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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-209096(P2016-209096A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】消火剤貯蔵容器
(51)【国際特許分類】
   A62C 13/76 20060101AFI20161118BHJP
【FI】
   A62C13/76 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-93163(P2015-93163)
(22)【出願日】2015年4月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000168676
【氏名又は名称】株式会社コーアツ
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】井上 康史
(72)【発明者】
【氏名】鴨 三範
(57)【要約】
【課題】人体に対する消火剤の毒性により消火対象や使用方法に制約がないイナートガスを消火剤として用い、操作性や安定性を向上させることによって、初期消火に用いられる可搬式のものに好適に用いられる消火剤貯蔵容器を提供することを提供すること。
【解決手段】消火剤を消火対象に向けて放射可能なように人によって可搬に構成した消火器1において、消火剤としてイナートガスを主成分として用いるガス系消火剤を消火剤貯蔵容器2に貯蔵するようにするとともに、減圧機能を有する調整器43を消火剤貯蔵容器2内に格納して設置するようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤としてイナートガスを主成分として用いたガス系消火剤を貯蔵するようにした消火剤貯蔵容器において、減圧機能を有する調整器を消火剤貯蔵容器内に格納して設置するようにしたことを特徴とする消火剤貯蔵容器。
【請求項2】
前記調整器を、容器弁に組み込んで消火剤貯蔵容器内に格納して設置するようにしたことを特徴とする請求項1記載の消火剤貯蔵容器。
【請求項3】
前記調整器を、容器弁に組み込んだ開放装置と連動して機能するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の消火剤貯蔵容器。
【請求項4】
前記消火剤貯蔵容器が、消火剤を消火対象に向けて放射可能なように人によって可搬に構成されてなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の消火剤貯蔵容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火剤貯蔵容器に関し、初期消火に用いられる可搬式のものに特に好適に用いられる消火剤貯蔵容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、初期消火に用いられる可搬式の消火器として、水消火器、泡消火器、粉末消火器等の液体消火剤や粉末消火剤を使用するものが汎用されている。
【0003】
ところで、消火剤に液体や粉末を使用する消火器は、ノズル、消火剤容器等の構成機器の構造が簡単で、取り扱いが容易で、また、保管もし易いことから、従来から種々の消火対象に広く用いられていた。
【0004】
しかしながら、上記消火剤に液体や粉末を使用する消火器は、消火器を使用して消火を行った場合、液体や粉末の消火剤が飛散して周囲の環境を汚損し、その後処理に手数を要するため、汚損を嫌う消火対象には使用できず、特に、電算機、通信設備、データセンタ、電気設備等の電気電子機器を設置した設備に対しては、設備に壊滅的な損害を与えるため使用できなかった。
【0005】
このため、これらの消火対象には、二酸化炭素、ハロゲン化物、イナートガス(窒素ガス、アルゴン等の不活性ガスをいい、これらのガスを単独で又は混合したもの。以下、同じ。)等のガス系消火剤を使用する固定式の消火設備が用いられていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−299492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ガス系消火剤を使用する固定式の消火設備は、電気電子機器を設置した設備空間全体にガス系消火剤を充満させて消火を行うものであるため、消火設備を使用して消火を行った場合、その後処理に手数や費用を要するため、初期消火に用いるには必ずしも適したものとはいえなかった。
すなわち、例えば、体積1000mの区画に従来の全域消火設備であるガス系消火剤として窒素ガスを使用する窒素ガス消火設備を設置した場合には、容積83Lの消火剤貯蔵容器が26本必要となり、システム起動時にはすべての消火剤貯蔵容器を放出し、区画全体を消火に必要な消火剤濃度(消炎濃度)にすることによって火災を消火するシステムとなっている。しかし、初期消火で対応できるごく小さい火災でも、システムが起動するとすべての消火剤貯蔵容器を放出することになるため、それらの再充填、交換等の処理に手数や費用を要するため、すべての火災に用いるには必ずしも適したものとはいえなかった。
【0008】
一方、ガス系消火剤を使用する初期消火に適した可搬式の消火器として、二酸化炭素やハロゲン化物を消火剤として用いたものも存在するが、人体に対する消火剤の毒性により消火対象や使用方法に制約があったり、ハロン規制の制約があるという問題があった。
また、イナートガスを消火剤として用いた可搬式の消火器は、例えば、イナートガスとして代表的な窒素ガスの場合、二酸化炭素等の他のガス系消火剤と比較して、比重が小さいこと、消火に必要な消火剤濃度が高いこと等から、窒素ガスを消火対象に向けて放射しても、窒素ガスが急速に拡散してしまい消火対象に集中させることが難しくだけでなく、放射した窒素ガスが気流の流れによって吹き去られ易く、必要な消火剤濃度を維持することが困難で、火種があれば直ちに再燃することとなり消火効果が得にくいことから、実用化には至っていなかった。
特に、イナートガスを消火剤として用いる場合、消火剤貯蔵容器に高圧で貯蔵された窒素ガスの圧力(1次圧)を、使用し易い圧力(2次圧)にするために、減圧機能を有する調整器を消火剤貯蔵容器に外付けで設ける必要があるため、この調整器が消火器から出っ張り、消火器の操作性や安定性を低下させるという課題がある。
【0009】
本発明は、上記従来の初期消火に用いられる可搬式の消火器に関する問題点に鑑み、人体に対する消火剤の毒性により消火対象や使用方法に制約がないイナートガスを消火剤として用い、操作性や安定性を向上させることによって、初期消火に用いられる可搬式のものに特に好適に用いられる消火剤貯蔵容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の消火剤貯蔵容器は、消火剤としてイナートガスを主成分として用いたガス系消火剤を貯蔵するようにした消火剤貯蔵容器において、減圧機能を有する調整器を消火剤貯蔵容器内に格納して設置するようにしたことを特徴とする。
【0011】
この場合において、前記調整器を、容器弁に組み込んで消火剤貯蔵容器内に格納して設置するようにすることができる。
【0012】
また、前記調整器を、容器弁に組み込んだ開放装置と連動して機能するようにすることができる。
【0013】
また、前記消火剤貯蔵容器が、消火剤を消火対象に向けて放射可能なように人によって可搬に構成されたものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の消火剤貯蔵容器によれば、消火剤としてイナートガスを主成分として用いるガス系消火剤を消火剤貯蔵容器に貯蔵するようにするとともに、減圧機能を有する調整器を消火剤貯蔵容器内に格納して設置する、具体的には、調整器を容器弁に組み込んで消火剤貯蔵容器内に格納して設置するようにすることにより、消火剤貯蔵容器に高圧で貯蔵された窒素ガスの圧力(1次圧)を、使用し易い圧力(2次圧)にするための調整器が外部に露出しないため、消火器の出っ張りがなくなり、操作性及び安全性を高めることができるとともに、消火器の重心位置が低くなり、立てて設置したときの安定性を高めることができる。
【0015】
また、前記調整器を、容器弁に組み込んだ開放装置と連動して機能するようにすることにより、調整器及び開放装置を含む消火剤の放出を制御する制御器具の機構及びその動作を簡易化し、信頼性を高めることができる。
【0016】
そして、この消火剤貯蔵容器を、消火剤を消火対象に向けて放射可能なように人によって可搬に構成されたものとすることにより、初期消火に用いられる可搬式の消火器として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の消火剤貯蔵容器を適用した消火器の一実施例を示す説明図である。
図2】同消火器のノズル部を示し、(a)は開口部側から見た外観図、(b)接続部側から見た外観図、(c)は(b)のX−X断面図である。
図3】各種ノズルを使用した場合のノズルからの距離と酸素濃度との関係を測定した結果を示すグラフである。
図4】同消火器の消火剤貯蔵容器の内部構造を示す説明図である。
図5】同消火器の消火剤貯蔵容器の変形例の内部構造を示す説明図である。
図6】同消火器の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の消火剤貯蔵容器の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1図4に、本発明の消火剤貯蔵容器を適用した消火器の一実施例を示す。
この消火器1は、イナートガスとして代表的な窒素ガスを消火剤として使用して(ここで、消火剤としては、窒素ガス以外のアルゴン等の不活性ガスや窒素ガスを含む複数種類の不活性ガスを混合した、各種のイナートガスも使用することができる。)、消火剤を消火対象に向けて放射可能なように、消火剤を放射するためのノズル部3が接続された消火剤貯蔵容器2を人によって可搬に構成したもので、窒素ガスを消火剤貯蔵容器2に貯蔵するようにし、この窒素ガスの流通経路の出口部に金属多孔質部材31を配設するようにしたノズル部3を介して、窒素ガスを消火対象に向けて放射して消火を行うようにしたものである。
【0020】
この場合において、消火剤貯蔵容器2とノズル部3とは、容器弁41を介して剛接合により接続されるようにしている。
なお、消火剤貯蔵容器2とノズル部3とは、必ずしも剛接合により接続する必要はなく、例えば、ノズル部3を、フレキシブルチューブを介して、消火剤貯蔵容器2に接続するようにすることもできる。
【0021】
ここで、この消火器1は、消火剤として窒素ガスを使用して、初期消火に適した可搬式の消火器を提供するために、消火剤を放射するためのノズル部3に、図2に示す、消火対象に向けて放射された消火剤が拡散することなく直進し、消火剤を消火対象に集中して放射することを可能にするノズル部3を用いている。
【0022】
ノズル部3は、消火剤貯蔵容器2側の配管に接続されるノズル本体30と、このノズル本体30の内部空間に形成した段部30aに着脱可能に配設した複数(本実施例では、6個)のオリフィス32aを形成したオリフィス板32と、オリフィス32aの出口部に配設した気体が流通可能なブロック形状の金属多孔質部材31と、金属多孔質部材31の大気に開放される側の端面の周縁部に当接して金属多孔質部材31をノズル本体30に支持するリング部材30bとで構成されている。
【0023】
複数のオリフィス32aを形成したオリフィス板32は、ノズル本体30の内部空間に形成した段部30aに、例えば、段部30a及びオリフィス板32の周面に形成したねじを介して、着脱可能に配設するようにしている。
これにより、複数種類のオリフィス32aを形成したオリフィス板32を使用条件に応じて選択することができる。
なお、オリフィス板32を省略し、ノズル本体30に同様のオリフィスを直接形成するようにすることもできる(図示省略)。
【0024】
また、オリフィス32aは、オリフィス32aの小径部側を金属多孔質部材31に面するように形成することが好ましい。
これにより、金属多孔質部材31の中心部から周辺部に向けて窒素ガスを均一に流通させることによって、金属多孔質部材31の大気に開放される端面の全面から均一に窒素ガスを放射することができる。
【0025】
金属多孔質部材31は、一体構造のもので構成するほか、本実施例に示すように、上流側部材31a及び下流側部材31bからなる分割構造のもので構成することができる。
【0026】
金属多孔質部材31は、形状保持性能の高い無機材料(金属、金属の酸化物、金属の水酸化物等)からなる焼結体や3次元の網目状組織体からなる多孔質金属体を好適に用いることができる。
【0027】
金属多孔質部材31を構成する材料の空隙の孔径は、全体を均質な材料で構成するほか、気体が流通する方向に変化させた材料、より具体的には、気体が流通する方向に小さくした材料で構成することができ、例えば、本実施例においては、上流側部材31aの空隙の孔径よりも、下流側部材31bの空隙の孔径が小さくなるような材料で構成することができる。
このように、金属多孔質部材31を構成する材料の空隙の孔径を、気体が流通する方向に小さくすることによって、金属多孔質部材31の大気に開放される端面の全面から均一に窒素ガスを放射することができる。
【0028】
そして、金属多孔質部材31は、一体構造、分割構造のいずれの場合も、金属多孔質部材31の大気に開放される側の反対側の端面が、ノズル本体30(本実施例においては、オリフィス板32を含む。)に接して配設されるとともに、金属多孔質部材31の大気に開放される側の端面が、この端面の周縁部に当接するリング部材30bを介して、ノズル本体30に支持されるようにしている。
この場合、リング部材30bは、ノズル本体30及びリング部材30bの周面に形成したねじを介して、ノズル本体30に着脱可能に配設するようにしている。
そして、金属多孔質部材31を構成する下流側部材31bを、上流側部材31aより大径に形成するとともに、この下流側部材31bの外周縁部を、ノズル本体30の端面とリング部材30bの縁部とで挟持するようにして固定することにより、金属多孔質部材31(下流側部材31b)の大気に開放される開口面積(開口径)を大きく取ることができるようにし、消火対象に向けて放射された窒素ガスの消火に必要な消火剤濃度を維持できる範囲を大きく設定することができる。
ここで、金属多孔質部材31(下流側部材31b)の大気に開放される開口面積(開口径)の大きさは、窒素ガスの消火に必要な消火剤濃度を維持できる範囲を決定する(開口面積の数倍程度)ことになるため、開口径を50mm以上、好ましくは、70mm以上、より好ましくは、100mmに設定するようにする。
【0029】
この消火器1は、消火器を使用して消火を行った場合に消火剤が周囲の環境を汚損せず、また、人体に対する消火剤の毒性がないため、消火対象や使用方法に制約がないというイナートガス(窒素ガス)の特性を享有しながら、消火対象に向けて放射された消火剤が拡散することなく直進し、消火剤を消火対象に集中して放射することを可能にして、必要な消火剤濃度を維持し易くすることによって、有効な消火効果を得ることができ、特に、初期消火に適した可搬式の消火器として有用である。
【0030】
図3に、各種ノズルを使用した場合のノズルからの距離とノズルの消火剤(窒素ガス)の放射方向の中心軸線上の酸素濃度との関係を測定した結果を示す。
ここで、全域ノズルとは、ノズルの先端に消火剤(窒素ガス)を消火対象に向けて放射する1個の小孔を形成したノズルで、局所ノズルは、二酸化炭素に多用されるノズルで、ノズルの先端部に横向きに複数個の小孔を形成し、ノズルの先端部全体をホーンで覆い、ホーンの先端開口から消火剤(窒素ガス)を消火対象に向けて放射するノズルである。
図3からも明らかなように、本実施例のノズルは、全域ノズルや局所ノズルでは困難であった消火対象までの距離が1〜1.5mの範囲(ここで、金属多孔質部材(下流側部材)の開口径Dを大きくすることによって、範囲を拡大することができる。)の窒素ガスの消火に必要な消火剤濃度(消炎濃度)を維持できることを確認した。
【0031】
ところで、本実施例の消火器1は、従来のイナートガスを消火剤として用いる消火設備において、消火剤貯蔵容器2に高圧で貯蔵された窒素ガスの圧力(1次圧)を、使用し易い圧力(2次圧)にするために、消火剤貯蔵容器2に外付けで設けるようにしていた消火剤の放出を制御する制御器具4のうちの調整器43を、消火剤貯蔵容器2内に格納して設置するようにしている。
ここで、調整器43には、消火剤貯蔵容器2に高圧で貯蔵された窒素ガスの圧力(1次圧)を、使用し易い圧力(2次圧)にする減圧機能に加え、2次圧を一定に保つ整圧機能を持たせるようにすることが好ましい。
【0032】
これにより、消火器1の調整器43が外部に露出しないため、消火器1の出っ張りがなくなり、操作性及び安全性を高めることができるとともに、消火器1の重心位置が低くなり、立てて設置したときの安定性を高めることができる。
【0033】
この場合において、調整器43は、容器弁41に組み込まれて消火剤貯蔵容器2内に格納され、同じく容器弁41に組み込まれた開放装置42と連動して機能するように構成されている。
また、容器弁41には、消火剤貯蔵容器2に貯蔵された窒素ガスの圧力が異常上昇した場合に、窒素ガスを放出するための封板44aを備えた安全装置44が組み込まれている。
【0034】
容器弁41に組み込まれた開放装置42は、容器弁41に螺合するキャップナット42aによってシール部材42cを介して装着される封板42bと、開閉弁42dとを備え、開閉弁42dは、キャップナット42aによって後端を支持されたばね部材42eによって容器弁41の先端開口部41aに続くガス流路を閉鎖する方向に付勢されるようにする。
そして、開閉弁42dには、弁室42f内の消火剤貯蔵容器2に貯蔵された窒素ガスの圧力が背面にかかるようにされている。
これにより、消火器1が保管状態に置かれるときは、開閉弁42dによって容器弁41の先端開口部41aに続くガス流路が閉鎖され、消火剤貯蔵容器2に高圧で貯蔵された窒素ガスの貯蔵状態を保つことができる。
一方、消火器1を使用する場合は、封板42bを破ることにより、弁室42f内の圧力を低下させ、これによって、開閉弁42dにかかる窒素ガスの圧力のバランスが崩れ、ばね部材42eの付勢力に抗して開閉弁42dが移動し、容器弁41の先端開口部41aに続くガス流路が開放され、窒素ガスが放出される。
【0035】
調整器43は、窒素ガスの流路43aに弁体43bを移動可能に配設することによって、容器弁41に固定して配置した弁体支持体43cの弁体43bの移動方向に沿って形成した流路開口部43dの断面積を変化させるようにした定流量弁からなる。
ここで、流路開口部43dの断面積の変化によって減圧される減圧前の窒素ガスの静圧がかかる弁体43bの上流側を向く面の受圧面積と下流側を向く面の受圧面積とがそれぞれ等しくなるようにし(このため、弁体43bの内部に形成したガス圧室43eと窒素ガスの流路43aとを弁体43bに形成した通路43fにより連通するようにしている。)、かつ、減圧後の窒素ガスの静圧がかかる弁体43bの上流側を向く面と下流側を向く面をなくすことで、弁体43bの移動方向にかかる窒素ガスの静圧による力を均衡させるように構成するとともに、窒素ガスの流れによって弁体43bにかかる力を、この力と釣り合う方向に弁体43bを付勢するばね部材43gの付勢力とバランスさせることにより、弁体支持体43cの弁体43bの移動方向に沿って形成した流路開口部43dの断面積を変化させ、窒素ガスの圧力変化にかかわらず窒素ガスの流量を一定に保持するようにしている。
【0036】
この定流量弁からなる調整器43によれば、窒素ガスの流路43aに配設した弁体43bを、窒素ガスの流れによって弁体43bにかかる力とばね部材43gの付勢力とにより動作、バランスさせることにより、弁体43bの移動方向に沿って形成した流路開口部43dの断面積を変化させ、窒素ガスの圧力変化にかかわらず窒素ガスの流量を略一定に保持するようにすることができる。
これにより、窒素ガスの圧力変化の影響を受けにくく、また、大流量にも適応可能である。
そして、弁体43bにかかる力と釣り合う方向に弁体43bを付勢する付勢手段として、ばね部材43gを用いる(付勢手段には、磁石を用いることもできる。)ことにより、全体構造を簡易に構成し、調整器43を、消火剤貯蔵容器2内に格納して設置することを可能にすることができる。
さらに、この調整器43は、容器弁41に組み込んだ開放装置42と連動して機能するため、調整器43及び開放装置41を含む消火剤の放出を制御する制御器具4の機構及びその動作を簡易化し、信頼性を高めることができる。
【0037】
次に、この消火器1の具体例の仕様及び作用について説明する。
消火剤貯蔵容器(ノズル部を含む。)の重量:約17kg
充填する窒素ガスの重量:約4kg
窒素ガスの充填圧力:約30MPa
窒素ガスの放射継続時間:約15秒
消火対象までの距離:約2m以内
窒素ガスの消火に必要な消火剤濃度を維持できる範囲:ノズル部の金属多孔質部材(下流側部材)の大気に開放される開口面積の数倍程度(本実施例の金属多孔質部材(下流側部材)の開口径D:約100mm)
金属多孔質部材:3次元の網目状組織体からなる多孔質金属体(住友電気工業社製「セルメット」(登録商標名))
【0038】
図5に、本発明の消火剤貯蔵容器を適用した消火器の変形例を示す。
この消火器1は、上記第3実施例の消火器1において、容器弁41に組み込まれた開放装置42を変更したもので、容器弁41に、ハンドル42gと、このハンドル42gによってばね部材42eの付勢力に抗して操作される操作弁42hと、操作弁42hに一体に設けた操作ロッド42jと、開閉弁42dとを備え、開閉弁42dは、ばね部材42eによって容器弁41の先端開口部41aに続くガス流路を閉鎖する方向に付勢されるようにする。
そして、操作ロッド42j及び開閉弁42dには、通路42k及び42mを形成することにより、容器弁41の先端開口部41a側の圧力が、弁室42f内にかかるようにされている。
これにより、消火器1が保管状態に置かれるときは、開閉弁42dによって容器弁41の先端開口部41aに続くガス流路が閉鎖され、消火剤貯蔵容器2に高圧で貯蔵された窒素ガスの貯蔵状態を保つことができる。
一方、消火器1を使用する場合は、ハンドル42gを操作することにより、操作弁42h及び操作ロッド42jを介して、開閉弁42dを移動させ、これによって、容器弁41の先端開口部41aに続くガス流路が開放され、窒素ガスが放出される。ここで、ハンドル42gの操作を解除しても、開閉弁42dにかかる窒素ガスの圧力のバランスにより、開閉弁42dの移動状態が維持される。
【0039】
なお、この実施例の調整器43を含むその他の構成及び作用は、上記実施例の消火器1と同様である。
【0040】
図6に、本発明の消火剤貯蔵容器を適用した消火器の変形例を示す。
この消火器1は、消火器1の消火剤貯蔵容器2から外部に露出した部分を保護するプロテクタ51、消火剤貯蔵容器2に保持部材としての固定バンド52及び肩掛け具53及び放射方向指示器54を設けたものである。
これにより、消火器1の操作性及び安全性を一層高めることができる。
【0041】
以上、本発明の消火剤貯蔵容器について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、消火剤として、イナートガスとして代表的な窒素ガスのほか、窒素ガス以外のアルゴン等の不活性ガスや窒素ガスを含む複数種類の不活性ガスを混合した、各種のイナートガスを使用したり、可搬式以外の固定式や半固定式の消火器や消火設備の消火剤貯蔵容器にも適用することができる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の消火剤貯蔵容器は、人体に対する消火剤の毒性により消火対象や使用方法に制約がないイナートガスを消火剤として用い、操作性や安定性を向上させることによって、初期消火に用いられる可搬式のものに特に好適に用いられる消火剤貯蔵容器を提供ものであることから、電算機、通信設備、データセンタ、電気設備等の電気電子機器を設置した設備に対する初期消火の用途を始めとして、各種設備に対する初期消火の固定式や半固定式の消火器や消火設備の用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 消火器
2 消火剤貯蔵容器
3 ノズル部
30 ノズル本体
31 金属多孔質部材
32 オリフィス板
32a オリフィス
4 制御器具
41 容器弁
42 開放装置
43 調整器
43a 流路
43b 弁体
43c 弁体支持体
43d 流路開口部
43e ガス圧室
43f 通路
43g ばね部材
44 安全装置
51 プロテクタ
52 固定バンド
53 肩掛け具
54 放射方向指示器
図1
図2
図3
図4
図5
図6