特開2016-203488(P2016-203488A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-203488(P2016-203488A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】発泡樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 37/02 20060101AFI20161111BHJP
   B29C 39/28 20060101ALI20161111BHJP
   B29C 39/22 20060101ALI20161111BHJP
   B29C 39/02 20060101ALI20161111BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20161111BHJP
【FI】
   B29C37/02
   B29C39/28
   B29C39/22
   B29C39/02
   B29K105:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-87738(P2015-87738)
(22)【出願日】2015年4月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100188226
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 俊達
(72)【発明者】
【氏名】水崎 伸
【テーマコード(参考)】
4F201
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F201AA42
4F201AB02
4F201AG03
4F201AG20
4F201AH26
4F201AH27
4F201AK02
4F201AM33
4F201BA08
4F201BR15
4F201BS02
4F201BS04
4F201BS10
4F202AA42
4F202AB02
4F202AG03
4F202AG20
4F202AH26
4F202AH27
4F202AK02
4F202AM33
4F202CA01
4F202CB01
4F202CB12
4F202CL04
4F202CQ01
4F204AA42
4F204AB02
4F204AC05
4F204AG20
4F204EA01
4F204EB01
4F204EK13
4F204EK17
4F204EL27
4F204EW01
(57)【要約】
【課題】成形体に付随して形成される薄膜部の切除を容易に行うことが可能な発泡樹脂成形品の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係る発泡樹脂成形品であるシートパッド10の製造方法では、まず、成形金型20内で発泡ウレタン原料11を発泡させる発泡工程が行われ、その後、成形体15に付随して形成されるバリ17を切除する後処理加工が行われる。そして、本発明に係るシートパッド10の製造方法では、後処理加工を行うにあたり、バリ17に、ドライアイス粒子52を圧縮空気と共に吹き付ける。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形金型内で発泡樹脂を発泡成形した後、成形体に付随して形成される薄膜部を切除する後処理加工を行う発泡樹脂成形品の製造方法において、
前記後処理加工に際し、前記薄膜部にドライアイス粒子を吹き付ける発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記ドライアイス粒子の吹き付けは、前記成形金型の型開き後、前記成形体を脱型する前に行われる請求項1に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記後処理加工における前記ドライアイス粒子の吹き付けは、前記成形金型のパーティングラインに沿って行われる請求項2に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形金型内で発泡樹脂を発泡成形した後、成形体に付随して形成されるバリ等の薄膜部を切除する発泡樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発泡樹脂成形品の製造方法として、成形金型から成形体を脱型した後、その成形体に付属するバリを、例えば、カッターやエア鋏等を用いてトリミングするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−19718号公報(段落[0005]、[0018]、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の発泡樹脂成形品の製造方法では、トリミングに手間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、成形体に付随して形成される薄膜部の切除を容易に行うことが可能な発泡樹脂成形品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、成形金型内で発泡樹脂を発泡成形した後、成形体に付随して形成される薄膜部を切除する後処理加工を行う発泡樹脂成形品の製造方法において、前記後処理加工に際し、前記薄膜部にドライアイス粒子を吹き付ける発泡樹脂成形品の製造方法である。
【0007】
請求項2の発明は、前記ドライアイス粒子の吹き付けは、前記成形金型の型開き後、前記成形体を脱型する前に行われる請求項1に記載の発泡樹脂成形品の製造方法である。
【0008】
請求項3の発明は、前記後処理加工における前記ドライアイス粒子の吹き付けは、前記成形金型のパーティングラインに沿って行われる請求項2に記載の発泡樹脂成形品の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
[請求項1の発明]
請求項1の発明では、成形体に付随して形成される薄膜部を切除する後処理加工が、薄膜部にドライアイス粒子を吹き付けるだけで済むので、薄膜部をカッターやエア鋏で切り取る場合と比較して、成形体と薄膜部の境界部分を正確に把握する必要がなくなり、後処理加工を容易に行うことが可能となる。また、ドライアイス粒子を使用するので、水やフレーム(炎)、レーザーなどを使用する場合と違い、成形体が濡れたり焦げたりすることもない。さらに、ドライアイス粒子の吹き付け箇所の温度が下がり、薄膜部が固くなるので効率よく薄膜部を除去することが可能となる。
【0010】
[請求項2の発明]
請求項2の発明では、成形金型の型開き後、ドライアイス粒子を薄膜部に吹き付けてから、成形体を脱型する。本発明によれば、脱型と同時に、薄膜部が切除された状態の成形体を得ることが可能となり、作業効率の向上を図ることが可能となる。また、本発明では、ドライアイス粒子の吹き付け方向から見たときに、成形金型にて薄膜部を背後から支持することが可能となり、薄膜部が吹き付け方向に動くことを防いで、薄膜部を安定して切除することが可能となる。
【0011】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、パーティングラインに発生するバリを容易に切除することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るシートパッドの斜視図
図2】成形金型の斜視図
図3】(A)発泡成形前の成形金型の断面図、(B)発泡成形後の成形金型の断面図
図4】型開き時の成形体及び成形金型の(A)断面図、(B)平面図
図5】(A)後処理工程時の成形体及び成形金型の断面図、(B)後処理工程時のバリ周辺の断面図
図6】本発明の第2実施形態に係る発泡樹脂成形品の(A)平面図、(B)A−A断面図
図7】(A)発泡成形後の成形金型の断面図、(B)開口被膜の断面図
図8】(A)後処理工程時の成形体及び成形金型の断面図、(B)後処理工程時の開口被膜周辺の断面図
図9】(A)変形例に係る固定治具及び成形体の断面図、(B)変形例に係る固定治具及び成形体のバリ周辺の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明をシートパッドの製造方法に適用した第1実施形態を図1図5に基づいて説明する。本実施形態のシートパッド10は、軟質ウレタンフォームの成形品であって、図1の例に示すように、車両用シート90のシートクッション91として用いられる。
【0014】
シートパッド10の製造には、図2に示す成形金型20が用いられる。成形金型20は、固定型21と可動型22とからなる。固定型21のうち可動型22との対向面21Mには、固定側凹部23が陥没形成され、その固定側凹部23の内側に、シートパッド10の上面を成形するための固定側成形面25が形成されている。また、可動型22のうち固定型21との対向面22Mには、シートパッド10の下面を成形するための可動側成形面26(図3(B)参照)が形成されている。そして、固定型21と可動型22とを閉じると、シートパッド10を成形するためのキャビティ20Aが形成される(図3(B)参照)。また、固定型21の対向面21Mにおける固定側成形面25の外側部分と、可動型22の対向面22Mにおける可動側成形面26の外側部分とには、型閉め時において互いに密接するシール面27,28が形成されている。
【0015】
シートパッド10を製造するには、成形金型20を開いた状態で、固定型21及び可動型22に離型剤を塗布し、固定型21の固定側凹部23に、適宜、インサート部材(図示せず)をインサートすると共に、ウレタン原液11を注入する(図3(A)参照)。次いで、成形金型20を型閉じし、ウレタン原液11を発泡硬化させる。すると、図3(B)に示すように、キャビティ20A内に、シートパッド10となる成形体15が得られる。
【0016】
図4(A)及び図4(B)には、型開きしたときの固定型21及び成形体15が示されている。図4(B)に示されるように、成形体15には、成形金型20のパーティングラインPLに沿って薄膜状のバリ17(本発明の「薄膜部」に相当する。)が付随して形成される。バリ17には、細い短冊状をなして成形体15の外縁部からパーティングラインPLを横切るように形成された複数の帯状部17Aも含まれる。なお、バリ17は、固定型21と可動型22とのシール面27,28同士の間の隙間に、発泡中のウレタンが入り込むことで形成される。また、帯状部17Aは、成形金型20のパーティングラインPLに設けられたガス抜き用浅溝により形成される。
【0017】
ここで、本実施形態のシートパッド10の製造方法では、図5(A)に示すように、成形体15を固定型21から外す(脱型する)前に、後処理工程としてドライアイスブラストが行われる。具体的には、成形金型21における固定側成形面25と可動側成形面26(図3(B)参照)との境界線、即ち、パーティングラインPLに沿って、ドライアイス粒子52が圧縮空気と共にノズル51から噴射される。このとき、図5(B)に示すように、ドライアイス粒子52は、バリ17にも吹き付けられ、このドライアイス粒子52の吹き付けによってバリ17が成形体15から切除される。なお、このドライアイスブラストの際、注入時に飛散したウレタン原液11に起因する発泡ウレタンや離型剤もシール面27から除去される。
【0018】
ドライアイスブラストが終了すると、成形体15が脱型される。その後、成形体15にクラッシング等の処理が施され、シートパッド10が得られる。
【0019】
このように、本実施形態のシートパッド10の製造方法では、ドライアイス粒子52を吹き付けるだけで、成形体15からバリ17が切除されるので、バリ17をカッターやエア鋏等で切り取る場合と比較して、成形体15とバリ17の境界部分を正確に把握する必要がなくなり、バリ取り加工を容易に行うことが可能となる。また、図5(B)に示すように、ドライアイス粒子52の吹き付け方向から見たときに、固定型21がバリ17を背後から支持するので、ドライアイス粒子52を吹き付ける際にバリ17が吹き付け方向に動くことが防がれ、バリ17を安定して切除することが可能となる。また、ドライアイス粒子52を使用するので、水やフレーム(炎)、レーザーなどを使用する場合と違い、成形体15が濡れたり焦げたりすることもない。さらに、ドライアイス粒子52の吹き付け箇所の温度が下がり、バリ17が固くなるので効率よくバリ17を除去することが可能となる。
【0020】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を図6図8に基づいて説明する。本実施形態の発泡樹脂成形品10Vは、図6(A)及び図6(B)に示すように、軟質ウレタンフォームの成形品であって、開口部31を有している。
【0021】
発泡樹脂成形品10Vを製造するには、上記第1実施形態と同様に、固定型21Vと可動型22Vとからなる成形金型20Vのキャビティ20VAでウレタン原液を発泡硬化させる。すると、図7(A)に示すように、キャビティ20VA内に、発泡樹脂成形品10Vとなる成形体15Vが得られる。ここで、本実施形態では、図7(B)に示すように、発泡成形時に、開口部31(図6(A)及び図6(B)参照)を覆う薄膜状の開口被膜32(本発明の「薄膜部」に相当する。)が成形体15Vに付随して形成される。
【0022】
次いで、成形金型20Vが型開きされ、図8(A)に示すように、上記第1実施形態と同様に、後処理工程としてドライアイスブラストが行われる。このドライアイスブラストは、図8(B)に示すように、開口被膜32に対して行われる。すると、ドライアイス粒子52の吹き付けによって開口被膜32が成形体15Vから切除され、開口部31(図6(A)及び図6(B)参照)が形成される。なお、ドライアイスブラストは、開口被膜32に対してだけでなく、成形金型20VのパーティングラインPLに沿って行われてもよい。この場合には、上記第1実施形態と同様に、バリ17の切除が可能となると共に、注入時に飛散したウレタン原液11に起因する発泡ウレタンや離型剤をシール面27から除去することが可能となる。
【0023】
ドライアイスブラストが終了すると、成形体15Vが脱型される。その後、成形体15Vにクラッシング等の処理が施され、発泡樹脂成形品10Vが得られる。
【0024】
本実施形態の発泡樹脂成形品10Vの製造方法に関する説明は以上である。本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果を奏することが可能となる。
【0025】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0026】
(1)上記第1実施形態では、本発明の「発泡樹脂成形品」として、車両用のシートパッド10を例示したが、車両用シート90の背凭れ部分を構成するシートバック、衝撃吸収材(EA材)、フロアスペーサ、アームレスト等の車両用部品であってもよい。また、本発明は、車両用部品だけでなく、椅子やソファ等の家具に適用してもよい。
【0027】
(2)上記実施形態では、成形体15,15Vを脱型する前に、ドライアイスブラストを行っていたが、バリ17や開口被膜32が付随した状態の成形体15,15Vを脱型した後、ドライアイスブラストを行ってもよい。具体的には、図9(A)に示すように、脱型後の成形体15,15Vを固定治具41に装着してから、ドライアイスブラストを行う。固定治具41は、図9(B)に示すように、ドライアイス粒子52の吹き付け方向から見たときに、バリ17や開口被膜32を背後から支持する構造となっていることが好ましい。なお、図9(A)及び図9(B)には、上記第1実施形態の成形体15を固定治具41に装着する例が示されている。
【0028】
(3)ドライアイス粒子の吹き付けは、人の手で行われてもよいし、ロボットにより行われてもよい。なお、上記実施形態でロボットによる吹き付けを行う場合、バリ17を切除する際には、パーティングラインPLの位置情報に基づいてノズル51を移動させるようにロボットを制御し、開口被膜32を切除する際には、開口被膜32の位置情報に基づいてノズル51を移動させるようにロボットを制御すればよい。
【0029】
(4)上記実施形態では、本発明に係る発泡樹脂として、軟質ウレタンを例示したが、発泡樹脂は、モールド発泡成形が可能な樹脂であればよく、例えば、硬質ウレタンであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 シートパッド(発泡樹脂成形品)
10V 発泡樹脂成形品
15,15V 成形体
17 バリ(薄膜部)
20,20V 成形金型
21,21V 固定型
22,22V 可動型
32 開口被膜(薄膜部)
52 ドライアイス粒子
PL パーティングライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9