特開2016-202553(P2016-202553A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2016-202553造影剤除去デバイスおよび造影剤除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-202553(P2016-202553A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】造影剤除去デバイスおよび造影剤除去方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20161111BHJP
   A61M 1/34 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   A61M1/36 543
   A61M1/34 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-87447(P2015-87447)
(22)【出願日】2015年4月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】清水 克彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 恵子
(72)【発明者】
【氏名】細野 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰一
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA07
4C077BB02
4C077BB03
4C077CC06
4C077DD10
4C077EE01
4C077JJ03
4C077JJ18
4C077PP12
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構成で操作が容易であり、造影剤を血管内から効果的に除去できる造影剤除去デバイスおよび造影剤除去方法を提供する。
【解決手段】造影剤を血管内から除去するための造影剤除去デバイス10であって、遠位部に遠位側ルーメン21が形成されたシャフト部20と、遠位側ルーメン21内に配置されて遠位側ルーメン21の遠位側開口部24から外部の流体を吸引可能なポンプ50と、遠位側ルーメン21内でポンプ50により加圧された流体から造影剤を選択的に回収可能な回収部30と、回収部30により造影剤を取り除かれた液体をシャフト部20から外部へ戻す返液部35と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤を血管内から除去するための造影剤除去デバイスであって、
少なくとも遠位部にルーメンが形成されたシャフト部と、
前記ルーメン内に配置されて前記ルーメンの開口部から外部の流体を吸引可能なポンプと、
前記ルーメン内で前記ポンプにより加圧された流体から造影剤を選択的に回収可能な回収部と、
前記回収部により造影剤を取り除かれた液体を前記シャフト部から外部へ戻す返液部と、を有する造影剤除去デバイス。
【請求項2】
前記ポンプは、遠心ポンプを有し、
前記回収部は、前記遠心ポンプの外側に配置される請求項1に記載の造影剤除去デバイス。
【請求項3】
前記ポンプは、前記遠心ポンプよりも前記開口部に近い側に配置される軸流ポンプを更に有する請求項2に記載の造影剤除去デバイス。
【請求項4】
前記回収部は、造影剤を吸着可能な吸着体を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の造影剤除去デバイス。
【請求項5】
前記回収部は、造影剤が通過可能であるとともに血液の通過を制限する制限膜を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の造影剤除去デバイス。
【請求項6】
造影剤を血管内から除去するための造影剤除去方法であって、
(i)遠位部に形成されるルーメン内にポンプが設けられた造影剤除去デバイスを血管内に挿入する挿入ステップと、
(ii)前記ポンプを回転させて前記ルーメン内に血液および造影剤を吸引して加圧する加圧ステップと、
(iii)加圧された血液および造影剤から造影剤を選択的に回収する回収ステップと、
(iv)血液を血管へ戻す返液ステップと、を有する造影剤除去方法。
【請求項7】
前記回収ステップにおいて、造影剤を吸着可能な吸着体に加圧された血液および造影剤を接触させることで、造影剤を前記吸着体に吸着させて回収する請求項6に記載の造影剤除去方法。
【請求項8】
前記回収ステップにおいて、造影剤が通過可能であるとともに血液の通過を制限する制限膜に加圧された血液および造影剤を接触させることで、前記制限膜に造影剤を通過させて回収する請求項6に記載の造影剤除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内に挿入して造影剤を血管内から除去するための造影剤除去デバイスおよび造影剤除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の治療方法として、冠動脈の狭窄部や閉塞部にバルーンを挿入し、バルーンを拡張させることで狭窄部や閉塞部を押し広げるように拡張し、血流を回復させる経皮的冠動脈形成術(PCI)が行われている。PCIは、冠動脈に造影剤を投与し、X線透視下で狭窄部や閉塞部を確認しながら行われる。
【0003】
ところで、腎機能が低い患者に対してPCIを行うと、造影剤の副作用により造影剤腎症に陥り、場合によっては透析が必要になる場合もある。その原因は、確定されていないが、造影剤が腎臓に流れ込み、腎血管が収縮し、腎血流量や糸球体濾過量が低下するために、腎虚血となる血管性の要因が考えられている。さらに、造影剤は尿細管細胞に対して直接的な細胞毒性を示すことも知られている。
【0004】
このため、血管内の造影剤を取り除く種々の方法が提案されている。例えば特許文献1には、PCIを行うために冠動脈に造影剤を放出した後、冠静脈を通って冠静脈洞、右心房に流れる造影剤を、右心房に挿入したデバイスにより体外へ抜き出し、フィルターなどで造影剤を除去した後、血液を体内に戻す方法が記載されている。
【0005】
また、造影剤は下肢動脈のインターベーションや経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)でも用いられており、腎臓に対する同様の毒性が問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7163520号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のデバイスは、大量の水を必要とするため、大掛かりな装置である。更に、血液を一旦体外へ抜き出し造影剤を除去した後、再び血液を体内に戻す必要があるため、非常に手間が掛かかる。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、コンパクトな構成であって操作が容易であり、造影剤を血管内から効果的に除去できる造影剤除去デバイスおよび造影剤除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する造影剤除去デバイスは、造影剤を血管内から除去するための造影剤除去デバイスであって、少なくとも遠位部にルーメンが形成されたシャフト部と、前記ルーメン内に配置されて前記ルーメンの開口部から外部の流体を吸引可能なポンプと、前記ルーメン内で前記ポンプにより加圧された流体から造影剤を選択的に回収可能な回収部と、前記回収部により造影剤を取り除かれた液体を前記シャフト部から外部へ戻す返液部と、を有する造影剤除去デバイスである。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した造影剤除去デバイスは、ルーメン内に配置されるポンプにより流体を加圧して回収部への流入を促しつつ回収部で造影剤を回収できるため、血液を一旦体外へ抜き出す必要がなく、コンパクトな構成となるとともに操作が容易となり、かつ造影剤を血管内から効果的に除去できる。
【0011】
前記ポンプは、遠心ポンプを有し、前記回収部は、前記遠心ポンプの吐出方向に配置されるようにすれば、遠心ポンプにより加圧された流体が効率よく回収部へ移動し、造影剤を効率よく回収して除去できる。
【0012】
前記ポンプは、前記遠心ポンプよりも前記開口部に近い側に配置される軸流ポンプを更に有するようにすれば、外部からルーメン内へ血液を効率よく取り込むことができる。
【0013】
前記回収部は、造影剤を吸着可能な吸着体を有するようにすれば、吸着体に造影剤を吸着させることで、造影剤を血管内から選択的に除去することができ、血液を除去することによる虚血となることを抑制できる。
【0014】
前記回収部は、造影剤が通過可能であるとともに血液の通過を制限する制限膜を有するようにすれば、制限膜に造影剤を選択的に通過させることで、造影剤を血管内から選択的に除去することができ、血液を除去することによる虚血となることを抑制できる。
【0015】
上記目的を達成する造影剤除去方法は、造影剤を血管内から除去するための造影剤除去方法であって、(i)遠位部に形成されるルーメン内にポンプが設けられた造影剤除去デバイスを血管内に挿入する挿入ステップと、(ii)前記ポンプを回転させて前記ルーメン内に血液および造影剤を吸引して加圧する加圧ステップと、(iii)加圧された血液および造影剤から造影剤を選択的に回収する回収ステップと、(iv)血液を血管へ戻す返液ステップと、を有する。上記のように構成した造影剤除去方法は、ルーメン内に配置されるポンプにより流体を加圧して造影剤の回収を促すことができるため、血液を一旦体外へ抜き出す必要がなく、コンパクトな構成となるとともに操作が容易となり、かつ造影剤を血管内から効果的に除去できる。
【0016】
前記回収ステップにおいて、造影剤を吸着可能な吸着体に加圧された血液および造影剤を接触させることで、造影剤を前記吸着体に吸着させて回収するようにすれば、造影剤を血液から選択的に除去することができ、血液を排出することによる虚血の発生を抑制できる。
【0017】
前記回収ステップにおいて、造影剤が通過可能であるとともに血液の通過を制限する制限膜に加圧された血液および造影剤を接触させることで、前記制限膜に造影剤を通過させて回収するようにすれば、造影剤を血液から選択的に除去することができ、血液を排出することによる虚血の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る造影剤除去デバイスを示す平面図である。
図2】第1実施形態に係る造影剤除去デバイスの遠位部を示す縦断面図である。
図3】第1実施形態に係る造影剤除去デバイスを右心房に配置した状態を示す概略図である。
図4】第1実施形態に係る造影剤除去デバイスにより右心房内の血液から造影剤を除去する際の状態を示す断面図である。
図5】第2実施形態に係る造影剤除去デバイスを示す平面図である。
図6】第2実施形態に係る造影剤除去デバイスの遠位部を示す縦断面図である。
図7】第2実施形態に係る造影剤除去デバイスにより右心房内の血液から造影剤を除去する際の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
<第1実施形態>
【0020】
本発明の第1実施形態に係る造影剤除去デバイス10は、経皮的冠動脈形成術(PCI)を行う際に血管へ放出された造影剤を、血管内から除去するためのデバイスである。なお、本明細書では、デバイスの血管に挿入する側を「遠位側」、操作する手元側を「近位側」と称することとする。
【0021】
造影剤除去デバイス10は、図1、2に示すように、シャフト部20と、シャフト部20の遠位部の外側に配置される回収部30と、シャフト部20の内部に回転可能に配置される駆動シャフト40と、駆動シャフト40により回転駆動されるポンプ50と、シャフト部20の近位部に連結される操作部60とを備えている。
【0022】
シャフト部20は、長尺な管体であり、内部にルーメンが形成されている。ルーメンは、遠位部にてポンプが配置される内径が大きい遠位側ルーメン21と、遠位側ルーメン21よりも近位側で駆動シャフト40が回転可能に配置される近位側ルーメン22とを備えている。シャフト部20は、遠位側ルーメン21に、回収部30へ流体を供給するための通孔23が形成されている。近位側ルーメン22の遠位部には、配置され、駆動シャフト40の回転を許容しつつ、近位方向への流体の流入を抑制するシール部材25が配置されている。
【0023】
回収部30は、シャフト部20の遠位部の外周にシャフト部20と同軸的に配置される収容管31と、収容管31の内部に設けられる造影剤を吸着可能な吸着体32とを備えている。収容管31は、遠位部および近位部がシャフト部20の外周面に固着されており、収容管31とシャフト部20の間に形成される隙間である収容空間33に、吸着体32が配置される。収容空間33の遠位部は、通孔23を介して遠位側ルーメン21と連通している。収容管31の近位部には、外部へ貫通する放出孔34が形成される返液部35が設けられる。したがって、遠位側ルーメン21から通孔23を介して収容空間33の遠位部に流体が流入すると、流体は吸着体32の隙間を通過して収容空間33の近位部に移動し、放出孔34から外部へ放出される。
【0024】
ポンプ50は、遠位側ルーメン21内の遠位側開口部24の近傍に配置される軸流ポンプ51と、遠位側ルーメン21内の軸流ポンプ51よりも近位側に配置される遠心ポンプ52を備えている。軸流ポンプ51は、回転することで遠位側開口部24から流体を吸引し、かつ流体を近位方向へ押し出す軸流羽根51Aを備えている。遠心ポンプ52は、複数の遠心羽根車55を備えており、各々の遠心羽根車55は、回転軸方向に離れて配置される2枚の回転板56と、回転板56の間に配置されて回転することで径方向外側へ流体を押し出す遠心羽根57とを備えている。遠位側の回転板56の中心側に、2枚の回転板56の間に流体を取り込む開口である吸入口58が設けられ、遠心羽根57の径方向外側に、吐出口59が設けられる。遠心羽根車55の吐出方向に、通孔23が形成されている。したがって、軸流ポンプ51を通って近位方向に流れる流体を、遠心ポンプ52によって径方向外側へ吐出し、通孔23を介して収容空間33内へ押し出すことができる。
【0025】
駆動シャフト40は、遠位側に軸流ポンプ51および遠心ポンプ52が固定されており、近位側に従動歯車62が固定されている。駆動シャフト40の近位部は、操作部60内で回転可能となっている。
【0026】
駆動シャフト40は、柔軟で、しかも近位側から作用する回転の動力を遠位側に伝達可能な特性を持ち、例えば、右左右と巻き方向を交互にしている3層コイルなどの多層コイル状の管体で構成されている。
【0027】
操作部60は、図1に示すように、ハウジング61と、駆動シャフト40に回転力を付与する駆動部63とを備えている。
【0028】
駆動部63は、駆動シャフト40の近位部に固定される従動歯車62と、従動歯車62に噛み合う駆動歯車64と、駆動歯車64が固定させる駆動源であるモータ66と、モータ66へ電力を供給する電池などのバッテリー67と、モータ66の駆動を制御するスイッチ68とを備えている。スイッチ68を入れてモータ66の回転軸65を回転させることで、駆動歯車64と噛み合う従動歯車62が回転し、駆動シャフト40が回転する。
【0029】
本実施形態において対象とする造影剤は、X線により識別されるものであって、血管内投与に利用されるものであり、例えば、分子量が約8000以下、イオン性又は非イオン性のヨウ素原子を含む化合物である。具体例を挙げると、イオプロミド、イオパミドール、イオメプロール、アミドトリゾ酸、イオヘキソール、イオタラム酸、ヨーダミド、メトリゾ酸、メトリザミド、イオキシラン等の単量体、および、イオキサグル酸、アジピオドン、イオトロクス酸、ヨードキサム酸、イオトロラン、等の二量体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
シャフト部20および収容管31の構成材料は、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好ましく使用される。また、剛性を増すために前記材料に金属のブレードやコイルを加えることも可能である。
【0031】
造影剤除去デバイス10の長さ(シャフト部20の最遠位部から操作部60までの長さ)は、特に限定されないが、例えば、1000mm〜2000mmが好ましい。シャフト部20の外径は、特に限定されないが、例えば、1.5mm〜4.0mmが好ましい。
【0032】
シャフト部20および収容管31は、材料中にX線造影性材料が含まれて形成されていてもよい。これにより、X線透視下で位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、モリブデン、タングステン、タンタル、パラジウムあるいはそれらの合金等が好適である。
【0033】
また、シャフト部20および収容管31のいずれかの位置に、X線造影性材料からなるマーカーが配置されてもよい。マーカーは、X線造影性材料により形成されるワイヤをシャフト部20や収容管31の外面に巻きつけること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成してシャフト部20や収容管31の外面にかしめる又は接着することにより取り付けられる。
【0034】
ハウジング61の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の硬質の樹脂等が使用できる。
【0035】
次に、第1実施形態に係る造影剤除去デバイス10の使用方法を、PCIを行う際に冠動脈に放出される造影剤を右心房から除去する場合を例として説明する。
説明する。
【0036】
まず、使用する造影剤除去デバイス10のプライミングを行い、シャフト部20、収容管31の内部を生理食塩水で置換する。
【0037】
次に、大腿静脈または頸部静脈にイントロデューサシース(図示せず)を挿入する。次に、イントロデューサシースを介してガイドワイヤ(図示せず)を静脈内へ挿入する。なお、イントロデューサシースを設置する位置は、造影剤除去デバイス10を右心房Rへアクセス可能であれば、限定されない。
【0038】
次に、ガイドワイヤに沿ってガイディングカテーテル70静脈内に挿入し、ガイディングカテーテル70を右心房Rへ到達させる。次に、ガイドワイヤを抜去し、図3に示すように、ガイディングカテーテル70を介して造影剤除去デバイス10を右心房Rまで到達させる(挿入ステップ)。なお、造影剤除去デバイス10の遠位部を、右心房Rから冠静脈洞Cへ挿入してもよい。
【0039】
また、ガイドワイヤやガイディングカテーテルを介さずに、シースより造影剤除去デバイス10を直接挿入して、右心房Rへ到達させてもいい。
【0040】
次に、PCIを行うために、冠動脈まで挿入された別のカテーテルにより、造影剤を冠動脈へ放出する。冠動脈へ放出された造影剤は、冠静脈を通って冠静脈洞C、右心房Rへ到達する。
【0041】
次に、スイッチ68を操作してモータ66を回転させると、駆動歯車64から従動歯車62へ回転力が伝わり、駆動シャフト40が回転する。駆動シャフト40が回転すると、軸流ポンプ51により、血液および造影剤が、遠位側ルーメン21内に吸引されて加圧される(加圧ステップ)。遠位側ルーメン21内に吸引された血液および造影剤は、近位方向へ移動し、軸方向に並ぶいずれかの遠心ポンプ52の吸入口58に吸い込まれ、吐出口59から径方向外側へ吐出される。吐出された血液および造影剤は、通孔23を介して回収部30の収容空間33内へ移動する。
【0042】
収容空間33内へ血液および造影剤が移動すると、収容空間33内の吸着体32に造影剤が吸着され(回収ステップ)、残りの血液は、吸着体32の隙間を通過して収容空間33の近位部に移動し、放出孔34から右心房内へ戻される(返液ステップ)。
【0043】
PCIの手技が完了した後、スイッチ68を操作してモータ66を停止させる。これにより、軸流ポンプ51および遠心ポンプ52の回転が停止され、遠位側ルーメン21内への血液および造影剤の吸引が停止される。
【0044】
この後、造影剤除去デバイス10をイントロデューサシースから抜去し、かつガイディングカテーテル70およびイントロデューサシースを静脈Vから抜去して、処置が完了する。
【0045】
以上のように、第1実施形態に係る造影剤除去デバイス10は、少なくとも遠位部に遠位側ルーメン21(ルーメン)が形成されたシャフト部20と、前記遠位側ルーメン21内に配置されて前記遠位側ルーメン21の遠位側開口部24(開口部)から外部の流体を吸引可能なポンプ50と、遠位側ルーメン21内でポンプ50により加圧された流体から造影剤を選択的に回収可能な回収部30と、前記回収部30により造影剤を取り除かれた液体を前記シャフト部20から外部へ戻す返液部35と、を有する。上記のように構成した造影剤除去デバイス10は、遠位側ルーメン21内のポンプ50により血液および造影剤を積極的に吸引しつつ加圧して、回収部30による造影剤の回収を促し、残りの血液を返液部35から血管内へ戻すことができる。このため、造影剤除去デバイス10は、血液を体外へ抜き出す必要がなく、構成がコンパクトとなるとともに操作が容易となり、かつ造影剤を血管内から効果的に除去できる。そして、造影剤を血管内から効果的に除去できることで、造影剤による腎臓等の生体への影響を低減することができる。
【0046】
また、ポンプ50は、遠心ポンプ57を有し、回収部30は、遠心ポンプ57の吐出方向に配置されるため、遠心ポンプ57により加圧された流体が効率よく回収部30へ移動し、造影剤を効率よく回収して除去できる。
【0047】
また、ポンプ50は、遠心ポンプ57よりも遠位側開口部24(開口部)に近い側に配置される軸流ポンプ51を有するため、外部から遠位側ルーメン21内へ血液を効率よく取り込むことができる。
【0048】
また、回収部30は、造影剤を吸着可能な吸着体32を有するため、吸着体32に造影剤を吸着させることで、造影剤を血管内から選択的に除去することができ、血液を除去することによる虚血の発生を抑制しつつ、造影剤を効果的に除去できる。
【0049】
また、本発明は、造影剤を血管内から除去するための造影剤除去方法をも含む。当該造影剤除去方法は、(i)遠位部に形成されるルーメン内にポンプが設けられた造影剤除去デバイスを血管内に挿入する挿入ステップと、(ii)前記ポンプを回転させて前記ルーメン内に血液および造影剤を吸引して加圧する加圧ステップと、(iii)加圧された血液および造影剤から造影剤を選択的に回収する回収ステップと、(iv)血液を血管へ戻す返液ステップと、を有する。上記のように構成した造影剤除去方法は、ルーメン内に配置されるポンプにより流体を加圧して造影剤の回収を促すことができるため、血液を一旦体外へ抜き出す必要がなく、コンパクトな構成となるとともに操作が容易となり、かつ造影剤を血管内から効果的に除去できる。
【0050】
造影剤除去方法は、前記回収ステップにおいて、造影剤を吸着可能な吸着体に加圧された血液および造影剤を接触させることで、造影剤を前記吸着体に吸着させて回収する。このように、吸着体に造影剤を吸着させることで、造影剤を血液から選択的に回収することができ、血液を排出することによる虚血の発生を抑制できる。
<第2実施形態>
【0051】
第2実施形態に係る造影剤除去デバイス100は、吸着体が設けられない点で、第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0052】
造影剤除去デバイス100は、図5、6に示すように、シャフト部120と、シャフト部120の遠位部の外側に配置される回収部130と、シャフト部120の内部に回転可能に配置される駆動シャフト40と、駆動シャフト40により回転駆動されるポンプ50と、シャフト部20の近位部に連結される操作部160とを備えている。
【0053】
シャフト部120は、長尺な管体であり、内部にルーメンが形成されている。ルーメンは、遠位部にてポンプが配置される内径が大きい遠位側ルーメン121と、遠位側ルーメン121よりも近位側で駆動シャフト40が回転可能に配置される近位側ルーメン122とを備えている。シャフト部120は、遠位側ルーメン121から回収部130へ流体を供給するための通孔123が形成される。通孔123は、遠心羽根車55の吐出方向に形成されている。シャフト部120の通孔123よりも近位部には、遠位側ルーメン121から外面へ貫通する放出孔124が形成される返液部125が設けられている。放出孔124は、遠心羽根車55よりも近位側に形成されている。
【0054】
回収部130は、シャフト部120の遠位部の外周にシャフト部120を囲むように配置される収容管131と、収容管131からシャフト部120に沿って近位方向へ操作部160まで延びる吸引管132と、通孔123を覆う制限膜135とを備えている。収容管131とシャフト部120の間に形成される隙間である収容空間133は、吸引管132の内部に形成される排出ルーメン134と連通している。したがって、遠位側ルーメン121から通孔123を介して収容空間133に流体が流入すると、流体は排出ルーメン134を通って操作部160の排出ポート162から排出される。
【0055】
制限膜135は、加圧された血液および造影剤のうち、造影剤を選択的に通過させ、血液の少なくとも一部の通過を制限する。制限膜135は、例えば、穴径が0.001〜0.030mmの複数の貫通孔が形成された膜である。制限膜135の構成材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタラートの不織布などを好適に使用できる。
【0056】
操作部160は、ハウジング161と、排出ルーメン134と連通する排出ポート162と、駆動シャフト40に回転力を付与する駆動部63とを備えている。
【0057】
次に、第2実施形態に係る造影剤除去デバイス100の使用方法を、PCIを行う際に冠動脈に放出される造影剤を右心房から除去する場合を例として説明する。
説明する。
【0058】
まず、使用する造影剤除去デバイス100のプライミングを行い、内部を生理食塩水で置換する。
【0059】
次に、大腿静脈または頸部静脈にイントロデューサシース(図示せず)を挿入する。次に、イントロデューサシースを介してガイドワイヤ(図示せず)を静脈内へ挿入する。なお、イントロデューサシースを設置する位置は、造影剤除去デバイス100を右心房Rへアクセス可能であれば、限定されない。
【0060】
次に、ガイドワイヤに沿ってガイディングカテーテル70を静脈内に挿入し、ガイディングカテーテル70を右心房Rへ到達させる。次に、ガイドワイヤを抜去し、図7に示すように、ガイディングカテーテル70を介して造影剤除去デバイス10を右心房Rまで到達させる(挿入ステップ)。なお、造影剤除去デバイス100の遠位部を、右心房Rから冠静脈洞Cへ挿入してもよい。
【0061】
また、ガイドワイヤやガイディングカテーテルを介さずに、シースより造影剤除去デバイス10を直接挿入して、右心房Rへ到達させてもいい。
【0062】
次に、PCIを行うために、冠動脈まで挿入された別のカテーテルにより、造影剤を冠動脈へ放出する。冠動脈へ放出された造影剤は、冠静脈を通って冠静脈洞C、右心房Rへ到達する。
【0063】
次に、スイッチ68を操作してモータ66を回転させると、駆動歯車64から従動歯車62へ回転力が伝わり、駆動シャフト40が回転する。駆動シャフト40が回転すると、軸流ポンプ51により、血液および造影剤が、遠位側ルーメン121内に吸引されて加圧される(加圧ステップ)。遠位側ルーメン121内に吸引された血液および造影剤は、近位方向へ移動し、軸方向に並ぶいずれかの遠心ポンプ52の吸入口58に吸い込まれ、吐出口59から径方向外側へ吐出される。吐出された血液および造影剤は、通孔123に配置される制限膜135に接触する。制限膜135は、加圧された血液および造影剤のうち、造影剤を選択的に通過させ、血液の少なくとも一部は、通過を制限する。したがって、造影剤が制限膜135を通過し、血液の少なくとも一部は、遠位側ルーメン121を近位方向へ移動する。制限膜135を通過して収容空間133内に移動した造影剤は、排出ルーメン134を通って操作部160の排出ポート162から体外へ排出される(回収ステップ)。遠位側ルーメン121を近位方向へ移動した血液は、放出孔124を通って右心房R内へ戻される(返液ステップ)。
【0064】
PCIの手技が完了した後、スイッチ68を操作してモータ66を停止させる。これにより、軸流ポンプ51および遠心ポンプ52の回転が停止され、遠位側ルーメン121内への血液および造影剤の吸引が停止される。
【0065】
この後、造影剤除去デバイス100をイントロデューサシースから抜去し、かつガイディングカテーテル70およびイントロデューサシースを静脈Vから抜去して、処置が完了する。
【0066】
以上のように、第2実施形態に係る造影剤除去デバイス100は、回収部130が、造影剤が通過可能であるとともに血液の通過を制限する制限膜135を有するため、制限膜135に造影剤を選択的に通過させることで、造影剤を血管内から選択的に回収でき、血液を除去することによる虚血の発生を抑制しつつ、造影剤を効果的に除去できる。
【0067】
また、造影剤を血管内から除去するための造影剤除去方法は、回収ステップにおいて、造影剤が通過可能であるとともに血液の通過を制限する制限膜に加圧された血液および造影剤を接触させることで、前記制限膜に造影剤を通過させて回収する。このように、制限膜に造影剤を選択的に通過させることで、造影剤を血管内から選択的に回収でき、血液を除去することによる虚血の発生を抑制できる。
【0068】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、第1、第2実施形態に係る造影剤除去デバイスに、ガイドワイヤルーメンが形成されてもよい。
【0069】
また、造影剤を投与する位置は、冠動脈に限定されない。例えば、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)における心臓の左室造影や大動脈造影もこれに含まれる。
【0070】
また、第1、第2実施形態において、ポンプ50は、軸流ポンプ51および遠心ポンプ52を備えているが、いずれか一方のみが設けられる構成であってもよい。また、軸流ポンプおよび遠心ポンプの遠位ルーメン内における位置は、特に限定さない。
【0071】
また、第1、第2実施形態に係る造影剤除去デバイスにより血液および造影剤を吸引する位置は、造影剤が流れる可能性がある位置であれば、特に限定されない。
【符号の説明】
【0072】
10、100 造影剤除去デバイス、
20、120 シャフト部、
21、121 遠位側ルーメン(ルーメン)、
22 近位側ルーメン、
23 通孔、
24 遠位側開口部(開口部)、
30、130 回収部、
32 吸着体、
35、125 返液部、
40 駆動シャフト、
50 ポンプ、
51 軸流ポンプ、
52 遠心ポンプ、
55 遠心羽根車、
57 遠心羽根、
100 造影剤除去デバイス、
120 シャフト部、
121 遠位側ルーメン、
122 近位側ルーメン、
123 通孔、
134 排出ルーメン、
135 制限膜、
C 冠静脈洞、
R 右心房。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7