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特開2016-203032流体の混合装置及び該流体の混合装置を備えた脱硝装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-203032(P2016-203032A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】流体の混合装置及び該流体の混合装置を備えた脱硝装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 5/00 20060101AFI20161111BHJP
   B01F 3/02 20060101ALI20161111BHJP
   B01D 53/90 20060101ALI20161111BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   B01F5/00 GZAB
   B01F3/02
   B01F5/00 D
   B01D53/90
   B01D53/86 228
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-83385(P2015-83385)
(22)【出願日】2015年4月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000236089
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズインダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義
(74)【代理人】
【識別番号】100133318
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 向日子
(74)【代理人】
【識別番号】100174953
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 豪
(72)【発明者】
【氏名】塚田 法広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一教
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】津村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】冠木 豊
【テーマコード(参考)】
4D048
4D148
4G035
【Fターム(参考)】
4D048AA06
4D048AB02
4D048AC04
4D048CC23
4D048CC61
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC04
4D148CC23
4D148CC61
4G035AB02
4G035AC01
4G035AC44
(57)【要約】
【課題】排ガスの圧力損失の増加を招くことなく、変動係数を低下させて排ガスと還元剤とを均等に混合できる流体の混合装置の提供である。
【解決手段】燃焼装置の排ガスダクト3内にあり、排ガスと還元剤とを混合する混合器9であって、この混合器9は流体の旋回部11と混合部13とから構成され、旋回部11は、排ガス流れと略直交する方向に平面部を有する板状部材11aと、板状部材11aの外周方向に形成された複数の開口部11bと、各開口部11bの下流側に接して流体を周方向に案内する各案内部材11dとを備え、混合部13は、頂点13cが上流側にあり、側面13aに複数の開口部13bを有する、底面のない錐体部材である。上流側の旋回部11と下流側の混合部13によって流体の滞留時間が確保されると共に、旋回部11で旋回が与えられた流体が混合部13で混合されるため、圧力損失の増加を抑えながら混合が促進され、変動係数も低下する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスと、該排ガスの流路内に注入される窒素酸化物の還元剤とを混合する流体の混合装置において、
該流体の混合装置は、流体の旋回部と、該旋回部よりも排ガス流れの下流側に設けられた流体の混合部とから構成され、前記旋回部は、排ガス流れ方向と略直交する方向に平面部を有する板状部材と、該板状部材の外周に沿って形成された複数の外周開口部と、該各外周開口部の排ガス流れ下流側に接し、外周開口部を通過する流体を周方向に案内する各案内部材とを備え、
前記混合部は、頂点を排ガス流れの上流側に有し、側面に複数の側面開口部を有する、底面のない錐体部材であることを特徴とする流体の混合装置。
【請求項2】
前記旋回部の板状部材は、前記外周開口部よりも中心側に形成された中心開口部を有し、前記混合部の錐体部材は、その頂点が、排ガス流れ方向から見て前記中心開口部と重複位置になるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の流体の混合装置。
【請求項3】
前記旋回部の各案内部材は筒状部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体の混合装置。
【請求項4】
ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスのダクト内に、窒素酸化物の還元剤を注入する還元剤注入部と、排ガスと還元剤とを混合する流体の混合装置と、排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝触媒を備えた脱硝部とを排ガス流れの上流から下流に向かって順次配置した脱硝装置において、
前記流体の混合装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流体の混合装置であることを特徴とする脱硝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所や工場等に設置されるボイラ等の燃焼装置から発生する排ガスと還元剤等の異なる流体とを混合させる流体の混合装置及び該流体の混合装置を備えた脱硝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や工場等に設置されるボイラ等の燃焼装置から発生する排ガスには、有害な窒素酸化物(NOx)が含まれている。NOxを除去する方法として、選択接触還元方法が一般的であり、この方法は、排ガスに還元剤(アンモニアなど)を噴霧した後、脱硝触媒に通過させることで、以下の反応により無害な窒素と水に変換させるものである。
【0003】
4NO+4NH+O→4N+6HO (1)
NO+NO+2NH→2N+3HO (2)
脱硝率を上げるためには、過不足なくNHを排ガス中に注入する必要がある。そこで、排ガスに還元剤を噴霧する還元剤噴霧部と脱硝触媒設置部との間の排ガス流路に排ガス混合部を設けることで、排ガス中に還元剤を均等に混合させて脱硝触媒による脱硝率を高めた技術が開示されている。
【0004】
下記特許文献1には、四角錐状の導入流路形成部材に噴出口を設けた排ガス混合器を排ガスダクトに設置し、噴出口からの噴流を衝突させることで混合を促進させた構成が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、開口を有する混合板を、排ガス流れ方向に開口部が重ならないように複数設置した排ガス混合器によって、上流側の混合板の開口部を通過した排ガスが下流側の混合板を通過する際に、当該混合板の非開口部に当たることで混合を促進させる構成が開示されている。
【0006】
更に、下記特許文献3に記載の構成によれば、排ガス流路内に、排ガス上流側の頂部に設けた矩形状平板の隙間形成部と隙間形成部の対向する辺に連結された台形状の二つの板状羽根部と板状羽根部に隣接する台形状の開口部とにより角錐台形状を形成する複数の混合セルを設け、当該混合セルを板状羽根部及び開口部を90°回転させた状態で互いに隣接して連結した混合体エレメントを構成することで、渦流を形成させて混合を促進させている。
【0007】
そして、下記特許文献4には、複数に分割したガス混合器の各々に対応させてアンモニア注入ノズルを複数に分割して配置することで、狭い空間にガス混合器を配置でき、短い距離で混合できる構成が開示されている。
【0008】
更に、下記特許文献5には、四角錐状混合装置の内部にアンモニア注入ノズルを設けることで、容易に均質な混合ガスを得ることができる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3296069号公報
【特許文献2】実開平4−65118号公報
【特許文献3】特開2013−180227号公報
【特許文献4】特許第3554997号公報
【特許文献5】特許第4335504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
脱硝触媒による脱硝率を高めるためには、排ガス中に還元剤を均等に混合させる必要がある。即ち、還元剤濃度の偏り具合をなくして分散させれば、排ガスと還元剤との混合を促進できる。還元剤濃度の偏り具合は変動係数によって表され、変動係数が小さい程、ばらつきが少ない、即ち分散していると判断される。変動係数の算出は、ダクト断面を所定量分割した仮想分割面における還元剤濃度の測定結果により実施される。
【0011】
変動係数の定義は下記式(3)及び(4)となる。
【0012】
下記において、測定点数nは仮想分割面の数(測定点数)を表し、測定値xは各仮想分割面の測定値であり、また、xは平均値である。
特許文献1〜5に記載の構成では、いずれも開口部を設けた混合器を用いているが、開口部の開口率を上げると還元剤と排ガスとの混合が促進されず、変動係数の上昇を招いてしまう。一方、開口部の開口率を下げると変動係数は低下するものの、非開口部が多いことから、排ガスの圧力損失の増加を招いてしまう。また、圧力損失が増加すると、ファンの動力が増大し、排ガス処理設備にも負荷が掛かる。
【0013】
そして、特許文献4や特許文献5に記載の構成では、排ガス混合器をダクトの同一断面に複数配置しており、複数配置することでその箇所における混合は促進されるが、それより下流側では排ガスが混合されないため、混合率の上昇は見込めない。一方、特許文献1の図3や特許文献2の図5等に示すような排ガス流れ方向に開口部が重ならないように複数設置した排ガス混合器の場合は、排ガス流れに沿って還元剤と排ガスとの混合は促進されるものの、圧力損失の増加を招いてしまう。
【0014】
尚、特許文献3に記載のガス混合装置では、大きな旋回流の形成に寄与する板状羽根部のみ残して渦流を形成させると共に、流路断面積を増やすことで圧力損失の軽減を図っている。2流体の混合の場合、流れの乱れにより直進するだけでも混合されるが、混ざり合う時間、即ち滞留時間の確保が必要である。従って、混合体エレメントにより狭い空間で渦流を形成させて混合させる場合は、滞留時間が確保されないことから、混合促進の効果もあまり期待できない。
【0015】
本発明の課題は、排ガスの圧力損失の増加を招くことなく、排ガス中の還元剤濃度の変動係数を低下させて排ガスと還元剤とを均等に混合できる流体の混合装置及び該流体の混合装置を備えた脱硝装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記本発明の課題は、下記の構成を採用することにより解決できる。本発明によれば、排ガスと還元剤との混合の促進と流体の圧力損失の増加抑制の両立が可能になる。
請求項1記載の発明は、ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスと、該排ガスの流路内に注入される窒素酸化物の還元剤とを混合する流体の混合装置において、該流体の混合装置は、流体の旋回部と、該旋回部よりも排ガス流れの下流側に設けられた流体の混合部とから構成され、前記旋回部は、排ガス流れ方向と略直交する方向に平面部を有する板状部材と、該板状部材の外周に沿って形成された複数の外周開口部と、該各外周開口部の排ガス流れ下流側に接し、外周開口部を通過する流体を周方向に案内する各案内部材とを備え、前記混合部は、頂点を排ガス流れの上流側に有し、側面に複数の側面開口部を有する、底面のない錐体部材である流体の混合装置である。
【0017】
請求項2記載の発明は、前記旋回部の板状部材は、前記外周開口部よりも中心側に形成された中心開口部を有し、前記混合部の錐体部材は、その頂点が、排ガス流れ方向から見て前記中心開口部と重複位置になるように配置されている請求項1記載の流体の混合装置である。
請求項3記載の発明は、前記旋回部の各案内部材は筒状部材である請求項1又は請求項2に記載の流体の混合装置である。
【0018】
請求項4記載の発明は、ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスのダクト内に、窒素酸化物の還元剤を注入する還元剤注入部と、排ガスと還元剤とを混合する流体の混合装置と、排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝触媒を備えた脱硝部とを排ガス流れの上流から下流に向かって順次配置した脱硝装置において、前記流体の混合装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流体の混合装置である脱硝装置である。
【0019】
(作用)
上述のように、従来技術のガス混合器では開口部を設けた混合器を用いているが、開口部の開口率を上げると変動係数の上昇を招く一方、開口部の開口率を下げると排ガスの圧力損失の増加を招いてしまうという問題があった。
【0020】
本発明の混合装置は、上流側の流体の旋回部と下流側の流体の混合部との2段構えの構成である。上流側の旋回部は、排ガス流れ方向と略直交する方向に平面部を有する板状部材であって、その外周に沿って設けた複数の外周開口部と、各外周開口部の下流側に接して流体を周方向に案内する各案内部材とを備えている。また、混合部は、頂点を排ガス上流側に有し、側面に複数の側面開口部を有する錐体部材である。
【0021】
まず上流側の旋回部では、ダクト内壁側の外周開口部に流入する流体に、案内部材により周方向の流れが与えられることで旋回流となり、流速が比較的高速に保たれる。従って、その流速を保ったまま旋回しながら混合部の側面開口部に流入し、ダクトの中心軸方向に折れ曲がるように流れる。本発明によれば、複雑で過剰な渦(Vortex)や後流(Wake)を発生させることがなく、圧力損失を低く抑えることができる。
【0022】
そして、旋回部と混合部との2段構えの構成により、流体の滞留時間が確保されることで、混合を促進させると共に圧力損失の増加も防止できる。
従って、請求項1記載の発明によれば、流体に、上流側の旋回部によりダクト内壁側で比較的高速の周方向の流れが与えられ、その流速を保ったまま下流側の混合部でダクトの中心軸方向に流れることで、圧力損失の増加を抑えながら変動係数の低下も達成される。
【0023】
尚、旋回部の板状部材には外周開口部があるものの、圧力損失の増加防止の観点からは、開口率が高い方が望ましい。しかし、外周開口部を大きくすると、旋回流の勢いが弱まってしまう。そこで、請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の作用に加えて、旋回部の板状部材に中心開口部を設けることで、圧力損失の増加をより抑えることができる。ここで開口率を上げると変動係数は上昇するが、中心開口部を通過する流体は混合部の錐体頂点から側面の傾斜に沿って流れ、側面開口部からダクトの中心軸方向に流入する。即ち、ダクトの中心軸方向から内壁側(外側)へ流れた後、再び中心軸側へと流れ、流れ方向が変化する。
【0024】
また、外周開口部を通過する流体は旋回しながらダクト内壁側から混合部の側面開口部に流入し中心軸側へと流れる。そして、混合部では、外側の外周開口部で旋回が与えられた流体と内側の中心開口部から直線方向(水平方向)に流れる流体とが合流して、側面開口部を通過する際に混合される。従って、より一層圧力損失の増加を抑えながら混合を促進させることができ、変動係数も低下する。
【0025】
そして、請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加えて、旋回部の案内部材が筒状部材であることから、流体が筒内を流れることでその流れに勢いをつけることができ高速の旋回流が保持される。
【0026】
また、請求項4記載の発明によれば、脱硝装置の排ガスダクトの還元剤注入部と脱硝部との間に、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流体の混合装置を配置することで、排ガスと還元剤とが均等に混合された流体が脱硝触媒と反応する。従って、脱硝触媒と流体との反応効率が向上し、高い脱硝率を保持できる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明によれば、上流側の旋回部と下流側の混合部からなる混合装置によって、排ガスと還元剤との流体の滞留時間も確保されると共に、旋回流が与えられた流体が混合されるため、圧力損失の増加を抑えながら混合が促進され、変動係数も低下させることができる。従って、排ガス処理設備におけるファンの動力の増大を招くこともない。
【0028】
また、請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、旋回部の板状部材に設けた中心開口部により、圧力損失の増加をより抑えることができる。また、中心開口部を通過する流体はダクトの中心軸から外側、再び中心軸側へと流れ方向が変化すること、及び旋回部における外側の旋回流と内側の直線流とが合流して混合部の側面開口部を通過する際に混合されることなどから、混合が促進され、変動係数の上昇も防止できる。
【0029】
そして、請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加えて、筒状の案内部材によって高速の旋回流を保持できるため、圧力損失の増加を抑えながら、より一層混合部での混合が促進される。
【0030】
また、請求項4記載の発明によれば、脱硝触媒と流体との反応効率が向上し、高い脱硝率を保持できる脱硝装置を提供できる。
そして、本発明の実施により排ガスと還元剤との混合性を良くすることで還元剤の使用量の節約が可能となり、未反応の還元剤の削減により、還元剤に由来する異臭も低減できることから、プラント運用の向上にも貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施例である脱硝装置の概略構成図(側面図)である。
図2図1の混合器の正面図である。
図3図1の混合器の混合部の正面図である。
図4】混合器を横に二つ並べた場合の斜視図である。
図5図4の混合器を用いた場合の流体の流速の測定結果(流動解析)を示した図である。
図6図4の混合器の旋回部を排ガス流れ方向から見た場合の図である。
図7図7(A)は、図4の混合器の混合部の平面図であり、図7(B)は、側面図である。
図8】旋回部の板状部材に中心開口部のみ設けた場合の混合器の斜視図である。
図9図9(A)は、旋回部の他の例を示した正面図であり、図9(B)は、図9(A)の案内部材の拡大図である。
図10】本発明の他の実施例である脱硝装置の概略構成図(側面図)である。
図11】本発明の他の実施例である脱硝装置の概略構成図(側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の実施の形態を示す。
【実施例1】
【0033】
以下に、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1には、本発明の一実施例である脱硝装置の概略構成図を示す。また、図2には、排ガス流れ方向(ノズル5側)から見た場合の旋回部と混合部からなる混合器の図(正面図)を示し、図3には、排ガス流れ方向から見た場合の混合部の図を示す。
【0034】
本実施例の脱硝装置1は、排ガスダクト3内に還元剤としてアンモニアを注入する還元剤注入ノズル5と脱硝触媒からなる脱硝触媒層7とが排ガス流れに沿って設けられた構成である。また、還元剤注入ノズル5と脱硝触媒層7との間には、排ガスとアンモニアとの混合を促進するための混合器9が設置されている。
【0035】
図示しないボイラ(キルンなどの燃焼反応装置でも良い)から排出される排ガスは、水平方向(矢印A方向)に導入され、還元剤注入ノズル5から噴霧されるアンモニアと共に排ガスダクト3内を流れ、混合器9によって混合された後、脱硝触媒層7に流入する。アンモニアの噴霧量は、注入配管6の調整弁6aにより排ガス量に応じて調整される。尚、還元剤には尿素を用いても良い。
【0036】
本実施例の混合器9は上流側の旋回部11と下流側の混合部13との2段構えの構成であることに特徴がある。上流側の旋回部11は、排ガス流れ方向と略直交する方向に平面部を有する板状部材11aと、板状部材11aの外周に沿って形成された複数の小径の外周開口部11bと、板状部材11aの中心に形成された大径の中心開口部11cと、各外周開口部11bの排ガス流れ下流側に接して流体を周方向に案内する各案内部材11dとを備えている。
【0037】
案内部材11dは筒状であり、図2に示すように、排ガス流れ方向から見て先端部から流体が時計回り(右回り)に流れるように周方向に配置されている。図示例では円筒状であるが、断面が四角形状などの多角形状であっても良い。尚、図2では外周開口部11b及び案内部材11dが左右に偏った配置となっているが、周方向に等間隔で配置しても良い。また、これら外周開口部11b及び案内部材11dの数に限定はなく、排ガスダクト3の大きさや形状に合わせて設置すると良いが、概ね4の倍数が適している。
【0038】
そして、混合部13は、頂点13cを排ガス上流側に有し、側面13aに複数の側面開口部13bを有する、底面のない四角錐体である。尚、四角錐ではなくても、円錐や三角錐などでも良く、排ガスダクト3の形状に合わせると良い。このことは、旋回部11の板状部材11aについても同様である。即ち、板状部材11aの形状が正方形でも円形でも良く、特に限定はない。
【0039】
そして、混合部13の四角錐体の頂点13cが、排ガス流れ方向から見て旋回部11の中心開口部11cと重複するように配置されている。
アンモニアと排ガスとからなる流体は、まず上流側の旋回部11に流入する。旋回部11では、中心開口部11cから水平方向に流れる流体の流れと外周開口部11bから案内部材11dによって旋回が与えられる旋回流とが形成される。
【0040】
中心開口部11cを流れる流体は直進することで比較的高速を保ち、また中心開口部11cを比較的大径として開口率を上げることで、圧力損失の増加を抑えることができる。一方、外周開口部11bを流れる流体は比較的小径の外周開口部11bから、案内部材11dにより周方向の流れが与えられることで、流速が比較的高速に保たれる。特に、案内部材11dを先端ほど径が小さくなるようなノズル状とすれば、高速流となる。
【0041】
そして、下流側の混合部13では、旋回部11を通過した流体が側面開口部13bから排ガスダクト3の中心軸方向に流入する。旋回部11の中心開口部11cを通過した流体は錐体頂点13cから側面13aの傾斜に沿って流れ、側面開口部13bに流入する。一方、旋回部11の外周開口部11bを通過した流体は旋回流となって、旋回しながら側面開口部13bに流入する。
【0042】
従って、旋回部11の中心開口部11cからの水平方向の流れと外周開口部11bからの旋回流とが混合部13の側面開口部13bに流入して、排ガスダクト3の中心軸方向に流れることで、効率よく混合されて、変動係数も低下する。
【0043】
一般に流れの向きが変わって流線が長く伸びれば、その間に混合は進む。しかし流れの向きがヘアピンのように急激に屈折したり迷路のようであれば、圧力損失は上昇してしまう。これに対し、本実施例の構成によれば、このような極端な流れ方向の急変やそれに伴う過剰な渦の発生を抑制できるので、圧力損失は増加しない。
【0044】
また、流体が上流側の旋回部11と下流側の混合部13を通過することで、流体の滞留時間を確保でき、混合を促進させると共に圧力損失の増加も防止できる。
尚、図示例では、板状部材11aに中心開口部11cを設けているが、中心開口部11cは必ずしも必要ではなく、中心開口部11cがなくても外周開口部11b及び案内部材11dによる旋回流により比較的高速を保ちながら混合部13の中心軸方向に流れることで、圧力損失の増加を抑えながら変動係数を低下させることができる。中心開口部11cを設けない場合は、外周開口部11bを比較的中心軸側に設けても良い。
【0045】
ここで、外周開口部11bを小さくすると高速流を保つことができるものの、圧力損失が増加しやすくなる。一方、外周開口部11bを大きくすると、圧力損失の増加は抑制されるが旋回流の勢いが弱まってしまう。そこで、更に板状部材11aに中心開口部11cを設けることで、圧力損失の増加を防止しながら、流体の混合も促進できる。
【0046】
上述の例では、排ガスダクト3内に混合器9を一つ設置した場合を示したが、混合器9は、排ガスダクト3内に複数配置すると、混合促進効果が高くなる。特に大型の脱硝装置で排ガスダクト3が大きい場合や、断面形状が長方形であって、短辺と長辺との比率の差が大きい場合などは複数設置すると良い。
【0047】
図4には、排ガスダクト3内に混合器9を横に二つ並べた場合の斜視図(ダクト3の内部)を示し、図5(A)及び(B)には、図4の混合器9を用いた場合の流体の流動解析結果を示す。また、図6には、図4の混合器9の旋回部11を排ガス流れ方向から見た場合の図を示し、図7(A)には、図4の混合器9の混合部13の平面図を示し、図7(B)には、側面図を示す。
【0048】
縦800(mm)×横2100(mm)の断面長方形の排ガスダクト3内に、ダクト内壁に接するように混合器9を横に二つ設置した。各混合器9は、径約500(mm)の中心開口部11cとその横(左右方向)に径約200×100(mm)の楕円形の外周開口部11bを4つずつ配置した板状部材11aに300(mm)長さの筒状の案内部材11dを各外周開口部11bの下流側にそれぞれ斜めに取り付けた旋回部11と、径約350(mm)の円形の側面開口部13bを各側面13aに有し、高さ700(mm)で母線長さが800(mm)である四角錐体の混合部13とし、混合部13を、その頂点13cが旋回部11の中心開口部11cの中心に一致するように配置した。頂点13cを中心開口部11cの中心と一致させることにより、極端な流れ方向の急変やそれに伴う過剰な渦の発生を抑制できるため、混合を促進しつつも圧力損失の増加を避けることが可能となる。
【0049】
尚、流動解析では、混合器9の入り口における還元剤濃度の変動係数が20の偏りがある条件で解析を行った。流動解析での変動係数の設定は、ダクト断面の長辺、短辺、対角線に設定する方法が考えられるが、最も還元剤の混合が困難となるダクト断面の対角線に対して変動係数20を設定した。
【0050】
また、この解析は汎用流体解析ソフト(Ansys Fluent)(アンシス・ジャパン株式会社製)によりモデル化し、有限体積法による定常解析により実施した。条件は、後述の変動係数の解析(表1)と同様とした。
【0051】
図5では、概ね流速0.0m/s〜9.6m/sを青色、流速9.6m/s〜16.5m/sを緑色、流速16.5m/s〜19.2m/sを黄色、流速19.2m/s〜24.7m/sを燈色、流速24.7m/s〜27.5m/sを赤色で段階的に示している。
【0052】
図5によれば、旋回部11と混合部13との間の流体の流速は16.5m/s以上の比較的高速に保たれており、特に筒状の案内部材11dを通過する流体は24.7m/s以上の箇所が多くなっている。そして、混合器9出口流速も入り口(ほぼ9.6m/s以下である)と比べて9.6m/s以上、主に16.5m/s〜19.2m/sの箇所が多く、高くなっていることが分かる。
【0053】
従って、排ガスの圧力損失は低いものと推察される。また、流線には極端な流れ方向の急変も無く、過剰な渦の発生も無いことが確認できる。
そして、筒状の案内部材11dからは流体が左右上下方向に拡散された後、中心開口部11cから流入する流体と共に排ガスダクト3の中心軸方向に流れることで、混合が促進される。
【0054】
表1には、図4に示した混合器9を用いて、混合器9出口の変動係数を調べた結果を示す。
【表1】
【0055】
なお、図8には、比較として用いた、板状部材14aに中心開口部14bのみ設けた旋回部14と混合部13を備えた混合器10を示しており、寸法、形状は図4に示した混合器9と同様である。また、解析は汎用流体解析ソフト(Ansys Fluent)(アンシス・ジャパン株式会社製)によりモデル化し、有限体積法による定常解析により実施した。そして、混合器9の入り口で対角線方向に還元剤濃度の変動係数が20%となるように設定し、混合器9の出口における還元剤濃度の変動係数を算出した。変動係数の算出は、前記式(3)及び(4)によるものとした。
【0056】
このサイズのダクトでは、手分析の場合、ダクトを6分割し、各分割面の中心(6つの測定値が得られる)の測定結果を基に実機で算出する。一方、解析では手分析の制限がないため、同サイズのダクトを数千に分割し、計算した。解析では、断面を数千に分割しているため、そのそれぞれのメッシュの初期条件の一つとして濃度(YとZ(図5)を変数としたNHの濃度勾配を表す数式であって、単位は質量分率)を与えた。入り口条件は、変動係数の式を元に前記数式の係数を決定し、数式を解析ソフトに与えた。出口の結果は出口断面の数値(解析ソフトの計算結果)から変動係数の式を用いて計算した。
【0057】
また、条件として、混合ガス(Nが75.54vol%、Oが13.04vol%、HOが8.22vol%、COが3.20vol%、wet含んだもの)及び希釈NHガス(体積分率0.03%)を設定し、350℃の物性値で解析した。
【0058】
混合ガスの密度は0.552kg/m、粘性係数は3.0325×10-5kg/m・sとし、一方で希釈NHガスの密度は0.329kg/m、粘性係数は2.161×10-5kg/m・sとした。また希釈NHガスの質量拡散係数は8.5×10-5/sとした。モデルに流入する全ガス量は、13354mN/hとし、乱流強度は標準的な乱れを想定し10%とした。
【0059】
表1に示すように、比較例の混合器10の場合は変動係数が10%と比較的高い値であったものの、本実施例の混合器9では5.8%と比較的低い値であった。従って、筒状の案内部材11dによる旋回効果により、混合率が高まることが確認された。尚、変動係数が5%程度であると、還元剤が十分に分散されていると言え、高い脱硝率を維持できる。
【0060】
特に、変動係数が5%程度では、脱硝触媒層7などの脱硝設備を複数段設置することで脱硝率を95%以上まで上げられることが実績から確認されている。
図1では脱硝触媒層7を一段しか設置していないが、この場合でも変動係数が低ければ高効率で脱硝ができる。
【0061】
例えば、還元剤注入ノズル5を格子状に数十本設置し、それぞれの注入配管6の調整弁6aもノズル毎に設置する。そして、注入配管6の調整弁6aの開度を微調整し、還元剤を均一に分散させた状態で脱硝触媒層7に流れるように調整する。このように、調整弁6aの開度調整と共に排ガス混合器9を使用することにより、より一層の高効率脱硝が実現できる。
【0062】
本実施例によれば、概ね目標値である5%程度まで変動係数が下がったことで、流体が均等に混合されていることが確認できた。従って、案内部材11dによって旋回流を引き起こすことで、脱硝触媒層7における触媒と流体との反応効率が向上し、高い脱硝率を保持できると言える。
【0063】
図9(A)には、旋回部11の他の例(正面図)を示す。
この図では、案内部材を旋回羽根(ベーン)11eとした場合を示している。図9(B)に示すように、ベーン11eは半割れの板であり、筒状の案内部材11dと比べて勢いはなくなるものの、周方向の流れが形成されるため、それほど流速は低下しない。また、外周開口部11bの全周ではなく一部に取り付ければ済むため簡素な構成となり、製造も容易である。図示例では、外周開口部11b及びベーン11eを板状部材11aの角部に4つ設けた場合を示しているが、それ以上設けても良い。
【0064】
尚、混合器9を、排ガス流れ方向に複数設置しても良い。また、脱硝反応は排ガス温度にも依存するため、注入配管6の上流側にも混合器9を設置し、排ガス温度の偏りを平滑化する目的でも使用できる。これらのことは、他の実施例にも共通する。
【実施例2】
【0065】
また、図10には、脱硝装置1の他の例(概略構成図)を示す。この例では、脱硝触媒層7を混合器9の上流側にも設けた場合を示しており、それ以外の構成は実施例1と同様である。
【0066】
この場合は、脱硝触媒層7を通過した流体、即ち排ガス中のNOxがある程度除去された排ガスが混合器9に流入して混合された後、下流側の脱硝触媒層7で残りのNOxが確実に除去される。従って脱硝率がより向上する。脱硝触媒層7を複数設けることで、触媒層7を通過する排ガスに含まれる還元剤を均一化することが可能となる。
【0067】
脱硝触媒層7を連続して(繋げて)設けた場合は、脱硝触媒層7を通る間に反応がより進む部分とあまり進まない部分が発生するため、後段の触媒は、還元剤が過剰な部分と希薄な部分が発生してしまう。従って、高脱硝の実現には脱硝触媒層7を分けて、その間に排ガス混合器9を設置することが望ましい。複数の脱硝触媒層7の中間に混合器9を設置することで、脱硝触媒層7を流れる間に生じる還元剤の偏りを解消できる。
尚、混合器9は排ガスダクト3内に複数配置しても良く、図9に示した旋回部11を用いても良い。
【実施例3】
【0068】
また、図11には、脱硝装置1の他の例(概略構成図)を示す。この例では、更に混合器9を上流側の脱硝触媒層7の手前に設けた場合を示しており、それ以外の構成は実施例2と同様である。
【0069】
還元剤注入ノズル5における還元剤の分散を確実にする目的で、一つ目の脱硝触媒層7の入口にも混合器9を設置しても良い。
脱硝触媒層7が複数設置されている場合には、各触媒層7の上流に混合器9を設置することで各触媒層7に流れる還元剤が均一となるため触媒を効率的に使用することができると共に、使用する還元剤の低減や大気へ排出されるガス中の還元剤濃度の低減が可能となる。大気へ排出されるガス中に還元剤が含まれていると異臭の原因となってしまうため、なるべく効率よく消費されることが望ましい。
【0070】
本実施例によれば、各脱硝触媒層7の手前に混合器9を設けることで、各脱硝触媒層7では排ガスと還元剤とが良く混合された状態で流入するため、よりNOx除去効果が高くなり、脱硝率の更なる向上が達成される。
尚、本実施例においても、図9に示した旋回部11を用いても良いことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
脱硝装置の他にも、異なる二つの流体を混合させる方法として、利用可能性がある。
【符号の説明】
【0072】
1 脱硝装置 3 排ガスダクト
5 還元剤注入ノズル 6 注入配管
7 脱硝触媒層 9,10 混合器
11,14 旋回部 13 混合部
図1
図2
図3
図4
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図5