特開2016-202554(P2016-202554A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-202554(P2016-202554A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】医療デバイスおよび処置方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20161111BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20161111BHJP
   A61M 25/098 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   A61M25/00 540
   A61M25/14 518
   A61M25/00 560
   A61M25/098
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-87448(P2015-87448)
(22)【出願日】2015年4月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】清水 克彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 恵子
(72)【発明者】
【氏名】細野 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰一
【テーマコード(参考)】
4C167
【Fターム(参考)】
4C167AA02
4C167AA58
4C167BB02
4C167BB03
4C167BB10
4C167BB11
4C167BB12
4C167BB15
4C167BB19
4C167BB26
4C167BB31
4C167BB37
4C167BB38
4C167BB39
4C167BB40
4C167BB43
4C167CC08
4C167CC26
4C167GG03
4C167GG04
4C167GG06
4C167GG07
4C167GG08
4C167GG09
4C167GG21
4C167GG22
4C167GG23
4C167GG24
4C167GG34
4C167HH08
(57)【要約】
【課題】血管内に放出した造影剤の腎臓への流入を効果的に抑制できる医療デバイスおよび処置方法を提供する。
【解決手段】腎臓への造影剤の流入を抑制するための医療デバイス10であって、長尺な内管20と、内管20の遠位部の軸心を挟む両側で近位方向へ流体を放出可能な放出部60と、を有し、放出部60は、一方向へ並ぶ複数の放出孔63を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎臓への造影剤の流入を抑制するための医療デバイスであって、
長尺なシャフト部と、
前記シャフト部の遠位部の軸心を挟む両側で前記軸心と直交する方向または近位方向へ流体を放出可能な放出部と、を有し、
前記放出部は、一方向へ並ぶ複数の放出孔またはスリット状に一方向へ長く形成される放出孔を有する医療デバイス。
【請求項2】
前記シャフト部は、径方向外側へ拡張可能な拡張部を有する請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記放出部は、前記拡張部に配置される請求項2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
造影剤を検知する検知部を更に有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記シャフト部は、遠位部にX線造影マーカーを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
腎臓への造影剤の流入を抑制するための処置方法であって、
(i)長尺なシャフト部の遠位部に流体を放出可能な放出部が設けられる医療デバイスを下行大動脈に挿入する挿入ステップと、
(ii)前記放出部を腎動脈の入口部よりも上流側に配置する配置ステップと、
(iii)上流側から流れる造影剤の前記腎動脈の入口部への到達に合わせて前記放出部から流体を前記入口部を覆うように膜状に放出する放出ステップと、を有する処置方法。
【請求項7】
前記放出ステップにおいて、前記シャフト部の遠位部の軸心を挟む両側で前記軸心と直交する方向または近位方向へ前記放出部から流体を放出する請求項6に記載の処置方法。
【請求項8】
前記配置ステップにおいて、前記シャフト部の遠位部から径方向外側の両方向へ拡張可能な拡張部を拡張させて下行大動脈に接触させて前記シャフト部の位置を固定する請求項6または7に記載の処置方法。
【請求項9】
前記配置ステップにおいて、前記拡張部に配置される前記放出部から流体を放出する請求項8に記載の処置方法。
【請求項10】
前記放出ステップにおいて、前記医療デバイスに設けられる造影剤を検知可能な検知部により造影剤を検知した際に前記放出部から流体を放出する請求項6〜9のいずれか1項に記載の処置方法。
【請求項11】
前記配置ステップにおいて、前記医療デバイスの遠位部に設けられるX線造影マーカーの位置をX線透視下で確認しつつ前記放出部を配置する6〜10のいずれか1項に記載の処置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内に放出した造影剤の腎臓への流入を抑制するための医療デバイスおよび処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の治療方法として、冠動脈の狭窄部や閉塞部にバルーンを挿入し、バルーンを拡張させることで狭窄部や閉塞部を押し広げるように拡張し、血流を回復させる経皮的冠動脈形成術(PCI)が行われている。PCIは、冠動脈に造影剤を投与し、X線透視下で狭窄部や閉塞部を確認しながら行われる。
【0003】
ところで、腎機能が低い患者に対してPCIを行うと、造影剤の副作用により造影剤腎症に陥り、場合によっては透析が必要になる場合もある。その原因は、確定されていないが、造影剤が腎臓に流れ込み、腎血管が収縮し、腎血流量や糸球体濾過量が低下するために、腎虚血となる血管性の要因が考えられている。さらに、造影剤は尿細管細胞に対して直接的な細胞毒性を示すことも知られている。
【0004】
このため、造影剤の腎臓への流入を抑制するための種々の方法が提案されている。例えば特許文献1には、造影剤を投与した後、左右の腎動脈に潅流を供給し、造影剤の腎臓への流入を抑制する方法が記載されている。
【0005】
また、造影剤は下肢動脈のインターベーションや経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)でも用いられており、腎臓に対する同様の毒性が問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0025037号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のデバイスは、腎動脈へ潅流を供給するが、腎動脈への造影剤の流入を阻害するものではないため、潅流とともに造影剤も腎動脈へ流入する可能性がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、血管内に放出した造影剤の腎臓への流入を効果的に抑制できる医療デバイスおよび処置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する医療デバイスは、腎臓への造影剤の流入を抑制するための医療デバイスであって、長尺なシャフト部と、前記シャフト部の遠位部の軸心を挟む両側で前記軸心と直交する方向または近位方向へ流体を放出可能な放出部と、を有し、前記放出部は、一方向へ並ぶ複数の放出孔、またはスリット状に一方向へ長く形成される放出孔を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した医療デバイスは、一方向へ並ぶ複数の放出孔、またはスリット状に一方向へ長く形成される放出孔から流体を放出することで、放出された流体が膜状となる。そして、シャフト部の軸心を挟む両側で軸心と直交する方向または近位方向へ膜状の流体を放出することで、造影剤を流体により希釈させつつ、シャフト部が挿入される下向大動脈から2つの腎動脈の両方の入口部を塞ぐように流体を流すことが可能となり、腎動脈への造影剤の流入を効果的に抑制できる。腎動脈への造影剤の流入を抑制することで、造影剤の腎臓への影響を低減できる。
【0011】
前記シャフト部は、径方向外側へ拡張可能な拡張部を有するようにすれば、拡張部を血管内壁面に接触させてシャフト部の位置を固定でき、流体の放出方向を安定させて腎動脈への造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0012】
前記放出部は、前記拡張部に配置されるようにすれば、血管壁に近い位置から血管壁に沿うように流体を放出することが可能となり、膜状となる流体により腎動脈への造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0013】
前記医療デバイスは、造影剤を検知する検知部を更に有するようにすれば、造影剤を検知するタイミングで流体を放出することができ、腎動脈への造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0014】
前記シャフト部は、遠位部にX線造影マーカーを有するようにすれば、X線透視下でシャフト部を適切な位置に位置決めでき、望ましい位置へ流体を放出することが可能となり、腎動脈への造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0015】
上記目的を達成する処置方法は、腎臓への造影剤の流入を抑制するための処置方法であって、(i)長尺なシャフト部の遠位部に流体を放出可能な放出部が設けられる医療デバイスを下行大動脈に挿入する挿入ステップと、(ii)前記放出部を腎動脈の入口部よりも上流側に配置する配置ステップと、(iii)上流側から流れる造影剤の前記腎動脈の入口部への到達に合わせて前記放出部から流体を前記入口部を覆うように膜状に放出する放出ステップと、を有する。当該処置方法は、腎動脈の入口部を覆うように膜状に流体を放出するため、造影剤を流体により希釈させつつ、造影剤の腎動脈への流入を効果的に抑制できる。腎動脈への造影剤の流入を抑制することで、造影剤の腎臓への影響を低減できる。
【0016】
前記放出ステップにおいて、前記シャフト部の遠位部の軸心を挟む両側で前記軸心と直交する方向または近位方向へ前記放出部から流体を放出するようにすれば、下向大動脈から分岐する2つの腎動脈の両方の入口部を塞ぐように膜状の流れを発生させることが可能となり、腎動脈への造影剤の流入を抑制できる。
【0017】
前記配置ステップにおいて、前記シャフト部の遠位部から径方向外側の両方向へ拡張可能な拡張部を拡張させて下行大動脈に接触させて前記シャフト部の位置を固定するようにすれば、シャフト部の位置を固定することで、流体の放出方向を安定させて腎動脈への造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0018】
前記配置ステップにおいて、前記拡張部に配置される前記放出部から流体を放出するようにすれば、血管壁に近い位置から血管壁に沿うように流体を放出することが可能となり、膜状となる流体により腎動脈への造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0019】
前記放出ステップにおいて、前記医療デバイスに設けられる造影剤を検知可能な検知部により造影剤を検知した際に前記放出部から流体を放出するようにすれば、造影剤を検知するタイミングで流体を放出でき、腎動脈への造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0020】
前記配置ステップにおいて、前記医療デバイスの遠位部に設けられるX線造影マーカーの位置をX線透視下で確認しつつ前記放出部を配置するようにすれば、放出部Xを適切な位置に配置でき、望ましい位置へ流体を放出することが可能となり、腎動脈への造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る医療デバイスを示す平面図である。
図2】第1実施形態に係る医療デバイスの拡張部を拡張させた状態を示す断面図である。
図3】第1実施形態に係る医療デバイスの拡張部を収縮させた状態を示す断面図である。
図4】第1実施形態に係る医療デバイスを下行大動脈に挿入した状態を示す断面図である。
図5】第1実施形態に係る医療デバイスから生理食塩水を放出している状態を示す断面図である。
図6】制御部における制御の流れを示すフローチャートである。
図7】第2実施形態に係る医療デバイスを示す平面図である。
図8】第2実施形態に係る医療デバイスの遠位部を示す平面図である。
図9】第2実施形態に係る医療デバイスの遠位部を示す断面図である。
図10】第2実施形態に係る医療デバイスから生理食塩水を放出している状態を示す断面図である。
図11】第2実施形態に係る医療デバイスから生理食塩水を放出している状態を示す概略図である。
図12】第2実施形態に係る医療デバイスから生理食塩水を腎動脈へ向かって放出している状態を示す概略図である。
図13】第2実施形態に係る医療デバイスの第1変形例を示す平面図である。す断面図である。
図14】第2実施形態に係る医療デバイスの第2変形例を示す平面図である。す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。本明細書では、デバイスの血管に挿入する側を「遠位側」、操作する手元側を「近位側」と称することとする。
<第1実施形態>
【0023】
本発明の第1実施形態に係る医療デバイス10は、血管へ放出された造影剤が、濃度の高い状態で下行大動脈から腎動脈へ流入することを抑制するためのデバイスである。
【0024】
医療デバイス10は、図1、2に示すように、内管20(シャフト部)と、内管20を内部に収容可能な外管40と、内管20の遠位部にて拡張および収縮可能な拡張部30と、流体を放出可能な放出部60と、造影剤を検知可能な検知部70と、拡張部30を操作するための操作部50とを備えている。
【0025】
内管20は、長尺な管体であり、内部にガイドワイヤWを挿入するための挿入用ルーメン21と、検知部70が配置される配線用ルーメン22とが形成されている。挿入用ルーメン21および配線用ルーメン22は、内管20の遠位側端部で開口している。内管20の遠位部には、X線造影性を備えるX線造影マーカー23が配置される。内管20の遠位部の外周面には、拡張部30が連結されている。内管20の近位部は、操作部50を構成する第2操作部52に連結されている。
【0026】
外管40は、内管20を収容する長尺な管体であり、内管20に対して軸方向へ相対的に移動可能となっている。外管40は、遠位側に形成される外管開口部41で開口しており、外管40の近位部は、操作部50を構成する第1操作部51に連結されている。
【0027】
拡張部30は、内管20の遠位部の外周面に連結され、弾性的に変形可能な線材により複数の隙間を有するように網状に形成された線材部31を備えている。拡張部30は、内管20の遠位部から遠位方向へ拡がるように形成される。拡張部30は、操作部50を操作して内管20を外管40に対して相対的に近位方向へ移動させることで、図3に示すように、弾性的に変形して収縮しつつ、外管開口部41から外管40内に収容される。また、拡張部30は、操作部50を操作して内管20を外管40に対して相対的に遠位方向へ移動させることで、図1、2に示すように、外管40から遠位方向へ突出し、内管20の遠位部から径方向外側へ拡がるように弾性的に拡張可能である。
【0028】
検知部70は、拡張部30に固定されるセンサ71と、操作部50から配線用ルーメン22内をセンサ71まで延在する信号ケーブル72とを備えている。センサ71の構成は、造影剤を検知可能なセンサであれば限定されず、例えば、超音波センサ、赤外線センサ、光センサ、温度センサ、または粘度センサである。本実施形態において使用される造影剤は、X線により識別されるものであって、血管内投与に利用されるものであり、例えば、分子量が約8000以下、イオン性又は非イオン性のヨウ素原子を含む化合物である。具体例を挙げると、イオプロミド、イオパミドール、イオメプロール、アミドトリゾ酸、イオヘキソール、イオタラム酸、ヨーダミド、メトリゾ酸、メトリザミド、イオキシラン等の単量体、および、イオキサグル酸、アジピオドン、イオトロクス酸、ヨードキサム酸、イオトロラン、等の二量体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
放出部60は、拡張部30に配置されて流体を放出する放出管61と、放出管61へ流体を供給する供給管62とを備えている。放出管61は、拡張部30の外周面に略360度巻回するように拡張部30に固定されている。放出管61は、一端が供給管62と連通し、他端が閉じた構造となっている。放出管61は、巻回する方向(内管20の周方向)に沿って複数の放出孔63が並んで形成されている。放出孔63は、放出管61の内面から外面へ貫通する孔であり、全てが近位方向へ向かって開口している。複数の放出孔63は、一方向(巻回の方向)に並んで形成されているため、放出孔63から流体を放出すると、各々の放出孔63から近位方向へ放出される流体が繋がり、内管20の外周面を囲む膜状の壁となる。放出管61は、柔軟に変形可能であり、拡張部30の収縮によって拡張部30に追従して変形し、外管40の内部に収容可能である。
【0030】
供給管62は、内管20および拡張部30の外面に沿って軸方向へ延在する管体であり、内部に供給用ルーメン64が形成されている。供給管62の供給用ルーメン64は、遠位部が放出管61の内腔と連通している。
【0031】
内管20、外管40および供給管62の構成材料は、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好ましく使用される。また、剛性を増すために前記材料に金属のブレードやコイルを加えることも可能である。
【0032】
放出管61の構成材料は、柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴムなどが好適に使用できる。
【0033】
線材部31の構成材料は、弾性的に変形可能である材質であることが好ましく、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンなどの金属、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。その中でも、特に、形状記憶合金が好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系などが好適に使用できる。
【0034】
医療デバイス10の長さ(拡張部30の最遠位部から操作部50までの長さ)は、特に限定されないが、例えば、500mm〜1500mmが好ましい。外管40の外径は、特に限定されないが、例えば、3.0mm〜5.0mmが好ましい。内管20の外径は、特に限定されないが、例えば、2.0mm〜4.0mmが好ましい。拡張部30が拡張した状態における拡張部30の最大外径は、患者の下行大動脈における腎動脈入口部よりも上流側の外径よりも大きければ、特に限定されないが、例えば、20mm〜40mmが好ましい。
【0035】
X線造影マーカー23は、X線造影性材料により形成されるワイヤを外面に巻きつけること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成して外面にかしめる又は接着することにより取り付けられる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、モリブデン、タングステン、タンタル、パラジウムあるいはそれらの合金等が好適である。なお、X線造影マーカーは、内管20ではなく拡張部30、外管40または放出部60に設けられてもよい。
【0036】
操作部50は、外管40の近位側端部が連結される第1操作部51と、内管20の近位側端部が連結される第2操作部52とを備えている。第1操作部51は、内管20が軸方向へ移動可能に貫通している。
【0037】
第2操作部52は、内管20の挿入用ルーメン21と連通する挿入用ポート53と、供給管62の供給用ルーメン64と連通する供給用ポート56が形成されている。また、第2操作部52は、信号ケーブル72と電気的に接続される接続ケーブル57が導出されている。接続ケーブル57は、センサ71からの信号を受けて造影剤の濃度を検出する検出装置90に接続可能である。検出装置90は、制御部92に接続されており、検出装置90で検出された造影剤の濃度の情報が、制御部92へ送信される。
【0038】
挿入用ポート53は、ガイドワイヤWを挿入可能である。供給用ポート56は、供給管62を介して放出管61へ流体を供給するための流体供給装置91に接続可能である。流体供給装置91は、例えばパワーインジェクタである。流体供給装置91は、制御部92により制御されており、したがって、放出部60への流体の供給を自動で制御できる。制御部92は、例えばコンピュータにより構成される。流体供給装置91により供給する流体は、血管内へ放出可能な流体であれば、特に限定されないが、例えば、生理食塩水、炭酸ガス等である。
【0039】
第1操作部51および第2操作部52の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の硬質の樹脂等が好適に使用できる。
【0040】
次に、第1実施形態に係る医療デバイス10の使用方法を、図6に示す制御部のフローチャートを参照しつつ説明する。ここでは、PCIを行う際に冠動脈に放出された造影剤が、下行大動脈Aから腎動脈Rへ流入することを抑制する場合を例として説明する。放出部60から放出する流体は、生理食塩水である。
【0041】
まず、使用する医療デバイス10のプライミングを行い、内部を生理食塩水で置換する。この初期状態において、図3に示すように、拡張部30および放出管61は外管40内に収容されて収縮している。そして、供給用ポート56に流体供給装置91を接続し、接続ケーブル57を検出装置90に接続する(図1を参照)。
【0042】
次に、大腿動脈にイントロデューサシース(図示せず)を挿入する。次に、イントロデューサシースを介してガイドワイヤWを動脈内へ挿入する。なお、イントロデューサシースを設置する位置は、医療デバイス10を下行大動脈Aへアクセス可能であれば、限定されない。
【0043】
次に、ガイドワイヤWを下行大動脈Aにおける腎動脈Rの入口部Oよりも遠位側、すなわち心臓に近い上流側に到達させる。この後、準備した医療デバイス10の挿入用ルーメン21にガイドワイヤWを挿入し、医療デバイス10をガイドワイヤWに沿って動脈内へ挿入する。次に、ガイドワイヤWに沿って医療デバイス10を押し進め、図4に示すように、医療デバイス10の遠位部を、下行大動脈Aにおける腎動脈Rの入口部Oよりも遠位側に到達させる(挿入ステップ)。
【0044】
次に、X線造影マーカー23の位置をX線透視下で監視しつつ、第1操作部51を第2操作部52に対して近位方向へ移動させ、または第2操作部52を第1操作部51に対して遠位方向へ移動させると、図5に示すように、放出部60が腎動脈Rの入口部Oよりも上流側に位置した状態で、拡張部30が外管40から遠位方向へ移動して拡張し、下行大動脈Aの内壁面に接触する(配置ステップ)。拡張部30が拡張すると、下行大動脈Aを流れる血液は、線材部31の隙間を通って流れる。拡張部30が拡張すると、拡張部30の外周面に固定されている放出管61も拡張し、下行大動脈Aの内壁面に近接する。
【0045】
次に、センサ71からの信号によって検出装置90により造影剤の濃度が検出される。検出装置90からの信号は、制御部92に入力され、造影剤の濃度が予め設定した閾値以下であるかが判別される(ステップS1)。造影剤の濃度が予め設定した閾値以下である場合には、流体供給装置からの生理食塩水の供給が開始されない。
【0046】
次に、PCIのために、橈骨動脈等から動脈内へ挿入された別のカテーテルから、造影剤を冠動脈へ放出する。なお、別のカテーテルは、下行大動脈Aの腎動脈Rの入口部Oの近傍を通過しないため、医療デバイス10と位置が重ならない。冠動脈へ放出された造影剤は、冠静脈を通って冠静脈洞へ到達し、更に右心房から心臓内を通って下行大動脈Aへ到達する。センサ71からの信号によって検出装置90により検出される造影剤の濃度が予め設定された閾値を超えると、検出装置90から信号を受けた制御部92が流体供給装置91を自動で制御し、供給用ポート56および供給用ルーメン64を介して放出管61へ生理食塩水を供給する(ステップS2)。放出管61へ供給された生理食塩水は、一方向(巻回の方向、シャフト部の周方向)に並ぶ複数の放出孔63から放出され、各々の放出孔63から近位方向へ放出される流体が繋がり、下行大動脈Aの内壁面に沿って膜状の壁となって流れ、腎動脈Rの入口部Oを覆う。このとき、放出孔63が内管20(シャフト部)の周方向に並んでいることで、生理食塩水の膜状の流れが、血管壁に沿うように形成されやすい。これにより、下行大動脈Aを流れる造影剤の腎動脈Rへの流入が抑制されるとともに、濃度が高い造影剤が生理食塩水によって薄められる。このため、腎動脈Rを通って腎臓へ到達する血液中の造影剤の量および濃度が減少し、腎臓への造影剤の影響を低減できる。そして、拡張部30が血管内壁面に接触して内管20の位置が固定されているため、生理食塩水の放出方向が安定し、腎動脈Rへの造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0047】
そして、放出孔63が全周的に並んで設けられていることから、膜状の流れも全周的に形成されるため、医療デバイス10の回転方向の位置を調節する必要がなく、操作が容易である。なお、放出孔63が全周的に並んで設けられても、血液および造影剤は、全周的に形成される膜状の流れの内側を流れることができるため、血液および造影剤の下肢動脈へ向かう流れは阻害されない。
【0048】
センサ71からの信号によって検出装置90により検出される造影剤の濃度が閾値以下であるかが常に判別され(ステップS3)、造影剤の濃度が閾値以下となると、検出装置90から信号を受けた制御部92が流体供給装置91を自動で制御し、生理食塩水の供給を停止する(ステップS4)。これにより、放出孔63からの生理食塩水の放出が停止され、造影剤をほとんど含まない下行大動脈A内の血液が、生理食塩水により妨げられることなく腎動脈Rへ流入可能となる。
【0049】
そして、造影剤の冠動脈への投与に応じて医療デバイス10が作動して、血液の造影剤の濃度が閾値を超える場合にのみ、放出孔63から生理食塩水を放出し、造影剤の腎動脈Rへの流入を抑制する。
【0050】
PCIの手技が完了した後、流体供給装置91および検出装置90を停止させる(ステップS5)。この後、第1操作部51を第2操作部52に対して遠位方向へ移動させ、または第2操作部52を第1操作部51に対して近位方向へ移動させると、図4に示すように、拡張部30および放出管61が外管40内に収容されて収縮する(収縮ステップ)。
【0051】
この後、医療デバイス10およびガイドワイヤWをイントロデューサシースから抜去し、かつイントロデューサシースを静脈Vから抜去して、処置が完了する。
【0052】
以上のように、第1実施形態に係る医療デバイス10は、腎臓への造影剤の流入を抑制するための医療デバイス10であって、長尺な内管20(シャフト部)と、内管20の遠位部の軸心を挟む両側で近位方向へ流体を放出可能な放出部60と、を有し、放出部60は、一方向へ並ぶ複数の放出孔63を有する。このように構成した医療デバイス10は、一方向へ並ぶ複数の放出孔63から流体を放出することで、流体を膜状の壁として放出できる。そして、内管20の軸心を挟む両側で膜状の流体を放出することで、内管20が挿入された下行大動脈Aから分岐する2つの腎動脈Rの両方の入口部Oを塞ぐように流体を流すことが可能となり、腎動脈Rへの造影剤の流入を効果的に抑制でき、かつ造影剤を希釈できる。このため、造影剤の腎臓への影響を低減できる。また、腎動脈の内皮には、医療デバイス10が接触しないため、腎動脈の狭窄を抑制できる。なお、本実施形態における近位方向への流れとは、厳密に内管20(シャフト部)の軸心と平行な方向の流れである
【0053】
必要はなく、内管20(シャフト部)の軸心と直交する方向(血管壁へ向かう方向)よりも近位側へ傾いている流れを意味する。
【0054】
また、内管20(シャフト部)は、径方向外側へ拡張可能な拡張部30を有するため、拡張部30を血管内壁面に接触させて内管20の位置を固定でき、流体の放出方向を安定させて腎動脈Rへの造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0055】
また、放出部60は、拡張部30に配置されるため、血管壁に近い位置から血管壁に沿うように流体を放出することが可能となり、膜状となる流体により腎動脈Rへの造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0056】
また、医療デバイス10は、造影剤を検知する検知部70を有するため、造影剤を検知するタイミングで流体を放出することができ、腎動脈Rへの造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0057】
また、内管20は、遠位部にX線造影マーカー23を有するため、X線透視下で内管20を適切な位置に配置でき、望ましい位置へ流体を放出することが可能となり、腎動脈Rへの造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0058】
また、本発明は、腎臓への造影剤の流入を抑制するための処置(治療)方法をも含む。当該処置方法は、(i)長尺なシャフト部の遠位部に流体を放出可能な放出部が設けられる医療デバイスを下行大動脈に挿入する挿入ステップと、(ii)前記放出部を腎動脈の入口部よりも上流側に配置する配置ステップと、(iii)上流側から流れる造影剤の前記腎動脈の入口部への到達に合わせて前記放出部から流体を前記入口部を覆うように膜状に放出する放出ステップと、を有する。当該処置方法は、腎動脈の入口部を覆うように膜状に流体を放出するため、造影剤を流体により希釈させつつ、腎動脈の入口部に到達する造影剤の腎動脈への流入を膜状の流体により効果的に抑制できる。腎動脈への濃い濃度の造影剤の流入を抑制することで、造影剤の腎臓への影響を低減できる。
【0059】
上記処置方法は、前記放出ステップにおいて、前記シャフト部の遠位部の軸心を挟む両側で前記軸心と直交する方向または近位方向へ前記放出部から流体を放出する。このため、下向大動脈から分岐する2つの腎動脈の両方の入口部を塞ぐように膜状の流れを発生させることが可能となり、腎動脈への造影剤の流入を抑制できる。
【0060】
上記処置方法は、前記配置ステップにおいて、前記シャフト部の遠位部から径方向外側の両方向へ拡張可能な拡張部を拡張させて下行大動脈に接触させて前記シャフト部の位置を固定する。このため、拡張部によりシャフト部の位置を固定させることで、流体の放出方向を安定させて腎動脈への造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0061】
上記処置方法は、前記配置ステップにおいて、前記拡張部に配置される前記放出部から流体を放出する。このため、血管壁に近い位置から血管壁に沿うように流体を放出することが可能となり、膜状となる流体により腎動脈への造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0062】
上記処置方法は、前記放出ステップにおいて、前記医療デバイスに設けられる造影剤を検知可能な検知部により造影剤を検知した際に前記放出部から流体を放出する。このため、造影剤を検知するタイミングで流体を放出することができ、腎動脈への造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0063】
上記処置方法は、前記配置ステップにおいて、前記医療デバイスの遠位部に設けられるX線造影マーカーの位置をX線透視下で確認しつつ前記放出部を配置するこのため、放出部を適切な位置に配置でき、望ましい位置へ流体を放出することが可能となり、腎動脈への造影剤の流入をより効果的に抑制できる。
【0064】
なお、上述の例では、センサ71により検出される造影剤の濃度が閾値を超える場合に、制御部92により供給装置を制御して生理食塩水を放出しているが、このような構成でなくてもよい。例えば、造影剤を冠動脈に放出後、制御部92によりタイマーを設定し、所定時間後に所定時間だけ流体供給装置91を作動させて、生理食塩水を放出するように制御することもできる。また、X線撮像下で、造影剤を確認し、手動で操作することで生理食塩水を放出することもできる。このような構成とすれば、造影剤を検出するためのセンサ71が設けられなくてもよい。また、拡張部の構造は、拡張して下行大動脈に接触可能な構造であれば、線材部を有する構造に限定されず、例えば、バルーンであってもよい。なお、バルーンを拡張部とする場合には、バルーンが拡張した際に、下降大動脈Aが完全に塞がらない形状とすることが必要である。
<第2実施形態>
【0065】
第2実施形態に係る医療デバイス100は、拡張部が設けられない点で、第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0066】
医療デバイス100は、図7〜9に示すように、シャフト部110と、流体を放出可能な放出部140と、造影剤を検知可能な検知部70と、操作部150とを備えている。シャフト部110は、長尺な管体である内側シャフト120と、長尺な管体であって内側シャフト120を内部に収容する外側シャフト130を備えている。
【0067】
内側シャフト120および外側シャフト130は、遠位部にて連結される二重管構造となっており、内側シャフト120および外側シャフト130の間に、供給用ルーメン111が形成されている。内側シャフト120および外側シャフト130の近位部は、操作部150に連結されている。
【0068】
内側シャフト120は、内部にガイドワイヤWを挿入するための挿入用ルーメン121と、検知部70が配置される配線用ルーメン122とが形成されている。挿入用ルーメン121および配線用ルーメン122は、内側シャフト120の遠位側端部で開口している。
【0069】
外側シャフト130の遠位部には、内面から外面へ貫通する放出孔145が複数形成される放出部140が設けられている。放出部140は、外側シャフト130の軸心を挟んで両側に位置する第1放出部141および第2放出部142に分かれて形成される。第1放出部141および第2放出部142の各々は、放出孔145が周方向に並ぶ放出孔群144が、軸方向に3列形成されている。各々の放出孔145は、外側シャフト130の軸心と直交する方向よりも近位方向へ傾いて形成されている。外側シャフト130の遠位部には、放出部140の位置をX線透視下で容易に識別できるように、放出部140の近位側および遠位側に対応してX線造影マーカー131が設けられる。更に、X線造影マーカー131は、シャフト部110の軸心を挟んで配置される第1放出部141および第2放出部142の位置に対応して、周方向の2箇所に分かれて配置される。
【0070】
各々の放出孔群144を構成する複数の放出孔145は、一方向(周方向)に並んで形成されているため、放出孔145から流体を放出すると、各々の放出孔145から近位方向へ放出される流体が繋がり、膜状の壁となる。
【0071】
内側シャフト120および外側シャフト130の構成材料は、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好ましく使用される。また、剛性を増すために前記材料に金属のブレードやコイルを加えることも可能である。
【0072】
操作部150は、挿入用ルーメン121と連通する挿入用ポート151と、供給用ルーメン111と連通する供給用ポート152とが形成されている。また、操作部150は、配線用ルーメン122内に位置する信号ケーブル72と電気的に接続される接続ケーブル153が導出されている。
【0073】
挿入用ポート151は、ガイドワイヤW、後述するガイディングカテーテル160およびカテーテル161を挿入可能である。供給用ポート152は、供給用ルーメン111を介して放出孔145へ流体を供給するための流体供給装置91に接続可能である。
【0074】
次に、第2実施形態に係る医療デバイス100の使用方法を説明する。ここでは、PCIを行う際に冠動脈に放出された造影剤が、下行大動脈Aから腎動脈Rへ流入することを抑制する場合を例として説明する。放出部140から放出する流体は、生理食塩水である。
【0075】
まず、使用する医療デバイス100のプライミングを行い、内部を生理食塩水で置換する。この初期状態において、そして、供給用ポート152に流体供給装置91を接続し、接続ケーブル153を検出装置90に接続する(図7を参照)。
【0076】
次に、大腿動脈にイントロデューサシース(図示せず)を挿入する。次に、イントロデューサシースを介してガイドワイヤWを動脈内へ挿入する。なお、イントロデューサシースを設置する位置は、医療デバイス100を下行大動脈Aへアクセス可能であれば、限定されない。
【0077】
次に、ガイドワイヤWを下行大動脈Aにおける腎動脈Rの入口部Oよりも遠位側、すなわち心臓に近い上流側に到達させる。この後、準備した医療デバイス100の挿入用ルーメン121にガイドワイヤWを挿入し、医療デバイス100をガイドワイヤWに沿って動脈内へ挿入する。次に、ガイドワイヤWに沿って医療デバイス100を押し進め、図10、11に示すように、医療デバイス100の遠位部を、下行大動脈Aの腎動脈Rの入口部Oよりも遠位側に到達させる(挿入ステップ)。そして、X線造影マーカー131の位置をX線透視下で確認しつつ、第1放出部141および第2放出部142を、2つの入口部Oの上流側に配置する(配置ステップ)。
【0078】
次に、センサ71からの信号によって検出装置90により造影剤の濃度が検出される。検出装置90からの信号は、制御部92に入力され、造影剤の濃度が予め設定した閾値以下であるかが判別される。造影剤の濃度が予め設定した閾値以下である場合には、流体供給装置からの生理食塩水の供給が開始されない。
【0079】
次に、PCIのために、操作部150の挿入用ポート151から、ガイドワイヤWに沿って、PCIの手技を行うためのガイディングカテーテル160およびガイディングカテーテル160内を貫通する処置用のカテーテル161(例えば、バルーンカテーテル)を挿入し、冠動脈へ到達させる。この後、ガイディングカテーテル160を介して造影剤を冠動脈へ放出する。冠動脈へ放出された造影剤は、冠静脈を通って冠静脈洞へ到達し、更に右心房から心臓内を通って下行大動脈Aへ到達する。センサ71からの信号によって検出装置90により検出される造影剤の濃度が閾値を超えると、検出装置90から信号を受けた制御部92が流体供給装置91を自動で制御し、供給用ポート152および供給用ルーメン111を介して放出部140へ生理食塩水を供給する。放出部140へ供給された生理食塩水は、第1放出部141および第2放出部142の各々の放出孔群144から放出される。各々の放出孔群144は、一列に並ぶ複数の放出孔145により構成されているため、近位方向へ放出される生理食塩水が繋がり、膜状の壁となって下行大動脈Aの内壁面に向かう。下行大動脈Aの内壁面に接触した生理食塩水は、流れ方向を変えて内壁面に沿って膜状の壁となって下流側へ流れ、腎動脈Rの入口部Oを覆う。これにより、下行大動脈Aを流れる造影剤の腎動脈Rへの流入が抑制されるとともに、造影剤が生理食塩水によって薄められる。このため、腎動脈Rを通って腎臓へ到達する血液中の造影剤の量および濃度が減少し、腎臓への造影剤の影響を低減できる。第1放出部141および第2放出部142には、複数(本実施形態では3つ)の放出孔群144が設けられているため、造影剤の腎動脈Rへの流入を抑制する効果および造影剤を薄める効果が増大する。そして、第1放出部141および第2放出部142の間に生理食塩水が放出されない領域があるため、下行大動脈A内の造影剤および血液の流れは、図11にて一点鎖線の矢印で示すように、生理食塩水の壁を避けて腎動脈Rの入口部Oよりも下流へ流れることができる。
【0080】
センサ71からの信号によって検出装置90により検出される造影剤の濃度が閾値以下であるかが常に判別され、造影剤の濃度が閾値以下となると、検出装置90から信号を受けた制御部92が流体供給装置91を自動で制御し、生理食塩水の供給を停止する。これにより、放出孔145からの生理食塩水の放出が停止され、造影剤をほとんど含まない下行大動脈A内の血液が、生理食塩水により妨げられることなく腎動脈Rへ流入する。
【0081】
そして、造影剤の冠動脈への投与に応じて医療デバイス100が作動して、血液の造影剤の濃度が閾値を超える場合にのみ、放出孔145から生理食塩水を放出し、造影剤の腎動脈Rへの流入を抑制する。
【0082】
PCIの手技が完了した後、図12に示すように、X線造影マーカー131を監視しつつ、放出孔145から放出される生理食塩水が腎動脈Rへ直接的に流入する位置まで、医療デバイス100を近位側(下流側)へ移動させ、放出孔145から生理食塩水を放出する。これにより、腎動脈R内が洗浄され、造影剤による腎動脈Rへの影響を、より低減させることができる。
【0083】
この後、カテーテル161、ガイディングカテーテル160、医療デバイス100およびガイドワイヤWをイントロデューサシースから抜去し、かつイントロデューサシースを血管から抜去して、処置が完了する。
【0084】
以上のように、第2実施形態に係る医療デバイス100は、拡張部を備えておらず、シャフト部110に設けられる放出部140から流体を放出する。このような構成であっても、シャフト部110が挿入された下行大動脈Aから分岐する2つの腎動脈Rの両方の入口部Oを塞ぐように流体を膜状として流すことができる。このため、腎動脈Rへの造影剤の流入を効果的に抑制でき、かつ造影剤を流体により希釈して、造影剤の腎臓への影響を低減できる。
【0085】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、造影剤を投与する位置は、冠動脈に限定されない。例えば、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)における心臓の左室造影や大動脈造影もこれに含まれる。
【0086】
また、図13に示す第2実施形態の第1変形例のように、シャフト部170に形成される放出孔171が、シャフト部170の軸心と直交する方向であってもよい。このような構成であっても、放出孔171から放出された流体は、血管壁に当ることで、血管壁に沿う膜状の流れとなり、腎動脈Rの入口部Oを覆うことができる。また、第1実施形態に係る医療デバイス10の放出孔を、シャフト部の軸心と直交する方向へ開口するように形成してもよい。
【0087】
また、図14に示す第2実施形態の第2変形例のように、シャフト部180に形成される放出孔181が、スリット状に一方向(周方向)へ長く形成されてもよい。このような構成であっても、放出孔から放出される流体は膜状となるため、腎動脈Rの入口部Oを塞ぐように流体を流すことが可能となり、腎動脈Rへの造影剤の流入を効果的に抑制できる。また、第1実施形態に係る医療デバイス10の放出孔を、スリット状に一方向へ長く形成してもよい。
【0088】
また、第1実施形態に係る医療デバイス10の挿入用ルーメン21に、第2実施形態で示す使用方法の例のように、ガイディングカテーテル160およびカテーテル161を挿入してもよい。また、第2実施形態に係る医療デバイス100の挿入用ルーメン121に、第1実施形態で示す使用方法の例のように、ガイディングカテーテル160およびカテーテル161を挿入しなくてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10、100 医療デバイス、
20 内管(シャフト部)、
30 拡張部、
110、170、180 シャフト部、
131 X線造影マーカー、
60、140 放出部、
63、145、171、181 放出孔、
70 検知部、
A 下行大動脈、
O 入口部、
R 腎動脈。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14