特開2016-207645(P2016-207645A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-207645(P2016-207645A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】X線チューブ
(51)【国際特許分類】
   H05G 1/00 20060101AFI20161111BHJP
【FI】
   H05G1/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-59745(P2016-59745)
(22)【出願日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0054595
(32)【優先日】2015年4月17日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0012962
(32)【優先日】2016年2月2日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】596180076
【氏名又は名称】韓國電子通信研究院
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】鄭 珍 宇
(72)【発明者】
【氏名】宋 潤 鎬
【テーマコード(参考)】
4C092
【Fターム(参考)】
4C092AA01
4C092AB10
4C092BD01
4C092BD04
4C092BD05
4C092BD09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高電圧条件で安定した駆動が可能で、かつ電流制限条件で電子ビームの集束特性が一定に維持されるX線チューブ構造を提供する。
【解決手段】電子ビームを放出するエミッタ111を含むカソード110と、電子ビームとの衝突によってX線を放出するターゲット物質が設けられるアノード140と、アノード140を分離させる絶縁スペーサ150と、を含み、カソード110またはアノード140がエミッタ111と絶縁スペーサ150との間に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを放出するエミッタを含むカソードと、
前記電子ビームとの衝突によってX線を放出するターゲット物質が設けられるアノードと、
前記アノードを分離させる絶縁スペーサと、を含み、
前記カソードまたは前記アノードが前記エミッタと前記絶縁スペーサとの間に配置されることを特徴とするX線チューブ。
【請求項2】
前記X線チューブは、
前記カソード及び前記アノードを取り囲み、前記カソード及び前記アノードを外部空気から遮断させる外被をさらに含み、
前記絶縁スペーサは前記アノードと前記外被を電気的に分離させ、
前記アノードが前記エミッタと前記絶縁スペーサとの間に配置され、
前記絶縁スペーサに対する前記電子ビームの影響が前記アノードによって遮断されることを特徴とする請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項3】
前記外被は、導電体を含んで接地されることを特徴とする請求項2に記載のX線チューブ。
【請求項4】
前記絶縁スペーサは前記アノードと前記カソードとを電気的に分離させ、
前記カソードが前記エミッタと前記絶縁スペーサとの間に配置され、
前記絶縁スペーサに対する前記電子ビームの影響が前記カソードによって遮断されることを特徴とする請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項5】
前記カソード及び前記アノードのうち少なくとも一部は、導電体を含むことを特徴とする請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項6】
前記X線チューブは、
集束電極をさらに含み、
前記集束電極は、
前記カソードに連結され、前記集束電極と前記カソードには同一のレベルの電圧が供給されることを特徴とする請求項1に記載のX線チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線チューブの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、高い加速電圧を必要とするX線チューブの一般的な構造を示す。
【0003】
X線チューブは、電子ビームを放出するカソード10、エミッタ11、ゲート20、集束電極30及びアノード40で構成されることができる。
【0004】
各電極は、絶縁スペーサ50によって電気的に分離することができる。
【0005】
絶縁スペーサは、チューブの形態でありえる。エミッタが熱電子源である場合、ゲート20及び集束電極30などは省略されることができ、電界放出電子源の場合、集束電極30はゲート電極20のような電位を有する一体型でありえる。
【0006】
エミッタ11から電子ビームの形態で放出された電子e-は、アノード40とカソード10との電圧差によって加速され、アノードの方へ導かれるようになって、図面に表示しなかったがアノード40に設けられたターゲット物質(図示せず)に衝突する場合、X線が放出される。
【0007】
アノード40は、傾斜型アノードであるか、または透過型アノードでありえる。
【0008】
高い電圧で加速された電子は、アノード40の方へ導かれる経路の周囲に絶縁スペーサが位置するため、絶縁スペーサの電荷の蓄積が発生して非正常的な動作を誘発することがありえる。
【0009】
スペーサに蓄積された電荷は、高電圧雰囲気で他の電極に弛緩されることができるが、この時発生されるアーク形態の電荷の流れによってX線チューブが損傷されうる。
【0010】
電界放出電子源を使用する場合、図1のようにカソード電極に高電圧電界效果トランジスターなどを直列に連結して構成した電流制御ユニット60を利用して放出される電子の量を調節することができる。この時、能動電流制御ユニット60の基準電圧Vrefは、接地0Vでありえる。
【0011】
電界放出エミッタ特性及びゲート電圧、そして電界效果トランジスターに印加されたゲート-ソース電圧条件によって電流制限条件になりうるが、この時カソード10の電圧は、基準電圧Vrefより上昇することができる。
【0012】
電流制限条件で電界放出電流を一定に制御される能動電流制御ユニット60によってカソード電圧は、エミッタの特性変化に応じて上がったり下がったりすることができる。
【0013】
もしも、ゲート電圧Vg、集束電圧Vf及びアノード電圧Vaが一定に維持される場合、電流制限条件でカソード電圧が変わる場合、電子ビームの集束特性が変わることがありえるという問題が発生しえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明は、上記の問題を解決するために案出されたもので、その目的は、高電圧条件で安定した駆動が可能で、かつ電流制限条件で電子ビームの集束特性が一定に維持されるX線チューブ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために本発明の一実施例によるX線チューブによれば、電子ビームを放出するエミッタを含むカソードと、前記電子ビームとの衝突によってX線を放出するターゲット物質が設けられるアノード及び前記アノードを分離させる絶縁スペーサと、を含むことができ、前記カソードまたは前記アノードが前記エミッタと前記絶縁スペーサとの間に配置されることができる。
【0016】
また、前記X線チューブは、前記カソード及び前記アノードを取り囲み、前記カソード及び前記アノードを外部空気から遮断させる外被をさらに含むことができ、前記絶縁スペーサは、前記アノードと前記外被とを電気的に分離させることができ、前記アノードが前記エミッタと前記絶縁スペーサとの間に配置されることができ、前記絶縁スペーサに対する前記電子ビームの影響が前記アノードによって遮断されることができる。
【0017】
また、前記外被は、導電体を含んで接地されることができる。
【0018】
また、前記絶縁スペーサは、前記アノードと前記カソードとを電気的に分離させることができ、前記カソードが前記エミッタと前記絶縁スペーサとの間に配置されることができ、前記絶縁スペーサに対する前記電子ビームの影響が前記カソードによって遮断されることができる。
【0019】
また、前記カソード及び前記アノードのうち少なくとも一部は、導電体を含むことができる。
【0020】
また、前記X線チューブは、集束電極をさらに含むことができ、前記集束電極は、前記カソードに連結され、前記集束電極と前記カソードには同一のレベルの電圧が供給されることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の構成によれば、高電圧条件で安定したX線チューブの構造を提供して電流制御の際に集束中の特性が変わらない構造を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】高い加速電圧を必要とするX線チューブの一般的な構造を説明するための図面である。
図2】本発明の一実施例によるX線チューブの構造を説明するための図面である。
図3】本発明の他の実試例によるX線チューブの構造を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明による好ましい実試例について詳しく説明する。明細書全体にかけて同一の参照番号等は実質的に同一の構成要素等を意味する。
【0024】
以下の説明で、本発明に係わる公知機能あるいは構成に係わる具体的な説明が本発明の要旨を不要に不明確にすることがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0025】
また、以下の説明で使われる構成要素の名称は、明細書作成の容易さを考慮して選択されたものであり、実際の製品の部品名称とは異なる場合がある。
【0026】
さらに、明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとした時、これは、「直接的に連結」されている場合のみならず、その中間に装置を間に置いて「間接的に連結」されている場合をも含む。
【0027】
また、明細書全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とした時、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0028】
図2は、本発明の一実施例によるX線チューブの構造を説明するための図面である。
【0029】
本発明のX線チューブ200は、カソード110、ゲート120、集束電極130、アノード140、絶縁スペーサ150、能動電流制御ユニット60及び外被160を含む。
【0030】
カソード110、ゲート120、集束電極130及びアノード140の基本的な機能は、それぞれカソード10、ゲート20、集束電極30及びアノード40と同一なので詳細な説明が省略されても構わない。また、アノード140には高レベルの電圧が供給されることができる。
【0031】
集束電極130は、導電体を含んでカソード110と連結されて同一のレベルの電圧が供給されることができる。
【0032】
集束電極130は、図1と異なり、独立的な電位調節のための電源が存在せず、図2のようにカソード110と同一の電極である。この場合、能動電流制御ユニット60が電流制限モードで動作する場合、カソード電圧はエミッタ特性の変化に従って同一の電界放出電流を引き出すためにカソード電圧が流動的でありえるが、この時、集束電極の電位もカソード電位とともに変わるようになる。
【0033】
すなわち、エミッタの特性が悪くなって小さい電界放出電流が引き出される時、カソード110の電圧レベルは、基準電圧V'refの方へ低くなってゲート120の電圧レベルV'gとの差が大きくなる。
【0034】
この時、放出された電子ビームは、高くなったゲート-カソード電圧差によって電子ビームがさらに発散されることができるが、集束電極130の電圧レベルもカソード110の電圧レベルに従って低くなるので、さらにたくさん集束して同一の集束特性を有するようにする。
【0035】
ただし、集束電極の構造的形態、すなわち、ゲート電極間の距離、集束電極の開口の大きさなどはカソード電極の電位が基準電圧V'refである時、ゲート120に供給されるゲート電圧V'g及びアノード140に供給されるアノード電圧V'aなどを考慮して決定されなければならない。
【0036】
図1に示された絶縁スペーサ50は、カソード10とアノード40との間を電気的に分離させたが、図2に示された絶縁スペーサ150は、外被160とアノード140との間を電気的に分離させる。
【0037】
また、外被160は、導電層を含んでグラウンド電極(図示せず)に接地0Vされることができる。この場合、電子ビームは導電層を含んで接地された外被160に影響を及ぼさない。
【0038】
図1では、カソード10内のエミッタ11から電子ビームの形態で放出された電子e-と絶縁スペーサ50と間に何らの導電体がないため、電子e-が絶縁スペーサ50に影響を与えることができる反面、図2では、アノード140がエミッタ111と絶縁スペーサ150との間に配置されて、カソード110内のエミッタ111から電子ビームの形態で放出された電子e-と絶縁スペーサ150との間にアノード140があり、導電層を含む外被160は接地されている。
【0039】
アノード140が導電体を含む場合、絶縁スペーサ150に対する電子e-の影響が電子e-と絶縁スペーサ150との間に配置されたアノード140によって遮断される。また、電子ビームは、導電層を含んで接地された外被160に影響を及ぼさない。したがって、電荷蓄積及びアークが防止される。
【0040】
図3は、本発明の他の実試例によるX線チューブの構造を説明するための図面である。
【0041】
本発明のX線チューブ300は、カソード210、ゲート220、集束電極230、アノード240、絶縁スペーサ250及び能動電流制御ユニット60を含む。
【0042】
カソード210、ゲート220、集束電極230、アノード240及び絶縁スペーサ250の基本的な機能は、それぞれカソード10、ゲート20、集束電極30、アノード40及び絶縁スペーサ50と同一なので詳細な説明が省略されても構わない。
【0043】
図3に示されたX線チューブ300の基本的な動作は、図2に示されたX線チューブ200と類似しているが、X線チューブ300は、アノード240が接地0Vされ、カソード210に高いレベルの陰の電圧が供給されるネガティブ加速駆動のX線チューブでありえる。
【0044】
図1では、カソード10内のエミッタ11から電子ビームの形態で放出された電子e-と絶縁スペーサ50との間に何らの導電体がなくて電子e-が絶縁スペーサ50に影響を与えることができる反面、図3では、カソード210がエミッタ211と絶縁スペーサ250との間に配置されて、カソード210内のエミッタ211から電子ビームの形態で放出された電子e-と絶縁スペーサ250との間にカソード210があって、アノード240は接地されている。
【0045】
カソード210が導電体を含む場合、絶縁スペーサ250に対する電子e-の影響が電子e-と絶縁スペーサ250との間に配置されたカソード210によって遮断される。
【0046】
また、絶縁スペーサ250は、エミッタ211基準に電子e-が進行する方向と反対方向に配置され、電子ビームは導電層を含んで接地されたアノード240に影響を及ぼさない。したがって、電荷蓄積及びアークが防止される。
【0047】
以上説明した内容を通じて、当業者であれば本発明の技術思想を逸脱しない範囲で多様な変更及び修正が可能であることが分かる。したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載した内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって決定されるべきであろう。
【符号の説明】
【0048】
10、110、210 カソード、
11、111、211 エミッタ、
130 集束電極、
40、140、240 アノード、
120、130 ゲート、
50、150 絶縁スペーサ、
60 能動電流制御ユニット、
160 外被、
200 X線チューブ
図1
図2
図3