【課題】弾性フィルムと表面材料である不織ウェブとを積層した伸縮シート部を使用した外装体に吸収性部材を固着したパンツ型吸収性物品であっても、吸収性部材内の吸収体に意図しない変形が生じにくく、高い吸収性を維持することができるパンツ型吸収性物品を提供すること。
【解決手段】パンツ型吸収性物品は、伸縮性フィルムと第1の不織シートとが積層された伸縮シート部を少なくとも一部に含む外装体と、外装体に固着される吸収性部材と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、外装体の伸縮シート部は、伸縮性フィルムと第1の不織シートとを含む第1の部分と、伸縮性フィルムの少なくとも一部を破壊することで、第1の部分よりも伸縮性を低減した第2の部分と、を含む伸縮性制御領域を備え、外装体の伸縮シート部は、パンツ型吸収性物品の正面視において吸収体と重複する重複領域を有し、重複領域において、伸縮シート部は伸縮性制御領域を備える。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から
図5を参照して、本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品1を説明する。なお、本実施形態の説明は、特に説明がない限り、全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。なお、本明細書の説明において、パンツ型吸収性物品1の長手方向は、パンツ型吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、パンツ型吸収性物品1の短手方向は、長手方向に対して横切り又は直交する方向を意味する。また、本明細書の説明において、体液とは、尿、血液や軟便中の水分などの体内から体外に排出された液体をいう。本実施形態のパンツ型吸収性物品1は、使い捨ておむつ、小児用トレーニングパンツ、失禁用物品、女性の生理用物品などとして用いることができる。また、本明細書の説明において、不織シートとは、繊維を織らずに絡み合わせた不織ウェブをシート状としたものを意味する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品1を示す正面図であり、
図2は、
図1のパンツ型吸収性物品1を展開した状態の展開平面図である。なお、
図2においては、便宜上サイドシール部150の図示を省略している。
図1に示すように、パンツ型吸収性物品1は、ウエスト開口部WHおよび脚開口部LHとの少なくとも一部を定義する外装体100と、外装体100の肌当接面側の表面に固着された吸収性部材200とを備える。パンツ型吸収性物品1は、腹側領域31と背側領域32とそれらを繋ぐ股部領域33とを備え、腹側領域31と背側領域32に位置する部分を重ね合わせて、腹側領域31の腹側外装体102および背側領域32の背側外装体104を対向配置し、それらの側端部を相互に固着して、サイドシール部150を形成することで、ウエスト開口部WHおよび脚開口部LHとが定義されたものである。なお、サイドシール部150は、溶着や接着などの公知の方法によって形成することができ、着用者からパンツ型吸収性物品1を除去しやすいように、破断可能に形成されていてもよい。
【0012】
また、パンツ型吸収性物品1には、ウエスト開口部WHおよび脚開口部LHの少なくとも一方に沿って、一または複数条の弾性部材161,162が設けられていてもよい。この場合、弾性部材161,162は、弾性部材161,162を伸張した状態で外装体100に固着することで、外装体100を含むパンツ型吸収性物品1を着用者のウエスト及び脚周りに対して伸縮して保持するように構成される。弾性部材161,162は、糸状、ストリップ状、ウエストベルト状などの細長形状を有し、例えば、糸ゴム、不織シートに糸ゴムが固着されたウエストベルト、弾性フィルム、弾性発泡材、エラストマー布などを材料として用いることができる。さらにまた、図示はしていないが、パンツ型吸収性物品1には、腹側領域31から股部領域33を経て背側領域32に渡って、左右一対のレッグギャザーを設けることもできる。レッグギャザーは、例えば、糸ゴムなどの弾性部材と不織シート等のシートによって形成される。レッグギャザーを設けることにより、股下周りの部位におけるフィット感を向上することができる。
【0013】
(吸収性部材200)
パンツ型吸収性物品1は、肌当接面側からの体液を吸収するために配置される吸収性部材200を備える。吸収性部材200は、肌当接面側に配置された液透過性のトップシートと、トップシートに対向して配置された非肌当接面側の液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体220とを少なくとも備える。このようにして、吸収体220は、トップシートとバックシートとの間に挟まれた構造となっている。なお、
図1から
図4において、吸収体220は一点鎖線部にて示されている。なお、図示はしないが、吸収性部材200には、裏面不織シートがバックシートの非肌当接面側に積層されていていてもよいし、補助シートなどの他の部材がさらに含まれてもよい。
【0014】
吸収性部材200を構成する各部材は、外装体100と異なり、吸収性能を重視するため、後述する伸縮シート部120を含まないか、少なくとも伸縮シート部120よりも伸縮性が低いものであってもよい。すなわち、吸収性部材200を構成するトップシート、バックシート及び吸収体220の少なくとも一つは、実質的に非伸縮性か、または、伸縮シート部120よりも伸縮性が低いものであってもよい。
【0015】
トップシートの基材は、体液が吸収体220へと移動するように液透過性を備えていればよく、例えば、サーマルボンド不織シート等の不織シート、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織シート、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。また、トップシートは、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。その加工方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。また、肌への刺激を低減させるために、トップシートには、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。さらに、強度および加工性の点から、トップシートの坪量は、14g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。トップシートの形状としては、特に制限はないが、トップシートとバックシートとは、吸収体220よりも面積が大きいものであってもよく、吸収性部材200の長手方向端部の少なくとも一部において、吸収体220が設けられていないことにより吸収性部材200の厚みが薄くなった部分を有してもよい。
【0016】
なお、トップシートの肌当接面側には、吸収体220の長手方向の両側縁部に沿って、体液の漏れを防止する立体ギャザーを設けてもよい。吸収体220の短手方向における立体ギャザーの外端部は、バックシートに固定され、同短手方向における立体ギャザーの内端部は、長手方向前後部がトップシートに固着され、前後部間の中央部はトップシートに固定されない自由端となっており、吸収体220の長手方向に沿って糸ゴム等の立体ギャザー用弾性部材と不織シート等のシートによって形成されることで、起立性を有し、使用者の体型に合わせて伸縮自在に変形可能となるように設けられる。
【0017】
バックシートの基材は、吸収体220が保持する体液が漏れないように液不透過性を備えたものであればよく、不織シート、樹脂フィルム、あるいはこれらを積層した複合シートといった材料から形成される。不織シートは、製法が特に限定されることはなく、例えば、スパンボンドやメルトブロー不織シート、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織シート、及びこれらの複合材料が考えられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等を用いることができる。また、装着時の蒸れを防止するために、バックシートは、透湿性を備えさせてもよい。例えば、バックシートの基材にフィラーを配合することや、バックシートに穿孔のためのエンボス加工を施すことで、バックシートに透湿性を備えさせることができる。
【0018】
裏面不織シートの基材には、例えば、スパンボンドやメルトブロー不織シート、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織シート、及びこれらの複合材料を用いることができる。
【0019】
吸収体220の基材は、一般に生理用ナプキン、おむつや尿パッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、パルプ繊維等の液体吸収性繊維を所定形状に成形したものを含み、液体吸収性繊維に高吸水性樹脂(SAP)を含有させたものであってもよい。例えば、吸収体220は、フラッフパルプ、親水性シートおよび高吸収性樹脂を備える。この例の場合、高吸水性樹脂が混入または囲繞された液体吸収性繊維を成形して成形体をなし、高吸水性樹脂粒子の漏洩防止や吸収性部材の形状を安定させるために、この成形体をティシュのような親水性シート(図示せず)によって被覆することで形成される。フラッフパルプとしては、例えば、木材パルプ及び合成繊維、ポリマー繊維等の非木材パルプを綿状に解繊したものがある。また、高吸水性樹脂は、吸液により膨潤等して高い液体の保持性能を有した高分子重合体を備える粒状の樹脂体であり、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム系が挙げられる。親水性シートとしては、ティシュ、吸収紙、親水性不織シートが例として挙げられる。
【0020】
吸収体220は、上記の吸収体220の基材を単層あるいは複数層に積層して構成される。さらに、吸収体220の表面にエンボス加工を施すことで、体液の拡散をコントロールすると共に、着用者の体型に応じて吸収体220を容易に変形可能とすることもできる。
【0021】
図1および
図2に示すように、吸収性部材200は、少なくとも吸収性部材200の長手方向両端部において、外装体100の肌当接面側の表面に固着された固着部242,244を備える。つまり、吸収性部材200の長手方向端部の非肌当接面側の表面が腹側外装体102の肌当接面側の表面に固着されて、吸収性部材200に固着部242が形成され、吸収性部材200の長手方向端部の非肌当接面側の表面を背側外装体104の肌当接面側の表面に固着することで、吸収性部材200に固着部244が形成される。この固着部242,244は、例えば、ホットメルト接着剤等による接着、熱や超音波等を用いた溶着などの公知の方法によって形成することができる。固着部242,244は、その全体が外装体100に固着されていてもよいし、外装体100と吸収性部材200との接合部を点状または線状に離間して設けることによって部分的に固着されてもよい。
【0022】
そして、パンツ型吸収性物品1の短手方向において、外装体100の下端部109a,109bに重なる部分の吸収性部材200の長さは、外観上、外装体100の下端部109a,109bの長さと略等しくなるように設けられる。これらにより、吸収性部材200は、非肌当接面側の表面に、外装体100に固着された固着部242,244と、外装体100から露出した露出部246と、を備える。このように、吸収性部材200に外装体100からの露出した領域を設けることで、露出領域におけるパンツ型吸収性物品1の厚さを低減することができ、着用者へのフィット性を向上し、パンツ型吸収性物品1を着用していることを外観上より目立たなくすることができる。
【0023】
(外装体100)
次に、
図1から
図6を参照して、外装体100を説明する。
図3は、本実施形態にかかるパンツ型吸収性物品1の腹側伸縮性制御領域300aを説明し、
図4は、本実施形態にかかるパンツ型吸収性物品1の背側伸縮性制御領域300bを説明するための説明図である。便宜上、
図3においては、背側領域32における吸収性部材200の図示を省略し、腹側伸縮性制御領域300aを白黒のチェックパターンを付して示している。
図4においても、同様に、腹側領域31における吸収性部材200の図示を省略し、背側伸縮性制御領域300bを白黒のチェックパターンを付して示している。外装体100は、腹側外装体102と背側外装体104とを含み、腹側外装体102の側端部と背側外装体104の側端部とは、相互に固着されてサイドシール部150をなす。なお、本実施形態では、外装体100全体を伸縮シート部120で構成したものを用いて説明する。
【0024】
図5は、本実施形態に係るパンツ型吸収性物品1の外装体100に用いられる伸縮シート部120の一部を切り出し、説明の便宜上、各層を離間して図示した伸縮シート部120の構造説明図である。外装体100は、少なくとも伸縮性フィルム126と表面材料である第1の不織シート122とを積層して、伸縮可能とした伸縮シート部120を少なくとも一部に備える。なかでも、
図5に示すように、伸縮シート部120は、第1の不織シート122と第2の不織シート124との間に、伸縮性フィルム126が挟まれて一体化された第1の不織シート122/伸縮性フィルム126/第2の不織シート124の積層構造を有するものであることが好ましい。このような伸縮シート部120を外装体100の少なくとも一部に備えることで、パンツ型吸収性物品1は、布製下着のように略全体的に収縮するという快適な着用感を供することができる。また、図示されるように、外装体100の伸縮シート部120が、ウエスト開口部WHおよび脚開口部LHの少なくとも一部を定義するように設けられると、更に良好なフィット感を有するパンツ型吸収性物品1を得ることができる。
【0025】
伸縮シート部120の第1の不織シート122と伸縮性フィルム126とは、熱や超音波による溶着などにより一体化され、ホットメルトタイプ等の接着剤を使用せずに固着されていることが好ましい。糸ゴムを使用せず、接着剤の使用量を低減することで、ごわごわとした感じを抑え、より布製下着に近い風合いをパンツ型吸収性物品1に与えることができるからである。
【0026】
伸縮シート部120を構成する第1の不織シート122および第2の不織シート124の基材としては、例えば、スパンボンドやメルトブロー不織シート、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織シート及びこれらの複合材料が例示される。また、伸縮性フィルム126は、表面材料である第1の不織シート122よりも大きい伸縮性を備えたものであればよい。例えば、伸縮性フィルム126は、不織シート122よりも伸縮性が大きい樹脂製の伸縮性フィルムであり、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂等から形成されたフィルムなどが例示される。なかでも、コスト及び伸縮性能の観点から、ポリウレタン系樹脂フィルムが好ましい。
【0027】
伸縮シート部120は、非伸縮状態において、20cm
3/cm
2・秒以上のJIS L 1096−A(フラジール法):1990に基づいて測定される通気度を有してもよい。通気度が20cm
3/cm
2・秒未満であると、着用時に蒸れ易くなる。通気度は、伸縮シート部120を構成する第1の不織シート122および第2の不織シート124の繊維や糸の太さ、織り密度、単位面積当たりの重さや、伸縮シート部120に設けられた開口部の開口面積率等により、自由に変えることができる。
【0028】
また、伸縮シート部120は、伸縮方向に150%伸長したときに、50cm
3/cm
2・秒以上のJIS L 1096−A(フラジール法):1990に基づいて測定される通気度を有してもよい。ここで、伸縮方向に150%伸長したとは、非伸縮状態の伸縮シート部120の自然長L1に対する、特定の方向(伸縮方向)に伸縮シート部120を伸長して伸長状態としたときの長さL2の比率を示すものであって、伸長率=L2/L1×100[%]で計算されたものである。すなわち、例えば、非伸縮状態の自然長10cmの伸縮シート部12を伸長方向に伸長させて15cmとした場合、伸縮方向に150%(=15/10×100)伸長したものとなる。通気度が50cm
3/cm
2・秒未満であると、伸長された状態で使用する部位、例えば、おしり周りの部位に対して、着用時に蒸れ易くなる。
【0029】
伸縮シート部120は、パンツ型吸収性物品1の長手方向および短手方向の二軸方向の両方において伸縮特性を有するものであることが好ましい。そして、伸縮シート部120は、パンツ型吸収性物品1の短手方向の伸縮性は、パンツ型吸収性物品1の長手方向の伸縮性よりも大きいことが好ましい。そして、着用者が着脱しやすいという観点から、第1の伸縮シート部は、短手方向に200%以上270%以下の伸び率を有するものであることがさらに好ましい。
【0030】
伸縮性フィルム126には複数の開口部が形成されていてもよい。これらの複数の開口部は、パンツ型吸収性物品1の外装体100における通気性を向上し、かつ、伸縮性フィルム126の開口部による耐久性の低下を緩和するために、正面視において千鳥状に配置されていてもよい。また、これらの複数の開口部の形状は特に限定されず、例えば、長方形、楕円形、ひし形等であってもよい。
【0031】
そして、
図1に示すパンツ型吸収性物品1の正面視において、伸縮シート部120と吸収体220とによって、伸縮シート部120と吸収体220とが重複した領域である腹側重複領域Pfおよび背側重複領域Pbが、パンツ型吸収性物品1に定義される。
図2から
図4に示すように、外装体100の伸縮シート部120には、この腹側重複領域Pfに腹側伸縮性制御領域300a、および、背側重複領域Pbの背側伸縮性制御領域300bの少なくとも一方を含む伸縮性制御領域300を含む。この伸縮性制御領域300は、伸縮性制御領域300内の伸縮性フィルム126の少なくとも一部を破壊することで形成され、伸縮シート部120の伸縮性制御領域300外の領域よりも伸縮性が低いものである。
【0032】
従って、この伸縮性制御領域300には、伸縮性フィルム126と第1の不織シート122とを含む第1の部分302と、伸縮性フィルム126の少なくとも一部が破壊されて、第1の部分302よりも伸縮性が低減した第2の部分304と、が形成される。なお、
図6には、伸縮性制御領域300の第1の部分302と第2の部分304との配置パターンの一例を拡大して示している。
図2から
図4、
図6において、白黒チェックパターンのうち、黒部分が第1の部分302を示し、白部分が第2の部分304を示すものである。本実施形態のパンツ型吸収性物品1では、腹側伸縮性制御領域300aおよび背側伸縮性制御領域300bにおいて、第1の部分302と第2の部分304とをすべて同一形状、大きさおよび配列としたものを示すが、腹側伸縮性制御領域300aおよび背側伸縮性制御領域300bの第1の部分302と第2の部分304との形状、大きさおよび配列などの性質は部分的に異なるものでもよいことは言うまでもない。これによれば、布製下着のように略全体的に収縮するという快適な着用感を供することができるとともに、吸収性部材内の吸収体に意図しない変形が生じにくく、高い吸収性を維持することができる。
【0033】
伸縮性制御領域300内の伸縮性フィルム126の破壊は、単数または複数枚の切断刃によって第2の部分304の伸縮性フィルム126を部分的に切断したり、第2の部分304の伸縮性フィルム126を加圧ロールなどで加圧したりすることで、物理的に切断することで行うことができる。また、伸縮性制御領域300内の伸縮性フィルム126の破壊は、第1の不織シート122と伸縮性フィルム126との積層状態において、第2の部分304のみに所定の強度の超音波を印加することによって伸縮性フィルム126を変性することによっても行うことができる。このようにして、第1の部分302の伸縮性フィルム126は、破壊されず、非破壊のままで残留することとなる。また、第1の不織シート122と第2の不織シート124との少なくとも一方も、非破壊または伸縮性フィルム126ほど破壊されずに、残留されることが好ましい。
【0034】
さらに、図示は省略するが、ウエスト開口部WHの周りおよび脚開口部LHの周りの少なくとも一方において、上記同様に伸縮性フィルム126の少なくとも一部を破壊して、伸縮性が低減した伸縮性制御部を設けてもよい。これによれば、ウエスト開口部WHの周りおよび脚開口部LHの周りの伸縮性をより細かく制御することができ、パンツ型吸収性物品1のフィット性をさらに良好とすることができる。
【0035】
図6に示すように、伸縮性制御領域300には、複数の第1の部分302と複数の第2の部分304とが形成され、第1の部分302と第2の部分304とが交互に配置されることが好ましい。すなわち、伸縮性制御領域300には、伸縮性が低減された第2の部分304が第1の部分302に挟まれて間欠的に配置されることとなる。例えば、図示されるように、伸縮性制御領域300には、一辺の長さAが0.3mm以上2.0mm以下の矩形形状である第1の部分302と、一辺の長さBが0.3mm以上2.0mm以下の矩形形状である第2の部分304と、が交互に配置される。
【0036】
さらに、伸縮性制御領域300は、複数の第2の部分304が第1の部分302内に千鳥状に配列されたものであってもよい。これによれば、伸縮性制御領域300の伸縮性を低減させやすく、かつ、破壊量が多くなり伸縮性フィルムが屑状を呈することによるパンツ型吸収性物品1の外観の劣化を防ぐことができる。
【0037】
また、伸縮性フィルム126は、着色されたものであってもよい。これによれば、外観上、第1の部分302と第2の部分304との配置パターンを幾何学模様として視認させることができる。例えば、第1の部分302と第2の部分304とを千鳥状に配列した場合、第1の不織シート122を介して、この配置パターンを千鳥模様として視認させることができる。
【0038】
次に、
図7(a)〜(b)および
図8を用いて、本実施形態のパンツ型吸収性物品1の製造方法の一例を説明する。
図7(a)は本発明の一実施形態に係るパンツ型吸収性物品1の製造方法の一例を説明するための製造ラインの部分概略図であり、
図7(b)は(a)の第3工程を説明する説明図である。また、
図8は、
図7(a)の第4工程を説明するための説明図であり、特に第4工程に使用する加工ロール57およびアンビルロール58を拡大して示す斜視説明図である。ここでは、パンツ型吸収性物品1の各部材となる連続体を長手方向に搬送しながら、パンツ型吸収性物品1を製造する製造方法を説明する。なお、便宜上、
図7(a)〜(b)および
図8中、パンツ型吸収性物品1の各部材の符号を各部材の連続体の符号として用いている。
【0039】
まず、
図7(a)に示すように、第1工程として、伸縮性フィルム126となる連続体を回転ローラ51から給送し、伸縮性フィルム126となる連続体に所定の張力をかけて上下に伸張して、伸長状態とする。所定の張力とは、伸縮性フィルム126を200%以上、より好ましくは250±30%伸張した状態をいう。続いて、第2工程では、回転ローラ52aから供給された第1の不織シート122となる連続体及び回転ローラ52bから供給された第2の不織シート124となる連続体を、伸張した状態の伸縮性フィルム126となる連続体に積層する。
【0040】
次に、第3工程では、積層された伸縮性フィルム126と第1の不織シート122と第2の不織シート124となる連続体を伸縮方向と直行する縦方向に実質的に連続したシール線を、伸縮方向に対して0.5mm以上2.0mm以下の間隔で全領域にわたって熱や超音波などによる溶着によって形成し、伸縮性フィルム126と第1の不織シート122と第2の不織シート124となる連続体を固着することで、伸縮シート部120となる連続体を形成する。
【0041】
具体的には、
図7(b)に示すように、積層された伸縮性フィルム126と第1の不織シート122と第2の不織シート124とを接合ロール53と他方の接合ロール54で狭圧し、接合ロール53の先端の端部55と、他方の接合ロール54の側面56との接点を熱または超音波などで溶着することによって、シール線を形成する。このように、シール線を所定の間隔に形成し、第1の不織シート122と伸縮性フィルム126と第2の不織シート124となる連続体を一体化することによって、伸縮シート部120となる連続体の表面のシワが緩和され、伸縮シート部120の肌触りを滑らかにすることができる。
【0042】
その後、
図7(a)に示すように、第4工程において、回転する加工ロール57とアンビルロール58とで、伸縮シート部120となる連続体を挟んで、伸縮性制御領域300の第2の部分304となる部分のみを加圧及び/又は加熱する。
図8のように、加工ロール57には、伸縮性制御領域300となる領域に対応する突出部59が表面に設けられている。そして、この突出部59には、矩形形状の複数の凸状部(
図8中、白部分で示される)が表面から突出して設けられ、凸状部がない領域に凹状部(
図8中、黒部分で示される)が定義される。例えば、図示するように、凸状部と凹状部とが交互に設けられてもよいし、凸状部が凹状部内に千鳥状に配列されていてもよい。この凸状部によって伸縮性フィルム126を切断し、破壊することで第2の部分304が形成され、凹状部によって第1の部分302が形成される。かくして、伸縮性フィルム126と第1の不織シート122とを含む第1の部分302と、伸縮性フィルム126の少なくとも一部が破壊されて、第1の部分302よりも伸縮性が低減した第2の部分304と、が形成され、伸縮性制御領域300,300a,300bが形成される。
【0043】
なお、第4工程において、加工ロール57の代わりに超音波ホーンを用いることで、第2の部分304のみに所定の強度の超音波を印加し、伸縮性制御領域300内の伸縮性フィルム126の破壊を行ってもよい。
【0044】
そして、図示しないが、伸縮シート部120となる連続体を更に搬送方向に給送し、カッターなどの切断装置を用いて、伸縮シート部120を外装体100の形状に切断することにより、腹側外装体102および背側外装体104となる部分を形成する。続いて、トップシート、バックシートおよび吸収体220を少なくとも備える吸収性部材200と、腹側外装体102および背側外装体104となる部分とを、ホットメルト接着剤などによって接合することで固着部242,244を形成する。そして、吸収性部材200が位置する部分で折って、腹側外装体102および背側外装体104となる部分を対向して配置する。そして、溶着などによって腹側領域31の腹側外装体102の側端部と背側領域32の背側外装体104の側端部とを相互に固着することで、サイドシール部150を形成し、ウエスト開口部WHおよび脚開口部LHとが定義されたパンツ型吸収性物品1を得る。
【0045】
上述の実施形態では、外装体100が、腹側外装体102と背側外装体104とに分離されたものを用いて説明をしたが、図示しない股部領域33に設けられた股部外装体を介して、腹側外装体102と背側外装体104とが一体的に形成されたものであってもよい。この場合、吸収性部材200は、股部外装体の表面に固着されてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、腹側外装体102と背側外装体104とを含む外装体100の全体が伸縮シート部120からなるものを用いて説明したが、腹側外装体102と背側外装体104との少なくとも一部であって、上記重複領域が伸縮シート部120を備えるものであればよく、腹側外装体102と背側外装体104とは、その一部が非伸縮状態となっているものであってもよい。例えば、腹側外装体102と背側外装体104とにおいて、伸縮シート部120は、パンツ型吸収性物品1の短手方向中央部を除いて、パンツ型吸収性物品1の短手方向側部のみに配設されていてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、吸収性部材200が、吸収性部材200の長手方向両端部のみにおいて、外装体100の肌当接面側の表面に固着された固着部242,244を備えるものを説明したが、吸収性部材200の長手方向端部以外の領域、または、吸収性部材200の非肌当接面側の全表面において、外装体100の肌当接面側の表面に固着されていてもよい。
【0048】
さらにまた、本実施形態では、外装体100として、伸縮シート部120のみを含むものを説明したが、外装体100は補助シートなどの他の部材を含むものであってもよい。例えば、吸収性部材200の長手方向両端部が着用者の肌に当たるのを防ぐために、少なくとも吸収性部材200の長手方向端部を介して、伸縮シート部120に対向する部分に補助シートが配設されていてもよい。
【0049】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることは当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。