【解決手段】誘電体膜12上に形成される金属蒸着電極14を、マージン部20、22により隔てられた複数の分割電極部24にて構成すると共に、それら複数の分割電極部24の隣り合うもの同士を接続するヒューズ部26を設けてなるフィルムコンデンサ素子において、マージン部20、22を、所定幅で延びる狭幅マージン部20a、22aとヒューズ部26の両側にそれぞれ位置する拡幅マージン部20b、22bとから構成すると共に、かかる拡幅マージン部20b、22bを、その両側に位置する分割電極部24、24の部位をそれぞれ欠損せしめることにより、ヒューズ部26に向かって幅広となるように構成して、ヒューズ部26の長さ(L)が、狭幅マージン部20a、22aの幅方向寸法(W)よりも大きくなるように、構成した。
誘電体膜上に金属蒸着膜からなる金属蒸着電極が形成されてなる構造を有し、且つかかる金属蒸着電極を、該金属蒸着膜が形成されていないマージン部により互いに隔てられた複数の分割電極部にて構成すると共に、該複数の分割電極部の隣り合うもの同士を相互に接続するヒューズ部を、該マージン部を横切るようにして設けてなるフィルムコンデンサ素子において、
前記マージン部を所定幅で延びる狭幅マージン部と前記ヒューズ部の両側にそれぞれ位置する拡幅マージン部とから構成すると共に、かかる拡幅マージン部を、その両側に位置する前記隣り合う分割電極部の部位をそれぞれ欠損せしめることにより、前記ヒューズ部に向かって幅広となるように構成して、該ヒューズ部の長さが、前記狭幅マージン部の幅方向寸法よりも大きくなるように構成したことを特徴とするフィルムコンデンサ素子。
前記拡幅マージン部が、それぞれ、前記ヒューズ部の長さを直径とする半円又はそれよりも大きな形状において設けられている請求項1に記載のフィルムコンデンサ素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、フィルムコンデンサの小型化が強く求められており、そのための手法の一つとして、フィルムコンデンサ素子のエネルギ密度を高めることが検討されている。そのようなフィルムコンデンサ素子の高エネルギ密度化は、フィルムコンデンサ素子の静電容量を高めることや、フィルムコンデンサ素子に印加する電圧を高めること(高電圧化)によって、図られることとなる。
【0006】
しかしながら、上述のような自己保安機能を備えるフィルムコンデンサ素子において、フィルムコンデンサ素子に印加する電圧を高めると、絶縁破壊が発生した場合に、ヒューズ部に流れる電流が大きくなって、ヒューズ部が溶断する際に生ずるエネルギ(溶断エネルギ)が大きくなり、かかるヒューズ部において、大きなジュール熱が発生してしまうという問題がある。そして、それにより、フィルムコンデンサ素子の過熱乃至は誘電体膜の溶融が生じ、ひいてはフィルムコンデンサ全体の破損や故障が惹起される恐れがあるのである。
【0007】
また、そのような高電圧化に対しては、分割電極部の隣り合うものの間の絶縁を確保すると共に、フィルムコンデンサ素子の自己保安機能を有利に発揮させるために、金属蒸着電極におけるマージン部の幅及びヒューズ部の長さが、十分に大きくされている。しかしながら、そのようにしてマージン部の幅及びヒューズ部の長さを大きくすると、金属蒸着電極の面積、即ち誘電体膜の有効面積が減少し、フィルムコンデンサ素子の静電容量が低下してしまうようになる。それ故に、フィルムコンデンサ素子のエネルギ密度が低下してしまうという新たな問題が生じるようになるのである。
【0008】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、自己保安機能が有利に発揮されると共に、エネルギ密度が効率的に高められ得るフィルムコンデンサ素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明者らが、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、高電圧化に伴ない、ヒューズ部の溶断エネルギが急激に大きくなったフィルムコンデンサ素子においては、溶断したヒューズ部の周辺において、金属蒸着膜からなる金属蒸着電極(分割電極部)の一部が消失していることが、確認された。即ち、高電圧化によって、ヒューズ部が溶断する際に、ヒューズ部に流れる電流が大きくなることに加えて、そのようなヒューズ部以外の金属蒸着電極部分を消失せしめるために時間が掛かることにより、ヒューズ部の溶断エネルギが急激に大きくなってしまうことが明らかとなったのである。
【0010】
さらに、本発明者らの検討により、溶断したヒューズ部の周辺における金属蒸着電極の消失部分が、溶断起点を中心とする略円形状を呈しており、その大きさが、フィルムコンデンサ素子に印加された電圧と相関関係を有していることが見出され、また、そのような金属蒸着電極の消失部分の大きさに着目した結果、かかる略円形状の消失部分の直径(溶断距離)に対応するヒューズ部の長さが、単に隣り合う分割電極部間の絶縁を確保するために必要な距離(絶縁距離)よりも大きくなることが、見出されたのである。従って、隣り合う金属蒸着電極間の絶縁距離に対応するマージン部の幅は、ヒューズ部の長さより小さくされていてもよいことが明らかとなったのである。
【0011】
そして、本発明は、かかる知見に基づいて、完成されたものであって、誘電体膜上に金属蒸着膜からなる金属蒸着電極が形成されてなる構造を有し、且つかかる金属蒸着電極を、該金属蒸着膜が形成されていないマージン部により互いに隔てられた複数の分割電極部にて構成すると共に、該複数の分割電極部の隣り合うもの同士を相互に接続するヒューズ部を、該マージン部を横切るようにして設けてなるフィルムコンデンサ素子において、前記マージン部を所定幅で延びる狭幅マージン部と前記ヒューズ部の両側にそれぞれ位置する拡幅マージン部とから構成すると共に、かかる拡幅マージン部を、その両側に位置する前記隣り合う分割電極部の部位をそれぞれ欠損せしめることにより、前記ヒューズ部に向かって幅広となるように構成して、該ヒューズ部の長さが、前記狭幅マージン部の幅方向寸法よりも大きくなるように構成したことを特徴とするフィルムコンデンサ素子を、その要旨とするものである。
【0012】
なお、このような本発明に従うフィルムコンデンサ素子の望ましい態様の一つによれば、前記拡幅マージン部が、それぞれ、前記ヒューズ部の長さを直径とする半円又はそれよりも大きな形状において設けられている。
【0013】
また、本発明に従うフィルムコンデンサ素子にあっては、好ましくは、前記ヒューズ部が、その長さ方向中央部において、最も抵抗値の高い高抵抗部を有するように、構成されている。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明に従うフィルムコンデンサ素子にあっては、マージン部が狭幅マージン部と拡幅マージン部とから構成されており、ヒューズ部の両側にそれぞれ位置する拡幅マージン部が、その両側に位置する隣り合う分割電極部の部位をそれぞれ欠損せしめることにより、ヒューズ部に向かって幅広となるように構成されているところから、溶断せしめられるヒューズ部の周辺において、かかるヒューズ部以外の金属蒸着電極の消失が有利に回避されるようになっている。そのため、ヒューズ部における溶断エネルギの上昇が抑制され、ヒューズ部で発生するジュール熱が有利に低減される。これによって、フィルムコンデンサ素子の過熱乃至は誘電体膜の溶融が阻止されることとなり、以て、フィルムコンデンサ素子における自己保安機能が有利に発揮されることとなるのである。
【0015】
なお、本発明に従うフィルムコンデンサ素子にあっては、フィルムコンデンサ素子に印加する電圧を高くした場合であっても、上述のようにして、フィルムコンデンサ素子の自己保安機能が有利に発揮される。従って、フィルムコンデンサ素子に印加する電圧を高めること(高電圧化)によって、フィルムコンデンサ素子のエネルギ密度を効果的に高めることが可能となる特徴を有している。
【0016】
また、本発明に従うフィルムコンデンサ素子にあっては、拡幅マージン部によって、ヒューズ部の長さが、狭幅マージン部の幅方向寸法よりも大きくなるように構成されているところから、自己保安機能を発揮するために必要なヒューズ部の長さが、有利に確保される。換言すれば、マージン部における拡幅マージン部を除く狭幅マージン部の幅が、ヒューズ部の長さよりも小さくされているところから、誘電体膜上に形成されている金属蒸着電極の面積、即ち誘電体膜の有効面積が有利に大きくされることとなるのであり、これによって、フィルムコンデンサ素子の静電容量が有利に高められ、以て、フィルムコンデンサ素子のエネルギ密度が効率的に高められ得ることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の代表的な実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0019】
先ず、
図1には、本発明に従う構造を有するフィルムコンデンサ素子を与える金属化フィルムの一例が、断面形態において示されている。そこにおいて、金属化フィルム10は、誘電体膜としての樹脂フィルム12上に、金属蒸着膜からなる金属蒸着電極14が形成されて、構成されている。なお、図中16は、後述するメタリコン電極の付着性向上のために、樹脂フィルム12の幅方向(
図1における左右方向)一端部に位置する金属蒸着電極14部分上に形成されているヘビーエッジである。このようなヘビーエッジ16は、亜鉛等の金属材料を蒸着材として用いた、PVDやCVDの範疇に属する、従来から公知の真空蒸着法等により形成されている。
【0020】
ここで、金属化フィルム10を構成する樹脂フィルム12は、ポリエチレンテレフタレート製のフィルムからなり、0.5〜10μm程度の適度に薄い厚さを有している。かかるポリエチレンテレフタレートは、誘電率が比較的高く且つ安価であるといった特徴を有している。なお、そのような樹脂フィルムの形成材料としては、ポリエチレンテレフタレートに何等限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレンやポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、及びフッ素系樹脂等、従来のフィルムコンデンサにおいて樹脂フィルムの形成材料として使用される絶縁性の樹脂材料が適宜に用いられ得る。
【0021】
また、金属蒸着電極14は、樹脂フィルム12上に形成された金属蒸着膜からなり、アルミニウムや亜鉛等の公知の金属材料を蒸着材として用いて、PVDやCVDの範疇に属する、従来から公知の真空蒸着法を実施することにより、樹脂フィルム12上に形成されるものである。このような金属蒸着電極14にあっては、膜抵抗値が1〜50Ω/cm
2 程度となるように、その形成材料や膜厚等が適宜に決定されることとなる。なお、樹脂フィルム12の幅方向におけるヘビーエッジ16の形成側とは反対側の端部部位には、金属蒸着電極14が何等形成されていない金属非蒸着部分からなる端部マージン18が設けられている。
【0022】
そして、
図2に示されるように、金属蒸着電極14は、金属蒸着膜が形成されていないマージン部20、22により互いに隔てられた複数の分割電極部24にて構成されている。具体的には、マージン部としての、樹脂フィルム12の長さ方向(
図2における上下方向)に真っ直ぐに延びる複数の縦分割マージン20と、樹脂フィルム12の幅方向に真っ直ぐに延びる複数の横分割マージン22とにより、金属蒸着電極14が、それら縦分割マージン20と横分割マージン22とにて囲まれてなる略矩形の分割電極部24を複数有し、且つそれら複数の分割電極部24が縦横に配置されてなる構造とされている。
【0023】
さらに、それら複数の分割電極部24のうち、樹脂フィルム12の幅方向や長さ方向において隣り合うもの同士の間には、狭幅の金属蒸着膜部分からなるヒューズ部26が、縦分割マージン20や横分割マージン22を横切るようにして設けられており、複数の分割電極部24の隣り合うもの同士が相互に電気的に接続されている。要するに、金属蒸着膜からなる金属蒸着電極14が、縦分割マージン20と横分割マージン22とにて囲まれてなる分割電極部24の複数と、それら複数の分割電極部24の隣り合うもの同士を相互に接続するヒューズ部26の複数とからなる蒸着パターンにおいて、構成されているのである。
【0024】
ところで、本実施形態における金属化フィルム10においては、縦分割マージン20及び横分割マージン22からなるマージン部、並びにヒューズ部26の形態に、大きな特徴が存しているのである。即ち、
図2に示されるように、マージン部としての縦分割マージン20及び横分割マージン22が、所定の幅方向寸法(W)で延びる狭幅マージン部20a及び22aと、各ヒューズ部26の両側にそれぞれ位置する拡幅マージン部20b及び22bとから構成されている。
【0025】
より詳細には、
図3に示されるように、ここでは、縦分割マージン20において、ヒューズ部26の両側にそれぞれ位置する拡幅マージン部20b、20bが、かかる縦分割マージン20を挟んで両側に位置する隣り合う分割電極部24、24の部位が、それぞれ欠損せしめられることにより、ヒューズ部26に向かって幅広となるように構成されている。言い換えれば、ヒューズ部26と隣接する分割電極部24、24の一部に設けられた金属蒸着膜の非形成部分によって、狭幅マージン部20aよりも大きな幅を有する拡幅マージン部20b、20bが形成されているのである。更に、そのような拡幅マージン部20b、20bは、それぞれ、ヒューズ部26の長さ:Lを直径とする半円形状(
図3において二点鎖線にて示す)において設けられている。
【0026】
かくして、金属化フィルム10において、ヒューズ部26の長さ:Lが、狭幅マージン部20aの幅方向寸法:Wよりも大きくなるように、換言すれば、ヒューズ部26の長さ:Lに対して、狭幅マージン部20aの幅:Wが小さくなるように、構成されているのである。なお、金属化フィルム10においては、複数の縦分割マージン20及び複数の横分割マージン22からなるマージン部、並びにそれら縦分割マージン20及び横分割マージン22を横切るようにして設けられている複数のヒューズ部26の全てにおいて、上述の如き構成が採用されている。
【0027】
そして、
図4に示されるように、かかる金属化フィルム10の複数を用い、それらを樹脂フィルム12(誘電体膜)と金属蒸着電極14とが交互に位置するように、互いに重ね合わせて積層することにより、平板状乃至はブロック状の所謂積層型のフィルムコンデンサ素子28(以下、コンデンサ素子28とも称する)を得ることが出来る。ここで、金属蒸着電極14は、コンデンサ素子28の内部電極としての機能を発揮することとなる。なお、かかるコンデンサ素子28においては、複数の金属化フィルム10のうちの隣り合う金属化フィルム10、10の各端部マージン18、18が、コンデンサ素子28の幅方向(
図4における左右方向)両側において、それぞれ互い違いに位置するように、配置されている。
【0028】
また、コンデンサ素子28の幅方向両側の面には、一対のメタリコン電極30、30が形成されている。それらのメタリコン電極30、30は、コンデンサ素子28の外部電極としての機能を発揮するものであり、それぞれ、所定の金属材料を用いて、公知の手法で溶射することにより形成された金属被覆膜にて、構成されている。このようなメタリコン電極の形成材料としては、特に限定されるものではなく、アルミニウムや亜鉛等の金属材料が、適宜に用いられ得る。
【0029】
従って、上述の如き構成を有する金属化フィルム10の複数を用いて作製されたコンデンサ素子28にあっては、メタリコン電極30、30を通じて電圧が印加された状態(使用状態)において、重なり合う金属化フィルム10、10の金属蒸着電極14、14間で絶縁破壊が生じた場合に、絶縁破壊が生じた分割電極部24乃至はその周辺に位置する分割電極部24に接続された狭幅のヒューズ部26を流れる過大な短絡電流により生じるジュール熱によって、ヒューズ部26が蒸散して消失せしめられる(ヒューズ部26が溶断せしめられる)。このようにして、コンデンサ素子28においては、絶縁破壊の発生した分割電極部24乃至はその周辺に位置する分割電極部24からなる金属蒸着電極14部分を、他の金属蒸着電極14部分(分割電極部24)から切り離す自己保安機能が発揮されるのである。
【0030】
以上の説明から明らかなように、本実施形態では、縦分割マージン20及び横分割マージン22が、それぞれ、狭幅マージン部20a、22aと拡幅マージン部20b、22bとから構成されており、各ヒューズ部26のそれぞれに隣接する拡幅マージン部20b、22bが、縦分割マージン20や横分割マージン22の両側に位置する隣り合う分割電極部24、24の部位をそれぞれ欠損せしめることにより、ヒューズ部26に向かって幅広となるように構成されているところから、溶断せしめられるヒューズ部26の周辺において、かかるヒューズ部26以外の金属蒸着電極14部分の消失が有利に回避されるようになっている。そのため、コンデンサ素子28においては、ヒューズ部26における溶断エネルギの上昇が抑制され、ヒューズ部26で発生するジュール熱が有利に低減される。これにより、コンデンサ素子28の過熱乃至は樹脂フィルム12の溶融が阻止されて、コンデンサ素子28における自己保安機能が有利に発揮されるのである。
【0031】
特に、ここでは、拡幅マージン部20b、22bが、その両側に位置する分割電極部24、24の一部をそれぞれ欠損せしめることにより構成されているところから、溶断の起点となるヒューズ部26の一部位を中心として略円形状に拡がることとなる金属蒸着膜(金属蒸着電極14)の消失部分に対して、それら分割電極部24、24の消失が効果的に回避されるようになっているのであり、以て、上述の如きコンデンサ素子28の自己保安機能が、より有利に発揮されることとなる。
【0032】
そして、コンデンサ素子28においては、印加する電圧を高くした場合であっても、ヒューズ部26以外の金属蒸着電極14部分の消失が回避され得るところから、狭幅の金属蒸着膜からなるヒューズ部26が短時間で速やかに溶断せしめられることとなる。そのため、ヒューズ部26の溶断エネルギ及びそこで発生するジュール熱が低減されて、コンデンサ素子28の自己保安機能が有利に発揮されることとなる。従って、そのようなコンデンサ素子28における高電圧化が可能となって、かかるコンデンサ素子28のエネルギ密度を効果的に高めることが出来るのである。
【0033】
また、コンデンサ素子28にあっては、拡幅マージン部20b、22bによって、ヒューズ部26の長さ:Lが、狭幅マージン部20a、22aの幅方向寸法:Wよりも大きくなるように構成されているところから、自己保安機能を発揮するために必要なヒューズ部26の長さ:Lが有利に確保される。更に、換言すれば、縦分割マージン20及び横分割マージン22における拡幅マージン部20b、22bを除く狭幅マージン部20a、22aの幅:Wが、ヒューズ部26の長さ:Lよりも小さくされているところから、平面視(
図2参照)において樹脂フィルム12上に形成されている金属蒸着電極14の面積、即ち誘電体膜としての樹脂フィルム12の有効面積が有利に大きくされることとなるのであり、これによって、コンデンサ素子28の静電容量が有利に高められ、以て、コンデンサ素子28のエネルギ密度が効率的に高められ得ることとなるのである。
【0034】
さらに、本実施形態においては、拡幅マージン部20b、22bが、それぞれ、ヒューズ部:Lの長さを直径とする半円形状において設けられているところから、溶断の起点となるヒューズ部26の一部位を中心として略円形状に拡がることとなる金属蒸着電極14の消失部分に対して、ヒューズ部26以外の金属蒸着電極14部分の消失を効果的に回避しつつ、かかる金属蒸着電極14を大きな面積で形成して、誘電体膜としての樹脂フィルム12の有効面積をより効率的に確保することが出来るのである。
【0035】
次に、
図5には、本発明に従う構造を有するフィルムコンデンサ素子を与える金属化フィルムの別の実施形態が、平面形態において示されている。なお、
図5に示される金属化フィルム32において、先の実施形態に係る金属化フィルム10と同様な構造の部分には、同一の符号を付して、詳細な説明は省略することとする。
【0036】
かかる
図5に示される金属化フィルム32においては、ヒューズ部26の幅方向寸法が、ヒューズ部26の長さ方向中央部に向かって漸減せしめられており、これによって、ヒューズ部26の長さ方向中央部において、最も幅の狭い狭幅部34が形成されている。このような狭幅部34においては、金属蒸着膜としての断面積が小さくなるため、ヒューズ部26における狭幅部34以外の部分と比較して、その抵抗値が相対的に高くなる。即ち、ヒューズ部26が、その長さ方向中央部において、最も抵抗値の高い高抵抗部としての狭幅部34を有するように構成されているのである。なお、ここでは、拡幅マージン部20b、20bは、ヒューズ部26の長さ方向中央部(狭幅部34)における幅方向両側端部を中心とする半円形状において設けられている(
図5において二点鎖線にて示す)。
【0037】
このような構成を有する金属化フィルム32の複数を用いて作製されたコンデンサ素子にあっては、その使用状態で絶縁破壊が生じ、ヒューズ部26に短絡電流が流れた場合に、高抵抗部である狭幅部34において、発生するジュール熱が大きくなり、溶断し易くなるため、かかる狭幅部34の一部位が溶断の起点となり易い。また、一旦、狭幅部34において溶断が開始されると、かかる狭幅部34の幅が更に小さくなって、抵抗値が更に高くなるため、溶断が、ヒューズ部26の長さ方向中央部(狭幅部34)において、ヒューズ部26の幅方向に向かって進行するようになる。
【0038】
すなわち、ヒューズ部26が、その長さ方向中央部において、最も抵抗値の高い狭幅部34とされているところから、ヒューズ部26を安定してその長さ方向中央部で溶断せしめることが出来る。これにより、縦分割マージン20及び横分割マージン22の両側に位置する分割電極部24、24をそれぞれ欠損せしめることにより構成された拡幅マージン部20b、22bによる、ヒューズ部26以外の金属蒸着電極14部分(分割電極部24)の消失抑制効果をより有利に享受することが可能となって、ヒューズ部26における溶断エネルギ及びそこで発生するジュール熱が低減され、以て、コンデンサ素子における自己保安機能が更に有利に発揮されることとなるのである。そのため、そのようなコンデンサ素子における高電圧化が可能となって、かかるコンデンサ素子のエネルギ密度をより効果的に高めることが出来るようになるのである。
【0039】
さらに、ここでは、ヒューズ部26が狭幅部34を有するように構成されていることと、拡幅マージン部20b、22bが半円形状において設けられていることとの相乗効果が発揮されるようになる。即ち、ヒューズ部26の長さ方向中央部(狭幅部34)における幅方向両側端部を中心とする半円形状において設けられている拡幅マージン部20b、22bが、溶断の起点となるヒューズ部26の狭幅部34の一部位を中心として略円形状に拡がることとなる金属蒸着電極14の消失部分に対応せしめられていることにより、コンデンサ素子において、自己保安機能が有利に発揮されることによる高電圧化、及び誘電体膜(樹脂フィルム12)の有効面積を効率的に確保することによる静電容量の増大を図ることが可能となり、以て、コンデンサ素子のエネルギ密度をより一層効果的に高めることが出来るようになるのである。
【0040】
なお、ヒューズ部26の長さ方向中央部において設けられる高抵抗部としては、上述の如き狭幅部34に係る態様に何等限定されるものではなく、
図6乃至は
図9に例示されるような態様が、何れも採用され得るものである。先ず、
図6及び
図7に示されるヒューズ部26においては、それぞれ、ヒューズ部26の長さ方向中央部において、金属非蒸着部36の一つ又は複数が形成されることにより、ヒューズ部26の有効幅が狭くされてなる狭幅部38又は40が設けられている。また、
図8の(a)及び(b)に示されるヒューズ部26にあっては、その長さ方向中央部において、金属蒸着膜の膜厚が薄くされてなる[
図8の(b)参照]薄膜部42が設けられている。これらの狭幅部38、40及び薄膜部42おいては、ヒューズ部26における他の部分に対して、金属蒸着膜としての断面積が小さくされていることにより、その抵抗値が相対的に高くされている。即ち、それら
図6乃至は
図8に示されるヒューズ部26が、その長さ方向中央部において、最も抵抗値の高い高抵抗部としての狭幅部38、40及び薄膜部42を有するように構成されているのである。
【0041】
また、
図9に示されるように、ヒューズ部26の長さ方向の中央部44(
図9におけるクロスハッチ部)の態様を、ヒューズ部26の他の部分と異ならしめることにより、かかる中央部44において高抵抗部を構成することも可能である。具体的な態様としては、例えば、中央部44において、ヒューズ部26の他の部分よりも、金属蒸着膜の密度を疎にすること、金属蒸着膜を構成する金属材料の結晶性を高くする(又は低くする)こと、及び金属蒸着膜を構成する金属材料の酸化度を高くする(又は低くする)こと等が挙げられる。更に、中央部44を、ヒューズ部26の他の部分よりも抵抗値の高い金属材料、例えば、予め結晶性を高くした(又は低くした)金属材料、予め酸化度を高くした(又は低くした)金属材料、比較的抵抗値の高い亜鉛等の異種金属材料、及び比較的抵抗値の高い亜鉛等の異種金属材料が混入せしめられた材料等を用いて形成することも出来るのである。なお、高抵抗部としては、ここに例示した形態乃至は態様以外のものであっても、何等差支えない。
【0042】
以上、本発明の代表的な実施形態について幾つか詳述してきたが、それらは、あくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0043】
例えば、前述の実施形態においては、拡幅マージン部20b、22bが、ヒューズ部26の長さ:Lを直径とする半円形状において設けられているが、何等これに限られるものではなく、
図10に示されるように、拡幅マージン部20b(22b)が、ヒューズ部26に向かってその幅が直線的に漸増せしめられるような形態において設けられていてもよい。また、
図11に示されるように、拡幅マージン部20b(22b)が、ヒューズ部26の長さ:Lを直径とする半円形状(
図11において二点鎖線で示す)よりも大きな半楕円形状において設けられていてもよい。更に、
図12及び
図13に示されるように、拡幅マージン部20b(22b)が、その両側に位置する隣り合う分割電極部24、24の部位を、それぞれ非対称に欠損せしめることにより構成されていてもよい。このようにして、拡幅マージン部20b、22bを設けた場合であっても、ヒューズ部26以外の金属蒸着電極14部分の消失を抑制することは可能である。
【0044】
加えて、ヒューズ部26の一部として、その長さ方向両端部における分割電極部24、24との接続部位にR形状を設けてもよい。これにより、ヒューズ部26が長さ方向両端部から溶断することを有利に回避することが出来る。また、ヒューズ部26の長さ方向中央部と、狭幅マージン部20a、22aの幅方向中央部と、拡幅マージン部20b、22bの幅方向中央部とは、必ずしも同一直線上において存在していなくてもよい(
図13参照)。ただし、本発明の効果をより有利に得るためには、それらヒューズ部26の長さ方向中央部と、狭幅マージン部20a、22aの幅方向中央部と、拡幅マージン部20b、22bの幅方向中央部とが、同一直線上において存在していることが、望ましい。
【0045】
また、本発明に従う構造を有するコンデンサ素子は、例示の金属化フィルム10、32の複数を用いて構成されるものに何等限られるものではない。例えば、
図14に示されるような、樹脂フィルム12上に複数の金属蒸着電極14と誘電体膜としての複数の蒸着重合膜46とが、交互に積層されてなる、積層フィルム48の一つ又は複数を用いて、コンデンサ素子を構成することも可能である。なお、そのような積層フィルム48を構成する、蒸着重合膜46の形成材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリユリア樹脂膜や、ポリアミド樹脂膜、ポリイミド樹脂膜、ポリアミドイミド樹脂膜、ポリエステル樹脂膜、ポリアゾメチン樹脂膜、ポリウレタン樹脂膜、アクリル樹脂膜等、真空蒸着重合法によって成膜可能な公知の樹脂膜が挙げられる。
【0046】
さらに、必要に応じて、コンデンサ素子28のメタリコン電極30、30の形成面以外の面に、保護膜を設けることも可能である。このような保護膜は、所定の樹脂材料からなる樹脂フィルムや蒸着膜、又は蒸着重合膜等によって形成されるものである。
【0047】
なお、上記の実施形態においては、コンデンサ素子28が、金属化フィルム10の複数を互いに重ね合わせて積層することにより、平板状乃至はブロック状を呈する所謂積層型フィルムコンデンサ素子として構成されていたが、これに代えて、金属化フィルム10、32や積層フィルム48の一つ又は複数を一回乃至は複数回巻回することにより、所謂巻回型フィルムコンデンサ素子として構成することも可能である。
【0048】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そして、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。
【0050】
−金属化フィルムの作製−
先ず、厚さ2.5μmの、所定幅で延びる長尺のポリエチレンテレフタレート製フィルム(誘電体膜)上に、膜抵抗値が2Ω/cm
2 とされた所定厚さのアルミニウム蒸着膜(金属蒸着膜)からなる金属蒸着電極を、下記実施例及び比較例1、2に従う蒸着パターンで形成してなる長尺の金属化フィルムを準備した。
【0051】
ここで、実施例に係る金属化フィルムとしては、金属蒸着電極を、
図2及び
図3に示されるような蒸着パターン、即ちマージン部が狭幅マージン部と拡幅マージン部とから構成されてなる蒸着パターンにおいて形成した。なお、このような実施例においては、ヒューズ部の長さ(L)を0.5mm、狭幅マージン部の幅(W)を0.2mmとすると共に、ヒューズ部の幅方向寸法は0.2mmとした。
【0052】
一方、比較例1に係る金属化フィルムとしては、金属蒸着電極を、マージン部が全長に亘って一定の幅で延びるようにして構成されてなる蒸着パターンにおいて形成した。なお、このような比較例1においては、ヒューズ部の長さ及びマージン部の幅を共に0.2mmとし、ヒューズ部の幅方向寸法は0.2mmとした。
【0053】
さらに、比較例2に係る金属化フィルムとしては、比較例1と同様に、金属蒸着電極を、マージン部が全長に亘って一定の幅で延びるようにして構成されてなる蒸着パターンにおいて形成した。なお、このような比較例2においては、ヒューズ部の長さ及びマージン部の幅を共に0.5mmとし、ヒューズ部の幅方向寸法は0.2mmとした。
【0054】
−溶断エネルギの測定−
先ず、上記実施例及び比較例1、2に係る金属化フィルムを、ヒューズ部が1つだけ存在するように所定範囲で切り出した試験片を用い、かかる試験片におけるヒューズ部の長さ方向両側の金属蒸着電極部分(分割電極部)に対して、1.36Ωの抵抗器及び直流電源を直列に接続して、試験回路を構成した。なお、試験回路においては、直流電源に対して、80μFのフィルムコンデンサが並列に接続されており、抵抗器に対して、オシロスコープが並列に接続されている。
【0055】
次いで、直流電源により試験回路に対して所定の電圧を印加し、各試験片においてヒューズ部を溶断させた。
【0056】
そして、オシロスコープを用いて、試験回路に電圧が掛かった時間、即ち各試験片におけるヒューズ部の溶断に要した時間と、抵抗器に掛かる電圧を測定した。また、測定された抵抗器に掛かる電圧の値から、ヒューズ部(試験回路)に流れた電流及びヒューズ部に掛かった電圧を算出すると共に、それらの時間、ヒューズ部に流れた電流、及びヒューズ部に掛かった電圧の値の積によりヒューズ部の溶断に要した電気量を算出し、かかる電気量を溶断エネルギとした。更に、ヒューズ部が溶断した後の各試験片について、略円形状を呈する金属蒸着電極の消失部分の直径を顕微鏡を用いて測定した。
【0057】
ここで、直流電源により印加される電圧を変化させた場合の、金属蒸着電極の消失部分の直径と溶断エネルギとの関係を、下記表1に示す。なお、ここでは、それらの溶断エネルギを、金属蒸着電極の消失部分の直径が0.1mmのときの実施例における溶断エネルギを1とした場合の比によって示す。
【0058】
【表1】
【0059】
かかる表1の結果より明らかなように、比較例1において、金属蒸着電極の消失部分の直径がヒューズ部の長さ(0.2mm)を超える場合に、溶断エネルギが急激に上昇することが認められる。即ち、そのような場合にあっては、ヒューズ部の長さを超えて、ヒューズ部以外の金属蒸着電極部分の消失が起きるために、溶断エネルギが高くなってしまうことが確認されるのである。
【0060】
−誘電体膜の有効面積−
上記実施例及び比較例1、2に係る金属化フィルムを、所定の長さの範囲において切り出し、平面視における樹脂フィルムの全面積及び金属蒸着電極の面積を測定し、かかる樹脂フィルムの全面積に対する金属蒸着電極の面積の割合を、誘電体膜(樹脂フィルム)の有効面積(%)として算出した。その結果を、下記表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
かかる表2の結果より明らかなように、マージン部の幅及びヒューズ部の長さが共に大きくされた比較例2に係る金属化フィルムにおいては、誘電体膜の有効面積が著しく減少してしまっているのに対し、実施例に係る金属化フィルムにおいては、マージン部の幅及びヒューズ部の長さが共に小さくされた比較例1に係る金属化フィルムと略同等の誘電体の有効面積が確保されているのである。
【0063】
−フィルムコンデンサ素子の限界電圧試験−
先ず、上記実施例及び比較例1、2に係る金属化フィルムを1200層積層してなるフィルムコンデンサ素子を、各20個ずつ作製した。
【0064】
次いで、フィルムコンデンサ素子を直流電源(松定プレシジョン株式会社製、商品名:HJPQ−3P10)に接続して、試験回路を構成し、かかる直流電源により100Vの電圧を5分間に亘って印加して、その間の試験回路に流れる電流を継続的に測定した。その後、フィルムコンデンサ素子を一旦放電させた。
【0065】
そして、各フィルムコンデンサ素子に対して、直流電源による印加電圧を100Vから1000Vまで100Vずつ増加させて、上記の測定を繰り返し行なった。ここで、電圧印加中に試験回路に絶縁破壊により2mA以上の電流が流れたフィルムコンデンサ素子を保安性不良の発生したフィルムコンデンサ素子として、その個数を計上した。各印加電圧における保安性不良の発生数及び累計数を、下記表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
かかる表3の結果より明らかなように、マージン部の幅及びヒューズ部の長さが共に小さくされた比較例1に係るフィルムコンデンサ素子においては、保安性不良の発生数が著しく多くなっている。これに対し、本発明に従う実施例に係るフィルムコンデンサ素子においては、保安性不良の発生数が、マージン部の幅及びヒューズ部の長さが共に大きくされた比較例2に係るフィルムコンデンサ素子と同等の少ない数となっている。即ち、実施例に係るフィルムコンデンサ素子においては、自己保安機能が適切に発揮されることにより、フィルムコンデンサ素子全体の保安性不良の発生が抑制乃至は阻止されていることが、理解されるのである。