(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-206103(P2016-206103A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】回転速度測定装置
(51)【国際特許分類】
G01P 3/44 20060101AFI20161111BHJP
G01P 3/64 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
G01P3/44 Z
G01P3/64 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-90455(P2015-90455)
(22)【出願日】2015年4月27日
(71)【出願人】
【識別番号】507086424
【氏名又は名称】株式会社トップランナー
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅聖
(57)【要約】
【課題】低コストの、及び故障しにくい回転速度測定装置を提供すること。
【解決手段】前記回転体の回転速度を測定する回転速度測定装置であって、ケーシングと、該ケーシングに枢支される回転体と、該回転体と一体に回転するピニオンギアと、前記ピニオンギアに噛合するラックと複数の識別部とが形成されたベルトと、前記ケーシングに取り付けられた前記識別部の通過を検知する検知部とを有し、前記検知部からの出力信号を用いて一の前記識別部から他の前記識別部への移動所要時間を計測することにより前記回転体の回転速度を測定することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、該ケーシングに枢支される回転体と、該回転体と一体に回転するピニオンギアと、前記ピニオンギアに噛合するラックと複数の識別部とが形成されたベルトと、前記ケーシングに取り付けられた前記識別部の通過を検知する検知部とを有し、
前記検知部からの出力信号を用いて一の前記識別部から他の前記識別部への移動所要時間を計測することにより、前記回転体の回転速度を測定することを特徴とする回転速度測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転速度測定装置であって、
前記識別部は前記ベルトに形成される突起もしくは切り欠きであり、前記探知部は前記突起もしくは切り欠きにより作動する接触スイッチであることを特徴とする回転速度測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の回転速度測定装置であって、
前記ベルトに形成される前記突起もしくは切り欠きは、前記ラックの形成された面に対していずれかの側面に形成されていることを特徴とする回転速度測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載の回転速度測定装置であって、
前記回転体はコマを回転させることを特徴とする回転速度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトとピニオンギアを使って回転体を回転させる際に、回転体の回転速度を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コマなどの回転玩具などの回転速度を測定する場合は、コマに回転駆動力を与える駆動ドラムやコマそのものの側面に設けられた印を目印に、フォトセンサでこの印を読み取って、タイマーを有する演算装置が単位時間あたりの回転数を計算していた。この種の一般的な回転速度の測定装置はエンコーダとして次のような技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−24793
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フォトセンサ及び演算装置を用いた回転速度測定装置を用いると、玩具の製造コストが高くなり、また、これらを手荒に扱われる玩具に組み込むことで故障などが起きやすいという課題があった。
【0005】
一方で、コマを駆動ドラムを有するランチャに装着し、この駆動ドラムをワインダと呼ばれるベルトを使って回転させ、コマを一定領域で衝突させて競わせるコマ玩具が人気を博している。この玩具においては、駆動ドラムに同軸のピニオンギアを取り付け、このピニオンギアに、ベルト表面に形成したラックを噛合させ、ベルトを手動で引っ張ることで駆動ドラムを回転させる構造となっている。
【0006】
ここで、この機構において、ピニオンギアの歯とラックの歯のピッチはそれぞれ全周囲に亘って一定であるという性質を有する。
【0007】
本発明は、フォトセンサを用いることなく、低コストでかつ故障しにくい回転体の回転速度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の代表的な構成は、ケーシングと、該ケーシングに枢支される回転体と、該回転体と一体に回転するピニオンギアと、前記ピニオンギアに噛合するラックと複数の識別部とが形成されたベルトと、前記ケーシングに取り付けられた前記識別部の通過を検知する検知部とを有し、前記検知部からの出力信号を用いて一の前記識別部から他の前記識別部への移動所要時間を計測することにより、前記回転体の回転速度を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ベルトに形成された複数の識別部間の移動時間を測定することで、フォトセンサを用いることなく、簡単に回転体の回転速度を測定する装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態のコマ玩具一式の構成図である。
【
図2】本発明の実施形態のランチャの内部構造を示す、上蓋を取った状態の平面図である。
【
図3】(a)及び(b)は本発明の実施形態のランチャの内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について以下に説明する。本実施形態は、コマ玩具に用いたものである。
【0012】
図1に、本実施形態に係るコマ玩具1の構成を示す。このコマ玩具1は、コマ2を、ランチャ3のケーシング31外に露出する回転ホルダ32に装着し、操作者がこのランチャ3に通したワインダ(ベルト)4を引っ張ることで回転ホルダ32とともにコマ2を回転させる。
【0013】
そして、ワインダ4がランチャ3から引き抜かれると、後述する機構により回転ホルダ32の回転が停止し、慣性により回転を続けるコマ2が回転ホルダ32の傾斜面32aに沿って押し出されることで、コマ2と回転ホルダ32との係合が解除されて回転するコマ2が落下する構造となっている。
【0014】
本実施形態において、スマートフォン11をデータ加工ならびに表示装置として利用している。ランチャ3の側面には、外部出力端子33が設けられており、コードを介して接続することにより、競技者がランチャ3で行ったコマ2の操作記録をスマートフォン11に伝達する構造となっている。
【0015】
図2に、本実施形態のランチャの、上蓋を取った状態の内部構造を示す平面図を示す。また、
図3(a)(b)は、それぞれ同ランチャの側断面図を示す。
【0016】
ランチャ3のケーシング31内には、側面に段差34aが形成された駆動ドラム34と、同様に側面に均等にピニオン歯35aが形成されたピニオンギア35とが回転軸31bに同軸、一体に固定されている。さらに回転軸31bはケーシング31外へ突出して上述した回転ホルダ32が固定されて、一体として回転体が構成されている。
【0017】
また、このケーシング31には左右側面にワインダ4を通過させる開口部31a、31bが形成されている。開口部31aには後述する接触スイッチ37を取り付けている。
【0018】
駆動ドラム34に隣接して、枢支軸36aに枢支されたストッパー36を配置している。このストッパー36は、コイルスプリング36bの付勢によりブレード36cをワインダ4に押し付けている。そして、ワインダ4が引き抜かれた際には、ブレード36cがコイルスプリング36bにより回動し、その一部が駆動ドラム34の側面に形成された段差34aに係合して、駆動ドラム34及び回転ホルダ32の回転を止めるラッチ構造が構成されている。
【0019】
ワインダ4は、ベルト部4aと一端に形成されたハンドル部4bとから構成される。ベルト部4aは平たく、一方の平面に所定間隔でラック歯4cが形成されている。ワインダ4をケーシング31に通すことにより、ラック歯4cはピニオンギア35のピニオン歯35aに噛合し、ワインダ4を競技者がケーシング31から引き抜いた際に、ピニオンギア35を回転させ、回転ホルダ32を介してコマ2に回転力を与えることとなる。
【0020】
なお、ワインダ4のラック歯4cは溝4d内に形成されており、溝幅がピニオンギア35のピニオン歯35aの幅と同じに設定することで、ベルト部4aが移動する際に蛇行することはない。
【0021】
ワインダ4の一方の側面には、識別部たる複数の突起4e1〜4e4が形成されている。それぞれの突起4e1〜4e4間の区間L1〜L3は等距離に設定され、その間に形勢されるラック歯4cの数は同数に設定されている。突起4e1〜4e4は、ワインダ4がケーシング31の開口部31aを通過する際、接触スイッチ37を作動させてそれぞれの通過が感知される。
【0022】
開口部31aに取り付けられた接触スイッチ37は、接触子37aを有し、この接触子37aを押圧し、もしくは押圧を解除した場合に信号を出力する検知部となっている。この接触スイッチ37からの信号は、タイマー付メモリ38に時間情報とともに記録され、前述した外部出力端子33から外部のスマートフォン11のような情報処理及び表示機器に出力される。
【0023】
次に、上記構造を有するコマ玩具の作動について説明する。
【0024】
図3(a)に示すように、まず、競技者はワインダ4をランチャ3に挿通し、準備を行う。この状態にあっては、ワインダ4のハンドル部4bの近傍の突起4e1が接触スイッチ37の接触子37aを押圧している。
【0025】
次に、同図(b)に示すように、競技者がワインダ4を引っ張ると、突起4e1が接触スイッチ37から外れて、接触子37aが起立する。この時、接触スイッチ37から発せられる信号により、タイマー付メモリ38は時間カウントを開始し、次の突起4e2が接触スイッチ37の接触子37aを押圧するまでの時間を測定する。
【0026】
そして、さらにワインダ4が移動し、それぞれの突起4e2〜4e4が接触スイッチ37を通過する毎に、この接触スイッチ37は信号を出力し、タイマー付メモリ38において突起4e2〜4e4それぞれの通過時間を記録し、タイマー付メモリ38または外部演算装置が区間L1〜L3それぞれの移動所要時間を算出する。
【0027】
ここで、前述の通り、突起4e1〜4e4間のラック歯4cの数とピニオンギア35のピニオン歯35aの全周の歯数は予め設定した所定比率になっている。したがって、各突起間のラック歯数をA、ピニオンギアの全周囲の歯数をB、そして各区間L1〜L3の通過所要時間をt(sec)とすれば、次の式によって、毎分当たりの回転速度N(rpm)を簡単に求めることができる。
【0028】
N(rpm)=(B/(A×t(sec)))×60・・・(式1)
【0029】
なお、競技者がピニオンギア35を径の大きい、または小さい部品にカスタマイズできる場合は、ピニオン歯の数が変わってくるため、数値Aを変更して計算を行う。一方、ピニオンギア35を置換しない場合は数値AおよびBは不変値なので、その比率R=A/Bを登録しておけば、次の式を用いて、より簡易に回転速度Nを求めることができる。
【0030】
N(rpm)=R/t(sec)×60・・・(式2)
【0031】
また、この回転速度は各区間L1〜L3毎の数値N1〜N3を測定できるので、これら回転速度N1〜N3の増減に注目することで、加速度を計算することもできる。また、計算に用いる各突起4e1〜4e4の選択は任意であり、例えば第1突起4e1と最終の第4突起4e4の通過タイムを使えば、全区間の平均回転数を算出することもできる。
【0032】
なお、突起4e1〜4e4の通過時間データを一旦タイマ付メモリ38に記憶し、競技終了後にスマートフォン11などの外部演算装置に出力して、これら回転速度Nの演算結果を表示する。
【0033】
以上、本実施形態の回転速度測定装置によれば、ワインダ4の複数の突起の通過を検知し、その間の通過所要時間を計測することで、簡単に回転体の回転速度を測定することができる。特に本実施形態においては、識別部を突起とし、検知部を接触スイッチとして、装置を簡単な構造で構成したため、製造コストを安価とすることができ、また複雑な機能を有さないので故障しにくいという効果も有する。
【0034】
また、ベルト部に形成するラックと突起を平面と側面という、ベルト部のそれぞれ違う面に設けたために、両者が干渉することなく別の機能を発揮することができる。さらに、ラックをベルトに形成した溝内に形成したために、ラックに噛合するピニオンギアが溝の両壁を規制し、ベルトの水平方向の蛇行を防止し、突起と接触スイッチとの接触を円滑に行うことができる。
【0035】
なお、本実施形態では4つの突起を設け、回転速度の測定区間を3つ形成したが、識別部としての突起は少なくとも1つの測定区間を認識できる2つがあればよい。また、識別部として突起ではなく、孔を含む切り欠きとて、接触スイッチを作動させる構成であってもよい。さらに、識別部と検知部をベルトの凹凸形状と接触スイッチで構成したが、本発明はこれに限られることなく、例えば磁石と磁気センサなどで構成してもよい。
【0036】
また、本実施形態ではピニオンギアと回転体たる駆動ドラムとを別部材としたが、もちろん駆動ドラムの周面にピニオン歯を設けるなどしてピニオンギアと回転体とを一体に構成してもよい。さらに、タイマー付メモリは、本発明において必須の構成要件ではなく、式1、式2などの演算処理は、常時外部出力端子を介して接続されるスマートフォンなどの外部の演算装置で行っても良い。また、反対に、タイマー付メモリとともに、演算結果の表示装置として、ランチャのケーシング外面に液晶板を設けることもできる。さらに、ランチャに通信装置を搭載すれば、ワイヤ接続することなく外部演算装置または外部表示装置との間で、リアルタイムで情報処理を行うこともできる。
【0037】
また、コマ玩具は、実際に実体あるコマを回転させて競技する玩具である必要はなく、コマをダミーとして、得られた回転速度データ等を演算装置またはネットワーク内の仮想空間中のゲームで用いる入力装置として利用してもよい。本実施形態では、本発明をコマ玩具に応用したが、ラックとピニオンギアを使用する構造であれば、これに限らず応用することができ、例えば竹とんぼ玩具やエンジンスターターなどにも利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 コマ玩具
2 コマ
3 ランチャ
4 ワインダ(ベルト)
4a ベルト部
4b ハンドル部
4c ラック歯(ラック)
4e1〜4e4 突起(識別部)
11 スマートフォン(外部演算装置及び外部表示装置)
31 ケーシング
33 外部出力端子
34 駆動ドラム(回転体)
35 ピニオンギア
35a ピニオン歯
37 接触スイッチ(検知部)
38 タイマー付メモリ