特開2016-207273(P2016-207273A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2016207273-自動車用電線 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-207273(P2016-207273A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】自動車用電線
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20161111BHJP
【FI】
   H01B7/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-83235(P2015-83235)
(22)【出願日】2015年4月15日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(72)【発明者】
【氏名】今里 文敏
【テーマコード(参考)】
5G309
【Fターム(参考)】
5G309LA04
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性に優れる自動車用電線を提供する。
【解決手段】電線導体12と電線導体12の外周を覆う絶縁体14とを備え、電線導体12が、撚線構造を有しており、撚線の最外層に配置される素線12bから、撚線の中央に配置される素線12aに向かうに従って、破断伸び値が高い材料となるよう構成されている。中央に配置される素線12aの破断伸び値(Ec)と、最外層に配置される素線12bの破断伸び値(Eo)との比は、Ec/Eo>1.1であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線導体と前記電線導体の外周を覆う絶縁体とを備え、
前記電線導体が、撚線構造を有しており、前記撚線の最外層に配置される素線から、前記撚線の中央に配置される素線に向かうに従って、破断伸び値が高い材料となるよう構成されていることを特徴とする自動車用電線。
【請求項2】
前記中央に配置される素線の破断伸び値(Ec)と、前記最外層に配置される素線の破断伸び値(Eo)との比が、Ec/Eo>1.1であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用電線。
【請求項3】
前記最外層に配置される素線の破断伸び値(Eo)は、5%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用電線。
【請求項4】
前記素線は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス線、マグネシウム、マグネシウム合金、のいずれかからなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の自動車用電線。
【請求項5】
前記素線の材料は、同系統であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の自動車用電線。
【請求項6】
前記電線導体の引張破断荷重Wc(N)を前記素線の横断面積の合計値Ac(mm)で除した値、Wc/Acが100以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の自動車用電線。
【請求項7】
前記電線導体の引張破断までの変形エネルギー(J)を電線長さ(m)と前記素線の横断面積の合計値Ac(mm)とで除した値(J/(m・mm))が、6.0以上であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の自動車用電線。
【請求項8】
前記電線導体の断面積が、2.5mm以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の自動車用電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用電線に関し、さらに詳しくは、耐衝撃性に優れる自動車用電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用電線の導体には、電気伝導性に優れる純銅や純アルミニウム、比較的純度の高い銅合金、比較的純度の高いアルミニウム合金などの金属材料が用いられている。自動車用電線の導体は、主には、複数本の金属素線を撚り合わせた構造であり、通常、複数本の金属素線は、互いに同一の金属材料からなる。例えば、導体を構成するすべての金属素線が純銅からなる場合などである。また、特殊な構成として、中心にステンレス鋼線を配置し、その周囲に純銅を配置した導体構成が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4171888号公報
【特許文献2】特開2010−218927号公報
【特許文献3】特許第5442294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の高機能・多機能化により、自動車1台に使用される電線本数が増加している。しかし、自動車内においてワイヤーハーネスを配策できるスペースは限られており、配策スペースを確保するために電線の細径化が求められている。また、電線の細径化により、自動車の軽量化にも貢献できるため、燃費の向上も図られる。
【0005】
導体が純銅や純アルミニウムからなる金属素線のみで構成されると、強度が低く、引張断線が生じやすい。このため、このような導体は、細径電線の導体に適用することが難しい。そこで、強度を向上させた銅合金やアルミニウム合金からなる金属素線を導体材料に用いることも試みられている(特許文献2、3)。
【0006】
しかしながら、一般的には強度を向上させる背反として、伸びが小さくなる。高強度であっても伸びの小さいものは、ゆっくり引っ張られたときの強度は高いが、急な(瞬間的な)引張りによる衝撃荷重に弱く、例えばワイヤーハーネスの製造時や自動車への組み付け時の衝撃荷重によって断線するおそれがある。このため、耐衝撃性に優れる導体が求められる。
【0007】
本発明の解決しようとする課題は、耐衝撃性に優れた自動車用電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係る自動車用電線は、電線導体と前記電線導体の外周を覆う絶縁体とを備え、前記電線導体が、撚線構造を有しており、前記撚線の最外層に配置される素線から、前記撚線の中央に配置される素線に向かうに従って、破断伸び値が高い材料となるよう構成されていることを要旨とするものである。
【0009】
前記中央に配置される素線の破断伸び値(Ec)と、前記最外層に配置される素線の破断伸び値(Eo)との比は、Ec/Eo>1.1であることが望ましい。前記最外層に配置される素線の破断伸び値(Eo)は、5%以上であることが望ましい。前記素線は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス線、マグネシウム、マグネシウム合金、のいずれかからなることが望ましい。前記素線の材料は、同系統であることが望ましい。前記電線導体の引張破断荷重Wc(N)を前記素線の横断面積の合計値Ac(mm)で除した値、Wc/Acは100以上であることが望ましい。前記電線導体の引張破断までの変形エネルギー(J)を電線長さ(m)と前記素線の横断面積の合計値Ac(mm)とで除した値(J/(m・mm))は、6.0以上であることが望ましい。前記電線導体の断面積は、2.5mm以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る自動車用電線によれば、電線導体が撚線構造を有しており、撚線の最外層に配置される素線から撚線の中央に配置される素線に向かうに従って破断伸び値が高い材料となるよう構成されているので、耐衝撃性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る自動車用電線の斜視図(a)と周方向断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明に係る自動車用電線は、電線導体と電線導体の外周を覆う絶縁体とを備える。電線導体は、撚線構造を有しており、撚線の最外層に配置される素線から撚線の中央に配置される素線に向かうに従って破断伸び値が高い材料となるよう構成されている。
【0014】
撚線は、外側に配置された素線ほど、大きな螺旋を描く構造となる。最外層に配置される素線のほうが、中央に配置される素線よりも大きな螺旋を描く。中央に配置される素線は、最外層に配置される素線の内側に配置される素線である。中央に配置される素線は、螺旋構造になっていないか、螺旋構造であっても最外層に配置される素線より小さい螺旋となる。螺旋構造は、引張方向における余長となる。そうすると、電線が引張荷重を受けたときには、力は均等にかからず、最外層に配置される素線ほど、引き伸び量は小さくなり、中央に配置される素線のほうが大きく引き伸ばされ、最外層に配置される素線はそれほど引き伸ばされない。このような撚線の特徴を生かし、本発明では、撚線の最外層に配置される素線から撚線の中央に配置される素線に向かうに従って破断伸び値が高い材料となるよう構成することで、耐衝撃性に優れるものとしている。
【0015】
耐衝撃性の観点から、中央に配置される素線の破断伸び値(Ec)と、最外層に配置される素線の破断伸び値(Eo)との比は、Ec/Eo>1.1であることが好ましい。
【0016】
最外層に配置される素線は、比較的伸びの低い材料が用いられるが、その破断伸び値(Eo)は5%以上であることが好ましい。より好ましくは10%以上である。
【0017】
中央に配置される素線は、比較的伸びの高い材料が用いられる。その破断伸び値(Ec)は10%以上であることが好ましい。
【0018】
また、導体強さを確保するなどの観点から、引張破断荷重Wcが50N以上であることが好ましい。より好ましくは70N以上である。
【0019】
素線の引張強さは、JIS Z 2241(金属材料引張試験方法)に準拠して、汎用引張試験機にて測定される。また、素線の伸びは、JIS Z 2241(金属材料引張試験方法)に準拠して、汎用引張試験機にて測定され、破断時の伸びで表される。
【0020】
中央に配置される素線は、撚線の素線総数に応じて1本となる場合もあり、2本以上となる場合もある。例えば、7本撚線の場合には、中央に配置される素線は1本であり、最外層に配置される素線は6本となる。また、11本撚線の場合には、中央に配置される素線は3本であり、最外層に配置される素線は8本となる。素線は互いに同径であってもよいし、異径であってもよい。
【0021】
素線の金属材料としては、純銅、銅合金、純アルミニウム、アルミニウム合金、SUS、鉄、マグネシウム、マグネシウム合金などが挙げられる。
【0022】
中央に配置される素線と最外層に配置される素線の組み合わせとして好適なものとしては、中央に配置される素線/最外層に配置される素線として、純アルミニウム/アルミニウム合金、純銅/銅合金、純銅/アルミニウム合金、純アルミニウム/銅合金などが挙げられる。中央に配置される素線の金属と最外層に配置される素線の金属とは、異種金属接触腐食が生じない、端末加工(端子)、リサイクル性に優れるなどの観点から、同系統であることが好ましい。同系統とは、例えば銅系金属同士、アルミニウム系金属同士をいう。
【0023】
以上の構成からなる本発明に係る自動車用電線によれば、電線導体が撚線構造を有しており、撚線の最外層に配置される素線から撚線の中央に配置される素線に向かうに従って破断伸び値が高い材料となるよう構成されているので、耐衝撃性に優れる。これは、上記構成により、衝撃荷重が電線に加えられた際に、最外層に配置される素線はその螺旋構造によって衝撃が吸収され、中央に配置される素線はその伸びによって衝撃が吸収されるためと推察される。
【0024】
そして、本発明に係る自動車用電線は、自動車用電線として十分な引張強さを有する観点から、電線導体の引張破断荷重Wc(N)を素線の横断面積の合計値Ac(mm)で除した値、Wc/Acは100以上であることが好ましい。また、電線導体の引張破断までの変形エネルギー(J)を電線長さ(m)と素線の横断面積の合計値Ac(mm)とで除した値(J/(m・mm))は、6.0以上であることが好ましい。
【0025】
そして、本発明に係る自動車用電線は、電線導体の断面積が2.5mm以下の電線で効果が顕著である。
【0026】
本発明に係る自動車用電線において、絶縁体材料は特に限定されるものではなく、電線被覆材料として用いられる材料であればよい。例えばポリオレフィン系材料、ポリ塩化ビニル系材料などが挙げられる。
【0027】
図1には、本発明の一実施形態に係る自動車用電線を示す。図1(a)は、斜視図であり、図1(b)は、周方向断面図である。一実施形態に係る自動車用電線10は、電線導体12と電線導体12の外周を覆う絶縁体14とを備える。電線導体12は、1本以上の中央に配置される素線12aと、1本以上の最外層に配置される素線12bと、からなる撚線により構成されている。図1において、中央に配置される素線12aは7本であり、最外層に配置される素線12bは12本であり、合計19本の素線によって電線導体12が構成されている。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0029】
(導体構成)
中央に配置される素線7本、最外層に配置される素線12本、合計19本からなる撚線からなる電線導体(図1(b)参照)を作製した。各素線径は0.155mmであり、導体断面積(素線の横断面積の合計値Ac(mm))は0.35mmである。各素線の材種、引張強さ、破断伸び値(Eo、Ec)は表1に記載の通りである。素線の引張強さおよび破断伸び値は、JIS Z 2241(金属材料引張試験方法)に準拠して、汎用引張試験機にて測定した。
【0030】
作製した電線導体について、汎用引張試験機にて、JIS Z 2241(金属材料引張試験方法)に準拠して引張破断荷重Wc(N)および引張破断までの変形エネルギー(J)を測定した。引張破断荷重Wc(N)を素線の横断面積の合計値Ac(mm)で除した値Wc/Acを導体強さの指標とし、引張破断までの変形エネルギー(J)を電線長さ(m)と素線の横断面積の合計値Ac(mm)とで除した値(J/(m・mm))を耐衝撃性の指標とした。Wc/Acは、100以上を良好とした。(J/(m・mm))は、6.0以上を良好とした。その結果を表1に示す。実験No.1〜8が本発明に係る実施例であり、実験No.9〜12が比較例である。
【0031】
【表1】
【0032】
実験No.9〜12の電線導体は、いずれも中央に配置される素線の破断伸び値(Ec)が、最外層に配置される素線の破断伸び値(Eo)よりも小さいか、等しいため、耐衝撃性を満足していない。一方、実験No.1〜8の電線導体は、いずれも中央に配置される素線の破断伸び値(Ec)が、最外層に配置される素線の破断伸び値(Eo)よりも大きいため、耐衝撃性を満足する。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 自動車用電線
12 電線導体
12a 中央に配置される素線
12b 最外層に配置される素線
14 絶縁体
図1