【解決手段】下記式で表される、アントロシンまたは医薬として許容されるその塩と医薬として許容される担体とを含有する組成物。前記組成物が、カスパーゼ−3酵素経路を活性化し、XIAP、NF−kB及びサイクリンD1の発現を抑制することにより非小細胞肺癌細胞の成長を抑制する方法。
非小細胞肺癌細胞の成長を抑制するための薬剤の調製における組成物の使用であって、前記組成物が、有効量のアントロシンまたは医薬として許容されるその塩と、医薬として許容される担体とを含む、使用。
前記組成物が、カスパーゼ-3酵素経路を活性化すること、ならびにXIAP、NF-kBおよびサイクリンD1の発現を抑制することにより、非小細胞肺癌細胞の成長を抑制する、請求項1に記載の使用。
前記組成物が、非小細胞肺癌細胞におけるIFI44、IFIT1、MX1、NFkB1、IFIT2、CTNNBL1、SENP2、CEACAM1、POU5F2、ABCB5、ABCG2およびXAF1の遺伝子発現を低下させる、請求項1に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図4】ヒト非小細胞肺癌細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを誘導するために投与された、化学的に合成したアントロシンの用量依存的な効果を示す図である。パート(A)は、ヒト非小細胞肺癌細胞およびヒト気管支上皮細胞の増殖を阻害するために投与された、化学的に合成したアントロシンの用量依存的な効果を示すグラフである。パート(B)は、H1975細胞およびH441細胞における、化学合成アントロシン誘導アポトーシスを示す図である。
【
図5】パート(A)は、アントロシンで処理したH441細胞の遺伝子マッピングである。濃い灰色の領域は、標的遺伝子を表し、薄い灰色の領域は、標的遺伝子以外の遺伝子を表す。パート(B)は、STRING9.0ソフトウェアパッケージの使用により予測された、アントロシンにより影響を受けるH441細胞のシグナル伝達経路、および阻害可能な標的遺伝子を示す図である。
【
図6】アントロシンが、主に、カスパーゼ-3酵素経路の活性、ならびにXIAP、NF-kBおよびサイクリンD1発現の阻害によって、H441細胞の腫瘍形成を阻害することを示す図である。アントロシンのタンパク質発現に対する阻害効果を、相対的倍数として示す。β-アクチンタンパク質が、内部基準(ローディング対照)であった。3つの別個の実験が、同じような結果を示した。
【
図7】アントロシンが、in vivoで、肺腫瘍形成を阻害することを示す図である。H441-2G細胞(6×10
5/100μl PBS)を、外側尾静脈を介して、免疫不全マウスに静脈内注射した。アントロシンによる治療(5mg/kg/日の低用量および10mg/kg/日の高用量)を、4週間にわたって、担腫瘍マウスに毎日腹腔内注射することにより実施した。週1回観察し、データを、(A)VIS画像、(B)腫瘍の成長、(C)体重、および(D)生存曲線について記録した。
【0058】
以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、非限定的であり、本発明の種々の態様および特徴を代表するものにすぎない。
【0059】
(実施例)
(実施例1)
アントロシンの調製
別段の指定がない限り、すべての反応を、N
2保護および無水条件下で行った。すべての試薬は、試薬供給業者から商業的に入手可能であり、精製することなくそのまま使用した。試薬を、Purification of Laboratory Chemicals(Peerrinら、Pergamon Press: Oxford、1980)に記載されているガイドラインに従って精製した。テトラヒドロフラン(THF)およびトルエンを、精製のために、金属ナトリウムと共に還流し、DCMを、CaH
2還流により精製した。別段の指示がない限り、収率は、カラムクロマトグラフィーから得る。
【0060】
Qingdao Ocean Chemical Plantにより製造された薄膜クロマトグラフィーシリカゲルプレート(60F-254)を使用して、反応および試験を行った。Qingdao Marine Chemical Inc.によって製造された、200〜300メッシュのシリカゲルを、カラムクロマトグラフィー用に使用し、石油エーテルの沸点範囲は、60〜90℃であった。
【0061】
すべての赤外線データは、以下の装置、すなわちShimadzu IRPrestige 21により測定し;すべての核磁気共鳴を、以下の装置、すなわち、Bruker Advance 500(
1H:500 MHz、
13C:125MHz)により測定し、TMS、または重水素化溶媒中に残った非重水素化溶媒を、内部標準として使用した。
【0062】
アントロシンの反応経路を、
図2および
図3に示し、それは、以下のステップに従う。
【0063】
化合物Fの合成
【0064】
【化13】
【0065】
マグネシウム屑(0.49g、20mmol)とヨウ素の小片とを含有する、THF(3mL)中の混合物を、加熱して沸騰させた。以下の構造を有するグリニャール試薬を、その混合物にTHF溶液(10mL)中の(4-ブロモ-ブタ-1-イニル)トリメチルシランを滴下添加することにより調製し、室温で0.5時間撹拌し続けて、以下の構造、
【0066】
【化14】
【0067】
を有するグリニャール試薬を調製した。
【0068】
調製したグリニャール試薬を、-78℃で、THF溶液(40mL)中のCuBr・Me
2S(0.32g、1.56mmol)の混合物に添加した。次いで、THF溶液(27mL)中の、化合物H(0.95g、5.2mmol)の混合物を滴下添加した。2時間撹拌した後、飽和NH
4Cl水溶液(50mL)を添加して、反応をクエンチした。水性相を、EtOAc(40mL×2)で抽出し、有機相を合わせて、乾燥し、ロータリーエバポレーションにより濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン=1/100)により精製して、黄色の油性液体化合物Gを得た。
【0069】
THF溶液(60mL)中の化合物Gを、-78℃に冷却し、超原子価ヨウ素化合物(2.5g、7.3mmol)およびTBAF溶液(THF中1M、7.3mL、7.3mmol)を添加した。溶液を、-40℃で4時間撹拌し、飽和NH
4Cl水溶液(50mL)を添加して、反応をクエンチした。水性相をEtOAc(40mL×2)で抽出し、有機相を合わせて、乾燥して、ロータリーエバポレーションにより濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン=1/20)により精製して、1.01gの無色の油性液体を得た(2つのステップについて収率58%)。
【0070】
IR(neat、cm
-1):3283、2960、2174、1750、1727、1434、1250、1220、1135、844、760、641;
【0071】
【数1】
【0072】
化合物Eの合成
【0073】
【化15】
【0074】
LiAlH
4(0.49g、12.9mmol)を、-40℃で、THF溶液(30mL)中の化合物F(1.07g、3.2mmol)に添加した。室温で4時間撹拌し、飽和酒石酸カリウムナトリウム溶液(20mL)を使用して、反応をクエンチした。水性相を、EtOAc(20mL×3)で抽出し、有機相を合わせて、乾燥し、ロータリーエバポレーションにより濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン=1/3)により精製して、0.86gの無色の油性液体を得た(収率87%)。
【0075】
IR(neat、cm
-1):2958、2920、2851、1261、1249、1034、841、796、668;
【0076】
【数2】
【0077】
化合物Dの合成
【0078】
【化16】
【0079】
KOH(0.76g、13.5mmol)を、室温で、THF/MeOH/H
2O溶液(20mL/10mL/2mL)中の化合物D(0.84g、2.7mmol)に添加した。反応系を、6時間還流し、0℃に冷却し、飽和NH
4Cl水溶液(20mL)を使用して、反応をクエンチした。水性相を、EtOAc(15mL×2)で抽出し、有機相を合わせて、乾燥し、ロータリーエバポレーションにより濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン=1/3)により精製して、0.6gの無色の油性液体を得た(収率95%)。
【0080】
IR(neat、cm
-1):3299、2954、2878、2115、1631、1464、1434、1379、1056、998、634;
【0081】
【数3】
【0082】
化合物Cの合成
【0083】
【化17】
【0084】
TEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-1-イル)オキシフリーラジカル)(0.16g、1.03mmol)、およびBAIB(ヨードベンゼンジアセタート)(0.56g、1.74mmol)を、室温で、DCM溶液(14mL)中の化合物D(0.34g、1.45mmol)に添加した。反応系を12時間撹拌し、飽和Na
2S
2O
3水性溶液を使用して、反応をクエンチした。水性相をDCMで抽出して、有機相を合わせて、乾燥して、ロータリーエバポレーションにより濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン=1/8)により精製して、無色の油性液体を得た。
【0085】
前のステップから得られた生成物を、tBuOH(8mL)およびリン酸緩衝溶液(pH=6.8、8mL)に溶解し、NaClO
2(1.05g、11.6mmol)および90%イソブチレン(4.3mL、36.3mmol)を、室温で添加した。反応系を15時間撹拌し、水性相を、EtOAc(6mL×3)で抽出した。有機相を合わせて、乾燥して、ロータリーエバポレーションにより濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン=1/2)により精製して、0.185gの黄色の固体を得た(2つのステップについて51%)。
【0086】
IR(neat、cm
-1):3297、2962、2870、2118、1709、1460、1392、1370、1264、1229、1071、932、640;
【0087】
【数4】
【0088】
化合物Bの合成
【0089】
【化18】
(IPr)AuCl(18.6mg、0.03mmol)、ベンジルアルコール(93μL、0.9mmol)およびAgSbF
6(10.3mg、0.03mmol)を、室温で、DCM溶液(6mL)中の化合物C(74.5mg、0.3mmol)に添加した。反応系を1時間撹拌し、溶液を、ロータリーエバポレーションにより濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン=1/10)により精製して、58mgの白色の固体を得た(収率54%)。
【0090】
IR(neat、cm
-1):3486、2949、2869、1778、1455、1357、1144、1086、967、740、698;
【0091】
【数5】
【0092】
化合物Aの合成
【0093】
【化19】
【0094】
ナトリウム(23mg、1mmol)を、-78℃で液体アンモニア(3ml)に添加し、0.2時間撹拌した。次いで、THF溶液(2.4mL)中の化合物B(18mg、0.05mmol)を滴下添加した。反応系を0.6時間撹拌し、飽和NH
4Cl水溶液(2mL)を使用して、反応をクエンチした。水性相を、EtOAc(2mL×2)で抽出し、有機相を合わせて、乾燥し、ロータリーエバポレーションにより濃縮し、粗生成物を得た。
【0095】
粗生成物を、室温で、MeOH(2.5mL)に溶解し、5MのHCl溶液を、反応系に添加した(pH=2)。反応溶液を、50℃で3時間撹拌し、飽和NaHCO
3水溶液(2mL)を使用して、反応をクエンチした。水性相を、EtOAc(3mL×3)で抽出し、有機相を合わせて、乾燥して、ロータリーエバポレーションにより濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン=1/6)により精製して、57mgの白色の固体を得た(2つのステップについて収率71%)。
【0096】
IR(neat、cm
-1):3428、2958、2928、2854、1765、1746、1382、1261、1161、1055、802;
【0097】
【数6】
【0098】
天然産物アントロシンの合成
【0099】
【化20】
【0100】
-78℃で、NaHMDS(ビス(トリメチルシリル)アミド)THF中2M、33μL、0.066mmol)を、THF溶液(2mL)中の化合物A(11mg、0.044mmol)に滴下添加した。0℃で0.5時間撹拌し、二硫化炭素(8μL、0.132mmol)を添加した。室温で1時間撹拌し、次いで、MeI(19μL、0.308mmol)を添加した。反応溶液を2時間撹拌し、飽和NH
4Cl水溶液(2mL)を使用して、反応をクエンチした。水性相を、EtOAc(3mL×2)で抽出し、有機相を合わせて、乾燥し、ロータリーエバポレーションにより濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン=1/30)により精製し、油性生成物を得た。
【0101】
油性生成物を、室温で、トルエン(2mL)に溶解し、nBu
3SnH(23μL、0.088mmol)を添加した。混合物を、110℃に加熱し、次いで、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)(2mg)を添加した。反応系を1時間撹拌し、溶液を室温に冷却して、ロータリーエバポレーションにより濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン=1/30)により精製して、8mgの天然産物アントロシンを得た(2つのステップについて収率78%)。
【0102】
IR(neat、cm
-1):2934、2854、1768、1457、1375、1368、1190、1121、1055、894;
【0103】
【数7】
【0104】
(実施例2)
アントロシンの生物学的活性の分析
(A)凍結細胞の活性化
凍結細胞を活性化するために、急速解凍は、細胞に害を与えて細胞死につながる氷晶の再結晶化を回避する鍵である。凍結細胞を活性化させた後、その凍結細胞が正常に戻る(例えば、モノクローナル抗体または他のタンパク質を生成する)までには数日かかるか、1代から2代の継代培養が必要となる。凍結細胞を急速解凍するために、凍結バイアルを、液体窒素またはドライアイス容器から取り出し、37℃の水浴に浸した。凍結バイアルを穏やかに振って、そのバイアルは3分で溶け、バイアルを70%アルコールで拭いて、バイアルを無菌の作業台に移した。解凍した細胞懸濁液を取り出し、成長培地(希釈率1:10〜1:15)で満たしたペトリ皿にゆっくり添加し、完全に混合し、CO
2インキュベーターの中にペトリ皿を入れた。翌日、成長培地を、新しい成長培地に取り替えた。
【0105】
(B)ヒト肺癌細胞株および培養
ヒト肺癌細胞株(CL1-0、CL1-5、H1975、H441、PC9、Α549)およびヒト気管支上皮細胞株(BEAS-2B)を、Taipei Medical Universityのthe Institute of Clinical Medicineから入手した。5%CO
2の湿式インキュベーターにおいて、10%ウシ胎児血清、2mMのグルタミン、1100μg/mlのストレプトマイシンおよび100U/mlのペニシリンを補給した、DMEM培地(ダルベッコ変法イーグル培地)およびRPMI基本培地で細胞を成長させて、維持した。
【0106】
(C)医薬による肺癌細胞の処理
肺癌細胞を、完全に発達した大きさの約80%に成長するまで、10%のウシ胎児血清を補給した培地で成長させた。古い培地溶液を流し出し、肺癌細胞を、PBS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄し、10mlの血清非含有培地を添加した。実験の目的に従って、異なる医薬を添加し、すべての反応を、37℃のインキュベーターにおいて行った。
【0107】
(D)細胞毒性
ヒト肺癌細胞(CL1-0、CL1-5、H1975、H441、PC9、Α549)、およびヒト気管支上皮細胞(BEAS-2B)を、96ウェル培養プレートに(2000細胞/ウェル)播種し、100μlの完全なDMEMにおいて一晩中インキュベートした。50μlのアントロシン(0.5〜10μΜ)を含有する、等しい量の完全なDMEMのサンプルを、培養プレートの他のウェルに入れた。さらに、100μlの完全なDMEMのサンプルも、対照群としてウェルに入れた。2日後、各ウェルのヒト細胞の総数を、スルホローダミンB(蛍光性タンパク質染料)を使用して測定した。手短に述べると、ヒト細胞を、10%のトリクロロ酢酸で固定し、0.4%のスルホローダミンBにより染色した。20分間染色した後、ヒト細胞を、1%の酢酸で洗浄し、次いで、ヒト細胞と結合したスルホローダミンBを、10mMのトリス塩基に溶解した。光学密度を、マイクロタイタープレート検出器により、562nmで測定した。前述の方法も使用して、ヒトのCL1-0、CL1-5、H1975、H441、PC9、Α549およびBEAS-2B細胞のアントロシンへの感受性を決定した。
【0108】
(E)アポトーシス
アントロシンで処理した後、H441細胞を、トリプシン-エチレンジアミン四酢酸(トリプシン-EDTA)で処理し、培養液と共に集め、遠心分離して上清を除去し、4℃のリン酸緩衝溶液において洗浄した。1mlの氷冷75%エタノールを添加した後、H441細胞を、4℃で、一晩冷蔵庫に入れて固定させた。遠心分離後、H441細胞を1mlのPBSに懸濁させ、適切な量のリボヌクレアーゼA(RNアーゼA)を添加し、H441細胞を、反応のために、37℃で30分間放置した。最後に、40mg/mlのヨウ化プロピジウム(PI、Sigma Chemical Co.、カタログ番号p-4170)を添加し、H441細胞を、避光反応(dark reaction)のために、さらに30分間放置した。次いで、H441細胞を、35mmのナイロンメッシュを使用して集め、495nmの波長で励起させ、H441細胞の蛍光強度を、フローサイトメーターにより、637nmの波長で検出し、分析した。
【0109】
(F)生物発光イメージング(BLI)
ホタル蛍光遺伝子(ホタルルシフェラーゼ)を、遺伝子組換えにより、H441肺癌幹細胞に導入し、次いで、肺癌細胞(ホタル蛍光遺伝子を含有する)を、FACS(蛍光活性化セルソーター)により、H441肺癌幹細胞から単離し、免疫不全マウスの皮下に、または尾静脈を介して循環系に注入した。IVISイメージングシステム(IVIS(登録商標)Imaging System 200 Series、Xenogen)を、生物発光イメージングのために、本発明の実施形態において使用した。すべてのマウスに、腹腔内注射により、150mg/kgのD-ルシフェリンを導入し、マウスを、IVIS200の暗室に固定して10分後、IVIS200の高感度のCCDカメラを使用して、H441癌細胞内のホタル蛍光遺伝子により放たれた冷光を検出した。すべてのマウスを、120秒間撮像し、信号強度が飽和したとき、撮像時間を短縮した。すべてのマウスに麻酔(2%のイソフルランおよび98%の酸素ガス)を施し、撮像プロセス全体を通して意識を失わせた。IVI200のソフトウェアパッケージを使用して、腫瘍の大きさと、冷光により放たれた信号強度とを比較し、分析した。アントロシンのヒト肺癌細胞への阻害効果を、この生物発光イメージングシステムを使用して評価した。
【0110】
アントロシンは、ヒトNSCLC細胞の増殖を阻害する。
【0111】
先行研究は、天然のアントロシンが、乳癌細胞の細胞増殖を阻害することを実証した(Raoら、2011)。本発明は、さらに、化学的に合成されたアントロシンのNSCLC細胞の増殖への阻害効果を研究した。
図4(A)に示す通り、化学的に合成されたアントロシンの癌細胞の増殖の阻害に関する有効性は、非小細胞肺癌細胞株(NSCLC)によって異なり、最も強力な阻害は、H1975細胞株およびH441細胞株において観察された。化学的に合成されたアントロシンは、癌細胞の増殖に対して顕著な阻害効果を有したが、正常ヒト気管支上皮細胞に対する細胞毒性を有しなかった。
【0112】
本発明者らは、化学的に合成されたアントロシンの肺癌細胞の増殖への阻害効果が、肺癌細胞におけるアポトーシスの誘導と関係しているかどうかを決定するために、H1975細胞およびH441細胞をさらに研究した。
図4(B)に示す通り、48時間のアントロシンの処理の結果、用量依存的に、アポトーシスの初期および後期段階において、細胞の数が増加した。これらの結果は、化学的に合成されたアントロシンが、ヒトNSCLC細胞のアポトーシスを誘導したという証拠を与えた。
【0113】
アントロシンは、H441細胞における炎症反応関連遺伝子の発現を阻害する。
【0114】
本発明は、さらに、遺伝子レベルで、アントロシンの癌細胞への効果を調査した。H441細胞を、5μMのアントロシンで、12時間処理した後、アントロシンの遺伝子転写への影響を分析した。発現が3.5倍以上阻害された遺伝子のみを、標的遺伝子として、GeneSpringソフトウェアパッケージによって分析し、その結果を、樹形図を使用して示した。STRING9.0ソフトウェアパッケージも、H441細胞のシグナル伝達経路、および阻害可能な標的遺伝子に対するアントロシンの影響を予測するために使用した(
図5)。この結果は、100超の遺伝子の発現が、アントロシンによってかなり影響を受けることを示した。これらの遺伝子は、細胞増殖、炎症反応、転移、侵入、血管新生、および細胞周期調節に重要な役割を果たす。Table 1(表1)は、アントロシンの処理によって発現が大幅に阻害された遺伝子をまとめたものである。これらの遺伝子は、転写因子NF-kB、例えば、サイトカイン(IFI44、IFIT1、MX1)、炎症反応(NFkB1およびIFIT2)、幹細胞特性(CTNNBL1、SENP2、CEACAM1およびPOU5F2)、および薬剤耐性反応(ABCB5、ABCG2およびXAF1)などと関連する。前述のマイクロアレイ結果に基づいて、本発明は、さらに、炎症反応、幹細胞特性および多剤耐性と関係がある、タンパク質の発現を調査した。
【0115】
アントロシンは、カスパーゼ-3酵素の活性化、ならびにXIAP、NF-kB-p65およびサイクリンD1発現の阻害により、H441細胞の細胞増殖を阻害する。
【0116】
アントロシンは、転移性の高いH441細胞の増殖を阻害した。用量を増やした場合、アントロシンは、カスパーゼ酵素3を顕著に活性化し、H441細胞のアポトーシスを誘導した(
図6)。加えて、アントロシンはまた、XIAP、NF-kB-p65、およびサイクリンD1を含めた炎症反応関連タンパク質の発現も、用量依存的に阻害した。
【0117】
アントロシンは、in vivoでの癌細胞の増殖を大幅に阻害する。
【0118】
本発明は、さらに、in vivoでのアントロシンの抗癌効果を調査した。ホタルルシフェラーゼおよび緑色蛍光タンパク質を発現しているH441-L2G細胞(6×10
5/100μl PBS)を、外側尾静脈を介して、静脈内注射により、非肥満型の糖尿病/重症複合免疫不全マウスに注入した。4週間の期間にわたって毎日、アントロシンの腹腔内注射(2つの群のマウス、低用量の5mg/kg/日および高用量の10mg/kg/日)を施し、腫瘍の成長を観察した。腫瘍の成長は、低用量のアントロシンを与えられたマウスの半数において、2週間後に阻害された。第3週に、これらのマウスのほとんどにおいて、腫瘍の成長が観察された(
図7(A)、
図7(B))。アントロシンで処理された群と対照群との間で体重の大きな差はなかった(
図7 (C))。
【0119】
生存率に関して、中央値は、対照群について28日であり、処理した群について、50日超であった。5mg/kg/日の低用量のアントロシンで処理したマウスの75%が、50日よりも長く生き続けた。実験の最終日(50日目)に、生存期間中央値は、少なくとも60%延びた(
図7(D))。
【0120】
本発明の好ましい実施形態を示し、説明してきたが、当業者により、特に、前述の教示に照らして、変更形態が作製され得るので、本発明は、それらに限定されないことが分かる。したがって、添付した特許請求の範囲は、そうした変更形態を含み、本発明の趣旨および範囲内にあるそれらの特徴を組み込むことを企図しているものである。
【0121】
具体的な実施態様:
実施態様1
(a)化合物A
【化21】
を、塩基の存在下で、硫化物およびハロアルカンと反応させて、中間体を生成するステップと、
(b)前記中間体を、フリーラジカル開始剤およびフリーラジカル源と反応させて、アントロシンを形成するステップと
を含む、アントロシンを調製するための方法。
実施態様2
前記塩基がナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドであり、前記硫化物が二硫化炭素であり、前記ハロアルカンがヨードメタンであり、前記フリーラジカル開始剤がアゾ-ビス-イソブチロニトリルであり、前記フリーラジカル源が水素化トリ-n-ブチルスズである、実施態様1に記載の方法。
実施態様3
化合物Aが、化合物B
【化22】
を、還元剤を介して酸と反応させることにより生成される、実施態様1に記載の方法。
実施態様4
前記還元剤がアルカリ金属であり、前記酸が塩酸である、実施態様3に記載の方法。
実施態様5
化合物Bが、化合物C
【化23】
を、触媒としての金化合物および銀塩の存在下で、有機溶媒中でアルコールと反応させることにより生成される、実施態様3に記載の方法。
実施態様6
前記金化合物が、以下の構造、
【化24】
を有する金化合物(IPr)AuClである、実施態様5に記載の方法。
実施態様7
前記銀塩がAgSbF
6であり、前記有機溶媒がジクロロメタンである、実施態様5に記載の方法。
実施態様8
化合物Cが、化合物D
【化25】
を、第1ステップの酸化剤と反応させ、次いで、第2ステップの酸化剤と共溶媒中で反応させることにより生成される、実施態様5に記載の方法。
実施態様9
第1ステップの酸化剤が、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシフリーラジカル、およびヨードベンゼンジアセタートであり、第2ステップの酸化剤が、亜塩素酸ナトリウムであり、前記共溶媒が、t-ブタノール、およびpH6.8のリン酸緩衝水溶液である、実施態様8に記載の方法。
実施態様10
化合物Dが、化合物E
【化26】
を、溶媒中で塩基と反応させることにより生成される、実施態様8に記載の方法。
実施態様11
前記塩基が、水酸化カリウムであり、前記溶媒が、メタノールとテトラヒドロフランと水との混合溶媒である、実施態様10に記載の方法。
実施態様12
化合物Eが、化合物F
【化27】
を、還元剤と反応させることにより生成される、実施態様10に記載の方法。
実施態様13
前記還元剤が、水素化アルミニウムリチウムである、実施態様12に記載の方法。
実施態様14
化合物Fが、化合物G
【化28】
を、フッ素源の作用下で超原子価ヨウ素化合物と反応させることにより生成される、実施態様12に記載の方法。
実施態様15
前記超原子価ヨウ素化合物が、以下の構造、
【化29】
を有する化合物である、実施態様14に記載の方法。
実施態様16
前記フッ素源が、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムのテトラヒドロフラン溶液である、実施態様14に記載の方法。
実施態様17
化合物Gが、化合物H
【化30】
を、銅試薬の作用下でグリニャール試薬と反応させることにより生成される、実施態様14に記載の方法。
実施態様18
前記グリニャール試薬が、以下の構造、
【化31】
を有する臭化物により調製される、実施態様17に記載の方法。
実施態様19
前記銅試薬が、臭化銅(I)-ジメチルスルフィド錯体である、実施態様17に記載の方法。
実施態様20
非小細胞肺癌細胞の成長を抑制するための薬剤の調製における組成物の使用であって、前記組成物が、有効量のアントロシンまたは医薬として許容されるその塩と、医薬として許容される担体とを含む、使用。
実施態様21
前記組成物が、非小細胞肺癌を予防または治療することができる、実施態様20に記載の使用。
実施態様22
前記組成物が、正常ヒト気管支上皮細胞に対する細胞毒性を有しない、実施態様20に記載の使用。
実施態様23
前記非小細胞肺癌細胞が、CL1-0、CL1-5、A549、PC9、H1975またはH441細胞株を含む、実施態様20に記載の使用。
実施態様24
前記非小細胞肺癌細胞が、H441細胞株である、実施態様23に記載の使用。
実施態様25
前記組成物が、カスパーゼ-3酵素経路を活性化すること、ならびにXIAP、NF-kBおよびサイクリンD1の発現を抑制することにより、非小細胞肺癌細胞の成長を抑制する、実施態様20に記載の使用。
実施態様26
前記組成物が、非小細胞肺癌細胞におけるIFI44、IFIT1、MX1、NFkB1、IFIT2、CTNNBL1、SENP2、CEACAM1、POU5F2、ABCB5、ABCG2およびXAF1の遺伝子発現を低下させる、実施態様20に記載の使用。
実施態様27
アントロシンの前記有効量が、1mg/kg/日から50mg/kg/日である、実施態様20に記載の使用。
実施態様28
アントロシンの前記有効量が、5mg/kg/日から10mg/kg/日である、実施態様27に記載の使用。