特開2016-205524(P2016-205524A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-205524(P2016-205524A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20161111BHJP
   B60B 35/18 20060101ALI20161111BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20161111BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20161111BHJP
【FI】
   F16C33/78 D
   B60B35/18 A
   F16C19/18
   F16J15/32 311P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-88255(P2015-88255)
(22)【出願日】2015年4月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100112715
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100171767
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 元貴
(72)【発明者】
【氏名】原田 英将
【テーマコード(参考)】
3J006
3J016
3J701
【Fターム(参考)】
3J006AE24
3J006AE28
3J006AE34
3J006CA01
3J016AA01
3J016AA02
3J016AA03
3J016BB03
3J016BB04
3J016BB12
3J016BB16
3J016BB17
3J016CA02
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA73
3J701EA02
3J701EA06
3J701EA49
3J701FA31
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】必要な部品点数を少なくしつつ、錆が発生するのを抑制できる車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】車輪用軸受装置(10)は、外輪(12)と、内軸(14)と、スリンガ(32)と、シールゴム(34)とを備える。内軸は、外輪に対して回転可能に配置される。スリンガは、外輪に固定される。シールゴムは、内軸に接着され、スリンガと接触する。外輪は、支持部(12D)を含む。支持部は、外輪の軸方向の一端側の端部に形成されている。支持部には、スリンガが固定される。内軸は、取付部(14E)を含む。取付部は、内軸の外周面から突出して形成され、軸方向で外輪よりも一端側に位置する。取付部は、支持面(144)を含む。支持面は、軸方向でスリンガと対向する。シールゴムは、本体(34A)と、リップ(34B、34C、34D)とを含む。本体は、支持面に接着されている。リップは、本体と一体的に形成され、スリンガに接触する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が有する車輪を回転可能に支持する車輪用軸受装置であって、
外輪と、
前記外輪に対して回転可能に配置された内軸と、
前記外輪に固定されたスリンガと、
前記内軸に接着され、前記スリンガと接触するシールゴムとを備え、
前記外輪は、
前記外輪の軸方向の一端側の端部に形成され、前記スリンガが固定される支持部を含み、
前記内軸は、
前記内軸の外周面から突出して形成され、前記軸方向で前記外輪よりも前記一端側に位置する取付部を含み、
前記取付部は、
前記軸方向で前記スリンガと対向する支持面を含み、
前記シールゴムは、
前記支持面に接着された本体と、
前記本体と一体的に形成され、前記スリンガに接触するリップとを含む、車輪用軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車輪用軸受装置であって、
前記シールゴムは、さらに、
前記本体と一体的に形成され、前記外輪の径方向で前記リップよりも外側に位置し、前記スリンガとの間に隙間を形成する突起を含む、車輪用軸受装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車輪用軸受装置であって、
前記径方向から見て、前記突起が前記スリンガに重なり、
前記突起は、前記軸方向で前記スリンガとの間に隙間を形成し、且つ、前記径方向で前記スリンガとの間に隙間を形成する、車輪用軸受装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の車輪用軸受装置であって、
前記突起の外周面には、前記外輪の周方向に延びる溝が形成されている、車輪用軸受装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の車輪用軸受装置であって、
前記スリンガは、
前記支持部の外周面に接触する筒部を含み、
前記車輪用軸受装置は、さらに、
前記筒部の外周面に接着されたゴム層を備え、
前記ゴム層の外周面は、前記外輪のうち前記軸方向で前記支持部に隣接する部分の外周面よりも前記外輪の径方向で外側に位置する、車輪用軸受装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車輪用軸受装置であって、
前記ゴム層は、前記筒部の前記軸方向での端面を覆い、且つ、前記軸方向で前記部分に接する、車輪用軸受装置。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか1項に記載の車輪用軸受装置であって、
前記スリンガは、
前記支持部の外周面に接触する筒部を含み、
前記筒部は、
前記外輪のうち前記軸方向で前記支持部に隣接する部分の外周面よりも前記外輪の径方向で外側に位置する部分を含む、車輪用軸受装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車輪用軸受装置であって、
前記車輪用軸受装置は、さらに、
前記筒部の前記軸方向での端面を覆い、且つ、前記軸方向で前記部分に接するゴム層を備える、車輪用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪用軸受装置に関し、詳しくは、自動車等の車両が有する車輪に用いられ、外輪と内軸との間にシール部材が配置された車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、複数の車輪を備える。複数の車輪の各々は、車輪用軸受装置により、回転可能に支持される。
【0003】
車輪用軸受装置は、例えば、外輪と、内軸と、複数の転動体と、シール部材とを含む。外輪は、例えば、車両の懸架装置に取り付けられる。外輪は、筒形状を有し、内周面に形成された軌道面を含む。内軸は、例えば、ホイールに取り付けられる。内軸は、外輪の内側に配置され、外周面に形成された軌道面を含む。複数の転動体は、外輪が有する軌道面と、内軸が有する軌道面とに接触し、車輪用軸受装置の周方向に転動可能に配置される。シール部材は、車輪用軸受装置の軸方向で複数の転動体よりも車両の外側(ホイール側)に位置する。シール部材は、外輪と内軸との間に配置され、外輪に固定される芯金と、芯金に接着され、内軸に接するシールゴムとを含む。
【0004】
雨天時等に道路を走行すると、内軸に水が付着するおそれがある。内軸が炭素鋼からなる場合、水が付着すると、錆が発生し易くなる。寒冷地等では、冬季に融雪剤が道路に撒かれることがある。このような道路を走行すると、融雪剤を含む水が付着するおそれがある。そのため、内軸はさらに錆び易くなる。
【0005】
ここで、シールゴムは、内軸に接しながら、回転する。そのため、内軸に錆が発生すると、シールゴムは錆と接触しながら回転することになる。その結果、シールゴムが磨耗し、目的とする機能を発揮できなくなる。
【0006】
シールゴムが回転しながら接触する面に錆を発生し難くするための方策が、例えば、特開2014−20413号公報に開示されている。この公報では、ステンレス製の金属環が内軸に固定されている。シールゴムは、当該金属環に接触しながら回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−20413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記公報では、金属環を別途備える必要がある。そのため、車輪用軸受装置の部品点数が増えてしまうという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、必要な部品点数を少なくしつつ、寿命を長くすることができる車輪用軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態による車輪用軸受装置は、車両が有する車輪を回転可能に支持する。車輪用軸受装置は、外輪と、内軸と、スリンガと、シールゴムとを備える。内軸は、外輪に対して回転可能に配置される。スリンガは、外輪に固定される。シールゴムは、内軸に接着され、スリンガと接触する。外輪は、支持部を含む。支持部は、外輪の軸方向の一端側の端部に形成されている。支持部には、スリンガが固定される。内軸は、取付部を含む。取付部は、内軸の外周面から突出して形成され、軸方向で外輪よりも一端側に位置する。取付部は、支持面を含む。支持面は、軸方向でスリンガと対向する。シールゴムは、本体と、リップとを含む。本体は、支持面に接着されている。リップは、本体と一体的に形成され、スリンガに接触する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施の形態による車輪用軸受装置においては、必要な部品点数を少なくしつつ、寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態による車輪用軸受装置を示す断面図である。
図2図1に示す車輪用軸受装置の一部を拡大して示す断面図である。
図3】本発明の第2の実施の形態による車輪用軸受装置の一部を拡大して示す断面図である。
図4】本発明の第3の実施の形態による車輪用軸受装置の一部を拡大して示す断面図である。
図5】本発明の第4の実施の形態による車輪用軸受装置の一部を拡大して示す断面図である。
図6】本発明の第4の実施の形態の応用例に係る車輪用軸受装置の一部を拡大して示す断面図である。
図7】本発明の第5の実施の形態による車輪用軸受装置の一部を拡大して示す断面図である。
図8】本発明の第5の実施の形態の応用例に係る車輪用軸受装置の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態による車輪用軸受装置は、車両が有する車輪を回転可能に支持する。車輪用軸受装置は、外輪と、内軸と、スリンガと、シールゴムとを備える。内軸は、外輪に対して回転可能に配置される。スリンガは、外輪に固定される。シールゴムは、内軸に接着され、スリンガと接触する。外輪は、支持部を含む。支持部は、外輪の軸方向の一端側の端部に形成されている。支持部には、スリンガが固定される。内軸は、取付部を含む。取付部は、内軸の外周面から突出して形成され、軸方向で外輪よりも一端側に位置する。取付部は、支持面を含む。支持面は、軸方向でスリンガと対向する。シールゴムは、本体と、リップとを含む。本体は、支持面に接着されている。リップは、本体と一体的に形成され、スリンガに接触する。
【0014】
上記車輪用軸受装置においては、内軸にシールゴムが接着されている。そのため、外輪にシールゴムを配置する場合と比べて、シールゴムと接するステンレス製の金属環を内軸に固定しなくてもよい。その結果、必要な部品点数を少なくすることができる。
【0015】
上記車輪用軸受装置においては、内軸に接着されたシールゴムが外輪に固定されたスリンガと接触しながら回転するので、シールゴムが磨耗し難くなる。その結果、車輪用軸受装置の寿命を長くすることができる。その理由は、以下のとおりである。
【0016】
例えば、外輪に配置されたシールゴムが内軸の表面に直接接触しながら回転する場合では、内軸の表面に錆が発生すると、シールゴムが錆と接触しながら回転することになり、シールゴムが磨耗し易くなる。これに対して、上記車輪用軸受装置では、シールゴムが内軸に接しながら回転しないので、シールゴムが内軸に発生した錆と接触しながら回転するのを回避できる。その結果、車輪用軸受装置の寿命を長くすることができる。
【0017】
上記車輪用軸受装置において、シールゴムが接触するスリンガには、錆を発生させ難くするための処理を施しておくことが好ましい。このような処理としては、例えば、スリンガをステンレス鋼で形成することや、スリンガを冷延鋼板で形成し、且つ、その表面に防錆処理をすること等がある。
【0018】
好ましくは、シールゴムは突起をさらに含む。突起は、本体と一体的に形成され、外輪の径方向でリップよりも外側に位置し、スリンガとの間に隙間を形成する。
【0019】
この場合、突起とスリンガとの間に形成される隙間がラビリンスとして機能する。つまり、ラビリンス効果を得ることができる。そのため、上記隙間から水が浸入し難くなる。
【0020】
好ましくは、径方向から見て、突起がスリンガに重なる。突起は、軸方向でスリンガとの間に隙間を形成し、且つ、径方向でスリンガとの間に隙間を形成する。
【0021】
この場合、突起とスリンガとの間に形成され、ラビリンスとして機能する隙間が複雑になる。そのため、当該隙間から水が浸入するのをさらに抑制できる。
【0022】
好ましくは、突起の外周面には、外輪の周方向に延びる溝が形成されている。
【0023】
この場合、溝を利用して、突起の外周面に付着した水を排出できる。そのため、突起とスリンガとの間に形成された隙間から水が浸入するのを抑制できる。
【0024】
好ましくは、スリンガは筒部を含む。筒部は、支持部の外周面に接触する。車輪用軸受装置は、ゴム層をさらに備える。ゴム層は、筒部の外周面に接着されている。ゴム層の外周面は、外輪のうち軸方向で支持部に隣接する部分の外周面よりも外輪の径方向で外側に位置する。
【0025】
この場合、ゴム層を利用して、外輪の外周面に付着した水が、突起とスリンガとの間に形成された隙間から浸入するのを抑制できる。
【0026】
好ましくは、ゴム層は、筒部の軸方向での端面を覆い、且つ、外輪のうち軸方向で支持部に隣接する部分に対して軸方向で接する。
【0027】
この場合、外輪の外周面に付着した水が筒部と支持部との間に浸入するのを抑制できる。そのため、支持部の外周面に錆が発生し難くなる。
【0028】
好ましくは、スリンガは筒部を含む。筒部は、支持部の外周面に接触する。筒部は、外輪のうち軸方向で支持部に隣接する部分の外周面よりも外輪の径方向で外側に位置する部分を含む。
【0029】
この場合、筒部を利用して、外輪の外周面に付着した水が、突起とスリンガとの間に形成された隙間から浸入するのを抑制できる。
【0030】
好ましくは、車輪用軸受装置はゴム層をさらに備える。ゴム層は、筒部の軸方向での端面を覆い、且つ、外輪のうち軸方向で支持部と隣接する部分に対して軸方向で接する。
【0031】
この場合、外輪の外周面に付着した水が筒部と支持部との間に浸入するのを抑制できる。そのため、支持部の外周面に錆が発生し難くなる。
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図中同一又は相当部分には、同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0033】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態による車輪用軸受装置10を示す。なお、以下の説明において、軸方向は、車輪用軸受装置10の中心軸線L1が延びる方向である。径方向は、中心軸線L1に垂直な方向、つまり、軸方向に垂直な方向である。周方向は、中心軸線L1周りの方向である。車輪用軸受装置10が車両に配置された状態では、車輪用軸受装置10の軸方向一端側が車両の外側に相当し、車輪用軸受装置10の軸方向他端側が車両の内側に相当する。
【0034】
1.車輪用軸受装置の全体構成
図1を参照して、車輪用軸受装置10は、外輪12と、内軸14と、内輪16と、複数の転動体18と、複数の転動体20と、保持器22と、保持器24と、シール部材26と、シール部材28とを含む。
【0035】
外輪12は、例えば、炭素鋼からなる。外輪12は、本体12Aを含む。本体12Aは、筒形状を有する。
【0036】
本体12Aは、軌道面121と、軌道面122とを含む。これらの軌道面121、122は、本体12Aの内周面に形成され、軸方向で離れている。
【0037】
本体12Aは、さらに、筒部12Bと、筒部12Cとを含む。筒部12Bは、本体12Aの軸方向一端部に形成されている。筒部12Cは、本体12Aの軸方向他端部に形成されている。
【0038】
図2を参照しながら、筒部12Bについて、詳しく説明する。図2は、図1の一部を拡大して示す断面図である。
【0039】
筒部12Bは、支持部12Dを含む。支持部12Dは、筒部12Bの軸方向一端部に形成され、略一定の内径及び外径で軸方向に延びる。
【0040】
支持部12Dは、筒部12Bのうち、支持部12Dに隣接する部分12Eと同じ大きさの内径を有する。支持部12Dは、部分12Eよりも小さい外径を有する。
【0041】
支持部12Dの外周面123は、環状の段差面124を介して、部分12Eの外周面125に接続されている。段差面124は、部分12Eの軸方向一端に形成されている。
【0042】
支持部12Dの内周面126は、環状の端面127を介して、支持部12Dの外周面123に接続されている。端面127は、支持部12Dの軸方向一端を規定する。
【0043】
再び、図1を参照しながら、説明する。外輪12は、さらに、フランジ12Fを含む。フランジ12Fは、本体12Aの外周面に形成されている。
【0044】
フランジ12Fは、複数の取付部12Gを含む。複数の取付部12Gの各々には、孔が形成されている。当該孔に挿入されるボルトにより、外輪12が懸架装置に固定される。
【0045】
内軸14は、例えば、炭素鋼からなる。内軸14は、外輪12の内側に配置され、外輪12と同軸上に位置する。つまり、内軸14は、中心軸線L1上に配置される。
【0046】
内軸14は、本体14Aを含む。本体14Aには、孔141が形成されている。孔141は、本体14Aを軸方向に貫通している。
【0047】
本体14Aは、大径部14B、中径部14C及び小径部14Dを含む。
【0048】
中径部14Cは、大径部14Bよりも小さい外径を有する。中径部14Cは、軸方向で大径部14Bの隣に位置する。中径部14Cは、軌道面142を含む。軌道面142は、中径部14Cの外周面に形成されている。
【0049】
小径部14Dは、中径部14Cよりも小さい外径を有する。小径部14Dは、軸方向で中径部14Cの隣に位置する。小径部14Dは、中径部14Cに対して、大径部14Bとは反対側に位置する。
【0050】
内軸14は、さらに、取付部としてのフランジ14Eを含む。フランジ14Eは、大径部14Bの外周面に形成されている。フランジ14Eは、外輪12よりも軸方向で一端側に位置している。つまり、車輪用軸受装置10が車両に配置された状態で、フランジ14Eは、外輪12よりも車両の幅方向で外側に位置する。
【0051】
フランジ14Eには、複数の孔143が形成されている。複数の孔143の各々に挿入されるボルト30により、車輪(具体的には、ホイール)やブレーキディスク等が内軸14に取り付けられる。
【0052】
内輪16は、例えば、炭素鋼からなる。内輪16は、内軸14と同軸上に配置される。つまり、内輪16は、中心軸線L1上に配置される。
【0053】
内輪16には、孔161が形成されている。孔161は、内輪16を軸方向に貫通している。
【0054】
内輪16は、内軸14に固定される。具体的には、内軸14の小径部14Dが内輪16に圧入されることにより、内輪16が内軸14に固定される。なお、内輪16の内軸14への固定方法は、圧入に限定されない。例えば、かしめ固定であってもよい。或いは、内軸14の孔141に挿入され且つ固定されるボルトを利用してもよい。
【0055】
内輪16は、軌道面162を含む。軌道面162は、内輪16の外周面に形成されている。
【0056】
複数の転動体18は、外輪12と内軸14との間に配置される。複数の転動体18は、保持器22により、周方向に等間隔に配置される。複数の転動体18の各々は、軌道面121と軌道面142とに接触する。複数の転動体18の各々は、周方向に転動可能である。
【0057】
複数の転動体20は、外輪12と内輪16との間に配置される。複数の転動体20は、保持器24により、周方向に等間隔に配置される。複数の転動体20の各々は、軌道面122と軌道面162とに接触する。複数の転動体20の各々は、周方向に転動可能である。
【0058】
シール部材26は、外輪12の筒部12Bと内軸14との間に配置される。シール部材28は、外輪12の筒部12Cと内輪16との間に配置される。車輪用軸受装置10が車両に配置された状態で、シール部材26は、シール部材28よりも、車両の幅方向で外側に位置する。
【0059】
2.シール部材
続いて、図2を参照しながら、シール部材26について説明する。シール部材26は、スリンガ32と、シールゴム34とを含む。
【0060】
2−1.スリンガ
スリンガ32は、周方向で全周に亘って連続して延びる環状の部材であり、例えば、冷延鋼板やステンレス鋼板等からなる。スリンガ32が冷延鋼板からなる場合、スリンガ32の表面には、必要に応じて、防錆処理が施される。因みに、本実施の形態では、スリンガ32はステンレス鋼板からなる。つまり、スリンガ32には、錆が発生し難くなっている。
【0061】
スリンガ32は、3つの筒部32A、32B、32Cと、2つの環状板部32D、32Eとを含む。3つの筒部32A、32B、32Cと、2つの環状板部32D、32Eとは、同軸上に形成されている。以下、これらについて説明する。
【0062】
筒部32Aは、筒部32Bの内径よりも小さい外径を有する。筒部32Aは、筒部32Bと同軸上に位置する。筒部32Aは、径方向から見て、筒部32Bと重ならない位置に形成されている。
【0063】
筒部32Aは、環状板部32Dを介して、筒部32Bに接続されている。具体的には、筒部32Aの軸方向一端が環状板部32Dの内周縁に接続され、筒部32Bの軸方向他端が環状板部32Dの外周縁に接続されている。
【0064】
筒部32Bは、筒部32Cの内径よりも小さい外径を有する。筒部32Bは、筒部32Cと同軸上に位置する。筒部32Bは、径方向から見て、筒部32Cと重なる位置に形成されている。筒部32Bは、筒部32Cよりも軸方向の長さが短い。
【0065】
筒部32Bは、環状板部32Eを介して、筒部32Cに接続されている。具体的には、筒部32Bの軸方向一端が環状板部32Eの内周縁に接続され、筒部32Cの軸方向一端が環状板部32Eの外周縁に接続されている。つまり、スリンガ32には、筒部32Bと筒部32Cとの間に、溝321が形成されている。溝321は、周方向で全周に亘って延びている。
【0066】
スリンガ32は、外輪12の支持部12Dに固定される。具体的には、スリンガ32の溝321に支持部12Dが圧入されることにより、スリンガ32が支持部12Dに固定される。このとき、スリンガ32の筒部32Bは、支持部12Dの内周面126に接している。スリンガ32の筒部32Cは、支持部12Dの外周面123に接している。筒部32Cは、筒部12Bの部分12Eが有する段差面124に接している。スリンガ32の環状板部32Eは、支持部12Dの端面127に接している。
【0067】
2−2.シールゴム
シールゴム34は、周方向で全周に亘って連続して延びる環状の部材であり、例えば、ニトリルゴムや水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム等からなる。シールゴム34は、内軸14に接着されている。つまり、シールゴム34は、内軸14と一体的に形成されている。シールゴム34を内軸14に接着する方法としては、例えば、シールゴム34を加硫成形するとともに、シールゴム34を内軸14に接着する方法等がある。
【0068】
シールゴム34は、本体34Aと、複数のリップ34B、34C、34Dと、突起34Eとを含む。以下、これらについて説明する。
【0069】
本体34Aは、周方向で全周に亘って形成されている。本体34Aは、内軸14が有する支持面144に接着されている。支持面144は、内軸14の表面の一部であり、軸方向でスリンガ32と重なり、且つ、径方向でスリンガ32と重なる。支持面144は、大径部14Bからフランジ部14Eに亘って形成されている。
【0070】
リップ34Bは、本体34Aと一体的に形成されている。リップ34Bは、周方向で全周に亘って形成されている。リップ34Bは、リップ34Bが有する弾性により、周方向で全周に亘って、スリンガ32の筒部32Aに押し付けられている。
【0071】
リップ34Cは、本体34Aと一体的に形成されている。リップ34Cは、周方向で全周に亘って形成されている。リップ34Cは、径方向でリップ34Bよりも外側に位置している。リップ34Cは、リップ34Cが有する弾性により、周方向で全周に亘って、スリンガ32の環状板部32Dに押し付けられている。
【0072】
リップ34Dは、本体34Aと一体的に形成されている。リップ34Dは、周方向で全周に亘って形成されている。リップ34Dは、径方向でリップ34Cよりも外側に位置している。リップ34Dは、リップ34Dが有する弾性により、周方向で全周に亘って、スリンガ32の環状板部32Dに押し付けられている。
【0073】
突起34Eは、本体34Aと一体的に形成されている。突起34Eは、周方向で全周に亘って形成されている。突起34Eは、径方向でリップ34Dよりも外側に位置している。突起34Eは、本体34Aから軸方向に突出している。突起34Eとスリンガ32の環状板部32Eとの間には、軸方向で隙間SP1が形成されている。隙間SP1は、ラビリンスとして機能する。
【0074】
車輪用軸受装置10においては、寿命を長くすることができる。その理由は、以下のとおりである。
【0075】
例えば、外輪12に固定されたシールゴムが内軸14と直接接触しながら回転する場合、内軸14の表面に錆が発生すると、シールゴムは錆と接触しながら回転することになる。この場合、シールゴムは磨耗し易くなるので、車輪用軸受装置の寿命が短くなる。
【0076】
これに対して、車輪用軸受装置10においては、内軸14に接着されたシールゴム34のリップ34B、34C、34Dが、外輪12に固定されたスリンガ32に接触しながら回転する。そのため、内軸14に錆が発生したとしても、シールゴム34が内軸14に発生した錆と接触しながら回転することはない。つまり、シールゴム34は磨耗し難くなる。その結果、車輪用軸受装置の寿命を長くすることができる。
【0077】
また、車輪用軸受装置10においては、シールゴム34のリップ34C、34Dが接触する環状板部32Dは、外輪12の端面127と接触する環状板部32Eよりも軸方向で他方の側、つまり、車両の幅方向で内側に位置している。そのため、隙間SP1から浸入してきた水が環状板部32Eを伝ってくることがあったとしても、当該水が環状板部32Dに付着し難くなっている。その結果、スリンガ32での錆の発生を抑制することができる。
【0078】
加えて、車輪用軸受装置10においては、スリンガ32がステンレス鋼板からなるので、スリンガ32に錆が発生し難くなっている。そのため、シールゴム34の磨耗をさらに抑制することができる。
【0079】
車輪用軸受装置10においては、内軸14の支持面144にシールゴム34が接着されている。そのため、外輪12にシールゴムを固定する場合と比べて、シールゴムと接するステンレス製の金属環を内軸14に固定しなくてもよい。その結果、必要な部品点数を少なくすることができる。
【0080】
車輪用軸受装置10においては、シールゴム34に形成された突起34Eと、スリンガ32の環状板部32Eとの間に、ラビリンスとして機能する隙間SP1が形成されている。そのため、隙間SP1から水が浸入するのを抑制できる。
【0081】
車輪用軸受装置10において、シールゴム34が接着される支持面144は、軸方向及び径方向の何れから見ても、スリンガ32に重なる。つまり、支持面144を広くすることができる。別の表現をすれば、シールゴム34の接着面積を広くすることができる。その結果、シールゴム34の接着を安定させることができる。
【0082】
車輪用軸受装置10においては、シールゴム34が内軸14に接着されている。そのため、隙間SP1から水が浸入してきたとしても、当該水により、内軸14が錆びるのを防ぐことができる。
【0083】
[第2の実施の形態]
図3を参照しながら、本発明の第2の実施の形態としての車輪用軸受装置について説明する。図3は、本発明の第2の実施の形態による車輪用軸受装置の一部を拡大して示す断面図である。
【0084】
本実施の形態では、第1の実施の形態と比べて、シールゴム34が有する突起34Eに溝341が形成されている。溝341は、突起34Eの外周面に開口し、周方向の全周に亘って形成されている。
【0085】
本実施の形態では、突起34Eの外周面に溝341が形成されているので、内軸14のフランジ14Eを伝ってきた水を受け止めて、排出することができる。その結果、フランジ14Eを伝ってくる水が隙間SP1から侵入するのを抑制することができる。
【0086】
[第3の実施の形態]
図4を参照しながら、本発明の第3の実施の形態について説明する。図4は、本発明の第3の実施の形態による車輪用軸受装置の一部を拡大して示す断面図である。
【0087】
本実施の形態では、第1の実施の形態と比べて、シールゴム34が有する突起34Eは延出部34Fを含む。延出部34Fは、突起34Eと一体的に形成され、突起34Eの外周面から延び出している。延出部34Fは、周方向で全周に亘って形成されている。延出部34Fと本体34Aとの間には、溝342が形成されている。溝342は、全周に亘って形成されている。
【0088】
延出部34Fは、径方向から見て、スリンガ32の筒部32Cに重なる。突起34Eとスリンガ32との間には、隙間SP2が形成されている。隙間SP2の一端は、突起34Eとスリンガ32(環状板部32E)との間に位置し、径方向で内側に向かって開口している。隙間SP2の他端は、延出部34Fとスリンガ32(筒部32C)との間に位置し、軸方向で他方の側(車両の幅方向で内側)に向かって開口している。
【0089】
本実施の形態では、隙間SP2の形状が複雑になる。そのため、隙間SP2から水が浸入するのをさらに抑制できる。
【0090】
本実施の形態では、溝342が形成されている。そのため、内軸14のフランジ14Eを伝ってきた水を受け止めて、排出することができる。
【0091】
[第4の実施の形態]
図5を参照しながら、本発明の第4の実施の形態について説明する。図5は、本発明の第4の実施の形態による車輪用軸受装置の一部を拡大して示す断面図である。
【0092】
本実施の形態では、第1の実施の形態と比べて、スリンガ32の筒部32Cの外周面にゴム層33が接着されている。ゴム層33の外周面は、支持部12Dに隣接する部分12Eの外周面よりも径方向で外側に位置している。
【0093】
本実施の形態では、ゴム層33により、外輪12の外周面を伝ってきた水を堰き止めることができる。そのため、外輪12の外周面を伝ってきた水が隙間SP1から侵入するのを抑制できる。
【0094】
[第4の実施の形態の応用例]
図6を参照しながら、第4の実施の形態の応用例について説明する。図6は、本発明の第4の実施の形態の応用例に係る車輪用軸受装置の一部を拡大して示す断面図である。
【0095】
本応用例では、第4の実施の形態と比べて、ゴム層33の一部33Aが筒部32Cの軸方向での端面を覆っている。当該一部33Aは、段差面124に密着している。
【0096】
本応用例では、筒部32Cの軸方向での端面を覆うゴム層33の一部33Aが段差面124に密着しているので、外輪12の外周面を伝ってきた水が筒部32Cと支持部12Dとの間に入り込むのを抑制できる。その結果、支持部12Dに錆が発生するのを抑制できる。
【0097】
[第5の実施の形態]
図7を参照しながら、本発明の第5の実施の形態について説明する。図7は、本発明の第5の実施の形態による車輪用軸受装置の一部を拡大して示す断面図である。
【0098】
本実施の形態では、第1の実施の形態と比べて、スリンガ32が環状凸部32Gをさらに備える。環状凸部32Gは、筒部32Cの軸方向一端に形成され、筒部32Cの外周面から突出している。環状凸部32Gは、支持部12Dに隣接する部分12Eの外周面よりも径方向で外側に位置している。
【0099】
本実施の形態では、環状凸部32Gにより、外輪12の外周面を伝ってきた水を堰き止めることができる。そのため、外輪12の外周面を伝ってきた水が隙間SP1から侵入するのを抑制できる。
【0100】
[第5の実施の形態の応用例]
図8を参照しながら、第5の実施の形態の応用例について説明する。図8は、本発明の第5の実施の形態の応用例に係る車輪用軸受装置の一部を拡大して示す断面図である。
【0101】
本応用例では、第5の実施の形態と比べて、スリンガ32にゴム層35が接着されている。具体的には、ゴム層35は、筒部32Cの軸方向での端面と、環状凸部32Gの軸方向での端面とを覆う。ゴム層35は、段差面124に密着している。
【0102】
本応用例では、筒部32Cの軸方向での端面と、環状凸部32Gの軸方向での端面とを覆うゴム層35が、段差面124に密着している。そのため、外輪12の外周面を伝ってきた水が筒部32Cと支持部12Dとの間に入り込むのを抑制できる。その結果、支持部12Dに錆が発生するのを抑制できる。
【0103】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、上述の実施の形態によって、何等、限定されない。
【0104】
例えば、上記実施の形態では、シールゴム34は突起34Eを有していたが、シールゴムは突起を有していなくてもよい。
【0105】
例えば、上記実施の形態では、シールゴム34はスリンガ32の環状板部32Dに接する2つのリップ34C、34Dを有していたが、環状板部32Dに接するリップは1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0106】
例えば、支持部12Dのスリンガ32に対する圧入代を確保できるのであれば、筒部12Bにおける支持部12Dの割合を大きくしてもよい。つまり、筒部12Bの軸方向での長さを短くしてもよい。この場合、外輪12の軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0107】
10:車輪用軸受装置、12:外輪、12D:支持部、14:内軸、14E:フランジ、144:支持面、32:スリンガ、32C:筒部、33:ゴム層、34:シールゴム、34A:本体、34B:リップ、34C:リップ、34D:リップ、34E:突起、341:溝、35:ゴム層、SP1:隙間、SP2:隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8