特開2016-204655(P2016-204655A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-204655(P2016-204655A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/26 20060101AFI20161111BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   C08F220/26
   C08F2/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-82559(P2016-82559)
(22)【出願日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-86874(P2015-86874)
(32)【優先日】2015年4月21日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真奈
(72)【発明者】
【氏名】細木 卓也
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011PA47
4J011PA99
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QA13
4J011QA23
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA05
4J100AL08P
4J100AL60Q
4J100AL63Q
4J100BA02P
4J100BA77P
4J100BC54P
4J100CA04
4J100DA47
4J100DA48
4J100DA62
4J100JA01
4J100JA07
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】 光学特性と機械特性を損なうことなく、表面硬度と耐擦傷性に優れる硬化性樹脂組成物を提供する。
を提供することを目的とする。
【解決手段】 分子内に架橋性官能基(a)とラジカル重合性基(b)とを有し、疎水性官能基(c)を有さない化合物(A)と、分子内に溶解度パラメーター(SP値)が4.0〜8.0の疎水性官能基(c)を有する化合物(B)と、分子内に架橋性官能基(a)と疎水性官能基(c)を有しないエチレン性不飽和単量体(C)と、ラジカル開始剤(D)とを含有し、該化合物(A)中のラジカル重合性基(b)の残基のSP値と、該化合物(B)中の疎水性官能基(c)の残基のSP値との差の絶対値が1.5以下であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いる。
を用いる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に架橋性官能基(a)とラジカル重合性基(b)とを有し、疎水性官能基(c)を有さない化合物(A)と、分子内に溶解度パラメーター(SP値)が4.0〜8.0の疎水性官能基(c)を有する化合物(B)と、分子内に架橋性官能基(a)と疎水性官能基(c)を有しないエチレン性不飽和単量体(C)と、ラジカル開始剤(D)とを含有し、該化合物(A)中のラジカル重合性基(b)の残基のSP値と、該化合物(B)中の疎水性官能基(c)の残基のSP値との差の絶対値が1.5以下であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
架橋性官能基(a)が、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアノ基、N−メチロール基およびN−アルコキシメチル基からなる群より選ばれる1種以上の有機基である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
化合物(A)が、アルコキシシリル基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A1)、またはエポキシ基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A2)である請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
疎水性官能基(c)が、フッ素原子を含有する炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基である請求項1〜3いずれか記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
疎水性官能基(c)が、ケイ素原子を含有する炭素数2〜40の有機基である請求項1〜4いずれか記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
エチレン性不飽和単量体(C)のSP値と、化合物(B)中の疎水性官能基(c)のSP値との差の絶対値が1.5〜7.0である請求項1〜5いずれか記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
疎水性官能基(c)を有する化合物(B)中のフッ素原子の含有量が5〜95重量%である請求項1〜6いずれか記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性樹脂組成物に関する。
詳しくは、光学特性と機械特性を損なうことなく、表面硬度と耐擦傷性に優れる硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性または熱硬化性を有する硬化性樹脂組成物は、ブラウン管、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、タッチパネル、フラットパネルディスプレイ、コーティング剤、インキ、粘接着剤又はレジストパターン形成用など幅広い用途で使用されており、これらの硬化性樹脂組成物に求められる重要な特性として、表面硬度および耐擦傷性が挙げられる。
【0003】
従来、硬化性樹脂組成物に高表面硬度を付与する方法としては、アクリレート樹脂に金属酸化物微粒子を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。しかし、透明性の低下や脆性劣化、さらに保存安定性の低下やコストアップに繋がるなどの問題があった。
また、架橋剤として強固な9,9−ビスフェノキシフルオレン骨格を有するモノマーと、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート及び/又は3官能以上の(メタ)アクリレート樹脂を含む樹脂組成物を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、表面硬度を向上させるために架橋密度を高くすると、硬化収縮が大きくなりカールしやすく密着性が低下することがあった。
【0004】
さらに、架橋剤としてエポキシ樹脂やシランカップリング剤を添加して硬度の向上を図る試みもなされている(例えば、特許文献4参照)が、添加量が少ないと十分な表面硬度が得られず、また添加量を多くすると保存安定性が低下したり、樹脂との相溶性が悪化してムラが発生したりすることがあった。
したがって、硬化性樹脂への添加量が少なくても十分な表面硬度および耐擦傷性が付与できる架橋剤成分、あるいはそのような架橋剤成分を含有する硬化性組成物の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−159916号公報
【特許文献2】特開2006−106427号公報
【特許文献3】特開2006−106427号公報
【特許文献4】特開2004−177498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、光学特性と機械特性を損なうことなく、表面硬度と耐擦傷性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、分子内に架橋性官能基(a)とラジカル重合性基(b)とを有し、疎水性官能基(c)を有さない化合物(A)と、分子内に溶解度パラメーター(SP値)が4.0〜8.0の疎水性官能基(c)を有する化合物(B)と、分子内に架橋性官能基(a)と疎水性官能基(c)を有しないエチレン性不飽和単量体(C)と、ラジカル開始剤(D)とを含有し、該化合物(A)中のラジカル重合性基(b)の残基のSP値と、該化合物(B)中の疎水性官能基(c)の残基のSP値との差の絶対値が1.5以下であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いると、光学特性と機械特性を損なうことなく、表面硬度と耐擦傷性が高い硬化膜を形成できるという効果を奏する。また、この硬化物はさらに耐熱性と耐溶剤性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、分子内に架橋性官能基(a)とラジカル重合性基(b)とを有し、疎水性官能基(c)を有さない化合物(A)と、分子内に溶解度パラメーター(SP値)が4.0〜8.0の疎水性官能基(c)を有し、分子内に架橋性官能基(a)を有しない化合物(B)と、分子内に架橋性官能基(a)と疎水性官能基(c)を有しないエチレン性不飽和単量体(C)と、ラジカル開始剤(D)とを含有することを特徴とする。そしてこの化合物(A)からラジカル重合性基(b)を除いた残基のSP値と、化合物(B)から疎水性官能基(c)を除いた残基のSP値との差の絶対値が1.5以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明における第1の必須成分である化合物(A)は、分子内に架橋性官能基(a)とラジカル重合性基(b)とを有するが、疎水性官能基(c)を有さない。
なお、化合物(A)の分子内の異なる位置に架橋性官能基(a)とラジカル重合性基(b)とを別々に含有する場合だけではなく、ラジカル重合性基(b)自体が架橋性官能基(a)中に含まれる場合も、本発明の架橋性官能基(a)とラジカル重合性基(b)とを有するものとして取り扱う。
【0011】
本発明において、架橋性官能基(a)とは、熱または酸もしくはアルカリによって架橋反応する官能基を意味し、例えばヒドロキシル基、アルコキシシリル基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアノ基、N−メチロール基およびN−アルコキシメチル基等が挙げられる。
硬化性の観点から好ましいのは、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアノ基およびN−メチロール基である。
【0012】
本発明において、ラジカル重合性基(b)としては、ビニル基、プロペニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
硬化性の観点から、(メタ)アクリロイル基およびビニル基が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
【0013】
なお、本明細書で、「(メタ)アクリロイル」の用語は「アクリロイルまたはメタクリロイル」を、「(メタ)アクリレート」の用語は「アクリレートまたはメタクリレート」を、「(メタ)アクリル」の用語は「アクリルまたはメタクリル」のことを意味する。
【0014】
分子内に架橋性官能基(a)とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A)としては、例えば、アルコキシシリル基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A1)、エポキシ基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A2)、ヒドロキシル基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A3)、カルボキシル基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A4)イソシアノ基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A5)、N−メチロール基又はN−アルコキシメチル基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A6)などが挙げられる。
【0015】
アルコキシシリル基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A1)の例としては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシアルキルアルコキシシラン、(メタ)アクリロキシアルキルアルコキシアルキルシラン、トリメトキシビニルシラン、ジメトキシエチルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシアリルシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランおよびこれらのオリゴマーなどが挙げられる。オリゴマーの例としては、例えば市販品のKR−511、KR−513、X−40−9296(いずれも信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0016】
エポキシ基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A2)の例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルシンナメート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ビニルシクロヘキサンモノエポキサイド、1、3−ブタジエンモノエポキサイドなどが挙げられる。
【0017】
ヒドロキシル基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A3)の例としては、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4ーヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0018】
カルボキシル基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A4)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸などが挙げられる。
【0019】
イソシアノ基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A5)の例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネートなどの他、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ(メタ)アクリレートを、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、コロネートLなどのポリイシアネートと反応させて得られるものが挙げられる。
【0020】
N−メチロール基又はN−アルコキシメチル基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A6)の例としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのN−モノアルコキシメチル基を有する(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)(メタ)アク
リルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルコキシメチル基を有する(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0021】
化合物(A)としては、アルコキシシリル基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A1)と、エポキシ基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A2)が好ましく、さらに好ましくはアルコキシシリル基とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A1)である。
【0022】
分子内に架橋性官能基(a)とラジカル重合性基(b)とを有する化合物(A)の含有量は、表面硬度と光学特性の両立の観点から、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、0.01〜10重量%であり、好ましくは0.02〜8重量%である。
【0023】
本発明における第2の必須成分である化合物(B)は、表面移行性の付与の観点から、分子内に溶解度パラメーター(SP値)が4.0〜8.0の疎水性官能基(c)を有することが必要である。
【0024】
ここで溶解度パラメーター(SP値)とは、凝集エネルギー密度をΔE(単位はcal/モル)、分子容をV(単位はcm3/モル)とするとき、下記の式で定義される量を意味するものとする。
SP=(ΔE/V)1/2
[単位は(cal/cm31/2
【0025】
具体的なSPの求め方は、例えばFedorsの方法が知られており、この方法で得られたSPとともに、「A Method for Estimating
both the Solubility Parameters and Molar
Volumes of Liquids,POLYMER ENGINEERING
AND SCIENCE,FEBRUARY,1974,vol.14,Issue2、
p.147−154」に記載されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0026】
溶解度パラメーター(SP値)が4.0〜8.0の疎水性官能基(c)の例としては、フッ素原子を含有する官能基、およびケイ素原子を含有する官能基などが挙げられる。なお、メチル基やブチル基等のアルキル基やアルケニル基のようなヘテロ原子で置換されていない炭化水素基の中にはそのSP値が4.0〜8.0の範囲に含まれるものもあるが、ここでは無置換の炭化水素基はこれらの疎水性官能基と見なさないので、疎水性官能基(c)には含めないこととする。
表面硬度と擦傷性付与の観点から、疎水性官能基(c)は、フッ素原子を含有する炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基、ケイ素原子を含有する炭素数2〜40の有機基が好ましく、表面移行性の観点からフッ素原子を含有する炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。
疎水性官能基(c)を有する化合物は表面移行性を有するため、硬化前は組成物中に均一に存在するが、硬化後は硬化膜の表層付近に移行して濃縮される。
【0027】
本発明の疎水性官能基(c)としてのフッ素原子を含有する炭素数1〜20のパーフルオロアルキル炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが挙げられる。
なお、パーフルオロアルキル基とは、アルキル基に含まれる水素原子の全ての水素原子がフッ素原子に置き換わったフッ素原子と炭素原子から構成される置換基であり、従って、フッ素原子に置き換わっていない末端のアルキレン基は、SP値の計算の際には残基側と見なして計算する。
例えば、疎水性官能基(c)としてのトリフルオロ基のSP値は4.2、ペンタフルオロエチル基のSP値は5.0である。
【0028】
さらに、疎水性官能基(c)を有する化合物(B)中のフッ素原子の含有量が5〜95重量%であると、(B)の表面移行性が特に良好である。好ましくは8〜95重量%である。
【0029】
ケイ素原子を含有する炭素数2〜40の有機基としては、例えば、炭素数2〜40のポリオルガノシリル基が挙げられ、直鎖でも構造中に分岐があってもよい。
例えば、疎水性官能基(c)としてのポリシロキサンのSP値は7.3である。
【0030】
本発明において、化合物(A)中のラジカル重合性基(b)の残基のSP値と、該化合物(B)中の疎水性官能基(c)の残基のSP値との差の絶対値が1.5以下であることが必要である。好ましくは1.2以下である。
このSP値差の絶対値を1.5以下にすることにより、得られる硬化膜の表面硬度と耐擦傷性をより向上させることができ、さらに耐熱性と耐溶剤性も高まる。
そのメカニズムについては明確ではないが、表面移行性を有する化合物(B)の一部と化合物(A)の一部との相互作用が強くなることにより、架橋性官能基(a)を有する(A)も硬化膜の表層付近に移行し、その結果、硬化膜表層付近の架橋密度が高まるためと推定される。
【0031】
本発明において、化合物(B)は、さらに架橋性官能基(a)を有していてもよい。
その場合、(A)が有する架橋性官能基(a)と(B)が有する架橋性官能基(a)が同じものを選択すると、(A)中のラジカル重合性基(b)の残基のSP値と、化合物(B)中の疎水性官能基(c)の残基のSP値との差の絶対値を小さくすることができるため、表面硬度と耐擦傷性の観点から特に好ましい。
【0032】
これらの架橋性官能基(a)を有する化合物(B)の好ましい具体例としては、例えば、アルコキシシリル基を有するトリフルオロプロピルトリメトキシシラン、エポキシ基を有するテトラフルオロエチルグリシジルエーテル、イソシアノ基を有する2−フルオロシクロプロピルイソシアネート等が挙げられる。
【0033】
本発明において、化合物(B)は、硬化性の観点から、さらにラジカル重合性基(b)も有していてもよい。
【0034】
本発明の分子内に溶解度パラメーター(SP値)が4.0〜8.0の疎水性官能基(c)を有する化合物(B)の含有量は、表面硬度と光学特性の両立の観点から硬化性樹脂組成物の固形分重量に対して、好ましくは0.01〜10重量%であり、さらに好ましくは0.02〜8重量%である。
【0035】
本発明の第3の必須成分である分子内に架橋性官能基(a)とSP値が4.0〜8.0の疎水性官能基(c)を有しないエチレン性不飽和単量体(C)としては、単官能エチレン性不飽和単量体(C1)と多官能エチレン性不飽和単量体(C2)が挙げられる。
【0036】
なお、上記の単官能エチレン性不飽和単量体(C1)とは、重合性官能基の数が1個のエチレン性不飽和単量体(C1)を意味し、多官能エチレン性不飽和単量体(C2)とは、重合性官能基の数が2個以上のエチレン性不飽和単量体(C2)を意味する。以下、同様に記載する。
表面硬度と耐擦傷性の観点から、エチレン性不飽和単量体(C)のうち、多官能のエチレン性不飽和単量体(C2)を含有することが好ましい。
(C)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
単官能エチレン性不飽和単量体(C1)としては、単官能(メタ)アクリルアミド(C11)、単官能(メタ)アクリレート(C12)、単官能芳香族ビニル化合物(C13)、単官能ビニルエーテル(C14)及びその他の単官能ラジカル重合性化合物(C15)等が挙げられる。
【0038】
単官能(メタ)アクリルアミド(C11)としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0039】
単官能(メタ)アクリレート化合物(C12)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、2,3−ジメチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシルカルビトール(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキサイドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキサイドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキサイドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキサイドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(以下、EOと略記)変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(以下、POと略記)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート及びEO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のビニルエーテル基及び/又はアリルエーテル基を有しないものなどが挙げられる。
【0040】
単官能芳香族ビニル化合物(C13)〔但し、後述するビニルエーテル化合物(C14)は含まない。〕としては、ビニルチオフェン、ビニルフラン、ビニルピリジン、スチレン、メチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−tert−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン及び4−tert−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0041】
単官能ビニルエーテル化合物(C14)としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル及びフェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0042】
その他の単官能ラジカル重合性化合物(C15)としては、アクリロニトリル、脂肪族ビニルエステル化合物(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びバーサチック酸ビニル等)、脂肪族アリルエステル化合物(酢酸アリル等)、ハロゲン含有単量体(塩化ビニリデン及び塩化ビニル等)及びオレフィン化合物(エチレン及びプロピレン等)等が挙げられる。
【0043】
多官能エチレン性不飽和単量体(C2)としては、2官能以上の(メタ)アクリレート(C21)、2〜6官能ビニルエーテル(C22)、2官能以上のエポキシ(メタ)アクリレート(C23)、2官能以上のウレタン(メタ)アクリレート(C24)、2官能以上のポリエステル(メタ)アクリレート(C25)及びその他の2官能以上のラジカル重合性化合物(C26)等が挙げられる。
【0044】
2官能以上の(メタ)アクリレート(C21)としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド1〜30モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド1〜30モル付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジイソシアネート化合物と水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物との反応物等が挙げられる。
【0045】
2〜6官能ビニルエーテル(C22)としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールFジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテルEO付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、PO付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、EO付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、PO付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、EO付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、PO付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、EO付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、PO付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルが挙げられる。
【0046】
2官能以上のエポキシ(メタ)アクリレート(C23)としては、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られる化合物であれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得ることができる。
【0047】
なお、2官能以上のエポキシ(メタ)アクリレート(C23)の市販品としては、例えば、エベクリル3700、エベクリル3600、エベクリル3701、エベクリル3703、エベクリル3200、エベクリル3201、エベクリル3702、エベクリル3412、エベクリル860、エベクリルRDX63182、エベクリル6040及びエベクリル3800(いずれもダイセルユーシービー社製)、EA−1020、EA−1010、EA−5520、EA−5323、EA−CHD及びEMA−1020(いずれも新中村化学工業社製)、エポキシエステルM−600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA及びエポキシエステル400EA(いずれも共栄社化学社製)並びにデナコールアクリレートDA−141、デナコールアクリレートDA−314及びデナコールアクリレートDA−911(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0048】
2官能以上のウレタン(メタ)アクリレート(C24)は、イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られる化合物であれば特に限定されず、例えば、例えば、2つのイソシアネート基を有する化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を触媒としてスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0049】
なお、2官能以上のウレタン(メタ)アクリレート(C24)の市販品としては、例えば、M−1100、M−1200、M−1210及びM−1600(いずれも東亞合成社製)、エベクリル230、エベクリル270、エベクリル4858、エベクリル8402、エベクリル8804、エベクリル8803、エベクリル8807、エベクリル9260、エベクリル1290、エベクリル5129、エベクリル4842、エベクリル210、エベクリル4827、エベクリル6700、エベクリル220及びエベクリル2220(いずれもダイセルユーシービー社製)、アートレジンUN−9000H、アートレジンUN−9000A、アートレジンUN−7100、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−330、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−1200TPK及びアートレジンSH−500B(いずれも根上工業社製)並びにU−122P、U−108A、U−340P、U−4HA、U−6HA、U−324A、U−15HA、UA−5201P、UA−W2A、U−1084A、U−6LPA、U−2HA、U−2PHA、UA−4100、UA−7100、UA−4200、UA−4400、UA−340P、U−3HA、UA−7200、U−2061BA、U−10H、U−122A、U−340A、U−108、U−6H、UA−4000、AH−600、AT−600、UA−306H、AI−600、UA−101T、UA−101I、UA−306T及びUA−306I(いずれも新中村化学工業社製)等が挙げられる。
【0050】
2官能以上のポリエステル(メタ)アクリレート(C25)は、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの両末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0051】
なお、2官能以上のポリエステル(メタ)アクリレート(C25)の市販品としては、例えばCN2203、CN2254、CN2270、CN2271、CN2273及びCN2274(いずれもサートマー社製)並びにアロニックスM6500、アロニックスM6100、アロニックスM6200及びアロニックスM6250(いずれも東亞合成社製)等が挙げられる。
【0052】
その他の2官能以上のラジカル重合性化合物(C26)としては、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びフォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0053】
分子内に架橋性官能基(a)と疎水性官能基(c)を有しないエチレン性不飽和単量体(C)としては、表面硬度と擦傷性の観点から好ましいのは多官能のエチレン性不飽和単量体(C2)であり、さらに好ましいのは、2官能以上の(メタ)アクリレート(C21)、2官能以上のエポキシ(メタ)アクリレート(C23)、2官能以上のウレタン(メタ)アクリレート(C24)及び2官能以上のポリエステル(メタ)アクリレート(C25)である。
【0054】
本願の分子内に架橋性官能基(a)と疎水性官能基(c)を有しないエチレン性不飽和単量体(C)の含有量は、硬化性と密着性の観点から硬化性樹脂組成物の(A)〜(D)の合計重量に基づいて、好ましくは50〜99.99重量%であり、さらに好ましくは60〜99.9重量%である。
【0055】
エチレン性不飽和単量体(C)のSP値と(B)中の疎水性官能基(c)のSP値の差の絶対値は1.5〜7.0であることが望ましい。SP値の差の絶対値が1.5未満の場合、(B)の表面移行性が低く、表面硬度および耐擦傷性が不十分となることがある。一方、7.0を超えると、(C)と(B)との相溶性が悪化し、光学特性が低下することがある。
【0056】
なお、エチレン性不飽和単量体(C)自体のSP値は、(C)が2種類以上の混合物である場合、各成分の重量比によるSP値の相加平均のことをいう。また、化合物(B)のSP値は、(B2)が2種類以上の混合物である場合も、各成分の重量比によるSP値の相加平均のことをいう。
【0057】
本発明の第4の必須成分であるラジカル開始剤(D)とは、活性エネルギー光線、酸及び塩基のうちの少なくとも1種によりラジカルを発生する化合物を意味する。
ラジカル開始剤(D)としては、活性エネルギー光線によりラジカルを発生する光ラジカル開始剤(D1)、酸 または塩基によりラジカルを発生するラジカル開始剤(D2)、活性光線、酸または塩基によりラジカルを発生させることが可能な開始剤(D12)等の公知の化合物を用いることができる。
なお、以下の例示としては、活性エネルギー光線、酸または塩基によりラジカルを発生させることが可能な開始剤(D12)は、上記の分類で光ラジカル開始剤(D1)の中で説明する。
【0058】
光ラジカル開始剤(D1)としては、活性エネルギー光線、酸または塩基によりラジカルを発生するラジカル開始剤(D12)も含めて、例えば、アシルホスフィンオキサイド誘導体系重合開始剤(D121)、α−アミノアセトフェノン誘導体系重合開始剤(D122)、ベンジルケタール誘導体系重合開始剤(D123)、α−ヒドロキシアセトフェノン誘導体系重合開始剤(D124)、ベンゾイン誘導体系重合開始剤(D125)、オキシムエステル誘導体系重合開始剤(D126)及びチタノセン誘導体系重合開始剤(D127)等が挙げられる。
光ラジカル開始剤(D1)としては、以下に例示するラジカル開始剤(D121)〜(D127)を好ましく用いることができる。
【0059】
アシルホスフィンオキサイド誘導体系重合開始剤(D121)としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド[BASFジャパン社製(LUCIRIN TPO)]及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド[BASFジャパン社製(IRGACURE 819)]等が挙げられる。
【0060】
α−アミノアセトフェノン誘導体系重合開始剤(D122)としては、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン[BASFジャパン社製(IRGACURE 907)]、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン[BASFジャパン社製(IRGACURE 369)]及び1,2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン[BASFジャパン社製(IRGACURE 379)]等が挙げられる。
【0061】
ベンジルケタール誘導体系重合開始剤(D123)としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[BASFジャパン社製(IRGACURE 651)]等が挙げられる。
【0062】
α−ヒドロキシアセトフェノン誘導体系重合開始剤(D124)としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン[BASFジャパン社製(IRGACURE 184)]、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン[BASFジャパン社製(DAROCUR 1173)]、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン[BASFジャパン社製(IRGACURE 2959)]及び2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[BASFジャパン社製(IRGACURE 127)]等が挙げられる。
【0063】
ベンゾイン誘導体系重合開始剤(D125)としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0064】
オキシムエステル誘導体系重合開始剤(D126)としては、1,2−オクタンジオン−1−(4−[フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)][BASFジャパン社製(IRGACURE OXE 01)]及びエタノン−1−(9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)[BASFジャパン社製(IRGACURE OXE 02)]等が挙げられる。
【0065】
チタノセン誘導体系重合開始剤(D127)としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム[BASFジャパン社製(IRGACURE 784)]等が挙げられる。
【0066】
ベンゾフェノン誘導体系重合開始剤(D128)としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン[SHUANG−BANG社製(SB−PI 701)]、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド[SHUANG−BANG社製(SB−PI 705)]等が挙げられる。
【0067】
チオキサントン誘導体(D129)としては、イソプロピルチオキサントン[日本化薬(株)社製(カヤキュアーITX)]、2,4−ジエチルチオキサントン[日本化薬(株)社製(カヤキュアーDETX−S)]、2−クロロチオキサントン[日本化薬(株)社製(カヤキュアーCTX)等が挙げられる。
【0068】
酸または塩基によりラジカルを発生するラジカル開始剤(D2)としては、有機過酸化物系重合開始剤(D21)、アゾ化合物系重合開始剤(D22)、それ以外のラジカル開始剤(D23)等が挙げられる。
【0069】
有機過酸化物系重合開始剤(D21)としては、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、tert−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル4,4−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−(2−tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ヘキシルパーオキサイド、2,5,−ジメチル−2,5,−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド及びtert−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0070】
アゾ化合物系重合開始剤(D22)としては、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)及び2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
【0071】
その他の重合開始剤(D23)としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等が挙げられる。
【0072】
本発明の硬化性樹脂組成物中のラジカル開始剤(D)の含有量は、硬化性および硬化物の着色の観点から、硬化性樹脂組成物の(A1)〜(D)の合計量に対して好ましくは0.1〜30重量%、更に好ましくは0.5〜20重量%である。
【0073】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、使用目的に合わせて、密着性付与剤(カップリング剤等)、溶剤、粘着性付与剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、スリップ剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等を含有することができる。
【0074】
本発明の硬化性樹脂組成物の塗工方法は、通常のコーティング方法、例えばディッピングコート、スプレーコ−ト、フローコ−ト、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、刷毛塗り等を挙げることができる。これらコーティングにおける塗膜の厚さは、乾燥、硬化後、通常0.1〜400μmであり、好ましくは、1〜200μmである。
【0075】
本発明の組成物は、熱及び/又は放射線(光)によって硬化させることができる。熱による場合、その熱源としては、例えば、電気ヒーター、赤外線ランプ、熱風等を用いることができる。放射線(光)による場合、その線源としては、組成物をコーティング後短時間で硬化させることができるものである限り特に制限はないが、例えば、赤外線の線源として、ランプ、抵抗加熱板、レーザー等を、また可視光線の線源として、日光、ランプ、蛍光灯、レーザー等を、また紫外線の線源として、水銀ランプ、ハライドランプ、レーザー等を、また電子線の線源として、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて発生させる冷陰極方式及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式を挙げることができる。また、アルファ線、ベータ線及びガンマ線の線源として、例えば、60Co等の核分裂物質を挙げることができ、ガンマ線については加速電子を陽極へ衝突させる真空管等を利用することができる。これら放射線は1種単独で又は2種以上を同時に又は一定期間をおいて照射することができる。
【0076】
本発明の硬化物は、前記硬化性組成物を種々の基材、例えば、ガラス基材にコーティングして硬化させることにより得ることができる。具体的には、組成物をコーティングし、好ましくは、0〜200℃で揮発成分を乾燥させた後、熱及び/又は放射線で硬化処理を行うことにより被覆成形体として得ることができる。熱による場合の好ましい硬化条件は40〜250℃であり、10秒〜24時間の範囲内で行われる。放射線による場合、紫外線又は電子線を用いることが好ましい。
【0077】
そのような場合、好ましい紫外線の照射光量は0.01〜10J/cm2であり、より好ましくは、0.1〜2J/cm2である。また、好ましい電子線の照射条件は、加速電圧は10〜300kV、電子密度は0.02〜0.30mA/cm2であり、電子線照射量は1〜10Mradである。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物はディスプレイ、タッチパネル、コーティング剤、インキ、粘接着剤などの用途に使用でき、ディスプレイ用に特に好適である。
【実施例】
【0079】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0080】
製造例1
<アクリロキシ基とエポキシ基を有する化合物(A−2)の製造>
撹拌装置、温度制御措置、湿式粉砕機(反応槽の外側に付属)を設置した反応槽に、バチルアルコール[「NIKKOL バチルアルコール100」;日光ケミカルズ社製]345部、エピクロルヒドリン 93部、トルエン250部を仕込み、反応槽内を窒素雰囲気下とし、19℃の窒素雰囲気下にある粒状水酸化ナトリウム 40部を19〜29℃で9.5時間かけて断続滴下し、この間反応槽内の水酸化ナトリウムは湿式粉砕機を使用して粉砕させた。その後25〜29℃で5時間反応熟成し、グリシジルエーテル化した。なお、湿式粉砕機は水酸化ナトリウムの滴下開始から反応熟成終了まで連続運転した。
槽内を16℃に冷却後、23℃の水200部を20〜28℃の範囲で投入して0.5時間攪拌、17℃で0.5時間分液静置後下層(水層)を取り出し、残った上層(有機層)に「キョーワード600」(協和化学工業社製;アルカリ吸着剤)10部を投入し、減圧下昇温して120℃、0.1mmHgでエピクロルヒドリンとトルエン混合物の留出除去を行い、残存物を「ラヂオライト#700」(協和化学工業社製;ケイソウ土ろ過助剤)を用いて濾過循環を施し、攪拌装置、加熱冷却装置、温度制御装置、分水管を備えた反応容器に移送した。反応層内にアクリル酸86部を仕込み(モル比1:1.2)、これに触媒(α−1)(スルホプロピル基担持シリカゲル、d50は220μm、BET比表面積は287m2/g、酸価は43mgKOH/g、アスペクト比は1.02)を45部および重合禁止剤としてハイドロキノン0.02部を加えた。反応温度115〜125℃にて攪拌しながら生成水を分水管により連続的に系外へ除去し2時間エステル化反応させた。さらに250〜300mmHgの減圧下に115〜125℃で1時間反応させ、次いで10〜20mmHg、120〜130℃で過剰のアクリル酸を留去した後、冷却し、触媒をろ過で除去することで、アクリロキシ基とエポキシ基を有する化合物の2−アクリロキシ−3−オレイルグリシジルエーテル(A−2)を437部得た。
【0081】
<硬化性樹脂組成物の製造>
実施例1〜5および比較例1〜5 表1の配合部数(重量部)に従い、ガラス製の容器に、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)、重合開始剤(D)及び溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをガラス製の容器に仕込み、均一になるまで攪拌することにより本発明の硬化性樹脂組成物を得た。
【0082】
【表1】
【0083】
なお、表1中の記号が示す化合物は以下の通りである。
(A−1):3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン [KBM−5103、信越化学工業(株)社製]
(A−2):製造例1の2−アクリロキシ−3-オレイルグリシジルエーテル
(A−3):4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル
(B−1):トリフルオロプロピルトリメトキシシラン [KBM−7103、信越化学工業(株)社製] 、トリフルオロメチル基のSP値は4.2、残基のエチルトリメトキシシラン基のSP値は7.9。
(B−2):ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体[KF−6011、信越化学工業(株)社製]、ポリシロキサンのSP値は7.3、残基のポリオキシエチレン基のSP値は9.7。
(C−1):ジペンタエリスリトールペンタアクリレート[ネオマーDA−600、三洋化成工業(株)社製]、(C−1)のSP値は10.8。
(C−2):1,6−ヘキサンジオールジアクリレート[ライトアクリレート1,6HX−A、共栄社化学(株)社製] 、(C−2)のSP値は9.6。
(D−1):2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン[IRGACURE907、BASFジャパン(株)製]
【0084】
以下の方法で本発明の硬化性樹脂組成物とその硬化膜の物性測定と性能を評価した。
[硬化膜の製造]
10cm×10cm四方のガラス基板上にバーコーターを用いて実施例1〜2および比較例1〜3の硬化性樹脂組成物を塗布し、乾燥し、乾燥膜厚10μmの塗膜を形成した。この塗膜を80℃のオーブンに3分間入れ、乾燥させた後、メタルハライドランプの光を100mJ/cm照射した。その後、230℃で20分間ポストベークを行うことにより、硬化膜を得た。
【0085】
[全光線透過率の評価]
得られた硬化膜の全光線透過率をガラス基板ごとNDH7000[ヘーズメーター、日本電色工業社製]を用いて測定した。評価基準は以下の通りである。
【0086】
○:90%以上
×:90%未満
【0087】
[鉛筆硬度の評価]
得られた硬化膜をJIS5600−5−4に準拠し、500gの荷重で鉛筆硬度を測定した。硬度の確認は、三波長管の下で行い、5回の試験で傷が付かなかった最高の鉛筆の硬度を硬化膜の硬度とした。
本願発明の課題解決レベルとしては、この評価条件では、一般に4H以上が好ましい。
【0088】
[密着性の評価]
得られた硬化膜について、JIS K5600−5−6の付着性(クロスカット法)に準拠し、密着性を評価した。評価基準は以下の通りである。
【0089】
◎:「試験後に基材フィルム上に残ったマス目の個数/100個」が100個
○:「試験後に基材フィルム上に残ったマス目の個数/100個」が95〜99個
△:「試験後に基材フィルム上に残ったマス目の個数/100個」が80〜95個
×:「試験後に基材フィルム上に残ったマス目の個数/100個」が80個未満。
【0090】
実施例1〜5及び比較例1〜5について、硬化膜の全光線透過率、鉛筆硬度及び密着性を評価した結果を表1に示す。
【0091】
本発明の実施例1〜5の硬化性樹脂組成物から得られた硬化膜は、全光線透過率、鉛筆硬度及び密着性のすべての評価項目で優れた結果が得られた。
一方、(A)と(B)のいずれも含有しない比較例1は、鉛筆硬度が不良で、密着性も不十分であった。(B)を含有しない比較例2は、鉛筆硬度が不十分であった。比較例2よりさらに(A)の添加量を増やした比較例3は、鉛筆硬度は向上したものの、硬化膜の透過率と密着性が低下した。
(A)中のラジカル重合性基(b)の残基のSP値と(B)中の疎水性官能基(c)の残基のSP値との差の絶対値が1.5を超えている比較例4は、(A)と(B)の相互作用が弱くなったため、鉛筆硬度が不良である。
(C)を含まない比較例5は、硬化収縮が大きくなり、密着性と鉛筆硬度が不良である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いると、光学特性および機械特性を損なうことなく、表面硬度および耐擦傷性が高く、さらに耐熱性と耐溶剤性にも優れる硬化膜を形成できる。
さらに、ディスプレイ、タッチパネル、コーティング剤、インキ、粘接着剤等の用途の硬化性樹脂組成物として好適である。