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特開2016-210025木板材、その製造方法、床板および壁板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-210025(P2016-210025A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】木板材、その製造方法、床板および壁板
(51)【国際特許分類】
   B27M 3/00 20060101AFI20161118BHJP
   B27M 1/00 20060101ALI20161118BHJP
   B27M 1/02 20060101ALI20161118BHJP
   B24B 9/18 20060101ALI20161118BHJP
【FI】
   B27M3/00 A
   B27M1/00 B
   B27M1/02
   B27M1/00 D
   B24B9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-93210(P2015-93210)
(22)【出願日】2015年4月30日
(71)【出願人】
【識別番号】515118036
【氏名又は名称】株式会社日本システム家具
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】川島 勝
【テーマコード(参考)】
2B250
3C049
【Fターム(参考)】
2B250AA05
2B250AA09
2B250BA03
2B250CA11
2B250EA02
2B250EA18
2B250FA21
2B250FA25
2B250FA37
2B250HA05
3C049AA02
3C049AA12
3C049AA13
3C049AB04
3C049BC02
3C049CA01
3C049CA03
3C049CA08
3C049CB01
3C049CB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】天然木の外観を備えているとともに、無機質でなく趣きのある意匠感を呈することのできる木板材、木板材の製造方法、床板および壁板を提供する。
【解決手段】木板材1は、天然木から成る板状の木板材であって、木表面2または木裏面3と木端面4Aまたは4Bとの境界線9Aまたは9Bが平面視で曲線になるように、木端面4Aまたは4Bが形成されている。天然木は、原料の無垢板材を加熱しながら加圧して得られた圧縮木板である。一方の木端面4Aには板厚tと直交する方向に延びるホゾ部6Aが形成され、他方の木端面4Bには前記ホゾ部6Aを収容して係合する溝部7Aが板厚tと直交する方向に延びて形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然木から成る板状の木板材であって、木表面または木裏面と木端面との境界線が平面視で曲線になるように、木端面が形成されていることを特徴とする木板材。
【請求項2】
前記天然木が、原料の無垢板材を加熱しながら加圧して得られた圧縮木板である請求項1に記載の木板材。
【請求項3】
一方の木端面には板厚直交方向に延びるホゾ部が形成され、他方の木端面には前記ホゾ部を収容して係合する溝部が板厚直交方向に延びて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の木板材。
【請求項4】
一方の木端面と木表面との境界線部分が切り欠かれて切欠き部として形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の木板材。
【請求項5】
自動ツール交換装置を有するマシニングセンタを用いて木板材を製造する方法であって、
木板材の一方の木端面および他方の木端面を、木表面または木裏面と各木端面との境界線が平面視で曲線になるように研削する曲面研削工程と、
一方の木端面にホゾ部を形成するホゾ部形成工程と、
他方の木端面に溝部を形成する溝部形成工程と、
を備えていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の木板材の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の木板材を複数枚用い、それぞれの木板材の一方の木端面に、隣合う他の木板材の他方の木端面を突き合わせて構成されていることを特徴とする床板。
【請求項7】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の木板材を複数枚用い、それぞれの木板材の一方の木端面に、隣合う他の木板材の他方の木端面を突き合わせて構成されていることを特徴とする壁板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然味があって趣きのある意匠感を呈することのできる木板材、木板材の製造方法、木板材を用いた床板および壁板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般の床板としては、図7に示すようなものが知られている。図示の床板51では、複数の木板材61と、長手方向に2つ連ねられた木板材61a,1aと、一辺側に配置される木板材61bと、他辺側に配置される木板材61bとが用いられる。隣の木板材61,61間には2連の木板材61a,61aが配置される。これら隣り合う木板材同士は、一方の木端面64Aのホゾ部66Aが他方の木端面64Bの溝部67Aに係合されて突き合せられる。このように、全ての木板材61,61a,61b,61cが係合し一体に突き合せられた状態で、それぞれの木裏面3,3,3,・・・が基板上に接着剤などで固着されることにより、床板51が構成されている。尚、図7中において、符号2は木表面であり、符号8は木裏面3に形成された反り止め溝である。この床板51によれば、木表面2と木端面64Aとの境界線、および木表面2と木端面64Aとの境界線が平面視で直線状に表われるので、無機質な意匠感を呈して面白味が少ないとされる。
【0003】
そこで、面白味のある板材を提供しようとするものが、下記の特許文献1に開示されている。前記文献開示の板材は、丸太を木芯方向に分断して薄板材を得、この薄板材の外周を研削して六角板材を得、更に10個ほどの六角板材を突き合わせて接着剤で固定した多角状木板材である。この多角状木板材を素地表面に複数枚突き合せて列置することにより、床板を構成している。この床板によれば、隣合う多角状木板材の境界線が折れ線状に曲がっているので、意匠の面白味を生じさせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58−93128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記公報開示の多角状木板材で構成された床板は、木表面に多数個の年輪が表われているので、天然木の外観を呈さない。また、意匠性に関しても、木表面と木端面との境界線が角々と折れ曲がっていて自然味が感じられない。更には、多角状木板材の製造に手間および時間がかかり、製造コストも高くつくと想定される。
また、木目を有する極薄板を合板の表面に接着剤で貼り付けて成る板材を用い、この板材の木端面を糸鋸などにより平面視で曲線に形成したものが知られているが、天然木そのものの板材において木端面を平面視で曲線に形成したものは、これまでになかったのである。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、天然木の外観を備えているとともに、無機質でなく趣きのある意匠感を呈することのできる木板材、木板材の製造方法、木板材を用いた床板および壁板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る木板材は、天然木から成る板状の木板材であって、木表面または木裏面と木端面との境界線が平面視で曲線になるように、木端面が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記構成において、天然木が、原料の無垢板材を加熱しながら加圧して得られた圧縮木板であるものである。
【0009】
そして、前記した各構成において、一方の木端面には板厚直交方向に延びるホゾ部が形成され、他方の木端面には前記ホゾ部を収容して係合する溝部が板厚直交方向に延びて形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
更に、前記した各構成において、一方の木端面と木表面との境界線部分が切り欠かれて切欠き部として形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る木板材の製造方法は、自動ツール交換装置を有するマシニングセンタを用いて木板材を製造する方法であって、木板材の一方の木端面および他方の木端面を、木表面または木裏面と各木端面との境界線が平面視で曲線になるように研削する曲面研削工程と、一方の木端面にホゾ部を形成するホゾ部形成工程と、他方の木端面に溝部を形成する溝部形成工程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
そして、本発明に係る床板は、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の木板材を複数枚用い、それぞれの木板材の一方の木端面に、隣合う他の木板材の他方の木端面を突き合わせて構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
更に、本発明に係る壁板は、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の木板材を複数枚用い、それぞれの木板材の一方の木端面に、隣合う他の木板材の他方の木端面を突き合わせて構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る木板材によれば、天然木の無垢板材由来の材料であるので、天然木特有の木目を全面に有していて自然な温かみが感じられる。また、木表面または木裏面と木端面との境界線が平面視で曲線になるように、木端面が形成されているので、なだらかな曲線により趣きのある意匠感を呈する木板材を得ることができる。従って、住宅家屋のフローリング材や壁板材として好適に使用され得る。
【0015】
また、天然木として、原料の無垢板材を加熱しながら加圧して得られた圧縮木板を用いるものでは、無垢板材自体と比べて表面硬度や耐摩耗性がかなり高くなっているために、住人生活にも十分に耐える高い耐久性を有している。また、適度の表面硬度を有していることから、曲面を形成するための切断加工や研削加工がしやすくなり、切り口も木肌の荒れのない密な面となって、寸法精度の高い木板材を得ることができる。
【0016】
そして、一方の木端面には板厚直交方向に延びるホゾ部が形成され、他方の木端面には前記ホゾ部を収容して係合する溝部が板厚直交方向に延びて形成されているものでは、複数の木板材を、平面視で曲線の木端面同士を係合させて突き合わせることができ、これにより簡単かつ確実に床板や壁板を構成することができる。前記の板厚直交方向とは、木表面または木裏面と平行の方向、すなわち木端面の長手方向に沿う方向をいう。
【0017】
更に、一方の木端面と木表面との境界線部分が切り欠かれて切欠き部として形成されているものでは、或る木板材の一方の木端面と隣合う木板材の他方の木端面との間が切欠き部の存在により離間しており、その切欠き部も平面視で広幅帯状の曲線に見えるので、なだらかな曲線の趣きのある意匠感を明確に呈することができ、その曲線を遠くからでもはっきりと視認することができる。従って、意匠性がよりいっそう高くなり、住宅家屋用、特に壁板用の木板材として好適に提供され得る。
【0018】
また、本発明に係る木板材の製造方法によれば、木板材の木端面を曲線になるように研削する曲面研削工程と、一方の木端面にホゾ部を形成するホゾ部形成工程と、他方の木端面に溝部を形成する溝部形成工程と、を備えており、これらの各工程がマシニングセンタを用いて実行されるので、曲面の木端面を有する木板材を寸法精度良く迅速に製造することができる。
【0019】
そして、複数枚の木板材の一方の木端面に、隣合う他の木板材の他方の木端面を突き合わせて構成される床板は、板表面に天然木の木目が表われているとともに、木板材同士の突き合せ面が平面視で曲線に見えるので、これまでにない好ましい意匠感を利用者に与えることができる。
【0020】
更に、境界線部分が切欠き部となっている複数枚の木板材の一方の木端面に、隣合う他の木板材の他方の木端面を突き合わせて構成される壁板は、板表面に天然木の木目が表われているとともに、木板材同士の突き合せ面が平面視で曲線に見えるので、これまでにない好ましい意匠感を利用者に与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る木板材を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A線矢視図、(c)は底面図である。
図2】前記木板材を製造するマシニングセンタを示す概略正面図である。
図3】前記木板材を製造する方法の手順を示す図であって、(a)は使用される原板材の平面図、(a−A)は(a)におけるB−B線矢視図、(b)は原板材から両木口部分を切断した途中材の平面図、(b−A)は(b)におけるC−C線矢視図、(c)は両側の木端面を曲面に形成した途中材の平面図、(c−A)は(c)におけるD−D線矢視図、(d)は一方の木口面に溝部を形成した途中材の平面図、(d−A)は(d)におけるE−E線矢視図である。
図4図3(d)および(d−A)に続く製造方法の手順を示す図であって、(a)は他方の木端面に溝部を形成した途中材の平面図、(a−A)は(a)におけるF−F線矢視図、(b)は他方の木口面にホゾ部を形成した途中材の平面図、(b−A)は(b)におけるG−G線矢視図、(c)は一方の木端面にホゾ部を形成した途中材の平面図、(c−A)は(c)におけるH−H線矢視図、(d)は木裏面に2条の反り止め溝を形成して完成し木板材の平面図、(d−A)は(d)におけるI−I線矢視図である。
図5】この一実施形態に係る木板材を複数用いて製作された床板を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)におけるJ−J線矢視断面図である。
図6】本発明の別の実施形態に係る木板材を複数用いて製作された壁板を示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)におけるK−K線矢視断面図である。
図7】従来の木板材を複数用いて製作された床板を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)におけるL−L線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。図1は本発明の一実施形態に係る木板材を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A線矢視図、(c)は底面図である。但し、図7に示した従来の木板材と同一の構成要素には、同一の符号を付すとともにその詳細な説明を省略することがある。
図1において、この実施形態に係る木板材1は、紀州杉(天然木の例)から成る正断面視で矩形板状の木板材であり、上面である木表面2、下面である木裏面3、一方の木端面4A、他方の木端面4B、一方の木口面5A、および他方の木口面5Bを有している。
【0023】
木端面4Aは、この木端面4Aと木表面2(または木裏面3)との境界線9Aが平面視で波形の曲線になるような曲面に形成されている。木端面4Bは、この木端面4Bと木表面2(または木裏面3)との境界線9Bが平面視で波形の曲線になるような曲面に形成されている。この木板材1において、境界線9Aと境界線9Bとは、平面視で互いに等間隔で平行する曲線となっている。そして、一方の木端面4Aには、板厚tと直交する方向に延びるホゾ部6Aが形成されている。他方の木端面4Bには、前記のホゾ部6Aを収容して係合する溝部7Aが板厚tと直交する方向に延びて形成されている。また、一方の木口面5Aには、板厚直交方向に延びるホゾ部6Bが形成されている。他方の木口面5Bには、前記のホゾ部6Bを収容して係合する溝部7Bが板厚直交方向に延びて形成されている。そして、木裏面3には、境界線9Aまたは境界線9Bと平行する2条の反り止め溝8,8が曲線状に刻設されている。尚、木板材1を構成する天然木としては、原料である紀州杉の無垢板材を例えば200℃程度に加熱しながら加圧して得られた圧縮木板が使用される。このときの加圧圧力および加圧時間は、所望する木板材の圧縮率(板厚基準)に応じて決定される。因みに、木板材1において、木口面5Aから木口面5Bまでの寸法は例えば1810mmであり、板厚は例えば15mmである。無論、本発明は前記の寸法に限るものでない。
【0024】
前記の木板材1や、後で述べる木板材1a,1b,1c,1A,1aA,1bA,1cAは、図2に示すような、数値制御式で5軸駆動式のマシニングセンタ30を用いて製作される。このマシニングセンタ30は、木材の切断・穿孔・切削加工が可能な装置であり、例えば、床上に設置される基台31と、基台31上に複数配備されて原板材Gを載置・保持する受台32,32,32,・・・と、ツールTを駆動させる駆動機構33と、複数種から1つのツールTを取り出して駆動機構33に着脱させる自動ツール交換装置38と、原板材Gの研削などで生じた木粉を外部に吸い出すための可撓性の排出ダクト45と、から構成されている。駆動機構33は、スプライン軸受43が下部に取り付けられている駆動本体34と、駆動本体34の側面に配備されて回転駆動部36を矢印R2方向に回動させる回転駆動部35と、装着されたツールTを矢印R1方向に回転駆動させる回転駆動部36と、ツールTを回転駆動部36の回転駆動軸に交換可能に装着するコレット部37と、を備えている。自動ツール交換装置38は、スプライン軸受44が下部に取り付けられている交換装置本体39と、交換装置本体39から立設されていて複数種のツールT,T,T,・・・を格納したツール保管部40と、ツールTの交換の際に用いられる交換台41と、を備えている。そして、基台31内には、ガイド軸42が水平方向に配置されている。このガイド軸42には、数値制御により位置可変に軸心方向(矢印X方向)に移動するスプライン軸受43とスプライン軸受44が装着されている。また、回転駆動部35は駆動本体34に対し前後方向(矢印Y方向)および上下方向(矢印Z方向)に移動可能に構成されている。回転駆動部36は回転駆動部35に対し矢印R2方向に回転可能に構成され、コレット部37に装着されたツールTを矢印R1方向に回転駆動させるようになっている。
【0025】
ここで、自動ツール交換装置38を有するマシニングセンタ30を用いて木板材1aを製造する方法を、図2や他図を参照しながら説明する。木板材1aは、前述した木板材1を長手方向に半分割した大きさのものであり、図示および説明のしやすい大きさのものである。当然に、マシニングセンタ30を用いて木板材1を製造することもできる。そして、この実施形態に係る製造方法は、原板材設置工程(図3(a)参照)と、木口切り落とし工程(図3(b)参照)と、木端曲面研削工程(図3(c)参照)と、木口側溝部形成工程(図3(d)参照)と、木端側溝部形成工程(図4(a)参照)と、木口側ホゾ部形成工程(図4(b)参照)と、木端側ホゾ部形成工程および木端曲面研削工程(図4(c)参照)と、ならびに、反り止め溝形成工程(図4(d)参照)と、から構成されている。
【0026】
まず、例えば紀州杉の無垢板材から50%圧縮された圧縮木板である原板材Gが用いられる。前記の50%圧縮とは、無垢板材の板厚に対し半分の板厚にすることを意味する。この原板材Gはマシニングセンタ30における複数の受台32,32,32,・・・上に載置され、その位置で減圧吸引により固定される(図3(a):原板材設置工程)。この場合、原板材Gは例えば木表面2を下側にし、木裏面3を上側にして載置される。続いて、マシニングセンタ30のコレット部に、丸鋸のツールTが自動ツール交換装置38の作動により装着され、このツールTにより原板材Gから両端の木口部分が図3(a)の加工想定線L1の位置で切断されて切れ端11,11となり、途中材G1が得られる(図3(b):木口切り落とし工程)。次に、丸鋸のツールTからミル刃のツールTに交換されたのち、途中材G1の加工想定線L2,L3の位置が研削されて、木表面2(または木裏面3)と各木端面との境界線が平面視で曲線になるように、曲面が形成される(図3(c):木端曲面研削工程)。このとき、両側の木端面から切れ端12,13が切り離されて、途中材G2が得られ、他方の木端面4Bおよび境界線9Bが形成される。そして、ミル刃のツールTから中グリ刃のツールTに交換されたのち、途中材G2の一方の木口面5Bの加工想定線L4の位置が研削されて、溝部7Bが形成されて、途中材G3が得られる(図3(d):木口側溝部形成工程)。
【0027】
引き続き、途中材G3の他方の木端面4Bの加工想定線L5の位置が研削されて、溝部7Aが形成されて、途中材G4が得られる(図4(a):木端側溝部形成工程)。次に、中グリ刃のツールTから二股刃のツールTに交換されたのち、途中材G4の他方の木口面5Aの加工想定線L6の位置が研削され、ホゾ部6Bが形成されて、途中材G5が得られる(図4(b):木口側ホゾ部形成工程)。そして、途中材G5の加工想定線L7の位置が研削されて、木表面2(または木裏面3)と一方の木端面4Aとの境界線9Aが平面視で曲線になるように、曲面の木端面4Aが形成されて、途中材G6が得られる(図4(c):木端側ホゾ部形成工程および木端曲面研削工程)。更に、二股刃のツールTからホブ刃のツールTに交換されたのち、途中材G6の木裏面3に、境界線9Aおよび境界線9Bと平行する2条の反り止め溝8,8が形成される(図4(d):反り止め溝形成工程)。これにより、木板材1aが完成する。因みに、原板材Gの載置から木板材1aの完成までにかかる時間は、マシニングセンタ30の可変な処理速度によるが、最速で1分間程度、定常運転で2分間弱程度と、比較的短時間で済んでいる。
上記のような工程順で製造を行なうと、ツールTの段取り替えに要する手間と時間を最小化することができ、効率よく迅速に木板材1aを製造することができる。
【0028】
但し、本発明の製造方法に関しては、前記の工程順に限るものでない。例えば、木端側溝部形成工程(図4(a))を実施したのちに木口側溝部形成工程(図3(d))を実施したり、あるいは木端側ホゾ部形成工程および木端曲面研削工程(図4(c))を実施したのちに木口側ホゾ部形成工程(図4(b))を実施したりするようにしてもよく、その他の工程順を採用しても構わない。
【0029】
上記のように構成された木板材1および木板材1aは、図5に示すような例えば床板10に使用される。この床板10では、複数の木板材1と、長手方向に2つ連ねた木板材1a,1aと、一辺側に配置される木板材1cと、他辺側に配置される木板材1bと、が用いられる。木板材1,1間には2連の木板材1a,1aが配置される。これら隣り合う木板材同士は、一方の木端面4Aのホゾ部6Aが他方の木端面4Bの溝部7Aに係合されて突き合せられる。一方、2連の木板材1a,1aに関しては、一方の木口面5Aのホゾ部6Bが他方の木口面5Bの溝部7Bに係合されて突き合せられる。このように、全ての木板材1,1a,1b,1cが係合し一体に突き合せられた状態で、それぞれの木裏面3,3,3,・・・が基板(図示省略)上に接着剤などで固着されることにより、床板10が完成する。
【0030】
以上のように構成された床板10によれば、隣同士の木板材において、木表面2(または木裏面3)と木端面4A,4Bとの境界線9A,9Bが密接し平面視で波状の曲線になっているので、従来技術における直線の境界線のような無機質な意匠感を呈することがなく、なだらかな曲線の趣きのある意匠感を呈することができる。従って、住宅家屋の高級フローリング材として好適である。また、木表面2(または木裏面3)と木端面4A,4Bとの境界線9A,9Bが密接していることで、木端面4A,4Bの間に埃が溜まりにくいという利点もある。
木板材1,1a,1b,1cは天然木由来の板材であるので、天然木特有の木目を全面に有しているから温かみが感じられる。また、天然木の無垢板材を加熱しながら加圧して得られた圧縮木板を用いることにより、杉や桧のように無垢材自体は柔らかいものであっても、天然木材特有の外観を残しながら、無垢材が元来硬質である天然木材(タモ、白オークなど)と同等の機械的強度を備える。すなわち、圧縮木板は、無垢板材そのものと比べて表面硬度や耐摩耗性がかなり高くなっているために、生活時の摺動摩擦にも十分に耐える高い耐久性を有している。また、圧縮木板は適度の表面硬度を有していることから、マシニングセンタ30による切断加工や研削加工がしやすく木端面の曲面加工に好適となり、切り口も木肌の荒れのない滑面となって、寸法精度の高い木板材を得ることができる。
尚、上記の床板10は水平方向に敷設されて床板として主に用いられるが、垂直に立てかけて壁板として使用することも可能である。
【0031】
上記では、杉の無垢板材から得た圧縮板材で木板材を製造した例を示したが、ここで、本発明に係る木板材として使用可能な天然木をいくつか例示する。無垢板材としては、杉、桧、タモ、白オーク、桜、その他の銘木が挙げられる。なかでも、比較的軟質の樹種である杉や桧は、圧縮板材にして用いるのが好適である。これらのうちのいくつかの機械的諸元を下記の表1に記載する。これらの機械的諸元は和歌山県工業技術センターなどで測定して頂いたものである。表1中で、「曲げ強度試験」は、汎用の3点曲げ試験機を用い、スパン240mm、曲げ速度5mm/minにて得られた最大荷重から算出した値である。「密度試験」は、JIS Z 2101:2009 5に準拠の試験法で測定した。「表面硬度試験」は、万能材料試験機(島津製作所社製)を用いダイヤルゲージ付きの直径10mm鋼球を試料に押し当て、0.32mm圧入時の荷重から算出した値である。「鉛筆硬度試験」は、JIS K 5600−5−4:1999[塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)]に準拠した試験法であり、鉛筆(MITSUBISHI/Hi−uni)を用いて試料表面を引っかき、傷がついたときの鉛筆硬度を測定値とした。「衝撃試験」は、衝撃試験機(東洋精機社製)を用いて、300mmの高さから試料に直径約51mmのおもりを落下させたときのめり込み量を測定した。「摩耗試験」は、テーバー型摩耗試験機(大栄科学製作所社製)を用い、フローリングの日本農林規格(5)磨耗試験(ア)摩耗A試験に準拠した試験法により500回摺動後の厚さ摩耗量と摩耗減量を測定したものである。
【0032】
【表1】
【0033】
表1中において、杉は、無垢材のときに全般的に機械的諸元値が低いが、50%圧縮以上の圧縮木材にすると、堅いとされるタモや白オークの無垢材と比べて遜色のない高い機械的諸元値が得られていることが判る。桧は表面塗装を施してあるので、塗膜の強度が機械的諸元値に影響していると考えられる。尚、杉や桧の無垢材であっても、本発明の木板材の原材料として必要かつ十分な機械的強度を備えている。既述した木板材1,1aは、表1中における杉の無垢板材を板厚基準で50%に圧縮して成る圧縮木材(表中の50%圧縮材)を用いたものである。
【0034】
尚、上記の実施形態では、木表面2(または木裏面3)と木端面4A,4Bとの境界線9A,9Bが密接した床板10を例示したが、本発明の木板材は床板10のみに適用されるものでない。例えば、図6に示すような、壁板20にも適用可能である。この壁板20では、木板材1A,1aA,1b,1cAが使用される。これらの木板材1A,1aA,1cAが、既述した木板材1,1a,1c(図5参照)と異なるところは、それぞれ、一方の木端面4Aと木表面2との境界線部分が切り欠かれて切欠き部21として形成されていることである。切欠き部21の存在により、木表面2と木端面4Aとの境界線9Aは板中央部に寄った位置に形成される。壁板20におけるその他の構成は、既述した床板10と同じである。この場合、複数の木板材1A,1aA,1b,1cAが用いられ、隣り合う木板材同士は一方の木端面4Aのホゾ部6Aが他方の木端面4Bの溝部7Aに係合されて突き合せられる。このように、全ての木板材1A,1aA,1b,1cAが係合し一体に突き合せられた状態で、それぞれの木裏面3,3,3,・・・が基板(図示省略)上に接着剤などで固着されることにより、壁板20が完成する。尚、前記の壁板20および既述した床板10において、四方の外周辺に位置する木板材1,1a,1b,1c,1A,1aA,1cAの木端面4A,4Bおよび木口面5A,5Bは、ホゾ部6A,6Bおよび溝部7A,7Bが設けられていず、いずれも、木表面2または木裏面3と直交する平面として形成されている。
【0035】
以上のように構成された壁板20によれば、木表面2(または木裏面3)と木端面4A,4Bとの境界線9Aと、木表面2(または木裏面3)と木端面4Bとの境界線9Bとの間が、切欠き部21の存在により離間している。この切欠き部21の部分は広幅帯状の曲線として現れるので、なだらかな曲線の趣きのある意匠感を呈することができる。因みに、木表面2には天然木由来の木目が表われているので、既述した床板10(図5参照)のように木表面2と木端面4A,4Bとの境界線9A,9Bが密接している場合は、境界線9A,9Bが木目に紛れて見分けにくい。しかしながら、この壁板20では、境界線9A,9B間が離れており、それらの間の切欠き部21が広幅帯状の曲線を成すので、木表面2と直角の方向から視て木端面4A,4Bが曲線になっていることが、遠くからでも明らかに視認できる。従って、意匠性がよりいっそう高くなり、住宅家屋の高級室内壁材として、好適に提供され得るのである。
【0036】
尚、上記の床板10と壁板20では、波状の木板材1,1Aと円弧状の木板材1a,1aAとを同時に用いているが、木板材1または1Aのみあるいは木板材1aまたは1aAのみを用いて床板や壁板を形成しても構わない。
また、上記の木板材1,1a,1b,1c,1A,1aA,1cAでは、一方の木端面にホゾ部を設け、他方の木端面に溝部を設けているが、両方の木端面にホゾ部および溝部を設けていないものも、本発明に含まれる。
また、木板材を構成する天然木としては杉などの間伐材も使用できるので、それらを使用した場合は、多量に産出した間伐材を無駄にすることなく天然資源の有効利用を図ることができ、木板材の製造コストの低減化も図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1,1a,1b,1c,1A,1aA,1cA 木板材
2 木表面
3 木裏面
4A,4B 木端面
5A,5B 木口面
6A,6B ホゾ部
7A,7B 溝部
9A,9B 境界線
10 床板
20 壁板
21 切欠き部
30 マシニングセンタ
38 自動ツール交換装置
G 原板材
G1〜G6 途中材
L1〜L7 加工想定線
T ツール
t 板厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7