【実施例1】
【0014】
最初に、
図1〜
図5を参照しながら本発明の実施例1を説明する。本発明は、例えばDC/DCコンバータ、DC/ACインバータ等に用いられる表面実装用の小型トランスに関するものである。
図1は、実施例1のトランスを示す図であり、巻線を示さずにボビンにコアを挿入した状態を示す斜視図である。
図2(A)は前記
図1を矢印F1a方向から見た平面図,
図2(B)は前記
図1を矢印F1b方向から見た底面図,
図2(C)は前記
図1を矢印F1c方向から見た側面図,(D)は前記
図1を矢印F1d方向から見た側面図である。
図3は、本実施例のコアを示す図であり、(A)は斜視図,(B)〜(D)は前記(A)をそれぞれ矢印F3a〜F3c方向から見た側面図である。
図4は、本実施例のボビンを示す図であり、(A)は実装面の上側から見た斜視図,(B)は前記(A)を矢印F4方向から見た側面図,(C)は前記(A)を実装面側から見た斜視図である。
図5は、本実施例の取付ベースに設けられる端子用導体を示す図であり、(A)は前記端子用導体の平面図,(B)は前記(A)を矢印F5b方向から見た側面図,(C)は前記(A)を矢印F5a方向から見た側面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施例の表面実装用トランス(以下「トランス」とする)10は、略E型の一対のコア20A,20Bと、ボビン40と、巻線14,16を巻回した巻線部12(
図2参照)により構成されている。前記巻線14は、一次コイルを形成し、前記巻線16は二次コイルを形成するものであって、これらの間には絶縁シート15が設けられている(
図2(A)参照)。前記コア20Aは、
図3(A)に示すように、一対の側脚部22,24と、その間に配置された中脚部26と、これら側脚部22,24及び中脚部26の一端側を接続する接続部28により略E型に形成されている。前記側脚部22,24は、
図3(A)及び(B)に示すように、断面略長方形であって、短辺が実装面90(
図2(C)参照)に対して略平行になっている。また、前記中脚部26も断面略長方形であって、長辺が前記実装面90に対して略平行になっている。
【0016】
本実施例では、実装面90に対する前記側脚部22,24の底面の高さが、前記実装面90に対する前記中脚部26の底面の高さよりも高くなるように、脚部の位置をずらして形成されている。これにより、
図2(C)に示すように、前記側脚部22,24の下方に、後述するボビン40側の絡げ端子taに巻線後の巻線上端との絶縁距離d3を確保することができる。前記接続部28は、前記側脚部22,24と中脚部26の位置ずれに合うように、
図3(C)に示すように、上面28Aには凹部30が形成され、底面28Bには凸部32が形成されている。なお、後述するように、前記凹部30は必要に応じて形成すればよい。
【0017】
他方のコア20Bは、前記コア20Aと同様の構造となっている。そして、これらのコア20A,20Bは、前記中脚部26の端部同士が突き合うように、後述するボビン40の中空部44に挿入され、EEタイプのトランス10が形成される。以上のようなコア20A,20Bは、例えば、Mn−Zn系材料のように、透磁率の高い材料を用いて形成することができる。あるいは、Mn−Zn以外のフェライト系材料(Ni−Znなど)や、ダスト系材料、あるいは、アモルファス系材料を用いてもよい。
【0018】
次に、
図1〜
図4を参照して、前記ボビン40の構造について説明する。ボビン40は、前記コア20A,20Bの中脚部26を挿入する中空部44が形成された巻芯部42と、該巻芯部42の両端に設けられた一対の鍔部46,46´により形成されている。前記鍔部46,46´の一部は、前記中空部44に挿入される中脚部26の軸方向に延長され、後述する実装端子tb,tcや絡げ端子taを設けるための肉厚の取付ベース48,48´を構成している。電子機器等に実装する際には、前記取付ベース48,48´側を、実装面90側に配置し、前記実装端子tb(又はtc)を半田などによって基板に取り付ける。このようなボビン40は、例えば、熱可塑性の液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、熱硬化性のフェノール樹脂(PF)、ポリウレタン(PUR)、ジアリルフタレート樹脂などで形成される。
【0019】
本実施例では、前記巻芯部42の外周及び前記中空部44の断面は、前記コア20A,20Bの中脚部26と同様に横長の略長方形となっている。前記鍔部46,46´も、外形は略長方形である。前記取付ベース48は、
図4(A)に示すように、前記鍔部46の一部(実装面90側)を前記中空部44の軸方向に延長して肉厚にした部分であって、上面48Aには、前記コア20A,20Bの接続部28の底面28Bのラインに沿うように凹部が形成されている。また、前記取付ベース48は、
図2(C)に示すように、その両端が、実装面90の上方から見たときに、前記コア20A,20Bの一対の側脚部22,24よりも距離β分、凹んだ位置にあり、前記側脚部22,24の下方には、空間66が形成される。
【0020】
図5には、前記取付ベース48,48´に設けられる端子用導体54が示されている。
図5(A)に示すように、端子用導体54は、平面視で略F字状であって、引出部56,58,60を備えている。前記端子用導体54は、
図4(B)に示すように、前記引出部56の端部が、前記取付ベース48の側面48D(又は48F)から露出し、前記引出部58,60の端部が前記取付ベース48の側面48Cから露出するように、前記取付ベース48内に埋め込まれる。前記取付ベース48の側面48D(又は48F)から露出した部分が、巻線14,16の端部14A,14B,16A,16Bを接続するための絡げ端子taとなる。前記絡げ端子taは、
図4(B)に示すように、前記中空部44の軸方向と略直交する方向であって、かつ実装面90に対して略平行に延びている。また、
図2(C)に示すように、実装面90の上方から見たときに、前記側脚部22,24の実装面90に向かう投影領域の領域内に収まるように長さが設定されている。
【0021】
一方、前記引出部58,60は、前記取付ベース側面48Cから表面に露出し、前記取付ベース48の底面48Bに向けて折り返される(
図1及び
図5(C))。そして、前記底面48Bに沿って折り曲げられた部分が、実装端子tb,tcとなる。すなわち、前記引出部58,60は、
図5(A)を矢印F5a方向から見たときに略J型となるように形成されている。以上のように、本実施例では、前記絡げ端子taと前記実装端子tb,tcは、前記取付ベース48,48´の90°異なる面(側面48Cと側面48D又は側面48Cと側面48F)に配置されている。前記端子用導体54は、例えば、銅合金等により形成されている。
【0022】
このような端子用導体54が、前記取付ベース48,48´のそれぞれの両端側に設けられている。また、前記取付ベース48,48´の底面48Bには、巻線14,16の端部を引き出すための溝50が両端に向けて形成されている。なお、前記取付ベース48,48´は、左右対称の構成となっているが、本実施例では、
図1,
図2(B)及び
図4(C)に示すように、一方の取付ベース48´の底面48Bには、凸部52A,52Bが設けられている。前記巻線14,16の巻き終わり側の端部を前記絡げ端子taに接続する際、前記巻線14,16が、前記凸部52A,52Bと取付ベース48´の間を通ることで、弛みにくくなる。また、1次、2次の向きと合わせておけば、巻線の向きを目視で確認することができる。
【0023】
以上のような構成のボビン40の中空部44の両端側から、前記コア20A,20Bの中脚部26を挿入することにより、
図1及び
図2に示すように、コア20A,20Bがボビン40に装着される。そして、一次コイルを構成する巻線14と、二次コイルを構成する巻線16を前記ボビン40の巻芯部42に巻回し、その端部14A,14B,16A,16Bを前記溝50に沿って引き出して、前記絡げ端子taに接続する(
図2(B)参照)ことで、本実施例のトランス10が形成される。このとき、本実施例では、前記空間66に、前記絡げ端子taを設けることとしているため、前記側脚部22,24と中脚部26の位置を実装面90の垂直方向へずらさなかったとき(
図2(C)の中脚部26の底面から絡げ端子taまでの距離(d1))よりも、絡げ端子taまでの距離d2が大きくなる。このため、前記絡げ端子taに巻線14,16を接続した後の巻線上端と、前記コア20A,20Bの側脚部22,24間の絶縁距離d3を確保できる。また、前記実装端子tb,tcと前記中脚部26の間に前記取付ベース48,48´が介在することで、前記実装端子tb,tcと前記中脚部26の絶縁距離も確保できる。このため、ショート防止が可能となる。
【0024】
また、前記巻芯部42に巻線14,16を巻いて、前記巻線部12の実装面90からの高さが、前記側脚部22,24の実装面90からの高さと同等となったとき(
図2(C)参照)、
図2(D)に示すように前記巻線部12が、前記実装面90と離間するように、各部の寸法や位置が設定されているため、低背化が可能となる。以上のようにして形成されたトランス10は、前記実装端子tb,tcを実装面90に半田等で接続することで、実装される。このとき、2ヶ所の実装端子tb,tcを用いることで機械的に、実装強度が高くなる。
【0025】
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)一対の側脚部22,24と、その間に配置された中脚部26とが、一端側で接続された略E型の一対のコア20A,20Bと、前記中脚部26を挿入する中空の巻芯部42と、該巻芯部42の両端に設けられた鍔部46,46´と、該鍔部46,46´の一部であって前記中脚部26の軸方向に延長されており端子が設けられる取付ベース48,48´とからなるボビン40とを備えた表面実装用トランス10において、前記取付ベース48,48´の両端48D,48Fが、実装面の上方から見たときに前記コアの一対の側脚部よりも凹んでおり、かつ、前記実装面に対する前記コアの側脚部の高さが、前記実装面に対する前記中脚部の高さより高くなるように、コア20A,20Bの脚部をずらして、前記側脚部22,24の下方に空間66を形成する。そして、前記取付ベース48,48´の側面48D,48Fに、絡げ端子taを設けることとした。このため、前記巻線14,16を接続した後の絡げ端子taと前記側脚部22,24の間に絶縁距離d3を確保できる。また、前記実装端子tb,tcと前記中脚部26の間にも、前記取付ベース48,48´が介在するため、絶縁距離が確保できる。このため、ショートを防止できる。
【0026】
(2)ショート防止が可能となるため、絶縁が必要な透磁率の高いコア材も使用することができ、同じサイズで高いインダクタンスを得られるため、特性改善につながる。
(3)前記コア20A,20Bの側脚部22,24と中脚部26の実装面90に対する位置をずらすことで、コア20A,20Bの表面積が広くなり、放熱性が向上する。
(4)絡げ端子taを、前記側脚部22,24から露出しない長さに設定することで、トランス10をコアサイズと同等にし、小型化が可能になる。また、小型化により、基板面積を更に小型化できるため、材料コストの削減も可能となる。
(5)前記巻芯部42に巻線14,16を巻き、巻線部12の高さが前記側脚部22,24の高さと同等になったときに、前記巻線部12が、前記実装面90と離間する高さに最適化できるため、低背化が可能となる。
(6)一つの端子用導体54に、2つの実装端子tb,tcを設けることで、実装面90との接地面積が増え、実装強度を向上することができる。
【0027】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、同様の効果を奏する範囲内で適宜変更可能である。例えば、
図6(A-1)及び(A-2)に示す例のように、中脚部26Aを断面略楕円形としてもよい。また、前記実施例では、接続部28の上面28Aに凹部30を設けることでコストを低減することとしたが、
図6(B)に示す例のように、上面28Aをフラットな形状とすることをさまたげるものではない。また、
図6(C-1)に示す例のように、コア70の側脚部72,74及び中脚部76の全てを断面略円形とするようにしてもよい。図示の例では、コアの形状を変えても、前記
図3に示す例と断面積が同等になるように、中脚部76の半径が、側脚部72,74の半径の約√2倍に設定されている。また、ボビン100の巻芯部102は、前記中脚部76の外形に合わせた略正方形となっている。加えて、前記ボビン100の取付ベース110の上面112は、前記コア70の接続部78の形状に沿うように適宜斜面や曲面が形成されている。
【0028】
更に、上面112が凹んだ形状に合わせて、図示のように端子用導体120の形状も変更している。図示の例では、実装端子tbの露出部分が、他方の実装端子tcの露出部分よりも短く、これら実装端子tb,tcの露出位置は、絡げ端子taよりも低い位置となっている。なお、
図6(C-1)に示す例も一例であり、前記実施例1に示した略F字状の端子用導体を用いてもよい。また、
図6(C-2)に示す例のように、ボビン100の巻芯部104を、前記中脚部76の径に合わせた略円形としてもよい。更に、
図6(D)に示す例のように、コア20A,20Bの側脚部22,24の内側に、巻線部12の外周面に沿うように、曲面82,84を設けるようにしてもよい。更に、
図6(E)に示す例のように、前記側脚部22,24に曲面82,84を設けるとともに、巻芯部42Aとして長円状のものを使用し、更に、巻芯部42Aに挿入される中脚部26Bも長円状とすることも可能である。むろん、
図6に示した例も一例であり、前記実施例1と同様の効果を奏する範囲内で、適宜設計変更可能である。
【0029】
(2)前記実施例で示した端子用導体54も一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。例えば、前記実施例1では、一つの端子用導体54に2つの実装端子tb,tcを設けたが、これも一例であり、必要に応じて実装端子数及び実装端子の接地面積は適宜増減してよい。また、実装端子を複数設ける場合、いずれか一つの実装端子を用いるようにしてもよいし、3つ以上の実装端子のいずれか2つ以上を使用するようにしてもよい。また、前記実施例では、端子用導体54を、側面視において略J型としたが、これも一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
(3)前記実施例で示したコア20A,20B,ボビン40,巻線14,16,端子用導体54の材質も一例であり、同様の効果を奏する範囲内で、公知の各種の材料を用いてよい。
(4)前記実施例で示した巻線の巻き順も一例であり、1次、2次の巻き順は問わない。また、1次、2次の巻線を交互に層状にしてもよい。また、前記絶縁シート15は必要に応じて設ければよく、巻線自体に被覆処理をしてもよい。あるいは、巻線表面に保護用のテープを巻いてもよい。
(5)前記実施例では、例えば、DC/DCコンバータ、DC/ACインバータ等に実装するトランスを例に挙げたが、これに限定されるものではなく、本発明は、小型化・低背化が要求される公知の各種の電子機器用のトランスとして適用可能である。