【実施例】
【0061】
次に、具体的な製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0062】
[製造例1:環状カーボネート含有化合物(I−A)の合成]
エポキシ当量192のビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名:jER828、ジャパンエポキシレジン(株)製)100部と、ヨウ化ナトリウム(和光純薬製)20部と、N−メチル−2−ピロリドン100部とを、撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に仕込んだ。次いで、撹拌しながら二酸化炭素を連続して吹き込み、100℃にて10時間反応を行った。そして、反応終了後の溶液にイソプロパノール1,400部を加え、反応物を白色の沈殿として析出させ、濾別した。得られた沈殿物をトルエンにて再結晶を行い、白色の粉末52部を得た(収率42%)。
【0063】
上記で得られた粉末を、FT−IR(堀場製作所製、FT−720 以下の製造例でも同様の装置で測定)にて分析でしたところ、910cm
-1付近の原材料のエポキシ基由来の吸収は消失しており、1800cm
-1付近に原材料には存在しないカーボネート基のカルボニル由来の吸収が確認された。また、HPLC(日本分光製、LC−2000;カラムFinepakSIL C18−T5;移動相 アセトニトリル+水)による分析の結果、原材料のピークは消失し、高極性側に新たなピークが出現し、その純度は98%であった。また、DSC測定(示差走査熱量測定)の結果、融点は178℃であり、融点範囲は±5℃であった。
【0064】
以上のことから、この粉末は、エポキシ基と二酸化炭素の反応により環状カーボネート基が導入された下記式で表わされる構造の化合物であると確認された。これをI−Aと略称した。I−Aの化学構造中に二酸化炭素由来の成分が占める割合は、20.5%であった(計算値)。
【0065】
[製造例2:環状カーボネート含有化合物(I−B)の合成]
エポキシ化合物として、エポキシ当量115のハイドロキノンジグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX203、ナガセケムテックス(株)製)を用いた以外は、前記した製造例1と同様の方法で、下記式(I−B)で表わされる構造の環状カーボネート化合物を合成した(収率55%)。得られたI−Bは、白色の結晶であり、融点は141℃であった。FT−IR分析の結果は、I−Aと同様に910cm
-1付近の原材料のエポキシ基由来の吸収は消失しており、1800cm
-1付近に原材料には存在しないカーボネート基のカルボニル由来の吸収が確認された。HPLC分析による純度は97%であった。I−Bの化学構造中に二酸化炭素由来の成分が占める割合は、28.0%であった(計算値)。
【0066】
<水中に分散させる前の実施例で使用するカルボキシル基含有ヒドロキシポリウレタン樹脂の製造>
[実施例用の樹脂合成例1]
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た化合物I−Aを100部、ヘキサメチレンジアミン(東京化成工業製)16.3部、ジエチレントリアミン(東京化成工業製)9.6部、さらに反応溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)189部を加え、60℃の温度で撹拌しながら24時間の反応を行った。反応後の樹脂溶液をFT−IRにて分析したところ、1800cm
-1付近に観察されていた環状カーボネートのカルボニル基由来の吸収が完全に消失しており、新たに1760cm
-1付近にウレタン結合のカルボニル基由来の吸収が確認された。得られた樹脂溶液を用いて測定したアミン価は、樹脂分100%の換算値として42.1mgKOH/gであった。アミン価の測定方法については、後述する。次いで、この樹脂溶液に、無水フタル酸(東京化成工業製)13.8部を加え40℃で反応を行い、FT−IRにて酸無水物カルボニル由来の1800cm
-1のピークが消失したことを確認して反応を終了し、水を加えて転相乳化する前の本発明で好適に使用するカルボキシル基含有ヒドロキシポリウレタン樹脂を得た。
【0067】
得られた樹脂の物性を確認するために、上記の樹脂溶液を、乾燥時の膜厚が50μmになるように、バーコーターにて離型紙に塗布し、80℃オーブンで溶剤を乾燥させた後、離型紙を剥がして、樹脂合成例1で得た樹脂製の樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの外観、機械強度、酸素透過率(ガスバリア性)、樹脂の酸価、樹脂の水酸基価、及び分子量(GPC)を測定した。それぞれの測定方法については後述する。その結果を表1に示した。
【0068】
[実施例用の樹脂合成例2]
樹脂合成例1で用いたのと同様の反応容器内に、製造例1で得た化合物I−Aを100部、メタキシレンジアミン(三菱ガス化学製)を25.4部、イミノビスプロピルアミン(東京化成製)を6.1部、テトラヒドロフランを206部加え、60℃の温度で撹拌しながら、24時間の反応を行った。反応後の樹脂溶液についてのFT−IRによる反応経過確認の結果は、樹脂合成例1と同様であった。得られた樹脂のアミン価は樹脂分100%の換算値として25.5mgKOH/gであった。次いで、樹脂合成例1で用いた無水フタル酸に変えて、無水マレイン酸4.6部を使用した以外は、樹脂合成例1と同様に反応させて、水を加えて転相乳化する前の樹脂溶液を得た。そして、得られた樹脂の物性を確認するために、樹脂合成例1と同様にして、樹脂フィルムを作製し、フィルムの外観、機械強度、酸素透過率、樹脂の酸価、樹脂の水酸基価、及び分子量(GPC)を測定した。結果を表1に示した。
【0069】
[実施例用の樹脂合成例3]
樹脂合成例1で用いたのと同様の反応容器内に、製造例2で得た化合物I−Bを100部、へキサメチレンジアミンを29.9部、トリエチレンテトラミン(東京化成工業製)を9.4部、テトラヒドロフランを236部加え、60℃の温度で撹拌しながら、24時間の反応を行った。反応後の樹脂溶液についてのFT−IRによる反応経過確認の結果は、樹脂合成例1と同様であった。得られた樹脂のアミン価は樹脂分100%の換算値として26.2mgKOH/gであった。次いで、樹脂合成例1で用いた無水フタル酸に変えて、無水マレイン酸12.6部を使用した以外は、樹脂合成例1同様に反応させて、水を加えて転相乳化する前の樹脂溶液を得た。そして、得られた樹脂の物性を確認するために、樹脂合成例1と同様にして、樹脂フィルムを作製し、フィルムの外観、機械強度、酸素透過率、樹脂の酸価、樹脂の水酸基価、及び分子量(GPC)を測定した。結果を表1に示した。
【0070】
[実施例用の樹脂合成例4]
実施例1で用いたのと同様の反応容器内に、化合物I−Aを100部、ジエチレントリアミンを24.1部、テトラヒドロフランを220部加え、60℃の温度で撹拌しながら、24時間の反応を行った。反応後の樹脂溶液についてのFT−IRによる反応経過確認の結果は、樹脂合成例1と同様であった。得られた樹脂のアミン価は樹脂分100%の換算値として107.0mgKOH/gであった。次いで、樹脂合成例1で用いた無水フタル酸に変えて、無水マレイン酸22.9部を使用した以外は、樹脂合成例1と同様に反応させて、水を加えて転相乳化する前の樹脂溶液を得た。そして、得られた樹脂の物性を確認するために、樹脂合成例1と同様にして、樹脂フィルムを作製し、フィルムの外観、機械強度、酸素透過率、樹脂の酸価、樹脂の水酸基価、及び分子量(GPC)を測定した。結果を表1に示した。
【0071】
[比較例用の樹脂合成例a]
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た化合物I−Aを100部、ヘキサメチレンジアミン(東京化成工業製)を27.1部、さらに、反応溶媒としてテトラヒドロフラン204部を加え、60℃の温度で撹拌しながら、24時間の反応を行った。反応後の樹脂溶液についてのFT−IRによる反応経過確認の結果は、樹脂合成例1と同様であった。得られた比較例用の樹脂は、2級アミノ基を含まないポリヒドロキシウレタン樹脂であった。次いで、反応溶液を60℃に保ったまま、無水マレイン酸を9.2部、付加反応用触媒(兼中和剤)として、トリエチルアミンを9.4部加え、60℃で2時間の反応を行い、反応を終了した。反応後の比較例用の樹脂溶液をFT−IRで分析したところ、酸無水物カルボニル由来の1800cm
-1のピークは完全に消失していた。得られた樹脂の物性を確認するために、樹脂合成例1と同様にして、樹脂フィルムを作製し、フィルムの外観、機械強度、酸素透過率、樹脂の酸価、樹脂の水酸基価、及び分子量(GPC)を測定した。結果を表1に示した。
【0072】
[比較例用の樹脂合成例b]
製造例1で得た化合物I−Aを100部、メタキシレンジアミンを31.8部、テトラヒドロフランを225部とし、無水マレイン酸を18.3部、トリエチルアミンを18.9部とした以外は、樹脂合成例aと同様に反応を行い、比較例用の樹脂溶液を得た。得られた樹脂の物性を確認するために、樹脂合成例1と同様にして、樹脂フィルムを作製し、フィルムの外観、機械強度、酸素透過率、樹脂の酸価、樹脂の水酸基価、及び分子量(GPC)を測定した。結果を表1に示した。
【0073】
[比較例用の樹脂合成例c]
上記で使用したと同様の反応容器内に、製造例1で得た化合物I−Aを100部、ヘキサメチレンジアミンを27.1部、テトラヒドロフランを198部加え、60℃の温度で撹拌しながら、24時間の反応を行い、比較例用の樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液は、カルボキシル基を含まない通常のポリヒドロキシウレタン樹脂である。得られた樹脂の物性を確認するために、樹脂合成例1と同様にして、樹脂フィルムを作製し、フィルムの外観、機械強度、酸素透過率、樹脂の酸価、樹脂の水酸基価、及び分子量(GPC)を測定した。結果を表1に示した。
【0074】
(評価)
以上で説明した実施例用の樹脂合成例1〜4及び比較例用の樹脂合成例a〜cでそれぞれ得た各樹脂、及び各樹脂で作製した各フィルムについて、以下の方法及び基準で評価した。各樹脂についての二酸化炭素含有量は、以下のようにして算出した。評価結果を表1にまとめて示した。
【0075】
[二酸化炭素含有量]
二酸化炭素含有量は、各合成例で使用したヒドロキシポリウレタン樹脂の化学構造中における、原料の二酸化炭素由来のセグメントの質量%を算出して求めた。具体的には、ポリウレタン樹脂の合成反応に使用した、化合物I−A、I−Bを合成する際に使用した、モノマーに対して含まれる二酸化炭素の理論量から算出した計算値で示した。例えば、実施例用の樹脂合成例1の場合には、使用した化合物I−Aの二酸化炭素由来の成分量は20.5%、であり、これより実施例用の樹脂合成例1のポリウレタン中の二酸化炭素濃度は(100部×20.5%)/139.7全量=14.7質量%となる。
【0076】
[分子量]
DMFを移動相としたGPC測定(東ソー製、GPC−8220;カラムSuper AW2500+AW3000+AW4000+AW5000;以下の実施例も同様)により測定した。ポリスチレン換算値として重量平均分子量を表す。
【0077】
[フィルム外観]
作製したそれぞれの樹脂フィルムについて、全光線透過率及びヘイズを測定し、以下の基準で評価した。全光線透過率及びヘイズは、JIS K−7105に準拠して、いずれもヘイズメーター(スガ試験機(株)製 HZ−1)により測定した。ヘイズメーターで測定される全ての光量が全光線透過率であり、全光線透過率に対する拡散透過光の割合がヘイズである。
<評価基準>
〇:全光線透過率90%以上 ヘイズ0.5%以下
×:〇に該当しないもの
【0078】
[酸価、水酸基価]
いずれも各樹脂について、JIS K−1557に準拠した滴定法により測定し、樹脂1gあたりの各官能基の含有量を、KOHのmg当量で表した。なお、単位はmgKOH/gである。
【0079】
[機械強度]
作製した各樹脂フィルムの機械強度として、破断点強度及び破断点伸度を測定した。測定はJIS K−6251に準拠して、オートグラフ〔島津製作所(株)製、AGS−J(商品名)〕を使用した測定法によって、室温(25℃)で測定を実施した。
【0080】
[ガスバリア性(酸素透過率)]
作製した各樹脂フィルムについて、JIS K−7126に準拠して酸素の透過率を測定し、これをガスバリア性の評価値とした。すなわち、この値が低いほどガスバリア性に優れると判断できる。具体的には、酸素透過率測定装置(MOCON社製 OX−TRAN 2/21ML)を使用して、温度23℃で、湿度65%の恒温恒湿条件下にて酸素透過率を測定した。なお、使用したフィルムは乾燥後の膜厚が50μmであるため、膜厚20μmに換算した値を表1に記載した。
【0081】
【0082】
<粘土鉱物の調製>
[製造例3:粘土鉱物分散液Aの調製]
ホモディスパーを用いて、水95部と、粘土鉱物としてモンモリロナイト(クニミネ工業製 クニピアF)5部を予備混合した後、超音波分散機(株式会社ソニックテクノロジー製)を用いて、粘土鉱物層間の膨潤と分散を行った。粘土鉱物が均一に分散したことを確認し、これを粘土鉱物分散液Aとした。
【0083】
[製造例4:粘土鉱物分散液Bの調製]
ホモディスパーを用いて、水95部と、粘土鉱物として合成マイカ(コープケミカル製 ソマシフ ME−100)5部を予備混合した後、超音波分散機を用いて、粘土鉱物の分散液を得た。これを粘土鉱物分散液Bとした。
【0084】
[実施例1]
(樹脂の水分散体の製造)
撹拌及び減圧蒸留が可能な反応容器内に、実施例用の樹脂合成例1で得られた樹脂溶液(THF溶液)100部及びトリエチルアミン2.9部を仕込んだ。そして、室温にて撹拌しながらイオン交換水100部を徐々に添加し、転相乳化を行った。次に、反応容器を50℃に加温、減圧し、THFを留去した。減圧は、THFの留出が無くなり、水が留出するまで行い、冷却後に、水を加え固形分を23質量%に調整(以下の実施例も同様に調整)することにより、ポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体を得た。得られた水分散体の外観は、半透明状で均一であり、水分散体中のポリマー分散粒子の粒度分布(日機装製 UPA−EX150にて測定)は、d50=0.0790μmであった。
図1に、測定した水分散体の粒度分布を示した。また、得られた水分散体の安定性を、50℃の恒温槽中で保存し評価したところ、良好な安定を示した。
【0085】
(ポリヒドロキシウレタン水分散体組成物の製造)
上記で得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体5部と、製造例3で調製した粘土鉱物分散液Aの10部を混合し、ホモディスパーで均一に撹拌して、本実施例の、水中に、ポリヒドロキシウレタン樹脂と粘土鉱物が分散してなる水分散体組成物を得た。得られた水分散体組成物の安定性を、50℃の恒温槽中で保存し、後述する方法にて評価したところ、良好な安定を示した。
【0086】
上記で得たポリヒドロキシウレタン水分散体組成物を、厚み40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)〔東洋紡製、パイレンP1111(商品名)、酸素透過率実測値:1500mL20μm/m
2・day・atm)を用い、そのコロナ処理面上に、乾燥時の膜厚が5μmになるように塗布し、100℃にて乾燥することで、基材上に被覆層を形成して複層フィルムを得た。水分散体組成物の保存安定性を評価すると共に、上記で得られたフィルムを用いて塗膜外観、光線透過率、表面光沢、ガスバリア性を評価した。それぞれの測定方法については、後述する。結果を表2に示した。
【0087】
[実施例2]
先に説明した実施例用の樹脂合成例1で得られた樹脂溶液100部に、トリエチルアミン2.9部を加え、実施例1と同様にして転相乳化を行って、ポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体(固形分23%)を得た。次いで、得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体10部と、製造例3で調製した粘土鉱物分散液Aの10部を混合し、ホモディスパーで均一に撹拌することにより、本実施例のポリヒドロキシウレタン水分散体組成物を得た。そして、得られた水分散体組成物を用い、実施例1で使用したと同様の基材及び条件にて複層フィルムを作製した。上記で得た本実施例の水分散体組成物及びフィルムにて、実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示した。
【0088】
[実施例3]
先に説明した実施例用の樹脂合成例1で得られた樹脂溶液100部に、トリエチルアミン2.9部を加え、実施例1と同様にして転相乳化を行って、ポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体を得た。次いで、得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体20部と、製造例3で調製した粘土鉱物分散液Aの10部を混合し、ホモディスパーで均一に撹拌することにより、本実施例の、水中にポリヒドロキシウレタン樹脂と粘土鉱物とが分散してなる水分散体(固形分23%)を得た。そして、得られた水分散体を用い、実施例1で使用したと同様の基材及び条件にて複層フィルムを作製した。上記で得た本実施例の水分散体組成物及びフィルムにて、実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示した。
【0089】
[実施例4]
先に説明した実施例用の樹脂合成例1で得られた樹脂溶液100部に、トリエチルアミン2.9部を加え、実施例1と同様にして転相乳化を行って、ポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体(固形分23%)を得た。次いで、得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体40部と、製造例3で調製した粘土鉱物分散液Aの10部を混合し、ホモディスパーで均一に撹拌することにより、本実施例の、水中に、ポリヒドロキシウレタン樹脂と粘土鉱物とが分散してなる水分散体組成物を得た。そして、得られた水分散体組成物を用い、実施例1で使用したと同様の基材及び条件にて複層フィルムを作製した。上記で得た本実施例の水分散体組成物及びフィルムにて、実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示した。
【0090】
[実施例5]
先に説明した実施例用の樹脂合成例2で得られた樹脂溶液100部に、トリエチルアミン1.4部を加え、実施例1と同様にして転相乳化を行って、ポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体(固形分23%)を得た。水分散体中のポリマー分散粒子の粒度分布(日機装製 UPA−EX150にて測定)はd50=0.08040μmであった。次いで、得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体20部と、製造例3で調製した粘土鉱物分散液Aの10部を混合し、ホモディスパーで均一に撹拌することにより、本実施例の、水中に、ポリヒドロキシウレタン樹脂と粘土鉱物とが分散してなる水分散体組成物(固形分23%)を得た。そして、得られた水分散体組成物を用い、実施例1で使用したと同様の基材及び条件にて複層フィルムを作製した。上記で得た本実施例の水分散体組成物及びフィルムにて、実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示した。
【0091】
[実施例6]
先に説明した実施例用の樹脂合成例3で得られた樹脂溶液100部に、トリエチルアミン4.7部を加え、実施例1と同様にして転相乳化を行って、ポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体(固形分23%)を得た。水分散体中のポリマー分散粒子の粒度分布(日機装製 UPA−EX150にて測定)はd50=0.0127μmであった。次いで、得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体20部と、製造例4で調製した粘土鉱物分散液Bの10部を混合し、ホモディスパーで均一に撹拌することにより、本実施例の、水中に、ポリヒドロキシウレタン樹脂と粘土鉱物とが分散してなる水分散体組成物を得た。そして、得られた水分散体組成物を用い、実施例1で使用したと同様の基材及び条件にて複層フィルムを作製した。上記で得た本実施例の水分散体組成物及びフィルムにて、実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示した。
【0092】
[実施例7]
先に説明した実施例用の樹脂合成例4で得られた樹脂溶液100部に、トリエチルアミン6.4部を加え、実施例1と同様にして転相乳化を行って、ポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体(固形分23%)を得た。水分散体中のポリマー分散粒子の粒度分布(日機装製 UPA−EX150にて測定)はd50=0.0071μmであった。次いで、得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体20部と、製造例4で調製した粘土鉱物分散液Bの10部を混合し、ホモディスパーで均一に撹拌することにより、本実施例の、水中に、ポリヒドロキシウレタン樹脂と粘土鉱物とが分散してなる水分散体組成物を得た。そして、得られた水分散体組成物を用い、実施例1で使用したと同様の基材及び条件にて複層フィルムを作製した。上記で得た本実施例の水分散体組成物及びフィルムにて、実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示した。
【0093】
[比較例1]
比較例用の樹脂合成例aで得た樹脂溶液に、反応時に既に使用しているトリエチルアミンを加えないこと以外は、実施例1と同様にして、濃度23%に調整した、ポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体を得た。水分散体中のポリマー分散粒子の粒度分布(日機装製 UPA−EX150にて測定)は、d50=0.0179μmであった。次いで、得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体20部と、製造例3で調製した粘土鉱物分散液Aの10部を混合し、ホモディスパーで均一に撹拌することにより、比較例の、水中に、ポリヒドロキシウレタン樹脂と粘土鉱物とが分散してなる水分散体組成物を得た。そして、得られた水分散体組成物を用い、実施例1で使用したと同様の基材及び条件にて複層フィルムを作製した。上記で得た比較例の水分散体及びフィルムにて、実施例1と同様の評価を行い、結果を表3に示した。
【0094】
[比較例2]
比較用の樹脂合成例bで得た樹脂溶液に、反応時に既に使用しているトリエチルアミンを加えないこと以外は実施例1と同様にして転相乳化を行って、濃度23%に調整した、ポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体を得た。水分散体中のポリマー分散粒子の粒度分布(日機装製 UPA−EX150にて測定)はd50=0.001μmであった。次いで、得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の水分散体20部と、製造例3で調製した粘土鉱物分散液Aの10部を混合し、ホモディスパーで均一に撹拌することにより、比較例の、水中に、ポリヒドロキシウレタン樹脂と粘土鉱物とが分散してなる水分散体組成物を得た。そして、得られた水分散体組成物を用い、実施例1で使用したと同様の基材及び条件にて複層フィルムを作製した。上記で得た比較例の水分散体組成物及びフィルムにて、実施例1と同様の評価を行い、結果を表3に示した。
【0095】
[比較例3]
比較用の樹脂合成例cで得たカルボキシル基を含まないヒドロキシポリウレタン樹脂溶液100部に、イオン交換水100部を徐々に加えながら転相乳化を試みた。しかし、30部を加えた時点で樹脂が分離したため中止した。
【0096】
(評価)
上記で得た実施例1〜7及び比較例1、2の各水分散体組成物の特性、及び、各水分散体組成物を用いて得た塗料で作製した各フィルムの評価は、以下の方法及び基準で行った。結果を表2、3にまとめて示した。
【0097】
[安定性]
実施例1〜7及び比較例1、2の各水分散体組成物を、密閉したポリ容器に入れ、50℃の恒温槽で保存した。そして、それぞれ、一ヶ月、三か月、六か月後の状態を観察し、それぞれ、以下の基準で評価し、結果を表2、3中に示した。
<評価基準>
〇:ポリマー粒子及び粘土鉱物の沈降は無く、外観上の変化が見られない。
△:ポリマー粒子及び粘土鉱物が沈降しているが撹拌により簡単に再分散する。
×:乳化粒子が破壊され樹脂分が沈降。撹拌しても再分散できない。
【0098】
[塗膜外観]
実施例1〜7及び比較例1、2で作製した各複層フィルムについて、塗布面(コーティング層)の外観を目視にて観察し、以下の基準で評価した。結果を表2、3中に示した。
<評価基準>
〇:透明〜半透明均一な被膜が形成されており、目視で確認できる凝集物が無い
×:凝集物によるスジ引き等と被膜が不均一、或いは目視できる凝集物がある
【0099】
[表面光沢]
実施例1〜7及び比較例1、2で作製した各複層フィルムについて、光沢計(スガ試験機製 UGA−5D)を使用し、入射角60°における光沢値を標準版の光沢値を92とした相対値として測定した。結果を表2、3中に示した。
【0100】
[耐水性]
実施例1〜7及び比較例1、2で作製した各複層フィルムについて、フィルムを水に浸漬し、室温で1時間後の塗膜表面状態を目視で観察し、以下の規準で評価した。結果を表2、3中に示した。
<評価基準>
〇:変化は見られない
△:塗膜の一部が白化している
×:塗膜が膨潤している
【0101】
[ガスバリア性]
実施例1〜7及び比較例1、2で作製した表面に塗膜(コート層)を有する各フィルムについて、JIS K−7126に準拠して酸素の透過度を測定し、これをガスバリア性の評価値とした。すなわち、この値が低いほどガスバリア性に優れると判断できる。具体的には、酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX−TRAN 2/21ML)を使用して、温度23℃で、湿度65%の恒温恒湿条件下にて、酸素透過度(酸素透過率)を測定した。なお、先に表1中に示した実施例用の樹脂合成例1〜4で作製したフィルムの酸素透過率は、膜厚20μmに換算した値であるのに対し、表2、3に示した実施例1〜7、比較例1、2のフィルムのガスバリア性の測定値は、表面に塗膜(コート層)を有するフィルム構成体としての酸素透過度である。該フィルムにおける実施例或いは比較例の塗料を塗布して得られたコート層の厚みは、精密厚み測定器(尾崎製作所製)を使用して実測し、5μmであることを確認している。結果を表2、3中に示した。
比較のため、各水分散体組成物の調製に使用した樹脂の水分散体を用い、上記と同様にコート層の厚みを5μmにした表面に塗膜(コート層)を形成したフィルムについて、ガスバリア性を評価した。その結果を表2中に示した。
【0102】
【0103】
【0104】
表2から明らかなように、本発明の技術により粘土鉱物とポリヒドロキシウレタン樹脂が均一に分散された水分散体組成物を得ることができる。特に、従来処方で製造した比較例のヒドロキシウレタン樹脂の水分散体を用いた場合と比べて、粘土鉱物の分散性安定性に優れており、これは、本発明で使用したポリヒドロキシウレタン樹脂中に、アミド結合を介してカルボキシル基が導入されていることに由来していると考えられる。すなわち、アニオン性のカルボキシル基のみで親水化したポリヒドロキシウレタン樹脂のポリマー鎖は、粘土鉱物の層間に侵入しにくいことに比べて、本発明に使用したポリヒドロキシウレタン樹脂は、このアミド結合の存在により、粘土鉱物の層間へのポリマー鎖の侵入が阻害されず、均一な分散体を製造することができたと考えられる。この結果、表2に示されているように、粘土鉱物を利用したものでありながら、実施例の水分散体組成物を用いて形成した塗膜(被膜層)は、いずれも凝集物のない、粘度鉱物が微分散していることによってもたらされる光沢度を示す外観に優れたものになることが確認された。
【0105】
また、従来ヒドロキシウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する際のエステル結合と比較して、アミド結合は耐加水分解性に勝るため、ポリマー分散粒子の安定性も良好であった。さらに、本発明の、粘土鉱物とポリヒドロキシウレタン樹脂が均一に分散された水分散体組成物を使用して被膜を形成することで、簡易に、粘土鉱物−ポリヒドロキシウレタン樹脂の複合被膜を得ることができ、粘土鉱物の分散状態が良好なことから、高いガスバリア性を実現できることも確認された。