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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-205700(P2016-205700A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】ボイラシステム
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20161111BHJP
   F22B 37/38 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   F22B35/00 E
   F22B37/38 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-86890(P2015-86890)
(22)【出願日】2015年4月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】山田 和也
【テーマコード(参考)】
3L021
【Fターム(参考)】
3L021AA05
3L021CA08
3L021DA04
3L021FA12
3L021FA21
(57)【要約】
【課題】ハンチング抑止・収束することが可能なボイラシステムを提供すること。
【解決手段】複数台のボイラ20と、ボイラ20により生成された蒸気が集合する蒸気ヘッダ6の蒸気圧力値を設定圧力範囲に収まるように、比例分配制御により算出された、ボイラ20で発生すべき必要蒸気量に基づいてボイラ20の燃焼状態を制御する制御部4と、を備えるボイラシステム1であって、制御部4は、ハンチングが発生している場合又はハンチングが発生する可能性が高い場合に、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧力値が下降から上昇に転じた時点における、比例分配制御により算出された必要蒸気量を、実際の給蒸中ボイラにより出力されている出力蒸気量に置き換える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のボイラからなるボイラ群と、
前記ボイラ群において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、
前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧であるヘッダ圧力値を測定する蒸気圧力測定手段と、
予め、設定圧力範囲と前記設定圧力範囲の上限圧力値と下限圧力値との差分である制御幅が設定され、要求負荷に応じて前記蒸気圧力測定手段により測定される前記ヘッダ圧力値が、前記設定圧力範囲に収まるように前記ボイラ群の燃焼状態を制御する制御部と、
を備えるボイラシステムであって、
前記制御部は、
制御周期毎に、前記ヘッダ圧力値と前記設定圧力範囲の上限圧力値との差分である圧力偏差に基づいて、必要蒸気量MVを算出する必要蒸気量算出部と、
蒸気の供給を行っているすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値が前記必要蒸気量算出部により算出される現時点の必要蒸気量MVを下回る状態で、前記ヘッダ圧力値が予め設定された第1圧力値を下回り、その後前記ヘッダ圧力値が下降から上昇に転じた第1状態を検出する第1検出部と、
前記第1検出部により前記第1状態が検出された場合、最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)の算出処理において、前記第1状態の検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラにより出力されている出力蒸気量の合計値を最初の補正必要蒸気量MV´として設定する、最初の補正必要蒸気量設定部と、
前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)を起点として、制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´を増加させて、今回補正必要蒸気量MV´を算出して、予め設定された第1補正時間の経過後に、今回補正必要蒸気量MV´が前記必要蒸気量算出部により算出される今回必要蒸気量MVに収束するように、今回補正必要蒸気量MV´を算出し、前記第1補正時間の経過後に、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了する補正必要蒸気量算出部と、
前記第1検出部により前記第1状態が検出された場合、前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)を発生させて、前記第1補正時間の経過前の前記制御周期毎に、前記補正必要蒸気量算出部により算出された今回補正必要蒸気量MV´を発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御し、
前記第1補正時間の経過後、前記必要蒸気量算出部により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御する出力制御部と、
を備えるボイラシステム。
【請求項2】
前記補正必要蒸気量算出部は、さらに、
前記第1補正時間の経過前の制御周期において算出した今回補正必要蒸気量MV´が前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了し、
前記出力制御部は、さらに、
前記第1補正時間の経過前の制御周期において、前記補正必要蒸気量算出部により算出された今回補正必要蒸気量MV´が今回必要蒸気量MV以上となる場合、前記必要蒸気量算出部により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御する、請求項1に記載のボイラシステム。
【請求項3】
前記補正必要蒸気量算出部は、
前記第1補正時間を制御周期で除算することにより、補正回数最大値Nmaxを算出し、
前記最初の補正必要蒸気量設定部による最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)の算出処理を、補正回数1としてカウントし、
前記第1補正時間の経過前の制御周期毎に、前回の補正回数(N−1)に1を加算した今回の補正回数Nと、補正回数最大値Nmaxから前回の補正回数(N−1)を減算した残り補正回数(Nmax−N+1)と、を算出し、
前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MVと前記補正必要蒸気量算出部により算出した前回補正必要蒸気量MV(n−1)´との差分を、前記残り補正回数(Nmax−N+1)で除算して今回補正必要蒸気量変化分ΔMVを算出し、
前回補正必要蒸気量MV(n−1)´に今回補正必要蒸気量変化分ΔMVを加算して、今回補正必要蒸気量MV´を算出する、
請求項1又は請求項2に記載のボイラシステム。
【請求項4】
複数台のボイラからなるボイラ群と、
前記ボイラ群において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、
前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧であるヘッダ圧力値を測定する蒸気圧力測定手段と、
予め、設定圧力範囲と前記設定圧力範囲の上限圧力値と下限圧力値との差分である制御幅が設定され、要求負荷に応じて前記蒸気圧力測定手段により測定される前記ヘッダ圧力値が、前記設定圧力範囲に収まるように前記ボイラ群の燃焼状態を制御する制御部と、
を備えるボイラシステムであって、
前記制御部は、
制御周期毎に、前記ヘッダ圧力値と前記設定圧力範囲の上限圧力値との差分である圧力偏差に基づいて、必要蒸気量MVを算出する必要蒸気量算出部と、
蒸気の供給を行っているすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値が前記必要蒸気量算出部により算出される現時点の必要蒸気量MVを下回る状態で、前記ヘッダ圧力値が予め設定された第1圧力値を下回り、その後前記ヘッダ圧力値が下降から上昇に転じた第1状態を検出する第1検出部と、
前記第1検出部により前記第1状態が検出された場合、最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)の算出処理において、前記第1状態の検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラにより出力されている出力蒸気量の合計値を最初の補正必要蒸気量MV´として設定する、最初の補正必要蒸気量設定部と、
前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)を起点として、制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´に第1の必要蒸気量変化分を加算して算出された値が前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MVより小さい場合に、前記算出された値を今回補正必要蒸気量MV´として設定し、前記算出された値が前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了する補正必要蒸気量算出部と、
前記第1検出部により前記第1状態が検出された場合、前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´を発生させて、
その後、制御周期毎に、前記補正必要蒸気量算出部により算出された今回補正必要蒸気量MV´を発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御し、
前記補正必要蒸気量算出部により算出した今回補正必要蒸気量MV´が、前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、前記必要蒸気量算出部により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御する出力制御部と、
を備えるボイラシステム。
【請求項5】
複数台のボイラからなるボイラ群と、
前記ボイラ群において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、
前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧であるヘッダ圧力値を測定する蒸気圧力測定手段と、
予め、設定圧力範囲と前記設定圧力範囲の上限圧力値と下限圧力値との差分である制御幅が設定され、要求負荷に応じて前記蒸気圧力測定手段により測定される前記ヘッダ圧力値が、前記設定圧力範囲に収まるように前記ボイラ群の燃焼状態を制御する制御部と、
を備えるボイラシステムであって、
前記制御部は、
制御周期毎に、前記ヘッダ圧力値と前記設定圧力範囲の上限圧力値との差分である圧力偏差に基づいて、必要蒸気量MVを算出する必要蒸気量算出部と、
ハンチングの起因となる可能性のある前記ヘッダ圧力値の変動を擬似ハンチング状態を検出し、その後前記ヘッダ圧力値が下降から上昇に転じた第2状態を検出する第2検出部と、
前記第2検出部により前記第2状態が検出された場合、最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)の算出処理において、前記第2状態の検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラにより出力されている出力蒸気量の合計値を最初の補正必要蒸気量MV´として設定する、最初の補正必要蒸気量設定部と、
前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)を起点として、制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´を増加させて、今回補正必要蒸気量MV´を算出して、予め設定された第2補正時間の経過後に、今回補正必要蒸気量MV´が前記必要蒸気量算出部により算出される今回必要蒸気量MVに収束するように、今回補正必要蒸気量MV´を算出し、前記第2補正時間の経過後に、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了する補正必要蒸気量算出部と、
前記第2検出部により前記第2状態が検出された場合、前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)を発生させて、前記第2補正時間の経過前の前記制御周期毎に、前記補正必要蒸気量算出部により算出された今回補正必要蒸気量MV´を発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御し、
前記第2補正時間の経過後、前記必要蒸気量算出部により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御する出力制御部と、
を備えるボイラシステム。
【請求項6】
前記補正必要蒸気量算出部は、さらに、
前記第2補正時間の経過前の制御周期において算出した今回補正必要蒸気量MV´が前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了し、
前記出力制御部は、さらに、
前記第2補正時間の経過前の制御周期において、前記補正必要蒸気量算出部により算出された今回補正必要蒸気量MV´が今回必要蒸気量MV以上となる場合、前記必要蒸気量算出部により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御する、請求項5に記載のボイラシステム。
【請求項7】
前記補正必要蒸気量算出部は、
前記第2補正時間を制御周期で除算することにより、補正回数最大値Nmaxを算出し、
前記最初の補正必要蒸気量設定部による最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)の算出処理を、補正回数1としてカウントし、
前記第2補正時間の経過前の制御周期毎に、前回の補正回数(N−1)に1を加算した今回の補正回数Nと、補正回数最大値Nmaxから前回の補正回数(N−1)を減算した残り補正回数(Nmax−N+1)と、を算出し、
前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MVと前記補正必要蒸気量算出部により算出した前回補正必要蒸気量MV(n−1)´との差分を、前記残り補正回数(Nmax−N+1)で除算して今回補正必要蒸気量変化分ΔMVを算出し、
前回補正必要蒸気量MV(n−1)´に今回補正必要蒸気量変化分ΔMVを加算して、今回補正必要蒸気量MV´を算出する、
請求項5又は請求項6に記載のボイラシステム。
【請求項8】
複数台のボイラからなるボイラ群と、
前記ボイラ群において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、
前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧であるヘッダ圧力値を測定する蒸気圧力測定手段と、
予め、設定圧力範囲と前記設定圧力範囲の上限圧力値と下限圧力値との差分である制御幅が設定され、要求負荷に応じて前記蒸気圧力測定手段により測定される前記ヘッダ圧力値が、前記設定圧力範囲に収まるように前記ボイラ群の燃焼状態を制御する制御部と、
を備えるボイラシステムであって、
前記制御部は、
制御周期毎に、前記ヘッダ圧力値と前記設定圧力範囲の上限圧力値との差分である圧力偏差に基づいて、必要蒸気量MVを算出する必要蒸気量算出部と、
ハンチングの起因となる可能性のある前記ヘッダ圧力値の変動を擬似ハンチング状態を検出し、その後前記ヘッダ圧力値が下降から上昇に転じた第2状態を検出する第2検出部と、
前記第2検出部により前記第2状態が検出された場合、最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)の算出処理において、前記第2状態の検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラにより出力されている出力蒸気量の合計値を最初の補正必要蒸気量MV´として設定する、最初の補正必要蒸気量設定部と、
前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)を起点として、制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´に第1の必要蒸気量変化分を加算して算出された値が前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MVより小さい場合に、前記算出された値を今回補正必要蒸気量MV´として設定し、前記算出された値が前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了する補正必要蒸気量算出部と、
前記第2検出部により前記第2状態が検出された場合、前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´を発生させて、
その後、制御周期毎に、前記補正必要蒸気量算出部により算出された今回補正必要蒸気量MV´を発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御し、
前記補正必要蒸気量算出部により算出した今回補正必要蒸気量MV´が、前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、前記必要蒸気量算出部により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御する出力制御部と、
を備えるボイラシステム。
【請求項9】
前記第2検出部は、前記ヘッダ圧力値が、前記制御部が前記複数台のボイラを全缶停止する閾値として予め設定された制御上限圧力値と前記設定圧力範囲の上限圧力値との間に予め設定された第2制御上限圧力値を超える又は第2制御上限圧力値以上となる回数が、第1の時間の間に第1の回数以上発生する変動を擬似ハンチング状態として検出することを含む、請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載のボイラシステム。
【請求項10】
前記第2検出部は、前記ヘッダ圧力値が、前記設定圧力範囲の下限圧力値との偏差の絶対値が第1閾値以下となるように予め設定された第2制御下限圧力値を下回る又は第2制御下限圧力値以下となる回数が、第2の時間の間に、第2の回数以上発生する変動を擬似ハンチング状態として検出することを含む、請求項5乃至請求項9のいずれか1項に記載のボイラシステム。
【請求項11】
前記第2検出部は、前記ヘッダ圧力値が降下する際の圧力降下幅が予め設定された圧力降下幅値を超えるか、又は圧力降下幅値以上となる回数が、第3の時間の間に、第3の回数以上発生する変動を擬似ハンチング状態として検出することを含む、請求項5乃至請求項10のいずれか1項に記載のボイラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気ヘッダの内部の蒸気圧が設定圧力範囲に収まるように、制御対象のボイラの燃焼量を制御する台数制御手段を備えるボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
段階的な燃焼位置で燃焼可能な、複数の段階値制御ボイラからなるボイラ群により構成されるボイラシステムでは、ボイラ群において生成された蒸気を蒸気ヘッダに集合し、この蒸気ヘッダから負荷機器に対して蒸気を供給する。このようなボイラシステムでは、蒸気ヘッダ内の蒸気の圧力(蒸気圧)が設定圧力範囲に収まるように、制御対象の段階値制御ボイラの燃焼量を制御することとしている。このようなボイラシステムでは、蒸気ヘッダの蒸気圧力(以下、「ヘッダ圧力」又は「蒸気ヘッダ圧力」ともいう)が蒸気消費量の変動にかかわらず、設定圧力範囲に収まるように、蒸気消費量の変動に応じて段階値制御ボイラの燃焼量が制御される。
このようなボイラシステムにおいては、その圧力位置によって必要蒸気量が一意的に定まる、いわゆる比例分配制御方式を採用している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−208817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、比例分配制御方式による蒸気量の制御では、圧力安定性を重要視する観点から、予め設定圧力範囲の上限圧力値以上の値である比例分配設定圧力(以下「制御上限圧力」ともいう)を設けておき、ヘッダ圧力が制御上限圧力を超えた場合に、全てのボイラを燃焼停止状態(以下、「全缶停止」ともいう)とする台数制御を行うことがある。このような場合、ヘッダ圧力が不安定となり、ハンチングを引き起こす場合がある。
従来、採用されている比例分配制御方式では、一度ハンチングが発生すると、台数制御装置自身でハンチングを収束させる機能がないため、その後負荷が変化(主に増加側に変化)するまでハンチングが延々継続するケースが見られる。
【0005】
また、このようなハンチング現象は、何らかの要因により、出力蒸気量が大幅に不足し、ヘッダ圧力値が所定圧力を下回った場合においても発生し得る。
例えば、蒸気の供給を行っているボイラが何らかの原因で異常停止して、燃焼ボイラ不足が発生した場合、また想定を上回る急激な負荷増加が発生して、蒸気の供給が間に合わない事態が発生した場合等において、ヘッダ圧力値が所定圧力を下回り、ヘッダ圧力値が上下に変動する、ハンチング現象が発生する可能性がある。
【0006】
また、比例分配制御方式による蒸気量の制御では、例えば、制御上限圧力値と前記設定圧力範囲の上限圧力値との間に予め設定された第2制御上限圧力値を超える又は第2制御上限圧力値以上となる回数が複数回発生するハンチングの起因となる可能性のあるヘッダ圧力値の変動(以下、「疑似ハンチング」ともいう)が発生することがある。
【0007】
本発明は、蒸気の供給を行っているボイラが何らかの原因で異常停止して、燃焼ボイラ不足が発生した場合、また想定を上回る急激な負荷増加が発生して、蒸気の供給が間に合わない事態が発生した場合等において、ヘッダ圧力に急激な下降が発生した場合、ヘッダ圧力を速やかに設定圧力範囲内に収束させるボイラシステムを提供することを目的とする。また、ハンチングの起因となる可能性のあるヘッダ圧力値の変動である疑似ハンチングを検出した場合、ヘッダ圧力値を速やかに目標圧力値に収束させることで、ハンチング現象を未然に防止し、また、ハンチング現象が発生した場合には、ハンチング現象を速やかに収束させることができるボイラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数台のボイラからなるボイラ群と、前記ボイラ群において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧であるヘッダ圧力値を測定する蒸気圧力測定手段と、予め、設定圧力範囲と前記設定圧力範囲の上限圧力値と下限圧力値との差分である制御幅が設定され、要求負荷に応じて前記蒸気圧力測定手段により測定される前記ヘッダ圧力値が、前記設定圧力範囲に収まるように前記ボイラ群の燃焼状態を制御する制御部と、を備えるボイラシステムであって、前記制御部は、制御周期毎に、前記ヘッダ圧力値と前記設定圧力範囲の上限圧力値との差分である圧力偏差に基づいて、必要蒸気量MVを算出する必要蒸気量算出部と、蒸気の供給を行っているすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値が前記必要蒸気量算出部により算出される現時点の必要蒸気量MVを下回る状態で、前記ヘッダ圧力値が予め設定された第1圧力値を下回り、その後前記ヘッダ圧力値が下降から上昇に転じた第1状態を検出する第1検出部と、前記第1検出部により前記第1状態が検出された場合、最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)の算出処理において、前記第1状態の検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラにより出力されている出力蒸気量の合計値を最初の補正必要蒸気量MV´として設定する、最初の補正必要蒸気量設定部と、前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)を起点として、制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´を増加させて、今回補正必要蒸気量MV´を算出して、予め設定された第1補正時間の経過後に、今回補正必要蒸気量MV´が前記必要蒸気量算出部により算出される今回必要蒸気量MVに収束するように、今回補正必要蒸気量MV´を算出し、前記第1補正時間の経過後に、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了する補正必要蒸気量算出部と、前記第1検出部により前記第1状態が検出された場合、前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)を発生させて、前記第1補正時間の経過前の前記制御周期毎に、前記補正必要蒸気量算出部により算出された今回補正必要蒸気量MV´を発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御し、前記第1補正時間の経過後、前記必要蒸気量算出部により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御する出力制御部と、を備えるボイラシステムに関する。
【0009】
前記前記補正必要蒸気量算出部は、さらに、前記第1補正時間の経過前の制御周期において算出した今回補正必要蒸気量MV´が前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了し、前記出力制御部は、さらに、前記第1補正時間の経過前の制御周期において、前記補正必要蒸気量算出部により算出された今回補正必要蒸気量MV´が今回必要蒸気量MV以上となる場合、前記必要蒸気量算出部により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御することができる。
【0010】
さらに、前記補正必要蒸気量算出部は、前記第1補正時間を制御周期で除算することにより、補正回数最大値Nmaxを算出し、前記最初の補正必要蒸気量設定部による最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)の算出処理を、補正回数1としてカウントし、前記第1補正時間の経過前の制御周期毎に、前回の補正回数(N−1)に1を加算した今回の補正回数Nと、補正回数最大値Nmaxから前回の補正回数(N−1)を減算した残り補正回数(Nmax−N+1)と、を算出し、前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MVと前記補正必要蒸気量算出部により算出した前回補正必要蒸気量MV(n−1)´との差分を、前記残り補正回数(Nmax−N+1)で除算して今回補正必要蒸気量変化分ΔMVを算出し、前回補正必要蒸気量MV(n−1)´に今回補正必要蒸気量変化分ΔMVを加算して、今回補正必要蒸気量MV´を算出することができる。
【0011】
また、本発明は、複数台のボイラからなるボイラ群と、前記ボイラ群において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧であるヘッダ圧力値を測定する蒸気圧力測定手段と、予め、設定圧力範囲と前記設定圧力範囲の上限圧力値と下限圧力値との差分である制御幅が設定され、要求負荷に応じて前記蒸気圧力測定手段により測定される前記ヘッダ圧力値が、前記設定圧力範囲に収まるように前記ボイラ群の燃焼状態を制御する制御部と、を備えるボイラシステムであって、前記制御部は、制御周期毎に、前記ヘッダ圧力値と前記設定圧力範囲の上限圧力値との差分である圧力偏差に基づいて、必要蒸気量MVを算出する必要蒸気量算出部と、蒸気の供給を行っているすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値が前記必要蒸気量算出部により算出される現時点の必要蒸気量MVを下回る状態で、前記ヘッダ圧力値が予め設定された第1圧力値を下回り、その後前記ヘッダ圧力値が下降から上昇に転じた第1状態を検出する第1検出部と、前記第1検出部により前記第1状態が検出された場合、最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)の算出処理において、前記第1状態の検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラにより出力されている出力蒸気量の合計値を最初の補正必要蒸気量MV´として設定する、最初の補正必要蒸気量設定部と、前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)を起点として、制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´に第1の必要蒸気量変化分を加算して算出された値が前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MVより小さい場合に、前記算出された値を今回補正必要蒸気量MV´として設定し、前記算出された値が前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了する補正必要蒸気量算出部と、前記第1検出部により前記第1状態が検出された場合、前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´を発生させて、その後、制御周期毎に、前記補正必要蒸気量算出部により算出された今回補正必要蒸気量MV´を発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御し、前記補正必要蒸気量算出部により算出した今回補正必要蒸気量MV´が、前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、前記必要蒸気量算出部により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御する出力制御部と、を備えるボイラシステムに関する。
【0012】
また、本発明は、複数台のボイラからなるボイラ群と、前記ボイラ群において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧であるヘッダ圧力値を測定する蒸気圧力測定手段と、予め、設定圧力範囲と前記設定圧力範囲の上限圧力値と下限圧力値との差分である制御幅が設定され、要求負荷に応じて前記蒸気圧力測定手段により測定される前記ヘッダ圧力値が、前記設定圧力範囲に収まるように前記ボイラ群の燃焼状態を制御する制御部と、を備えるボイラシステムであって、前記制御部は、制御周期毎に、前記ヘッダ圧力値と前記設定圧力範囲の上限圧力値との差分である圧力偏差に基づいて、必要蒸気量MVを算出する必要蒸気量算出部と、ハンチングの起因となる可能性のある前記ヘッダ圧力値の変動を擬似ハンチング状態を検出し、その後前記ヘッダ圧力値が下降から上昇に転じた第2状態を検出する第2検出部と、前記第2検出部により前記第2状態が検出された場合、最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)の算出処理において、前記第2状態の検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラにより出力されている出力蒸気量の合計値を最初の補正必要蒸気量MV´として設定する、最初の補正必要蒸気量設定部と、前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)を起点として、制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´を増加させて、今回補正必要蒸気量MV´を算出して、予め設定された第2補正時間の経過後に、今回補正必要蒸気量MV´が前記必要蒸気量算出部により算出される今回必要蒸気量MVに収束するように、今回補正必要蒸気量MV´を算出し、前記第2補正時間の経過後に、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了する補正必要蒸気量算出部と、前記第2検出部により前記第2状態が検出された場合、前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)を発生させて、前記第2補正時間の経過前の前記制御周期毎に、前記補正必要蒸気量算出部により算出された今回補正必要蒸気量MV´を発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御し、前記第2補正時間の経過後、前記必要蒸気量算出部により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御する出力制御部と、を備えるボイラシステムに関する。
【0013】
前記補正必要蒸気量算出部は、さらに、前記第2補正時間の経過前の制御周期において算出した今回補正必要蒸気量MV´が前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了し、前記出力制御部は、さらに、前記第2補正時間の経過前の制御周期において、前記補正必要蒸気量算出部により算出された今回補正必要蒸気量MV´が今回必要蒸気量MV以上となる場合、前記必要蒸気量算出部により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御することができる。
【0014】
前記前記補正必要蒸気量算出部は、前記第2補正時間を制御周期で除算することにより、補正回数最大値Nmaxを算出し、前記最初の補正必要蒸気量設定部による最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)の算出処理を、補正回数1としてカウントし、前記第2補正時間の経過前の制御周期毎に、前回の補正回数(N−1)に1を加算した今回の補正回数Nと、補正回数最大値Nmaxから前回の補正回数(N−1)を減算した残り補正回数(Nmax−N+1)と、を算出し、前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MVと前記補正必要蒸気量算出部により算出した前回補正必要蒸気量MV(n−1)´との差分を、前記残り補正回数(Nmax−N+1)で除算して今回補正必要蒸気量変化分ΔMVを算出し、前回補正必要蒸気量MV(n−1)´に今回補正必要蒸気量変化分ΔMVを加算して、今回補正必要蒸気量MV´を算出することができる。
【0015】
また、本発明は、複数台のボイラからなるボイラ群と、前記ボイラ群において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧であるヘッダ圧力値を測定する蒸気圧力測定手段と、予め、設定圧力範囲と前記設定圧力範囲の上限圧力値と下限圧力値との差分である制御幅が設定され、要求負荷に応じて前記蒸気圧力測定手段により測定される前記ヘッダ圧力値が、前記設定圧力範囲に収まるように前記ボイラ群の燃焼状態を制御する制御部と、を備えるボイラシステムであって、前記制御部は、制御周期毎に、前記ヘッダ圧力値と前記設定圧力範囲の上限圧力値との差分である圧力偏差に基づいて、必要蒸気量MVを算出する必要蒸気量算出部と、ハンチングの起因となる可能性のある前記ヘッダ圧力値の変動を擬似ハンチング状態を検出し、その後前記ヘッダ圧力値が下降から上昇に転じた第2状態を検出する第2検出部と、前記第2検出部により前記第2状態が検出された場合、最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)の算出処理において、前記第2状態の検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラにより出力されている出力蒸気量の合計値を最初の補正必要蒸気量MV´として設定する、最初の補正必要蒸気量設定部と、前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)を起点として、制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´に第1の必要蒸気量変化分を加算して算出された値が前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MVより小さい場合に、前記算出された値を今回補正必要蒸気量MV´として設定し、前記算出された値が前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了する補正必要蒸気量算出部と、前記第2検出部により前記第2状態が検出された場合、前記最初の補正必要蒸気量設定部により設定された最初の補正必要蒸気量MV´を発生させて、その後、制御周期毎に、前記補正必要蒸気量算出部により算出された今回補正必要蒸気量MV´を発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御し、前記補正必要蒸気量算出部により算出した今回補正必要蒸気量MV´が、前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、前記必要蒸気量算出部により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように前記複数台のボイラの燃焼状態を制御する出力制御部と、を備えるボイラシステムに関する。
【0016】
前記第2検出部は、前記ヘッダ圧力値が、前記制御部が前記複数台のボイラを全缶停止する閾値として予め設定された制御上限圧力値と前記設定圧力範囲の上限圧力値との間に予め設定された第2制御上限圧力値を超える又は第2制御上限圧力値以上となる回数が、第1の時間の間に第1の回数以上発生する変動を擬似ハンチング状態として検出することを含むことができる。
【0017】
また、前記第2検出部は、前記ヘッダ圧力値が、前記設定圧力範囲の下限圧力値との偏差の絶対値が第1閾値以下となるように予め設定された第2制御下限圧力値を下回る又は第2制御下限圧力値以下となる回数が、第2の時間の間に、第2の回数以上発生する変動を擬似ハンチング状態として検出することを含むことができる。
【0018】
前記第2検出部は、前記ヘッダ圧力値が降下する際の圧力降下幅が予め設定された圧力降下幅値を超えるか、又は圧力降下幅値以上となる回数が、第3の時間の間に、第3の回数以上発生する変動を擬似ハンチング状態として検出することを含むことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蒸気ヘッダ内部の蒸気圧力が、予め設定された設定圧力範囲に収まるように、複数台のボイラからなるボイラ群の燃焼状態を制御する制御部を備えるボイラシステムにおいて、蒸気の供給を行っているボイラが何らかの原因で異常停止して、燃焼ボイラ不足が発生した場合、また想定を上回る急激な負荷増加が発生して、蒸気の供給が間に合わない事態が発生した場合等において、ヘッダ圧力に急激な下降が発生した場合、また、ハンチングの起因となる可能性のあるヘッダ圧力値の変動が発生した場合、ヘッダ圧力を速やかに設定圧力範囲内に収束させることで、ハンチング現象を未然に防止し、ハンチング現象が発生した場合には、ハンチング現象を速やかに収束させることができるボイラシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係るボイラシステム1の概略を示す図である。
図2】ボイラ群の概略を示す図である。
図3】制御部4の構成を示す機能ブロック図である。
図4】第1実施形態に係るボイラシステム1のフィードバック制御の流れを示すフローチャート図である。
図5】第1実施形態の変形例2に係るボイラシステム1のフィードバック制御の流れを示すフローチャート図である。
図6】第1実施形態の変形例3に係るボイラシステム1のフィードバック制御の流れを示すフローチャート図である。
図7A】通常の比例分配制御方式による圧力制御を実施した場合における、急負荷変動時のヘッダ圧力値と必要蒸気量(指示蒸気量)と実際の出力蒸気量との時間的推移を示す図である。
図7B】第1実施形態に係る比例分配制御方式による圧力制御を実施した場合における、急負荷変動時のヘッダ圧力値と必要蒸気量(指示蒸気量)と実際の出力蒸気量との時間的推移を示す図である。
図8】第2実施形態に係るボイラシステム1の制御部4Aの構成を示す機能ブロック図である。
図9】第2実施形態に係るボイラシステム1のフィードバック制御の流れを示すフローチャート図である。
図10A】通常の比例分配制御方式による圧力制御を実施した場合におけるヘッダ圧力値と必要蒸気量と実際の出力蒸気量との時間的推移を示す図である。
図10B】第2実施形態に係る比例分配制御方式による圧力制御を実施した場合におけるヘッダ圧力値と必要蒸気量と実際の出力蒸気量との時間的推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係るボイラシステム1について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るボイラシステム1の概略を示す図である。
図1に示すように、ボイラシステム1は、複数(5台)のボイラ20を含むボイラ群2と、ボイラ20において生成された蒸気を集合させる蒸気集合部としての蒸気ヘッダ6と、蒸気圧測定手段としての蒸気圧センサ7と、ボイラ群2の燃焼状態を制御する制御部4を有する台数制御装置3と、を備える。
ボイラ群2は、負荷機器としての蒸気使用設備18に供給する蒸気を生成する。
【0022】
蒸気ヘッダ6の上流側は、蒸気管11を介してボイラ群2(各ボイラ20)に接続されている。蒸気ヘッダ6の下流側は、蒸気管12を介して蒸気使用設備18に接続されている。蒸気ヘッダ6は、ボイラ群2で発生させた蒸気を集合させて貯留することにより各ボイラ20の相互の圧力差及び圧力変動を調整し、圧力が調整された蒸気を蒸気使用設備18に供給するようになっている。
【0023】
蒸気圧センサ7は、信号線13を介して、台数制御装置3に電気的に接続されている。蒸気圧センサ7は、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(ボイラ群2で発生した蒸気の圧力)を測定し、測定した蒸気圧に係る信号(蒸気圧信号)を、信号線13を介して台数制御装置3に送信する。
【0024】
ボイラシステム1は、ボイラ群2で発生させた蒸気を、蒸気ヘッダ6を介して、蒸気によって運転される蒸気使用設備18に供給可能とされている。
ボイラシステム1において要求される負荷(要求負荷)は、蒸気使用設備18における蒸気消費量である。台数制御時においては、この蒸気消費量に対応して生じる蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧の変動を、蒸気圧センサ7が測定するヘッダ圧力値(物理量)に基づいて算出し、ボイラ群2を構成する各ボイラ20の燃焼量を制御する。
【0025】
具体的には、蒸気使用設備18の需要の増大により要求負荷が増加し、供給蒸気量が不足すれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が減少することになる。一方、蒸気使用設備18の需要の低下により要求負荷が減少し、供給蒸気量が過剰になれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が増加することになる。このため、蒸気圧センサ7からの蒸気圧信号により要求負荷の変動をモニターすることができる。ボイラシステム1は、この蒸気圧に基づいて蒸気使用設備18の消費蒸気量(要求負荷)に応じた必要蒸発量を算出するようになっている。制御方式の詳細については、後述する。
【0026】
ここで、ボイラシステム1を構成する複数のボイラ20について説明する。
第1実施形態のボイラ20は、選択された燃焼位置に応じて燃焼量を段階的に増減可能な段階値制御ボイラからなる。
段階値制御ボイラとは、燃焼を選択的にオン/オフしたり、炎の大きさを調整すること等により燃焼量を制御して、選択された燃焼位置に応じて燃焼量を段階的に増減可能なボイラである。図2に示すように、ボイラ20は、4位置(燃焼停止位置、低燃焼位置、中燃焼位置及び高燃焼位置)制御ボイラとしている。
【0027】
なお、ボイラ20は、Nを任意の整数として、N位置制御すなわち、段階値制御ボイラの燃焼量を、燃焼停止状態を含めてN位置に段階的に制御可能なボイラ20とすることができる。例えば、燃焼位置の個数は、2位置(つまり、オン/オフのみ)、3位置(燃焼停止位置、低燃焼位置、及び高燃焼位置)、4位置(燃焼停止位置、低燃焼位置、中燃焼位置及び高燃焼位置)、又は5位置以上でもよい。
【0028】
なお、各ボイラ20においては、それぞれ、各燃焼位置における燃焼量及び燃焼能力(高燃焼状態における燃焼量)は、等しく設定されていてもよく、あるいは、異なって設定されていてもよい。
【0029】
ボイラ20は、燃焼が行われるボイラ本体21と、各ボイラ20の燃焼位置(燃焼状態)を制御するローカル制御部22と、各ボイラ20の内部の蒸気圧を測定するローカル蒸気圧測定部(図示せず)と、を有する。
【0030】
ローカル制御部22は、各ボイラ20を制御し、要求負荷に応じて燃焼位置(燃焼状態)を変更させることが可能とされている。ローカル制御部22は、台数制御時には、台数制御装置3による台数制御信号に基づいて各ボイラ20を制御し、一方、ローカル制御時には、ボイラ20を直接制御する。
【0031】
ローカル蒸気圧測定部は、例えば、蒸気圧センサ及び蒸気圧スイッチから、又は蒸気圧スイッチのみから構成され、各ボイラ20の内部の蒸気圧を測定する。ローカル蒸気圧測定部は、各ボイラ20のローカル制御を行う際に用いられる蒸気圧を測定する。
【0032】
各ボイラ20は、信号線16を介して、台数制御装置3に電気的に接続されている。ローカル制御部22は、台数制御時において台数制御装置3で用いられる信号を、信号線16を介して台数制御装置3に送信する。台数制御装置3で用いられる信号としては、例えば、ボイラ20に要求される負荷等の信号、ボイラ20の実際の燃焼状態(燃焼位置)、その他のデータが挙げられる。また、ローカル制御部22は、制御対象のボイラ20が運転可能であるときには、運転可能であることを示す信号(運転可能信号)を、信号線16を介して台数制御装置3に送信する。
【0033】
各ボイラ20には、それぞれ優先順位が設定されている。優先順位は、燃焼指示や燃焼停止指示を行うボイラを選択するために用いられる。優先順位は、例えば整数値を用いて、数値が小さいほど優先順位が高くなるよう設定することができる。例えば、ボイラ20の1号機〜5号機のそれぞれに「1」〜「5」の優先順位が割り当てられている場合、1号機の優先順位が最も高く、5号機の優先順位が最も低い。
【0034】
次に、台数制御装置3の詳細について説明する。
台数制御装置3は、蒸気圧センサ7からの蒸気圧力信号に基づいて、要求負荷に応じたボイラ群2の必要燃焼量、及び必要燃焼量に対応する各ボイラ20の燃焼状態を算出し、各ボイラ20(ローカル制御部22)に台数制御信号を送信する。この台数制御装置3は、図1に示すように、制御部4と、記憶部5と、を備える。
【0035】
記憶部5は、制御部4の制御により各ボイラ20に対して行われた指示の内容や、各ボイラ20から受信した燃焼状態等の情報、複数のボイラ20の優先順位の設定の情報、優先順位の変更(ローテーション)に関する設定の情報等を記憶する。こうすることで、記憶部5は、各ボイラ20から出力される出力蒸気量、及び各ボイラ20それぞれから出力される出力蒸気量の合計値を記憶部5に記憶する。
【0036】
また、記憶部5は、蒸気圧センサ7により測定される蒸気圧に係る設定条件として、設定圧力範囲を記憶する。記憶部5は、設定圧力範囲の上限圧力値以上の値である制御上限圧力値を記憶する。また、記憶部5は、設定圧力範囲の下限圧力値以上の値である第1圧力値を記憶する。第1圧力値の詳細については、後述する。
また、記憶部5は、後述する補正必要蒸気量算出に係る設定条件として、第1補正時間(T)又は補正回数最大値(N)を記憶することができる。
【0037】
<制御部4の構成>
次に、制御部4の詳細な構成について説明する。図3に示すように、制御部4は、必要蒸気量算出部41と、第1検出部42と、最初の補正必要量算出部43と、補正必要量算出部44と、出力制御部45と、を含んで構成される。
【0038】
[必要蒸気量算出部41]
必要蒸気量算出部41は、制御周期毎に、ヘッダ圧力値と設定圧力範囲の上限圧力値との差分である圧力偏差に基づいて、必要蒸気量MVを算出する。ここで、添字nは、制御周期毎に行われる繰り返し演算の演算回数(n回目:n=1,2,…の正の整数値)を示す。
より具体的には、必要蒸気量算出部41は、制御周期毎に、ヘッダ圧力値PVの圧力偏差PD1(設定圧力範囲の上限圧力値Pmaxとヘッダ圧力値PVとの差分)を、設定圧力範囲の上限圧力値と下限圧力値との差分である制御幅Pで除算した比率PR1に基づいて、要求負荷に応じたボイラで発生すべき蒸気量(以下、「必要蒸気量MV」ともいう)を式1により算出する。
必要蒸気量MV=最大蒸気量JG×PR1 ・・・(式1)
ここで、最大蒸気量JGとは、ボイラ群2を構成するボイラ20それぞれに予め設定された最大燃焼状態(高燃焼位置)における蒸気量(最大蒸気量)の合計である。
【0039】
[第1検出部42]
第1検出部42は、蒸気の供給を行っているボイラ(以下、「給蒸中のボイラ」ともいう)全ての最大出力蒸気量の合計値が必要蒸気量算出部41により算出される現時点の必要蒸気量MVを下回る状態で、ヘッダ圧力値PVが予め設定された第1圧力値を下回り、その後ヘッダ圧力値PVが下降から上昇に転じた状態(以下、検出された状態を「第1状態」ともいう)を検出する。
【0040】
蒸気の供給を行っているすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値が、必要蒸気量算出部41により算出される現時点の必要蒸気量MVを下回る状態について、具体的な例をいくつか説明する。
【0041】
(給蒸中のボイラが外的要因で燃焼停止した場合)
ボイラ20の最大蒸気量を7000kg/h(すなわち、ボイラ20は7tボイラ)、及び必要蒸気量算出部41により算出される現時点の必要蒸気量MVを8t/hと仮定する。
【0042】
例えば、給蒸中のボイラ20が3台あり、そのうち1台が異常停止した場合、給蒸中のすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値は、7t/h×2=14t/hとなる。他方、現時点の必要蒸気量MVを8t/hとしたことから、給蒸中のすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値が、必要蒸気量算出部41により算出される現時点の必要蒸気量MVを上回る。この場合、給蒸中のすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値(14t/h)は、必要蒸気量算出部41により算出される現時点の必要蒸気量MV(8t/h)を下回る状態には該当しない。
【0043】
これに対して、給蒸中のボイラ20が2台あり、そのうち1台が異常停止した場合、給蒸中のすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値は、7t/h×1=7t/hとなる。他方、現時点の必要蒸気量MVを8t/hとしたことから、給蒸中のすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値7t/hは、必要蒸気量算出部41により算出される現時点の必要蒸気量MV(8t/h)を下回る。この場合、給蒸中のすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値(7t/h)は、必要蒸気量算出部41により算出される現時点の必要蒸気量MV(8t/h)を下回る状態に該当する。
このように、給蒸中のボイラ20のうち1台が異常停止した場合に、給蒸中のすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値が、必要蒸気量算出部41により算出される現時点の必要蒸気量MVを下回る状態が発生する可能性がある。
【0044】
(想定を上回る急激な負荷増加が発生し、蒸気供給が間に合わない場合)
例えば、給蒸中のボイラ20が2台とし、要求負荷が急激に増加して、必要蒸気量MVが、例えば、15t/hになったと仮定した場合、給蒸中のすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値は、7t/h×2=14t/hとなる。給蒸中のすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値14t/hは、必要蒸気量算出部41により算出される現時点の必要蒸気量MV(15t/h)を下回る状態に該当する。
このように、想定を上回る急激な負荷増加が発生した場合に、給蒸中のすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値が、必要蒸気量算出部41により算出される現時点の必要蒸気量MVを下回る状態が発生する可能性がある。
【0045】
このような場合、ボイラシステム1においては、ヘッダ圧力値PVが急下降した際、下降中に比例分配制御方式により算出される必要蒸気量MVが過剰に確保される。他方、急激な必要蒸気量の変化に対してボイラシステム1のボイラ20には応答遅れが生じる。
その後、出力蒸気量JTが増加することにより、ヘッダ圧力値PVは、下降から上昇に転じる。ヘッダ圧力値PVが下降から上昇に転じた時点から、比例分配制御方式により算出される必要蒸気量MVは減少し続けるが、その時点で既に必要蒸気量MVが過剰に確保されている。一方、ボイラシステム1は、ボイラ群2の実際の出力蒸気量JTは必要蒸気量MVに追いついていないことから、出力蒸気量JTは増加し続けることとなる。
その結果、ボイラシステム1は、ヘッダ圧力値PVの上昇を抑えきれなくなり、オーバーシュートすることとなる。
【0046】
[最初の補正必要蒸気量設定部43]
最初の補正必要蒸気量設定部43は、第1検出部42により第1状態が検出された場合、今回必要蒸気量MVの初回(n=1)の算出処理において、当該検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラ20により出力されている出力蒸気量の合計値となる最初の補正必要蒸気量MV´を今回必要蒸気量MVとして設定する。
【0047】
[補正必要蒸気量算出部44]
補正必要蒸気量算出部44は、最初の補正必要蒸気量設定部43により設定された初回(n=1)の制御周期における補正必要蒸気量MV´を起点として、第1補正時間Tの経過前まで、次回以降(n≧2)の制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´を増加させて(例えば、前回補正必要蒸気量MVn−1´に今回補正必要蒸気量変化分ΔMV´を加算して)、今回補正必要蒸気量MV´を算出して、今回の必要蒸気量MVとして設定する。
そして、補正必要蒸気量算出部44は、第1補正時間Tの経過後に、今回補正必要蒸気量MV´が必要蒸気量算出部41により算出される今回必要蒸気量MVに収束するように、今回補正必要蒸気量MV´を算出する。
【0048】
[補正必要蒸気量算出部44の算出方法の具体例]
第1補正時間Tの経過後に、今回補正必要蒸気量MV´が必要蒸気量算出部41により算出される今回必要蒸気量MVに収束するように、例えば、補正必要蒸気量算出部44は、次のように次回以降(n≧2)の制御周期毎に、今回補正必要蒸気量MV´を算出することができる。
【0049】
まず、補正必要蒸気量算出部44は、整数Nmax(以下「補正回数最大値」ともいう)を(式2)に示すように、第1補正時間Tを制御周期Δtで除算して算出する。
max = T/Δt (式2)
【0050】
そして、N(Nmax≧N≧1)を現在の補正回数とすると、補正必要蒸気量算出部44は、(式3)に示すように、第1補正時間Tの経過前まで、次回以降(n≧2)の制御周期毎に、今回補正必要蒸気量変化分ΔMV´を算出する。
ΔMV´=(MV−MVn−1´)/(Nmax−N+1) (式3)
(式3)において、MV:現時点の必要蒸気量(今回必要蒸気量)、MVn−1´:前回の制御周期時点の補正必要蒸気量、ΔMV´:今回補正必要蒸気量変化分である。ここで、添字nは、繰り返し演算の演算回数(n回目:n=1,2,…,Nの正の整数値)を示す。また、補正回数Nは、補正実施毎に1を加算する。
【0051】
補正必要蒸気量算出部44は、(式4)に示すように、前回補正必要蒸気量MVn−1´に今回補正必要蒸気量変化分ΔMV´を加算して、今回補正必要蒸気量MV´を算出する。
MV´=MVn−1´+ΔMV´ (式4)
【0052】
こうすることで、補正必要蒸気量算出部44は、最初の補正必要蒸気量設定部43により設定された初回(n=1)の制御周期における補正必要蒸気量MV´を起点として、第1補正時間Tの経過前まで、次回以降(n≧2)の制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´を増加させて、今回補正必要蒸気量MV´を算出して、第1補正時間Tの経過後に、今回補正必要蒸気量MV´が必要蒸気量算出部41により算出される今回必要蒸気量MVに収束するようにすることができる。
なお、(式3)、(式4)は一例であって、補正必要蒸気量算出部44の補正必要蒸気量の算出方法については、これに限定されない。
【0053】
上記の実施例において、予め第1補正時間Tを設定して、制御周期時間Δtで除算することにより、補正回数最大値Nmaxを算出したが、これに限定されない。
例えば、予め、補正回数最大値となる整数Nmaxを設定して、制御周期時間Δtに整数Nmaxを乗算することで、第1補正時間Tを算出してもよい。
【0054】
[補正必要蒸気量算出部44の変形例1]
補正必要蒸気量算出部44は、さらに、第1補正時間Tの経過前の制御周期において算出した今回補正必要蒸気量MV´が必要蒸気量算出部41により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了するようにしてもよい。
より具体的には、補正回数Nが補正回数最大値Nmax未満であっても、次回以降(n≧2)の制御周期において、補正必要蒸気量算出部44により算出した今回補正必要蒸気量MV´が、必要蒸気量算出部41により算出した今回必要蒸気量MV以上となった場合、すなわち、次の(条件1)を満足した場合に、補正必要蒸気量算出部44は、補正を終了してもよい。
今回補正必要蒸気量MV´ ≧ 今回必要蒸気量MV (条件1)
【0055】
[補正必要蒸気量算出部44の変形例2]
変形例2として、予め第1補正時間Tを設定しないように構成してもよい。
すなわち、補正必要蒸気量算出部44は、最初の補正必要蒸気量設定部43により設定された最初の補正必要蒸気量MV´(n=1)を起点として、制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´に予め設定された第1の必要蒸気量変化分ΔMVを加算して算出された値が前記必要蒸気量算出部により算出した今回必要蒸気量MVより小さい場合に、算出された値を今回補正必要蒸気量MV´として設定し、算出された値が必要蒸気量算出部41により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了するように構成してもよい。
【0056】
具体的には、補正蒸気量算出部44は、(式5)に示すように、前回補正必要蒸気量MVn−1´に第1の必要蒸気量変化分ΔMVを加算して、今回補正必要蒸気量MV´を算出する。
MV´=MVn−1´+ΔMV (式5)
【0057】
そして、次回以降(n≧2)の制御周期において、補正必要蒸気量算出部44により算出した今回補正必要蒸気量MV´が、必要蒸気量算出部41により算出した今回必要蒸気量MV以上となった場合、すなわち、前述した(条件1)を満足した場合に、補正必要蒸気量算出部44は、補正を終了する。
なお、上記実施例においては、必要蒸気量変化分ΔMVを固定値としたが、固定値ではなく、例えば、次回以降(n≧2)の制御周期毎に、ΔMVの値が小さくなるようにしてもよい。
【0058】
[出力制御部]
最初に、出力制御部45の通常時の制御機能(以下、「通常制御」ともいう)について説明する。
<通常制御>
通常時において、出力制御部45は、制御周期毎に必要蒸気量算出部41により算出された必要蒸気量MVと、制御周期毎に算出した、ボイラ群2の燃焼しているすべてのボイラ20により出力されている出力蒸気量の合計値である出力蒸気量JTとの偏差量(今回必要蒸気量MV−出力蒸気量JT)及びヘッダ圧力値PVの変動状態に基づいて、それぞれのボイラ20の燃焼位置を選択することで、燃焼状態を制御する。
具体的には、例えば、次のように行うことができる。
【0059】
出力制御部45は、今回制御周期に測定したヘッダ圧力値を前回制御周期に測定したヘッダ圧力値と比較して、今回制御周期のヘッダ圧力値が上昇しているか、下降しているか、を判断する。
【0060】
[ヘッダ圧力が下降している場合]
今回制御周期のヘッダ圧力が前回制御周期に測定したヘッダ圧力値と比較して下降している場合であって、
今回必要蒸気量MV>出力蒸気量JT
を満たす場合、出力制御部45は、燃焼量不足と判断して、差分蒸気量(今回必要蒸気量MV−出力蒸気量JT)の蒸気量に該当する燃焼量を増加させるように、燃焼位置を変更する。
【0061】
具体的には、出力制御部45は、蒸気量の増加分が(今回必要蒸気量MV−出力蒸気量JT)に最も近く、出力蒸気量の変更後に、必要蒸気量MV≦今回出力蒸気量JTを満足するように、それぞれのボイラ20の燃焼位置を選択する。
出力制御部45は、差分蒸気量に最も近い燃焼位置を優先的に選択するものとし、該当する燃焼位置が複数ある場合には、予め設定された優先順位に基づいて選択することができる。
なお、今回制御周期のヘッダ圧力が前回制御周期に測定したヘッダ圧力値と比較して下降している場合であって、
今回必要蒸気量MV≦出力蒸気量JT
を満たす場合は、出力制御部45は、現状の燃焼状態を維持することができる。
【0062】
[ヘッダ圧力が上昇している場合]
今回制御周期のヘッダ圧力が前回制御周期に測定したヘッダ圧力値と比較して上昇している場合であって、
今回必要蒸気量MV<出力蒸気量JT
を満たす場合、出力制御部45は、燃焼量過剰と判断して、(出力蒸気量JT−今回必要蒸気量MV)の蒸気量に該当する燃焼量を減少させるように、燃焼位置を変更する。
【0063】
具体的には、出力制御部45は、蒸気量の減少分が(出力蒸気量JT−今回必要蒸気量MV)に最も近く、変更後に、今回必要蒸気量MV≧今回出力蒸気量JTを満足するように、それぞれのボイラ20の燃焼位置を選択する。
この際、出力制御部45は、差分蒸気量に最も近い燃焼位置を優先的に選択するものとし、該当する燃焼位置が複数ある場合には、予め設定された優先順位に基づいて選択することができる。
なお、ヘッダ圧力が前回制御周期に測定したヘッダ圧力値と比較して上昇している場合であって、
今回必要蒸気量MV≧出力蒸気量JT
を満たす場合は、出力制御部45は、現状の燃焼状態を継続することができる。
【0064】
<第1検出部42により第1状態を検出した場合>
次に、第1検出部42により、第1状態を検出した場合の出力制御部45の処理について説明する。
出力制御部45は、第1検出部42により第1状態が検出された場合、今回必要蒸気量MVの初回(n=1)の算出処理において、最初の補正必要蒸気量設定部43により設定された初回(n=1)の制御周期における補正必要蒸気量MV´を発生させるように複数のボイラ20の燃焼状態を制御する。
その後、第1補正時間Tの経過前まで(すなわち、N≦Nmaxまで)、出力制御部45は、次回以降(n≧2)の制御周期毎に、補正必要蒸気量算出部44により算出された今回補正必要蒸気量MV´を発生させるように複数のボイラ20の燃焼状態を制御する。
そして、出力制御部45は、第1補正時間Tの経過後は、必要蒸気量算出部41により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように複数のボイラ20の燃焼状態を制御する。
具体的には、例えば、次のように行われる。
【0065】
出力制御部45は、第1検出部42により第1状態が検出された後の初回(n=1)の制御周期において、最初の補正必要蒸気量設定部43により設定された最初の補正必要蒸気量MV´を発生させるように制御する。
こうすることで、第1検出部42により第1状態が検出された後の初回(n=1)の制御周期において、
今回必要蒸気量MV´ = 出力蒸気量JT
を満たし、出力制御部45は、現状の燃焼状態を継続する。
【0066】
次に、出力制御部45は、第1補正時間Tの経過前まで、次回以降(n≧2)の制御周期毎に、補正必要蒸気量算出部44により算出された今回補正必要蒸気量MV´を発生させるように複数のボイラ20の燃焼状態を制御する。
【0067】
そして、出力制御部45は、第1補正時間T経過後の制御周期において、必要蒸気量算出部41により算出される今回必要蒸気量MVを発生させるように複数のボイラ20の燃焼状態を制御する。
こうすることで、第1検出部42により第1状態が検出された場合、指示蒸気量とボイラ20の出力蒸気量との遅延をなくすることができ、ヘッダ圧力値を速やかに設定圧力範囲内に収束させることで、ハンチング現象を未然に防止し、ハンチング現象が発生した場合には、ハンチング現象を速やかに収束させることができる。
【0068】
次に、第1実施形態のボイラシステム1の動作について、図4を参照して説明する。図4は、ボイラシステム1のフィードバック制御の流れを示すフローチャートである。
なお、図4に示す、ボイラシステム1のフィードバック制御のフローチャートは、補正必要蒸気量算出部44が、補正回数Nが補正回数最大値Nmaxとなるまで、すなわち第1補正時間まで、今回補正必要蒸気量MV´を算出して、今回必要蒸気量MVとして設定する場合のフローチャートである。
【0069】
前述したように、制御部4は、信号線16を介して各ボイラ20のローカル制御部22から取得した各ボイラ20から出力される出力蒸気量、及び各ボイラ20それぞれから出力される出力蒸気量の合計値を記憶部5に記憶している。
【0070】
ボイラシステム1のフィードバック制御の流れは、例えば、次のとおりに構成することができる。
ステップST1において、制御部4は、補正回数Nの初期設定、第1検出フラグデータのリセット、第1補正時間T及び補正回数最大値Nmax等の初期設定をする。ここで、第1検出フラグデータは、レジスタ、ビットメモリ等を適宜用い、第1検出部42が、第1状態を判定した場合に、セットされる。
ステップST2において、必要蒸気量算出部41は、制御周期毎において、蒸気圧センサ7から送信された蒸気圧信号に基づいて、ヘッダ圧力値PVを取得する。
【0071】
ステップST3において、必要蒸気量算出部41は、(式1)に基づいて、制御周期毎に今回必要蒸気量MVを算出する。
【0072】
ステップST4において、制御部4は、第1検出フラグデータがセットされているか否かを判定し、第1検出フラグデータがセットされている場合(Yes)には、ステップST8に移る。一方、第1検出フラグデータがセットされていない場合(No)には、ステップST5に移る。
【0073】
ステップST5において、第1検出部42は、第1状態を検出したか否かを判定し、第1状態を検出した場合(Yesの場合)、ステップST6に移る。検出していない場合(Noの場合)、ステップST13へ移る。
【0074】
ステップST6において、第1検出部42は、第1検出フラグデータをセットする。
【0075】
ステップST7において、最初の補正必要蒸気量算出部43は、今回必要蒸気量MVの初回(n=1)の算出処理において、第1状態の検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラ20により出力されている出力蒸気量の合計値となる最初の補正必要蒸気量MV´を今回必要蒸気量MVとして設定する。その後ステップST10に移る。
【0076】
ステップST8において、制御部4は、補正回数Nが補正回数最大値Nmax未満か否かをチェックする。
補正回数Nが補正回数最大値Nmax未満の場合(Yes)、ステップST9に移る。補正回数Nが補正回数最大値Nmax以上の場合(No)、ステップST10に移る。
【0077】
ステップST9において、補正必要蒸気量算出部44は、今回補正必要蒸気量MV´を算出して、今回必要蒸気量MVとして設定する。
その後、ステップS11に移る。
【0078】
ステップS11において、制御部4は、補正回数Nに1を加算する。その後ステップST13に移る。
【0079】
ステップST10において、補正必要蒸気量算出部44は補正を終了する。(したがって、今回必要蒸気量MVは、必要蒸気量算出部41により算出されたものとなる。)
【0080】
ステップST12において、制御部4は、第1検出フラグデータのリセット及び補正回数Nの値を1にする。その後ステップST13に移る。
【0081】
ステップST13において、出力制御部45は、必要蒸気量算出部41又は補正必要蒸気量算出部44により設定されている今回必要蒸気量MVに基づいてボイラ20の燃焼状態(燃焼量)を制御する。
その後、ステップST2に戻る。
【0082】
[補正必要蒸気量算出部44の変形例1の場合]
前述した補正必要蒸気量算出部44の変形例1の場合(すなわち、補正必要蒸気量算出部44は、第1補正時間Tの経過前の制御周期において算出した今回補正必要蒸気量MV´が必要蒸気量算出部41により算出した今回必要蒸気量MV以上となる場合、今回補正必要蒸気量MV´の算出を終了する場合)における、ボイラシステム1のフィードバック制御のフローチャートを図5に示す。
図5記載のフローチャートは、図4に記載したフローチャートのST8において、「制御部4は、補正回数Nが補正回数最大値Nmax未満か否かをチェックする」替わりに、「制御部4は、今回補正必要蒸気量MV´が今回必要蒸気量MV以上となるか、又は補正回数Nが補正最大回数Nmaxに等しくなるか、いずれかを満たすか否かを判定する」ように変更したものである。その他の各ステップにおける処理は、図4記載のフローチャートの対応する各ステップにおける処理と同じである。
【0083】
[補正必要蒸気量算出部44の変形例2の場合]
前述した補正必要蒸気量算出部44の変形例2の場合(すなわち、補正必要蒸気量算出部44は、予め第1補正時間Tを設定せず、前回補正必要蒸気量MVn−1´に予め設定された第1の必要蒸気量変化分ΔMVを加算する場合)における、ボイラシステム1のフィードバック制御のフローチャートを図6に示す。
図6記載のフローチャートは、図4に記載したフローチャートのST8において、「制御部4は、今回補正必要蒸気量MV´が今回必要蒸気量MV以上となるか、又は補正回数Nが補正最大回数Nmaxに等しくなるか、いずれかを満たすか否かを判定する」替わりに、「制御部4は、今回補正必要蒸気量MV´が今回必要蒸気量MV以上となるか否かをチェックする」ように変更したものである。そして、それに合わせて、図4に示したフローチャートのST11(補正回数Nに1を加算するステップ)を削除したものである。その他の各ステップにおける処理は、図4記載のフローチャートの対応する各ステップにおける処理と同じである。
【0084】
次に、図7A及び図7Bを参照して、第1状態が発生した際に、通常の比例分配制御方式による圧力制御を実施した場合と比較しながら、第1実施形態に係る比例分配制御方式を用いて圧力制御を実施した場合に、オーバーシュートが抑制され、蒸気圧力値が速やかに設定圧力範囲に収まる様子を説明する。
【0085】
図7A及び図7Bともに、ボイラシステム1に対する要求負荷は、一定の蒸気消費量が続き、ヘッダ圧力値PVは、設定圧力範囲に収まっている。その後、経過時間tにおいて、給蒸中のボイラが外的要因で燃焼停止したことにより、ヘッダ圧力値PVが急下降し、その後経過時間tにおいて、ヘッダ圧力値PVが下降から上昇に転じている。
【0086】
最初に、図7Aを参照して、制御部4が、通常の比例分配制御方式による圧力制御を実施した場合における、ヘッダ圧力値PVが下降から上昇に転じた以降の、ヘッダ圧力値PVと必要蒸気量MVと実際の出力蒸気量の時間的変化について説明する。
【0087】
ボイラシステム1は、経過時間tにおいて、給蒸中のボイラが外的要因で燃焼停止したことにより、ヘッダ圧力値PVが急下降した際、下降中に比例分配制御方式により算出される必要蒸気量MVが過剰に確保される。他方、急激な必要蒸気量の変化に対してボイラシステム1のボイラ20には応答遅れが生じている。
【0088】
ボイラシステム1は、その後、出力蒸気量JTが増加することにより、ヘッダ圧力値PVは、tにおいて下降から上昇に転じる。ヘッダ圧力値PVが下降から上昇に転じた時点から、比例分配制御方式により算出される必要蒸気量MVは減少し続けるが、その時点で既に必要蒸気量MVが過剰に確保されている。一方、ボイラシステム1は、ボイラ群2の実際の出力蒸気量JTは必要蒸気量MVに追いついていないことから、t以降も出力蒸気量JTは増加し続けることとなる。
【0089】
その結果、図7Aに示すように、ボイラシステム1は、ヘッダ圧力値PVの上昇を抑えきれなくなり、時刻tにおいて、オーバーシュートすることとなる。
【0090】
次に、図7Bを参照して、第1実施形態に係る比例分配制御方式による圧力制御を実施した場合における、急負荷変動時のヘッダ圧力値と必要蒸気量(指示蒸気量)と実際の出力蒸気量の時間的変化について説明する。
【0091】
時刻tにおいて給蒸中のボイラが外的要因で燃焼停止し、給蒸中のすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値が、必要蒸気量算出部41により算出される現時点の必要蒸気量MVを下回る状態となり、ヘッダ圧力が急下降した結果、ヘッダ圧力の下降中に比例分配方式により算出される必要蒸気量MVが過剰に確保される。他方、急激な必要蒸気量の変化に対してボイラシステム1のボイラ20には応答遅れが生じている。
【0092】
その後、ボイラシステム1は、出力蒸気量が増加し始めて、ヘッダ圧力値が上昇に転じた時点(時刻t)において、第1検出部42は、第1状態を検出する。
第1検出部42による第1状態の検出に対応して、最初の補正必要蒸気量算出部43は、今回必要蒸気量MVの初回(n=1)の算出処理において、第1状態の検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラ20により出力されている出力蒸気量の合計値となる最初の補正必要蒸気量MV´を今回必要蒸気量MVとして設定する。
【0093】
その後、補正必要蒸気量算出部44は、最初の補正必要蒸気量設定部43により設定された初回(n=1)の制御周期における補正必要蒸気量MV´を起点として、第1補正時間Tの経過前(時刻T)まで、次回以降(n≧2)の制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´を増加させて(例えば、前回補正必要蒸気量MVn−1´に今回補正必要蒸気量変化分ΔMV´を加算して)、今回補正必要蒸気量MV´を算出して、今回の必要蒸気量MVとして設定する。
第1補正時間Tの経過後(時刻T)に、補正必要蒸気量算出部44により算出される今回補正必要蒸気量MV´が必要蒸気量算出部41により算出される今回必要蒸気量MVに合致することで、補正必要蒸気量算出部44は、補正を終了する。
【0094】
他方、出力制御部45は、時刻t〜Tにかけて、最初の補正必要蒸気量算出部43又は補正必要蒸気量算出部44により設定されている今回必要蒸気量MVに基づいてボイラ20の燃焼状態(燃焼位置)を制御する。
【0095】
そして、第1補正時間の経過後(時刻T以後)、出力制御部45は、必要蒸気量算出部41により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように複数のボイラ20の燃焼状態(燃焼位置)を制御する。
【0096】
このように、時刻t以降、蒸気量算出部41により算出される必要蒸気量MVが補正必要蒸気量MV´に補正されることで、出力制御部45は、指示蒸気量とボイラ20の出力蒸気量との遅延をなくすることができる。
こうすることで、ボイラシステム1は、図6に示すように、t以降において、ヘッダ圧力値PVがオーバーシュートすることなく、実際の出力蒸気量は、蒸気消費量(要求負荷)の変動に速やかに追従することになる。そして、ヘッダ圧力値PVは、設定圧力範囲に収まる。
【0097】
以上、第1実施形態に係るボイラシステム1は、例えば給蒸中のボイラが外的要因で燃焼停止し、給蒸中のすべてのボイラの最大出力蒸気量の合計値が、必要蒸気量算出部41により算出される現時点の必要蒸気量MVを下回る状態になり、ヘッダ圧力値が所定圧力を下回った場合に、ハンチング現象が発生せずに、ヘッダ圧力値PVは、設定圧力範囲内に収束することを説明した。
【0098】
以上説明した第1実施形態のボイラシステム1によれば、以下のような効果を奏する。
【0099】
上述した第1実施形態に係る比例分配制御方式を用いるボイラシステム1においては、第1状態を検出した場合に、最初の補正必要蒸気量設定部43及び補正必要量算出部44は、必要蒸気量算出部41により算出される必要蒸気量MVを補正された必要蒸気量MV´に置き換える処理を実行する。
これにより、第1実施形態に係る比例分配制御方式を用いるボイラシステム1は、ヘッダ圧力値PVが下降から上昇に転じた時点以降で、補正された必要蒸気量MV´とボイラ20の実際の出力蒸気量との遅延をなくすることができ、ボイラシステム1の出力蒸気量は、蒸気消費量(要求負荷)の変動に速やかに追従することができる。その結果、ボイラシステム1は、圧力変動の急激な上下動を抑制して、ヘッダ圧力値PVを速やかに設定圧力範囲内の値に収束させ、ハンチングの発生を回避することができ、圧力安定性を向上させることができる。
【0100】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態については、主として、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様な構成については詳細な説明を省略する。第2実施形態において、特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様な効果が奏される。
【0101】
<記憶部5の構成>
記憶部5は、第1実施形態の構成に加えて、後述する疑似ハンチング状態を検出するためのパラメータ値となる、制御上限圧力値PUと設定圧力範囲の上限圧力値Pmaxとの間に予め設定された第2制御上限圧力値P2、第1の時間、及び第1の回数を記憶することができる。
【0102】
<制御部4Aの構成>
次に、制御部4Aの詳細な構成について説明する。図8に示すように、制御部4Aは、必要蒸気量算出部41と、第2検出部42Aと、最初の補正必要量算出部43と、補正必要量算出部44と、出力制御部45と、を含んで構成される。
【0103】
(疑似ハンチング)
ヘッダ圧力値PVが制御上限圧力値PUを超えないが、ヘッダ圧力値PVが所定の圧力値以上となるような変動を所定時間(例えば、60秒)以内に所定回数(例えば、4回)以上繰り返す現象(以下、「擬似ハンチング」ともいう)が発生する場合がある。
擬似ハンチングの発生する1つの要因としては、ヘッダ圧力値PVと設定圧力範囲の上限圧力値Pmaxとの差分である圧力偏差値に対して、操作量が過剰に算出されることが挙げられる。操作量が過剰に算出されることにより、圧力変動が急激に上下動し、擬似ハンチング(又はハンチング)が発生すると考えられる。
疑似ハンチング現象が発生すると、ヘッダ圧力値PVが制御上限圧力値PUを超えて、全缶停止及びハンチングを起こす可能性がある。
第2実施形態においては、擬似ハンチングを検出することで、ヘッダ圧力値PVが制御上限圧力値PUを超えて、全缶停止及びハンチングを起こすことを未然に防止することを可能にする。
【0104】
(第2制御上限圧力値P2)
このため、ヘッダ圧力値PVが、制御部4Aにより複数のボイラ20が全缶停止される閾値として予め設定された制御上限圧力値PUと設定圧力範囲の上限圧力値Pmaxとの間に第2制御上限圧力値P2を予め設定する。
制御上限圧力値PU > 第2制御上限圧力値P2 >上限圧力値Pmax
【0105】
第2実施形態においては、前述したとおり、ヘッダ圧力値PVが制御上限圧力値PUを超えないが、第2制御上限圧力値P2以上となるような変動を所定時間(例えば、60秒)以内に所定回数(例えば、4回)以上繰り返す場合、ハンチングの起因となる可能性のある、ヘッダ圧力値PVの変動とみなし、当該現象を「第1擬似ハンチング」という。なお、当該所定時間を「第1の時間」、当該所定回数を「第1の回数」という。
【0106】
[第2検出部42A]
第2検出部42Aは、ヘッダ圧力値PVが、第2制御上限圧力値P2を超える又は第2制御上限圧力値P2以上となる回数が、第1の時間(例えば、60秒)の間に、第1の回数(例えば、4回)以上発生する状態(以下、「第1疑似ハンチング状態」という)を検出し、その後ヘッダ圧力値PVが下降から上昇に転じた状態(以下、「第2状態」という)を検出する。
なお、第1の時間及び第1の回数については、ボイラシステム1の特性に合わせて、適宜設定することができる。例えば、第1の回数を「1」に設定した場合、第2検出部42Aは、ヘッダ圧力値PVが、第2制御上限圧力値P2を超えるか、又は第2制御上限圧力値P2以上となることが発生した状態を検出する。
【0107】
[最初の補正必要量設定部43、補正必要量算出部44]
最初の補正必要量設定部43は、第2検出部42Aが第2状態を検出した場合、第1実施形態の場合と同様に、当該検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラ20により出力されている出力蒸気量の合計値となる最初の補正必要蒸気量MV´を今回必要蒸気量MVの初回(n=1)として設定する。
【0108】
[補正必要量算出部44]
その後、補正必要量算出部44は、第1実施形態の場合と同様に、最初の補正必要蒸気量設定部43により設定された初回(n=1)の制御周期における補正必要蒸気量MV´を起点として、第1補正時間Tの経過前まで、次回以降(n≧2)の制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´を増加させて(例えば、前回補正必要蒸気量MVn−1´に今回補正必要蒸気量変化分ΔMV´を加算して)、今回補正必要蒸気量MV´を算出して、今回の必要蒸気量MVとして設定する。
【0109】
そうすることで、それ以降、第1実施形態の場合と同様に、必要蒸気量算出部41により算出される必要蒸気量MVとボイラ20の実際の出力蒸気量JTとの遅延をなくすることができる。
その結果、ボイラシステム1は、圧力変動の急激な上下動を抑制して、擬似ハンチング段階においてヘッダ圧力値PVを速やかに設定圧力範囲内の値に収束させ、ハンチングの発生を回避することができる。
【0110】
(フローチャート)
次に、第2実施形態に係るボイラシステム1の動作について、図9を参照して説明する。図9は、第2実施形態に係るボイラシステム1の制御の流れを示すフローチャートである。図9において、第2検出フラグデータは、レジスタ、ビットメモリ等を適宜用い、第2検出部42Aが、第2状態を判定した場合に、セットされる。
図9記載のフローチャートは、図4に記載したフローチャートのST5において、「第2検出部42Aは、第1状態が発生したか否かをチェックする」替わりに、「第2検出部42Aは、第2状態が発生したか否かをチェックする」ように変更したものである。また、それと平仄を合わせて、ST4、ST6、及びST12において、「第1判定フラグ」を「第2判定フラグ」に替えたものである。
【0111】
次に、図10A及び図10Bを参照して、擬似ハンチングが発生した際に、通常の比例分配制御方式による圧力制御を実施した場合と比較しながら、第2実施形態に係る比例分配制御方式を用いて圧力制御を実施した場合に、ヘッダ圧力値PVが速やかに目標圧力値に収束される様子を説明する。
【0112】
ここで、図10Aは、通常の比例分配制御方式による圧力制御を実施した場合におけるヘッダ圧力値PVと必要蒸気量MVと実際の出力蒸気量JTとの時間的推移を示す図である。これに対して、図10Bは、第2実施形態に係る比例分配制御方式による圧力制御を実施した場合におけるヘッダ圧力値PVと必要蒸気量MVと実際の出力蒸気量JTとの時間的推移を示す図である。
【0113】
図10A及び図10Bともに、ヘッダ圧力値PVが上下動するハンチング現象が発生している。
【0114】
まず、図10Aを参照して、制御部4Aが、通常の比例分配制御方式による圧力制御を実施した場合における、ヘッダ圧力値PVと必要蒸気量MVと実際の出力蒸気量の時間的変化について説明する。
【0115】
図10Aに示すように、ヘッダ圧力値PVが上下動するハンチング現象が発生し、制御部4Aは、通常の比例分配制御方式による圧力制御によって、ヘッダ圧力値PVを設定圧力範囲内の圧力値に収束させることができなくなっている。
【0116】
次に、図10Bを参照して、擬似ハンチングが発生した際に、第2実施形態に係る比例分配制御方式を用いて圧力制御を実施した場合に、ヘッダ圧力値PVが速やかに設定圧力範囲内の圧力値に収束される様子を説明する。
図10Bには、第2実施形態に係る比例分配制御方式を用いて圧力制御を実施した場合におけるヘッダ圧力値PVと必要蒸気量MVと実際の出力蒸気量JTとの時間的推移が示されている。
【0117】
ボイラシステム1において、第2検出部43Aは、経過時間tにおいてヘッダ圧力値PVが第2制御上限圧力値P2を超える回数が、第1の時間の間に、第1の回数以上発生したこと(擬似ハンチングの発生)を検出し、経過時間tにおいてヘッダ圧力値PVが下降から上昇に転じたこと(第2状態)を検出する。
第2検出部43Aによる第2状態の検出に対応して、最初の補正必要蒸気量算出部43は、今回必要蒸気量MVの初回(n=1)の算出処理において、第2状態の検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラ20により出力されている出力蒸気量の合計値となる最初の補正必要蒸気量MV´を今回必要蒸気量MVとして設定する。
【0118】
その後、補正必要蒸気量算出部44は、最初の補正必要蒸気量設定部43により設定された初回(n=1)の制御周期における補正必要蒸気量MV´を起点として、第1補正時間Tの経過前(時刻T)まで、次回以降(n≧2)の制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´を増加させて(例えば、前回補正必要蒸気量MVn−1´に今回補正必要蒸気量変化分ΔMV´を加算して)、今回補正必要蒸気量MV´を算出して、今回の必要蒸気量MVとして設定する。
第1補正時間Tの経過後(時刻T)に、補正必要蒸気量算出部44により算出される今回補正必要蒸気量MV´が必要蒸気量算出部41により算出される今回必要蒸気量MVに合致することで、補正必要蒸気量算出部44は、補正を終了する。
【0119】
他方、出力制御部45は、時刻t〜Tにかけて、最初の補正必要蒸気量算出部43又は補正必要蒸気量算出部44により設定されている今回必要蒸気量MVに基づいてボイラ20の燃焼状態(燃焼位置)を制御する。
【0120】
そして、第1補正時間の経過後(時刻T以後)、出力制御部45は、必要蒸気量算出部41により算出された今回必要蒸気量MVを発生させるように複数のボイラ20の燃焼状態(燃焼位置)を制御する。
【0121】
このように、時刻t以降、蒸気量算出部41により算出される必要蒸気量MVが補正必要蒸気量MV´に補正されることで、出力制御部45は、指示蒸気量とボイラ20の出力蒸気量との遅延をなくすることができる。
こうすることで、ボイラシステム1は、図10Bに示すように、t以降において、ヘッダ圧力値PVがオーバーシュートすることなく、実際の出力蒸気量は、蒸気消費量(要求負荷)の変動に速やかに追従することになる。そして、ヘッダ圧力値PVは、設定圧力範囲に収まる。
【0122】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態については、主として、第2実施形態と異なる点を中心に説明し、第2実施形態と同様な構成については詳細な説明を省略する。第3実施形態において、特に説明しない点は、第2実施形態についての説明が適宜適用される。また、第3実施形態においても、第2実施形態と同様な効果が奏される。
記憶部5は、第1実施形態の構成に加えて、疑似ハンチング状態を検出するためのパラメータ値となる、設定圧力範囲の下限圧力値との偏差の絶対値が第1閾値以下となるように予め設定された第2制御下限圧力値、第2の時間、及び第2の回数を記憶することができる。
【0123】
第3実施形態に係るボイラシステム1は、ヘッダ圧力値PVが、設定圧力範囲の下限圧力値との偏差の絶対値が第1閾値以下となるように予め設定された第2制御下限圧力値を下回る又は第2制御下限圧力値以下となる回数が、第2の時間の間に、第2の回数以上発生する変動を第を擬似ハンチングの一種としてとらえる(以下、「第2の擬似ハンチング」ともいう)。
【0124】
なお、第2の時間及び第2の回数については、ボイラシステム1の特性に合わせて、適宜設定することができる。例えば、第2の回数を「1」に設定した場合、ハンチング検出部43は、ヘッダ圧力値PVが、第2制御帯下限値を下回る又は第2制御帯下限値以下となることが発生したか否かを検出する。
【0125】
第3実施形態に係る比例分配制御方式を用いるボイラシステム1は、第2検出部43Aにより、第2の擬似ハンチングを検出し、ヘッダ圧力値PVが下降から上昇に転じた状態(第2状態)を検出した場合、第2実施形態の場合と同様に、当該検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラ20により出力されている出力蒸気量の合計値となる最初の補正必要蒸気量MV´を今回必要蒸気量MVの初回(n=1)として設定する。
その後、補正必要量算出部44は、第2実施形態の場合と同様に、最初の補正必要蒸気量設定部43により設定された初回(n=1)の制御周期における補正必要蒸気量MV´を起点として、第1補正時間Tの経過前まで、次回以降(n≧2)の制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´を増加させて(例えば、前回補正必要蒸気量MVn−1´に今回補正必要蒸気量変化分ΔMV´を加算して)、今回補正必要蒸気量MV´を算出して、今回の必要蒸気量MVとして設定する。
【0126】
その結果、ヘッダ圧力値PVを速やかに設定圧力範囲内の値に収束させ、ハンチングの発生を回避することができる。
【0127】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態についても、主として、第2実施形態と異なる点を中心に説明し、第2実施形態と同様な構成については詳細な説明を省略する。第4実施形態において、特に説明しない点は、第2実施形態についての説明が適宜適用される。また、第4実施形態においても、第2実施形態と同様な効果が奏される。
なお、記憶部5は、第1実施形態の構成に加えて、疑似ハンチング状態を検出するためのパラメータ値となる、圧力降下幅値、第3の時間、第3の回数を記憶することができる。
【0128】
第4実施形態に係るボイラシステム1は、ヘッダ圧力値PVが降下する際の圧力降下幅が予め設定された圧力降下幅値を超えるか、又は圧力降下幅値以上となる回数が、第3の時間の間に、第3の回数以上発生する変動を擬似ハンチング状態として検出する。
ヘッダ圧力値PVが降下する際の圧力降下幅が予め設定された圧力降下幅値を超える又は圧力降下幅値以上となる回数が、第3の時間(例えば、60秒)の間に、第3の回数(例えば、4回)以上発生するような、ヘッダ圧力値PVが目標蒸気圧の上下に急激に変動する場合を擬似ハンチングの一種としてとらえる(以下、「第3の擬似ハンチング」ということもある)。
【0129】
なお、第3の時間及び第3の回数については、ボイラシステム1の特性に合わせて、適宜設定することができる。例えば、第3の回数を「1」に設定した場合、第2検出部43Aは、ヘッダ圧力値PVが降下する際の圧力降下幅が予め設定された圧力降下幅値を超える又は圧力降下幅値以上となる状態(第3の疑似ハンチング状態)が発生し、第3の時間の間に、第3の回数以上発生する変動を第3の擬似ハンチング状態として検出するか否かを検出する。
【0130】
第4実施形態に係る比例分配制御方式を用いるボイラシステム1は、第2検出部43Aにより、第3の擬似ハンチング状態を検出し、ヘッダ圧力値PVが下降から上昇に転じた状態(第2状態)を検出した場合、第2実施形態の場合と同様に、当該検出時点又は初回の算出処理の実行時点に燃焼しているすべてのボイラ20により出力されている出力蒸気量の合計値となる最初の補正必要蒸気量MV´を今回必要蒸気量MVの初回(n=1)として設定する。
その後、補正必要量算出部44は、第2実施形態の場合と同様に、最初の補正必要蒸気量設定部43により設定された初回(n=1)の制御周期における補正必要蒸気量MV´を起点として、第1補正時間Tの経過前まで、次回以降(n≧2)の制御周期毎に、前回補正必要蒸気量MVn−1´を増加させて(例えば、前回補正必要蒸気量MVn−1´に今回補正必要蒸気量変化分ΔMV´を加算して)、今回補正必要蒸気量MV´を算出して、今回の必要蒸気量MVとして設定する。
【0131】
その結果、ヘッダ圧力値PVを速やかに設定圧力範囲内の値に収束させ、ハンチングの発生を回避することができる。
【0132】
以上説明した第2実施形態〜第4実施形態のボイラシステム1によれば、以下のような効果を奏する。
【0133】
上述した第2実施形態〜第4実施形態に係る比例分配制御方式を用いるボイラシステム1においては、第2検出部43Aにより、それぞれ擬似ハンチング、第2の擬似ハンチング、及び第3の擬似ハンチングを検出した場合、ヘッダ圧力値PVが下降から上昇に転じたときに、最初の補正必要蒸気量設定部43及び補正必要量算出部44は、必要蒸気量算出部41により算出される必要蒸気量MVを補正された必要蒸気量MV´に置き換える処理を実行する。
これにより、第2実施形態〜第4実施形態に係る比例分配制御方式を用いるボイラシステム1は、ヘッダ圧力値PVが下降から上昇に転じた時点以降で、補正された必要蒸気量MV´とボイラ20の実際の出力蒸気量との遅延をなくすることができ、ボイラシステム1の出力蒸気量は、蒸気消費量(要求負荷)の変動に速やかに追従することができる。その結果、ボイラシステム1は、圧力変動の急激な上下動を抑制して、ヘッダ圧力値PVを速やかに設定圧力範囲内の値に収束させ、ハンチングの発生を回避することができ、圧力安定性を向上させることができる。
【0134】
以上、本発明に係るボイラシステムの好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
また、複数の実施形態を組み合わせることも可能である。例えば、第1実施形態から第4実施形態から任意の組み合わせをしてもよい。また、第1実施形態における補正必要蒸気量算出部44の変形例を第2実施形態〜第4実施形態に適用してもよい。
【0135】
各実施形態では、本発明を、5台のボイラ20からなるボイラ群2を備えたボイラシステムに適用した例について説明した。これに限らず、本発明を、6台以上のボイラからなるボイラ群を備えたボイラシステムに適用してもよいし、2〜4台のボイラからなるボイラ群を備えたボイラシステムに適用してもよい。また、各実施形態では、台数制御として、蒸気消費量に応じて算出された必要蒸気量と予め設定された優先順位とに基づいて燃焼させるボイラ20の台数を設定する例について説明した。これに限らず、複数台のボイラを備えたボイラ群において、燃焼させるボイラの台数は、例えば、システムの燃焼率や各ボイラの稼動状況等に基づいて設定してもよい。また、各実施形態では、本発明による圧力制御と複数のボイラの台数制御とを組み合わせた例について説明したが、本発明による圧力制御を単体のボイラの圧力制御に適用してもよい。その場合には、PIDアルゴリズムにより算出された必要蒸気量が、そのまま単体のボイラにおける必要蒸気量として設定される。
【0136】
また、第1実施形態では、ボイラ20は、選択された燃焼位置に応じて燃焼量を段階的に増減可能な段階値制御ボイラとして説明したが、これに限定されない。ボイラ20は、最小燃焼状態S1(例えば、燃焼率の20%の燃焼状態)から最大燃焼状態S2の範囲で、燃焼率を連続的に制御可能な連続制御ボイラにより構成されていてもよい。連続制御ボイラは、例えば、燃料をバーナに供給するバルブや、燃焼用空気を供給するバルブの開度(燃焼比)を制御することにより、燃焼率が調整される。
【符号の説明】
【0137】
1 ボイラシステム
2 ボイラ群
3 台数制御装置
4 制御部
5 記憶部
6 蒸気ヘッダ
7 蒸気圧センサ
18 蒸気使用設備
20 ボイラ
41 必要蒸気量算出部
42 第1検出部
42A 第2検出部
43 最初の補正必要量算出部
44 補正必要量算出部
45 出力制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B