【解決手段】実施形態の眼科装置は、検査部と、記憶部と、測位信号受信部と、信号解析部と、設定情報選択部と、制御部とを備える。検査部は、被検眼を検査するための構成を備える。記憶部は、複数の地点及び/又は複数の地域のそれぞれに対して設定情報が関連付けられた関連情報を予め記憶する。測位信号受信部は、測位システムからの信号を受信する。信号解析部は、受信された信号を解析して現在位置を示す位置情報を生成する。設定情報選択部は、生成された位置情報に対応する地点又は地域に関連付けられた設定情報を関連情報から選択する。制御部は、選択された設定情報に基づいて制御を実行する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態に係る眼科装置及びその制御方法の例を詳細に説明する。実施形態の眼科装置は、任意の眼科撮影装置、任意の眼科測定装置又は任意の複合機であってよい。眼科撮影装置の例として、OCT装置、眼底カメラ、スリットランプ、SLO、手術用顕微鏡などがある。眼科測定装置としては、自覚検眼装置(視標呈示装置、レフラクターヘッド(フォロプタ))、視機能検査装置、レフラクトメータ、ケラトメータ、眼圧計、視野計などがある。
【0011】
〈第1の実施形態〉
[構成]
任意種別の眼科装置に関する実施形態を説明する。本実施形態の眼科装置の構成の一例を
図1に示す。眼科装置1は、被検眼Eを撮影する機能、及び/又は被検眼Eの特性を測定する機能を備える。眼科装置1は、制御プロセッサ10と、記憶部20と、検査部30と、ユーザインターフェイス(UI)40と、測位信号受信部50と、データ処理部60とを含む。
【0012】
(制御プロセッサ10)
制御プロセッサ10は、眼科装置1の各部を制御する。本明細書において「プロセッサ」は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。制御プロセッサ10は、たとえば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。記憶回路や記憶装置の少なくとも一部は、制御プロセッサ10に含まれていてよい。制御プロセッサ10により実行可能な処理については後述する。
【0013】
(記憶部20)
記憶部20は、各種のデータを記憶する。記憶部20に記憶されるデータとしては、検査部30により取得されたデータ(撮影データ、測定データ等)や、被検者及び被検眼に関する情報などがある。記憶部20には、眼科装置1を動作させるための各種のコンピュータプログラムやデータが記憶されていてよい。
【0014】
記憶部20には関連情報21が記憶される。関連情報21においては、複数の地点及び/又は複数の地域のそれぞれに対して設定情報が関連付けられている。関連情報21の構成例の概要を
図2に示す。
図2に示す関連情報21はテーブル情報であり、このテーブル情報には、地点(地点群)又は地域を示す欄と、設定情報を示す欄とが設けられている。地点又は地域を示す欄には、地点又は地域を示す複数のエントリA1、A2、A3、・・・・が記録されている。設定情報を示す欄には、たとえば、設定情報の内容(設定内容)を示す情報又は設定情報の格納先(たとえば記憶部20内のアドレス情報)を示す複数のエントリB1、B2、B3、・・・・が記録されている。更に、各i=1,2,3,・・・・について、地点又は地域を示すエントリAiと設定情報を示すエントリBiとが関連付けられている。
【0015】
ここで、「地点」は、地上の位置を意味し、たとえば任意の測地系(経緯度、標高)によって表現される。また、「地域」は、地上に規定された範囲を意味し、たとえば、国、州、県等の行政的範囲や、使用言語の共通性や類似性に基づき規定された言語的範囲や、地理的・気候的な共通点に基づき規定された地理的範囲や、人種的・遺伝学的・社会学的・歴史学的な共通性や類似性に基づき規定された人類学的範囲、病理学的な共通性や類似性に基づき規定された病理学的範囲などがある。
【0016】
また、「設定情報」は、眼科装置1の動作に関する各種の設定パラメータを含む。設定パラメータの例として、被検眼Eの検査(撮影、測定)を行うために検査部30に設定される任意の数値や状態やプログラムやプロトコルがある。他の例として、検査部30により取得された検査データを処理するためにデータ処理部60に設定される任意の数値やプログラムやプロトコルがある。更なる例として、情報の表示・入力や眼科装置1の操作を行うユーザインターフェイス40を制御するための数値やプログラムやプロトコルがある。また、設定情報は、眼科装置1を構成するこのような構成要素の幾つかを連係して動作させるための動作モード(制御モード)を含んでもよい。
【0017】
(検査部30)
検査部30は、被検眼Eを検査するための構成を含む。検査部30は、眼科装置1が提供する機能(撮影機能、測定機能等)に応じた構成を備える。たとえば、検査部30には、光学素子、アクチュエータ、機構、回路、表示デバイス、受光素子、イメージセンサなどが設けられる。検査部30の構成は従来の眼科装置のそれと同様であってよい。
【0018】
(ユーザインターフェイス40)
ユーザインターフェイス40は、情報の表示、情報の入力、操作指示の入力など、眼科装置1とそのユーザとの間で情報をやりとりするための機能を提供する。ユーザインターフェイス40は、出力機能と入力機能とを提供する。出力機能を提供するための構成の例として、フラットパネルディスプレイ等の表示装置や、音声出力装置や、印刷出力装置や、外部装置との通信インターフェイスや、記録媒体への書き込みを行うデータライタなどがある。入力機能を提供するための構成の例として、ボタン、キー、ポインティングデバイス、マイクロフォンなどがある。ユーザインターフェイス40は、たとえばタッチパネルディスプレイのような出力機能と入力機能とが一体化されたデバイスを含んでよい。また、ユーザインターフェイス40は、情報の入出力を行うためのグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)を含んでよい。
【0019】
(測位信号受信部50)
測位信号受信部50は、測位システムからの信号を受信する。測位システムとしては、航法衛星(及び地上局)からの電波信号に基づいて現在位置を測定する航法衛星システム(Navigation Satellite System:NSS)や、地上局からの電波信号に基づいて現在位置を測定するシステムがある。測位システムの典型的な例として、グローバルポジショニングシステム(GPS)、ガリレオ(Galileo)、グロナス(GLObal Navigation Satellite System:GLONASS)などがある。測位信号受信部50は、1以上の測位システムからの信号を受信可能である。測位信号受信部50は、従来のGPS受信器等と同様に、アンテナや回路を含む。
【0020】
(データ処理部60)
データ処理部60は、各種のデータ処理を実行する。データ処理部60はプロセッサを含む。データ処理部60は、信号解析部61と、設定情報選択部62と、検査データ処理部63とを含む。
【0021】
(信号解析部61)
信号解析部61は、測位信号受信部50により受信された信号を解析して現在位置を示す位置情報(現在位置情報)を生成する。測位信号から現在位置を求めるための処理は既知である。たとえば、測位信号受信部50が航法衛星システムからの電波信号を受信するよう構成されている場合、信号解析部61は、測位信号受信部50により取得された複数の電波信号(たとえば少なくとも4つの航法衛星からの電波信号)を解析することで現在位置情報を生成する。
【0022】
現在位置情報は、関連情報21に記録されている地点・地域を示すエントリと同種の位置情報であってよい(たとえば同じ測地系による座標値であってよい)。或いは、関連情報21に含まれる地点・地域を示すエントリと現在位置情報とが異なる種別である場合、一方の位置情報を他方の位置情報に変換する処理をデータ処理部60(たとえば信号解析部61、設定情報選択部62又は検査データ処理部63)が実行するように構成することが可能である。
【0023】
測位信号受信部50及び/又は信号解析部61は、眼科装置1に外付けされてもよい。たとえば、携帯端末に搭載された測位機能(GPS機能等)を利用して現在位置情報を取得し、それを眼科装置1に入力するように構成することが可能である。
【0024】
測位信号受信部50が2以上の測位システムからの信号を受信可能である場合、信号解析部61は、それぞれの測位システムに対応した信号解析を実行することで、より精度や確度の高い現在位置情報を取得することができる。逆に、現在位置情報に精度や確度がそれほど求められない場合、その程度に応じた信号解析手法を適用することが可能である。
【0025】
また、たとえばGPSのように、測位信号が時刻に関する情報を含む場合、信号解析部61は、測位信号受信部50により受信された信号を解析して時刻情報を生成することができる。更に、信号解析部61は、測位信号に含まれる時刻(航法衛星からの電波信号の発信時刻等)を補正する処理や、測位信号に含まれる時刻を現在地が属するタイムゾーンにおける現在時刻に変換する処理などを実行してよい。ここで、現在地が属するタイムゾーンは、デフォルト設定されてもよいし、信号解析部61が取得した現在地情報に基づき決定されてもよい。
【0026】
(設定情報選択部62)
設定情報選択部62は、信号解析部61により生成された現在位置情報に対応する地点又は地域に関連付けられた設定情報を、関連情報21から選択する。関連情報21は、制御プロセッサ10により設定情報選択部62に提供される。或いは、設定情報選択部62は、関連情報21が格納されている記憶部20にアクセス可能である。
【0027】
設定情報選択部62が実行する処理の具体例を説明する。信号解析部61により取得された現在位置情報が所定の測地系の3次元座標値P(x1,y1,z1)を含む場合、設定情報選択部62は、3次元座標値Pが示す地点、又はこの地点の属する地域を、関連情報21の「地点・地域」欄に記録されたエントリAi(i=1,2,3,・・・・)のうちから選択する。
【0028】
ここで、エントリAiと3次元座標値Pとが同じ測位系で表現されている場合、設定情報選択部62は、3次元座標値Pと同じ座標値を示すエントリAi、又は3次元座標値Pが属する座標値の範囲や群を示すエントリAiを探索することができる。
【0029】
他方、エントリAiと3次元座標値Pとが異なる基準で表現されている場合、設定情報選択部62は、3次元座標値Pの測地系をエントリAiの基準に変換するか、エントリAiの基準を3次元座標値Pの測地系に変換するか、或いは、3次元座標値Pの測地系とエントリAiの基準の双方をそれらと異なる基準に変換する。なお、このような変換処理は、たとえば、予め記憶された、異なる基準(座標系等)の間において要素(座標値等)を変換するための情報(変換行列等)を参照して実行される。変換処理を介することで、エントリAiを表示するための基準と、3次元座標値Pを表示するための基準とを同一視することができる。以下において、信号解析部61により取得される現在位置情報と、関連情報21に含まれる位置情報(地点を示す情報)とは、同じ測地系で表現されていると仮定する。
【0030】
3次元座標値Pが示す地点を示すエントリAiの特定は、たとえば上記のようにして実行される。これに対し、3次元座標値Pが示す地点が属する地域を示すエントリAiを特定する場合、設定情報選択部62はたとえば次のような処理を実行する。地域を示すエントリAiが測地系の座標値の範囲によって定義されている場合、設定情報選択部62は、3次元座標値Pが属する範囲を定義しているエントリAiを選択する。或いは、測地系の座標値の範囲と異なる情報によって地域を示すエントリAiが定義されている場合、設定情報選択部62は、別途に準備された参照情報を参照することでエントリAiの特定を行う。この参照情報は、たとえば、記憶部20に予め記憶され、エントリAiの内容と測地系の座標値とを関連付けている。参照情報の具体例として、エントリAiの内容である「国の識別情報」に対して、当該国の国土を示す測地系座標値の範囲を関連付けたものがある。
【0031】
信号解析部61により取得された現在位置情報に対応する地点又は地域を示すエントリAiが、たとえばこのようにして特定されると、設定情報選択部62は、特定された案鳥Aiに関連付けられた設定情報のエントリBiを関連情報21から読み出して制御プロセッサ10に送る。
【0032】
(検査データ処理部63)
検査データ処理部63は、検査部30により取得された検査データに対して所定の処理を施す。たとえば、検査データが画像データである場合、検査データ処理部63は、この画像データに対して画像処理や解析処理を施すことができる。また、検査データ(又は画像データから得られたデータ)が数値データである場合、検査データ処理部63は、この数値データに対して演算処理や統計処理を施すことができる。
【0033】
[使用形態]
眼科装置1の使用形態について説明する。使用形態の例を
図3A及び
図3Bに示す。
【0034】
(第1の使用形態)
(S1:電源を投入する)
ユーザは、眼科装置1の電源を投入する。本使用形態では、電源の投入をトリガーとして、眼科装置1の設定状態の制御が実行される。なお、当該制御のトリガーは電源の投入に限定されず、任意の操作又は任意の処理であってよい。たとえば、ユーザからの指示に応じて、つまりユーザインターフェイス40を用いて所定の操作が行われたことをトリガーとして当該制御に移行してもよい。また、眼科装置1が複合機である場合、一の機能(撮影、測定等)を実施するための操作が行われたことをトリガーとして当該制御に移行してもよい。また、眼科装置1が医療機関等の施設に設置されて初期設定等が行われるときや、メーカーや販売業者等から現地法人等に眼科装置1が搬送されて動作状態の調整等が行われるときに、当該制御を実行することができる。
【0035】
(S2:測位信号を受信する)
ステップS1のトリガーを受けて、測位信号受信部50は測位信号の受信を開始する。測位信号受信部50は、取得された測位信号(又はそれを処理した信号)を信号解析部61に送る。
【0036】
(S3:現在位置情報を生成する)
信号解析部61は、たとえば、ステップS2において測位信号受信部50から入力された複数の測位信号を解析することにより現在位置情報を生成する。生成された現在位置情報は、設定状態選択部62に送られる。
【0037】
(S4:設定情報を選択する)
設定情報選択部62は、ステップS3で生成された現在位置情報に対応する地点又は地域に関連付けられた設定情報を関連情報21から選択する。選択された設定情報は制御プロセッサ10に送られる。
【0038】
(S5:設定を変更する)
制御プロセッサ10は、ステップS4で選択された設定情報に基づいて眼科装置1の設定(パラメータ、状態等)を変更する。変更される設定の内容は、たとえば、検査部30の動作や状態に関する設定内容、検査データ処理部63の動作(アプリケーション等)に関する設定内容、及びユーザインターフェイス40に表示されるGUIに関する設定のうちの少なくとも1つを含む。
【0039】
(S6:被検眼の検査を行う)
ステップS5で変更された設定状態で、検査部30は被検眼Eの検査を行う。また、検査データ処理部63は、この検査で取得された検査データを処理する。更に、制御プロセッサ10は、この検査データや、これを処理して得られたデータをユーザインターフェイス40に表示させる。また、ユーザは、表示された検査データ等に関する操作をユーザインターフェイス40を用いて行うことができる。
【0040】
(第2の使用形態)
(S11〜S14)
第1の使用形態のステップS1〜S4と同様の処理が実行される。ステップS14では、1以上の設定情報が選択される。
【0041】
(S15:設定情報を表示する)
制御プロセッサ10は、ステップS14で選択された1以上の設定情報を、ユーザインターフェイス40に設けられた表示装置に表示させる。ステップS14で2以上の設定情報が選択された場合、制御プロセッサ10は、たとえば、これら設定情報を一覧表示させる。
【0042】
(S16:ユーザが設定情報を指定する)
ユーザは、ユーザインターフェイス40に設けられた操作デバイス(ポインティングデバイス、タッチパネルディスプレイ等)を介して、ステップS15で表示された設定情報のうち所望のものを選択する。
【0043】
なお、所望の設定情報が表示されていない場合、ユーザは、設定情報の他のオプションを表示させるための所定の操作を行う。制御プロセッサ10は、この操作を受けて、関連情報21に含まれている設定情報を表示装置に表示させる。このとき、関連情報21に含まれる全ての設定情報を表示させてもよいし、ステップS14で選択された設定情報以外の設定情報(つまり、ステップS15で表示された設定情報以外の設定情報)のみを表示させてもよい。ユーザは、表示された設定情報のうち所望のものを指定する。
【0044】
(S17:設定を変更する)
制御プロセッサ10は、ステップS16で指定された設定情報に基づいて眼科装置1の設定(パラメータ、状態等)を変更する。この処理は、第1の使用形態のステップS5と同様にして実行される。
【0045】
(S18:被検眼の検査を行う)
ステップS17で変更された設定状態で、検査部30は被検眼Eの検査を行う。また、検査データ処理部63は、この検査で取得された検査データを処理する。更に、制御プロセッサ10は、この検査データや、これを処理して得られたデータをユーザインターフェイス40に表示させる。また、ユーザは、表示された検査データ等に関する操作をユーザインターフェイス40を用いて行うことができる。
【0046】
[作用・効果]
実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
【0047】
実施形態の眼科装置は、検査部(30)と、記憶部(20)と、測位信号受信部(50)と、信号解析部(61)と、設定情報選択部(62)と、制御部(制御プロセッサ10等)とを含む。検査部は、被検眼を検査するための機能を備える。複数の地点及び/又は複数の地域のそれぞれに対して設定情報が関連付けられた関連情報(21)を予め記憶する。測位信号受信部は、測位システムからの信号を受信する。信号解析部は、受信された信号を解析して現在位置を示す位置情報を生成する。設定情報選択部は、生成された位置情報に対応する地点又は地域に関連付けられた設定情報を関連情報から選択する。制御部は、選択された設定情報に基づいて制御を実行する。
【0048】
このような実施形態によれば、GPS等の測位システムを利用して眼科装置の現在位置を取得し、それに基づいて設定を自動で変更することができる。したがって、使用される場所に応じた眼科装置の設定を適切かつ容易に行うことが可能である。
【0049】
実施形態において、制御部(制御プロセッサ10)は、設定情報選択部(62)により選択された設定情報を表示手段に表示させることができる。表示手段は、眼科装置に設けられた表示装置(ユーザインターフェイス40)でもよいし、眼科装置に接続された外部表示装置でもよい。
【0050】
この構成によれば、眼科装置の現在位置に応じて自動で選択された設定情報をユーザに提示することができる。ユーザは、選択された設定情報が適当か否か確認できる。
【0051】
実施形態の眼科装置は、表示手段に表示された設定情報のいずれかを指定するための操作部(ユーザインターフェイス40)を備えていてよい。更に、制御部(制御プロセッサ10等)は、指定された設定情報に基づいて制御を実行することができる。
【0052】
この構成によれば、眼科装置により自動で選択された1以上の設定情報を提示し、それらのうち所望の設定情報をユーザが選択することができる。よって、適当な設定情報をユーザが選択し、それを眼科装置に適用することが可能である。
【0053】
本実施形態の構成が適用された典型的な眼科装置の幾つかの例を以下に説明する。なお、本実施形態の構成を適用可能な眼科装置は以下の例示には限定されず、あらゆる種類の眼科装置に本実施形態の構成を適用することができる。また、以下の例示的な眼科装置の使用形態は、上記した第1の使用形態及び/又は第2の使用形態であってよいが、これらに限定されず、たとえばその眼科装置の種類に応じた任意の使用形態であってよい。以下の例示において、本実施形態の眼科装置と同じ機能又は類似の機能を備える構成部位には同じ符号が付され、特に言及しない限りその説明は省略される。
【0054】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態を眼圧計に適用した例を説明する。本実施形態の眼科装置は、眼圧計、又は眼圧計と他の機能との複合機である。本実施形態の眼科装置の構成の一例を
図4に示す。眼科装置1aは、被検眼Eの眼圧を測定する機能を備える。
【0055】
眼科装置1aは、制御プロセッサ10と、記憶部20と、眼圧測定部30aと、ユーザインターフェイス40と、測位信号受信部50と、データ処理部60とを含む。記憶部20には、関連情報21として或いはその一部として、眼圧補正情報21aが記憶されている。データ処理部60には、検査データ処理部63として或いはその一部として、眼圧データ処理部63aが設けられている。
【0056】
眼圧測定部30aは、非接触式又は接触式の眼圧計としての機能を備える。非接触式眼圧計の場合、眼圧測定部30aは、たとえば、被検眼Eの前眼部を撮影するための光学系と、この光学系と同軸に設けられたノズルから被検眼Eの角膜に気流を吹き付ける気流吹付部と、被検眼Eに固視標を提示する固視光学系とを含む。更に、眼圧測定部30a又は眼圧データ処理部63aは、気流が吹き付けられている状態の角膜の変形状態に基づいて被検眼Eの眼圧値を求めるプロセッサを含む。一方、接触式の眼圧計の場合、眼圧測定部30aは、たとえば、被検眼Eの前眼部を観察するための光学系と、被検眼Eの角膜に一定面積の平面を有する部材を押し付けるための圧平部とを含む。更に、眼圧測定部30a又は眼圧データ処理部63aは、角膜の当該一定面積を圧平するのに必要な圧力を検出して被検眼Eの眼圧値を求めるプロセッサを含む。
【0057】
眼圧補正情報21aにおいては、複数の標高値のそれぞれに対して眼圧補正値が関連付けられている。眼圧補正情報21aの例を
図5に示す。
図5に示す眼圧補正情報21aはテーブル情報であり、このテーブル情報には、標高値を示す欄と、眼圧補正値を示す欄とが設けられている。
【0058】
標高値を示す欄には、標高値の範囲を示す複数のエントリ[0,h1)、[h1,h2)、[h2,h3)、・・・・が記録されている。なお、[hi,h(i+1))は、標高値がhi以上かつh(i+1)未満の範囲を示している。なお、標高値の代わりに、標高値と同値と推定可能なパラメータを用いることができる。たとえば、気圧値の範囲や、地域を示す識別情報を、標高値の代わりに用いることが可能である。
【0059】
眼圧補正値を示す欄には、測定された被検眼Eの眼圧値を(標高値、又はそれと同値と推定可能なパラメータに基づいて)補正するためのオフセット値を示す複数のエントリΔP1(=0)、ΔP2、ΔP3、・・・・が記録されている。各i=1,2,3,・・・・について、標高値を示すエントリ[hi,h(i+1))と眼圧補正値を示すエントリΔPiとが関連付けられている。
【0060】
本実施形態の信号解析部61は、測位信号受信部50から入力される測位信号を解析することで、少なくとも現在位置の標高値を含む位置情報を生成する。設定情報選択部62は、信号解析部61により取得された標高値に対応する眼圧補正値を眼圧補正情報21aから選択する。
【0061】
眼圧データ処理部63aは、眼圧測定部30a(又は眼圧データ処理部63a)により求められた被検眼Eの眼圧測定値を、設定情報選択部62により選択された眼圧補正値で補正する。被検眼Eの眼圧測定値をPと表し、かつ、選択された眼圧補正値をΔPiとすると、眼圧データ処理部63aは、たとえば、眼圧測定値Pに眼圧補正値ΔPiを加算した値(P+ΔPi)を求める。或いは、眼圧データ処理部63aは、眼圧測定値Pから眼圧補正値ΔPiを減算した値(P−ΔPi)を求める。
【0062】
制御プロセッサ10は、補正された眼圧測定値をユーザインターフェイス40に出力させる。たとえば、制御プロセッサ10は、補正された眼圧測定値を表示させる。このとき、制御プロセッサ10は、補正された眼圧測定値とともに、補正前の眼圧測定値や、適用された眼圧補正値や、標高値などを出力させることが可能である。
【0063】
ところで、被検眼Eの眼圧が正常範囲に属するか否かを判定したい場合がある。被検眼Eの眼圧測定値を補正する本適用例は、このようなケースにも適用可能である。一方、たとえば以下に説明するような構成をこのようなケースに適用することも可能である。
【0064】
図6に示す眼圧判定閾値情報21a’はテーブル情報であり、このテーブル情報には、標高値を示す欄と、眼圧判定閾値を示す欄とが設けられている。
【0065】
標高値を示す欄については、
図5の眼圧補正情報21aと同様である。眼圧判定閾値を示す欄には、測定された被検眼Eの眼圧値に基づく正常/異常の判定を(標高値、又はそれと同値と推定可能なパラメータに基づいて)実行するための閾値を示す複数のエントリTh1、Th2、Th3、・・・・が記録されている。各i=1,2,3,・・・・について、標高値を示すエントリ[hi,h(i+1))と眼圧判定閾値を示すエントリThiとが関連付けられている。なお、眼圧判定閾値情報21a’の構成はこれに限定されるものではない。たとえば、閾値のデフォルト値に対するオフセット値が標高値の範囲のエントリごとに記録された眼圧判定閾値情報21a’を適用することが可能である。
【0066】
信号解析部61は、測位信号受信部50から入力される測位信号を解析することで、少なくとも現在位置の標高値を含む位置情報を生成する。設定情報選択部62は、信号解析部61により取得された標高値に対応する眼圧判定閾値を眼圧判定閾値情報21a’から選択する。
【0067】
眼圧データ処理部63aは、眼圧測定部30a(又は眼圧データ処理部63a)により求められた被検眼Eの眼圧測定値が正常か異常かの判定を、設定情報選択部62により選択された眼圧判定閾値を用いて実行する。被検眼Eの眼圧測定値をPと表し、かつ、選択された眼圧判定閾値をThiとすると、眼圧データ処理部63aは、眼圧測定値Pと眼圧判定閾値Thiとを比較する。眼圧測定値Pが眼圧判定閾値Thi以下である場合には被検眼Eの眼圧測定値Pは正常と判定され、眼圧測定値Pが眼圧判定閾値Thiを超える場合には被検眼Eの眼圧測定値Pは異常と判定される。
【0068】
制御プロセッサ10は、眼圧の判定結果をユーザインターフェイス40に出力させる。たとえば、制御プロセッサ10は、眼圧の判定結果を表示させる。このとき、制御プロセッサ10は、眼圧の判定結果とともに、求められた眼圧測定値や、当該判定に適用された眼圧判定閾値や、標準の眼圧判定閾値(Th1)との比較結果などを出力させることが可能である。
【0069】
実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
【0070】
実施形態の眼科装置の1つの形態において、検査部(30)は、被検眼の眼圧を測定するための眼圧測定部(30a)を含む。関連情報(21)は、複数の標高値(又は気圧値のような、標高値と実質的に同値と推定可能な情報)のそれぞれに対して眼圧補正値が関連付けられた眼圧補正情報(21a)を含む。測位信号受信部(50)は、測位システムからの信号を受信する。信号解析部(61)は、受信された信号に基づいて、少なくとも標高値を含む位置情報を生成する。設定情報選択部(62)は、生成された位置情報に含まれる標高値に対応する眼圧補正値を眼圧補正情報から選択する。制御部(制御プロセッサ10、眼圧データ処理部63a等)は、眼圧測定部により取得された眼圧測定値を、設定情報選択部により選択された眼圧補正値で補正する。ここで、第1の実施形態における第2の使用形態のように、設定情報選択部により選択された眼圧補正値のうちからユーザが指定した眼圧補正値を用いて眼圧測定値の補正を行ってもよい。
【0071】
このような実施形態によれば、GPS等の測位システムを利用して眼科装置の現在位置を取得し、それに基づいて眼圧測定に関する設定を自動で変更することができる。また、眼科装置が設置されている場所の標高(気圧)に応じた正確な眼圧測定が可能である。
【0072】
実施形態の眼科装置の他の形態において、検査部(30)は、被検眼の眼圧を測定するための眼圧測定部(30a)を含む。関連情報(21)は、複数の標高値(又は気圧値のような、標高値と実質的に同値と推定可能な情報)のそれぞれに対して眼圧判定閾値が関連付けられた眼圧判定閾値情報(21a’)を含む。測位信号受信部(50)は、測位システムからの信号を受信する。信号解析部(61)は、受信された信号に基づいて、少なくとも標高値を含む位置情報を生成する。設定情報選択部(62)は、生成された位置情報に含まれる標高値に対応する眼圧判定閾値を眼圧判定閾値情報から選択する。制御部(制御プロセッサ10、眼圧データ処理部63a等)は、眼圧測定部により取得された眼圧測定値の判定を、設定情報選択部により選択された眼圧判定閾値を用いて行う。ここで、第1の実施形態における第2の使用形態のように、設定情報選択部により選択された眼圧判定閾値のうちからユーザが指定した眼圧判定閾値を用いて眼圧測定値の判定を行ってもよい。
【0073】
このような実施形態によれば、GPS等の測位システムを利用して眼科装置の現在位置を取得し、それに基づいて眼圧測定に関する設定を自動で変更することができる。また、眼科装置が設置されている場所の標高(気圧)に応じた正確な眼圧の正常/異常の判定が可能である。
【0074】
〈第3の実施形態〉
第1の実施形態を眼底カメラに適用した例を説明する。本実施形態の眼科装置は、眼底カメラ、又は眼底カメラと他の機能との複合機である。本実施形態の眼科装置の構成の一例を
図7に示す。眼科装置1bは、被検眼Eの眼底(及び前眼部)を撮影する機能を備える。
【0075】
眼科装置1bは、制御プロセッサ10と、記憶部20と、眼底撮影部30bと、ユーザインターフェイス40と、測位信号受信部50と、データ処理部60とを含む。記憶部20には、関連情報21として或いはその一部として、色補正情報21bが記憶されている。データ処理部60には、検査データ処理部63として或いはその一部として、画像データ処理部63bが設けられている。
【0076】
眼底撮影部30bは、従来と同様の眼底カメラとしての機能を備える。その具体例として、眼底撮影部30bは、被検眼Eの眼底に照明光を照射するための照明光学系と、照明光の眼底からの戻り光をイメージセンサ(エリアセンサ)に導く撮影光学系と、被検眼Eに固視標を提示する固視光学系とを含む。画像データ処理部63bは、眼底撮影部30bのイメージセンサからの画像信号(画像データ)に画像処理や解析処理を施す。
【0077】
色補正情報21bにおいては、複数の地域のそれぞれに対して眼底画像の色補正パラメータが関連付けられている。色補正パラメータは、たとえば画像の色調を補正するためのパラメータを含む。色補正情報21bの例を
図8に示す。
図8に示す色補正情報21bはテーブル情報であり、このテーブル情報には、地域を示す欄と、色補正パラメータを示す欄とが設けられている。
【0078】
地域を示す欄には、第1の実施形態の関連情報21と同様に、地域を示す複数のエントリA1、A2、A3、・・・・が記録されている。色補正パラメータを示す欄には、被検眼Eの眼底画像の色調の補正値を示す複数のエントリ(ΔR1,ΔG1,ΔB1)、(ΔR2,ΔG2,ΔB2)、(ΔR3,ΔG3,ΔB3)、・・・・が記録されている。色補正パラメータのエントリ(ΔRi,ΔGi,ΔBi)には、カラー眼底画像の赤色成分の補正値ΔRiと、緑色成分の補正値ΔGiと、青色成分の補正値ΔBiとが含まれている。各i=1,2,3,・・・・について、地域を示すAiと色補正パラメータを示すエントリ(ΔRi,ΔGi,ΔBi)とが関連付けられている。
【0079】
信号解析部61は、測位信号受信部50から入力される測位信号を解析することで、現在位置を示す位置情報を生成する。設定情報選択部62は、信号解析部61により取得された位置情報が示す地点を含む地域に対応する色補正パラメータを色補正情報21bから選択する。画像データ処理部63bは、眼底撮影部30bにより得られた被検眼Eのカラー眼底画像を、設定情報選択部62により選択された色補正パラメータで補正する。
【0080】
制御プロセッサ10は、色補正されたカラー眼底画像をユーザインターフェイス40に出力させる。たとえば、制御プロセッサ10は、色補正されたカラー眼底画像を表示させる。このとき、制御プロセッサ10は、色補正されたカラー眼底画像とともに、色補正前のカラー眼底画像や、適用された色補正値などを出力させることが可能である。
【0081】
実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
【0082】
実施形態の眼科装置において、検査部(30)は、被検眼の眼底をカラー撮影するための眼底撮影部(30b)を含む。関連情報(21)は、複数の地域のそれぞれに対して眼底画像の色補正パラメータが関連付けられた色補正情報(21b)を含む。測位信号受信部(50)は、測位システムからの信号を受信する。信号解析部(61)は、受信された信号に基づいて、現在位置を示す位置情報を生成する。設定情報選択部(62)は、生成された位置情報が示す地点を含む地域に対応する色補正パラメータを色補正情報から選択する。制御部(制御プロセッサ10、画像データ処理部63b等)は、眼底撮影部により取得されたカラー画像を、設定情報選択部により選択された色補正パラメータで補正する。ここで、第1の実施形態における第2の使用形態のように、設定情報選択部により選択された色補正パラメータのうちからユーザが指定した色補正パラメータを用いてカラー画像の補正を行ってもよい。
【0083】
このような実施形態によれば、GPS等の測位システムを利用して眼科装置の現在位置を取得し、それに基づいて眼底撮影に関する設定を自動で変更することができる。また、眼科装置が設置されている場所に応じたカラー眼底画像の色補正が可能である。たとえば、眼科装置が設置されている国や地域に居住する主たる人種の眼底の色に応じて、そのカラー眼底画像の色調を補正して表示することが可能である。
【0084】
眼科装置が設置されている国や地域に複数の人種が居住している場合などにおいて、これら複数の人種に対応する色補正パラメータの選択肢を提示したGUIを表示させることができる。ユーザは、このGUIを用いて被検者に対応する補正パラメータを選択する。眼科装置は、選択された色補正パラメータを用いてカラー眼底画像の色補正を行う。或いは、被検者の電子カルテ等に基づいて色補正パラメータを自動で選択し、それを適用してカラー眼底画像の色補正を行うように構成することも可能である。
【0085】
〈第4の実施形態〉
第1の実施形態を自覚検眼装置(視標呈示装置、視機能検査)に適用した例を説明する。本実施形態の眼科装置は、視力測定用の視標(ランドルト環等)を呈示する視標呈示装置を含む。本実施形態の眼科装置の構成の一例を
図9に示す。眼科装置1cは、被検眼Eの視力測定を行うための機能を備える。
【0086】
眼科装置1cは、制御プロセッサ10と、記憶部20と、視標呈示部30cと、ユーザインターフェイス40と、測位信号受信部50と、データ処理部60とを含む。記憶部20には、関連情報21として或いはその一部として、視力値情報21cが記憶されている。データ処理部60には、検査データ処理部63として或いはその一部として、視力データ処理部63cが設けられている。
【0087】
視標呈示部30cは、従来と同様の機能を備える。その具体例として、視標呈示部30cは、視標及び/又は視力表を表示する表示デバイスを含む。視標呈示部30cは、この表示デバイスから出力された光を導く光学系を更に含んでもよい。視力データ処理部63cは、被検眼Eの視力の測定値(視力値)に関する処理を実行する。この処理の例として、複数回の測定により得られた複数の視力値の統計値(平均値、標準偏差等)を算出する統計処理や、異なる日に行われた複数回の測定により得られた複数の視力値をグラフ化する処理などがある。
【0088】
視力値情報21cにおいては、複数の地域のそれぞれに対して標準視力値が関連付けられている。標準視力値は、対応する地域の居住者の視力値の統計値を示す。この統計値は、たとえば平均値や最頻値や中央値であってよい。また、標準視力値は、この統計値を所定の視力値(オフセット値)だけオフセットさせた値であってもよい。視力値情報21cの例を
図10に示す。
図10に示す視力値情報21cはテーブル情報であり、このテーブル情報には、地域を示す欄と、標準視力値を示す欄とが設けられている。
【0089】
地域を示す欄には、第1の実施形態の関連情報21と同様に、地域を示す複数のエントリA1、A2、A3、・・・・が記録されている。標準視力値を示す欄には、標準視力値を示す複数のエントリV1、V2、V3、・・・・が記録されている。各標準視力値のエントリは、年齢や性別等の属性により分類された複数の標準視力値を含んでいてよい。各i=1,2,3,・・・・について、地域を示すAiと標準視力値を示すエントリViとが関連付けられている。
【0090】
信号解析部61は、測位信号受信部50から入力される測位信号を解析することで、現在位置を示す位置情報を生成する。設定情報選択部62は、信号解析部61により取得された位置情報が示す地点を含む地域に対応する標準視力値を視力値情報21cから選択する。制御プロセッサ10は、設定情報選択部62により選択された標準視力値に相当する視標(又は視力表)を初期視標として視標呈示部30cに呈示させる。初期視標とは、被検眼Eの視力検査において最初に呈示される視標を意味する。つまり、被検眼Eの視力測定は初期視標から開始される。
【0091】
実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
【0092】
実施形態の眼科装置において、検査部(30)は、視力検査用の視標を呈示する視標呈示部(30c)を含む。関連情報(21)は、複数の地域のそれぞれに対して標準視力値が関連付けられた視力値情報(21c)を含む。測位信号受信部(50)は、測位システムからの信号を受信する。信号解析部(61)は、受信された信号に基づいて、現在位置を示す位置情報を生成する。設定情報選択部(62)は、信号解析部により生成された位置情報が示す地点を含む地域に対応する標準視力値を視力値情報から選択する。制御部(制御プロセッサ10)は、選択された標準視力値に相当する視標を初期視標として視標呈示部に呈示させる。ここで、第1の実施形態における第2の使用形態のように、設定情報選択部により選択された標準視力値のうちからユーザが指定した標準視力値に相当する視標を初期視標として呈示させてもよい。
【0093】
このような実施形態によれば、GPS等の測位システムを利用して眼科装置の現在位置を取得し、それに基づいて視力測定に関する設定を自動で変更することができる。また、眼科装置が設置されている場所に応じた視力測定が可能である。具体的には、眼科装置が設置されている国や地域の居住者の標準的な視力値に相当する視標から視力測定を開始することが可能である。よって、視力測定を円滑かつ迅速に行うことができる。
【0094】
〈第5の実施形態〉
本実施形態の眼科装置は、ユーザインターフェイスに特徴を有する。本実施形態は任意の眼科装置に適用可能である。本実施形態の眼科装置の構成の一例を
図11に示す。
【0095】
眼科装置1dは、制御プロセッサ10と、記憶部20と、検査部30と、ユーザインターフェイス40dと、測位信号受信部50と、データ処理部60とを含む。ユーザインターフェイス40dには、表示部41と、音声出力部42とが設けられている。表示部41は表示デバイスを含む。音声出力部42は、音声出力回路やスピーカを含む。なお、表示部41や音声出力部42は、眼科装置1dの外部装置であってよい。たとえば、眼科装置1dに接続されたコンピュータが具備する表示デバイスや音声出力デバイスを表示部41や音声出力部42として使用することができる。
【0096】
関連情報21には、複数の地域のそれぞれに対して関連付けられた表示情報と音声情報とが記録されている。なお、表示情報のみ又は音声情報のみを含んでいてもよい。表示情報は、表示部41に表示される情報又はその識別情報である。表示情報は、たとえば表示画面を含む。音声情報は、音声出力部42により出力される音声又はその識別情報である。音声情報は、たとえば音声メッセージや警告音を含む。関連情報21の例を
図12に示す。
図12に示す関連情報21はテーブル情報であり、このテーブル情報には、地域を示す欄と、表示情報を示す欄と、音声情報を示す欄とが設けられている。
【0097】
地域を示す欄には、第1の実施形態の関連情報21と同様に、地域を示す複数のエントリA1、A2、A3、・・・・が記録されている。表示情報を示す欄には、表示情報を示す複数のエントリD1、D2、D3、・・・・が記録されている。音声情報を示す欄には、音声情報を示す複数のエントリF1、F2、F3、・・・・が記録されている。各i=1,2,3,・・・・について、地域を示すAiと表示情報を示すエントリDiと音声情報を示すエントリFiとが関連付けられている。具体例として、地域の各エントリAiは言語的範囲(言語ごとに分類された地域又は地域群)を示し、表示情報の各エントリDiは対応する言語の表示画面(GUI等)を示し、音声情報の各エントリFiは対応する言語の音声メッセージを示す。
【0098】
信号解析部61は、測位信号受信部50から入力される測位信号を解析することで、現在位置を示す位置情報を生成する。設定情報選択部62は、信号解析部61により取得された位置情報が示す地点を含む地域に対応する表示情報及び音声情報を関連情報21から選択する。制御プロセッサ10は、設定情報選択部62により選択された表示情報に対応する表示画面(GUI)を表示部41に表示させる。また、制御プロセッサ10は、選択された音声情報に対応する音声メッセージを音声出力部42に出力させる。
【0099】
実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
【0100】
実施形態の眼科装置において、検査部(30)は、被検眼の検査を行うための任意の構成を備える。また、この眼科装置は、表示部(41)及び/又は音声出力部(42)を含む情報出力部(ユーザインターフェイス40)を備える。関連情報(21d)は、複数の地域のそれぞれに対して関連付けられた表示情報及び/又は音声情報を含む。測位信号受信部(50)は、測位システムからの信号を受信する。信号解析部(61)は、受信された信号に基づいて、現在位置を示す位置情報を生成する。設定情報選択部(62)は、生成された位置情報が示す地点を含む地域に対応する表示情報及び/又は音声情報を関連情報から選択する。制御部(制御プロセッサ10)は、選択された表示情報を表示部に表示させる処理、及び/又は、選択された音声情報を音声出力部に出力させる処理を実行する。ここで、第1の実施形態における第2の使用形態のように、設定情報選択部により選択された表示情報及び/又は音声情報のうちからユーザが指定した表示情報及び/又は音声情報を出力させるように構成してもよい。
【0101】
このような実施形態によれば、GPS等の測位システムを利用して眼科装置の現在位置を取得し、それに基づいてユーザインターフェイスに関する設定を自動で変更することができる。それにより、眼科装置が設置されている場所に応じたユーザインターフェイスを容易に利用できる。具体例として、眼科装置が設置されている国や地域の言語の表示画面(GUI)や音声メッセージを自動で出力させることが可能である。
【0102】
〈変形例〉
以上に説明した実施形態は本発明の典型的な例示に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。
【0103】
たとえば、上記実施形態やその変形例に含まれる構成を任意に組み合わせることが可能である。そのような組み合わせにより得られる変形例は、組み合わせられた構成の動作や作用や効果うちの少なくとも一部を引き継ぐ。また、組み合わせられた構成を利用して、任意の使用形態を実現することが可能である。
【0104】
上記実施形態において、眼科装置が屋内に配置された場合や他の建造物の影になる位置に配置された場合などに、航法衛星や地上局からの測位信号(電波信号)を好適に受信できないことが想定される。そのような場合、制御プロセッサ10は、現在位置情報を入力するための画面をユーザインターフェイス40に表示させることができる。ユーザは、ユーザインターフェイス40(操作部)を用いて現在位置情報の入力を行う。操作部は、たとえばハードウェアキーボード又はソフトウェアキーボードである。また、入力される現在位置情報は、たとえば、眼科装置が現在配置されている施設の名称や識別情報である。設定情報選択部62は、ユーザインターフェイス40を用いて入力された現在位置情報に対応する地点又は地域に関連付けられた設定情報を関連情報21から選択する。制御プロセッサ10(又は検査データ処理部63等)は、選択された設定情報に基づいて制御を実行する。
【0105】
本変形例によれば、航法衛星や地上局からの測位信号(電波信号)を好適に受信できない場合には、ユーザが入力した現在位置情報に基づいて眼科装置の設定を変更することが可能である。
【0106】
眼科装置が、ネットワーク上の情報処理装置(サーバ等)と通信可能である場合、次のような構成の眼科装置やシステムを適用することが可能である。情報処理装置は、複数の地点及び/又は複数の地域のそれぞれに対して設定情報が関連付けられた関連情報を予め記憶する記憶部を備える。関連情報は、たとえば、実施形態の眼科装置の関連情報21と同様の構成を備える。眼科装置は、実施形態と同様の検査部(30)、測位信号受信部(50)及び信号解析部(61)を備える。つまり、検査部は、被検眼を検査するための機能を備える。測位信号受信部は、測位システムからの信号を受信する。信号解析部は、受信された信号を解析して現在位置を示す位置情報を生成する。
【0107】
本変形例の眼科装置は更に通信部を備える。通信部は、通信回線(インターネット等のWAN、医療機関内ネットワーク等のLANなど)を介して、上記情報処理装置との間でデータの送受信が可能である。通信部は、信号解析部により生成された位置情報を情報処理装置に向けて送信する。情報処理装置は、上記実施形態の設定情報選択部と同様の機能を備える。つまり、情報処理装置は、眼科装置から送信された位置情報を受信し、この位置情報に対応する地点又は地域に関連付けられた設定情報を記憶部内の関連情報から選択する。更に、情報処理装置は、選択された設定情報を眼科装置に向けて送信する。通信部は、情報処理装置から送信された設定情報を受信する。
【0108】
制御部(制御プロセッサ10、検査データ処理部63等)は、通信部により受信された設定情報に基づいて制御を実行する。
【0109】
このような眼科装置又はシステムによれば、GPS等の測位システムを利用して眼科装置の現在位置を取得し、それに基づいて設定を自動で変更することができる。特に、関連情報や設定情報選択部を各眼科装置に設ける必要がない。また、関連情報がネットワーク上に格納されているので、そのアップデートを容易に行うことができ、各眼科装置に対して最新の設定を提供することが可能である。
【0110】
上記の実施形態において関連情報はテーブル情報であるが、関連情報の形態はこれに限定されない。たとえば、グラフ情報からなる関連情報を用いることができる。また、関連情報は、複数の地点及び/又は複数の地域と複数の設定情報との間の関連付けを含む情報である。複数の地点及び/又は複数の地域を示す情報は、離散的情報でも連続的情報でもよい。また、複数の設定情報は、離散的情報でも連続的情報でもよい。つまり、関連情報は、離散的情報と離散的情報とを関連付けた情報(たとえばテーブル情報)でもよいし、離散的情報と連続的情報とを関連付けた情報(たとえばテーブル情報やグラフ情報)でもよいし、連続的情報と連続的情報とを関連付けた情報(たとえばグラフ情報)でもよい。