特開2016-206793(P2016-206793A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-206793(P2016-206793A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】積分系プロセス動特性自動同定装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 13/02 20060101AFI20161111BHJP
【FI】
   G05B13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-85197(P2015-85197)
(22)【出願日】2015年4月17日
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】衛 ▲しん▼
【テーマコード(参考)】
5H004
【Fターム(参考)】
5H004GA14
5H004GA40
5H004GB04
5H004HA03
5H004HB03
5H004JB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】積分要素を含む伝達関数で表わされるプロセスの過去運転データからステップ応答試験と近似するデータを探し出して、プロセスの動特性を同定する。
【解決手段】プロセスの過去の入出力実データから抽出された一部期間のデータのうち、所定間隔の時刻と入力値との関係を定めた入力実データから、時刻毎の入力値の変化量ΔMVを算出し、最大のΔMVが得られた時刻Mtの直前の所定時刻範囲および直後の所定時刻範囲における入力値の変化幅が、最大のΔMVよりも小さい許容変化幅以下である場合に、入力実データをステップ入力と判定する。ステップ入力と判定される場合に、出力実データから、過渡期間の間に変化した期間出力変化量とを取得し、伝達関数のパラメータを算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積分要素を含む伝達関数で表わされるプロセスの動特性を同定する積分系プロセス動特性自動同定装置であって、
前記プロセスの過去の入出力実データから抽出された一部期間のデータのうち、所定間隔の時刻と入力値との関係を定めた入力実データから、時刻毎の入力値の変化量ΔMVを算出し、最大入力変化量ΔMVmaxが得られた時刻Mtの直前の所定時刻範囲および直後の所定時刻範囲における入力値の変化幅が、前記最大入力変化量ΔMVmaxよりも小さい許容変化幅以下である場合に、前記入力実データをステップ入力と判定するステップ入力判定手段と、
前記入力実データがステップ入力と判定される場合に、前記一部期間のデータのうち前記所定間隔の時刻と出力値との関係を定めた出力実データから、時刻毎の出力値の変化量ΔPVを算出し、最大出力変化量ΔPVmaxが得られた時刻の直前および直後の期間であって変化量ΔPVが前記最大出力変化量ΔPVmaxよりも小さい基準量以上である過渡期間Δtと、前記過渡期間Δtの間に変化した期間出力変化量ΔPV(V)とを取得するステップ応答取得手段と、
前記最大入力変化量ΔMVmax、前記期間出力変化量ΔPV(V)、前記過渡期間Δt、前記過渡期間Δtの開始時刻Pt、前記時刻Mtに基づいて、前記伝達関数のパラメータを算出する動特性自動計算手段と、
を備えることを特徴とする積分系プロセス動特性自動同定装置。
【請求項2】
前記伝達関数は、パラメータとしてゲインK、無駄時間L、積分時間Tを含む以下の伝達関数G(s)で表わされ、ここで、前記ゲインKはK=ΔPV(V)/ΔMVmax、前記無駄時間LはL=Pt−Mt、前記積分時間TはT=ΔPV(V)/Δtであることを特徴とする請求項1に記載の積分系プロセス動特性自動同定装置。
【数1】
【請求項3】
前記ステップ入力判定手段において前記入力実データがステップ入力と判定されない場合に、前記過去の入出力実データから前記一部期間のデータとは異なる一部期間のデータを抽出し、再度前記ステップ入力判定手段を実行する手段、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の積分系プロセス動特性自動同定装置。
【請求項4】
前記許容変化幅は、前記入力実データにおける最大の入力値の20%から40%までの間の所定幅であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積分系プロセス動特性自動同定装置。
【請求項5】
前記基準量は、前記最大出力変化量ΔPVmaxの4分の1以上から半分以下までの間の所定量であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積分系プロセス動特性自動同定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積分要素を含む伝達関数で表わされるプロセスの動特性を同定する積分系プロセス動特性自動同定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロセスの制御において、コストダウン、生産の効率化、環境への負荷軽減などの様々な視点から、制御性能の最適化が追求されている。最適なプロセスの制御を実現する手法として、PIDパラメータチューニングを最適化する新しい制御アルゴリズムIMC(内部モデルコントローラ)やMD−PID(モデル駆動PID)が注目されている。
【0003】
プロセスを正しく制御するためには、そのプロセスの動特性に関する正しい知識が必要である。そのためプロセスの動特性推定という問題が自動制御における重要な一分野となっている。プロセスの動特性とは、プロセスへ出・入りする入力と出力の関係、すなわち時間的に変化する二変数の関連をいう。この特性を調べるため、入力として階段状に変化するステップ入力をプロセスに加え、その出力、すなわちステップ応答を求めることが行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−255932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、プロセスの動特性を求めることは制御系のスペシャリスト頼りであり、現場でステップ応答試験を行っていた。ステップ応答試験は、入力値である操作値MV(Manipulate Value)を変化させ、出力値である応答値PV(Process Value)の変化を計測し、プロセスの動特性を表現する伝達関数のパラメータ(ゲインK、無駄時間L、時定数T)を求める手段である。
【0006】
また、プラントの運転状態は不変ではなく、時間によりプロセスの動特性も変化する。プラントの制御を最適に保つためには、頻繁にステップ応答試験を行う必要がある。
【0007】
しかしながら、ステップ応答データの取得と、プロセスの動特性の決定には、次のような問題がある。
操業上の観点から、
(1)ステップ応答試験は、プラントの操業に影響を与えるため、頻繁に試験を実施することは難しい。
(2)無駄時間や整定時間(出力が定常値の許容誤差範囲内に達するまでの時間)が長いプロセス制御系では応答データの取得に時間がかかるため、プラントの操業に影響を与える。
(3)プラントの安全操業問題により、ステップ応答試験を実施することが出来ないケースも多い。
また、人的な観点から、
(4)24時間連続運転の過去運転データから人間が目視でステップ応答と近似しているデータを捉えることは現実的ではない。
(5)ステップ応答試験の応答データからパラメータ(プロセス定数)を決定するに際し、個人の技量によって精度にバラツキが生じる。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、プロセスの過去運転データからステップ応答試験と近似するデータを探し出して、プロセスの動特性を同定することのできる積分系プロセス動特性自動同定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係る積分系プロセス動特性自動同定装置は以下のように構成される。
【0010】
本発明に係る積分系プロセス動特性自動同定装置は、積分要素を含む伝達関数で表わされるプロセスの動特性を同定するように構成される。
【0011】
本発明に係る積分系プロセス動特性自動同定装置は、ステップ入力判定手段、ステップ応答取得手段、動特性自動計算手段を備える。
【0012】
ステップ入力判定手段は、プロセスの過去の入出力実データから抽出された一部期間のデータのうち、所定間隔の時刻と入力値との関係を定めた入力実データから、時刻毎の入力値の変化量ΔMVを算出する。さらに、ステップ入力判定手段は、最大入力変化量ΔMVmaxが得られた時刻Mtの直前の所定時刻範囲および直後の所定時刻範囲における入力値の変化幅が、最大入力変化量ΔMVmaxよりも小さい許容変化幅以下である場合に、入力実データをステップ入力と判定する。
【0013】
好ましくは、ステップ入力判定手段において前記入力実データがステップ入力と判定されない場合に、過去の入出力実データから上述の一部期間のデータとは異なる一部期間のデータを抽出し、再度ステップ入力判定手段を実行する。
【0014】
好ましくは、上述の許容変化幅は、入力実データにおける最大の入力値の20%から40%までの間の所定幅に設定される。
【0015】
ステップ応答取得手段は、入力実データがステップ入力と判定される場合に、一部期間のデータのうち所定間隔の時刻と出力値との関係を定めた出力実データから、時刻毎の出力値の変化量ΔPVを算出する。さらに、ステップ応答取得手段は、最大出力変化量ΔPVmaxが得られた時刻の直前および直後の期間であって変化量ΔPVが最大出力変化量ΔPVmaxよりも小さい基準量以上である過渡期間Δtと、過渡期間Δtの間に変化した期間出力変化量ΔPV(V)とを取得する。
【0016】
好ましくは、上述の基準量は、最大出力変化量ΔPVmaxの4分の1以上から半分以下までの間の所定量に設定される。
【0017】
動特性自動計算手段は、最大入力変化量ΔMVmax、期間出力変化量ΔPV(V)、過渡期間Δt、過渡期間Δtの開始時刻Pt、時刻Mtに基づいて、伝達関数のパラメータを算出する。
【0018】
好ましくは、伝達関数は、パラメータとしてゲインK、無駄時間L、積分時間Tを含む以下の伝達関数G(s)で表わされ、ここで、ゲインKはK=ΔPV(V)/ΔMVmax、無駄時間LはL=Pt−Mt、積分時間TはT=ΔPV(V)/Δtである。
【0019】
【数1】
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る積分系プロセス動特性自動同定装置によれば、プロセスの過去運転データからステップ応答試験と近似する入力実データと出力実データを探し出して、プロセスの動特性を自動的に同定することができる。逐次蓄えられる過去運転データを用いてプロセスの動特性を自動的に同定できるため、ステップ応答試験の実施も不要である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態1に係る積分系プロセス動特性同定装置の処理フローを説明するための図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るステップ信号検索フィルター3の動作の一例を説明するための図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る応答信号検索フィルター4の動作の一例を説明するための図である。
図4】ステップ信号検索フィルター3と応答信号検索フィルター4に関する標準化された入出力実データの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0023】
実施の形態1.
[実施の形態1のシステム構成]
本実施の形態に係るプラントやプロセスは限定されるものではないが、一つの具体例として、プラントは火力発電所である。プロセスは火力発電所のボイラー、プロセスの入力は石炭流量、プロセスの出力は主蒸気圧力である。
【0024】
以下の説明においてプロセスの動特性は、式(1)に示す積分要素を含む伝達関数G(s)で表現される。ここで、Kはゲイン、Lは無駄時間、Tは積分時間である。
【0025】
【数2】
【0026】
図1は、本発明の実施の形態1に係る積分系プロセス動特性同定装置の処理フローを説明するための図である。
【0027】
積分系プロセス動特性同定装置は、例えばROM、RAM等を含むメモリ、各種情報を入出力する入出力インタフェース、各種情報とメモリに記憶されたプログラムとに基づいて各種演算処理を実行するプロセッサを備える。図1に示すように、積分系プロセス動特性同定装置は主に6つの処理部(運転データ入力部1、データ標準化処理部2、ステップ信号検索フィルター3、応答信号検索フィルター4、動特性自動計算部5、動特性決定部6)で構成されている。メモリは、各処理部に対応するプログラムを予め記憶し、プロセッサがプログラムを読み出し、実行することで、各処理部が実現される。以下、各処理部について説明する。
【0028】
(運転データ入力部)
運転データ入力部1は、過去運転データをファイル入力する。過去運転データは、プロセスの過去の入出力実データであり、新たな過去運転データが逐次追加される。運転データ入力部1は、過去運転データから一部期間のデータ(入力実データ、出力実データ)を抽出する。入力実データは、過去にプロセスに入力されたデータであり、所定間隔の時刻と入力値(操作値)との関係を定めた操作データである。入力実データに対応する出力実データは、過去にプロセスから出力されたデータであり、所定間隔の時刻と出力値(応答値)との関係を定めた応答データである。ファイル形式は、一般的なCSVに限られるものではなく、DATA形式のテキストであってもよい。このファイルの保存場所は制限されず、パスが指定されればデータが自動的にロードされる。
【0029】
(データ標準化処理部)
データ標準化処理部2は、入力実データ(操作データ)と、出力実データ(応答データ)を入力する。データ標準化処理部2は、操作データと応答データを共に0〜100のレンジに標準化(正規化、無次元化)する。標準化することにより、適用対象のプロセスに依存することなく本発明に係る処理を適用することができる。
【0030】
異なる分野において、入力値(操作値)と出力値(応答値)の変化範囲はかなり差がある。例えば、動力系制御では、入力値である燃料量の操作範囲は0〜300[t/h]であり、出力値である圧力の応答範囲は0〜20[MPa]である。一方、液体濃度制御では、入力値である操作流量の操作範囲は0〜0.02[g/s]であり、出力値である濃度の応答範囲は0〜100000[mol/kg]である。
【0031】
標準化処理を行うことにより、プロセスに依存することなく、ステップ信号検索フィルター3と応答信号検索フィルター4のフィルターを適用できるので、本発明の汎用性を高めることができる。
【0032】
(ステップ信号検索フィルター)
ステップ信号検索フィルター3は、データ標準化処理部2において標準化された入力実データ(操作データ)から、ステップ信号と近似する操作データを探し出す機能を有する。図2は、ステップ信号検索フィルター3の動作の一例を説明するための図である。ステップ信号検索フィルター3は、微粉炭発電所での「1:50〜2:01」の時間帯における石炭流量を標準化した入力実データ(操作データ)を入力する。
【0033】
まず、ステップ信号検索フィルター3は、操作データから、各時刻の入力値(操作値)MVの変化量ΔMVを算出する。ΔMVは、単位時間での操作値MVの差分の絶対値であり、操作変化値ΔMVとも称する(図2)。
【0034】
次に、ステップ信号検索フィルター3は、単位時間での変化量ΔMVを降順にソートする。
【0035】
次に、ステップ信号検索フィルター3は、最大入力変化量ΔMVmaxが得られた時刻Mtの直前の所定時刻範囲および直後の所定時刻範囲における操作データが平穏状態(平衡状態)かどうかを判定する。平穏状態の判断基準としては、ΔMVが一定回数連続して許容差以内であれば、平穏状態と判断する。
【0036】
図2に示す例では、時刻Mt=1:54において最大入力変化量ΔMVmax=53.7が検出される。また、一定回数として判定定数「5」を採用し、許容される入力値の変化幅(許容差)は経験的な範囲[−15,15]を採用しており、「1:54」の直前までの時間帯「1:50〜1:53」および「1:54」以降の時間帯「1:55〜2:01」で変化量ΔMVはすべて許容差の範囲内であるため、これらの時間帯での操作データは平穏状態である。
【0037】
ステップ信号検索フィルター3は、平穏状態の判断基準を満たす場合に、入力実データ(操作データ)をステップ入力と判定する。
【0038】
なお、上述した判定回数や許容差は限定されるものではない。例えば、許容差を、操作データの最大の入力値の20%から40%までの間、すなわち[−10,10]や[−20,20]としてもよい。
【0039】
なお、入力実データ(操作データ)がステップ入力と判定されない場合には、再度、運転データ入力部1において、過去運転データから異なる一部期間のデータを抽出する。これにより、過去運転データからステップ信号と近似する操作データを探し出すことができる。例えば、図2の次の時刻域(2:02以降の時刻域)における一部期間のデータを抽出し、データ標準化処理部2、ステップ信号検索フィルター3の処理を再実行する。
【0040】
(応答信号検索フィルター)
応答信号検索フィルター4は、ステップ信号検索フィルター3においてステップ入力と判定された入力実データ(操作データ)に応答する出力実データ(応答データ)を探し出す機能である。図3は、応答信号検索フィルター4の動作の一例を説明するための図である。
【0041】
ステップ信号検索フィルター3によって探し出されたステップ入力に近似する操作データから、ステップ変化の時刻Mtが検出されている。応答信号検索フィルター4の処理対象は、時刻Mtからステップ応答の最後までの応答データである。
【0042】
まず、応答信号検索フィルター4は、応答データから、時刻Mt以降の各時刻の出力値(応答値)PVの変化量ΔPVを算出する。ΔPVは、単位時間での応答値PVの差分の絶対値であり、応答変化値ΔPVとも称する(図3)。応答信号検索フィルター4は、最大出力変化量ΔPVmaxを抽出する。
【0043】
次に、応答信号検索フィルター4は、最大出力変化量ΔPVmaxが得られた時刻の直前および直後の期間における変化量ΔPVの状態が急激変化状態か平穏状態であるかを判定する。応答信号検索フィルター4は、最大出力変化量ΔPVmaxが得られた時刻の直前および直後の期間における変化量ΔPVが最大出力変化量ΔPVmaxよりも小さい基準量以上である過渡期間Δtを急激変化状態と判定する。また、基準量未満である期間を平穏状態と判定する。
【0044】
平穏状態の判定基準は、一例として、以下のように定める。
(1)まず、上述の基準量として、平穏状態基準値PVstを算出する。ここで、PVst=1/3×ΔPVmaxとする。この数式は経験的なものである。
(2)ΔPVのデータリストの絶対値を算出し、PVstと比較する。
(3)|ΔPV|<PVstであれば、その時刻におけるΔPVの状態は、平穏状態であると判定する。
(4)|ΔPV|≧PVstであれば、その時刻におけるΔPVの状態は、急激変化状態であると判定する。
【0045】
応答信号検索フィルター4は、時間帯「1:57〜2:04」の応答データを出力する。この応答データから、過渡期間Δtと、過渡期間Δtの間に変化した期間出力変化量ΔPV(V)とを取得できる。
【0046】
図3は、応答信号検索フィルター4の動作の一例を説明するための図である。図3に示すように時刻Mt=1:54であり、図3では、時刻Mt以降における主蒸気圧力のΔPVを計算する。ここで、ΔPVmax=10.8である。上述した平穏状態の判定基準の(1)より、PVst=3.6である。従って、時間帯「1:54〜1:56」および時間帯「2:05〜2:10」の応答データは平穏状態と判定される。
【0047】
なお、上述した平穏状態基準値PVstは限定されるものではない。例えば、平穏状態基準値PVstを最大出力変化量ΔPVmaxの4分の1以上から半分以下までの間の所定量であってもよい。
【0048】
(動特性自動計算部)
動特性自動計算部5は、ステップ信号検索フィルター3および応答信号検索フィルター4の出力に基づいて、動特性(K,T,L)を自動計算する機能を有する。ステップ信号検索フィルター3および応答信号検索フィルター4により、過去運転データの一部期間のデータから、ステップ応答試験と近似するデータが抽出され、動特性自動計算部5はこのデータに基づいて動特性を自動計算する。
【0049】
計算の流れは以下のとおりである。
(1)無駄時間Lは、急激な操作値変化時刻Mtと応答変化開始時刻Pt(図3)に基づいて算出される。具体的には、L=Pt−Mtである。図2および図3に示す例では、Mt=1:54、Pt=1:57であり、L=3分である。
(2)ゲインKは、K=ΔPV(V)/ΔMV(V)により算出される。ここで、ΔMV(V)は、MV値データの急激変化状態の最終値と開始値との差である(ΔMVmax)。ΔPV(V)は、PV値データの急激変化状態の最終値と開始値との差である。図2および図3に示す例では、ΔPV(V)=69.4、ΔMV(V)=46.3、K=1.5である。
(3)積分時間Tは、T=ΔPV(V)/Δt、Δtは応答値データの急激変化状態の経過時間(過渡期間)である。図3の例では、急激変化状態の時間帯は「1:57〜2:04」であるため、Δt=8分、T=8.7である。
【0050】
(動特性決定部)
動特性決定部6は、動特性自動計算部5で算出した動特性(K,L,T)を出力する。出力した動特性は、式(1)に示す伝達関数のパラメータに代入される。
【0051】
本実施の形態における積分系プロセス動特性同定装置によれば、過去運転データからステップ応答試験と近似するデータを探し出して、プロセスの動特性を随時計算することで、常にプロセスの動特性変動に追従することが可能となる。これにより、プラントの操業に影響を与えることなく、ステップ応答試験と同等の効果が得られる。また、新たに蓄積された過去運転データを用いることで、運転環境、例えば燃料の品質等のボイラー運転環境が変わっても、迅速にプロセスの動特性を把握できる。更に、IMCまたはMD−PIDのパラメータチューニングと連動すれば、より安定的な制御が可能である。適切なプロセス制御により省エネ効果も期待できる。
【0052】
尚、上述した実施の形態1においては、ステップ信号検索フィルター3が本発明における「ステップ入力判定手段」に、応答信号検索フィルター4が本発明における「ステップ応答取得手段」に、動特性自動計算部5が本発明における「動特性自動計算手段」に、それぞれ相当している。
【符号の説明】
【0053】
1 運転データ入力部
2 データ標準化処理部
3 ステップ信号検索フィルター
4 応答信号検索フィルター
5 動特性自動計算部
6 動特性決定部
K ゲイン
L 無駄時間
Mt 操作値変化時刻
MV 入力値(操作値)
Pt 応答変化開始時刻
PV 出力値(応答値)
T 積分時間
ΔMV 操作変化値
ΔPV 応答変化値
Δt 過渡期間
図1
図2
図3
図4