【解決手段】 その遠位部分に配置されている検知電極を有するプローブを用いて心臓カテーテル処置を行い、前記検知電極を、前記心臓の心房におけるそれぞれの位置とガルバニ接触させて配置し、その後、前記検知電極から電位図を取得すると同時に、心室脱分極事象を検出し、前記電位図から、前記心臓における電気的伝搬を示す時変電気解剖学的マップを作成し、前記心室脱分極事象を視覚的に示すアイコンを含む一連の視覚画像で前記電気解剖学的マップを表示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、本発明の様々な原理が充分に理解されるように、多くの具体的な詳細について記載する。しかしながら、これら詳細の全てが本発明を実施するうえで必ずしも必要であるとは限らない点は当業者には理解されよう。この場合、一般的な概念を無用に分かりにくくすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及び処理に対するコンピュータプログラム命令の詳細については、詳しく示していない。
【0015】
本発明の態様は、典型的にはコンピュータ可読媒体等の永久記憶装置内に維持されるソフトウェアプログラミングコードとして具体化することができる。クライアント/サーバー環境では、かかるソフトウェアプログラミングコードは、クライアント又はサーバーに格納することができる。ソフトウェアプログラミングコードは、USBメモリ、ハードドライブ、電子媒体、又はCD−ROM等のデータ処理システムと共に使用するための様々な公知の非一時的媒体のうちのいずれにおいても具現化され得る。コードは、かかる媒体で配布してもよく、又はあるコンピュータシステムのメモリ若しくは記憶装置から、なんらかの種類のネットワークを介して、他のコンピュータシステムのユーザが使用するための他のコンピュータシステム上の記憶装置に配布してもよい。
【0016】
定義
「アノテーション」とは、対象の事象を示すと考えられる電位図上のポイントを指す。この開示では、前記事象は、典型的には、電極によって検知される電波の伝播の開始(局所活性化時間)である。
【0017】
概要
次に図面を参照し、
図1を最初に参照すると、この図は、開示される本発明の実施形態に従って構築され、動作する、生存被験体の心臓12に対して診断的又は治療的手技を実施するためのシステム10を絵で表したものである。前記システムは、操作者16によって、患者の血管系を通じて心臓12の心腔又は血管構造内に経皮的に挿入されるカテーテル14を含む。典型的に医師である操作者16は、カテーテルの遠位先端部18を、アブレーション標的部位において心臓壁と接触させる。次いで、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに同一出願人による米国特許第6,892,091号に開示されている方法に従って、機能の電気解剖学的マップ、例えば、電気的活性化マップを作成することができる。システム10の要素を具現化する1つの市販製品は、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)から入手可能なCARTO(登録商標)3システムである。このシステムは、本明細書に記載される発明の原理を具現化するために当業者によって改変され得る。
【0018】
例えば、電気的活性化マップの評価によって異常と判定された領域を、例えば、心筋に高周波エネルギーを印加する、遠位先端部18における1つ以上の電極にカテーテル内のワイヤーを通じて高周波電流を流すこと等により熱エネルギーを印加することによって、アブレーションすることができる。エネルギーは組織に吸収され、前記組織を電気的興奮性が永久に失われる点(典型的には、約60℃)まで加熱する。支障なく行われた場合、この手技によって心臓組織に非伝導性の損傷部が形成され、前記損傷部が、不整脈を引き起こす異常な電気経路を遮断する。本発明の原理を異なる心腔に適用することによって、多くの異なる心不整脈を治療することができる。
【0019】
カテーテル14は、典型的に、アブレーションを行うために必要に応じて操作者16がカテーテルの遠位端の方向転換、位置決め、及び方向付けを行うことを可能にする、好適な制御部を有するハンドル20を備えている。操作者16を支援するために、カテーテル14の遠位部分は、コンソール24内に位置する位置決めプロセッサ22に信号を提供する位置センサ(不図示)を含む。
【0020】
アブレーションエネルギー及び電気信号を、遠位先端部18に又はその付近に位置する1つ以上の電極32を通して、コンソール24に至るケーブル34を介し、心臓12へ及び心臓12から伝達することができる。ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール24から、ケーブル34及び電極32を通じて、心臓12へと伝達することができる。同様にコンソール24に接続された、1つ以上の検知電極33が、アブレーション電極32の近傍に配置され、ケーブル34に接続される。
【0021】
コンソール24は、ワイヤー接続35によって体表面電極30及び位置決めサブシステムの他の構成要素と接続される。参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,536,218号(Govariら)に教示されているように、電極32及び体表面電極30を使用して、アブレーション部位における組織のインピーダンスを測定することができる。熱電対31等の温度センサは、アブレーション電極32又はその近傍、及び必要に応じて感知電極33の近傍に実装され得る。
【0022】
コンソール24には、通常、1つ以上のアブレーション発電機25が収容されている。カテーテル14は、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザー生成光エネルギー等の任意の公知のアブレーション技術を使用して、心臓にアブレーションエネルギーを伝えるように適合させることができる。このような方法は、参照により本明細書に組み込まれる、同一出願人による米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されている。
【0023】
位置決めプロセッサ22は、特に、カテーテル14の位置及び配向座標を測定するシステム10における位置決めサブシステムの要素である。
【0024】
1つの実施形態では、前記位置決めサブシステムは、磁場生成コイル28を使用して、所定の作業体積内に磁場を生成し、カテーテルにおけるこれら磁場を検知することによって、カテーテル14の位置及び配向を判定する、磁気位置追跡の配置構成を含む。位置決めサブシステムは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,756,576号及び上記米国特許第7,536,218号に教示されているインピーダンス測定を用いることができる。
【0025】
上述したように、カテーテル14は、コンソール24に連結され、これにより操作者16は、カテーテル14の機能を観察及び調節できるようになる。コンソール24は、プロセッサ、好ましくは、適当な信号処理回路を有するコンピュータを含む。プロセッサは、モニタ29を駆動することにより、後述の視覚的表示を生成するよう動作するグラフィカルユーザーインタフェースプログラムを実行するように連結される。信号処理回路は、典型的に、カテーテル14の遠位側に配置される上述のセンサ及び複数の位置検知電極(不図示)によって作成される信号を含むカテーテル14からの信号を、受信、増幅、フィルタリング、及びデジタル化する。デジタル化された信号は、コンソール24及び位置決めシステムによって受信され、カテーテル14の位置及び配向を計算し、電極からの電気信号を解析するために使用される。
【0026】
簡略化のため図中には示さないが、通常、システム10には、他の要素も含まれる。例えば、システム10は、ECG同期信号及び信号心室脱分極事象をコンソール24に提供するために、1つ以上の体表面電極から信号を受信するように連結された心電図(ECG)モニタを含み得る。また、上述のように、システム10は、通常、基準位置センサを含み、前記基準位置センサは、患者の身体の外側に取り付けられた体外貼付式基準パッチ、又は心臓12に挿入され、心臓12に対して固定位置で維持される体内配置式カテーテルのいずれかに配置される。アブレーション部位を冷却するために、カテーテル14を通して液体を循環させるための従来のポンプ及びラインが設けられる。
【0027】
心臓カテーテル処置をモニタリングするために用いられる最新のイメージングシステムでは、操作者によって情報を効率的に処理することが妨げられるほど、ますます多くの動的に変化する情報が操作者に提示される。最新のナビゲーション及びアブレーションカテーテルは、通常、複数のセンサ、検知電極、及びアブレーション電極を有し、これらは、多くの組み合わせにおいて稼働できる。これらは、それぞれ独自の時変状態を有し、このことは、操作者が、心機能に関する広範な電気解剖学的情報と同時に評価するのに重要である。
【0028】
ユーザーインタフェース
ここで、本発明の実施形態に係るシステム10(
図1)によってモニタ29上にグラフィカルユーザインタフェースプログラムによって作成される、左心房の電気解剖学的マップの典型的な画像表示である
図2を参照する。右のペイン37は、多電極カテーテルから得られた電位図を示す。左のペイン39は、右のペイン37における縦線43に対応する時点で得られた4次元LATマップ41のスナップショットを表す。球形アイコン45は、追跡のうちの1つ又は別のECG誘導(不図示)においてR波又はQRS群が検出されたときにアクティブになる。左のペイン39のスナップショットでは、アイコン45はアクティブになっておらず、これは、スナップショットの時点で心房領域47、49から受信された信号が、心室からの遠距離場信号ではないことを示唆する。アイコン45は球形であるが、マップ41に関するその形状及び位置はいずれも例示であって、限定するものではない。アイコンのアクチベーション及び心房の相対的状態が操作者に容易に提示される限り、他の形状及び位置のアイコン45も可能である。
【0029】
1つの実施形態では、アイコン45は、マップ41から離間している。あるいは、アイコン45は、
心室のおおよそ重心に配置されてもよい。いずれの場合も、視覚的標識、例えば、アイコン45の色は、R波又はQRS群等の心室脱分極の検出を参照化している。アイコン45及びマップ41のカラースケールは、操作者による解釈を容易にするために、同じでなければならない。異なるカラースケールは、あまり直感的ではなく、更には、操作者を混乱させる。マップ上に表示される情報の印象を曲解することが起こり得る。
【0030】
ここで、本発明の実施形態に係る
図2に類似するスクリーンディスプレイである
図3を参照する。心房脱分極が、心房領域51で検出されている。アイコン45は、アクティブであり、これは、心室脱分極が生じていることを示す。しかし、アクチベーション時間は、心房領域51のアクチベーション時間とは一致していない。心房領域51からスナップショットの時点で受信された信号が、心室からの遠距離場信号によって影響を受けていないと確信を持って結論付けることができる。
【0031】
ここで、本発明の実施形態に係る心房の後壁を示す
図2に類似する別のスクリーンディスプレイである
図4を参照する。4次元LATマップのスナップショットは、縦線53に対応する時点で得られる。この時点で、活動が追跡55に認められされ、心室脱分極を示す同時動揺が追跡57にみられる。アイコン45は、アクティブであり、心室脱分極の発生と一致している。心房領域59は、追跡55が得られた誘導によってモニタリングされる。領域59は、洞房(SA)結節の領域において明らかな活性化を示している。しかし、アイコン45のアクチベーションと同時であるので、誘導が遠距離場心室活動を検出した可能性もあるため、領域59は、このスナップショットにおいて信頼性高く解釈することができない。操作者は、追跡57を参照し、右のペインにおいて規則的心房活動を評価し、そして、領域59の活性化及び近傍領域の活性化が生理学的SA結節活性化と一致しないと推測することができるが、アイコン45の点灯状態(又は他の外観)は、この種の分析の負担から操作者を解放する。
【0032】
ここで、本発明の実施形態に係る
図2に類似するスクリーンディスプレイである
図5を参照する。大きな領域61は、明らかな活性化を示すが、アイコン45の点灯状態によって示される通り、心室脱分極とは一致していない。マップ41は、心臓カテーテルのマッピング電極(不図示)の位置63を示す。
【0033】
スナップショットは上記図中に必ず示されているが、実際には、操作者は、4次元LATマップを見て、アイコン45のアクチベーションが生じたときに直ちに心室脱分極に気付く。これにより、右のペイン37に示される大量のデータを参照し、解釈することの不便さが避けられる。特に、アイコン45によって提供される情報は、推定される心房のアノテーションを心室脱分極と関連付ける。推定されるアノテーションがマップ41上の心房の位置に表されたとき、操作者は、心室脱分極が同時に存在するかどうかを直ちに判定することができる。その場合、この事象は、誤ったアノテーションであると疑われるが、その理由は、心室からの遠距離場信号によって間違いが起きた可能性があるためである。
【0034】
操作
ここで、本発明の実施形態に係る心房マッピング中の心室の電気活動を示す方法のフローチャートである
図6を参照する。
図6では、明確に示すためプロセス工程を特定の線形的順序で示してある。しかしながら、前記プロセス工程の多くは、並行して、非同期的に、又は異なる順序で実行し得ることが明白であろう。当業者であれば、プロセスを、例えば、状態図において、多数の相互に関連する状態又は事象としても表現され得ることを理解するであろう。更には、例示されているプロセス工程の全てが、この方法の実施に必要であるとは限らない場合もある。
【0035】
最初の工程65では、任意の好適な多電極カテーテルを用いて従来通り心臓をカテーテル処置する。PentaRay(登録商標)NAV又はNavistar(登録商標)Thermocool(登録商標)カテーテル(Biosense Websterから入手可能)等のカテーテルが、最初の工程65に好適である。カテーテルの電極は、心房のうちの1つにおけるそれぞれの位置とガルバニ接触して配置される。
【0036】
次に、工程67では、心臓の電気活動が記録され、心臓の活性化マップが作成される。工程67は、心房活動が記録される工程69を含む。工程69は、通常、
図5に示すように、それぞれが心室にそれぞれの位置を有する多電極のカテーテルと同時に実施される。同時に、例えば、体表面電極を用いることによって、工程71で心室活動が記録される。心室脱分極を示すQRS群又はR波がプロセッサ22(
図1)に入力されると、前述の図に示すアイコン45等のグラフィカルユーザインタフェース上のアイコンがアクティブになる。視覚的スキームが心房の脱分極ではなく心室脱分極にリンクしていることを除いて、心室脱分極の時間的関係は、心房電極と同じ視覚的スキームとしてグラフィカルディスプレイ上に示される。
【0037】
工程73では、心房脱分極が、カテーテル電極の位置のうちの1つ以上で検出される。
【0038】
次に、制御は判定工程75に進み、そこで、上記アイコンを参照することにより心房脱分極と同時に心室脱分極が存在していたかどうかを判定する。判定工程75における判定が是である場合、制御は工程77に進む。アイコンの状態が、心房脱分極の検出が信頼できない可能性があることを操作者に知らせる。したがって、アイコンは、誤りである可能性のある心房脱分極の検出が、疑わしい心房活性化、すなわち、誤ったアノテーション事象であり、遠距離場心室活動が原因である可能性があることを操作者に警告する。
【0039】
判定工程75における判定が否である場合、制御は工程79に進む。心房脱分極の検出は妥当であると考えられ、心房脱分極が検出された位置の局所活性化時間を記録する。VFE検出の懸念はない。
【0040】
工程77又は工程79を実施した後、制御は工程67に戻って手順を反復する。
【0041】
当業者であれば、本発明が、上に具体的に示し、説明したものに限定されないことを理解するであろう。むしろ、本発明の範囲は、上述した様々な特徴の組み合わせ及び一部の組み合わせ、並びに上記の説明を読むことで当業者が想到するであろう、先行技術にはない特徴の変形及び改変をも含むものである。
【0042】
〔実施の態様〕
(1) 医療手技を誘導する方法であって、
生存被験体の心臓に、プローブの遠位部分に複数の検知電極が配置されているプローブを挿入する工程と、
前記検知電極を、前記心臓の心房におけるそれぞれの位置とガルバニ接触(galvanic contact)させて配置する工程と、
その後、前記検知電極から電位図を取得し、かつ同時に、心室脱分極事象を検出する工程と、
前記電位図から、前記心臓における電気的伝搬を示す時変電気解剖学的マップを作成する工程と、
一連の視覚画像で前記電気解剖学的マップを表示する工程であって、前記画像が、前記心室脱分極事象を視覚的に示すアイコンを含む、前記マップを表示する工程と、を含む、方法。
(2) 前記電気解剖学的マップにおける前記それぞれの位置について局所活性化時間を示す工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記アイコンが、前記画像上の前記電気解剖学的マップから離間している、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記アイコンが、前記電気解剖学的マップ上において、前記心臓の心室の重心に配置されている、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記電気解剖学的マップにおいて、前記それぞれの位置のうちの少なくとも1つにおける心房脱分極の徴候を検出する工程と、
心室脱分極の事例が心房脱分極の徴候と同時に生じたことを前記アイコンの視覚的状態から判定する工程と、
前記心房脱分極の徴候が、疑わしい誤ったアノテーション事象であることを前記判定に応じて報告する工程と、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
【0043】
(6) 装置であって、
心室活動の心電図センサと、心臓カテーテルの遠位部分に少なくとも1つの検知電極が配置されている心臓カテーテルとに接続可能なプロセッサと、
前記プロセッサに連結されているディスプレイと、
グラフィカルインタフェースプログラムを含むプログラム及びデータオブジェクトを保存する前記プロセッサにアクセス可能なメモリと、を含み、前記プログラムの実行により、前記プロセッサが、以下の工程、
前記少なくとも1つの検知電極が、心臓の心房におけるそれぞれの位置とガルバニ接触しているときに、前記少なくとも1つの検知電極から電位図を取得し、かつ同時に、前記心電図センサを介して前記心臓における心室脱分極事象を検出する工程と、
前記電位図から、前記心臓における電気的伝搬を示す時変電気解剖学的マップを作成する工程と、
一連の視覚画像として前記ディスプレイ上に前記電気解剖学的マップを表示するために前記グラフィカルインタフェースプログラムを起動する工程であって、前記画像が、前記心室脱分極事象を視覚的に示すアイコンを含む、前記プログラムを起動する工程と、を実施する、装置。
(7) 前記プロセッサが、前記電気解剖学的マップにおける前記それぞれの位置について局所活性化時間を示す働きをする、実施態様6に記載の装置。
(8) 前記アイコンが、前記画像上の前記電気解剖学的マップから離間している、実施態様6に記載の装置。
(9) 前記アイコンが、前記電気解剖学的マップ上において、前記心臓の心室の重心に配置されている、実施態様6に記載の装置。
(10) 前記電気解剖学的マップにおいて、前記それぞれの位置のうちの少なくとも1つにおける心房脱分極の徴候を検出する工程と、
心室脱分極が前記心房脱分極の徴候と同時に生じたことを前記アイコンの視覚的状態から判定する工程と、
前記心房脱分極の徴候が、心室の遠距離場活動を表している可能性があることを前記判定に応じて報告する工程と、を更に含む、実施態様6に記載の装置。