(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-205712(P2016-205712A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】蓄熱式ガス処理装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
F23G 7/06 20060101AFI20161111BHJP
【FI】
F23G7/06 101D
F23G7/06ZAB
F23G7/06 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-87993(P2015-87993)
(22)【出願日】2015年4月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】村山 滋
(72)【発明者】
【氏名】奥野 政希
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 広大
【テーマコード(参考)】
3K078
【Fターム(参考)】
3K078AA02
3K078BA06
3K078BA17
3K078BA23
3K078BA26
3K078BA27
3K078CA01
3K078CA22
3K078EA08
(57)【要約】
【課題】 蓄熱式ガス処理装置において、原料処理ガスの燃焼を停止させる待機時に、燃焼室や各蓄熱室における蓄熱体の温度が大きく低下したり、蓄熱式ガス処理装置が局部的に過熱されて損傷したりするのを防止する。
【解決手段】 蓄熱体Sを収容させた蓄熱室11,12が2室以上設けられ、各蓄熱室の一端側に、燃焼装置13を有する燃焼室14を設けると共に、各蓄熱室の他端側に、それぞれ切換弁17a,17b, 18b,18aを介して供給ダクト15と排気ダクト16とを連通させた蓄熱式ガス処理装置10において、原料処理ガスの燃焼処理を停止させた待機時に、原料処理ガスを供給ダクトに導く送風ファン20を停止させると共に、燃焼室に設けられた燃焼装置による燃焼を行わないようにして、前記の切換弁を切り換えて、各蓄熱室を流れる気流の方向を切り換えるようにした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱体を収容させた蓄熱室が2室以上設けられ、各蓄熱室の一端側に燃焼装置を有する燃焼室が連通して設けられると共に、各蓄熱室の他端側にそれぞれ切換弁を介して供給ダクトと排気ダクトとが連通するように設けられ、送風ファンにより前記の供給ダクトを通して導かれた原料処理ガスを、前記の切換弁により一部の蓄熱室における蓄熱体を通して前記の燃焼室内に導き、この燃焼室内において原料処理ガスを燃焼処理する一方、処理された処理済ガスを他の蓄熱室に導いて、処理済ガスの熱をこの蓄熱室に収容された蓄熱体に蓄熱させた後、この処理済ガスを前記の切換弁により排気ダクトから排出させ、前記の切換弁を切り換えて、前記の操作を行う蓄熱室を順々に切り換える蓄熱式ガス処理装置において、原料処理ガスの燃焼処理が停止された待機時に、前記の送風ファンを停止させると共に、前記の燃焼装置による燃焼を行わないようにして、前記の切換弁を切り換えて、各蓄熱室を流れる気流の方向を切り換えることを特徴とする蓄熱式ガス処理装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄熱式ガス処理装置の制御方法において、前記の燃焼装置の周囲に燃焼用空気を供給する空気供給流路を設け、前記のように原料処理ガスを供給させない状態においても、この空気供給流路を通して燃焼用空気を供給して燃焼装置を冷却させることを特徴とする蓄熱式ガス処理装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓄熱式ガス処理装置の制御方法において、前記の蓄熱式ガス処理装置内の温度が所定温度以下になった場合に、原料処理ガスを燃焼処理させる前に、前記の送風ファンにより供給ダクトを通して支燃性気体を燃焼室内に導き、この燃焼室内において前記の燃焼装置による燃焼を行って、蓄熱式ガス処理装置内の温度を上昇させることを特徴とする蓄熱式ガス処理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱式ガス処理装置の制御方法に関するものである。特に、蓄熱体を収容させた蓄熱室が2室以上設けられ、各蓄熱室の一端側に燃焼装置を有する燃焼室が連通して設けられると共に、各蓄熱室の他端側にそれぞれ切換弁を介して供給ダクトと排気ダクトとが連通するように設けられ、送風ファンにより前記の供給ダクトを通して導かれた原料処理ガスを、前記の切換弁により一部の蓄熱室における蓄熱体を通して前記の燃焼室内に導き、この燃焼室内において原料処理ガスを燃焼処理する一方、処理された処理済ガスを他の蓄熱室に導いて、処理済ガスの熱をこの蓄熱室に収容された蓄熱体に蓄熱させた後、この処理済ガスを前記の切換弁により排気ダクトから排出させ、前記の切換弁を切り換えて、前記の操作を行う蓄熱室を順々に切り換える蓄熱式ガス処理装置において、原料処理ガスの燃焼処理が停止された待機時に、送風ファンを停止させると共に、前記の燃焼装置による燃焼を行わないようにした場合においても、燃焼室や各蓄熱室における蓄熱体の温度が大きく低下したり、蓄熱式ガス処理装置が局部的に過熱されて損傷したりすることがないようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
塗装工場や印刷工場から排出される排ガスには、有機溶剤、可塑剤、油分あるいは界面活性剤等の他、それらが熱分解して発生した高沸点、高分子のヤニ成分や、アンモニア、硫化水素、あるいはダイオキシン類等の有害成分が含有されている。このため、従来においては、前記のような有害成分を含む排ガスを燃焼処理し、前記の有害成分を加熱分解させて無害化させることが行われている。
【0003】
ここで、前記のような有害成分を含む排ガスを燃焼処理するにあたり、特許文献1〜3等に示されるように、蓄熱体を収容させた蓄熱室が2室以上設けられ、各蓄熱室の一端側に燃焼装置を有する燃焼室が連通して設けられると共に、各蓄熱室の他端側にそれぞれ切換弁を介して供給ダクトと排気ダクトとが連通するように設けられた蓄熱式ガス処理装置が用いられている。
【0004】
そして、このような蓄熱式ガス処理装置においては、前記の排ガスからなる原料処理ガスを送風ファンにより前記の供給ダクトを通して導き、この原料処理ガスを供給ダクトから前記の切換弁により一部の蓄熱室における蓄熱体を通して前記の燃焼室内に導き、この燃焼室内において前記の原料処理ガスを燃焼処理する一方、処理された処理済ガスを他の蓄熱室に導いて、処理済ガスの熱をこの蓄熱室に収容された蓄熱体に蓄熱させた後、この処理済ガスを前記の切換弁により排気ダクトから排出させ、前記の切換弁を切り換えて、前記の操作を行う蓄熱室を順々に切り換えるようにしている。
【0005】
ここで、前記のような蓄熱式ガス処理装置においては、工場での作業変更による準備期間や、昼休み等において、一時的に原料処理ガスが供給されなくなることがある。
【0006】
そして、このように原料処理ガスが蓄熱式ガス処理装置に供給されなくなり、原料処理ガスの燃焼を停止させるようにした待機時においては、燃焼室や各蓄熱室における蓄熱体の温度が大きく低下し、蓄熱式ガス処理装置を再稼働する際に、燃焼室や各蓄熱室における蓄熱体を所定の温度に上昇させるのに時間がかかるという問題があった。
【0007】
このため、従来においては、前記のような待機時において、送風ファンを作動させて、原料処理ガスの代わりに、空気等の支燃性気体を供給ダクトを通して導き、この支燃性気体を一部の蓄熱室における蓄熱体を通して燃焼室内に導き、前記の燃焼装置により燃焼を行って、この支燃性気体を燃焼室内において加熱させる一方、燃焼室内において加熱された支燃性気体の熱を他の蓄熱室に収容された蓄熱体に蓄熱させた後、この支燃性気体を排気ダクトから排出させるようにし、前記のように切換弁を切り換えて、このような操作を各蓄熱室において交互に行い、燃焼室や各蓄熱室における蓄熱体の温度が低下するのを防止することが行われていた。
【0008】
しかし、このように送風ファンにより供給ダクトを通して支燃性気体を導くためには、送風ファンを駆動させる電気が必要になり、また燃焼装置により支燃性気体を加熱させるためには燃料も必要になり、燃焼室や各蓄熱室における蓄熱体の温度が低下するのを防止するだけのために、電気や燃料を使用することは無駄が多く、コストが高く付くという問題があった。
【0009】
また、前記のような待機時において、燃焼装置による燃焼を停止させると共に送風ファンを停止させた状態で、燃焼室や各蓄熱室における蓄熱体の温度が低下するのを防止するため、各蓄熱室に対して供給ダクトや排気ダクトが連通される部分に設けた各切換弁を閉じるようにして、蓄熱式ガス処理装置を密封状態にすることが考えられる。
【0010】
ここで、前記の切換弁に、耐熱ダンパー式の切換弁や、複数の通気口が開口された回転板を回転させて開閉を切り換えるようにした回転式の切換弁等を用いた場合において、各蓄熱室と供給ダクトや排気ダクトが連通させる部分を完全に密封させることは困難であり、供給ダクトや排気ダクトにおけるドラフト効果等により、燃焼室や各蓄熱室に滞留している高温のガスが供給ダクトや排気ダクトに流れたり、供給ダクトや排気ダクトに滞留している低温のガスが各蓄熱室を通して燃焼室に流れたりする。
【0011】
そして、前記のように原料処理ガスの燃焼が停止された時点においては、通常、各蓄熱室における温度等が異なるため、待機時において、ガスが一方の蓄熱室から他方の蓄熱室に流れて、この他方の蓄熱室に収容された蓄熱体が過剰に加熱されたり、またこのように過剰に加熱された蓄熱体を通して、過剰に加熱されたガスが供給ダクトや排気ダクトに流れて、供給ダクトや排気ダクトが損傷したりする等の問題があった。
【0012】
なお、ここで用いる「ガス」というのは、待機中に蓄熱式ガス処理装置内に滞留している気体や、ドラフト効果等により、燃焼室や各蓄熱室に滞留している高温のガスが供給ダクトや排気ダクトに流れたり、内部から排出される気体の総称をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−304531号公報
【特許文献2】特開2001−349534号公報
【特許文献3】特開2013−200101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、蓄熱体を収容させた蓄熱室が2室以上設けられ、各蓄熱室の一端側に燃焼装置を有する燃焼室が連通して設けられると共に、各蓄熱室の他端側にそれぞれ切換弁を介して供給ダクトと排気ダクトとが連通するように設けられ、送風ファンにより前記の供給ダクトを通して導かれた原料処理ガスを、前記の切換弁により一部の蓄熱室における蓄熱体を通して前記の燃焼室内に導き、この燃焼室内において原料処理ガスを燃焼処理する一方、処理された処理済ガスを他の蓄熱室に導いて、処理済ガスの熱をこの蓄熱室に収容された蓄熱体に蓄熱させた後、この処理済ガスを前記の切換弁により排気ダクトから排出させ、前記の切換弁を切り換えて前記の操作を行う蓄熱室を順々に切り換える蓄熱式ガス処理装置において、原料処理ガスの燃焼処理が停止された待機時に、燃焼室や各蓄熱室における蓄熱体の温度が低下するのを防止する場合における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0015】
そして、本発明においては、前記のような蓄熱式ガス処理装置において、前記の待機時に、送風ファンを停止させると共に、燃焼装置による燃焼を行わないようにした場合においても、燃焼室や各蓄熱室における蓄熱体の温度が大きく低下したり、蓄熱式ガス処理装置が局部的に過熱されて損傷したりするのを適切に防止できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る蓄熱式ガス処理装置の制御方法においては、前記のような課題を解決するため、蓄熱体を収容させた蓄熱室が2室以上設けられ、各蓄熱室の一端側に燃焼装置を有する燃焼室が連通して設けられると共に、各蓄熱室の他端側にそれぞれ切換弁を介して供給ダクトと排気ダクトとが連通するように設けられ、送風ファンにより前記の供給ダクトを通して導かれた原料処理ガスを、前記の切換弁により一部の蓄熱室における蓄熱体を通して前記の燃焼室内に導き、この燃焼室内において原料処理ガスを燃焼処理する一方、処理された処理済ガスを他の蓄熱室に導いて、処理済ガスの熱をこの蓄熱室に収容された蓄熱体に蓄熱させた後、この処理済ガスを前記の切換弁により排気ダクトから排出させ、前記の切換弁を切り換えて、前記の操作を行う蓄熱室を順々に切り換える蓄熱式ガス処理装置において、原料処理ガスの燃焼処理が停止された待機時に、前記の送風ファンを停止させると共に、前記の燃焼装置による燃焼を行わないようにして、前記の切換弁を切り換えて、各蓄熱室を流れる気流の方向を切り換えるようにした。
【0017】
このように、原料処理ガスの燃焼処理が停止された待機時に、送風ファンを停止させると共に、燃焼装置による燃焼を行わないようにすると、送風ファンを駆動させる電気や、燃焼装置により支燃性気体を燃焼させるための燃料が必要なくなる。また、この状態で、前記のように切換弁を切り換えて、各蓄熱室を流れる気流の方向を切り換えるようにすると、各蓄熱室における蓄熱体に蓄熱された熱によって加熱された気流が燃焼室を通して各蓄熱室に交互に導かれ、このように蓄熱体において加熱された気流によって、燃焼室や各蓄熱室における蓄熱体の温度が低下したり、供給ダクトや排気ダクトが過剰に加熱されて損傷するのが抑制されるようになる。
【0018】
ここで、前記のように切換弁を切り換えて、各蓄熱室を流れる気流の方向を切り換え、蓄熱室における蓄熱体によって加熱された気流を、燃焼室を通して各蓄熱室に交互に導くようにした場合、この気流により燃焼装置が加熱されて損傷するおそれがあるため、前記の燃焼装置の周囲に燃焼用空気を供給する空気供給流路を設け、原料処理ガスを供給させない状態においても、この空気供給流路を通して燃焼用空気を供給して燃焼装置を冷却させることが好ましい。
【0019】
また、前記のように切換弁を切り換えて、各蓄熱室を流れる気流の方向を切り換え、蓄熱室における蓄熱体によって加熱された気流を、燃焼室を通して各蓄熱室に交互に導くようにした場合においても、燃焼室や各蓄熱室における蓄熱体の温度が次第に低下して、蓄熱式ガス処理装置を再稼働する際に時間がかかるようになる。このため、蓄熱式ガス処理装置内の温度が所定温度以下になった場合には、原料処理ガスを再び燃焼処理させる前に、前記の送風ファンにより供給ダクトを通して支燃性気体を燃焼室内に導き、この燃焼室内において前記の燃焼装置による燃焼を行って、蓄熱式ガス処理装置内の温度を上昇させるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る蓄熱式ガス処理装置の制御方法においては、前記のように原料処理ガスの燃焼処理が停止された待機時に、送風ファンを停止させると共に、燃焼装置による燃焼を行わないようにしたため、送風ファンを駆動させる電気や、燃焼装置により支燃性気体を燃焼させるための燃料が必要なくなり、電気や燃料が無駄に多く使用されて、コストが高く付くということがなくなる。
【0021】
また、この状態で、前記のように切換弁を切り換えて、各蓄熱室を流れる気流の方向を切り換えるようにすると、各蓄熱室における蓄熱体に蓄熱された熱によって加熱された気流が燃焼室を通して各蓄熱室に交互に導かれ、このように加熱された気流によって、燃焼室や各蓄熱室における蓄熱体の温度が低下するのが抑制されるようになり、蓄熱式ガス処理装置を再稼働する際に、燃焼室や各蓄熱室における蓄熱体を所定の温度を上昇させるのに要する時間が短縮されると共に、一の蓄熱室から他の蓄熱室に向けてガスが一方向に流れるということがなく、一方の蓄熱室に収容された蓄熱体が過剰に加熱されたり、またこのように過剰に加熱された蓄熱体を通して過剰に加熱されたガスが、供給ダクトや排気ダクトに流れて、供給ダクトや排気ダクトが損傷したりということもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蓄熱式ガス処理装置の制御方法において使用した蓄熱式ガス処理装置の概略説明図である。
【
図2】前記の実施形態に用いた蓄熱式ガス処理装置において、原料処理ガスを導く蓄熱室を交互に切り換えて、原料処理ガスを蓄熱室から燃焼室に導いて燃焼処理する状態を示し、(A)は原料処理ガスを一方の蓄熱室から燃焼室に導いて燃焼処理する状態を示した概略説明図、(B)は原料処理ガスを他方の蓄熱室から燃焼室に導いて燃焼処理する状態を示した概略説明図である。
【
図3】前記の実施形態において、原料処理ガスの燃焼処理が停止された待機時に、送風ファンを停止させると共に、燃焼装置による燃焼を行わないようにして、各蓄熱室に供給ダクトと排気ダクトとが連通させる各連通部に設けられた各切換弁の開閉を交互に切り換える状態を示し、(A)は蓄熱式ガス処理装置内においてガスが一方の蓄熱室から燃焼室を通して他方の蓄熱室に導かれる状態を示した概略説明図、(B)はガスが他方の蓄熱室から燃焼室を通して一方の蓄熱室に導かれる状態を示した概略説明図である。
【
図4】前記の実施形態において、原料処理ガスの燃焼処理が停止された待機時に、空気供給流路を通して燃焼用空気を燃焼装置の周囲に供給し、この燃焼用空気によって燃焼装置を冷却させる状態を示した概略説明図である。
【
図5】前記の実施形態において、蓄熱式ガス処理装置を再稼働させる前に、前記の各切換弁の開閉を切り換えて、支燃性気体供給ダクトから供給された支燃性気体を各蓄熱室を通して燃焼室に導くと共に、前記の燃焼装置に燃料ガスを供給させて燃焼室において燃焼を行い、燃焼室及び各蓄熱室における蓄熱体を加熱させる状態を示し、(A)は支燃性気体を一方の蓄熱室から燃焼室に導いて燃焼させる状態を示した概略説明図、(B)は支燃性気体を他方の蓄熱室から燃焼室に導いて燃焼させる状態を示した概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る蓄熱式ガス処理装置の制御方法を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る蓄熱式ガス処理装置の制御方法は下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0024】
この実施形態に使用する蓄熱式ガス処理装置10においては、
図1に示すように、それぞれ蓄熱体Sを内蔵した2つの蓄熱室11、12を設け、この2つの蓄熱室11、12の上側に、バーナーからなる燃焼装置13が設けられた燃焼室14を、これらの蓄熱室11、12と連通するように設けている。そして、前記の燃焼装置13に燃料ガスを供給する燃料ガス供給管13aを接続させると共に、燃焼装置13の周囲に燃焼用空気を供給する空気供給流路13bを設けている。
【0025】
また、この2つの蓄熱室11、12の下側に、供給ダクト15と排気ダクト16とを設けている。そして、前記の供給ダクト15には、各蓄熱室11、12に連通させる連通部15a,15bを設けると共に、各連通部15a,15bの内部にそれぞれこれらの開閉を行うダンパー式の切換弁17a,17bを設けている。また、前記の排気ダクト16にも、各蓄熱室11、12に連通させる連通部16a,16bを設けると共に、各連通部16a,16bの内部にそれぞれこれらの開閉を行うダンパー式の切換弁18a,18bを設けている。
【0026】
また、前記の供給ダクト15には、前記の各蓄熱室11、12に原料処理ガスや支燃性気体である空気を供給するための送風ファン20を接続させると共に、この送風ファン20に、原料処理ガスを供給する原料処理ガス供給ダクト21と、支燃性気体である空気を供給する支燃性気体供給ダクト22とを接続させ、さらに前記の原料処理ガス供給ダクト21に調整弁21aを設けると共に、前記の支燃性気体供給ダクト22に調整弁22aを設けている。
【0027】
ここで、前記の蓄熱式ガス処理装置10において、原料処理ガスを燃焼処理するにあたっては、
図2(A),(B)に示すように、前記の原料処理ガス供給ダクト21に設けられた調整弁21aを開け、前記の送風ファン20により原料処理ガス供給ダクト21を通して原料処理ガスを供給ダクト15に導くようにする。なお、
図2(A),(B)においては、支燃性気体供給ダクト22に設けられた調整弁22aを閉じて、支燃性気体供給ダクト22から支燃性気体が供給されないようにしているが、原料処理ガス供給ダクト21を通して供給される原料処理ガスの風量等に応じて、前記の調整弁22aにより支燃性気体供給ダクト22を通して供給させる支燃性気体の量を調整することができる。
【0028】
ここで、
図2(A)に示す場合、一方の蓄熱室11においては、前記の供給ダクト15に連通された連通部15aに設けられている切換弁17aを開ける一方、前記の排気ダクト16に連通された連通部16aに設けられている切換弁18aを閉じるようにしている。また、他方の蓄熱室12においては、前記の供給ダクト15に連通された連通部15bに設けられている切換弁17bを閉じる一方、前記の排気ダクト16に連通された連通部16bに設けられている切換弁18bを開けるようにしている。
【0029】
そして、前記のように供給ダクト15に導かれた原料処理ガスを、前記の連通部15aを通して一方の蓄熱室11内に導き、この蓄熱室11に収容された蓄熱済みの蓄熱体Sにより前記の原料処理ガスを加熱させて燃焼室14に導き、この燃焼室14において前記の原料処理ガスを燃焼処理させるようにする。なお、燃焼室14の温度が低くて、燃焼室14に導かれた原料処理ガスが自燃しない場合には、前記の燃焼装置13に燃料ガス供給管13aを通して燃料ガスを供給すると共に、この燃焼装置13の周囲に設けられた空気供給流路13bを通して燃焼用空気を供給し、この燃焼装置13により燃料ガスを燃焼させて、燃焼室14内を原料処理ガスが自燃する温度に上昇させて、前記の原料処理ガスを燃焼室14内において燃焼させるようにする。
【0030】
また、このように燃焼室14において燃焼処理された処理済ガスを他方の蓄熱室12に導いて、処理済ガスの熱をこの蓄熱室12に収容された蓄熱体Sに蓄熱させた後、この処理済ガスを排気ダクト16に連通された連通部16bを通して排気ダクト16に導き、このように排気ダクト16に導かれた処理済ガスを前記の排気塔23を通して排気させるようにする。
【0031】
次いで、
図2(B)に示すように、前記の各連通部15a,15b、16a,16bに設けられた各切換弁17a,17b、18a,18bの開閉を切り換え、供給ダクト15に導かれた原料処理ガスを、前記の連通部15bを通して他方の蓄熱室12内に導き、この蓄熱室12に収容された蓄熱済みの蓄熱体Sにより前記の原料処理ガスを加熱させて燃焼室14に導き、この燃焼室14において前記の原料処理ガスを燃焼処理させるようにする。その後、燃焼処理された処理済ガスを一方の蓄熱室11に導いて、処理済ガスの熱をこの蓄熱室11に収容された蓄熱体Sにを蓄熱させた後、この処理済ガスを排気ダクト16に連通された連通部16aを通して排気ダクト16に導き、このように排気ダクト16に導かれた処理済ガスを前記の排気塔23を通して排気させるようにする。
【0032】
そして、
図2(A),(B)に示すように、前記の各連通部15a,15b、16a,16bに設けられた各切換弁17a,17b、18a,18bの開閉を交互に切り換えて、原料処理ガスを燃焼処理する動作を繰り返して行うようにする。
【0033】
ここで、工場での作業変更による準備期間や、昼休み等において、蓄熱式ガス処理装置10に一時的に原料処理ガスが供給されなくなることがある。
【0034】
そして、このように蓄熱式ガス処理装置10に一時的に原料処理ガスが供給されなくなり、蓄熱式ガス処理装置10において原料処理ガスの燃焼処理が停止される待機状態においては、
図3(A),(B)に示すように、前記の送風ファン20を停止させ、原料処理ガス供給ダクト21に設けられた前記の調整弁21aを閉じると共に、前記の燃焼装置13による燃焼を行わないようにし、この状態で、前記の各連通部15a,15b、16a,16bに設けられた各切換弁17a,17b、18a,18bの開閉を交互に切り換えるようにする。
【0035】
ここで、
図3(A)に示すように、一方の蓄熱室11において、供給ダクト15に連通された連通部15aに設けられている切換弁17aを開ける一方、排気ダクト16に連通された連通部16aに設けられている切換弁18aを閉じるようにし、また他方の蓄熱室12において、供給ダクト15に連通された連通部15bに設けられた切換弁17bを閉じる一方、排気ダクト16と連通させる連通部16bに設けられている切換弁18bを開けるようにすると、ドラフト効果等によって、蓄熱式ガス処理装置10内を流れる僅かなガスが一方の蓄熱室11における蓄熱体Sを通して燃焼室14に導かれ、このガスが燃焼室14が他方の蓄熱室12における蓄熱体Sに導かれるようになる。
【0036】
そして、
図3(B)に示すように、前記の各連通部15a,15b、16a,16bに設けられた各切換弁17a,17b、18a,18bの開閉を切り換えて、他方の蓄熱室12においては、供給ダクト15に連通された連通部15bに設けられている切換弁17bを開ける一方、排気ダクト16に連通された連通部16bに設けられている切換弁18bを閉じるようにし、また一方の蓄熱室11において、供給ダクト15に連通された連通部15aに設けられている切換弁17aを閉じる一方、排気ダクト16に連通された連通部16aに設けられている切換弁18aを開けるようにする。このようにすると、供給ダクト15におけるガスが他方の蓄熱室12における蓄熱体Sを通して燃焼室14に導かれ、このガスが一方の蓄熱室11における蓄熱体Sに導かれるようになる。
【0037】
このように、蓄熱式ガス処理装置10内を流れる僅かなガスが、燃焼室14を通して一方の蓄熱室11と他方の蓄熱室12との間において交互に流れると共に、流れるガスにおける熱が各蓄熱室11、12における蓄熱体Sに交互に蓄熱されるため、燃焼室14や各蓄熱室11、12における蓄熱体Sの温度が大きく低下するのが抑制されるようになる。
【0038】
この結果、蓄熱式ガス処理装置10を再稼働する際に、燃焼室14や各蓄熱室11、12における蓄熱体Sを、ガス処理が可能となる温度まで上昇させるのに要する時間が短縮されて、蓄熱式ガス処理装置10を再稼働させるまでの時間を短縮できるようになる。
【0039】
また、前記のようにガスが一方の蓄熱室11と他方の蓄熱室12との間において交互に流れるため、ガスが一方向に流れて、一方の蓄熱室11と他方の蓄熱室12との何れか一方における蓄熱体Sが過剰に加熱されたり、またこのように過剰に加熱された蓄熱体Sによって過剰に加熱されたガスが、供給ダクト15や排気ダクト16に流れて、供給ダクト15や排気ダクト16が損傷したりするのも防止されるようになる。
【0040】
なお、前記のようにガスが燃焼室14を通して一方の蓄熱室11と他方の蓄熱室12との間において交互に流れ、燃焼室14に設けられた前記の燃焼装置13のノズル部分が流れるガスの熱によって変形したりするおそれがある場合には、
図4に示すように、前記の空気供給流路13bを通して燃焼用空気を燃焼装置13の周囲に供給し、この燃焼用空気によって燃焼装置13を冷却させるようにすることができる。
【0041】
また、前記のように蓄熱式ガス処理装置10に原料処理ガスが供給されず、原料処理ガスを燃焼させない蓄熱式ガス処理装置10の待機時間が長くなり、燃焼室14や各蓄熱室11、12における蓄熱体Sの温度が所定温度以下になった場合においては、原料処理ガスが供給されて蓄熱式ガス処理装置10が再稼働される時間が判明すると、
図5(A),(B)に示すように、前記の支燃性気体供給ダクト22に設けられた調整弁22aを開けて、送風ファン20により支燃性気体供給ダクト22から支燃性気体を供給ダクト15に導き、前記のように各連通部15a,15b、16a,16bに設けられた各切換弁17a,17b、18a,18bの開閉を切り換え、供給ダクト15に導かれた支燃性気体を何れか一方の蓄熱室11、12における蓄熱体Sを通して燃焼室14に導くと共に、前記の燃焼装置13に、前記の燃料ガス供給管13aから燃料ガスと、空気供給流路13bから燃焼用空気とを供給させて、燃料ガスを燃焼室14において燃焼させるようにする。
【0042】
その後、このように燃焼された後の燃焼ガスの熱を他方の蓄熱室12、11における蓄熱体Sに蓄熱させて排気ダクト16を通して排気させるようにする。
【0043】
そして、このような操作を繰り返して行い、燃焼室14及び各蓄熱室11、12における蓄熱体Sをガス処理が可能となる所定の温度まで加熱させ、この状態で、蓄熱式ガス処理装置10を再稼働させて、原料処理ガスを燃焼処理させるようにする。また、前記のような操作を行った場合に、燃焼室14や各蓄熱室11、12における蓄熱体Sの温度が上昇する割合を予め求めておき、これに基づいて、蓄熱式ガス処理装置10を再稼働させる前に、このような操作を開始する時間を設定することもできる。このようにすると、再稼働させる時間になれば、すぐに原料処理ガスを処理することができるようになる。
【0044】
なお、この実施形態においては、蓄熱式ガス処理装置10として、2つの蓄熱室11,12が設けられたものを例にして説明したが、さらに多くの蓄熱室が設けられた蓄熱式ガス処理装置を用いることもできる。
【0045】
さらに、前記の各連通部15a,15b、16a,16bに設ける各切換弁17a,17b、18a,18bの種類も、前記のようなダンパー式のものに限定されず、例えば、図示していないが、複数の通気口が開口された回転板を回転させて開閉を切り換えるようにした回転式の切換弁を用いるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0046】
10 :蓄熱式ガス処理装置
11、12 :蓄熱室
13 :燃焼装置
13a :燃料ガス供給管
13b :空気供給流路
14 :燃焼室
15 :供給ダクト
15a、15b :連通部
16 :排気ダクト
16a、16b :連通部
17a、17b :切換弁
18a、18b :切換弁
20 :送風ファン
21 :原料処理ガス供給ダクト
21a :調整弁
22 :支燃性気体供給ダクト
22a :調整弁
23 :排気塔
S :蓄熱体