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特開2016-207456物性測定方法及び有機装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-207456(P2016-207456A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】物性測定方法及び有機装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/12 20060101AFI20161111BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20161111BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20161111BHJP
   H05B 33/24 20060101ALI20161111BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20161111BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   H05B33/12 Z
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/24
   H05B33/10
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
   G01N21/17 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-87698(P2015-87698)
(22)【出願日】2015年4月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】内田 敏治
【テーマコード(参考)】
2G059
3K107
【Fターム(参考)】
2G059EE04
2G059GG01
2G059HH01
2G059HH02
2G059KK01
2G059MM01
2G059MM10
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC01
3K107CC31
3K107CC45
3K107DD58
3K107DD71
3K107DD74
3K107DD78
3K107EE42
3K107EE65
3K107FF06
3K107FF15
3K107GG56
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で有機層の物性値を測定できるようにする。
【解決手段】試料10は、基板100、有機層120、及び封止部160を有している。基板100は透光性を有している。有機層120は基板100の第1面102に形成されている。封止部160は基板100の第1面102に位置していて有機層120を封止している。次いで、基板100の第2面104から試料10に光を入射する。そして、試料10によって反射された光、又は試料10を透過した光を分析することにより、有機層120の物性を分析する。ここで測定される物性は、例えば有機層120の光学係数、具体的には複素屈折率を定める屈折率及び消衰係数である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の基材の第1面に形成された有機層、及び前記第1面に位置していて前記有機層を封止する封止部を備える試料に、前記基材の前記第1面とは逆側の面である第2面から光を入射し、
前記試料によって反射された前記光又は前記試料を透過した前記光を分析することにより、前記有機層の物性を測定する物性測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の物性測定方法において、
前記物性は光学定数であり、
前記第2面に対する前記光の入射角度を異ならせながら前記分析を複数回行う物性測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の物性測定方法において、
前記有機層を挟んで前記第1面とは逆側に位置する光反射部材を備え、
前記光反射部材で反射した前記光を分析することにより前記有機層の物性を測定する物性測定方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の物性測定方法において、
前記基材の前記第2面にプリズムの一面を当接させ、前記プリズムを介して前記試料に前記光を入射する物性測定方法。
【請求項5】
透光性の基材の第1面に形成された有機層、及び前記第1面に位置していて前記有機層を封止する封止部を備える有機装置を製造する製造工程と、
前記基材の前記第1面とは逆側の面である第2面から前記試料に光を入射し、前記試料によって反射された前記光又は前記試料を透過した前記光を分析することにより、前記有機層の評価を行う評価工程と、
を備える有機装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の有機装置の製造方法において、
一部の前記有機装置に対して前記評価工程を行う有機装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物性測定方法及び有機装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は発光装置の発光層や光電変換装置の光電変換層に有機層を用いることがある。光機能層としての有機層を有する有機装置において、有機層の物性値(例えば光学定数)は有機装置の特性に影響を与える。このため、有機層の物性値を測定することは重要である。
【0003】
なお、特許文献1には、有機層となる塗布膜を焼成する装置において、取り出し用のチャンバーの内部に分光装置を配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−233426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機層は酸素や水分に弱い。このため、有機層の物性を測定するためには、特許文献1に記載されているように、試料をチャンバーに配置した状態で物性を測定する必要があった。このため、物性を測定するための装置のコストが高くなっていた。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、簡易な構成で有機層の物性値を測定できるようにすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、透光性の基材の第1面に形成された有機層、及び前記第1面に位置していて前記有機層を封止する封止部を備える試料に、前記基材の前記第1面とは逆側の面である第2面から光を入射し、
前記試料によって反射された前記光又は前記試料を透過した前記光を分析することにより、前記有機層の物性を測定する物性測定方法である。
【0008】
請求項5に記載の発明は、透光性の基材の第1面に形成された有機層、及び前記第1面に位置していて前記有機層を封止する封止部を備える有機装置を製造する製造工程と、
前記基材の前記第1面とは逆側の面である第2面から前記試料に光を入射し、前記試料によって反射された前記光又は前記試料を透過した前記光を分析することにより、前記有機層の評価を行う評価工程と、
を備える有機装置の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る物性測定方法を説明するための図である。
図2】変形例1に係る有機層の物性測定方法を説明するための図である。
図3】変形例2に係る有機層の物性測定方法を説明するための図である。
図4図3の変形例を示す図である。
図5】実施例に係る有機装置の構成を、発光装置、受光装置、及びプリズムとともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る物性測定方法を説明するための図である。本実施形態においては、まず、試料10を準備する。この試料10は、基材の一例である基板100、有機層120、及び封止部160を有している。基板100は透光性を有している。有機層120は基板100の第1面102に形成されている。封止部160は基板100の第1面102に位置していて有機層120を封止している。
【0012】
次いで、基板100のうち第1面102とは逆側の面(以下、第2面104と記載)から試料10に光を入射する。そして、試料10によって反射された光、又は試料10を透過した光を分析することにより、有機層120の物性を分析する。図1は、試料10を透過した光を分析する場合を示している。ここで測定される物性は、例えば有機層120の光学係数、具体的には複素屈折率を定める屈折率及び消衰係数である。ただし、測定対象となる物性はこれに限定されない。以下、詳細に説明する。
【0013】
まず、試料10の構成について説明する。上記したように、試料10は、基板100、有機層120、及び封止部160を有している。
【0014】
基板100は、例えばガラスや透光性の樹脂などの透光性の材料で形成されている。ここで基板100は、後述する発光装置200が発光する光を透過すればよい。基板100は可撓性を有していてもよい。基板100が可撓性を有している場合、基板100の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下である。特に基板100をガラス材料で可撓性を持たせる場合、基板100の厚さは、例えば200μm以下である。基板100を樹脂材料で可撓性を持たせる場合は、基板100の材料として、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、又はポリイミドを含ませて形成されている。また、基板100が樹脂材料を含む場合、水分が基板100を透過することを抑制するために、基板100の少なくとも発光面(好ましくは両面)に、SiNやSiONなどの無機バリア膜が形成されている。
【0015】
有機層120は、例えば、光学的な機能を有する層である。ここで光学的な機能としては、発光層、又は光電変換により発電を行う層がある。有機層120が発光層の場合、有機層120は、正孔注入層、発光層、及び電子注入層をこの順に積層させた構成を有していてもよい。この場合、正孔注入層と発光層との間には正孔輸送層が形成されていてもよいし、発光層と電子注入層との間には電子輸送層が形成されていてもよい。また、有機層120は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層のうちのいずれか一つの層であってもよい。有機層120は蒸着法で形成されてもよいし、インクジェット法、印刷法、又はスプレー法などの塗布法によって形成されてもよい。有機層120が複数の層の積層構造を有している場合、有機層120の一部の層は、他の層と異なる方法で形成されていてもよい。
【0016】
封止部160は、例えば封止部材である。この場合、封止部160は、例えばガラス、アルミニウムなどの金属、又は樹脂を用いて形成されており、中央に凹部を設けた形状を有している。そして封止部160の縁は接着材で基板100の第1面102に固定されている。これにより、封止部160と基板100で囲まれた空間は封止される。そして有機層120は、この封止された空間の中に位置している。
【0017】
ただし、封止部160は封止膜であってもよい。この場合、封止部160は、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて形成されている。この場合、封止部160の段差被覆性は高くなる。またこの場合、封止部160は、複数の層を積層した多層構造を有していてもよい。この場合、第1の材料(例えば酸化アルミニウム)からなる第1封止層と、第2の材料(例えば酸化チタン)からなる第2封止層とを繰り返し積層した構造を有していてもよい。最下層は第1封止層及び第2封止層のいずれであってもよい。また、最上層も第1封止層及び第2封止層のいずれであってもよい。また、封止部160は第1の材料と第2の材料の混在する単層であってもよい。
【0018】
ただし、封止部160は、他の成膜法、例えばCVD法やスパッタリング法を用いて形成されていてもよい。この場合、封止部160は、SiO又はSiNなど絶縁膜によって形成されており、その膜厚は、例えば10nm以上1000nm以下である。
【0019】
また本実施形態のように試料10の透過光を分析することにより有機層120の物性を測定する場合、封止部160は透光性を有している。
【0020】
次に、有機層120の物性測定方法について説明する。まず、上記した試料10を作製する。具体的には、基板100の上に有機層120を形成し、さらに封止部160を用いて有機層120を封止する。これら一連の処理は、例えば製造装置内で行われる。このため、試料10を製造した後、有機層120の物性を測定するまでの間に有機層120が変質することを抑制できる。
【0021】
そして、基板100の第2面104側から、発光装置200を用いて光を入射する。この光は例えばレーザ光であり、その波長は青色領域(例えば470nm)、緑色領域(例えば520nm)、赤色領域(例えば620nm)、近赤外領域、及び赤外領域のいずれであってもよい。
【0022】
基板100に入射された光は、有機層120及び封止部160を透過して、受光装置210によって検出される。そして受光装置210の検出結果を処理することにより、有機層120の物性値を算出する。この処理は、例えばプロセッサ及びメモリを有する情報処理装置を用いて行われる。この情報処理装置は、発光装置200の出力及び受光装置210の検出値を用いて、有機層120における光の減衰率を算出する。この際、基板100及び封止部160が受光装置210の検出値に与える影響は、情報処理装置によって補正される。この補正に必要な式や係数は、予め情報処理装置に記憶されている。
【0023】
そして、基板100の第2面104に対する発光装置200からの光の入射角度を異ならせながら、上記した処理を複数回行う。そして、算出された減衰率を用いると、上記した物性値(例えば複素屈折率)を算出することができる。この算出処理は、上記した情報処理装置が行ってもよい。
【0024】
以上、本実施形態によれば、試料10の有機層120は封止部160によって封止されている。そして、基板100の第2面104側から光を照射することにより、有機層120の物性値を測定している。従って、有機層120の物性値を測定する際に、試料10をチャンバー内に配置しなくてもよい。従って、簡易な構成で有機層120の物性値を測定することができる。
【0025】
(変形例1)
図2は、変形例1に係る有機層120の物性測定方法を説明するための図である。本変形例に係る物性測定方法は、以下の点を除いて実施形態に示した物性測定方法とは異なる。
【0026】
まず、有機層120の上には反射膜132が形成されている。反射膜132は、例えばAl、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属又はこの第1群から選択される金属の合金によって形成されており、発光装置200からの光を反射する。反射膜132は、例えば真空蒸着法やスパッタリング法を用いて形成される。
【0027】
また、受光装置210は、基板100の第2面104に対向する位置に配置される。そして発光装置200からの光は、基板100及び有機層120を透過して反射膜132で反射され、その後、再び有機層120及び基板100を透過してから、受光装置210によって検出される。
【0028】
なお、本変形例において、封止部160は透光性を有していなくてもよい。
【0029】
本変形例によっても、試料10の有機層120は封止部160によって封止されている。このため、実施形態と同様に、簡易な構成で有機層120の物性値を測定することができる。また、実施形態と比較して、試料10に入射した光の光路のうち有機層120と重なる部分を約2倍にすることができる。このため、物性の測定結果の精度は高くなる。
【0030】
(変形例2)
図3は、変形例2に係る有機層120の物性測定方法を説明するための図である。本変形例に係る物性測定方法は、プリズム300を用いる点を除いて、実施形態に係る物性測定方法と同様である。
【0031】
プリズム300の一面は基板100の第2面104に接している。プリズム300を構成する材料の屈折率は、空気の屈折率よりも大きく、基板100を構成する材料の屈折率よりも小さい。そして発光装置200からの光は、プリズム300を介して基板100の第2面104に入射する。なお、本図に示す例において、プリズム300は略三角柱である。また、プリズム300は複数用いてもよい。この際、プリズム300の角度は異なっている。この場合、発光装置200からの基板100の第2面104への入射する光を更に調整すること、例えば臨界角をさらに大きくすることができる。ただし、プリズム300の形状はこれに限定されない。
【0032】
本変形例によっても、試料10の有機層120は封止部160によって封止されている。このため、実施形態と同様に、簡易な構成で有機層120の物性値を測定することができる。また、発光装置200からの光はプリズム300を介して基板100の第2面104に入射される。プリズム300を構成する材料の屈折率は、空気の屈折率よりも大きく、基板100を構成する材料の屈折率よりも小さい。従って、プリズム300を用いない場合と比較して、第2面104に入射する光の臨界角を大きくすることができる。この結果、試料10に入射した光の光路のうち有機層120と重なる部分を長くすることができる。このため、物性の測定結果の精度は高くなる。
【0033】
なお、図4に示すように、変形例1に示した物性測定方法において、本変形例と同様にプリズム300を用いてもよい。
【0034】
(実施例)
本実施例において、実施形態に示した物性の測定方法は、有機装置12の製造ラインにおける品質検査に用いられる。
【0035】
図5は、有機装置12の構成を、発光装置200、受光装置210、及びプリズム300とともに示す図である。有機装置12は、基板100の第1面102に、第1電極110、有機層120、及び第2電極130をこの順に積層した構成を有している。第1電極110、有機層120、及び第2電極130の積層構造は、例えば発光部140として機能する。有機装置12は、照明装置又はディスプレイである。この場合、有機層120は、少なくとも発光層を有している。
【0036】
第1電極110は、光透過性を有する透明電極である。透明電極を構成する透明導電材料は、金属を含む材料、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)等の金属酸化物である。第1電極110の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。第1電極110は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。なお、第1電極110は、カーボンナノチューブ、又はPEDOT/PSSなどの導電性有機材料であってもよい。
【0037】
第2電極130は変形例1における反射膜132に相当している。このため、第2電極130を構成する材料及び第2電極130の製造方法は、反射膜132を構成する材料及び反射膜132の製造方法と同様である。
【0038】
次に、本実施例における有機装置12の製造方法について説明する。まず、基板100の第1面102に第1電極110、有機層120、及び第2電極130をこの順に形成する。これにより、発光部140が形成される。次いで、封止部160を用いて発光部140を封止する。次いで、変形例1又は変形例2に示した方法を用いて、有機層120の物性を測定する。この測定において、第1電極110が発光装置200の検出結果に与える影響は、情報処理装置によって補正される。なお、この物性の測定は、全ての有機装置12に対して行われてもよいし、一部の有機装置12に対してのみ行われてもよい(すなわち抜き取り検査)。そして、測定された物性が基準を満たさない場合、その有機装置12(又はその有機装置12を含むロットの全体)は不良品となる。
【0039】
本実施例によれば、有機装置12の有機層120の物性(例えば複素屈折率などの光学特性)を非破壊で測定することができる。このため、有機装置12の品質を安定させることができる。
【0040】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0041】
10 試料
12 有機装置
100 基板
102 第1面
104 第2面
110 第1電極
120 有機層
130 第2電極
132 反射膜
140 発光部
160 封止部
300 プリズム
図1
図2
図3
図4
図5