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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-202555(P2016-202555A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】ステントおよび処置方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/89 20130101AFI20161111BHJP
   A61F 2/844 20130101ALI20161111BHJP
【FI】
   A61F2/89
   A61F2/844
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-87449(P2015-87449)
(22)【出願日】2015年4月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】清水 克彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 恵子
(72)【発明者】
【氏名】細野 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰一
【テーマコード(参考)】
4C167
【Fターム(参考)】
4C167AA44
4C167AA45
4C167AA50
4C167BB05
4C167BB26
4C167CC08
4C167DD10
4C167HH19
(57)【要約】
【課題】持続的に腎動脈への血流を増加させることができるステントおよび処置方法を提供する。
【解決手段】線状構成要素により構成されて全体として隙間を有する筒形状のステント基体20と、ステント基体20の周方向の一部の隙間を塞ぐ膜体40と、を有するステント10であり、膜体40が配置されてステント基体20の隙間が塞がれる閉鎖部12と、膜体40が配置されずにステント基体20の隙間が露出する露出部13とが周方向に並んで配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状構成要素により構成されて全体として隙間を有する筒形状のステント基体と、
前記ステント基体の周方向の一部の隙間を塞ぐ膜体と、を有するステントであって、
前記膜体が配置されて前記ステント基体の隙間が塞がれる閉鎖部と、前記膜体が配置されずに前記ステント基体の隙間が露出する露出部とが周方向に並んで配置されるステント。
【請求項2】
前記閉鎖部および露出部は、前記ステントの軸方向の一端側に位置する請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記閉鎖部および露出部は、前記ステントの軸方向の中央部に位置する請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記閉鎖部または露出部に対応する位置にX線造影マーカーを有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のステント。
【請求項5】
前記ステント基体および膜体は、生分解性材料により形成される請求項1〜4のいずれか1項に記載のステント。
【請求項6】
線状構成要素により構成されて全体として隙間を有する筒形状のステント基体を有するステントを、下行大動脈または腎動脈に留置して下肢動脈および腎動脈へ流れる血流の比率を前記膜体により変化させて腎動脈への血流量を増加させる処置方法。
【請求項7】
前記ステント基体に配置される膜体を有する前記ステントを、下行大動脈または腎動脈に留置して下肢動脈および腎動脈へ流れる血流の比率を前記膜体により変化させて腎動脈への血流量を増加させる請求項6に記載の処置方法。
【請求項8】
前記ステント基体の周方向の一部を前記膜体が塞ぐ前記ステントを、前記膜体が下行大動脈内の下流側に位置するように腎動脈に留置し、前記膜体により下行大動脈を流れる血流を腎動脈内へ誘導して腎動脈への血流量を増加させる請求項7に記載の処置方法。
【請求項9】
前記ステントの内腔の流路の断面積が前記膜体により部分的に減少する前記ステントを、当該ステントの少なくとも一部が下行大動脈の腎動脈入口部よりも下流側に位置するように下行大動脈に留置し、下肢動脈への血流量を減少させて腎動脈への血流量を増加させる請求項7に記載の処置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内に配置させるステントおよびステントを用いた処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓は、血液を濾過して老廃物を排出したり、血圧を調整したり、造血ホルモンを分泌したり、カルシウム代謝に係わるビタミンDを活性化する等の重要な役割を果たしている。
【0003】
このような腎臓の機能が低下すると、老廃物を体外へ排出することが困難となるなどの症状が発生し、場合によっては透析が必要になる場合もある。
【0004】
このため、機能の低下した腎臓を治療するための種々の方法が提案されている。例えば特許文献1には、経皮的に下行大動脈へ挿入されるデバイスにより、腎動脈へ薬剤および血流を導く方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0030814号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のデバイスは、経皮的に下行大動脈へ挿入されるデバイスであるため、一時的に取り付けられるものであり、持続的に腎動脈へ血流を導くことはできない。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、持続的に腎動脈への血流を増加させることができるステントおよび処置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するステントは、線状構成要素により構成されて全体として隙間を有する筒形状のステント基体と、前記ステント基体の周方向の一部の隙間を塞ぐ膜体と、を有するステントであって、前記ステント基体は、前記膜体が配置されて前記ステント基体の隙間が塞がれる閉鎖部と、前記膜体が配置されずに前記ステント基体の隙間が露出する露出部とが周方向に並んで配置される。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成したステントは、閉鎖部および露出部が設けられる部位を下行大動脈内に位置するように腎動脈に部分的に留置し、露出部を下行大動脈の上流側に配置するとともに閉鎖部を下流側に配置することができる。これにより、下行大動脈を流れて露出部を通過する血流を膜体が設けられる閉鎖部によって腎動脈内へ誘導でき、持続的に腎動脈への血流量を増加させることができる。
【0010】
前記閉鎖部および露出部は、前記ステントの軸方向の一端側に位置するようにすれば、ステントの閉鎖部および露出部が設けられる一端側を、左右のうち一方の腎動脈から下行大動脈へ突出させるように配置することで、下行大動脈を流れる血流を閉鎖部によって腎動脈内へ誘導できる。そして、左右の腎動脈へステントを選択的に留置することができ、留置が容易である。
【0011】
前記閉鎖部および露出部は、前記ステントの軸方向の中央部に位置するようにすれば、一端側を一方の腎動脈に挿入し、他端側を他方の腎動脈へ挿入して、閉鎖部および露出部が設けられる中央部を下行大動脈内に配置でき、下行大動脈を流れる血流を、1つのステントで左右の両方の腎動脈内へ同時に誘導できる。
【0012】
上記ステントは、前記閉鎖部または露出部に対応する位置にX線造影マーカーを有するようにすれば、閉鎖部および露出部をX線透視下で区別して観察でき、閉鎖部および露出部を下行大動脈内の適切な位置に配置することが容易となる。
【0013】
前記ステント基体および膜体は、生分解性材料により形成されるようにすれば、時間の経過によりステントを分解させて消滅させることができる。
【0014】
上記目的を達成する処置方法は、線状構成要素により構成されて全体として隙間を有する筒形状のステント基体を有するステントを、下行大動脈または腎動脈に留置して下肢動脈および腎動脈へ流れる血流の比率を前記膜体により変化させて腎動脈への血流量を増加させる処置方法である。当該処置方法は、ステントを下行大動脈または腎動脈に留置することで、腎動脈への血流量を増加させることができ、持続的に腎動脈への血流量を増加させることができる。
【0015】
前記処置方法において、前記ステント基体に配置される膜体を有する前記ステントを、下行大動脈または腎動脈に留置して下肢動脈および腎動脈へ流れる血流の比率を前記膜体により変化させて腎動脈への血流量を増加させるようにすれば、腎動脈への血流量を膜体によって増加させることができ、持続的に腎動脈への血流量を増加させることができる。
【0016】
前記処置方法において、前記ステント基体の周方向の一部を前記膜体が塞ぐ前記ステントを、前記膜体が下行大動脈内の下流側に位置するように腎動脈に部分的に留置し、前記膜体により下行大動脈を流れる血流を腎動脈内へ誘導して腎動脈への血流量を増加させるようにすれば、ステントを腎動脈に留置することで、下行大動脈を流れる血液を膜体によって腎動脈内へ効果的に誘導できる。
【0017】
前記ステントの内腔の流路の断面積が前記膜体により部分的に減少する前記ステントを、当該ステントの少なくとも一部が下行大動脈の腎動脈入口部よりも下流側に位置するように下行大動脈に留置し、下肢動脈への血流量を減少させて腎動脈への血流量を増加させるようにすれば、ステントを下行大動脈に留置することで、下行大動脈を流れる血液を腎動脈内へ効果的に誘導できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係るステントを示す平面図である。
図2図1のA−A線に沿う断面図である。
図3】第1実施形態に係るステントを血管内へ留置するための留置用デバイスを示す平面図である。
図4】留置用デバイスの遠位部を示す断面図である。
図5】留置用デバイスからステントを放出した状態を示す概略断面図である。
図6】第1実施形態に係るステントを腎動脈に留置した状態を示す概略断面図である。
図7】第2実施形態に係るステントを示す平面図である。
図8図7のB−B線に沿う断面図である。
図9】第2実施形態に係るステントを血管内へ留置するための留置用デバイスを示す断面図である。
図10図9のC−C線に沿う断面図である。
図11】第2実施形態に係るステントを留置用デバイスにより腎動脈に留置する際の状態を示す概略断面図である。
図12】第2実施形態に係るステントを腎動脈に留置した状態を示す概略断面図である。
図13】第3実施形態に係るステントを示す平面図である。
図14】第3実施形態に係るステントを下行大動脈に留置した状態を示す概略断面図である。
図15】第3実施形態に係るステントの第1変形例を下行大動脈に留置した状態を示す概略断面図である。
図16】第3実施形態に係るステントの第2変形例を下行大動脈に留置した状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。本明細書では、デバイスの血管に挿入する側を「遠位側」、操作する手元側を「近位側」と称することとする。
<第1実施形態>
【0020】
本発明の第1実施形態に係るステント10は、腎動脈に留置されて、腎動脈への血流を増加させるための自己拡張型ステントである。
【0021】
ステント10は、図1、2に示すように、線状構成要素により構成されて全体として隙間を有する筒形状のステント基体20と、X線造影マーカー30と、ステント基体20の隙間を部分的に塞ぐ膜体40とを備えている。
【0022】
ステント基体20は、線材が波状に折り返しながら環状に形成されるストラット21(線状構成要素)が、軸方向に複数配置され、互いに隣接するストラット21同士が接続されることで全体として隙間を有する筒形状に構成される。
【0023】
膜体40は、ステント基体20の外周面に固着されており、ステント基体20の変形に伴って柔軟に拡張可能である。膜体40は、ステント基体20の軸方向の一端側を全周的に覆う第1膜部41と、ステント基体20の軸方向の他端側を周方向に部分的に覆う第2膜部42とを備えている。第1膜部41および第2膜部42は、一体的に形成されている。第2膜部42がステント基体20を周方向に覆う範囲は、特に限定されないが、血液を腎動脈内へ導く効果を高めるには、180度に近いことが好ましい。
【0024】
ステント10は、上述のステント基体20および膜体40によって、ステント基体20が第1膜部41で覆われる接触部11と、ステント基体20が第2膜部42で覆われる閉鎖部12と、ステント基体20が膜体40により覆われずに露出する露出部13とを備えている。接触部11は、腎動脈R内に挿入されて腎動脈Rに接触する部位であり、閉鎖部12および露出部13は、腎動脈Rから下行大動脈D内に突出する部位である(図6を参照)。
【0025】
X線造影マーカー30は、例えば、ステント基体20の軸方向端部のうち、露出部13に対応する位置にのみ配置される。これにより、露出部13の位置をX線透視化で確認できる。なお、X線造影マーカー30は、閉鎖部12に対応する位置や、接触部11に対応する位置に配置されてもよい。
【0026】
ステント10は、中心軸に向かって縮径させた状態から、各ストラット21の折り返し部が展開されつつ自己の弾性力によって径が大きくなるように拡張可能である。
【0027】
ステント基体20は、上記の構成に限定されず、例えば網目状などの公知のものが使用できる。そして、ステント基体20は、生体内挿入前および生体内挿入後のいずれにおいても超弾性を示す超弾性金属により略円筒形状に一体的に形成されていることが好ましい。
【0028】
超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。好ましくは、49〜54原子%NiのTiNi合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性合金が使用される。特に好ましくは、上記のTiNi合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0重量%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,B、Au,Pdなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0原子%で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。
【0029】
そして、使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm(22℃)、好ましくは、8〜150kg/mm、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm(22℃)、好ましくは、5〜130kg/mmである。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、荷重の解放後、加熱を必要とせずにほぼ元の形状に回復することを意味する。
【0030】
そして、ステント基体20は、例えば、超弾性合金パイプを用いて、ストラット非構成部分を除去することにより作製され、これにより、一体形成物となっている。超弾性合金パイプによるステント基体20の形成は、切削加工(例えば、機械研磨、レーザー切削加工)、放電加工、化学エッチングなどにより行うことができ、さらにそれらの併用により行ってもよい。
【0031】
膜体40の構成材料は、柔軟に拡張および収縮可能な材料であることが好ましく、例えば、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム等が好適に使用できる。
【0032】
X線造影マーカー30の構成材料は、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、モリブデン、タングステン、タンタル、パラジウムあるいはそれらの合金等が好適に使用できる。
【0033】
次に、ステント10を腎動脈Rに留置するための留置用デバイス50について説明する。留置用デバイス50は、図3、4に示すように、ステント10を収容する管状のシース60と、ステント10を遠位方向へ押し出すことが可能なステント押出部71を備える内管70とを備える。
【0034】
シース60は、遠位側および近位側が開口しており、遠位側の内部にステント10を収納可能な収容部61が設けられる。遠位開口部は、ステント10を目的の部位に留置する際、ステント10の放出口として機能する。ステント10は、縮径された状態で収容部61に収納される。ステント10は、遠位開口より放出されることによりステント10の応力負荷が解除されて自己の弾性力により拡張し、圧縮前の形状に復元する。
【0035】
シース60の近位部には、シースハブ62が固定されている。シースハブ62の内部には、内管70を摺動可能、かつ液密に保持する弁体(図示せず)を備えている。
【0036】
内管70は、シャフト状の内管本体部72と、内管本体部72の遠位部に設けられ、シース60の遠位より突出する内管遠位部73と、内管本体部72の近位部に固定された内管ハブ74とを備える。
【0037】
内管遠位部73は、シース60の遠位部より突出し、かつ、遠位部に向かって徐々に縮径するテーパ状に形成されている。このように形成することにより、血管への挿入が容易となる。また、内管遠位部73は、近位側がシース60の遠位部と当接可能となっており、シース60の遠位方向への移動を阻止するストッパーとして機能している。
【0038】
内管70の内管遠位部73の近位側には、ステント保持部75が設けられている。そして、ステント保持部75より所定距離近位側には、ステント押出部71が設けられている。ステント保持部75およびステント押出部71は、X線造影性を備えている。そして、これら2つのステント保持部75およびステント押出部71の間にステント10が配置される。これらステント保持部75およびステント押出部71の外径は、圧縮されたステント10と当接可能な大きさとなっている。このため、ステント10は、ステント保持部75により遠位側への移動が規制され、ステント押出部71により近位側への移動が規制される。そして、図5に示すように、内管70の位置を保持した状態でシース60を近位側へ移動させると、ステント押出部71によってステント10の近位側への移動が規制され、ステント10がシース60の内面を摺動し、シース60より放出されて拡張する。
【0039】
内管70は、シース60内を貫通し、シース60の近位開口部より突出している。内管70の近位部には、内管ハブ74が固着されている。内管70は、ガイドワイヤーが挿通されるルーメン76が、遠位部から近位部まで延びて形成されている。
【0040】
次に、第1実施形態に係るステント10を腎動脈Rに留置する方法を説明する。
【0041】
まず、中心軸に向かって縮径されたステント10をシース60の収容部61に収容した留置用デバイス50を準備し、シース60内および内管70内を生理食塩水で満たす。
【0042】
次に、患者の血管に、例えばセルジンガー法によりイントロデューサシース(不図示)を留置し、留置用デバイス50のルーメン76内にガイドワイヤーを挿通させた状態で、ガイドワイヤーおよび留置用デバイス50をイントロデューサシースの内部より血管内へ挿入する。続いて、ガイドワイヤーを先行させつつ留置用デバイス50を押し進め、シース60の遠位部を下行大動脈Dから腎動脈Rへ挿入する。
【0043】
次に、X線透視下で、ステント保持部75、ステント押出部71およびステント10のX線造影マーカー30の位置を確認し、接触部11が腎動脈R内、露出部13が下行大動脈Dの上流側、閉鎖部12が下行大動脈Dの下流側に位置するように、留置用デバイス50の位置を調整する。X線造影マーカー30は、露出部13または閉鎖部12の一方(本実施形態では露出部13)に設けられているため、露出部13および閉鎖部12をX線透視下で区別して観察でき、それぞれを適切な位置に配置できる。
【0044】
この後、図5に示すように、内管ハブ74を手で抑えてステント押出部71が近位側へ移動しないように保持しつつ、シースハブ62を近位側へ引いて移動させ、近位方向へ移動するシース60の遠位開口部から、ステント押出部71によって押し出すようにステント10を放出する。これにより、ステント10は、応力負荷が解除されて自己の弾性力により拡張し、圧縮前の形状に復元する。そして、図6に示すように、接触部11は腎動脈R内で拡張して腎動脈Rに接触して保持され、露出部13が下行大動脈D内の上流側、閉鎖部12が下行大動脈D内の下流側に位置する。そして、必要に応じて、もう1つの腎動脈Rにも、同様の方法でステント10を留置できる。
【0045】
ステント10を腎動脈Rに留置した後には、イントロデューサシースを介して血管よりガイドワイヤーおよび留置用デバイス50を抜去し、かつイントロデューサシースを抜去して手技が完了する。
【0046】
次に、第1実施形態に係るステント10の作用を説明する。
【0047】
ステント10が腎動脈R内に留置されると、ステント10の接触部11が腎動脈Rに接触し、ステント基体20の拡張力によって腎動脈Rに保持される。そして、腎動脈Rから下行大動脈D内に突出する露出部13は、下行大動脈D内の上流側に位置し、閉鎖部12は、下行大動脈D内の下流側に位置する。このため下行大動脈Dを流れて露出部13の隙間を通過した血液が、閉鎖部12に当たって腎動脈R内へ誘導される。このように、下行大動脈の下流側、すなわち下肢動脈へ流れる血液量を減少させ、その分、腎動脈Rへ流入する血液量を増加させることができる。これにより、腎臓へ到達する血液量が増加し、腎臓の機能を向上させることができる。
【0048】
以上のように、第1実施形態に係るステント10は、線状構成要素により構成されて全体として隙間を有する筒形状のステント基体20と、ステント基体20の周方向の一部の隙間を塞ぐ膜体40と、を有するステント10であり、膜体40が配置されてステント基体20の隙間が塞がれる閉鎖部12と、膜体40が配置されずにステント基体20の隙間が露出する露出部13とが周方向に並んで配置される。このように構成されたステント10は、閉鎖部12および露出部13が設けられる部位が下行大動脈D内に位置するように腎動脈Rに部分的に留置し、露出部13を下行大動脈Dの上流側に配置するとともに閉鎖部12を下流側に配置することができる。これにより、下行大動脈D内を流れて露出部13を通過する血流を膜体40が設けられる閉鎖部12によって腎動脈R内へ誘導でき、持続的に腎動脈Rへの血液量を増加させて、腎臓の機能を持続的に高めることができる。
【0049】
また、閉鎖部12および露出部13は、ステント10の軸方向の一端側に位置するため、ステント10の閉鎖部12および露出部13が設けられる一端側を、左右のうち一方の腎動脈Rから下行大動脈Dへ突出させるように配置することができる。これにより、下行大動脈Dを流れて露出部13を通過する血液を閉鎖部12によって腎動脈R内へ誘導できる。そして、各々の腎動脈Rへステント10を選択的に留置することができ、留置が容易である。
【0050】
また、ステント10は、露出部13に対応する位置にX線造影マーカー30を有するため、閉鎖部12および露出部13をX線透視下で区別して観察でき、閉鎖部12および露出部13を下行大動脈D内の適切な位置、すなわち閉鎖部12が下流側で露出部13が上流側となる位置に配置することが容易となる。
【0051】
また、本発明は、処置(治療)方法をも含む。当該処置方法は、線状構成要素により構成されて全体として隙間を有する筒形状のステント基体を有するステントを、腎動脈に留置して下肢動脈および腎動脈へ流れる血流の比率を変化させて腎動脈への血流量を増加させる処置方法である。当該処置方法は、ステントを腎動脈に留置することで、腎動脈への血流量をステントにより増加させることができ、持続的に腎動脈への血流量を増加させることができる。
【0052】
前記処置方法において、前記ステント基体に配置される膜体を有する前記ステントを、腎動脈に留置して下肢動脈および腎動脈へ流れる血流の比率を前記膜体により変化させて腎動脈への血流量を増加させることができる。このようにすれば、腎動脈への血流量をステントに設けられる膜体によって増加させることができ、持続的に腎動脈への血流量を増加させることができる。
【0053】
上記処置方法において、前記ステント基体の周方向の一部を前記膜体が塞ぐ前記ステントを、前記膜体が下行大動脈内の下流側に位置するように腎動脈に留置し、前記膜体により下行大動脈を流れる血流を腎動脈内へ誘導して腎動脈への血流量を増加させることができる。このようにすれば、ステントを腎動脈に部分的に留置することで、下行大動脈を流れる血流を膜体によって腎動脈内へ効果的に誘導できる。
<第2実施形態>
【0054】
第2実施形態に係るステント100は、左右の腎動脈の両方に留置される自己拡張型のステントである。
【0055】
ステント100は、図7、8に示すように、線状構成要素により構成されて全体として隙間を有する筒形状のステント基体110と、ステント基体110の隙間を部分的に塞ぐ膜体120とを備えている。ステント基体110は、線材が波状に折り返しながら環状に形成されるストラット111(線状構成要素)が、軸方向に複数配置され、互いに隣接するストラット111が接続されることで全体として隙間を有する筒形状に構成される。
【0056】
膜体120は、ステント基体110の変形に伴って柔軟に拡張可能であり、ステント基体110の外周面に固着されている。膜体120は、ステント基体110の軸方向の一端側の全周を覆う第1膜部121と、第1膜部121に隣接してステント基体110の周方向の1部を覆う第2膜部122と、ステント基体110の軸方向の他端側の全周を覆う第3膜部123と、第3膜部123に隣接してステント基体110の周方向の1部を覆う第4膜部124とを備えている。第2膜部122および第4膜部124がステント基体110を周方向に覆う範囲は、特に限定されないが、180度に近いことが好ましい。第2膜部122および第4膜部124がステント基体110に対して配置される周方向の位置は、一致することが好ましい。
【0057】
ステント100は、上述のステント基体110および膜体120によって、ステント基体110が第1膜部121で覆われる第1接触部101と、ステント基体110が第2膜部122で覆われる第2接触部102と、ステント基体110が第3膜部123で覆われる第1閉鎖部103と、ステント基体110が第4膜部124で覆われる第2閉鎖部104と、ステント基体110が膜体120により覆われずに露出する露出部105とを備えている。露出部105は、第1閉鎖部103と同一周上に位置する第1露出部106と、第2閉鎖部104と同一周上に位置する第2露出部107と、第1露出部106と第2露出部107の間で全周的に膜体120に覆われない第3露出部108とを備えている。
【0058】
第1接触部101および第2接触部102は、左右の異なる腎動脈R内に挿入されて腎動脈Rに接触する部位であり、第1閉鎖部103、第2閉鎖部104、第1露出部106、第2露出部107および第3露出部108は、下行大動脈D内に配置される部位である。
【0059】
ステント100は、中心軸に向かって縮径させた状態から、各ストラット111の折り返し部が展開されつつ自己の弾性力によって径が大きくなるように拡張可能である。
【0060】
次に、ステント100を腎動脈Rに留置するための留置用デバイス130について説明する。留置用デバイス130は、図9、10に示すように、ステント100を収容する管状のシース140と、シース140を収容可能な外管150と、シース140の内部に配置されてステント100を遠位方向へ押し出すことが可能なステント押出部160とを備える。
【0061】
外管150は、シース140を収容可能な第1ルーメン151と、ガイドワイヤーを挿入可能な第2ルーメン152とが形成されている。
【0062】
シース140は、管体の遠位側が二股に分割された分岐部141を備えており、各々の分岐部141の近接する側に、スリット状の開口部142が形成されている。各々の分岐部141の断面は、互いに近接する側に開口部142が形成されることでC字状となっている。分岐部141の内側には、中心軸に向かって収縮されるとともに第3露出部108で折り曲げられたステント100が、各々の端部が対向する分岐部141に配置されるように収容される。ステント100は、第1閉鎖部103および第2閉鎖部104が、外側になるように折り曲げられている。シース140は、外管150から遠位方向へ突出することで、2つの分岐部141が自己の弾性力により離れる方向に湾曲して突出する(図11を参照)。
【0063】
ステント押出部160は、シース140の内側に配置される長尺な部材である。ステント押出部160の遠位部は、シース140内に配置されるステント100の外面に接触可能である。
【0064】
次に、第2実施形態に係るステント100を腎動脈に留置する方法を説明する。
【0065】
まず、ステント100をシース140に収容した留置用デバイス130を準備し、シース140内および外管150内を生理食塩水で満たす。
【0066】
次に、患者の血管に、例えばセルジンガー法によりイントロデューサシース(不図示)を留置し、第2ルーメン152内にガイドワイヤーを挿通させた状態で、ガイドワイヤーおよび留置用デバイス130をイントロデューサシースの内部より血管内へ挿入する。続いて、ガイドワイヤーWを先行させつつ留置用デバイス130を押し進め、シース140の遠位部を下行大動脈Dにおける腎動脈Rの入口部Oよりも下流側に位置させる。
【0067】
次に、図11に示すように、外管150を固定した状態でシース140を遠位方向へ移動させ、2つの分岐部141を、自己の弾性力により湾曲させつつ左右の腎動脈Rに挿入する。次に、ステント押出部160をステント100に接触させ、ステント100の近位方向への移動を制限した状態で、シース140を近位方向へ移動させる。これにより、ステント100は、スリット状の開口部142を介してシース140から押し出され、応力負荷が解除されて自己の弾性力により拡張し、圧縮前の形状に復元する。そして、図12に示すように、第1接触部101および第2接触部102は、左右の腎動脈R内で拡張して腎動脈Rに接触して保持され、第1露出部106および第2露出部107が下行大動脈D内の上流側、第1閉鎖部103および第2閉鎖部104が下行大動脈D内の下流側に位置する。
【0068】
ステント100を腎動脈Rに留置した後には、イントロデューサシースを介して血管よりガイドワイヤーWおよび留置用デバイス130を抜去し、かつイントロデューサシースを抜去して手技が完了する。
【0069】
次に、第2実施形態に係るステント100の作用を説明する。
【0070】
ステント100が腎動脈R内に留置されると、ステント100の第1接触部101および第2接触部102が左右の腎動脈Rに接触し、ステント基体110の拡張力によって腎動脈Rに保持される。そして、腎動脈Rから下行大動脈D内に突出する第1露出部106および第2露出部107は、下行大動脈D内の上流側に位置し、第1閉鎖部103および第2閉鎖部104は、下行大動脈D内の下流側に位置する。このため下行大動脈Dを流れて第1露出部106および第2露出部107の隙間を通過した血液が、第1閉鎖部103および第2閉鎖部104に当たって左右の腎動脈R内へ誘導される。このため、下肢動脈への血流を減少させ、その分、腎動脈Rへ流入する血流を増加させることができる。これにより、腎臓へ到達する血液量が増加し、腎臓の機能を持続的に向上させることができる。
【0071】
以上のように、第2実施形態に係るステント100は、第1閉鎖部103および第2閉鎖部104が、ステント100の軸方向の中央部に位置するため、一端側を一方の腎動脈Rに挿入し、他端側を他方の腎動脈Rへ挿入して、第1閉鎖部103、第2閉鎖部104および露出部105が設けられる中央部を下行大動脈D内に配置できる。このため、下行大動脈Dを流れる血流を、1つのステント100で左右の腎動脈R内へ同時に誘導できる。また、ステント100が、左右の腎動脈Rに挿入されるため、安定して保持され、位置ずれ等が生じ難い。
<第3実施形態>
【0072】
第3実施形態に係るステント170は、下行大動脈Dにおける腎動脈Rの入口部Oよりも下流側に留置される自己拡張型のステントである。
【0073】
ステント170は、図13に示すように、線状構成要素により構成されて全体として隙間を有する筒形状のステント基体180と、ステント基体180の隙間を塞ぐ膜体190とを備えている。ステント基体180は、線材が波状に折り返しながら環状に形成されるストラット191(線状構成要素)が、軸方向に複数配置され、互いに隣接するストラット191が接続されることで全体として隙間を有する筒形状に構成される。ステント170は、軸方向の両端に接触部171が設けられ、軸方向の中央部に、接触部171よりも内径および外径が小さい小径部172が形成されている。
【0074】
膜体190は、ステント基体180の全体の外周面に固着されており、ステント基体180の変形に伴って柔軟に拡張可能である。
【0075】
ステント170は、中心軸に向かって縮径させた状態から、各ストラット191の折り返し部が展開されつつ自己の弾性力によって径が大きくなるように拡張可能である。
【0076】
第3実施形態に係るステント170は、第1実施形態において説明した留置用デバイス50(図3を参照)により、下行大動脈Dにおける腎動脈Rの入口部Oよりも下流側に留置される。
【0077】
次に、第3実施形態に係るステント170の作用を説明する。
【0078】
ステント170が留置されると、ステント170の接触部171が、下行大動脈Dにおける腎動脈Rの入口部Oよりも下流側に接触し、ステント基体180の拡張力によって下行大動脈Dに保持される。そして、ステント170の内部の流路は、小径部172において断面積が減少している。このため、図14に示すように、下行大動脈Dを流れる血液は、ステント170の内部の小径部172により抵抗を受ける。これにより、下肢動脈への血流が減少し、その分、腎動脈Rへ流入する血流量を増加させることができる。これにより、腎臓へ到達する血液量が増加し、腎臓の機能を向上させることができる。
【0079】
以上のように、第3実施形態おける処置(治療)方法は、前記ステントの内腔の流路の断面積が膜体により部分的に減少する前記ステントを、当該ステントの少なくとも一部が下行大動脈の腎動脈入口部よりも下流側に位置するように下行大動脈に留置し、下肢動脈への血流量を減少させて腎動脈への血流量を増加させる。このため、ステントを下行大動脈に留置することで、下行大動脈を流れる血流を腎動脈内へ効果的に誘導できる。
【0080】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、ステント基体および膜体が、生分解性材料により形成されてもよい。このようにすれば、時間の経過によりステントを分解させて消滅させることができる。生分解性材料は、例えば、生分解性金属材料や生分解性高分子材料が好ましい。生分解性金属材料は、例えば、マグネシウム等が好適に使用できる。生分解性高分子材料は、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、乳酸−カプロラクトン共重合体、ポリ−γ―グルタミン酸等の生分解性合成高分子材料、あるいはセルロース、コラーゲン等の生分解性天然高分子材料等が好適に使用できる。
【0081】
また、図15に示す第3実施形態の第1変形例のように、ステント200の一端側に下行大動脈Dと接触する接触部201が設けられ、他端側に、接触部201よりも内径および外径が減少する小径部202が設けられてもよい。ステント200は、ステント基体203と、ステント基体203を覆う膜体204とを備えている。このような構成であっても、下行大動脈Dへの血流量を減少させて、腎動脈Rへの血流量を増加させることができる。
【0082】
また、図16に示す第3実施形態の第2変形例のように、ステント210が、下行大動脈Dと接触する接触部211の内側に、内径および外径が減少する内側部材212(膜体)が配置されてもよい。接触部211は、ステント基体213と、ステント基体213を覆う膜体214とを備えている。内側部材212は、例えば、膜体214と同一の材料により形成される。このような構成であっても、下肢動脈への血流量を減少させて、腎動脈Rへの血流量を増加させることができる。
【0083】
また、膜体は、ステント基体の外側ではなしに内側に配置されてもよく、または内側および外側の両側に配置されてもよい。
【0084】
また、ステントの腎動脈Rまたは下行大動脈Dに接触する接触部は、ステント基体が膜体に覆われていなくてもよい。また、ステントは、自己拡張型でなくてもよく、バルーンにより塑性変形させて拡張させる構成であってもよい。また、第2実施形態において、周方向に膜体120が全く設けられない第3露出部108は、必ずしも設けられなくてもよい。
【0085】
また、膜体は、流体の流れを完全に遮断する構成でなくてもよく、例えば、多少の流体の流通性(透過性)を備えてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10、100、170、200、210 ステント、
11、171、201、211 接触部、
12 閉鎖部、
13、105 露出部、
20、110、180、203、213 ステント基体、
30 X線造影マーカー、
40、120、190、204、214 膜体、
101 第1接触部(接触部)、
102 第2接触部(接触部)、
103 第1閉鎖部(閉鎖部)、
104 第2閉鎖部(閉鎖部)、
106 第1露出部、
107 第2露出部、
108 第3露出部、
212 内側部材(膜体)、
D 下行大動脈、
O 開口部、
R 腎動脈。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16