特開2016-203079(P2016-203079A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-203079(P2016-203079A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20060101AFI20161111BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20161111BHJP
   B01J 41/04 20060101ALI20161111BHJP
   B01J 41/12 20060101ALI20161111BHJP
   B01J 49/00 20060101ALI20161111BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20161111BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20161111BHJP
   C02F 1/32 20060101ALI20161111BHJP
   C02F 1/20 20060101ALI20161111BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20161111BHJP
   C02F 1/70 20060101ALI20161111BHJP
   C02F 9/00 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   C02F1/58 F
   C02F1/42 D
   B01J41/04 110
   B01J41/12
   B01J49/00 162
   B01J49/00 112
   B01D61/02 500
   C02F1/44 F
   C02F1/32
   C02F1/20 A
   C02F1/28 D
   C02F1/70 Z
   C02F9/00 502F
   C02F9/00 502J
   C02F9/00 502N
   C02F9/00 502Z
   C02F9/00 503C
   C02F9/00 504B
   C02F9/00 502H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-86650(P2015-86650)
(22)【出願日】2015年4月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】大崎 和隆
(72)【発明者】
【氏名】松友 伸司
(72)【発明者】
【氏名】田中 義人
(72)【発明者】
【氏名】横山 大輔
【テーマコード(参考)】
4D006
4D025
4D037
4D038
4D050
4D624
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA32
4D006HA01
4D006KA01
4D006KB04
4D006KB11
4D006KB12
4D006KB17
4D006KB30
4D006MA01
4D006MC22
4D006PA01
4D006PB08
4D006PB28
4D006PB62
4D006PC11
4D025AA09
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4D038BA02
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4D038BB08
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4D050AB44
4D050AB46
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4D050CA03
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4D624DB01
4D624DB05
4D624DB10
4D624DB22
(57)【要約】
【課題】ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを効率良く反応させて、ホルムアルデヒドを含む水から効率良くホルムアルデヒドを除去することができる水処理方法を提供すること。
【解決手段】ホルムアルデヒドを含む被処理水W1から、ホルムアルデヒドを除去する水処理方法であって、被処理水W1を、亜硫酸水素イオンを吸着させた強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させることで、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを反応させて、被処理水W1からホルムアルデヒドを除去するイオン交換樹脂接触ステップST2を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒドを含む被処理水から、ホルムアルデヒドを除去する水処理方法であって、
被処理水を、亜硫酸水素イオンを吸着させた強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させることで、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを反応させて、被処理水からホルムアルデヒドを除去するイオン交換樹脂接触ステップを備える水処理方法。
【請求項2】
前記イオン交換樹脂接触ステップ後の被処理水を逆浸透膜によってろ過するろ過ステップを更に備える請求項1記載の水処理方法。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂接触ステップの前に、被処理水から酸化性物質を除去する酸化性物質除去ステップを更に備える請求項1又は2記載の水処理方法。
【請求項4】
前記酸化性物質除去ステップは、被処理水を活性炭に接触させる方法、被処理水に紫外線を照射する方法、被処理水に還元剤を添加する方法及び被処理水を脱気する方法からなる群より選択される少なくとも一種の方法により行われる請求項3記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場等から排出される排水には、ホルムアルデヒドが含まれる場合がある。例えば、飲料缶や食品缶をレトルト装置によって加圧加熱殺菌処理した後の冷却排水には、缶表面の塗料に由来するホルムアルデヒドが微量含まれる。レトルト装置には、食品衛生上の要請から、工業用水よりもコストが高い水道水が大量に用いられる。従って、コストを抑えるために、冷却排水を、ホルムアルデヒドを除去することによって再利用可能にすることが求められている。
【0003】
ホルムアルデヒドを含む水からホルムアルデヒドを除去する方法としては、水に亜硫酸水素イオン源化合物を添加して、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを反応させることでヒドロキシメタンスルホン酸を生成させる方法が知られている。このようにして生成したヒドロキシメタンスルホン酸は逆浸透(RO)膜によって除去できる(例えば、特許文献1〜4等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−083521号公報
【特許文献2】特許第5348297号公報
【特許文献3】特許第5527473号公報
【特許文献4】特公昭58−27996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した方法によってホルムアルデヒドを除去する場合、できるだけ多くのホルムアルデヒドを除去するため、水に亜硫酸水素イオン源化合物が多く添加される。また、水に亜硫酸水素イオン源化合物を添加して、水中でホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを反応させる場合、十分な反応時間を確保するために、水の流通するラインの容積を大きくする必要があり効率が悪い。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを効率良く反応させて、ホルムアルデヒドを含む水から効率良くホルムアルデヒドを除去することができる水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ホルムアルデヒドを含む被処理水から、ホルムアルデヒドを除去する水処理方法であって、被処理水を、亜硫酸水素イオンを吸着させた強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させることで、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを反応させて、被処理水からホルムアルデヒドを除去するイオン交換樹脂接触ステップを備える水処理方法に関する。
【0008】
また、前記イオン交換樹脂接触ステップ後の被処理水を逆浸透膜によってろ過するろ過ステップを更に備えることが好ましい。
【0009】
また、前記イオン交換樹脂接触ステップの前に、被処理水から酸化性物質を除去する酸化性物質除去ステップを更に備えることが好ましい。
【0010】
また、前記酸化性物質除去ステップは、被処理水を活性炭に接触させる方法、被処理水に紫外線を照射する方法、被処理水に還元剤を添加する方法及び被処理水を脱気する方法からなる群より選択される少なくとも一種の方法により行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを効率良く反応させて、ホルムアルデヒドを含む水から効率良くホルムアルデヒドを除去することができる水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る水処理方法の手順について示す図である。
図2図2(a)は、強塩基性陰イオン交換樹脂上での亜硫酸水素イオンとホルムアルデヒドとの反応を示す式であり、図2(b)は、強塩基性陰イオン交換樹脂上での亜硫酸水素イオンと酸化性物質との反応を示す式である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る水処理方法の手順について示す図である。
本実施形態に係る水処理方法は、ホルムアルデヒドを含む被処理水W1から、ホルムアルデヒドを除去する水処理方法である。ホルムアルデヒドを含む被処理水W1は、例えば、殺菌処理装置から排出される。殺菌処理装置としては、食品工場や飲料工場等で用いられるレトルト装置、パストライズ装置及び容器洗浄装置等(以下、「レトルト装置等」と言う場合がある)が挙げられる。レトルト装置等から排出される被処理水W1は、例えば1〜5mg/Lのホルムアルデヒド(HCHO)を含有する。被処理水W1は、ホルムアルデヒドの他に次亜塩素酸(HClO)等の残留塩素や酸素(O)等を含有する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る水処理方法は、酸化性物質除去ステップST1と、イオン交換樹脂接触ステップST2と、ろ過ステップST3と、を備える。
【0015】
酸化性物質除去ステップST1では、被処理水W1から次亜塩素酸や酸素等の酸化性物質を除去する。酸化性物質除去ステップST1は、被処理水W1を活性炭に接触させる方法、被処理水W1に紫外線を照射する方法、被処理水W1に還元剤を添加する方法及び被処理水W1を脱気する方法からなる群より選択される少なくとも一種の方法により行われることが好ましい。このステップにて除去される酸化性物質としては、酸素や遊離酸として存在する次亜塩素酸のほか、イオン状の次亜塩素酸、クロラミン類、鉄(III)イオン、オゾンなどが例示できる。
【0016】
被処理水W1を活性炭に接触させる方法において用いられる活性炭としては、例えば、ダイアソープW10−30(カルゴン・カーボン社製)が挙げられる。被処理水W1を活性炭に接触させることで、被処理水W1から残留塩素やオゾン等を分解除去することができる。
【0017】
被処理水W1に紫外線を照射する方法では、例えば、UVランプを用いて被処理水W1に紫外線を照射する。UVランプとしては、中圧/高圧水銀ランプが用いられる。被処理水W1に紫外線を照射することで、被処理水W1から残留塩素やオゾン等を分解除去することができる。
【0018】
被処理水W1に還元剤を添加する方法において用いられる還元剤としては、亜硫酸水素、チオ硫酸、亜リン酸及び次亜リン酸の塩が挙げられる。より詳しくは、これらの化合物のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩が挙げられる。被処理水W1に還元剤を添加することで、被処理水W1から残留塩素や鉄(III)イオン、オゾン等を分解除去することができる。
【0019】
被処理水W1を脱気する方法としては、超音波による脱気や、脱酸素膜による脱気が例示される。脱酸素膜としては、例えば、SEPAREL MJ−520(ポリメチルペンテン製の中空糸膜モジュール、DIC株式会社製)が挙げられる。被処理水W1を脱気することで、被処理水W1から酸素を分離除去することができる。
【0020】
イオン交換樹脂接触ステップST2では、酸化性物質除去ステップST1において酸化性物質を除去した被処理水W1を、亜硫酸水素イオン(SBS)を吸着させた強塩基性陰イオン交換樹脂(強塩基性IER)に接触させる。ここで、亜硫酸水素イオンを吸着させた強塩基性陰イオン交換樹脂を、「SBS型強塩基性IER」と言う場合がある。被処理水W1を、亜硫酸水素イオンを吸着させた強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させることで、強塩基性陰イオン交換樹脂上でホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを反応させる。
【0021】
図2は、イオン交換樹脂接触ステップST2における反応を示す式である。図2(a)は、SBS型強塩基IER上での亜硫酸水素イオンとホルムアルデヒドとの反応を示す式であり、図2(b)は、SBS型強塩基IER上での亜硫酸水素イオンと酸化性物質との反応を示す式である。
【0022】
図2(a)に示すように、イオン交換樹脂接触ステップST2において、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとが反応することによって、ヒドロキシメタンスルホン酸(HMSA)イオンが生成する。生成したヒドロキシメタンスルホン酸イオンは、強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着された状態に維持される。このようにして、被処理水W1からホルムアルデヒドが除去される。
【0023】
一方、被処理水W1が次亜塩素酸や酸素等の酸化性物質を含有する場合には、図2(b)に示すように、亜硫酸水素イオンが酸化されて硫酸イオンが生成し、生成した硫酸イオンは、強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着された状態に維持される。
【0024】
SBS型強塩基IERは、例えば、強塩基性陰イオン交換樹脂からなる粒子を用いて成型した樹脂床に、再生剤としての亜硫酸水素ナトリウム水溶液を通水させることで得ることができる。このような樹脂床には、厚さ方向に被処理水W1を通水させる。樹脂床の厚さは、300〜1500mmであることが好ましい。樹脂床の厚さが、300mm未満であると、被処理水W1からホルムアルデヒドが除去し難くなる傾向にあり、1500mm超であると、被処理水W1の処理速度が遅くなる傾向にある。
【0025】
強塩基性陰イオン交換樹脂の再生(亜硫酸水素イオンの吸着)は、以下のような条件で行うことができる。
再生剤の亜硫酸水素ナトリウム濃度:5〜15質量%
再生剤の通水速度:0.7〜2m/h
再生剤の通水量:0.4〜2.5BV(ベッドボリューム)
リンス水量:1〜10BV
【0026】
強塩基性陰イオン交換樹脂の再生は、スプリット・フロー再生、向流再生及び並流再生のいずれで行ってもよい。イオン交換樹脂接触ステップST2において、未反応のホルムアルデヒドのリーク量を抑制する観点から、強塩基性陰イオン交換樹脂の再生は、スプリット・フロー再生又は向流再生で行うのが好ましい。
再生された強塩基性陰イオン交換樹脂は、イオン交換樹脂接触ステップST2において被処理水W1からホルムアルデヒドを十分に除去する観点から、再生レベル(亜硫酸水素イオンの吸着量)が1〜4eq/L−R(104〜416gNaHSO/L−R)であることが好ましい。
【0027】
亜硫酸水素イオンを吸着させる強塩基性陰イオン交換樹脂は、強塩基性のイオン交換基を有する樹脂であれば特に限定されない。強塩基性のイオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基やジメチルエタノールアンモニウム基等の四級アンモニウム基が挙げられる。亜硫酸水素イオンを吸着させる強塩基性陰イオン交換樹脂としては、亜硫酸水素イオンを効率よく吸着させて、ホルムアルデヒドを効率よく除去する観点から、均一粒径強塩基性陰イオン交換樹脂を用いるのが好ましい。
【0028】
亜硫酸水素イオンを吸着させる強塩基性陰イオン交換樹脂としては、具体的には、Dowexシリーズ(ダウ・ケミカル社製)、Amberliteシリーズ(ダウ・ケミカル社製)、Duoliteシリーズ(ダウ・ケミカル社製)、Lewatitシリーズ(ランクセス社製)、Puroliteシリーズ(ピュロライト社製)及びDiaionシリーズ(三菱化学株式会社製)等の強塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。
【0029】
イオン交換樹脂接触ステップST2において、被処理水W1を、亜硫酸水素イオンを吸着させた強塩基性陰イオン交換樹脂に通水させる速度は、15〜80BV/hであることが好ましい。この、被処理水W1を通水させる速度が、15BV/h未満の場合、被処理水W1の処理時間が長くなってしまう傾向にあり、80BV/hを超える場合にはホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとが十分に反応し難い傾向にある。
【0030】
ろ過ステップST3では、イオン交換樹脂接触ステップST2においてホルムアルデヒドを除去した被処理水W1を、逆浸透膜(RO膜)によってろ過する。ろ過ステップST3では、被処理水W1を、RO膜を透過する処理水W2(透過水)とRO膜を透過しない濃縮水に分離する。なお、RO膜には、通常のRO膜よりも細孔がルーズなナノ濾過膜(NF膜)も含まれる。
【0031】
被処理水W1をRO膜によってろ過するので、イオン交換樹脂接触ステップST2において生成したヒドロキシメタンスルホン酸イオンが強塩基性陰イオン交換樹脂から脱離したとしても、処理水W2にはヒドロキシメタンスルホン酸イオンがほとんど含まれない。
【0032】
本実施形態に係る水処理方法によれば、以下の効果が奏される。
(1)本実施形態では、水処理方法が、被処理水W1を、SBS型強塩基IERに接触させるイオン交換樹脂接触ステップST2を備えるものとした。
これにより、被処理水W1の含むホルムアルデヒドが、強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着された亜硫酸水素イオンと反応して、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンが生成する。生成したヒドロキシメタンスルホン酸イオンは、強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着された状態に維持されて、被処理水W1からはホルムアルデヒドが除去される(図2(a))。このように、SBS型強塩基IERは、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを効率良く反応させるための良好な反応場となる。従って、本実施形態に係る水処理方法によれば、被処理水W1から効率良くホルムアルデヒドを除去することができる。
【0033】
(2)本実施形態では、水処理方法が、イオン交換樹脂接触ステップST2後の被処理水W1を逆浸透膜によってろ過するろ過ステップST3を更に備えるものとした。
これにより、イオン交換樹脂接触ステップST2において生成されたヒドロキシメタンスルホン酸イオンが、強塩基性陰イオン交換樹脂から脱離したとしても、逆浸透膜によって被処理水からヒドロキシメタンスルホン酸イオンを除去できる。従って、本実施形態に係る水処理方法によれば、ホルムアルデヒドを含む被処理水W1からホルムアルデヒドを確実に除去することができる。
【0034】
(3)本実施形態では、水処理方法が、イオン交換樹脂接触ステップST2の前に、被処理水W1から酸化性物質を除去する酸化性物質除去ステップST1を更に備えるものとした。
イオン交換樹脂接触ステップST2において、強塩基性陰イオン交換樹脂上で亜硫酸水素イオンと酸化性物質とが反応すると硫酸イオンが生成し、生成した硫酸イオンは強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着される(図2(b))。この酸化性物質と亜硫酸水素イオンとの反応は強塩基性陰イオン交換樹脂上の亜硫酸水素イオンを消費するため、亜硫酸水素イオン型の強塩基性陰イオン交換樹脂が破過するまでの時間が短くなる。本実施形態によれば、酸化性物質除去ステップST1において被処理水W1から酸化性物質を除去するので、強塩基性陰イオン交換樹脂が破過するまでの時間を長くでき、被処理水W1からより効率良くホルムアルデヒドを除去することができる。
【0035】
(4)本実施形態では、酸化性物質除去ステップST1が、被処理水を活性炭に接触させる方法、被処理水に紫外線を照射する方法、被処理水に還元剤を添加する方法及び被処理水を脱気する方法からなる群より選択される少なくとも一種の方法により行われるものとした。
これにより、効率的に被処理水W1から酸化性物質を除去できるので、亜硫酸水素イオン型の強塩基性陰イオン交換樹脂が破過するまでの時間をより長くできる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態に係る水処理方法について説明したが、本発明は上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、被処理水W1をレトルト装置等から排出される水としたが、本発明はこれに限定されず、レトルト排水よりもホルムアルデヒド濃度の高い水を被処理水として用いることもできる。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
SBS型強塩基IERによって、レトルト装置から排出される冷却排水(被処理水)を処理した。冷却排水の性状は以下の通りである。
ホルムアルデヒド濃度:1mg/L
遊離残留塩素濃度:2mg/L
pH:6.5〜7.5(水道水質基準内)
電気伝導率:150μS/cm程度
温度:60℃(ただし、イオン交換樹脂の耐熱性の観点から30℃に冷却して処理した)
【0039】
SBS型強塩基IERは、強塩基性陰イオン交換樹脂からなる粒子を用いて成型した樹脂床に、再生剤としての亜硫酸水素ナトリウム水溶液を通水させることで得た。強塩基性陰イオン交換樹脂の再生(亜硫酸水素イオンの吸着)は、以下のような条件で行った。強塩基性陰イオン交換樹脂の再生レベル(亜硫酸水素イオンの吸着量)は、2eq/L−Rであった。
樹脂床の厚さ:800mm
再生方式:スプリット・フロー再生
再生剤の亜硫酸水素ナトリウム濃度:10質量%
再生剤の通水速度:1.2m/h
再生剤の通水量:1.5BV
リンス水量:2.5BV
【0040】
被処理水を、SBS型強塩基IERに通水させる速度は、60BV/hとした。
このような処理によって得られた処理水の残留ホルムアルデヒド濃度は、0.08mg/L以下であり、水道水質基準を満足するものであった。また、処理水の残留亜硫酸水素イオン濃度は、検出限界以下であった。処理水に亜硫酸水素イオンがほとんど含まれないことから、処理水を再利用する際に、残留塩素濃度の維持するために行う次亜塩素酸ソーダの薬注量の調整が容易になる。
【符号の説明】
【0041】
ST1…酸化性物質除去ステップ
ST2…イオン交換樹脂接触ステップ
ST3…ろ過ステップ
W1…被処理水
図1
図2