(A)カチオン化多糖類として糊化していないβカチオン化デンプンを準備し、βカチオン化デンプンを(B)有機ホスホン酸及び/又はその塩の水溶液、並びに、(D)非イオン性界面活性剤と混合して、βカチオン化デンプンを糊化させる工程を含むことを特徴とする、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている洗浄剤組成物は、洗浄性及び速乾性が不充分であった。具体的には、グラスを洗浄した際にスポットが残るという問題があり、さらに、洗浄動作及びすすぎ動作の後にグラス表面に残った水が乾燥するまでに要する時間が長いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、低泡性、速乾性、ウォータースポット低減効果といった、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に求められる特性を満足する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物、及び、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明に想到した。
即ち、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、
(A)カチオン化多糖類と、
(B)有機ホスホン酸及び/又はその塩とを含有することを特徴とする。
【0008】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、カチオン化多糖類と有機ホスホン酸及び/又はその塩を共に含有することを特徴としており、この両者を共に含有することにより、低泡性、速乾性、ウォータースポット低減効果といった、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に求められる特性を同時に満足することができる。
【0009】
本発明の洗浄剤組成物において、(A)カチオン化多糖類の含有量は、洗浄剤組成物全量に対して0.05〜15重量%であることが好ましい。
また、0.05〜3重量%であることがより好ましい。
カチオン化多糖類の含有量が0.05重量%以上であるとウォータースポットの低減効果及び速乾性がより好適に発揮される。また、カチオン化多糖類の含有量を3重量%を超えて多くしてもウォータースポットの低減効果の向上に対してコスト上昇が上回って経済的に不利になる。また、カチオン化多糖類の含有量を15重量%を超えて多くすると泡立ちが多くなることがある。
【0010】
本発明の洗浄剤組成物において、(B)有機ホスホン酸及び/又はその塩の含有量は、洗浄剤組成物全量に対して0.5〜30重量%であることが好ましい。
有機ホスホン酸及び/又はその塩の含有量が0.5重量%以上であると、速乾性及びウォータースポット低減効果が好適に発揮されるので好ましい。また、有機ホスホン酸及び/又はその塩の含有量を30重量%を超えて多くしてもウォータースポット低減効果がそれ以上は発揮されにくい。
【0011】
本発明の洗浄剤組成物は、(C)アルカリ剤をさらに含有することが好ましい。
また、(C)アルカリ剤がアルカリ金属ケイ酸塩であることが好ましい。
アルカリ剤を含むことでタンパク質汚れと油脂汚れの分解が促進される。また、アルカリ剤がアルカリ金属ケイ酸塩であるとグラスやアルミ製食器へのダメージが少ない。
【0012】
本発明の洗浄剤組成物は、(D)非イオン性界面活性剤をさらに含有することが好ましい。
また、(D)非イオン性界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテルであることが好ましい。
非イオン性界面活性剤を含むと、油脂汚れの除去に効果が高く、特にプラスチックや樹脂製の親油性表面を持つ食器の汚れ除去に効果が高い。また、非イオン性界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテルであることにより汚れの除去と低泡性を兼ね備えることができる。汚れが入った時にも泡が立ちにくいことによって洗浄機の水圧を弱めることなく、高い洗浄力を維持できる。
【0013】
本発明の洗浄剤組成物は、(E)アミノカルボン酸系キレート剤をさらに含有することが好ましい。
アミノカルボン酸系キレート剤は、汚れ内部の硬度成分のキレート力が強く、汚れの除去に効果が高い。
【0014】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物の製造方法は、(A)カチオン化多糖類として糊化していないβカチオン化デンプンを準備し、βカチオン化デンプンを(B)有機ホスホン酸及び/又はその塩の水溶液、並びに、(D)非イオン性界面活性剤と混合して、βカチオン化デンプンを糊化させる工程を含むことを特徴とする。
βカチオン化デンプンの糊化とは、βカチオン化デンプンが水を保持できるように3次構造を変えることであり、水分量が多い状態であると進みやすいと考えられる。
上記方法では、糊化に使う水の供給源として有機ホスホン酸及び/又はその塩の水溶液を用いている。具体的には、βカチオン化デンプンと非イオン性界面活性剤と有機ホスホン酸及び/又はその塩の水溶液を混合しており、この工程によりβカチオン化デンプンの糊化を進めることができる。
また、βカチオン化デンプンを糊化しておくと、洗浄後の食器表面に粉末のβカチオン化デンプンが付着することが防止されるため、食器の美観を美しい状態で維持することのできる自動食器洗浄機用洗浄剤組成物となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、低泡性、速乾性、高いウォータースポット低減効果といった、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に求められる特性を同時に満足することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(自動食器洗浄機用洗浄剤組成物)
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、
(A)カチオン化多糖類と、
(B)有機ホスホン酸及び/又はその塩とを含有することを特徴とする。
【0017】
[(A)カチオン化多糖類]
カチオン化多糖類は、セルロース、デンプン、グアーガム、アラビアガム、キトサンといった多糖類のカチオン化物であり、市販のものを使用することができる。
カチオン化デンプンを構成するデンプンとしては、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、トウモロコシでんぷん(コーンスターチ)、小麦デンプン等が挙げられる。
商品名としては、エキセルNL、エキセルFM−004、エキセルEX−3、エキセルDH、ペトロサイズJ、ペトロサイズU[いずれも日澱化学(株)製]、エースK−100、エースK−500[いずれも王子コーンスターチ(株)製]、カチナールCTR−100、カチナールCLB−100、カチナールCF−100、カチナールCG−100、カチナールCG−100s、カチナールHC−100、カチナールHC−200、カチナールLC−100、カチナールLC−200[いずれも東邦化学工業(株)製]、ポイズC−60H、ポイズC−80M、ポイズC−150L[いずれも花王(株)製]等が挙げられる。
【0018】
カチオン化多糖類の含有量は、洗浄剤組成物全量に対して0.05〜15重量%であることが好ましく、0.05〜9重量%であることがより好ましく、0.5〜9重量%であることがさらに好ましく、0.5〜3重量%であることが特に好ましい。
カチオン化多糖類は複数種類含まれていてもよく、カチオン化多糖類を複数種類含む場合は、カチオン化多糖類の含有量はそれらの合計量として定める。
【0019】
カチオン化多糖類のうち、βカチオン化デンプンを使用する場合は、糊化させておくことが好ましい。製品形態で既にα化(糊化)しているαカチオン化デンプンを使用する場合は糊化させる必要はない。
【0020】
[(B)有機ホスホン酸及び/又はその塩]
有機ホスホン酸としては、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリメチレンホスホン酸(NTMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)等が挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)又はエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)がより好ましい。
これらの有機ホスホン酸はホスホン酸部分の少なくとも一部が塩になっていてもよく、塩を構成する場合の好ましい陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。より好ましくはナトリウム又はカリウムである。
また、有機ホスホン酸と有機ホスホン酸の塩が洗浄剤組成物の中で混在していてもよく、有機ホスホン酸が洗浄剤組成物に含まれている場合にその後にナトリウムイオン等が加えられることによって塩となっていてもよい。
【0021】
有機ホスホン酸及び/又はその塩の含有量は、洗浄剤組成物全量に対して0.5〜30重量%であることが好ましく、1〜20重量%であることがより好ましく、2〜20重量%であることがさらに好ましく、2〜10重量%であることが特に好ましい。
有機ホスホン酸及び/又はその塩は複数種類含まれていてもよく、有機ホスホン酸及び/又はその塩を複数種類含む場合は、有機ホスホン酸及び/又はその塩の含有量はそれらの合計量として定める。
【0022】
また、(A)カチオン化多糖類と(B)有機ホスホン酸及び/又はその塩の配合比は、重量比で(A)/(B)=1/20〜3/1であることが好ましい。
【0023】
[(C)アルカリ剤]
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、(C)アルカリ剤をさらに含有してもよい。
アルカリ剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を用いることができ、その種類は特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、メタケイ酸ナトリウム、セスキケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、セスキケイ酸カリウム、オルソケイ酸カリウム等が好ましい。
これらのアルカリ剤は、水和物となっていてもよい。
これらのアルカリ剤の中では、アルカリ金属ケイ酸塩(メタケイ酸ナトリウム、セスキケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、セスキケイ酸カリウム、オルソケイ酸カリウム等)がより好ましい。
【0024】
アルカリ剤の含有量は、洗浄剤組成物全量に対して9.5〜70重量%であることが好ましく、15〜70重量%であることがより好ましく、30〜60重量%であることがさらに好ましい。
アルカリ剤は複数種類含まれていてもよく、アルカリ剤を複数種類含む場合は、アルカリ剤の含有量はそれらの合計量として定める。
【0025】
[(D)非イオン性界面活性剤]
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、(D)非イオン性界面活性剤をさらに含有してもよい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、プルロニック型ブロックポリマー、リバースプルロニック型ブロックポリマー、テトロニック型ブロックポリマー、リバーステトロニック型ブロックポリマー、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、ポリオキシエチレンメチルエーテル脂肪酸エステル、及び、ポリオキシアルキレンアルキルアミンからなる群から選択される1又は2以上の非イオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0026】
非イオン性界面活性剤の中では、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、プルロニック型ブロックポリマー、リバースプルロニック型ブロックポリマーが好ましい。
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、プルロニック型ブロックポリマーがより好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがさらに好ましい。
本明細書におけるポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、脂肪族アルコールの残基にアルキレンオキサイドが付加してなる化合物が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、具体的には、アルキレンオキサイド末端が水酸基である化合物や、アルキレンオキサイド末端の水酸基の水素原子がアルキル基で置換された化合物等が挙げられる。
【0027】
非イオン性界面活性剤の含有量は、洗浄剤組成物全量に対して0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。
非イオン性界面活性剤は複数種類含まれていてもよく、非イオン性界面活性剤を複数種類含む場合は、非イオン性界面活性剤の含有量はそれらの合計量として定める。
【0028】
[(E)アミノカルボン酸系キレート剤]
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、(E)アミノカルボン酸系キレート剤をさらに含有してもよい。
アミノカルボン酸系キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、1,3−プロパンジアミン四酢酸(PDTA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン六酢酸(DPTA−OH)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)又はこれらの塩等が挙げられる。
塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、又はカルシウム塩であることが好ましく、ナトリウム塩であることがより好ましい。
【0029】
アミノカルボン酸系キレート剤の含有量は、洗浄剤組成物全量に対して3〜60重量%であることが好ましく、5〜50重量%であることがより好ましく、7〜40重量%であることがさらに好ましい。
アミノカルボン酸系キレート剤は複数種類含まれていてもよく、アミノカルボン酸系キレート剤を複数種類含む場合は、アミノカルボン酸系キレート剤の含有量はそれらの合計量として定める。
【0030】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、(F)ポリアクリル酸塩及び/又は(G)縮合リン酸塩をさらに含有してもよい。
[(F)ポリアクリル酸塩]
ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩であることが好ましく、ナトリウム塩であることがより好ましい。すなわち、ポリアクリル酸ナトリウムであることがより好ましい。
また、マレイン酸に由来するポリマー単位を有する、ポリアクリル酸−ポリマレイン酸共重合体の塩であってもよい。
また、α位に水酸基を有するポリアクリル酸塩である、ポリ(α−ヒドロキシアクリル酸)の塩であってもよい。
また、その分子量も特に限定されるものではない。
【0031】
ポリアクリル酸塩の含有量は、洗浄剤組成物全量に対して1〜10重量%であることが好ましく、2〜7重量%であることがより好ましい。
ポリアクリル酸塩は複数種類含まれていてもよく、ポリアクリル酸塩を複数種類含む場合は、ポリアクリル酸塩の含有量はそれらの合計量として定める。
【0032】
[(G)縮合リン酸塩]
縮合リン酸塩としては、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等が挙げられる。
また、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩であることが好ましく、ナトリウム塩であることがより好ましい。
これらを含有すると、高い硬度の水道水を使う地域で、スケールの付着を防止することができる。
【0033】
縮合リン酸塩の含有量は、洗浄剤組成物全量に対して1〜60重量%であることが好ましく、25〜45重量%であることがより好ましい。
縮合リン酸塩は複数種類含まれていてもよく、縮合リン酸塩を複数種類含む場合は、縮合リン酸塩の含有量はそれらの合計量として定める。
また、(F)ポリアクリル酸塩、(G)縮合リン酸塩は共に含まれていてもよく、いずれか一方のみが含まれていてもよく、いずれも含まれていなくてもよい。
【0034】
[その他の成分]
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物には、その他の任意成分が含まれていてもよい。
その他の成分としては、残部としての水、非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤、工程剤(芒硝等)、酵素、pH調整剤、増粘剤、可溶化剤、香料、染料、防腐剤、金属腐食抑制剤、消泡剤、又は、曇点向上剤等を含有していてもよい。
【0035】
非イオン界面活性剤以外の界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。両性界面活性剤としてはアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0036】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物の剤形は液体又は固体であるが、好ましくは固体であり、その融点が80℃以下であることが好ましい。また、0.1重量%水溶液とした場合のpHが10以上であることが好ましい。
剤形が液体である場合は0.2重量%水溶液とした場合のpHが10以上であることが好ましい。
【0037】
[自動食器洗浄機用洗浄剤組成物の製造方法]
上記した各成分を所定量混合することによって、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を製造することができる。混合の方法も特に限定されるものではなく、ミキサーを用いて撹拌する方法等を用いることができる。
【0038】
カチオン化多糖類が既にα化(糊化)しているαカチオン化デンプンを用いる場合は、糊化させる必要が無いのでそのまま使用することができる。
αカチオン化デンプンを用いる場合、(A)カチオン化多糖類としてのαカチオン化デンプン、(B)有機ホスホン酸及び/又はその塩及びその他の成分を混合することにより本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を製造することができる。
【0039】
出発原料としてのカチオン化多糖類としてβカチオン化デンプンを用いると、αカチオン化デンプンと比較してβカチオン化デンプンは安価であるので、安価に本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を製造することができて好ましい。
以下、(A)カチオン化多糖類として糊化していないβカチオン化デンプンを使用して本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を製造する方法について説明する。
この方法は、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物の製造方法である。
【0040】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物の製造方法は、(A)カチオン化多糖類として糊化していないβカチオン化デンプンを準備し、βカチオン化デンプンを(B)有機ホスホン酸及び/又はその塩の水溶液、並びに、(D)非イオン性界面活性剤と混合して、βカチオン化デンプンを糊化させる工程を含むことを特徴とする。
βカチオン化デンプンを有機ホスホン酸及び/又はその塩の水溶液及び非イオン性界面活性剤と混合することで、βカチオン化デンプンのα化(糊化)が進み、カチオン化多糖類として好ましい形態となる。
【0041】
βカチオン化デンプンと有機ホスホン酸及び又はその塩の水溶液と非イオン性界面活性剤とを先に混合して、βカチオン化デンプンを先に糊化することが好ましく、その他の成分は糊化の後に加えることが好ましい。
その他の成分を加えた後にさらに混合することで、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物が得られる。
なお、その他の成分としてアルカリ剤を加える場合には、少量(アルカリ剤/水の重量比が1/100〜1/10くらいの範囲)で糊化前に加えると糊化を促進する効果があるので、少量を糊化前に加えてもよい。
また、βカチオン化デンプンを糊化させる工程において水分量が不足する場合には、別途水を加えてもよい。
【0042】
βカチオン化デンプンを有機ホスホン酸及び/又はその塩の水溶液及び非イオン性界面活性剤と混合したのちに、加温することが好ましい。
加温する温度は30〜80℃であることが好ましく、40〜50℃であることがより好ましい。
加温温度が30℃未満であるとβカチオン化デンプンの糊化が進みにくく、80℃を超えるとカチオン化デンプンの変性が生じることがある。
加温温度が高いと加温時間は短くて済み、加温時間は30分〜2時間程度が好ましい。
好ましい加温温度と加温時間の組み合わせの例としては、40℃で2時間、50℃で30分といった例が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例において洗浄剤組成物の調製に使用した原料は以下のとおりである。
なお、表に示す量は純分での使用量であり、各成分につき表に示す純分になる量を配合した。
(A)カチオン化多糖類
カチオン化多糖類1:エキセルNL[日澱化学(株)製]
表示名称:カチオン化水添水飴−2、水
カチオン化度:2.7〜3.2%
原料:還元水飴
カチオン化剤:グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド
α化カチオン化デンプン
60%水溶液
カチオン化多糖類2:エキセルFM−004[日澱化学(株)製]
表示名称:ヒドロキシプロピル加水分解デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド
原料:ヒドロキシプロピルデンプン(食品添加物)の酵素分解物
カチオン化剤:グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド
αカチオン化デンプン
30%水溶液
カチオン化多糖類3:エキセルEX−3[日澱化学(株)製]
βカチオン化デンプン
原料:タピオカデンプン
カチオン化多糖類4:エキセルDH[日澱化学(株)製]
平均分子量:850,000
カチオン化度:7.0%
カチオン化馬鈴薯デンプン
原料:馬鈴薯デンプン
βカチオン化デンプン
カチオン化多糖類5:ペトロサイズJ[日澱化学(株)製]
αカチオン化デンプンの乾燥粉末
カチオン化多糖類6:ペトロサイズU[日澱化学(株)製]
αカチオン化デンプンの乾燥粉末
カチオン化多糖類7:エースK−100[王子コーンスターチ(株)製]
原料:トウモロコシデンプン
水分含有量:10%
βカチオン化デンプン
カチオン化多糖類8:エースK−500[王子コーンスターチ(株)製]
平均分子量:1,610,000
カチオン化度:2.9%
原料:馬鈴薯デンプン
βカチオン化デンプン
カチオン化多糖類9:カチナールCTR−100[東邦化学工業(株)製]:カエサルピニアスピノサヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド
カチオン化多糖類10:カチナールCLB−100[東邦化学工業(株)製]:ローカストビーンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド
カチオン化多糖類11:カチナールCF−100[東邦化学工業(株)製]:コロハヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド
カチオン化多糖類12:カチナールCG−100[東邦化学工業(株)製]:グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド
カチオン化多糖類13:カチナールCG−100s[東邦化学工業(株)製]:グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド
カチオン化多糖類14:カチナールHC−100[東邦化学工業(株)製]:ポリクオタニウム−10
カチオン化多糖類15:カチナールHC−200[東邦化学工業(株)製]:ポリクオタニウム−10
カチオン化多糖類16:カチナールLC−100[東邦化学工業(株)製]:ポリクオタニウム−10
カチオン化多糖類17:カチナールLC−200[東邦化学工業(株)製]:ポリクオタニウム−10
(B)有機ホスホン酸及び/又はその塩の水溶液
有機ホスホン酸1:ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(60%水溶液)
有機ホスホン酸2:ニトリロトリメチレンホスホン酸(50%水溶液)
有機ホスホン酸3:ホスホノブタントリカルボン酸(50%水溶液)
有機ホスホン酸4:エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(30%水溶液)
(C)アルカリ剤
アルカリ剤1:水酸化ナトリウム
アルカリ剤2:水酸化カリウム
アルカリ剤3:オルソケイ酸ナトリウム 純度80%
アルカリ剤4:メタケイ酸ナトリウム5水和物
アルカリ剤5:炭酸ナトリウム
(D)非イオン性界面活性剤
非イオン性界面活性剤1:分子量700、炭素数12の2級アルコールのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物、EO/PO比2/1、アルキレンオキサイド末端が水酸基であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル
非イオン性界面活性剤2:アルコールのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物、PO/EO比1/1、純分100%、アルキレンオキサイド末端の水酸基の水素原子がメチル基で置換されてなるポリオキシアルキレンアルキルエーテル
非イオン性界面活性剤3:プルロニックPE9200[BASFジャパン(株)製]:ポリプロピレングリコール鎖の両端にポリエチレングリコール鎖が付加したプルロニック型ブロックポリマー
非イオン性界面活性剤4:プロニックRPE2520[BASFジャパン(株)製]:ポリエチレングリコール鎖の両端にポリプロピレングリコール鎖が付加したリバースプルロニック型ブロックポリマー
(E)アミノカルボン酸系キレート剤
アミノカルボン酸系キレート剤1:トリロンA92R[BASFジャパン(株)製]:ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩・1水和物 純度99%
アミノカルボン酸系キレート剤2:トリロンBパウダー[BASFジャパン(株)製]:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩 純度87%
アミノカルボン酸系キレート剤3:トリロンM グラニュール SG[BASFジャパン(株)製]:メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩 純度78%
(F)ポリアクリル酸塩
ポリアクリル酸塩:アキュゾール445N[ロームアンドハース社製]:ポリアクリル酸ナトリウム(45%水溶液)
(G)縮合リン酸塩
縮合リン酸塩:トリポリリン酸ナトリウム
(その他の成分):
水
無水芒硝(硫酸ナトリウム)
アニオン性界面活性剤:サンデットALH[三洋化成工業(株)製]:アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム
【0044】
[洗浄剤組成物の調製]
(実施例1〜47、比較例1〜5)
表1〜5に示すように洗浄剤組成物の原料を混合し、各実施例及び比較例に係る洗浄剤組成物を調製した。
カチオン化多糖類としてβカチオン化デンプンを使用している場合には、有機ホスホン酸及び/又はその塩の水溶液並びにノニオン性界面活性剤と混合した後50℃に加温して30分保持することによりβカチオン化デンプンを糊化して、その後に他の原料を加えて混合することにより洗浄剤組成物を調製した。
カチオン化多糖類としてβカチオン化デンプン以外の材料を使用した場合には、全ての原料を一度に加えて混合することにより洗浄剤組成物を調製した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
[低泡性評価]
各実施例及び比較例に係る洗浄剤組成物を、ホバート製C44B型一槽式コンベアータイプの自動食器洗浄機に、洗浄剤組成物の濃度が0.15重量%となるようにそれぞれ投入して、60℃で2分間運転し、洗浄動作中の易面からの泡高を計測した。
低泡性評価試験の評価基準は以下のとおりである。
◎:泡立ちが5cm以下
○:泡立ちが10cm以下
△:泡立ちが15cm以下
×:泡立ちが15cmを超える
【0051】
[グラス洗浄後の仕上がり性評価及び速乾性評価]
自動食器洗浄機としては、45L容量の洗浄タンクを備えるホシザキ電機製JW−650UF型の自動食器洗浄機を使用した。
各実施例及び比較例に係る洗浄剤組成物を、洗浄剤組成物の濃度が0.1重量%となるようにそれぞれ投入して、汚垢を均一に付着させたグラス[東洋佐々木ガラス製の強化グラス(170mL)]を、開口部を下向きにしてラック上にセットした。
なお、汚垢は、グラスに牛乳1gを塗布した後、室温で18時間乾燥させたものをモデル汚垢として準備し、仕上がり性評価に用いた。
次に、洗浄液の噴射による洗浄工程を60℃で60秒間行い、続いて、すすぎ洗いを80℃で22秒間行った。
その後、25℃で乾燥してグラス表面に残った水を乾燥させた。
乾燥後のグラス表面に残ったスポットの数を数えて、仕上がり性を評価した。
仕上がり性評価の評価基準は以下のとおりである。
◎:スポットが10個以下
○:スポットが20個以下
△:スポットが40個以下
×:スポットが40個を超える
また、乾燥に要した時間を計測して、速乾性を評価した。
速乾性評価の評価基準は以下のとおりである。
◎:乾燥時間15分以内
○:乾燥時間30分以内
△:乾燥時間1時間以内
×:乾燥時間が1時間を超える
【0052】
[ポリプロピレン製食器洗浄後の油膜除去率]
自動食器洗浄機としては、45L容量の洗浄タンクを備えるホシザキ電機製JW−650UF型の自動食器洗浄機を使用した。
各実施例及び比較例に係る洗浄剤組成物を、洗浄剤組成物の濃度が0.1重量%となるようにそれぞれ投入して、下記方法により汚垢を均一に付着させたポリプロピレン製食器をラック上にセットした。
箱状のポリプロピレン製食器(長さ170mm×幅115mm×深さ30mm)を準備した。
汚垢(混合食品汚れ)調製工程
汚垢材料として、小麦粉、牛乳、鶏卵、バターおよび天ぷら油を用意した。小麦粉10gを精製水90g中に加えて撹拌し、これを加熱して80〜90℃の温度に10分間保つことにより小麦粉を糊化させた。
得られた糊化水溶液を常温にまで放冷した。
牛乳、鶏卵、バターおよび天ぷら油をそれぞれ20gずつ順に同一のビーカーに入れて混合することにより混合材料を作成した。
この混合材料中に糊化水溶液20gを加え、20〜30℃の温度下、混ぜて均一にした。
汚垢塗布工程
ポリプロピレン製食器に対して、約1gの汚垢材料を丸筆を使って塗布したものを被洗浄ポリプロピレン製食器とした。
次に、洗浄液の噴射による洗浄工程を60℃で60秒間行い、続いて、すすぎ洗いを80℃で22秒間行った。
その後、油膜の残っている面積を評価した。
油膜除去率の評価基準は以下のとおりである。
◎:残っている油膜面積が5%以下
○:残っている油膜面積が10%以下
△:残っている油膜面積が30%以下
×:残っている油膜面積が30%を超える。
【0053】
各実施例の洗浄剤組成物は、各項目の評価結果が全て◎又は○であるものが多くなっていた。また、評価結果が△の項目がある実施例においてもその項目数は1つであり、低泡性、速乾性、ウォータースポット低減効果といった、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に求められる特性を同時に満足していた。
一方、各比較例の洗浄剤組成物は、評価結果が△の項目が2つ以上あるか×の項目があり、自動食器洗浄機用の洗浄剤組成物として好ましくない組成であるといえた。
(A)カチオン化多糖類として糊化していないβカチオン化デンプンを準備し、βカチオン化デンプンを(B)有機ホスホン酸及び/又はその塩の水溶液、並びに、(D)非イオン性界面活性剤と混合して、βカチオン化デンプンを糊化させる工程を含むことを特徴とする、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物の製造方法。
各実施例及び比較例に係る洗浄剤組成物を、ホバート製C44B型一槽式コンベアータイプの自動食器洗浄機に、洗浄剤組成物の濃度が0.15重量%となるようにそれぞれ投入して、60℃で2分間運転し、洗浄動作中の