特開2016-209835(P2016-209835A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-209835(P2016-209835A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】脱硝触媒の性能を回復させる方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/30 20060101AFI20161118BHJP
   B01J 27/053 20060101ALI20161118BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20161118BHJP
   B01J 38/16 20060101ALI20161118BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20161118BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20161118BHJP
【FI】
   B01J27/30 A
   B01J27/053 A
   B01J37/02 301C
   B01J38/16
   B01D53/86 222
   B01D53/96 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-96941(P2015-96941)
(22)【出願日】2015年5月11日
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【弁理士】
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】今田 尚美
【テーマコード(参考)】
4D048
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D048AA06
4D048AC10
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4D148AA06
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4D148BA03X
4D148BA06X
4D148BA07X
4D148BA22X
4D148BA23X
4D148BA26X
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4D148BA39X
4D148BA41X
4D148BA46X
4D148BB07
4D148BD04
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA10
4G169BA02B
4G169BA03B
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA18
4G169BB10A
4G169BB10B
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4G169BC10B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC25A
4G169BC25B
4G169BC54A
4G169BC54B
4G169BC59B
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169CA02
4G169CA13
4G169EA12
4G169ED07
4G169FA04
4G169FB23
4G169FB30
4G169GA03
4G169GA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】石炭の燃焼によって発生する排ガスの浄化処理に使用された脱硝触媒を含んで成る触媒層を脱硝装置に設置したままで前記脱硝触媒の性能を回復させる方法を提供すること。
【解決手段】酸化チタンを主成分として含有し、バナジウム(V)を副成分として含有し、且つアルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)およびマグネシウム(Mg)からなる群より選ばれる少なくともひとつの硫酸塩もしくは酸化物をさらに含有する脱硝触媒を含んで成る触媒層が設置されている脱硝装置に石炭の燃焼によって発生する排ガスを流すことによって排ガス浄化処理を行い、その後、前記排ガス浄化処理を停止し、前記触媒層に付着したダストを除去し、次いで、脱硝装置内を相対湿度80〜95%に加湿することを含む、前記触媒層を脱硝装置に設置したままで脱硝触媒の性能を回復させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンを主成分として含有し、バナジウム(V)を副成分として含有し、且つアルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、およびマグネシウム(Mg)からなる群より選ばれる少なくともひとつの硫酸塩もしくは酸化物をさらに含有する脱硝触媒を含んで成る触媒層が設置されている脱硝装置に石炭の燃焼によって発生する排ガスを流すことによって排ガス浄化処理を行い、その後、
前記排ガス浄化処理を停止し、
前記触媒層に付着したダストを除去し、
次いで、脱硝装置内を相対湿度80〜95%に加湿することを含む、
前記触媒層を脱硝装置に設置したままで脱硝触媒の性能を回復させる方法。
【請求項2】
加湿が、空気と水蒸気とを混合して高湿ガスを生成させ、該高湿ガスを触媒層に流すことによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脱硝装置内に設置された触媒層の上流部または下流部において相対湿度を測定し、
該測定値が前記の値になるように、
前記高湿ガスの生成量および前記高湿ガスの流量を制御することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
加湿を行っているときの触媒層の上流部または下流部の雰囲気温度が20〜40℃になるように、前記高湿ガスの温度を制御することをさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
酸化チタンを主成分として含有し、バナジウム(V)を副成分として含有し、且つアルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、およびマグネシウム(Mg)からなる群より選ばれる少なくともひとつの硫酸塩もしくは酸化物をさらに含む脱硝触媒を含んで成る触媒層、および
空気と水蒸気とを混合して高湿ガスを生成させるための加湿装置、触媒層に前記高湿ガスを流すための送風装置、触媒層の上流部または下流部における相対湿度を測定するための湿度測定装置、および脱硝装置内に設置された触媒層の上流部または下流部における相対湿度測定値が80〜95%になるように高湿ガス生成量および高湿ガス流量を制御するための制御装置を有する脱硝触媒性能回復設備
を有する、石炭の燃焼によって発生する排ガスの浄化のために用いられる脱硝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硝触媒の性能を回復させる方法に関する。より詳細に本発明は、石炭の燃焼によって発生する排ガスの浄化処理に使用された脱硝触媒を含んで成る触媒層を脱硝装置に設置したままで前記脱硝触媒の性能を回復させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンを主成分として含有する触媒は、アンモニアや尿素を用いた脱硝処理において、高い活性と高い耐久性を示すので、国内外で広く使われている。この脱硝触媒は、長期間の使用の間に、排煙中に含まれる触媒毒(アルカリ成分、ヒ素、リンなど)の付着や、触媒自身のシンタリングによる触媒粒子の粗大化などによって脱硝性能が低下する。新しい脱硝触媒に交換した際に多量の使用済み脱硝触媒が発生する。この使用済み脱硝触媒を再生して、廃棄物の低減、触媒生産コストの低減などが図られている。
【0003】
使用済み脱硝触媒の再生方法として、例えば、特許文献1は、劣化した石炭焚用脱硝触媒の再生に際し、触媒表面から物理的に付着したダスト成分を除去した後、その触媒表面に、触媒活性成分を含浸或いはコーティングして再担持させることを特徴とする触媒の再生方法を開示している。特許文献2は、酸化チタンと、バナジウム酸化物と、タングステン酸化物及び/又はモリブデン酸化物と、硫酸アルミニウムとを含有する使用済み脱硝触媒に、液滴、ミスト或いは蒸気の状態で水を供給して該触媒の表面が液膜で覆われる状態に為し、次いで乾燥することを含む、使用済み脱硝触媒の再生方法を開示している。このような脱硝触媒の再生方法のほとんどは、脱硝装置から脱硝触媒を取り外して行われる。このような再生処理には高額な費用がかかる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−074106号公報
【特許文献2】特開2014−008480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、石炭の燃焼によって発生する排ガスの浄化処理に使用された脱硝触媒を含んで成る触媒層を脱硝装置に設置したままで前記脱硝触媒の性能を回復させる方法を提供することである。
別の観点から、本発明の目的は、石炭の燃焼によって発生する排ガスの浄化処理に使用された脱硝触媒を含んで成る触媒層を脱硝装置に設置したままで前記脱硝触媒に吸着したヒ素のオキソ酸を無毒化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく検討した結果、以下のような態様を包含する本発明を完成するに至った。
【0007】
〔1〕 酸化チタンを主成分として含有し、バナジウム(V)を副成分として含有し、且つアルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、およびマグネシウム(Mg)からなる群より選ばれる少なくともひとつの硫酸塩もしくは酸化物をさらに含有する脱硝触媒を含んで成る触媒層が設置されている脱硝装置に石炭の燃焼によって発生する排ガスを流すことによって排ガス浄化処理を行い、その後、
前記排ガス浄化処理を停止し、
前記触媒層に付着したダストを除去し、
次いで、脱硝装置内を相対湿度80〜95%に加湿することを含む、
前記触媒層を脱硝装置に設置したままで脱硝触媒の性能を回復させる方法。
【0008】
〔2〕 加湿が、空気と水蒸気とを混合して高湿ガスを生成させ、該高湿ガスを触媒層に流すことによって行われる、〔1〕に記載の方法。
〔3〕 脱硝装置内に設置された触媒層の上流部または下流部において相対湿度を測定し、
該測定値が前記の値になるように、
前記高湿ガスの生成量および前記高湿ガスの流量を制御することをさらに含む、〔2〕に記載の方法。
〔4〕 加湿を行っているときの触媒層の上流部または下流部の雰囲気温度が20〜40℃になるように、前記高湿ガスの温度を制御することをさらに含む、〔2〕または〔3〕に記載の方法。
〔5〕 酸化チタンを主成分として含有し、バナジウム(V)を副成分として含有し、且つアルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、およびマグネシウム(Mg)からなる群より選ばれる少なくともひとつの硫酸塩もしくは酸化物をさらに含む脱硝触媒を含んで成る触媒層、および
空気と水蒸気とを混合して高湿ガスを生成させるための加湿装置、触媒層に前記高湿ガスを流すための送風装置、触媒層の上流部または下流部における相対湿度を測定するための湿度測定装置、および脱硝装置内に設置された触媒層の上流部または下流部における相対湿度測定値が80〜95%になるように高湿ガス生成量および高湿ガス流量を制御するための制御装置を有する脱硝触媒性能回復設備
を有する、石炭の燃焼によって発生する排ガスの浄化のために用いられる脱硝装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、脱硝装置内に脱硝触媒を充填したままで脱硝触媒の性能を回復させることができる。本発明によれば、新たな脱硝触媒と交換しなければならない時までの期間を延ばすことができるので、経費の節減または資源の有効利用に資することができる。
【0010】
石炭燃焼排ガスには、ヒ酸、亜ヒ酸などのヒ素化合物が多く含まれている。酸化チタンを主成分として含有する脱硝触媒で石炭燃焼排ガスの浄化処理を行うと、ヒ素化合物が、脱硝触媒の微細孔の奥にまで入り込んで、例えば、式1で表されるような反応をして強く吸着し、酸化チタン表面の活性点を失活させる。
TiO2+As23+O2 → TiO2−As25(吸着) (1)
従来の脱硝触媒の再生法では、吸着したヒ素化合物を酸洗浄などで酸化チタン表面から除去して、酸化チタン表面の活性点を再生させていた。
【0011】
本発明にしたがって、酸化チタンを主成分として含有し、バナジウム(V)を副成分として含有し、且つアルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、およびマグネシウム(Mg)からなる群より選ばれる少なくともひとつの硫酸塩もしくは酸化物をさらに含む脱硝触媒を用いて石炭燃焼排ガスの浄化処理を行い、その後、ダスト除去、次いで加湿を行うと、酸化チタンに吸着したヒ素化合物が、酸化チタンから脱離し、Al、Mn、BiもしくはMgの硫酸塩もしくは酸化物と反応(例えば、式2で表される反応)してヒ酸塩化合物(AlAsO4、Mn2(AsO43、BiAsO4、およびMg2(AsO43)を生成するので、酸化チタン表面の活性点を再生させることができる。
TiO2−As25(吸着)+Al2(SO43+3H2
→ TiO2+2AlAsO4+3H2SO4 (2)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る脱硝触媒の性能回復方法は、脱硝触媒を含んで成る触媒層が設置されている脱硝装置に石炭の燃焼によって発生する排ガスを流すことによって排ガス浄化処理を行い、 その後、前記排ガス浄化処理を停止し、 前記触媒層に付着したダストを除去し、 次いで、脱硝装置内を加湿することを含むものである。本発明に係る脱硝触媒の性能回復方法は、前記触媒層を脱硝装置に設置したままで行うものである。
【0013】
本発明に使用される脱硝触媒は、酸化チタンを主成分として含有し、バナジウム(V)を副成分として含有し、且つアルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、およびマグネシウム(Mg)からなる群より選ばれる少なくともひとつの硫酸塩もしくは酸化物をさらに含有するものである。
【0014】
脱硝触媒の主成分である酸化チタンとしては、二酸化チタン(TiO2)の粉末、スラリまたはペースト;オルトチタン酸もしくはメタチタン酸(H2TiO3)の粉末、スラリまたはペーストなどを用いることができる。酸化チタン粉末は、その製法によって制限されず、塩素法や硫酸法などで製造されたものであることができる。硫黄による触媒活性向上が期待できることがあるので、硫酸法で得られる酸化チタンが好ましい。
【0015】
脱硝触媒の副成分であるバナジウム(V)は、バナジウム元素を含む化合物を添加することによって含有させることができる。バナジウム元素を含む化合物としては、硫酸バナジル、メタバナジン酸アンモニウム、酸化バナジウムなどが挙げられる。Vの量は、特に限定されないが、酸化チタンに対して、好ましくは0.3〜4atom%である。
【0016】
脱硝触媒の副成分として、モリブデン(Mo)またはタングステン(W)をさらに含有させることができる。脱硝触媒の副成分であるモリブデンまたはタングステンはモリブデン元素を含む化合物またはタングステン元素を含む化合物を添加することによって含有させることができる。モリブデン元素を含む化合物としてはモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸などが挙げられる。タングステン元素を含む化合物としては、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸などが挙げられる。Moの量は、特に限定されないが、酸化チタンに対して、好ましくは0.5〜5atom%である。Wの量は、特に限定されないが、酸化チタンに対して、好ましくは0.5〜5atom%である。
さらに、必要に応じてリン(P)元素を含有させることができる。脱硝触媒に添加することができるリン元素を含む化合物としてはリン酸、ポリリン酸などが挙げられる。Pの量は、特に限定されないが、酸化チタンに対して、好ましくはP原子として0.5〜2質量%である。
【0017】
本発明に使用される脱硝触媒は、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、およびマグネシウム(Mg)からなる群より選ばれる少なくともひとつの硫酸塩もしくは酸化物を含有する。
【0018】
Al、Mn、BiもしくはMgの硫酸塩またはAl、Mn、BiもしくはMgの酸化物の添加量は、特に限定されないが、Al2(SO43のみを添加する場合、その添加量は触媒成分質量(TiO2とVとの合計質量、以下同じ)に対して好ましくは2〜6質量%であり、MnSO4のみを添加する場合、その添加量は触媒成分質量に対して好ましくは2〜4質量%であり、Bi2(SO43のみを添加する場合、その添加量は触媒成分質量に対して好ましくは4〜9質量%であり、MgSO4のみを添加する場合、その添加量は触媒成分質量に対して好ましくは2〜4質量%であり、Al23のみを添加する場合、その添加量は触媒成分質量に対して好ましくは1〜2質量%であり、Mn23のみを添加する場合、その添加量は触媒成分質量に対して好ましくは1〜3質量%であり、Bi23のみを添加する場合、その添加量は触媒成分質量に対して好ましくは3〜6質量%であり、MgOのみを添加する場合、その添加量は触媒成分質量に対して好ましくは1〜3質量%である。
Al、Mn、BiもしくはMgの硫酸塩、Al、Mn、BiもしくはMgの酸化物を2種以上組み合わせて添加する場合は、上記の範囲内で(Al+Mn+Bi+Mg)/Tiの原子比が1乃至2.5になるようにするとよい。
Al、Mn、BiもしくはMgの硫酸塩またはAl、Mn、BiもしくはMgの酸化物の添加量が、少なすぎると脱硝性能の回復度合いが低くなる傾向があり、多すぎると初期の脱硝性能が低くなる傾向がある。
【0019】
本発明に使用される脱硝触媒は、例えば、主成分の酸化チタンと副成分のW、Mo、Vなどの元素を含む化合物とAl、Mn、BiもしくはMgの硫酸塩または酸化物とを含んで成る触媒活性物質をハニカム状に成形してなるもの、メタルラスやガラス繊維製板などの板状基材に主成分の酸化チタンと副成分のW、Mo、Vなどの元素を含む化合物とAl、Mn、BiもしくはMgの硫酸塩または酸化物とを含んで成る触媒活性物質を担持してなるものなどが挙げられる。
【0020】
本発明に使用される触媒層は所望の形状に形成された脱硝触媒を含有してなるものである。触媒層は、例えば、複数の板状脱硝触媒を所定の距離間隔を開けて重ね、それらを枠内に固定したものなどを挙げることができる。係る触媒層は脱硝装置内に設置される。
【0021】
本発明に係る脱硝触媒の性能回復方法では、先ず、上記脱硝触媒を含んで成る触媒層が設置されている脱硝装置に排ガスを流すことによって排ガス浄化処理を行う。
本発明の方法において使用される排ガスは、石炭の燃焼によって発生する排ガスである。該排ガスは、例えば、石炭火力発電設備のボイラなどで発生するものである。この排ガスにはすでに述べたとおりヒ素化合物が含まれている。排ガス浄化処理を継続して行うことによって脱硝触媒に吸着するヒ素化合物の量が増えてくる。ヒ素化合物の吸着量が増えてくるほど脱硝性能が低下してくる。
【0022】
所定のレベルまで脱硝率が低下したときに、上記の排ガス浄化処理を停止させる。そして、本発明の方法においては、前記触媒層に付着したダストを除去する。ダストの除去方法は特に制限されない。ダストの除去は、例えば、ブラシ、低周波振動機、スートブロワ、エアブローガン、サンドブラスト、集塵機などで行うことができる。本発明においては、触媒層以外の箇所(例えば、脱硝装置の内壁)に付着したダストも除去することが好ましい。
【0023】
次に、脱硝装置内を加湿する。加湿の方法は特に制限されないが、本発明において、加湿は、空気と水蒸気とを混合して高湿ガスを生成させ、該高湿ガスを触媒層に流すことによって行うことが好ましい。空気は脱硝装置内に存在するものでも、脱硝装置外に存在するものでもよい。また、窒素、酸素などの空気主要構成成分を混合して人工的に空気を調製してもよい。なお、特許文献2のように液滴やミスト状の水を脱硝装置内に供給すると、該装置内壁面や脱硝触媒層の金属枠表面がすぐに結露してしまい腐食が進行してしまう上に、相対湿度を均一に制御することが困難となるため好ましくない。
高湿ガスの生成のために加湿装置が用いられる。加湿装置としては、浸透膜式、滴下浸透式、毛細管式、回転式などの気化式加湿器;超音波式、遠心式、高圧スプレー式、二流体噴射式などの水噴霧式加湿器;蒸気配管式、電熱式、電極式などの蒸気式加湿器などがある。蒸気式加湿器のうち蒸気配管式加湿器(例えば、二重管式加湿器、間接蒸気式加湿器など)はボイラなどで発生した水蒸気を利用することができる。
【0024】
加湿は、脱硝装置内の相対湿度が、80〜95%、好ましくは90〜95%になるようにして行う。相対湿度が低すぎると脱硝触媒の細孔内に水が十分供給されないため性能回復の度合いが低くなる傾向がある。相対湿度が高すぎると脱硝装置内の金属壁面や触媒を固定している金属枠などで水蒸気が凝縮して腐食を促す傾向がある。
相対湿度は、脱硝装置内に設置された触媒層の上流部または下流部において測定することが好ましい。相対湿度の測定は、例えば、伸縮式湿度計、バイメタル式湿度計、電気式湿度計、露点計などの湿度測定装置を触媒層の上流部または下流部に設置して行うことができる。触媒層の上流部または下流部における相対湿度が均一になるようにまたは触媒層に高湿ガスを送り込むために送風装置を触媒層の上流部または下流部に設置することができる。
【0025】
高湿ガスの生成量および触媒層への高湿ガスの流量は、相対湿度の測定値が、前記の値になるように制御することが好ましい。さらに、加湿を行っているときの触媒層の上流部または下流部の雰囲気温度が20〜40℃になるように、前記高湿ガスの温度や流量を制御することが好ましい。温度が低すぎると、空気中の水分量が減少するため、触媒全体を十分に吸湿処理し難くなり、式(2)などで表される反応が抑制される傾向がある。逆に温度が高すぎると、大容量の加湿設備が必要となる上に、環境上、入缶作業が困難になる傾向がある。
【0026】
脱硝装置内を加湿する時間は、特に制限されないが、数時間〜1日程度が好ましい。加湿終了後、脱硝装置内での結露を防止するために、脱硝装置内を外気などの低湿度ガスに置き換えることが好ましい。
【0027】
本発明の性能回復方法を行った後、石炭の燃焼によって発生する排ガスの浄化処理を再開させると、初期脱硝率と同程度の脱硝率で排ガスの浄化を行うことができる。
【0028】
以下に実施例を示して本発明をより詳細に説明する。なお、以下の実施例によって本発明の範囲は制限されない。
【0029】
実施例1 (触媒Aの調製)
酸化チタン粉末(石原産業製、比表面積290m2/g)900g、硫酸アルミニウム13〜14水和物62.6g、20質量%シリカゾル(日産化学製、OSゾル)385gおよび水100gをニーダに入れ、30分間混練して、硫酸イオンをTiO2表面に吸着させた。これに三酸化モリブデン16.2gおよびメタバナジン酸アンモニウム13.2gを添加し、更に1時間混練した。その後、シリカアルミナ系セラミック繊維(東芝ファインレックス製)144gを徐々に添加しながら20分間混練してペーストを得た。該ペーストを厚さ0.2mmのSUS304製鋼板をラス加工して成る厚さ0.7mmのメタルラス基材の上におき、ペーストとメタルラス基材を二枚のポリエチレンシートに挟んで、その状態で一対の加圧ローラに通してメタルラス基材の網目にペーストを埋め込むように塗布した。これを自然乾燥させ、次いで500℃で2時間焼成して板状触媒Aを得た。該板状触媒Aは、Ti/Mo/Vの原子比が98/1/1、硫酸アルミニウム(Al2(SO43)の含有量がTiO2に対して4.5質量%であった。この板状触媒Aを幅20mm×長さ100mmのサイズに裁断した。
【0030】
(初期脱硝率(脱硝率(I))の測定)
管型反応器に幅20mm×長さ100mmの板状触媒Aを1枚充填した。管型反応器を400℃に加熱した。加熱された管型反応器に、表1に示す組成のガスを3.1L/minにて供給して、脱硝率(I)を測定した。結果を表3に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
(ヒ素による被毒処理)
規定濃度の亜ヒ酸(As23)水溶液を定量フィーダで200℃に設定された気化器に導入して水蒸気と亜ヒ酸蒸気を生成させた。これに、窒素、酸素、および二酸化炭素からなる混合ガスを混ぜて、表2に示すガス組成の模擬燃焼排ガスを得た。
幅20mm×長さ100mmの板状触媒Aの充填された350℃の管型反応器に模擬燃焼排ガスを導入して前記触媒Aを模擬燃焼排ガスに50時間曝した。被毒処理された板状触媒Aは亜ヒ酸1質量%を吸着していた。
【0033】
(被毒後脱硝率(脱硝率(II))の測定)
被毒処理された板状触媒Aの充填された400℃の管型反応器に表1に示す組成のガスを、3.1L/minにて供給して、脱硝率(II)を測定した。結果を表3に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
(加湿処理)
被毒処理された板状触媒Aが充填された管型反応器に、温度30℃、相対湿度95%に調整された高湿ガスを24時間流した。その後、管型反応器を120℃に加熱して乾燥させた。
【0036】
(回復後脱硝率(脱硝率(III))の測定)
加湿処理された板状触媒Aが充填された400℃の管型反応器に表1に示す組成のガスを、3.1L/minにて供給して、脱硝率(III)を測定した。結果を表3に示す。
【0037】
実施例2 (触媒Bの調製)
硫酸アルミニウム13〜14水和物を硫酸マンガンに置き換えた以外は実施例1と同じ方法で板状触媒Bを得た。板状触媒Bは、硫酸マンガンの含有量がTiO2に対して4質量wt%であった。板状触媒Bについて、実施例1と同じ方法で脱硝率(I)〜(III)を測定した。結果を表3に示す。
【0038】
実施例3 (触媒Cの調製)
硫酸アルミニウム13〜14水和物を硫酸ビスマスに置き換えた以外は実施例1と同じ方法で板状触媒Cを得た。板状触媒Cは、硫酸ビスマスの含有量がTiO2に対して9質量%であった。板状触媒Cについて、実施例1と同じ方法で脱硝率(I)〜(III)を測定した。結果を表3に示す。
【0039】
実施例4 (触媒Dの調製)
硫酸アルミニウム13〜14水和物を硫酸マグネシウムに置き換えた以外は実施例1と同じ方法で板状触媒Dを得た。板状触媒Dは、硫酸マグネシウムの含有量がTiO2に対して3質量%であった。板状触媒Dについて、実施例1と同じ方法で脱硝率(I)〜(III)を測定した。結果を表3に示す。
【0040】
比較例1 (触媒Eの調製)
硫酸アルミニウム13〜14水和物を添加しなかった以外は実施例1と同じ方法で板状触媒Eを得た。板状触媒Eについて、実施例1と同じ方法で脱硝率(I)〜(III)を測定した結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
触媒Eは、脱硝率(III)が脱硝率(II)に対して3%増加した。これは、表面に局在していたヒ素化合物が触媒全体に広がって、活性点を失活させていたヒ素化合物の濃度が下がり、見かけ上脱硝性能が回復したように見えるだけであると推定する。
これに対して、Al、Mn、BiまたはMgを含有する触媒A〜Dは、加湿処理によって脱硝率(III)が脱硝率(I)と同程度にまで増加した。これは、Al、Mn、BiまたはMgがヒ素化合物と反応してヒ素を無毒化したからであると考える。
これらの結果から、本発明の方法によれば、脱硝装置内に脱硝触媒を充填したままで脱硝触媒の性能を回復させることができる。