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特開2016-204411印刷インキ用バインダー及びこれを用いた印刷インキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-204411(P2016-204411A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】印刷インキ用バインダー及びこれを用いた印刷インキ
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/10 20140101AFI20161111BHJP
   C08G 18/60 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   C09D11/10
   C08G18/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-83352(P2015-83352)
(22)【出願日】2015年4月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柳田 正毅
【テーマコード(参考)】
4J034
4J039
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034DB04
4J034DC50
4J034DG04
4J034DL03
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034QB05
4J034QC05
4J034RA07
4J039AE04
4J039BC07
4J039BC09
4J039BE12
4J039CA04
4J039FA02
4J039GA03
4J039GA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】溶剤としてトルエンを使用しなくても溶剤への再溶解性が良好であり、アルコール系溶剤に可溶で良好な接着性を与える印刷インキ用バインダーを提供する。
【解決手段】活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるポリウレタン樹脂(U)を含有する印刷インキ用バインダーであって、(A)が重合脂肪酸(E)と一般式(1)で表されるアミン化合物(F)を縮合重合して得られるポリアミド化合物(G)を含有する印刷インキ用バインダー。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるポリウレタン樹脂(U)を含有する印刷インキ用バインダーであって、前記活性水素成分(A)が重合脂肪酸(E)と一般式(1)で表されるアミン化合物(F)を縮合重合して得られるポリアミド化合物(G)を含有する印刷インキ用バインダー。
【化1】
[式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数2〜10のアルキレン基であり、aは1〜5の整数である。(x1)は一般式(2)で表される基、(x2)は一般式(3)で表される基、(x3)は一般式(4)で表される基であり、複数個ある(x1)〜(x3)は各同一でも異なっていてもよい。bが1〜50の整数であり、cが0〜20の整数であり、dは0〜20の整数であり、かつ1≦b+c+d≦90を満たし、Xが(x1)〜(x3)の内の2種以上の基で構成される場合はその2種以上の基の結合順序は任意である。]
【化2】
【化3】
【化4】
[式中、Rは炭素数2〜12のアルキレン基であり、Rは炭素数3〜11のアルキレン基であり、Rは炭素数2〜19のアルキレン基である。]
【請求項2】
前記活性水素成分(A)が、重合脂肪酸(E)と一般式(1)で表されるアミン化合物(F)とさらに炭素数2〜10のアルキレンジアミン(H1)を縮合重合して得られるポリアミド化合物である請求項1に記載の印刷インキ用バインダー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷インキ用バインダーと炭素数1〜8のアルコール系溶剤を含有する印刷インキ用バインダー組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の印刷インキ用バインダー、又は請求項3に記載の印刷インキ用バインダー組成物を含有してなる印刷インキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷インキ用バインダー及びこれを用いた印刷インキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックフィルム用の印刷インキの溶剤として、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)及び酢酸エチル等の溶剤が混合使用されてきた。このなかでもトルエンは安価でしかも比較的高沸点であるために、印刷時にグラビア版上のインキの乾燥を抑え、フィルムへ転移せずに残存したグラビア版のセル中のインキが、インキパン中の新インキと接触して、十分に再溶解することにより、セルの版詰まりを防ぐのに好適な溶剤であり、印刷インキの主溶剤として使用されてきた。これらトルエンを含有する溶剤を使用した印刷インキで再溶解性の良いバインダーとしては、3−メチルペンタンアジペートジオールを使用したポリウレタン樹脂が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、労働安全衛生法の改正でトルエンの環境濃度規制が強化され、印刷作業環境の改善が必要となり、またトルエンは比較的高沸点であるために印刷物中に多く残留する傾向にあり、PL法施行後、残留溶剤の低減が必要となり、トルエンを含まない溶剤系の印刷インキの要望が大きくなった。さらに近年では、環境保全の観点から、MEK及び酢酸エチルの使用量を制限して、アルコール系の溶剤を主成分としたインキが望まれている。従来のポリエステル系ポリウレタン樹脂をバインダーとして用いた印刷インキは、アルコール系の溶剤に対する溶解性が低く、十分に再溶解せずに版詰まりを起こし、深度の浅い版では印刷できなくなる等の問題がある。
【0004】
また、ポリウレタン樹脂をバインダーとする印刷インキはポリエステルフィルムやナイロンフィルムに対しては単独で優れた接着力を有するが、汎用フィルムであるポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムに対しては充分な接着力がなく、また、塩素化ポリオレフィンをバインダーとした印刷インキはポリオレフィンフィルムに対しては良好な接着力を示すが、ポリエステルフィルムやナイロンフィルムに対しては充分な接着力がないため基材フィルムが制限されるという問題がある。
【0005】
ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム及びポリオレフィンフィルムに対する接着力を向上させ、各種プラスチックフィルムに汎用的に使用する目的で、ポリウレタン樹脂と塩素化ポリオレフィンとを混合して使用することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、近年、環境問題への取り組みが重視されるようになり、使用済み品の廃棄処理において、有害物質の発生を抑制することが強く望まれており、塩素化ポリオレフィンは、塩素を含んでいるため、焼却時に有害物質が発生し、環境を汚染する恐れがあると言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−161065号公報
【特許文献2】特開平10−251594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、アルコール系の溶剤に対して優れた再溶解性を有し、塩素化ポリオレフィンを使用しなくてもポリオレフィンフィルムに対する接着性が良好な印刷インキ用バインダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、
活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるポリウレタン樹脂(U)を含有する印刷インキ用バインダーであって、前記活性水素成分(A)が重合脂肪酸(E)と一般式(1)で表されるアミン化合物(F)を縮合重合して得られるポリアミド化合物(G)を含有する印刷インキ用バインダー;前記印刷インキ用バインダーと炭素数1〜8のアルコール系溶剤を含有する印刷インキ用バインダー組成物;前記印刷インキ用バインダー又は前記印刷インキ用バインダー組成物を含有してなる印刷インキである。
【0010】
【化1】
【0011】
[式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数2〜10のアルキレン基であり、aは1〜5の整数である。(x1)は一般式(2)で表される基、(x2)は一般式(3)で表される基、(x3)は一般式(4)で表される基であり、複数個ある(x1)〜(x3)は各同一でも異なっていてもよい。bが1〜50の整数であり、cが0〜20の整数であり、dは0〜20の整数であり、かつ1≦b+c+d≦90を満たし、Xが(x1)〜(x3)の内の2種以上の基で構成される場合はその2種以上の基の結合順序は任意である。]
【0012】
【化2】
【化3】
【化4】
[式中、Rは炭素数2〜12のアルキレン基であり、Rは炭素数3〜11のアルキレン基であり、Rは炭素数2〜19のアルキレン基である。]
【発明の効果】
【0013】
本発明の印刷インキ用バインダーは、アルコール系の溶剤に対して優れた再溶解性を有し、塩素化ポリオレフィンを使用しなくてもポリオレフィンフィルムに対する接着性が良好であり、各種プラスチックフィルム用の印刷インキ用バインダーとして汎用的に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の印刷インキ用バインダーは、活性水素成分(A)として重合脂肪酸(E)と上記一般式(1)で表されるアミン化合物(F)を縮合重合して得られるポリアミド化合物(G)を用いたポリウレタン樹脂を含有することにより、アルコール系の溶剤に対して優れた再溶解性及びポリオレフィンフィルムに対する接着性に優れる。
【0015】
ポリアミド化合物(G)を構成する一般式(1)におけるR及びRはそれぞれ独立に炭素数2〜10のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、1,2−又は1,3−プロピレン基、1,2−,1,3−又は1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、3−メチル−1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、2−エチル1,6−ヘキサメチレン基、1,8−オクタメチレン基及び1,10−デカメチレン基等)であり、アルコール系溶剤への溶解性の観点から好ましいのはエチレン基、1,2−プロピレン基及び1,3−プロピレン基である。
【0016】
aは1〜5の整数であり、接着性の観点から好ましいのは1〜2である。
(x1)は上記一般式(2)で表される基、(x2)は上記一般式(3)で表される基、(x3)は上記一般式(4)で表される基であり、複数個ある(x1)、複数個ある(x2)、及び複数個ある(x3)は各同一でも異なっていてもよい。
【0017】
bは1〜50の整数であり、アルコール系溶剤への溶解性及び接着性の観点から好ましくは2〜4
5であり、更に好ましくは3〜40である。
cは0〜20の整数であり、アルコール系溶剤への溶解性及び接着性の観点から好ましくは1〜10であり、更に好ましくは2〜5である。
dは0〜20の整数であり、アルコール系溶剤への溶解性及び接着性の観点から好ましくは1〜10であり、更に好ましくは2〜5である。
【0018】
一般式(2)におけるRは炭素数2〜12のアルキレン基であり、RがX中に複数ある場合それぞれ同一でも異なっていてもよく、アルコール系溶剤への溶解性及び接着性の観点から好ましいのは炭素数2〜5のアルキレン基、更に好ましいのはエチレン基、1,2−プロピレン基、1,2−、1,3−又は2,3−ブチレン基及び2−メチル−1,4−ブチレン基であり、特に好ましいのはエチレン基及び1,2−プロピレン基である。
【0019】
一般式(3)におけるRは炭素数3〜11のアルキレン基であり、RがX中に複数ある場合それぞれ同一でも異なっていてもよく、アルコール系溶剤への溶解性の観点から好ましいのは1,5−ペンチレン基である。
【0020】
一般式(4)におけるRは炭素数2〜19のアルキレン基であり、RがX中に複数ある場合それぞれ同一でも異なっていてもよく、アルコール系溶剤への溶解性の観点から好ましいのは1,5−ペンチレン基である。
【0021】
一般式(1)においてb+c+dは、アルコール系溶剤への溶解性及び接着性の観点から、1〜90であり、好ましくは1<<1以外・・・>>2〜65であり、さらに好ましくは3〜50である。
【0022】
一般式(1)におけるXは、アルコール系溶剤への溶解性及び接着性の観点から、その末端、即ち水素原子に結合する基が一般式(2)で表される基であることが好ましく、Xは一般式(2)で表される基のみ、すなわち一般式(1)においてbが1〜50の整数であり、cが0、dが0であることが更に好ましい。
【0023】
一般式(1)で表される化合物は、例えばポリ(n=2〜6)アルキレン(炭素数2〜10)ポリ(n=3〜7)アミン(ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジヘキシレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びヘキサエチレンヘプタミン等)のイミノ基に、炭素数2〜12のアルキレンオキサイド、ラクトンモノマー及びラクタムモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を開環付加して得ることができる。
【0024】
炭素数2〜12のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)としては、エチレンオキサイド(以下、EOと略記)、1,2−プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,3−プロピレンオキサイド、1,2−,2,3−又は1,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記)、3−メチルTHF、スチレンオキサイド及びα−オレフィンオキサイド等]が挙げられる。AOは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。AOの内で、アルコール系溶剤への溶解性及び接着性の観点から好ましいのはEO、PO、1,2−,2,3−又は1,3−ブチレンオキサイド及び3−メチルテトラヒドロフラン、更に好ましいのはEO及びPOである。AOの付加モル数は、アルコール系溶剤への溶解性及び接着性の観点から、1〜50、好ましくは2〜45、更に好ましくは3〜40である。
【0025】
ラクトンモノマーとしては、炭素数4〜12のラクトン(γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン及びγ−バレロラクトン等)等が挙げられる。ラクトンモノマーの内で、アルコール系溶剤への溶解性の観点から好ましいのはε−カプロラクトンである。ラクトンモノマーは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。ラクトンモノマーの付加モル数は、アルコール系溶剤への溶解性及び接着性の観点から、0〜20、好ましくは1〜10、更に好ましくは2〜5である。
【0026】
ラクタムモノマーとしては、炭素数3〜20のラクタム(β−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム及びε−カプロラクタム等)等が挙げられる。ラクタムモノマーの内で、アルコール系溶剤への溶解性の観点から好ましいのはε−カプロラクタムである。ラクタムモノマーの付加モル数はアルコール系溶剤への溶解性及び接着性の観点から、0〜20、好ましくは1〜10、更に好ましくは2〜5である。
【0027】
尚、一般式(1)におけるX中のAO、ラクトンモノマー及びラクタムモノマーの総付加モル数は、アルコール系溶剤への溶解性及び接着性の観点から、1〜90であり、好ましくは12〜65、さらに好ましくは3〜50である。
【0028】
一般式(1)におけるXは、アルコール系溶剤への溶解性及び接着性の観点から、その末端、即ち水素原子に結合する基がAOの開環付加により得られる構成単位であることが好ましく、XはAOの開環付加により得られる構成単位のみからなることが更に好ましい。
【0029】
ポリアミド化合物(G)を構成するアミン化合物(F)以外のアミン成分(H)としては炭素数2〜10のアルキレンジアミン(H1)、ポリアルキレンポリアミン、芳香族ポリアミン、N−アルキル置換ポリアミン及びアルカノールポリアミン等が挙げられる。炭素数2〜10のアルキレンジアミン(H1)としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン等が挙げられ、接着性の観点から好ましいのはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミンである。
【0030】
ポリアルキレンポリアミンとしてはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イミノビスプロピルアミン等が挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、ジアミノジフエニルメタンおよびキシリレンジアミン等が挙げられる。N−アルキル置換ポリアミンとしては、N−メチル−2,2′−ジアミノジエチルアミン、N−メチル−3,3′−イミノビス(プロピルアミン)、N,N−ビス[2−(メチルアミノ)エチル]メチルアミン等が挙げられる。アルカノールポリアミンとしては2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールが挙げられる。
【0031】
上記アミン成分(H)はアミン化合物(F)の重量に基づいて好ましくは0〜200重量%、さらに好ましくは20〜150重量%である。
【0032】
ポリアミド化合物(G)を構成する重合脂肪酸(E)としては、例えばオレイン酸やリノール酸等の不飽和脂肪酸またはこれらの低級アルキルエステル(炭素数1〜3)を重合した後蒸留精製したもので、ダイマー酸とも呼ばれる。一例として下記のごとき組成のものが挙げられる。
炭素数18の一塩基酸:0〜15重量%(好ましくは0〜10重量%)
炭素数36の二塩基酸:60〜99重量%(好ましくは70〜99重量%)
炭素数54の三塩基酸:0〜30重量%(好ましくは0〜20重量%)
また、重合脂肪酸の不飽和結合にラネーニッケル等を触媒として水素添加したものも使用できる。
【0033】
ポリアミド化合物(G)を構成する重合脂肪酸(E)以外のカルボン酸成分(J)としては炭素数2〜15の脂肪族ジカルボン酸[シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸及びフマル酸等]、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸[テレフタル酸及びイソフタル酸等]、3価又はそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)及びこれらのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキルエステル(ジメチルエステル及びジエチルエステル等)、酸ハライド(酸クロライド等)等]等が挙げられる。
【0034】
活性水素成分(A)は必須成分としての化合物(G)以外に、数平均分子量(以下、Mnと略記)が500〜5,000のポリエーテルポリオール(K1)、Mnが500〜5,000のポリエステルポリオール(K2)、カルボキシル基と活性水素を有する化合物(K3)、鎖伸長剤(K4)及び反応停止剤(K5)等を含有することができる。
ポリエーテルポリオール(K1)は化合物(G)の重量に基づいて好ましくは0〜100重量%である。
ポリエステルポリオール(K2)は化合物(G)の重量に基づいて好ましくは0〜100重量%である。
カルボキシル基と活性水素を有する化合物(K3)は化合物(G)の重量に基づいて好ましくは0〜10重量%である。
鎖伸長剤(K4)は化合物(G)の重量に基づいて好ましくは0〜10重量%である。
反応停止剤(K5)は化合物(G)の重量に基づいて好ましくは0〜10重量%である。
尚、本発明におけるMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、例えば以下の条件で測定することができる。
装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
カラム:「Guardcolumn Super H−L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの」
試料溶液:0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量:10μl
流量:0.6ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレングリコール
【0035】
Mnが500〜5,000のポリエーテルポリオール(K1)としては、脂肪族ポリエーテルポリオール及び芳香族環含有ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0036】
脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、化学式量又はMnが500未満のポリオールのAO付加物並びに1級又は2級アミノ基を有する炭素数1〜60の化合物のAO付加物等が挙げられる。
【0037】
化学式量又はMnが500未満のポリオールとしては、炭素数2〜16の脂肪族2価アルコール、炭素数6〜10の脂環基含有2価アルコール、脂肪族3価アルコール及び脂肪族4価以上のアルコール等が挙げられる。
【0038】
炭素数2〜16の脂肪族2価アルコールとしては、直鎖ジオール[エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジ(1,3−プロピレン)グリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,12−ドデカンジオール等]及び分岐アルキル鎖を有するジオール[1,2−プロパンジオール、ジ(1,2−プロピレン)グリコール、1,2−、1,3−又は2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−、1,4−又は2,4−ペンタンジオール、2−又は3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−、1,5−又は2,5−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−又は3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、2−、3−又は4−メチル−1,7−ヘプタンジオール及び2−、3−又は4−メチル−1,8−オクタンジオール等]等が挙げられる。
【0039】
炭素数6〜10の脂環基含有2価アルコールとしては、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
【0040】
脂肪族3価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン及びトリアルカノールアミン等が挙げられ、脂肪族4価以上のアルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ジペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン及びソルバイド等が挙げられる。
【0041】
1級又は2級アミノ基を有する炭素数1〜60の化合物としては、アルキル(炭素数1〜12)アミン(モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルアミン等)及びポリ(n=2〜6)アルキレン(炭素数2〜10)ポリ(n=3〜7)アミン(ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジヘキシレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びヘキサエチレンヘプタミン等)等が挙げられる。
【0042】
AOとしては、前述した炭素数2〜12のAOと同様のものが挙げられる。AOは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0043】
芳香族環含有ポリエーテルポリオールとしては芳香族低分子量活性水素原子含有化合物[水酸基当量が30以上150未満の2価〜8価又はそれ以上のもの、例えば芳香脂肪族アルコール{m−又はp−キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン及びビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等}、フェノール類(ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールS及びビスフェノールF等)及び芳香族アミン(アニリン及びフェニレンジアミン等)]のAO付加物が挙げられる。
【0044】
(K1)の内、アルコールに対する溶解性の観点から好ましいのは分岐アルキル鎖を有するもの、即ち原料として前記化学式量又はMnが500未満のポリオールの内の分岐アルキル鎖を有するジオールを用いたものやAO付加物におけるAOとしてPO、1,2−,2,3−又は1,3−ブチレンオキサイド及び3−メチルテトラヒドロフラン等を用いたもの等であり、更に好ましいのは分岐アルキル鎖を有する2価アルコールの脂肪族ポリエーテルポリオール、特に好ましいのはポリオキシプロピレングリコール及びポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)グリコール、最も好ましいのはポリオキシプロピレングリコールである。(g1)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
ポリエーテルポリオール(K1)のMnは、アルコール系溶剤に対する溶解性と接着性の観点から好ましくは1,000〜4,000である。
【0046】
Mnが500〜5,000のポリエステルポリオール(K2)としては、縮合型ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール及びポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0047】
縮合型ポリエステルジオールとしては、前記化学式量又はMnが500未満のポリオールとポリカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級(炭素数1〜4)アルキルエステル及び酸ハライド等]との縮合により得られるもの等が挙げられる。
【0048】
ポリカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、炭素数2〜15の脂肪族ポリカルボン酸[シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸及びフマル酸等]、炭素数8〜12の芳香族ポリカルボン酸[テレフタル酸及びイソフタル酸等]及びこれらのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキルエステル(ジメチルエステル及びジエチルエステル等)及び酸ハライド(酸クロライド等)等]等が挙げられる。ポリカルボン酸は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
縮合型ポリエステルポリオールの具体例としては、例えばポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(ポリオキシテトラメチレン)アジペートジオール、ポリ(3−メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール及びポリネオペンチルテレフタレートジオール等が挙げられる。
【0050】
ポリラクトンポリオールとしては、前記化学式量又はMnが500未満のポリオールを開始剤としてラクトンモノマー(γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン及びこれらの2種以上の混合物等)を開環重合したもの等が挙げられる。ポリラクトンポリオールの具体例としては、ポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
【0051】
ポリカーボネートポリオールとしては、前記化学式量又はMnが500未満のポリオールと、低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1〜6のジアルキルカーボネート、炭素数2〜6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6〜9のアリール基を有するジアリールカーボネート)とを、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0052】
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール及びポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール(例えば1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールをジアルキルカーボネートと脱アルコール反応させながら縮合させて得られるジオール)等が挙げられる。
【0053】
カルボキシル基と活性水素を有する化合物(K3)としては、カルボキシル基と水酸基と有する炭素数が2〜10の化合物[ジアルキロールアルカン酸(2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸及び2,2−ジメチロールオクタン酸等)及び酒石酸等]及び炭素数2〜10のアミノ酸(例えばグリシン、アラニン及びバリン等)等が挙げられる。
【0054】
鎖伸長剤(K4)としては、前記炭素数2〜10のアルキレンジアミン(H)、ポリアルキレンポリアミン、芳香族ポリアミン、N−アルキル置換ポリアミン及びアルカノールポリアミン等及び前記炭素数2〜16の脂肪族2価アルコール等が挙げられる。(K4)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、アルコールに対する溶解性の観点から好ましいのはイソホロンジアミン、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール及び1,3−ブタンジオールである。
【0055】
反応停止剤(K5)としては、炭素数1〜10のモノアルコール(メタノール、プロパノール、ブタノール及び2−エチルヘキサノール等)、炭素数2〜8のモノアミン[炭素数2〜8のモノ又はジアルキルアミン(n−ブチルアミン及びジ−n−ブチルアミン等)及び炭素数2〜6のモノ又はジアルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びプロパノールアミン等)]等が挙げられる。これらの内、好ましいのは炭素数2〜6のモノ又はジアルカノールアミンである。反応停止剤(K5)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0056】
本発明におけるポリアミド化合物(G)は、通常の重合脂肪酸系ポリアミド樹脂の合成法と同様の方法で、カルボン酸成分とアミン成分とを重縮合させることにより製造することができる。重縮合反応の反応温度は、通常130〜250℃、好ましくは140〜230℃である。反応は着色を防止するため窒素ガス等の不活性ガス中で行うことが好ましく、反応末期には反応の完結あるいは揮発性成分の除去を促進するため、反応を減圧下で行ってもよい。該(A)の合成に際してのカルボン酸成分とアミン成分の当量比(カルボキシル基/アミノ基)は、1/(1.05〜3)、好ましくは1/(1.2〜2)である。ポリアミド化合物(G)は、重合脂肪酸(E)と一般式(1)で表されるアミン化合物(F)を縮合重合して得られる。ポリアミド化合物(G)を構成する重合脂肪酸(E)とアミン化合物(F)の重量比は好ましくは30:70〜90:10である。
【0057】
有機ポリイソシアネート成分(B)としては、2〜3個又はそれ以上のイソシアネート基を有する炭素数4〜22の脂肪族ポリイソシアネート(b1)、炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネート(b2)、炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート(b3)、炭素数10〜18の芳香脂肪族ポリイソシアネート(b4)及びこれらのポリイソシアネートの変性物(b5)等が挙げられる。
【0058】
炭素数4〜22の脂肪族ポリイソシアネート(b1)としては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート及び2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
【0059】
炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネート(b2)としては、例えばイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、水添MDIと略記)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0060】
炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート(b3)としては、例えば1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(以下、TDI略記)、粗製TDI、4,4’−又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記)、粗製MDI、ポリアリールポリイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート及びm−又はp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
【0061】
炭素数10〜18の芳香脂肪族ポリイソシアネート(b4)としては、例えばm−又はp−キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0062】
(b1)〜(b4)のポリイソシアネートの変性物(b5)としては、前記ポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロハネート基、ウレア基、ビュレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物等;遊離イソシアネート基含有量が通常8〜33重量%、好ましくは10〜30重量%、特に12〜29重量%のもの)、例えば変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI及びトリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等)、ウレタン変性TDI、ビュレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI及びイソシアヌレート変性IPDI等のポリイソシアネートの変性物が挙げられる。
【0063】
これらの内で接着性の観点から好ましいのは、炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネート(b2)であり、更にポリウレタン樹脂(U)のアルコールに対する溶解性の観点から好ましいのはIPDIである。有機ポリイソシアネート(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート(B)とを反応させてポリウレタン樹脂(U)を製造する方法は特に制限されず、(A)と(B)を一度に反応させるワンショット法又は段階的に反応させる多段法[例えば(B)と(A)の一部とを反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを形成した後、(A)の残量を加えて更に反応させて製造する方法]のいずれの方法でもよい。
活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート(B)の反応比率は当量比で、1/(0.8〜1.2)、好ましくは1/(0.9〜1.1)である。
【0065】
活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート(B)の反応は通常20〜140℃、好ましくは40〜120℃の温度で行われる。但し、アミンを反応させる場合は通常100℃以下、好ましくは0〜80℃である。
【0066】
前記反応に際しては、反応を促進させるため、必要により通常のウレタン反応において使用される触媒[アミン触媒(トリエチルアミン、N−エチルモルホリン及びトリエチレンジアミン等)、錫系触媒(ジブチル錫ジラウリレート、ジオクチル錫ジラウリレート及びオクチル酸錫等)及びチタン系触媒(テトラブチルチタネート等)]等を使用してもよい。触媒の使用量はポリウレタン樹脂に対して通常0.1重量%以下である。
【0067】
また、前記反応は有機溶剤中で行ってもよく、有機溶剤を反応途中又は反応後に加えてもよい。有機溶剤としては、炭素数6〜8の芳香族炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン等)、炭素数2〜10のエステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル及びエチルセロソルブアセテート等)、炭素数3〜10のケトン系溶剤(アセトン、メチルイソブチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)、炭素数4〜10エーテル系溶剤(ジオキサン、THF及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等)、炭素数4〜10の炭化水素系溶剤(n−ヘキサン、n−ヘプタン及びシクロヘキサン等)及び炭素数1〜8のアルコール系溶剤(エタノール、メタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びn−ブタノール等の脂肪族アルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノエーテル類)等が挙げられる。有機溶剤は、排気処理面での負荷の少なさの観点から1種を単独で用いるのが好ましいが、2種以上を併用してもよい。
【0068】
本発明のポリウレタン樹脂(U)からなる本発明の印刷インキ用バインダーは、ハンドリング性等の観点から、ポリウレタン樹脂(U)を前述の炭素数1〜8のアルコール系溶剤を必須成分とした有機溶剤に溶解させた組成物(ワニス)として用いることが好ましい。用いる有機溶剤として炭素数1〜8のアルコール系溶剤であり、好ましいのは脂肪族アルコール類、更に好ましいのはエタノール及びイソプロピルアルコールである。
【0069】
(U)の有機溶剤溶液の樹脂濃度はハンドリング性等の観点から好ましくは10〜60重量%、更に好ましくは20〜50重量%である。また、(U)の有機溶剤溶液の20℃での粘度は、同様の観点から好ましくは50〜100,000mPa・s、更に好ましくは100〜10,000mPa・sである。本発明における粘度はB型回転粘度計で測定される。
【0070】
本発明の印刷インキは、本発明の印刷インキ用バインダー、顔料及び前記有機溶剤を必須成分としてなる。顔料としては特に制限はなく、通常の印刷インキに用いられる無機顔料及び有機顔料等が使用できる。
【0071】
また、必要により印刷インキに通常使用される他の樹脂類及び顔料分散剤等の添加剤を配合することもできる。他の樹脂類及び添加剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
他の樹脂類としては、例えばポリアミド樹脂、ニトロセルロース、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレンマレイン酸共重合系樹脂、エポキシ樹脂及びロジン系樹脂等が挙げられる。これら他の樹脂類の添加量は印刷インキ中通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
【0073】
印刷インキの製造方法は特に制限はなく、公知の方法等、例えば三本ロール、ボールミル及びサンドグラインダーミル等の通常のインキ製造装置を用いて印刷インキを製造できる。
【0074】
本発明の印刷インキの配合処方の一例を示せば下記の通りである。
本発明のバインダー(樹脂固形分の量):5〜40重量%(好ましくは10〜30重量%)
顔料:5〜40重量%(好ましくは10〜30重量%)
他の樹脂類:0〜30重量%(好ましくは0〜20重量%)
溶剤:30〜80重量%(好ましくは40〜70重量%)
【0075】
本発明の印刷インキ用バインダーを用いてなる印刷インキは、一液型印刷インキとして使用してもよいが、例えばポリイソシアネート系硬化剤と併用して二液型印刷インキとして使用することもできる。この場合のポリイソシアネート系硬化剤としては、例えばトリメチロールプロパン1モルと、1,6−ヘキサメチレンジイソイシアネート、トリレンジイオシアネート又はIPDI3モルとからのアダクト体;1,6−ヘキサメチレンジイソイシアネート又はIPDIのイソシアネート基の環状三量化によって合成されるイソシアヌレート基含有の三量体;水1モルと1,6−ヘキサメチレンジイソイシアネート3モルとから誘導される部分ビュレット反応物及びこれらの2種以上の混合物が好適である。二液型印刷インキとして使用する場合、ポリイソシアネート系硬化剤の使用量は、本発明の印刷インキ用バインダーの重量に基づいて通常0.5〜10重量%である。
【0076】
本発明の印刷インキを用いた印刷方法としては、従来のプラスチックフィルムの印刷に使用される特殊グラビア印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷及び感熱転写印刷等の印刷方法が挙げられる。
【0077】
本発明の印刷インキは、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、表面処理又は無処理ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、アセテートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム及びこれらのフィルムにアルミ蒸着を施したフィルム等の各種プラスチックフィルムの印刷に好適に用いることができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、以下において「部」は重量部を示す。
【0079】
製造例1
攪拌装置、圧力計、耐圧滴下ロート、真空ポンプ、温度調節機能を備えたステンレス製オートクレーブに、ジエチレントリアミンの両末端のアミノ基をメチルイソブチルケトンでケチミン化したケチミン化合物134部及び水酸化カリウム0.25部を投入し、混合系内を窒素で置換した。次いで100〜120℃にて、PO435部をゲージ圧が−0.1〜0.5MPaとなるように導入し、上記ケチミン化合物のイミノ基にPOが15モル付加した化合物を得た。PO吹き込み開始から反応終了後までの反応時間は6時間であった。更に、水を300部添加し、100℃で1時間攪拌して、ケチミン部分を加水分解した後、生成したメチルイソブチルケトンと水を同温度で、ゲージ圧−0.1〜0MPaの下、4時間で除去して、ジエチレントリアミンのイミノ基のみにPOが15モル付加した化合物(F−1)を得た。
【0080】
製造例2
撹拌装置を備えた反応装置に、(F−1)を146部、エチレンジアミンを66部、ダイマー酸[ハリマ化成株式会社製「ハリダイマー200F」]を588部仕込み、混合系内を窒素で置換した。次いで150℃にて留出する水を除去しながら15時間反応し、淡褐色固体のポリアミド樹脂(G−1)を得た。(G−1)の全アミン価は48、3級アミン価は12であった。
【0081】
比較製造例1
製造例2において、(F−1)を146部、エチレンジアミンを66部の代わりに(F−1)0部、エチレンジアミンを72部を用いたこと以外は製造例2と同様にして、淡褐色固体のポリアミド樹脂(G’−1)を得た。(G’−1)の全アミン価は36、3級アミン価は0であった。
【0082】
実施例1
撹拌装置を備えた反応装置に、ポリアミド樹脂(G−1)150部、イソホロンジアミン9部及びイソプロパノール420部を仕込み、均一になるまで撹拌後、IPDI 21部を投入し、40℃で1時間反応させて本発明の印刷インキ用バインダーであるポリウレタン樹脂(U−1)の溶液を得た。
【0083】
比較例1
実施例1において(G−1)150部の代わりに(G’−1)150部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂(U’−1)の溶液を得た。
【0084】
比較例2
撹拌装置を備えた反応装置に、3−メチルペンタンアジペートジオール[クラレ(株)製「クラレポリオールP−4010」:Mn=4000]150部及びIPDI 17部を仕込み、窒素雰囲気下110℃で10時間反応させ、イソシアネート基含量2.0重量%のウレタンプレポリマーを得た。30℃に冷却後、トルエン270部とイソプロパノール135部を加えて均一になるまで撹拌後、イソホロンジアミン7部を加え、30℃で1時間反応させて比較用の印刷インキ用バインダーであるポリウレタン樹脂(U’−2)の溶液を得た。
【0085】
比較例3
撹拌装置を備えた反応装置に、比較例2で得られた(U’−2)を579部及び塩素化ポリプロピレン[日本製紙株式会社製「スーパークロン813A」塩素含有率30%、樹脂分30%]を290部仕込み、均一になるまで攪拌し、ポリウレタン樹脂と塩素化ポリオレフィンとの混合物(U’−3)の溶液を得た。
【0086】
実施例2及び比較例4〜6
実施例1及び比較例1〜3で得られたポリウレタン樹脂の溶液を用いて、以下の処方にて実施例2及び比較例4〜6の印刷インキを作製した。
[赤インキの作製]
ポリウレタン樹脂の溶液100部、顔料(ブリリアントカーミン6B)30部、イソプロピルアルコール100部及びガラスビーズ150部からなる混合物をペイントコンデイショナー(レッドデビル社製)にて1時間混練し、ガラスビーズをろ過により除去して赤インキを得た。
【0087】
得られた印刷インキを使用して以下の性能試験を行った結果を表1に示す。
【0088】
[再溶解性の試験方法]
ガラス板に印刷インキを固形分で2〜3μmの厚みになるようにバーコーターで塗布し、室温で10秒間放置しインキ表面を半乾きにした後、印刷インキと同じ成分の溶剤に30秒浸漬してインキ膜の再溶解性を観察した。
<評価基準>
○:半乾きした塗膜が再溶解する。
×:半乾きした塗膜が溶解せずガラス板に残る
【0089】
[接着性の試験方法]
表面処理ポリプロピレンフィルム(OPP)[東洋紡績株式会社製「パイレンP−2161」(厚さ30μm)]、表面処理ポリエステルフィルム(PET)[東洋紡績株式会社製「エスペットE−5102」(厚さ12μm)]及び表面処理ナイロンフィルム[東洋紡績株式会社製「ハーデンN−1130」(厚さ15μm)]に印刷インキを固形分で2〜3μmの厚みになるようにバーコーターで塗布し、60℃で1分間乾燥後、塗布面にセロハンテープ(ニチバン製、12mm巾)を貼り、このセロハンテープの一端を塗面に対して、直角方向に急速に引き剥がしたときの塗布面状態を観察して以下の基準で評価した。
<評価基準>
◎:インキがまったく剥がれない。
○:インキが80%以上残る。
×:インキの残りが80%未満。
【0090】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のバインダーは接着性に優れることから、各種プラスチックフィルム(ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリプロピレンフィルム及びセロファンフィルム等)用特殊グラビアインキ用バインダーとして特に好適である。また、本発明のバインダーは前記用途だけではなく、フレキソ印刷インキ用バインダー、塗料用のバインダー、接着剤及び紙等のコーテング剤としても有用である。