去するために前記拡張部により誘導される血液を前記造影剤除去デバイス内に取り込む取り込みステップを更に有し、前記除去ステップにおいて、取り込んだ血液に造影剤が含まれる場合に造影剤を血管外へ排出する。これにより、取り込んだ血液から造影剤を効果的に除去できる。また、造影剤を血管外に排出するため、排出する造影剤の量が限定されず、造影剤が多い場合であっても効果的に除去できる。
【0060】
上記造影剤除去方法は、前記除去ステップの前に、造影剤を除去するために前記拡張部により誘導される血液を前記造影剤除去デバイス内に取り込む取り込みステップを更に有し、前記除去ステップにおいて、造影剤除去デバイスに配置されて造影剤を吸着可能な吸着体により造影剤を吸着し、残りの血液を血管へ戻す。これにより、取り込んだ血液を吸着体に取り込んだ血液を通過させるだけで、造影剤を効果的に除去できる。
【0061】
なお、上述の例では、センサ71により検出される造影剤の濃度が閾値を超える場合に、制御部92により弁60を開いて造影剤を含む血液を排出しているが、このような構成でなくてもよい。例えば、造影剤を冠動脈に放出後、制御部92によりタイマーを設定し、所定時間後に所定時間だけ弁60が開き、血液を排出するように制御することもできる。また、X線撮像下で、造影剤を確認し、手動で操作することで弁60を開いて血液を排出することもできる。このような構成とすれば、造影剤を検出するためのセンサ71が設けられなくてもよい。また、弁の構造は、バルーンに限定されない。また、造影剤を排出する排出用ポート55に、造影剤を吸引するためのポンプなどの吸引装置が連結されてもよい。
<第2実施形態>
【0062】
第2実施形態に係る造影剤除去デバイス100は、体外へ造影剤を排出しない点で、第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0063】
造影剤除去デバイス100は、図12〜14に示すように、内管110(内側シャフト)と、内管110を内部に収容可能な外管40と、内管110の遠位部にて拡張および収縮可能な拡張部120と、拡張部120を生体組織に固定するための固定部130と、拡張部120を操作するための操作部140とを備えている。
【0064】
内管110は、長尺な管体であり、内部にガイドワイヤを挿入するためのガイドワイヤルーメン111と、造影剤を吸着するための吸着体113が収容される収容部112とが形成されている。収容部112は、内管110の遠位部の内管遠位側開口部114で開口し、内管遠位側開口部114よりも近位側の所定の位置で、内管110の内面から外面へ貫通する内管通孔115(通孔)により側方へ開口している。内管110の遠位部には、拡張部120が連結されている。内管110の近位部には、操作部140を構成する第2操作部142が固定されている。
【0065】
拡張部120は、弾性的に変形可能な線材により網状に形成された線材部31と、線材部31の隙間を塞ぐように線材部121を覆う膜部122とを備えている。拡張部120は、内管110の遠位部から遠位方向へ突出するように漏斗状に形成される。拡張部120は、操作部140を操作して内管110を外管40に対して相対的に近位方向へ移動させることで、図15に示すように、弾性的に変形して収縮しつつ、外管40内に収容される。また、拡張部120は、操作部140を操作して内管110を外管40に対して相対的に遠位方向へ移動させることで、図12〜14に示すように、外管40から遠位方向へ突出し、内管110の内管遠位側開口部114から径方向外側へ拡がるように弾性的に拡張可能である。
【0066】
固定部130は、拡張部120を生体組織に固定するための部位であり、拡張部120の遠位側の縁部に形成される。固定部130は、遠位方向へ突出する複数の突出部131を備えている。複数の突出部131は、例えば、図14に示すように、線材部121同士が交差して遠位方向へ突出することで構成される。突出部131は、生体組織に食い込んで引っ掛かり、拡張部120が生体組織に密着した状態を効果的に維持することができる。
【0067】
吸着体113は、図13に示すように、収容部112内で、血液および造影剤の流通を許容するフィルタ116に挟まれて保持されている。吸着体113は、物理化学的に造影剤を吸着する水不溶性の造影剤吸着体である。吸着体113は、造影剤を吸着するための比表面積を確保できる点から、多孔体であることが好ましい。多孔体とは多数の連続した、もしくは不連続の孔を有するものである。造影剤吸着量が多いことから比表面積は800m/g以上であるものを使用することが好ましい。多孔体としては、シリカゲル、アルミナゲル、ゼオライト、活性炭などあるが、比表面積が大きい点から活性炭を使用することが最も好ましい。
【0068】
吸着体113の形状としては、球状、粒状、糸状、中空糸状、平膜状等いずれも有効に用いられるが、体外循環時の血液の流通面より、球状または粒状が最も好ましく用いられる。
【0069】
吸着体113は、血液と接触するが、血液は異物に接触すると凝固する。そのため、吸着体113は、血液との親和性をよくするために、血小板の付着を制御するための表面処理をしたものを使用してもよい。例えば、吸着体113の血液と接触する表面に、血小板低粘着性材料のコート層を設けたものを使用することが好ましい。
【0070】
操作部140は、図12に示すように、外管40の近位側端部が連結される第1操作部141と、内管110の近位側端部が連結される第2操作部142とを備えている。第1操作部141には、内管110が軸方向へ移動可能に貫通している。
【0071】
第2操作部142は、内管110のガイドワイヤルーメン111と連通するガイドワイヤ用ポート143が形成されている。ガイドワイヤ用ポート143は、ガイドワイヤを挿入可能である。
【0072】
次に、第2実施形態に係る造影剤除去デバイス100の使用方法を説明する。
【0073】
まず、使用する造影剤除去デバイス100のプライミングを行い、内部を生理食塩水で置換する。この初期状態において、拡張部120は外管40内に収容されて収縮している(図15を参照)。
【0074】
次に、大腿静脈または頸部静脈にイントロデューサシース(図示せず)を挿入する。次に、イントロデューサシースを介してガイドワイヤWを静脈内へ挿入する。なお、イントロデューサシースを設置する位置は、造影剤除去デバイス100を右心房Rへアクセス可能であれば、限定されない。
【0075】
次に、ガイドワイヤWを右心房Rへ到達させ、冠静脈洞Cの右心房Rへの出口部に挿入する。この後、準備した造影剤除去デバイス100のガイドワイヤルーメン111にガイドワイヤWを挿入し、造影剤除去デバイス100をガイドワイヤWに沿って静脈内へ挿入する。次に、ガイドワイヤWに沿って造影剤除去デバイス100を押し進め、図15に示すように、右心房Rまで到達させる(挿入ステップ)。
【0076】
次に、第1操作部141を第2操作部142に対して近位方向へ移動させ、または第2操作部142を第1操作部141に対して遠位方向へ移動させると、図16に示すように、拡張部120が拡張して、冠静脈洞Cの出口部よりも大きく拡がる(拡張ステップ)。
【0077】
次に、拡張部120が冠静脈洞Cを覆うように拡張部120を右心房Rの壁面に接触させると、拡張部120の外縁部に設けられる固定部130の突出部131が生体組織に食い込んで引っ掛かり、拡張部120を生体組織に密着させた状態が効果的に維持される(固定ステップ)。拡張部120が右心房Rに密着すると、冠静脈洞Cから右心房Rへ流れる血液は、右心房Rおよび拡張部120の間の隙間から漏れる微小な血液を除き、全てが拡張部120により収容部112内へ導かれる(取り込みステップ)。収容部112に血液が誘導されると、血液は吸着体113の隙間を通り、内管通孔115を介して外管40内に導かれる。内管110と外管40の間には、シール部材43が設けられているため、外管40内に導かれた血液は、シール部材43よりも遠位側に設けられる外管通孔42から右心房R内またはアクセスルートの静脈(造影剤除去デバイス100を挿入した静脈)に戻される。
【0078】
次に、PCIを行うために、造影剤を冠動脈へ放出する。冠動脈へ放出された造影剤は、冠静脈を通って冠静脈洞Cへ到達する。冠静脈洞Cへ造影剤が到達すると、造影剤を含む血液が、拡張部120により内管110の収容部112に導かれる。血液に造影剤が含まれていると、収容部112内の吸着体113により造影剤が吸着され(除去ステップ)、吸着体113を取り除かれた血液のみが、内管通孔115、外管通孔42を通って右心房R内またはアクセスルートの静脈に戻される。
【0079】
PCIの手技が完了した後、固定部130を右心房Rの冠静脈洞Cの出口を囲む部位から引き離す。この後、第1操作部141を第2操作部142に対して遠位方向へ移動させ、または第2操作部142を第1操作部141に対して近位方向へ移動させると、図15に示すように、拡張部120が外管40内に収容されて収縮する。
【0080】
この後、造影剤除去デバイス100をイントロデューサシースから抜去し、かつイントロデューサシースを静脈Vから抜去して、処置が完了する。
【0081】
以上のように、第2実施形態に係る造影剤除去デバイス100は、内管110内に吸着体113を備えるため、吸着体113によって造影剤を含んだ血液から造影剤を選択的に吸着して除去し、造影剤を除去した後の血液を、内管通孔115および外管通孔42を介して右心房R内またはアクセスルートの静脈に戻すことができる。
ことができる。
【0082】
また、固定部130は、遠位方向へ向かって突出する突出部131を有するため、突出部131を右心房Rの壁面に食い込ませることで、造影剤を誘導する拡張部120の位置を適切に保持することができ、造影剤を血管内から効果的に取り除くことができる。
【0083】
また、内管110(内側シャフト)は、拡張部120に囲まれる遠位部から近位方向へ延在する空間である収容部112が形成され、かつ拡張部120よりも近位側に収容部112から外面へ貫通する内管通孔115(通孔)が形成され、収容部112内に、造影剤を吸着可能な吸着体113が配置される。このため、拡張部120により血液および造影剤を収容部112へ誘導し、造影剤を吸着体113に吸着させ、吸着体113を通過した血液を内管通孔115から血管内へ戻すことができる。
【0084】
また、第2実施形態における造影剤除去方法は、固定ステップにおいて、固定部に設けられて遠位方向へ向かって突出する突出部を右心房の壁面に食い込ませて固定部を固定する。これにより、造影剤を誘導する拡張部の位置を適切に保持することができ、造影剤を血管内から効果的に取り除くことができる。
<第3実施形態>
【0085】
第3実施形態に係る造影剤除去デバイス150は、体外へ造影剤を排出しない点で、第1実施形態と異なる。なお、第1、第2実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0086】
造影剤除去デバイス150は、図17、18に示すように、内管160と、内管160を内部に収容可能な外管170と、内管160の遠位部にて拡張および収縮可能な拡張部180と、拡張部180を生体組織に固定するための固定部190と、拡張部180を操作するための操作部140とを備えている。
【0087】
内管160は、長尺な管体であり、内部にガイドワイヤを挿入するためのガイドワイヤルーメン161が形成されている。内管160の遠位部には、拡張部180が連結されている。内管160の近位部には、操作部140を構成する第2操作部142が固定されている。
【0088】
外管170は、内管160および拡張部180を内部に収容可能な長尺な管体であり、内管160に対して軸方向へ相対的に移動可能となっている。外管170の近位部は、操作部140を構成する第1操作部141に連結されている。
【0089】
拡張部180は、弾性的に変形可能な線材により網状に形成された線材部181と、線材部181の隙間を塞ぐように線材部181を覆うフィルタ182と、フィルタ182の内部に配置される吸着体183とを備えている。拡張部180は、内管160の遠位部から遠位方向へ突出するように漏斗状に形成される。フィルタ182は、血液が流通可能な部材であり、このフィルタ182の内部に、吸着体183が挟まれるように配置される。なお、吸着体183は、フィルタの外面や内面に付着されるように保持されてもよい。
【0090】
拡張部180は、操作部140を操作して内管160を外管170に対して相対的に近位方向へ移動させることで、図19に示すように、弾性的に変形して収縮しつつ、外管170内に収容される。また、拡張部180は、操作部140を操作して内管160を外管170に対して相対的に遠位方向へ移動させることで、図17、18に示すように、外管170から遠位方向へ突出し、内管160の内管遠位側開口部114から径方向外側へ拡がるように弾性的に拡張可能である。
【0091】
固定部190は、拡張部180を生体組織に密着させるための部位であり、拡張部180の先端部に形成される。固定部190は、遠位方向へ突出する複数の突出部191を備えている。複数の突出部191は、第2実施形態と同様に、線材部181同士が交差して遠位方向へ突出することで構成される。突出部191は、生体組織に食い込んで引っ掛かり、拡張部180が生体組織に密着した状態を効果的に維持することができる。
【0092】
操作部140は、外管170の近位側端部が連結される第1操作部141と、内管160の近位側端部が連結される第2操作部142とを備えている。第1操作部141には、内管160が軸方向へ移動可能に貫通している。
【0093】
第2操作部142は、内管160のガイドワイヤルーメン161と連通するガイドワイヤ用ポート143が形成されている。ガイドワイヤ用ポート143は、ガイドワイヤを挿入可能である。
【0094】
次に、第3実施形態に係る造影剤除去デバイス150の使用方法を説明する。
【0095】
まず、使用する造影剤除去デバイス150のプライミングを行い、内部を生理食塩水で置換する。この初期状態において、図19に示すように、拡張部180は外管170内に収容されて収縮している。
【0096】
次に、大腿静脈または頸部静脈にイントロデューサシース(図示せず)を挿入する。次に、イントロデューサシースを介してガイドワイヤWを静脈内へ挿入する。なお、イントロデューサシースを設置する位置は、造影剤除去デバイス150を右心房Rから冠静脈洞Cへアクセス可能であれば、限定されない。
【0097】
次に、ガイドワイヤWを右心房Rへ到達させ、冠静脈洞Cの出口部に挿入する。次に、準備した造影剤除去デバイス150のガイドワイヤルーメン161にガイドワイヤWを挿入し、造影剤除去デバイス150をガイドワイヤWに沿って静脈内へ挿入する。この後、ガイドワイヤWに沿って造影剤除去デバイス150を押し進め、図19に示すように、右心房Rまで到達させる(挿入ステップ)。
【0098】
次に、第1操作部141を第2操作部142に対して近位方向へ移動させ、または第2操作部142を第1操作部141に対して遠位方向へ移動させると、図20に示すように、拡張部180が拡張して、冠静脈洞Cの出口部よりも大きく拡がる(拡張ステップ)。
【0099】
次に、拡張部180が冠静脈洞Cを覆うように拡張部180を右心房Rの壁面に接触させると、拡張部180の遠位部に設けられる突出部191が生体組織に食い込んで引っ掛かり、拡張部180を生体組織に密着させた状態が効果的に維持される(固定ステップ)。拡張部180が右心房Rに密着すると、冠静脈洞Cから右心房Rへ流れる血液は、右心房Rおよび拡張部180の間の隙間から漏れる微小な血液を除き、全てが拡張部180のフィルタ182を通過する。フィルタ182を通過する血液は吸着体183の隙間を通り、右心房Rに到達する(取り込みステップ)。なお、ガイドワイヤルーメン161は、近位部がガイドワイヤWを挿通可能な弁体等により封止されるため、拡張部により誘導される血液がガイドワイヤWに流入することはない。
【0100】
次に、PCIを行うために、造影剤を冠動脈へ放出する。冠動脈へ放出された造影剤は、冠静脈を通って冠静脈洞Cへ到達する。冠静脈洞Cへ造影剤が到達すると、造影剤を含む血液が、拡張部180のフィルタ182を通過する。血液に造影剤が含まれていると、フィルタ182内の吸着体183に造影剤が吸着され(除去ステップ)、吸着体183を取り除かれた血液のみが、右心房R内に到達する。
【0101】
PCIの手技が完了した後、固定部190を右心房Rの冠静脈洞Cの出口を囲む部位から引き離す。この後、第1操作部141を第2操作部142に対して遠位方向へ移動させ、または第2操作部142を第1操作部141に対して近位方向へ移動させると、図19に示すように、拡張部180が外管170内に収容されて収縮する(収縮ステップ)。
【0102】
この後、造影剤除去デバイス150をイントロデューサシースから抜去し、かつイントロデューサシースを静脈Vから抜去して、処置が完了する。
【0103】
以上のように、第3実施形態に係る造影剤除去デバイス150は、拡張部180が、拡張した状態において遠位面側から近位面側へ液体が流通可能であり、内部に造影剤を吸着可能な吸着体183が配置されるため、拡張部180を流通する血液および造影剤のうち造影剤を吸着体183に吸着させ、吸着体183を通過した血液を血管内へ戻すことができる。
【0104】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、第1実施形態および第2実施形態において、内管通孔24を通って外管40内に流入した血液は、外管通孔42を介して血管内へ戻されるが、図21に示すように、外管40の先端部を内管通孔24よりも近位側まで移動させれば、外管通孔42を介さずとも、内管通孔24を通った血液を血管内へ戻すことができる。この場合、シール部材43(図2、13を参照)は設けられなくてもよい。
【0105】
また、拡張部は、必ずしも全体が右心房R内に位置している必要はなく、拡張部の一部が、右心房Rから冠静脈洞C内に部分的に入り込んでいてもよい。
【符号の説明】
【0106】
10、100、150 造影剤除去デバイス、
20、110、160 内管(内管シャフト)、
22 排出ルーメン、
23 内管遠位側開口部、
24、115 内管通孔(通孔)、
30、120、180 拡張部、
40、170 外管、
60 弁、
70 検知部、
80、130、190 固定部、
81 吸引ルーメン、
82 吸着用開口部、
83 吸着部、
112 収容部、
113、183 吸着体、
114 内管遠位側開口部、
131、191 突出部、
C 冠静脈洞、
R 右心房、
W ガイドワイヤ。
図1
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